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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1330656
審判番号 不服2016-16304  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-01 
確定日 2017-08-10 
事件の表示 特願2013- 27830「発光モジュール、発光装置および照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月28日出願公開、特開2014-157920、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月15日の出願であって、平成28年4月18日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月24日付けで手続補正がされ、同年8月1日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年8月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献1-6に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
引用文献1 特開2007-116124号公報
引用文献2 特開2011-90843号公報
引用文献3 特開2013-21042号公報
引用文献4 登録実用新案第3165030号公報
引用文献5 特開2013-30401号公報
引用文献6 国際公開第2012/169407号

第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成28年11月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
発光素子、および蛍光体を含有し前記発光素子を封止する封止樹脂を有する発光部が設けられた平板状の基板と;
前記発光部に対向する透光性を有する平板状のカバーと;
前記発光部より大径でかつ前記基板より小径の環状であり、前記発光部の周囲で前記基板と前記カバーとの間に介在され、前記基板と前記カバーとにそれぞれ接触され、前記発光部と前記カバーが接触しないよう、前記基板と前記カバーの間隔を保持する枠体と;
前記発光部および前記カバーに接して、前記発光部と前記カバーと前記枠体とで形成された空間内であって、前記発光部および前記カバーとの間に介在された透光性を有する樹脂層と;
を具備し、
前記カバーの硬度は、前記樹脂層の硬度以上であり、前記枠体の硬度は、前記樹脂層の硬度以上である
ことを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記カバーの硬度は、前記枠体の硬度以上である
ことを特徴とする請求項1記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記封止樹脂の硬度は、前記樹脂層の硬度以上である
ことを特徴とする請求項1または2記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記カバーは、前記樹脂層側に突出する突出部を有している
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記樹脂層の一部は、前記枠体の外側にはみ出している
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記枠体と前記樹脂層との間に隙間が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の発光モジュール。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか一記載の発光モジュールと;
前記基板を配置する放熱板と;
前記カバーに対向する開口部を有し、前記放熱板との間に前記発光モジュールを配置するケースと;
前記放熱板に前記基板を押える押え部材と;
を具備していることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか一記載の発光モジュールと;
前記基板を配置する放熱板と;
前記カバーの外形より小さく前記カバーが対向する開口部を有し、前記放熱板との間に前記発光モジュールを配置するケースと;
を具備していることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
放熱体と;
前記放熱体に前記放熱板が接するように取り付けられる請求項7または8記載の発光装置と;
を具備していることを特徴とする照明装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に主たる引用文献として引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は、当審で付与したものである。以下、同様。)。

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
立体形状の発光モジュールを透明部材でモールドした電球形ランプでは、LEDチップが発生する熱が透明部材の表面から放熱されやすくなるものの、そのLEDチップが発生する熱は電球形ランプの内部方向へも伝わり、つまり基体の内側に収納されている点灯回路へも伝わり、LEDチップが発生する熱の影響を受けて点灯回路が温度上昇しやすい。
【0007】
LEDチップを点灯させる点灯回路では、例えば、交流を直流に整流する整流回路、この整流回路から出力される直流を所望の電圧に変換してLEDチップに供給するチョッパ回路などを備えたものがある。このような点灯回路において、整流回路の後段やチョッパ回路の出力段に平滑用の電解コンデンサが用いられることがあるが、この電解コンデンサは、電解液を使っており、耐熱性が他の電子部品などに比べて劣るため、点灯回路の温度上昇による影響を受けやすい。
【0008】
電解コンデンサを含めて点灯回路の信頼性や寿命が損なわれないようにするには、LEDチップが発生する熱の影響によって点灯回路が過度に温度上昇するのを防止することが必要となるため、LEDチップに対する入力電力を制限し、電球形ランプの光出力を抑制しなければならない問題がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、点灯回路の信頼性を向上でき、光出力の向上にも対応できる照明装置および照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の照明装置は、半導体発光素子を有する発光モジュールと;発光モジュールを覆うように設けられ、半導体発光素子が発生した熱を自己の表面側に熱伝導して放熱する透光部材と;半導体発光素子を点灯させる点灯回路と;発光モジュールと点灯回路との間に介在された断熱手段と;を具備しているものである。」

「【0012】
発光モジュールは、例えば、半導体発光素子がLEDチップの場合、基板上に配置したLEDチップを蛍光体を混合した透明樹脂で封止するCOB(Chip On Board)方式で実装されるか、LEDチップが搭載された接続端子付きのSMD(Surface Mount Device)パッケージ方式で実装される。発光モジュールの基板が平板状でも、立体形状に形成されていてもよい。
【0013】
透光部材は、例えば、透明なシリコーン樹脂などの透明樹脂が用いられる。透光部材は、その少なくとも一部が発光モジュールに接触し、自己の表面側に熱伝導可能とする。すなわち、透光部材の材料の選択や、発光モジュールの全体を覆うかあるいは一部を残して覆うかは、必要とする放熱程度に応じて設計することができる。また、透光部材中に空洞があるようなものも許容する。また、透光部材は、照明装置の発光表面を構成する所望の形状に一体成形されたものも許容する。また、発光モジュールを囲むように光透過性および光拡散性を有する合成樹脂やガラス製のグローブを設けてもよく、この場合、透光部材は発光モジュールとグローブとの間に設けられる。」

「【0037】
また、グローブ14は、光透過性および光拡散性を有する例えば合成樹脂やガラスなどの材料で、立体形状の発光モジュール13を内包して覆うようにドーム状に形成されている。グローブ14の他端開口の縁部が基体12のグローブ取付部24に接着剤などで取り付けられている。」

「【0050】
点灯時において、発光モジュール13の各発光部29のLEDチップ34から発生する熱は、発光部29から透光部材15に熱伝導されるとともに、LEDチップ34から基板28および支持部27に熱伝導されてから基板28の表面から透光部材15に熱伝導され、この透光部材15からグローブ14に熱伝導され、グローブ14の表面から空気中に放熱される。このとき、発光モジュール13の各発光部29のLEDチップ34からグローブ14までの間に熱伝導率が低い空気層などが存在しないため、LEDチップ34の熱をグローブ14に効率よく熱伝導でき、グローブ14の外面からの高い放熱性を確保することができる。そのため、LEDチップ34の温度上昇を抑制でき、LEDチップ34の寿命を長くできる。」
「【図1】



したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「半導体発光素子を有する発光モジュールと;発光モジュールを覆うように設けられ、半導体発光素子が発生した熱を自己の表面側に熱伝導して放熱する透光部材と;半導体発光素子を点灯させる点灯回路と;発光モジュールと点灯回路との間に介在された断熱手段と;を具備している照明装置であって、
半導体発光素子がLEDチップであり、基板上に配置したLEDチップを蛍光体を混合した透明樹脂で封止し、
基板が平板状に形成され、
発光モジュールを囲むように光透過性および光拡散性を有するガラス製のグローブを設け、透光部材は発光モジュールとグローブとの間に設けられ、
グローブ14の他端開口の縁部が基体12のグローブ取付部24に接着剤などで取り付けられ、
透光部材は、シリコーン樹脂などの透明樹脂が用いられ、
発光モジュール13の各発光部29のLEDチップ34からグローブ14までの間に熱伝導率が低い空気層などが存在しないため、LEDチップ34の熱をグローブ14に効率よく熱伝導でき、グローブ14の外面からの高い放熱性を確保することができる
照明装置。」

2 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0010】
本実施形態の発光装置1は、LEDチップ10と、LEDチップ10が実装された実装基板20と、実装基板20におけるLEDチップ10の実装面側でLEDチップ10を囲む枠体40と、枠体40の内側に透明樹脂材料を充填して形成されてLEDチップ10および当該LEDチップ10に接続されたボンディングワイヤ14,14を封止し且つ弾性を有する封止部50と、LEDチップ10から放射された光によって励起されてLEDチップ10の発光色とは異なる色の光を放射する蛍光体65を含有し封止部50に重ねて配置されたレンズ60とを備えている。なお、発光装置1は、例えば、シリカやアルミナなどのフィラーからなる充填材を含有し且つ加熱時に低粘度化する樹脂シート(例えば溶融シリカを高充填したエポキシ樹脂シートのような有機グリーンシート)からなる絶縁層90を介して金属(例えば、Al、Cuなどの熱伝導率の高い金属)製の器具本体100を介して実装することで、LEDチップ10から器具本体100までの熱抵抗を小さくすることができて放熱性が向上し、LEDチップ10のジャンクション温度の温度上昇を抑制できるから、入力電力を大きくでき、光出力の高出力化を図れる。」

「【0015】
上述の封止部50の透明樹脂材料としては、シリコーン樹脂を用いているが、シリコーン樹脂に限らず、アクリル樹脂などを用いてもよい。
【0016】
これに対して、枠体40は、円筒状の形状であって、透明樹脂の成形品により構成されているが、当該成形品に用いる透明樹脂としては、シリコーン樹脂を採用している。要するに、本実施形態では、封止部50の透明樹脂材料の線膨張率と同等の線膨張率を有する透光性材料により枠体40を形成してある。ここに、本実施形態では、枠体40を実装基板20に固着した後で枠体40の内側に上記透明樹脂材料を充填(ポッティング)して熱硬化させることで封止部50を形成してある。なお、上記透明樹脂材料としてシリコーン樹脂に代えてアクリル樹脂を用いている場合には、枠体40をアクリル樹脂の成形品により構成することが望ましい。」

「【図1】




3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0037】
図9は蛍光樹脂充填工程を示し、枠部材6の開口6a内に蛍光樹脂5を充填する。この蛍光樹脂5の充填は枠部材6の各開口6a内おいて、LED1の周囲及び上部に蛍光樹脂5の層厚が略均一になるように充填する。このことによって図3で説明したように各LED1からの出射光が一様となり、LED発光装置10としてのイエローリングの発生が防止できる。
図10は搭載された複数のLED1の上面を透明樹脂で封止する封止工程であり、回路基板2の実装開口2a周辺の接続電極3a,3bの外側に封止枠8を設け、この封止枠8の内部に透明樹脂12を充填することにより、LED発光装置10が完成する。そしてこの透明樹脂12の充填により回路基板2における実装開口2a内に実装された複数のLED1及びその接続を行うワイヤー9、さらに蛍光樹脂5が被覆保護される。」

「【図10】



4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0017】
前記第1パッケージ材料3は前記パッケージ区域11に設置され、前記第1パッケージ材料3は前記発光ダイオードチップ2を被覆する。前記第1パッケージ材料3はシリコン(Silicone)またはエポキシ樹脂、アクリル、或いはその組み合わせ、または関連の透光性に優れた材質とすることができる。
【0018】
前記第2パッケージ材料4はあらかじめ定めた量の蛍光粉41が混合され、前記第2パッケージ材料4は前記第1パッケージ材料3に重ねて設置される。前記第2パッケージ材料4はシリコン(Silicone)またはエポキシ樹脂、アクリル或いはその組み合わせ、または関連の透光性に優れた材質とすることができる。
【0019】
上述の構造、組み立て設計に基づき、本考案の使用作動状況について以下で説明する。同時に図3、図4、図5の本考案の最良の実施例の断面図、実施を示す立体図1と2を参照する。これらの図からはっきりと分かるように、本考案はパッケージ座体1を含み、発光ダイオードチップ2のパッケージを行うときは、まず発光ダイオードチップ2を前記パッケージ座体1のパッケージ区域11に固定し、第1パッケージ材料3で前記発光ダイオードチップ2上を被覆する。これにより、本考案の半製品が完成し、メーカーはこれら半製品材料を在庫保存して、顧客が必要としない製品を多く製造しすぎることを回避し、顧客の実際のニーズに基づいて第2パッケージ材料4でパッケージできる。前記第2パッケージ材料4にはあらかじめ定めた量の蛍光粉41を混合できるため、本考案は顧客の実際のニーズに基づいて隨時蛍光粉41の量を変え、本考案の発光ダイオードチップ2が発する色温度を制御し、顧客の必要な製品にすることができる。」

「【図3】



5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、小形化を達成することが可能なセラミックス製の基板を用いた発光装置および照明装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態における発光装置は、本体、セラミックス製の基板、透光性のカバー部材を具備する。本体は、熱伝導性部材からなる。セラミックス製の基板は、一面側に固体発光素子が配設され、他面側が本体に配設される。透光性のカバー部材は、基板の一面側に当接する支持部を内面に有し、基板を覆うように本体に取り付けることにより、支持部によって基板を本体に支持する。」

「【0073】
10 発光装置
11 本体
11a1 凹嵌部
12 固体発光素子
13 基板
14 カバー部材
14a 支持部
15 シール部材
16 緩衝部材
20 照明装置
21、31 放熱部材
33 点灯装置 」

「【図3】




6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0067][第1の実施形態] 図1は第1の実施形態にかかる発光装置100の平面図、図2は本実施形態にかかる発光装置100の、図1におけるA-A断面図、図3は本実施形態にかかる伝熱部材の斜視図である。
[0068] 図1、図2を参照して、符号110は内部に発光素子210を配置した開口、120bは熱伝導シート、130は保護部材、140はケース、150は伝熱部材のない領域、230は伝熱部材、260はドーナツ状の領域を示す。なお、保護部材130は、発光装置100の前面の全面にあるが、図1ではその一部を切欠いた状態を示し、内部構成が分かるようにしてある。
[0069] 以下の説明において明らかとなるが、図1における、熱伝導シート120b、または、伝熱部材230が配されたドーナツ状の領域260が、保護部材130すなわち発光面の高温領域となり、伝熱部材のない領域150が発光面の自然の温度状態である低温領域となる。
[0070] 図2を参照して、120a、120bは熱伝導シート、210は発光素子、212ははんだ、214a、bはアルミベース基板の配線層、220はアルミベース基板、222はねじ、230は伝熱部材、240は断熱部材、250は発光装置駆動回路を示す。また、白抜き上向きの矢印は、発光素子から発せられた光の出射方向を示す。
[0071] アルミベース基板220上には複数の発光素子210が搭載されており、各発光素子210は、図中白抜き矢印で示す紙面上方へ光を出射する。本実施形態においては、アルミベース基板が実装基板を構成する。
[0072] アルミベース基板とは、アルミニウム製メタルベースと銅箔配線層を、絶縁層を介して一体化した基板であり、熱伝導性に優れた基板である。アルミベース基板の厚さは、例えば1?2mm程度とする。
[0073] 発光素子210としては、例えばパッケージに封入したSMD(Surface Mount Device)、すなわち表面実装タイプの発光ダイオード(LED)を好適に用いることができる。」

「[図2]

[図3]


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「半導体発光素子」は、本願発明1における「発光素子」に相当し、引用発明において、「半導体発光素子がLEDチップであり、基板上に配置したLEDチップを蛍光体を混合した透明樹脂で封止し」ているから、引用発明の「蛍光体を混合した透明樹脂」は、本願発明1の「蛍光体を含有し前記発光素子を封止する封止樹脂」に相当する。
よって、引用発明の「半導体発光素子を有する発光モジュール」は、本願発明1の「発光素子、および蛍光体を含有し前記発光素子を封止する封止樹脂を有する発光部」に相当する。

イ 引用発明において、半導体発光素子であるLEDチップは基板上に配置され、「基板が平板状に形成され」ているから、引用発明の「基板」は、本願発明1の「発光部が設けられた平板状の基板」に相当する。

ウ 引用発明において、発光モジュールを囲むように光透過性および光拡散性を有するガラス製のグローブを設けているから、引用発明の「グローブ」と、本願発明1の「前記発光部に対向する透光性を有する平板状のカバー」とは、ともに「前記発光部に対向する透光性を有するカバー」の点で共通する。

エ 引用発明の「透光部材は発光モジュールとグローブとの間に設けられ、透光部材は、透明樹脂が用いられ」ているから、上記相当関係を踏まえると、引用発明の「透光部材」と、本願発明1の「前記発光部および前記カバーに接して、前記発光部と前記カバーと前記枠体とで形成された空間内であって、前記発光部および前記カバーとの間に介在された透光性を有する樹脂層」とは、ともに「前記発光部および前記カバーに接して、前記発光部と前記カバーとで形成された空間内であって、前記発光部および前記カバーとの間に介在された透光性を有する樹脂層」の点で共通する。

オ 引用発明において、「ガラス製のグローブ」と「シリコーン樹脂などの透明樹脂が用いられ」る「透光部材」とでは、ガラス製であるグローブの方が硬いことは明らかであるから、引用発明の、「ガラス製のグローブ」と「シリコーン樹脂などの透明樹脂が用いられ」る「透光部材」であることは、本願発明1の「前記カバーの硬度は、前記樹脂層の硬度以上であ」ることに相当する。

カ 引用発明の「基板」、「グローブ」及び「透光部材」を「具備している照明装置」と、本願発明1の「基板」、「カバー」、「枠体」及び「樹脂層」とを具備する「発光モジュール」とは、ともに「基板、カバー及び樹脂層とを具備する発光モジュール」の点で共通する。

キ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「発光素子、および蛍光体を含有し前記発光素子を封止する封止樹脂を有する発光部が設けられた平板状の基板と;
前記発光部に対向する透光性を有する平板状のカバーと;
前記発光部より大径でかつ前記基板より小径の環状であり、前記発光部の周囲で前記基板と前記カバーとの間に介在され、前記基板と前記カバーとにそれぞれ接触され、前記発光部と前記カバーが接触しないよう、前記基板と前記カバーの間隔を保持する枠体と;
前記発光部および前記カバーに接して、前記発光部と前記カバーと前記枠体とで形成された空間内であって、前記発光部および前記カバーとの間に介在された透光性を有する樹脂層と;
を具備し、
前記カバーの硬度は、前記樹脂層の硬度以上であり、前記枠体の硬度は、前記樹脂層の硬度以上である
ことを特徴とする発光モジュール。」

(相違点)
本願発明1は、「前記発光部より大径でかつ前記基板より小径の環状であり、前記発光部の周囲で前記基板と前記カバーとの間に介在され、前記基板と前記カバーとにそれぞれ接触され、前記発光部と前記カバーが接触しないよう、前記基板と前記カバーの間隔を保持する枠体」を具備し、前記枠体は、前記発光部と前記カバーとともに「樹脂層」を介在させる空間を形成する部材であり、「前記枠体の硬度は、前記樹脂層の硬度以上である」るのに対し、引用発明はそのような「枠体」を具備していない点。

(2)相違点についての判断

ア 引用文献1に「枠体40」が記載されているが、「枠体40の内側に透明樹脂材料を充填して形成されてLEDチップ10および当該LEDチップ10に接続されたボンディングワイヤ14,14を封止し且つ弾性を有する封止部50」は、本願発明1の「発光素子を封止する封止樹脂」に対応する部材であるから、引用文献1に記載されている「枠体40」は、本願発明1の前記発光部と前記カバーとともに「樹脂層」を介在させる空間を形成する部材である「枠体」とはいえないものである。
また、「蛍光体65を含有し封止部50に重ねて配置されたレンズ60」は、本願発明1の「発光部に対向する透光性を有する平板状のカバー」とはいえないものであるから、引用文献1に記載されている「枠体40」は、本願発明1の「前記発光部の周囲で前記基板と前記カバーとの間に介在され、前記基板と前記カバーとにそれぞれ接触され、前記発光部と前記カバーが接触しないよう、前記基板と前記カバーの間隔を保持する枠体」とはいえないものである。

イ 引用文献3に記載された「封止枠8」は、「内部に透明樹脂12を充填」するものの、本願発明1の「カバー」に相当する部材がないことから、「封止枠8」は、基板とカバーの間隔を保持する部材ではない。

ウ 引用文献4の【図3】に、第1、2パッケージ材料の周りを囲む突起部がパッケージ座体に設けられていることが見て取れるが、前記突起部の内部に位置する第2パッケージ材料は、蛍光粉41を混合したものであって、本願発明1の「蛍光体を含有し前記発光素子を封止する封止樹脂」に相当するものであり、カバーに相当する部材ではない。また、突起部は、基板(パッケージ座体)とカバーの間隔を保持する部材ではない。

エ 引用文献5には、「セラミックス製の基板、透光性のカバー部材を具備する」記載はあるものの、「枠体」に関する記載はない。

オ 引用文献6の[図2]に、保護部材130(カバーに相当。)とアルミベース基板220(基板に相当。)との間に「伝熱部材230」が見て取れるが、本願発明1の「樹脂層」に相当する部材がなく、「伝熱部材230」は、発光部とカバーとともに「樹脂層」を介在させる空間を形成する部材ではない。
また、引用文献6の「伝熱部材230」は、機能的には、熱を伝達する部材であって、本願発明1の発光部の熱をカバーに伝える「樹脂層」(本願明細書段落【0009】参照。)に相当するものであり、引用文献6に記載された技術事項と本願発明1とは、熱伝達の構成が相違するものである。
よって、引用文献6の「伝熱部材230」は、本願発明1の「枠体」とはいえないものである。

カ 以上のとおり、引用文献1、3ないし6には、本願発明1に記載された「枠体」は記載されていない。

キ また、引用発明は、「グローブ14の他端開口の縁部が基体12のグローブ取付部24に接着剤などで取り付けられ」ているものである。
カバーに相当する「グローブ14」の縁部が取り付けにより固定支持されることで、基板との間隔が保持されていることに鑑みるに、引用発明において、基板とカバーの間隔を保持する枠体をさらに備える動機があるとはいえない。

ク したがって、引用発明において、本願発明1の「枠体」を備える動機はなく、引用文献1、3ないし6に、本願発明1の「枠体」についての記載も示唆もないことから、本願発明1は、引用発明及び引用文献1、3ないし6に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9も、本願発明1の「枠体」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1、3ないし6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
原査定の拒絶の理由は、本願請求項1-11に係る発明は、引用文献1-6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、審判請求時の補正により、本願発明1-9は、相違点に係る「枠体」の構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-27 
出願番号 特願2013-27830(P2013-27830)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 星野 浩一
森 竜介
発明の名称 発光モジュール、発光装置および照明装置  
代理人 河野 仁志  
代理人 熊谷 昌俊  

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