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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21S
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 F21S
管理番号 1330615
審判番号 不服2016-8760  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-13 
確定日 2017-08-08 
事件の表示 特願2011-158257号「面光源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 4日出願公開、特開2013- 25953号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月19日の出願であって、平成26年7月17日に手続補正書が提出され、平成27年3月25日付けで拒絶理由が通知され、同年9月30日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年2月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年6月13日に拒絶査定不服審判が請求され、その後当審において平成29年3月14日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成29年6月16日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりものと認める。
「【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から背面側又は側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる導光板と、
前記導光板の前面側に配置され、前記導光板から入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、
前記拡散板は、坪量が13g/m^(2)以上、45g/m^(2)以下の不織布からなり、80%以上のヘイズを有し、1.020以上のゲインを有する面光源装置。
【請求項2】
光を出射する光源と、
前記光源から背面側に入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、
前記拡散板は、坪量が13g/m^(2)以上、坪量が45g/m^(2)以下の不織布からなり、
80%以上のヘイズを有し、1.020以上のゲインを有する面光源装置。
【請求項3】
前記拡散板の前面側に反射型偏光板又はプリズムシートが配置されている、請求項1又は2記載の面光源装置。」

第3 引用文献の記載事項、引用発明等
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2007-140495号公報)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審で付加。)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに装備される光学シートの支持体であって、繊維により構成された布帛からなり、該布帛の全光線透過率が25%以上90%以下であることを特徴とする光学シート支持体。
【請求項2】
前記布帛のヘイズが20%以上100%以下であることを特徴とする、請求項1に記載
の光学シート支持体。
・・・」

イ 「【0015】
本発明において、布帛のヘイズは20%以上100%以下がよい。ヘイズが20%未満であると、支持布帛の光拡散性が不十分であり光源の光がほぼ直進光で透過してしまい、前記の通りディスプレイ画面上に輝度ムラが発生し易い。100%は測定限界である。ヘイズはさらに好ましくは50%以上100%以下、最も好ましくは70%以上100%以下である。」

ウ 「【0028】
T=0.2×W×10
ここで、T:糸の平均総繊度(dtex)
W:試料25本の質量(mg)
さらに、本発明において布帛は、織物、編物、乾式不織布、湿式不織布などいかなる構成のものであってもよいが、取り扱い時の寸法安定性がよく、かつ、厚みムラも小さな織物が好ましい。・・・」

エ 「【0061】
図1は、本発明の支持体を液晶ディスプレイのサイドライト型バックライトに組み込んだ場合のバックライトの構成を模式的に示す図である。図1において、サイドライト型バックライトは、透明なアクリル板を加工した導光板3と、その側面に配置された1本または複数の線状の蛍光管(光源)5と、導光板3の底面側に配置された反射シート4と、導光板3の表面側に配置された本発明の支持体と、その支持体2のさらに上部に配置されたプリズムシートや偏光分離シート等の輝度向上シート(光学シート)1などで構成されている。」

オ 「【0062】
図2は、本発明の支持体を液晶ディスプレイの直下型バックライトに組み込んだ場合のバックライトの構成を模式的に示す図である。図2において、直下型バックライトは、反射シート4が敷き詰められた筐体6内部に複数の線状の蛍光管5が配置されており、蛍光管5の上方に本発明の支持体2が配置され、さらにその支持体2の上部にプリズムシートや偏光分離シート等の輝度向上シート(光学シート)1などが配置されている。そして、本実施形態においては、支持体2が大きく撓むことを防ぐために支持柱7も設置している。」

カ 【表1】には、布帛組織を「平織り」とした実施例1?8のヘイズが、それぞれ90、88、84、92、94、92、87、81%であることが記載されている。

(2)引用発明
ア 引用発明1
上記(1)(特にア?エ)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。
「透明なアクリル板を加工した導光板3と、その側面に配置された1本または複数の線状の蛍光管(光源)5と、導光板3の底面側に配置された反射シート4と、導光板3の表面側に配置された支持体2と、その支持体2のさらに上部に配置されたプリズムシートや偏光分離シート等の輝度向上シート(光学シート)1などで構成されているサイドライト型バックライトであって、
前記支持板2は、乾式不織布、湿式不織布からなり、全光線透過率が25%以上90%以下であり、ヘイズが20%以上100%以下(好ましくは50%以上100%以下、最も好ましくは70%以上100%以下)であるサイドライト型バックライト。」

イ 引用発明2
また、上記(1)(特にア?ウ、オ)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明2」という。)も記載されているものと認める。
「反射シート4が敷き詰められた筐体6内部に複数の線状の蛍光管5が配置されており、蛍光管5の上方に支持体2が配置され、さらにその支持体2の上部にプリズムシートや偏光分離シート等の輝度向上シート(光学シート)1などが配置されている直下型バックライトであって、
前記支持板2は、乾式不織布、湿式不織布からなり、全光線透過率が25%以上90%以下であり、ヘイズが20%以上100%以下(好ましくは50%以上100%以下、最も好ましくは70%以上100%以下)である直下型バックライト。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明1とを対比すると、後者の「蛍光管(光源)5」は前者の「光源」に相当し、以下同様に、「導光板3」は「導光板」に、「支持板2」は「拡散板」に、「サイドライト型バックライト」は「面光源装置」にそれぞれ相当する。

イ 後者の「導光板3」は、「蛍光管(光源)5」からその下方側(背面側)に入射した光を上方側(前面側)から出射させるものであることは明らかであり、「支持板2」は「導光板3」から入射した光を上部(前面側)に拡散させるものであることも明らかである。
そうすると、後者の「透明なアクリル板を加工した導光板3と、その側面に配置された1本または複数の線状の蛍光管(光源)5と、導光板3の底面側に配置された反射シート4と、導光板3の表面側に配置された支持体2と、その支持体2のさらに上部に配置されたプリズムシートや偏光分離シート等の輝度向上シート(光学シート)1などで構成されているサイドライト型バックライトであって」は、前者の「光を出射する光源と、前記光源から背面側又は側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる導光板と、前記導光板の前面側に配置され、前記導光板から入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって」に相当するといえる。

ウ 後者の「前記支持板2は、乾式不織布、湿式不織布からなり、全光線透過率が25%以上90%以下であり、ヘイズが20%以上100%以下(最も好ましくは70%以上100%以下)である」と、前者の「前記拡散板は、坪量が13g/m^(2)以上、45g/m^(2)以下の不織布からなり、80%以上のヘイズを有し、1.020以上のゲインを有する」とは、「前記拡散板は、不織布からなる」の限度で一致するといえる。

エ したがって、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点1〕
「光を出射する光源と、
前記光源から背面側又は側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる導光板と、
前記導光板の前面側に配置され、前記導光板から入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、
前記拡散板は、不織布からなる面光源装置。」

〔相違点1〕
「拡散板」について、本願発明1は、「坪量が13g/m^(2)以上、45g/m^(2)以下」の不織布からなり、「80%以上のヘイズを有し、1.020以上のゲインを有する」ものであるのに対し、引用発明1は、乾式不織布、湿式不織布の坪量が明らかでなく、「ヘイズが20%以上100%以下(好ましくは50%以上100%以下、最も好ましくは70%以上100%以下)」であり、ゲインも明らかでない点。

(2)判断
引用発明1において、「ヘイズ」は「20%以上100%以下(好ましくは50%以上100%以下、最も好ましくは70%以上100%以下)」というものであるから、ある程度高い方が好ましいことが示唆されており、また、不織布ではなく平織りのものではあるが、実施例としてヘイズを80%より高くしたものが、上記第3(1)カに示されているので、引用発明1において、「ヘイズ」を「80%以上」とすることは、一応容易に想到し得たことといえる。
しかしながら、引用文献1には、不織布の坪量に着目することは記載も示唆もなく、本願の【図8】の各種不織布の測定結果より、引用発明1の全光線透過率とヘイズの数値範囲を満たすものであっても、本願発明1の数値範囲より坪量が高くなればゲインが低くなることが把握でき、引用発明1の数値範囲の条件を満たしても、本願発明1の数値範囲の条件は必ずしも満たされるわけではないことが理解できる。そして、本願発明1は、坪量を所定の範囲内に設定することで、適切なヘイズとゲインの両立を図れるという有利な効果を奏するものと認められる(段落【0042】?【0044】等。)。
したがって、本願発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
ア 本願発明2と引用発明2とを対比すると、後者の「蛍光管5」は前者の「光源」に相当し、以下同様に、「支持板2」は「拡散板」に、「直下型バックライト」は「面光源装置」にそれぞれ相当する。

イ 後者の「支持板2」は「蛍光管5」から入射した光を上部(前面側)に拡散させるものであることは明らかである。
そうすると、後者の「反射シート4が敷き詰められた筐体6内部に複数の線状の蛍光管5が配置されており、蛍光管5の上方に支持体2が配置され、さらにその支持体2の上部にプリズムシートや偏光分離シート等の輝度向上シート(光学シート)1などが配置されている直下型バックライトであって」は、前者の「光を出射する光源と、前記光源から背面側に入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって」に相当するといえる。

ウ 後者の「前記支持板2は、乾式不織布、湿式不織布からなり、全光線透過率が25%以上90%以下であり、ヘイズが20%以上100%以下(好ましくは50%以上100%以下、最も好ましくは70%以上100%以下)である」と、前者の「前記拡散板は、坪量が13g/m^(2)以上、45g/m^(2)以下の不織布からなり、80%以上のヘイズを有し、1.020以上のゲインを有する」とは、「前記拡散板は、不織布からなる」の限度で一致するといえる。

エ したがって、本願発明2と引用発明2との一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点2〕
「光を出射する光源と、
前記光源から背面側に入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、
前記拡散板は、不織布からなる面光源装置。」

〔相違点2〕
「拡散板」について、本願発明2は、「坪量が13g/m^(2)以上、45g/m^(2)以下」の不織布からなり、「80%以上のヘイズを有し、1.020以上のゲインを有する」ものであるのに対し、引用発明2は、乾式不織布、湿式不織布の坪量が明らかでなく、「ヘイズが20%以上100%以下(好ましくは50%以上100%以下、最も好ましくは70%以上100%以下)」であり、ゲインも明らかでない点。

(2)判断
上記相違点2は、上記相違点1と同様内容であるので、上記1(2)と同様の理由により、本願発明2は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明3について
本願発明3は本願発明1または2を限定するものであるから、本願発明1または2と同様の理由により、引用発明1または2に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定の判断
原査定は、請求項1?3に係る発明について上記引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年6月16日付け手続補正により補正された請求項1、2は、それぞれ「拡散板」について、「坪量が13g/m^(2)以上、45g/m^(2)以下の不織布からなり、80%以上のヘイズを有し、1.020以上のゲインを有する」という事項を有するものとなっており、上記第4のとおり、本願発明1?3は、上記引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が不明確であるとして、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとして、当審拒絶理由を通知しているが、平成29年6月16日付け手続補正により、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明が補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-25 
出願番号 特願2011-158257(P2011-158257)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (F21S)
P 1 8・ 537- WY (F21S)
P 1 8・ 121- WY (F21S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柿崎 拓松田 長親  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
尾崎 和寛
発明の名称 面光源装置  
代理人 清水 義憲  
代理人 中山 浩光  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 池田 成人  

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