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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66F
管理番号 1330644
審判番号 不服2016-9953  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-01 
確定日 2017-07-19 
事件の表示 特願2014-545012「荷役用クランプのためのインタラクティブなクランプ力制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日国際公開、WO2014/070257、平成27年 1月 5日国内公表、特表2015-500191〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2013年6月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年10月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月2日に国内書面が提出されるとともに、同日に補正書及び上申書が提出され、平成26年10月16日に平成26年6月2日に提出された手続補正書を補正する手続補正書が提出され、平成27年4月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成27年8月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年2月26日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年7月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、平成26年10月16日に提出された手続補正書により補正された平成26年6月2日に提出された手続補正書により補正された明細書、平成27年8月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲及び平成26年6月2日に提出された国内書面における図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
(a)積荷係合面のうちの少なくとも一つがクランプ作動器によって他の面に向かって選択的に移動可能である積荷係合面を有する荷役用クランプのための制御器とからなる制御システムであって、
(b)該制御器は、前記作動器が前記係合面を介して積荷クランプ力を適用することの可能なクランプ力設定を可変調整可能であり、
(c)前記制御器は、該制御器によって提供された選択肢のうちから前記荷役用クランプの操作者によって選択された情報を受信するように作動可能であり、各選択肢がクランプされるべき積荷のそれぞれ異なる積荷タイプ及び幾何学形状を表しており、そして、前記制御器が、それぞれの積荷タイプ及びそれぞれの積荷の幾何学的形状の選択肢を提供可能な端末に作動可能なように接続されており、更に、前記制御器は、前記操作者によって前記端末において選択された複数個の前記選択肢の組み合わせに対して、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である制御システム。」

第3 引用刊行物
1 刊行物1
(1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特表2011-519801号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0005】
本発明による自動クランプ力制御システムの例示的な実施形態と共に使用する積荷取扱クランプを、図1Aおよび図1Bに概略的に示す。この例示的なクランプ10は、リフトトラックのキャリッジに取り付けるよう構成したフレーム11を有する液圧駆動式の摺動可能アームクランプとし、リフトトラックのキャリッジは、従来の傾動可能な直立液圧駆動式積荷リフト支柱(図示せず)に沿って直線的に、選択的に往復運動する。図面に示す特定の例示的な摺動可能アームクランプ10は、図1Bに示す段ボール箱またはパッケージ等の角柱物体12を扱うためのものであり、任意の適切な摺動可能アームの設計とすることができる。クランプアーム14,16は、積荷接触面20,22の平面に対して直交する方向に、互いに離れるまたは互いに接近するよう選択的に摺動可能とする。液圧式シリンダ26,28は、各クランプアームの積荷接触面20,22を選択的に拡開または収縮させることができる。図1Bに符号12で示すような段ボール箱は、滑落を防止するために過度にクランプされると、損傷する可能性がある。一方で、不十分なクランプでは、段ボール箱12がクランプ10の摩擦による把持から滑落する可能性が有る。
【0006】
本明細書では、例示的な実施形態として液圧作動の段ボール箱クランプ10を説明したが、本明細書による積荷クランプシステムは、様々な他のタイプの積荷クランプに応用することもできる。例えば、液圧作動の旋回アーム式のペーパーロールクランプとして、本発明の積荷クランプシステムにより構成することもできる。
【0007】
本発明による自動クランプ力制御システムの例示的な実施形態は、クランプ10上に配置する電子コードリーダ32等のデータ受信装置を有することができる。本発明のシステムの例示的な実施形態を実現することに関連して、クランプすべき物品にコード化ラベル34をタグ付けすると有利である。このコード化ラベル34は、以下に説明するように、ラベル付けした物品に適正な最大クランプ力を決定する上で本発明積荷クランプシステムを支援するのに十分な情報を含むようにしなければならない。コード化ラベル34は、例えば、物品の積荷ID、または別の直接的または間接的な特性識別表示を含むデジタルデータ列を通信することができる。
【0008】
積荷は、1個またはそれ以上のラベル付けした物品により構成することができ、したがって、個々のラベル付けした物品に適したクランプ力は、積荷全体に適合する、または適合しない場合がある。本発明システムの実施形態は、以下に説明するように他の技術を利用して、この適したクランプ力を決定する。
【0009】
電子コードリーダ32は、積荷取扱クランプ10にもたらされる積荷を構成する、少なくとも1個の物品上のコード化ラベル34を読み取るよう位置決めする。この電子コードリーダは、例えば、以下でより詳細に説明するように、クランプアームが開放位置にある、またはクランプアーム間で積荷を検出するときは、いつでもコード化ラベルをサーチすることによって自動的に動作することができる。代案としては、クランプ操作者を、電子コードリーダを手動で操作することができる。コード化ラベル34および電子コードリーダ32は、それぞれ、バーコードおよびバーコードスキャナ、無線IC(radio frequency identification: RFID)タグおよびRFIDリーダ、または他のマシン可読ラベルおよび対応するリーダの組み合わせとすることができる。RFIDシステムの場合、クランプのRFIDリーダがクランプアーム14,16間に配置するRFIDタグのみを検出することに、クランプのRFIDリーダが限定される。積荷IDまたは他の積荷表示は、例えば、コード化ラベルが偶発的に読み取り不可能な状態で表示されている場合、または、物品が不正にラベル付けされていた場合に、代わりにクランプ操作者が入力できる。
【0010】
図2につき説明すると、電子コードリーダ32は、コード化ラベル34から読み取った情報を制御器40に伝送する。この制御器40は、伝送された情報を解析して、積荷IDまたは他の識別表示を認識する。このことは、使用する本発明のシステムの特別な実施形態を実現するのに必要な任意の方法で達成することもできる。
【0011】
図2につき、さらにまた図3A?図3Dにつつき説明すると、クランプアーム14,16が開放位置にあるとき、これらクランプアームは、符号44で全体的に示す3次元クランプ領域を部分的に画定する。積荷12をクランプするために、クランプ操作者は、積荷がクランプ領域44に位置するようにクランプアーム14,16を位置決めする。積荷の幾何学的形状を検出する積荷ジオメトリセンサ50は、制御器40とデータ通信状態にあり、この積荷ジオメトリセンサ50をクランプ領域の周囲に配置する。図示の実施形態では、積荷ジオメトリセンサ50を、各積荷接触面20,22上に配置すると有利である。この積荷ジオメトリセンサ50は、一般に、互いに対面する積荷接触面22,20の方向に内向きに指向させる。
【0012】
各積荷ジオメトリセンサ50は、センサ周囲の環境からの刺激を吸収して、センサ50および制御器40間の通信媒体の特性を吸収した刺激の関数として動的に調整する。本発明によるシステムのある実施形態では、このセンサ50は、例えば、シャープ株式会社から市販されているGP2XX系の赤外線ビームセンサ等の赤外線ビームセンサとすることができる。
【0013】
このようなセンサの実施例としては、エミッタコンポーネント、検出器コンポーネント、アナログ出力および内部回路がある。センサは、赤外線のビームを発生する。赤外線ビームは、クランプ領域を通過し、障害物、例えば積荷の干渉面に遭遇するまで移動する、または積荷が存在していないと対向する積荷接触面まで移動する。必須ではないが、干渉面は、積荷接触面に近接し、また積荷接触面と平行とするのが好ましく、ビームは、積荷接触面に対して直交する平面で発射されるのが好ましい。赤外線ビームは表面に反射して、検出器コンポーネントによって少なくとも部分的に吸収される。センサ内で、内部回路は、センサおよび吸収された赤外線間の角度を測定して、三角法演算により、この角度を用いてさらにセンサおよび干渉面間の距離を計算し、この距離をアナログ電圧として表示する。センサは、アナログ出力を介して計算した距離情報を制御器40に通信する。
【0014】
本発明システムの代替的な実施形態では、中間回路(図示せず)をセンサ50および制御器40間に配置することができる。例えば、十分なデータ入力を有する制御器を使用して、各センサ50に直接接続することは実用的ではない場合がある。したがって、各積荷ジオメトリセンサ50を変換回路(図示せず)に直接接続し、またこの回路を同期多重化回路(図示せず)と接続することができ、同様に、制御器40のデータ入力に接続する。既知の技術を利用して、全ての積荷ジオメトリセンサ50からのデータを統合し、単一のデータ入力を介して制御器40に供給することができ、これもやはり本発明システムでの使用に適したものでもある。
【0015】
図1Aにつきさらに説明すると、図示の例示的な実施形態では、センサ50は、行56および列58を有する格子アレイ53,54として配列することができ、第1アレイ53は、第2アレイ54からオフセットする。図3Aに示すように、クランプアーム間の空間が空いていると、全てのセンサによる刺激出力は、クランプアーム間の距離dで伝達される。図3Bに示すように、積荷12がクランプアーム14,16間に配置されると、少なくとも1個の積荷ジオメトリセンサ50からの信号が変化することになる。制御器40は、続いて、積荷の凡その体積を計算することができる。積荷の存在を示す信号を発信する積荷ジオメトリセンサの行56および列58は、それぞれ、積荷の高さおよび奥行に対応しており、センサが障害されていな状態で発信される信号に対する、センサが障害された状態から発信される信号の大きさの変化は、積荷の幅:d-g1-g2=wに対応する。代案として、センサ50は、他の適切なタイプのアレイとして配列することができる。
【0016】
少なくとも1個の積荷ジオメトリセンサ50は、積荷近接センサとしても機能することができる。以下に説明するように、クランプ動作中に、本発明によるシステムは、クランプアームおよび積荷間距離の関数として最大液圧クランプ圧力を調整し、この調整は、所要距離で所要クランプ圧力に達するように行う。」(段落【0005】ないし【0016】)

イ 「【0019】
本発明の例示的な実施形態では、メモリ62は、様々なタイプの積荷および幾何学的形状(ジオメトリ)形態の積荷を把持してリフトする際の好ましいクランプ動作に対応する情報を有し、これら情報は、積荷カテゴリおよび積荷ジオメトリによって構成される参照テーブルとして配列するのが好ましい。この情報は、本明細書では積荷IDと称する割り当て表示、または物理的な積荷属性もしくは特性とし、好ましくは、積荷重量、積荷脆性、積荷梱包等の、最適な最大クランプ力または最適な最大液圧クランプ圧力と密接に関連する物理的積荷属性もしくは特性とすることができる。各積荷カテゴリに対して、データは、さらに、検出した積荷カテゴリにおけるあり得る幾何学的形状(ジオメトリ)形態にしたがって分類するのが好ましい。
【0020】
代案として、データは外部に静的に保存することができ、例えば、施設の中央管理システムまたはオフサイト・データベースに保存することができ、データレシーバを介する内部および/または外部ネットワークまたは複数のネットワークを介して制御器にアクセスできる。関連する積荷特性、例えば積荷カテゴリおよび幾何学的形状(ジオメトリ)形態を決定する際に、制御器は必要なデータを外部情報源からメモリ62内にコピーする。
【0021】
メモリ62内のデータは、クランプを操作する施設において、このクランプが取り扱う可能性が有る積荷のタイプおよび積荷の幾何学的形状(ジオメトリ)に固有のものとすることができる。データは、必要に応じてレシーバを介して更新することができ、例えば、新しいカテゴリの積荷が施設に導入される、または現在のデータの一部が不十分または不正確と判定されると、データを更新することができる。さらに、制御器40は、以下により詳細に説明するように、データを選択的に自己更新することができる。
【0022】
上述するように、本発明のシステムは、積荷におけるコード化ラベルを読み込んで積荷をクランプするための積荷IDまたは他の識別表示を得ることができる。代案として、このような積荷IDまたは他の識別情報は、他のタイプのデータレシーバによって、施設の中央管理システムからまたは無線ネットワーク・インタフェースを介して他の積荷取扱クランプから直接得ることができる。やはり上述したように、本発明のシステムは、積荷ジオメトリセンサを使用して積荷の凡その体積を計算する。積荷情報は、クランプアームが積荷をクランプする前に、クランプ操作者からの入力を必要とせずに有利に確認される。制御器40は、確認した積荷IDおよび積荷の幾何学的形状(ジオメトリ)の輪郭にとって最適な最大液圧クランプ圧力を参照テーブルから検索する。この最適な最大圧力を、その後、以下に説明するように、クランプ動作中に積荷に加える。
【0023】
・・・略・・・
【0025】
逆に、クランプアームを閉じて積荷12をクランプするためには、バルブ90のスプールを図2で見て右方に移動させて、ライン82からの加圧流体を、ライン110からシリンダ26,28のロッド端部に移動し、これにより、シリンダ26,28を収縮させてクランプアーム14,16を互いに接近する方向に移動させる。ほぼ同じ速度で流体をシリンダ26,28のロッド端部からフロー分割/結合器98を介し、さらにライン94からバルブ90を経て、リザーバ74に排出する。シリンダ26,28の収縮によってクランプアーム14,16を閉鎖する間、1個またはそれ以上の圧力調整バルブによって最大液圧閉鎖圧力を制御するのが好ましい。例えば、このような圧力調整バルブは、ライン110に並列接続したライン118における比例リリーフバルブ114とすることができ、このような最大液圧閉鎖圧力は、制御ライン122を介する制御器40によって、ほぼ制限なく変動するよう自動的に選択可能な異なる設定値に対応し、この制御器40は、バルブのソレノイド114aを可変制御することによって、リリーフバルブ114の逃がし圧力の設定を電子的に調整する。代案としては、比例減圧バルブ126(図2A参照)をライン110に対して並列に挿入し、ライン110の最大液圧閉鎖圧力を制御することができる。さらなる代案としては、この目的のために、選択可能な複数の非比例の圧力リリーフバルブまたは減圧バルブを使用することができる。必要に応じて、制御器40は、随意的な圧力センサ130からの液圧閉鎖圧力によるクランプ力のフィードバックを受け、上述の圧力調整バルブの制御を支援するようにすることができる。このようなフィードバックは、代案として、適切に搭載したクランプ力測定電気変換器(図示せず)から得ることもできる。」(段落【0019】ないし【0025】)

ウ 「【0026】
クランプ挙動の様々な側面は、クランプに課される積荷のクランプ要件を考慮して、制御器40によって選択的に制御する。クランプアームが積荷に近接すると、制御器40は、図4Aおよび図4Bのステップにしたがって動作する。これら図面における各部分を、以下のクランプの動作説明で説明する。
【0027】
図4Aのステップ400では、リフトトラック操作者は、図3Bに示すように、クランプアームを開放した状態にし、積荷接触面間に積荷12を挿入するようリフトトラックを操作する。続いて、システムは、ステップ402で、例えば、上述のコードリーダ32およびコード化ラベル34を使用して積荷の積荷IDの読み取りを試みる。システムが積荷IDを判定できないと、クランプ操作者は、ステップ404で、手動で積荷IDを入力する、または操作者が手動モードに切り替えて、クランプを手動で制御可能とするスイッチ(図示せず)を作動させることができる。
【0028】
ステップ402で積荷IDを読み込むと、ステップ406で、参照テーブルで制御器は利用可能な積荷の幾何学形状(積荷ジオメトリ)を検索し、ステップ410で、積荷ジオメトリセンサ50から受信したデータを使用して積荷ジオメトリを判定する。安全のために、ステップ412で、制御器は、積荷が均一な幅を有していることを確認することもできる。幅が不均一であると、自動クランプ処理をステップ415で中断することができて、中断した場合、操作者は、スイッチ(図示せず)を起動させることによって非自動モードにして、クランプの手動操作を選択することもできる。積荷ジオメトリが均一であるとき、操作者は、測定した積荷ジオメトリおよびプロファイル(輪郭)をステップ416で比較し続ける。続いて、操作者は、可能であるならば、ステップ417で最も相応しいプロファイルを選択する。しかし、センサ50で測定した検知積荷ジオメトリであって、ステップ416で比較した検知積荷ジオメトリに対応する利用可能なジオメトリのプロファイルが存在しないとき、操作者は、ステップ415で自動クランプ操作を停止することができ、この場合、操作者は、一連の所定積荷ジオメトリ形態のうち1つを選択する、または非自動モードにして手動でクランプを操作することもできる。ステップ410の測定ステップは、ステップ406の検出ステップ後に生じるように示したが、この2つのステップは、逆の順序または同時に実施することができる。
【0029】
ステップ412でエラーが全く検知されないと、操作者は、ステップ418で、選択した積荷ジオメトリプロファルに対する最適液圧クランプ圧力および他のパラメータを制御器のローカルメモリ内にロードする。続いて、制御器40は、ステップ420でクランプ動作を開始する(図4B参照)。」(段落【0026】ないし【0029】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
ア 上記(1)アないしウ及び図1Aないし4Bの記載によれば、刊行物1には、自動クランプ力制御システムが記載されていることが分かる。

イ 上記(1)アないしウ及び図1Aないし4Bの記載(特に、段落【0005】、【0022】、【0025】及び【0026】の記載)によれば、自動クランプ力制御システムは、積荷接触面20,22のうちの少なくとも一つが液圧式シリンダ26,28によって他の面に向かって選択的に移動可能である積荷接触面20,22を有するクランプ10のための制御器40からなることが分かる。

ウ 上記(1)ア及びイ並びに図1Aないし4Bの記載(特に、段落【0005】、【0022】及び【0025】の記載)によれば、制御器40は、液圧式シリンダ26,28が積荷接触面20,22を介して積荷へのクランプ力を適用することの可能なクランプ圧力の設定を可変調整可能であることが分かる。

エ 上記(1)アないしウ及び図1Aないし4Bの記載(特に、段落【0007】ないし【0015】、【0019】ないし【0022】、【0027】及び【0028】の記載)によれば、制御器40は、電子コードリーダ32により積荷におけるコード化ラベルを読み込んで得た積荷のタイプに固有の積荷カテゴリである積荷ID及び積荷ジオメトリセンサ50により測定した積荷の幾何学的形状のデータを受信するように作動可能であることが分かる。

オ 上記(1)イ及び図1Aないし4Bの記載(特に、段落【0019】ないし【0022】の記載)によれば、制御器40は、前記積荷ID及び前記積荷の幾何学的形状の組み合わせに対して、参照テーブルから最適な最大液圧クランプ圧力を検索するように作動可能であることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合して、本願発明の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「(a)積荷接触面20,22のうちの少なくとも一つが液圧式シリンダ26,28によって他の面に向かって選択的に移動可能である積荷接触面20,22を有するクランプ10のための制御器40とからなる自動クランプ力制御システムであって、
(b)該制御器40は、前記液圧式シリンダ26,28が前記積荷接触面20,22を介して積荷へのクランプ力を適用することの可能なクランプ圧力の設定を可変調整可能であり、
(c)前記制御器40は、電子コードリーダ32により積荷におけるコード化ラベルを読み込んで得た積荷のタイプに固有の積荷カテゴリである積荷ID及び積荷ジオメトリセンサ50により測定した積荷の幾何学的形状のデータを受信するように作動可能であり、更に、前記制御器40は、前記積荷ID及び前記積荷の幾何学的形状の組み合わせに対して、参照テーブルから最適な最大液圧クランプ圧力を検索するように作動可能である、自動クランプ力制御システム。」

2 刊行物2
(1)刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-127178号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項4】
予め設定されている複数の荷の形状及び姿勢のパターンから作業者が選択して入力することが可能な荷姿パターン入力手段を更に備え、
前記積載安定度判断手段は、前記荷姿入力手段から入力されたパターンに基づいて、荷の安定度を判断することを特徴とする請求項1乃至請求項3の少なくともいずれか1項に記載の産業車両の制御装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項4】)

イ 「【0015】
また、本発明に係る産業車両の制御装置における第4の特徴は、予め設定されている複数の荷の形状及び姿勢のパターンから作業者が選択して入力することが可能な荷姿パターン入力手段を更に備え、前記積載安定度判断手段は、前記荷姿入力手段から入力されたパターンに基づいて、荷の安定度を判断することである。
【0016】
この構成によると、作業者は作業時において積載する荷と同様の(又はそれに近い)荷姿のパターンを選択して入力することで、容易に昇降時における荷積載状態の安定性が確保されるような昇降速度の上限値を設定することが可能となる。これにより、作業者の入力作業の負担が減り、効率よく作業を行うことが可能となる。」(段落【0015】及び【0016】)

ウ 「【0049】
次に、産業車両に積載される荷の情報を入力するための方法及び荷の安定度を判断する方法について説明する。
第1実施形態においては、作業者が荷情報入力部50から荷の情報を入力できるように構成されている。荷情報入力部50は、例えば運転席等に取付けられたタッチパネル、ボタン、キーボード等からなる入力手段であり、第1実施形態において荷姿パターン入力手段を構成している。この荷情報入力部50は、荷役コントローラ33に入力情報を出力するものである。この荷情報入力部50を用いて、荷役コントローラ33または荷情報入力部50に予め設定登録されている複数の荷の形状及び姿勢のパターンから、作業者が作業対象となる荷と同じ形状及び姿勢、又は当該荷に近い形状及び姿勢のパターンを選択して入力することが可能である。フォークリフト10で頻繁に扱う荷の形状及び姿勢がある程度限定されている場合には、当該荷の形状及び姿勢のパターンを登録しておくことにより、作業者による選択の煩わしさがなくなり、容易に選択可能となる。荷の形状及び姿勢のパターンの一例を図7に示す。図7に示すパターンの例においては、(a)は、底面の面積が広い荷のパターンであり、(b)は、略立方体形状の荷のパターンであり、(c)は幅、奥行き方向の寸法に比べて高さ方向の寸法が大きい荷のパターンである。
【0050】
作業者は作業を開始する際に、荷情報入力部50を用いて、図7に示す(a)?(c)のパターンの中から作業対象となる荷の形状、又は当該荷に近い形状を入力することで、当該入力データに基づいて積載安定度判断部60により作業対象となる荷の安定度が判断される。安定度は、例えば、10段階で、数値が大きいほど積載状態の安定性が高いとして入力データに基づいて判断することができる。具体的には、荷役コントローラ33に記憶されたデータテーブル等により、例えば、図7に示す(a)のパターンが選択された場合、荷の安定度は「9」、(b)のパターンが選択された場合、荷の安定度は「5」、(c)のパターンが選択された場合、荷の安定度は「2」としてパターンと安定度が関連付けられており、当該データテーブルを用いて判断される。尚、後述するように、入力されたパターンの形状及び姿勢に基づいて安定度を算出することも可能である。
また、安定度は、段階的に判断される場合に限らず連続的な数値として判断することもできる。また、安定であるか否かの2値(例えば「0(不安定)」又は「1(安定)」)のいずれかとすることもできる。」(段落【0049】及び【0050】)

エ 「【0077】
また、予め設定されている複数の荷の形状及び姿勢のパターン(図7におけるパターン(a)?(c))から作業者が選択して入力することが可能な荷情報入力部50を更に備え、積載安定度判断部60は、前記荷情報入力部50から入力されたパターンに基づいて、荷の安定度を判断するように構成されている。
【0078】
この構成によると、作業者は作業時において積載する荷と同様の(又はそれに近い)荷姿のパターンを選択して入力することで、容易に昇降時における荷積載状態の安定性が確保されるような昇降速度の上限値を設定することが可能となる。これにより、作業者の入力作業の負担が減り、効率よく作業を行うことが可能となる。」(段落【0077】ないし【0078】)

オ 「【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のような発明を実施することもできる。
【0092】
(1)上記実施形態では、荷の情報を入力する方法として、作業者が直接入力する方法を例示したが、必ずしも作業者が直接入力する場合に限られない。例えば、車両に設置されたカメラによる画像認識により積載される荷のサイズが自動的に入力されるように構成することも可能である。また、アウタマスト16等にセンサを設置して荷の高さを検知できるように構成し、検知された高さが自動的に入力されるように構成することも可能である。」(段落【0091】及び【0092】)

(2)刊行物2記載の技術
上記(1)によると、刊行物2には、次の事項からなる技術(以下「刊行物2記載の技術」という。)が記載されていると認める。
「フォークリフトにおいて、昇降時における荷積載状態の安定性が確保されるような昇降速度の上限値を設定するに際し、予め設定されている複数の荷の形状及び姿勢のパターンから作業者が荷情報入力部50により選択して荷の情報を入力するようにした技術。」

第4 対比
本願発明(以下、「前者」ともいう。)と引用発明(以下、「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「積荷接触面20,22」は、前者における「積荷係合面」に相当し、以下同様に、「液圧式シリンダ26,28」は「クランプ作動器」又は「作動器」に、「クランプ10」は「荷役用クランプ」に、「制御器40」は「制御器」に、「自動クランプ力制御システム」は「制御システム」に、「積荷へのクランプ力」は「積荷クランプ力」に、「クランプ圧力の設定」は「クランプ力設定」に、「積荷のタイプに固有の積荷カテゴリである積荷ID」又は「積荷ID」は「積荷タイプ」に、「幾何学的形状」は「幾何学形状」に、「データ」は「情報」に、それぞれ相当する。

・後者における「前記制御器40は、電子コードリーダ32により積荷におけるコード化ラベルを読み込んで得た積荷のタイプに固有の積荷カテゴリである積荷ID及び積荷ジオメトリセンサ50により測定した積荷の幾何学的形状のデータを受信するように作動可能であり」は、前者における「前記制御器は、該制御器によって提供された選択肢のうちから前記荷役用クランプの操作者によって選択された情報を受信するように作動可能であり」に、「前記制御器は、所定の情報を受信するように作動可能であり」という限りにおいて一致する。
また、後者における「前記制御器40は、前記積荷ID及び前記積荷の幾何学的形状の組み合わせに対して、参照テーブルから最適な最大液圧クランプ圧力を検索するように作動可能である」は、参照テーブルから最適な最大液圧クランプ圧力を検索することより、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定された最適なクランプ力の設定を可変決定するものといえることから、前者における「前記制御器は、前記操作者によって前記端末において選択された複数個の前記選択肢の組み合わせに対して、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である」に、「前記制御器は、所定の情報による複数個の積荷タイプ及び幾何学形状の組み合わせに対して、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である」という限りにおいて一致する。
よって、後者における「前記制御器40は、電子コードリーダ32により積荷におけるコード化ラベルを読み込んで得た積荷のタイプに固有の積荷カテゴリである積荷ID及び積荷ジオメトリセンサ50により測定した積荷の幾何学的形状のデータを受信するように作動可能であり、更に、前記制御器40は、前記積荷ID及び前記積荷の幾何学的形状の組み合わせに対して、参照テーブルから最適な最大液圧クランプ圧力を検索するように作動可能である」は、前者における「前記制御器は、該制御器によって提供された選択肢のうちから前記荷役用クランプの操作者によって選択された情報を受信するように作動可能であり、各選択肢がクランプされるべき積荷のそれぞれ異なる積荷タイプ及び幾何学形状を表しており、そして、前記制御器が、それぞれの積荷タイプ及びそれぞれの積荷の幾何学的形状の選択肢を提供可能な端末に作動可能なように接続されており、更に、前記制御器は、前記操作者によって前記端末において選択された複数個の前記選択肢の組み合わせに対して、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である」に、「前記制御器は、所定の情報を受信するように作動可能であり、更に、前記制御器は、所定の情報による複数個の積荷タイプ及び幾何学形状の組み合わせに対して、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「(a)積荷係合面のうちの少なくとも一つがクランプ作動器によって他の面に向かって選択的に移動可能である積荷係合面を有する荷役用クランプのための制御器とからなる制御システムであって、
(b)該制御器は、前記作動器が前記係合面を介して積荷クランプ力を適用することの可能なクランプ力設定を可変調整可能であり、
(c)前記制御器は、所定の情報を受信するように作動可能であり、更に、前記制御器は、所定の情報による複数個の積荷タイプ及び幾何学形状の組み合わせに対して、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である制御システム。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
「前記制御器は、所定の情報を受信するように作動可能であり、更に、前記制御器は、所定の情報による複数個の積荷タイプ及び幾何学形状の組み合わせに対して、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である」に関し、本願発明においては、「前記制御器は、該制御器によって提供された選択肢のうちから前記荷役用クランプの操作者によって選択された情報を受信するように作動可能であり、各選択肢がクランプされるべき積荷のそれぞれ異なる積荷タイプ及び幾何学形状を表しており、そして、前記制御器が、それぞれの積荷タイプ及びそれぞれの積荷の幾何学的形状の選択肢を提供可能な端末に作動可能なように接続されており、更に、前記制御器は、前記操作者によって前記端末において選択された複数個の前記選択肢の組み合わせに対して、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である」のに対して、引用発明においては、「前記制御器40は、電子コードリーダ32により積荷におけるコード化ラベルを読み込んで得た積荷のタイプに固有の積荷カテゴリである積荷ID及び積荷ジオメトリセンサ50により測定した積荷の幾何学的形状のデータを受信するように作動可能であり、更に、前記制御器40は、前記積荷ID及び前記積荷の幾何学的形状の組み合わせに対して、参照テーブルから最適な最大液圧クランプ圧力を検索するように作動可能である」点(以下、「相違点」という。)。

第5 判断
(1)上記相違点について検討する。
刊行物2記載の技術にみられるように、「荷役装置において、動作内容を決定するに際し、予め設定されている積荷のそれぞれ異なる積荷タイプや幾何学的形状の選択肢から作業者が端末により選択して積荷の情報を入力するようにした技術」は、本件出願の優先日前に周知の技術(以下、「刊行物2にみられるような周知技術」という。他に必要があれば、特開平7-214485号公報(特に、段落【0032】及び【0040】並びに図6)、特開平9-174473号公報(特に、段落【0007】及び図4)及び特開2000-141258号公報(特に、段落【0013】並びに図1及び6)を参照。)である。
また、荷役装置において、動作内容を決定するに際し、荷の情報を上記相違点に係る引用発明の発明特定事項のように自動入力する手法及び刊行物2にみられるような周知技術のように手動入力する手法は相互に代替可能である(必要であれば、刊行物2(特に、段落【0092】)及び特開平7-214485号公報(特に、段落【0032】及び【0053】)を参照。)ところ、いずれの手法を採用するかは、荷役の作業量、荷の情報の自動入力に伴う設備費用、操作者の精神的負担や肉体的負担などの作業環境を考慮して、当業者が適宜選択する事項である。
そうすると、引用発明において、刊行物2にみられるような周知技術を採用し、制御器40(制御器)は、該制御器40によって提供された選択肢のうちからクランプ10(本願発明の「荷役用クランプ」に相当。以下、括弧内は同様。)の操作者によって選択された情報を受信するように作動可能であり、各選択肢がクランプされるべき積荷のそれぞれ異なる積荷のタイプに固有の積荷カテゴリである積荷ID(積荷タイプ)及び幾何学的形状(幾何学形状)を表しており、そして、前記制御器40が、それぞれの積荷のタイプに固有の積荷カテゴリである積荷ID及びそれぞれの積荷の幾何学的形状の選択肢を提供可能な端末に作動可能なように接続されており、更に、前記制御器40は、前記操作者によって前記端末において選択された複数個の前記選択肢の組み合わせに対して、参照テーブルから最適な最大液圧クランプ圧力を検索するように作動可能である(クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である)ようにし、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

(2) そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び刊行物2にみられるような周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(3)なお、請求人は、審判請求書の5ページ7ないし20行において、「本発明は、「前記制御器は、該制御器によって提供された選択肢のうちから前記荷役用クランプの操作者によって選択された情報を受信するように作動可能であり、各選択肢がクランプされるべき積荷のそれぞれ異なる積荷タイプ及び幾何学形状を表しており、そして、前記制御器が、それぞれの積荷タイプ及びそれぞれの積荷の幾何学的形状の選択肢を提供可能な端末に作動可能なように接続されており、更に、前記制御器は、前記操作者によって前記端末において選択された複数個の前記選択肢の組み合わせに対して、クランプされるべき特定の積荷に適用可能な所定の特定最適クランプ力設定を可変決定するように作動可能である」との特徴を有し、上記のような操作者が積荷を過度にクランプしてしまうことと過度の自動化制御の間で均衡のとれた微妙なバランスを得るものであり、操作者が積荷を過度にクランプしてしまうことと過度の自動化制御の両問題を解決することが可能となりました。操作者に直接クランプ力を選択させずに、操作者に積荷タイプや幾何学的形状の選択肢を選択させることで、積荷取り扱い技術における自動化という通常の傾向からは離れる結果となりました。 」と主張する。
しかしながら、引用発明に刊行物2にみられるような周知技術を採用したものにおいても、本願発明と同様の構成となる以上、同様の効果を奏するものとなるのであるから、請求人の主張に係る効果は、格別な効果であるとはいえない。

(4)したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2にみられるような周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-20 
結審通知日 2017-02-21 
審決日 2017-03-06 
出願番号 特願2014-545012(P2014-545012)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 筑波 茂樹  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 松下 聡
槙原 進
発明の名称 荷役用クランプのためのインタラクティブなクランプ力制御システム  
代理人 特許業務法人山口国際特許事務所  
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