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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1330672
審判番号 不服2016-9239  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-22 
確定日 2017-08-08 
事件の表示 特願2011- 81812「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月 8日出願公開、特開2012-215767、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月1日の出願であって、平成27年3月23日付け、及び平成27年10月29日付けで手続補正がなされ、平成28年3月31日付けで平成27年10月29日付けの手続補正が却下されると同時に、拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年6月22日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、平成29年4月5日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年6月1日付けで手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年3月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
「前記感光体から前記ベルトクリーナ2ーまでの距離」とは、感光体からベルトクリーナーまでの直線距離のことなのか、感光体からベルトクリーナーまでのベルトの周回方向に沿った距離のことなのか不明である。
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 :1?6
・引用文献2:特開2005-258308号公報


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1の「クリーニング処理を実行する」及び「クリーニング処理が実行される」とは、「回収部材に回収された付着物を、各前記回収部材から前記感光体を経由して前記ベルトに転移させ」てから、「ベルトクリーナに除去させる」動作をいうのか、「ベルトクリーナに除去させる」動作のみをいうのか定かでない。
また、「クリーニング処理を実行する」時間及び「クリーニング処理が実行される時間」とは、「回収部材に回収された付着物を、各前記回収部材から前記感光体を経由して前記ベルトに転移させ」てから、「ベルトクリーナに除去させる」までの時間をいうのか、「ベルトクリーナに除去させ」ている間のみの時間をいうのか定かでない。
(2)請求項1の「前記ベルトクリーナの位置を基準として、現像剤像が形成された前記感光体のうちの前記ベルトの周回方向の最上流側に配置される前記感光体が、前記第1感光体であるか前記第2感光体であるかを、前記画像データに基づいて判断する」と画像データによって「ベルトクリーナ」、「第1感光体」、及び「第2感光体」の相対的な配置関係が変わり得るとはどういうことなのか不明である。
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 :1?6
・引用文献1:特開2003-162109号公報


第4 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年6月1日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。(以下「本願発明」という。)

「【請求項1】
単色のトナー像による画像または複数色のトナー像の重ね合わせによる画像を、受信した画像データに基づいてシートに形成する画像形成装置であって、
所定方向に並列に配置されている複数の感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電器と、
前記帯電器に帯電された前記感光体を露光することにより、前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光器と、
前記露光器に露光された前記感光体上の静電潜像にトナーを供給する現像器と、
前記所定方向に走行し、各前記感光体に形成されるトナー像をシートに転写するためのベルトと、
各前記感光体に対応して設けられ、トナー像がシートに転写された後に前記感光体に付着している付着物を回収する複数の回収部材と、
前記ベルトに付着している付着物を除去するベルトクリーナと、
各前記感光体、前記ベルトおよび各前記回収部材を制御して、各前記回収部材に回収された付着物を、各前記回収部材から対応する前記感光体を経由して前記ベルトに転移させてから、前記ベルトクリーナに除去させるクリーニング処理を実行するクリーニング処理実行部と、
シートに形成される画像の色に基づいて、前記クリーニング処理が実行される時間を決定するクリーニング時間決定部とを含み、
前記複数の感光体は、イエローに対応する感光体と、マゼンタに対応する感光体と、シアンに対応する感光体と、ブラックに対応する感光体と、を含み、
前記複数の感光体および前記ベルトクリーナは、前記ベルトの周回方向において、前記ベルトクリーナ、イエローに対応する前記感光体、マゼンタに対応する前記感光体、シアンに対応する前記感光体、ブラックに対応する前記感光体の順に配置され、
前記クリーニング時間決定部は、
シートにカラー画像が形成されたか否かを判断するカラー判断処理と、
前記カラー判断処理においてシートにカラー画像が形成されたと判断した場合に、イエローに対応する前記感光体にトナー像が形成されるか否かを前記画像データに基づいて判断する第1判断処理と、前記第1判断処理においてイエローに対応する前記感光体にトナー像が形成されないと判断した場合、マゼンタに対応する前記感光体にトナー像が形成されるか否かを前記画像データに基づいて判断する第2判断処理と、を含む感光体判断処理と、
前記感光体判断処理の第1判断処理においてイエローに対応する前記感光体にトナー像が形成されると判断した場合、前記クリーニング処理が実行される時間を、前記付着物がイエローに対応する前記感光体に対応する前記回収部材からイエローに対応する前記感光体を介して前記ベルトへ転移させられてから、さらに周回する前記ベルト上の前記付着物が前記ベルトクリーナまで移動するためにかかる第1時間に決定する第1決定処理と、
前記感光体判断処理の第2判断処理において、マゼンタに対応する前記感光体にトナー像が形成されると判断した場合、前記クリーニング処理が実行される時間を、前記付着物がマゼンタに対応する前記感光体に対応する前記回収部材からマゼンタに対応する前記感光体を介して前記ベルトへ転移させられてから、さらに周回する前記ベルト上の前記付着物が前記ベルトクリーナまで移動するためにかかる時間であって、前記第1時間よりも短い時間である第2時間に決定する第2決定処理と、
前記感光体判断処理の第2判断処理において、マゼンタに対応する前記感光体にトナー像が形成されないと判断した場合、前記クリーニング処理が実行される時間を、前記付着物がシアンに対応する前記感光体に対応する前記回収部材からシアンに対応する前記感光体を介して前記ベルトへ転移させられてから、さらに周回する前記ベルト上の前記付着物が前記ベルトクリーナまで移動するためにかかる時間であって、前記第2時間よりも短い時間である第3時間に決定する第3決定処理と、
前記カラー判断処理においてシートにカラー画像が形成されていないと判断した場合に、前記クリーニング処理が実行される時間を第3時間よりも短い第4時間に決定する第4決定処理とを実行する、画像形成装置。」


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成29年4月5日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成15年6月6日に頒布された刊行物である引用文献1(特開2003-162109号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばカラー複写機あるいはカラープリンタ等とされる、感光ドラム等の像坦持体に静電潜像を形成し、その静電潜像を現像することによってカラー画像を形成するカラー画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】カラー画像形成装置では電子写真方式が知られており、その画像形成過程は、まず帯電装置によって感光ドラムを均一に帯電し、レーザまたはLEDによって静電潜像を形成する。次にこの静電潜像をトナーによって現像し、このトナー像を用紙等の記録材に転写する。これをマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの色毎に行い、記録材に重ねたトナー像を熱によって記録材に定着させるという方法でカラー画像を形成している。この過程の中で、転写後に感光ドラム上に残留したトナーはクリーニング装置によって除去している。」
(2)「【0035】(2)カラープリンタ部Aの構成
図1において、Y(イエロー)画像形成部317、M(マゼンタ)画像形成部318、C(シアン)画像形成部319、K(ブラック)画像形成部320は、それぞれクリーナーレスの電子写真画像形成機構であり、像担持体としての感光ドラム342、343、344、345、帯電器321、324、327、330、LED部210、211、212、213、現像器322、325、328、331、補助帯電器360、361、362、363を具備している。」
(3)「【0042】現像器322には、現像バイアスを印加して現像するためのスリーブ345が含まれている。現像器322の図中下方には転写帯電器323が転写部材としての転写ベルト333を挟んで配置され、転写ベルト333の背面から放電を行い、感光ドラム342上のトナー画像を、転写ベルト333上の記録紙などへ転写する。
【0043】この転写後、感光ドラム342上に残留したトナー503は帯電器321に一旦取り込まれ、静電的特性を変化させて再び感光ドラム342上に戻し、現像器322がこれを回収して攪拌し、トナーの静電的特性をマイナスに変えて再利用する。」
(4)「【0046】この後、記録紙等は、転写ベルト333によって搬送され、カラーモードの場合には、画像形成部317?320の各転写帯電器323、326、329、332において、イエローY・マゼンタM・シアンC・ブラックKの順にその表面にトナー画像が重畳転写されてカラートナー画像が合成形成される。」
(5)「【0051】(3)LED画像記録
次に、図3によりLED画像記録について説明する。図3において、画像処理部からの信号は2値変換部201で2値化され、ビデオ信号カウント部220?223に送られる。ビデオ信号カウント部220?223では各色画像毎に、LEDの発光素子総数をカウントすることができる。
【0052】その後2値化された画像信号は、遅延部202、203、204、205において紙先端センサ347とそれぞれの画像形成位置との距離に応じて遅延され、LED駆動206、207、208、209に送られる。LED駆動206、207、208、209はLED210、211、212、213を駆動するための信号を生成する。」
(6)「【0076】(5)その他
1)上記実施例では、帯電器から吐き出したトナーを現像器に回収したが、この時、現像器の動作を止めることにより感光ドラム上の残留トナーを転写ベルト333へ転写して転写ベルトクリーナー380で回収することも可能である。」
(7)図1より、Y(イエロー)画像形成部317、M(マゼンタ)画像形成部318、C(シアン)画像形成部319、K(ブラック)画像形成部320が、所定方向に並列に配置されていることが看取できる。
(8)上記(1)【0002】の「帯電装置」と(2)【0035】の「帯電器」とは、同義であるから、【0002】の「帯電装置」は、「帯電器」と言い換える。また、上記(1)【0002】の「トナー像」と(3)【0042】の「トナー画像」とは、同義であるから、(3)【0042】の「トナー画像」は、「トナー像」と言い換える。また、(1)【0002】及び(5)より、画像処理部からの信号が2値化されLED駆動に送られ、LEDを駆動するための信号が生成されるから、画像処理部からの信号が2値化されLED駆動に送られて、レーザまたはLEDによって静電潜像が形成されるといえる。
(9)上記(4)、(6)及び図1より、複数の感光ドラムおよびベルトクリーナーは、転写ベルトの周回方向において、ベルトクリーナ、イエローに対応する感光体、マゼンタに対応する感光体、シアンに対応する感光体、ブラックに対応する感光体の順に配置されていることが看取できる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「所定方向に並列に配置されているY(イエロー)画像形成部、M(マゼンタ)画像形成部、C(シアン)画像形成部、K(ブラック)画像形成部は、それぞれクリーナーレスの電子写真画像形成機構であり、像担持体としての感光ドラム、帯電器、LED部、現像器、補助帯電器を具備し、
現像器には、現像バイアスを印加して現像するためのスリーブが含まれ、現像器の下方には転写帯電器が転写部材としての転写ベルトを挟んで配置され、
帯電器によって感光ドラムを均一に帯電し、画像処理部からの信号が2値化されLED駆動に送られて、レーザまたはLEDによって静電潜像を形成し、次にこの静電潜像をトナーによって現像し、
転写ベルトの背面から放電を行い、感光ドラム上のトナー像を、転写ベルト上の記録紙などへ転写し、これをマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの色毎に行い、記録材に重ねたトナー像を熱によって記録材に定着させるという方法でカラー画像を形成している電子写真方式のカラー画像形成装置において、
複数の感光ドラムおよびベルトクリーナーは、転写ベルトの周回方向において、ベルトクリーナ、イエローに対応する感光ドラム、マゼンタに対応する感光ドラム、シアンに対応する感光ドラム、ブラックに対応する感光ドラムの順に配置され、
転写後、感光ドラム上に残留したトナーは帯電器に一旦取り込まれ、静電的特性を変化させて再び感光ドラム上に戻し、
現像器の動作を止めることにより感光ドラム上の残留トナーを転写ベルトへ転写して転写ベルトクリーナーで回収する、電子写真方式のカラー画像形成装置。」

2.引用文献2について
原審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成17年9月22日に頒布された刊行物である引用文献2(特開2005-258308号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成された静電潜像をトナーによって現像し、像担持体上の現像されたトナー像を記録媒体に転写することによって画像を形成する画像形成装置に関するものである。」
(2)「【0004】
また、一旦記録媒体に転写されたものの、再び感光体ドラムに付着するトナー(リトランスファートナー)も存在する。なお、カラー画像の形成に対応した画像形成装置では、
異なる色の画像を重ねて転写することによってカラー画像を得るため、転写時に、既に転写済みの他色のトナーが感光体ドラム上に付着することもある。」
(3)「【0029】
なお、本実施の形態における画像形成装置10は、カラー画像の形成にも対応しており、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応するトナー像を形成する画像形成ユニット15Y、15M、15C、15Kがそれぞれ配設されている。以下、各色毎に設けられた部材については、符号の末尾に各々の色を示すアルファベット(Y/M/C/K)を付与して示すが、特に色を区別せずに説明する場合は、この符号末尾のアルファベットを省略して説明する。
【0030】
各画像形成ユニット15により形成された互いに異なる色のトナー像は、中間転写体ベルト14のベルト面上で、互いに重なり合うように中間転写体ベルト14に各々転写される。これにより、中間転写体ベルト14上にカラーのトナー像が形成される。なお、本実施の形態では、このようにして4色のトナー像が重ねて転写されたトナー像を最終トナー像と称する。」
(4)「【0035】
図2には、画像形成ユニット15の構成が示されている。なお、各画像形成ユニット15の構成は同様であるので、ここでは各々の色を示す末尾の符号を省略して説明する。
【0036】
同図に示されるように、画像形成ユニット15は、中間転写体ベルト14に接するように配設され、矢印F方向に所定速度で回転する感光体ドラム16を備えている。
【0037】
各感光体ドラム16の周面には、感光体ドラム16を帯電させるための帯電ローラ18が配置されている。帯電ローラ18は、導電性のローラであり、その周面が感光体ドラム16の周面に接触し、かつ帯電ローラ18の軸線方向と感光体ドラム16の軸線方向とが一致するように配設されている。
【0038】
帯電ローラ18には、DC成分とAC成分とが重畳された所定の電圧(本実施の形態では、DC電圧-500V)が印加され、感光体ドラム16の回転に追従するように回転しながら、感光体ドラム16の表面を所定の電位(本実施の形態では、約-500V)に一様に帯電させる。
【0039】
また、各感光体ドラム16の回転方向Fの帯電ローラ18よりも下流側の周面には、感光体ドラム16上に静電潜像を形成するための露光器20が備えられている。露光器20は、複数のLED(発光ダイオード)が配列されたLEDアレイを含んで構成されており、帯電ローラ18により一様に帯電された感光体ドラム16の軸線方向に、画像データに基づく光ビームを走査しながら照射する。露光器20により光ビームが照射された領域の電位は上昇し(本実施の形態では、約-200V)、感光体ドラム16上に静電潜像が形成される。
【0040】
さらに、各感光体ドラム16の回転方向Fの露光器20よりも下流側の周囲には、感光体ドラム16上に形成された静電潜像を所定色(イエロー/マゼンタ/シアン/ブラック)のトナーによって現像してトナー像を形成させる現像器22が配設されている。なお、本実施の形態では、負極性であるトナー及び正極性であるキャリアの二成分を含む現像剤が適用されている。また、現像効率及び後述する転写効率を向上させるためには、トナーの粒状は球形であることが好ましい。」
(5)「【0047】
そこで、感光体ドラム16の周面の転写ローラ25よりも下流側には、感光体ドラム16上の転写残トナー又はリトランスファートナーを一時的に保持するクリーニングロール24が配置されている。

【0049】
なお、負極性の転写残トナーについては、クリーニングロール24では回収されず、感光体ドラム16上に付着したまま感光体ドラム16に対する帯電及び露光が行なわれ、非画像部に付着している転写残トナーについては、現像器22の現像ローラ38に付着したキャリア及びトナーとの摺擦により現像器22内に回収される。
【0050】
クリーニングロール24によって回収されたリトランスファートナーは、ジョブが終了した場合等の非画像形成時に実行されるクリーニングモードによって、感光体ドラム16上に吐き出される。
【0051】
クリーニングモードでは、クリーニングロール24は正極性(本実施の形態では、+500V)に帯電されると共に、感光体ドラム16の回転方向とは異なる方向に(感光体ドラム16の回転に追従するように)回転される。これにより、クリーニングロール24に保持されていた正極性のリトランスファートナーが感光体ドラム16上に吐き出される。
【0052】
このようにして感光体ドラム16上に吐き出されたリトランスファートナーは、感光体ドラム16の回転により転写位置まで搬送される。
【0053】
クリーニングモードでは、転写ローラ25は負極性に帯電されるようになっており、転写位置まで搬送されたリトランスファートナーは、転写ローラ25によって中間転写体ベルト14上に転写され、中間転写体ベルト14によってクリーナ32へと搬送され、クリーナ32のブレード34によって擦り取られる。」
(6)図1より、複数の感光体ドラムおよびクリーナのブレードは、中間転写体ベルトの周回方向において、クリーナのブレード、イエローに対応する感光体ドラム、マゼンタに対応する感光体ドラム、シアンに対応する感光体ドラム、ブラックに対応する感光体ドラムの順に配置されていることが看取できる。

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「像担持体上に形成された静電潜像をトナーによって現像し、像担持体上の現像されたトナー像を記録媒体に転写することによって画像を形成する画像形成装置であって、
カラー画像の形成にも対応しており、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応するトナー像を形成する画像形成ユニット15Y、15M、15C、15Kがそれぞれ配設され、複数の感光体ドラムおよびクリーナのブレードは、中間転写体ベルトの周回方向において、クリーナのブレード、イエローに対応する感光体ドラム、マゼンタに対応する感光体ドラム、シアンに対応する感光体ドラム、ブラックに対応する感光体ドラムの順に配置され、
各画像形成ユニットにより形成された互いに異なる色のトナー像は、中間転写体ベルトのベルト面上で、互いに重なり合うように中間転写体ベルトに各々転写され、これにより、中間転写体ベルト上にカラーのトナー像が形成され、
各画像形成ユニットの構成は同様であって、
画像形成ユニットは、中間転写体ベルトに接するように配設され、所定速度で回転する感光体ドラムを備え、
各感光体ドラムの周面には、感光体ドラムを帯電させるための帯電ローラが配置され、
各感光体ドラムの回転方向の帯電ローラよりも下流側の周面には、感光体ドラム上に静電潜像を形成するための露光器が備えられ、露光器は、画像データに基づく光ビームを走査しながら照射し、
各感光体ドラムの回転方向の露光器よりも下流側の周囲には、感光体ドラム上に形成された静電潜像を所定色(イエロー/マゼンタ/シアン/ブラック)のトナーによって現像してトナー像を形成させる現像器が配設され、
感光体ドラムの周面の転写ローラよりも下流側には、感光体ドラム上の転写残トナー又はリトランスファートナーを一時的に保持するクリーニングロールが配置され、
負極性の転写残トナーについては、クリーニングロールでは回収されず、感光体ドラム上に付着したまま感光体ドラムに対する帯電及び露光が行なわれ、非画像部に付着している転写残トナーについては、現像器の現像ローラに付着したキャリア及びトナーとの摺擦により現像器内に回収され、
クリーニングロールによって回収されたリトランスファートナーは、ジョブが終了した場合等の非画像形成時に実行されるクリーニングモードによって、感光体ドラム上に吐き出され、
感光体ドラム上に吐き出されたリトランスファートナーは、感光体ドラムの回転により転写位置まで搬送され、
転写位置まで搬送されたリトランスファートナーは、転写ローラによって中間転写体ベルト上に転写され、中間転写体ベルトによってクリーナへと搬送され、クリーナのブレードによって擦り取られる、画像形成装置。」


第6 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
(1)後者の「トナー像」、「カラー画像」、「記録材」、「電子写真方式のカラー画像形成装置」、「感光ドラム」、「帯電器」、「LED部」、「現像器」、「転写ベルト」、及び「ベルトクリーナー」は、それぞれ、前者の「トナー像」、「画像」、「シート」、「画像形成装置」、「感光体」、「感光体を帯電させる帯電器」、「帯電器に帯電された感光体を露光することにより、感光体の表面に静電潜像を形成する露光器」、「露光器に露光された感光体上の静電潜像にトナーを供給する現像器」、「所定方向に走行し、各前記感光体に形成されるトナー像をシートに転写するためのベルト」、及び「ベルトに付着している付着物を除去するベルトクリーナ」に相当する。
(2)後者の「電子写真方式のカラー画像形成装置」は、画像処理部からの信号が2値化されLED駆動に送られて、レーザまたはLEDによって静電潜像が形成され、この静電潜像をトナーによって現像し、転写ベルトの背面から放電を行い、感光ドラム上のトナー像を、転写ベルト上の記録紙などへ転写し、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの色毎に、記録材に重ねたトナー像を熱によって記録材に定着させてカラー画像を形成するものであるから、「複数色のトナー像の重ね合わせによる画像を、受信した画像データに基づいてシートに形成する画像形成装置」といえる。
(3)後者の「感光ドラム」は、所定方向に並列に配置されているY(イエロー)画像形成部、M(マゼンタ)画像形成部、C(シアン)画像形成部、K(ブラック)画像形成部に備えられたものであるから、「所定方向に並列に配置されている複数の感光体」といえ、「複数の感光体は、イエローに対応する感光体と、マゼンタに対応する感光体と、シアンに対応する感光体と、ブラックに対応する感光体と、を含」むといえる。
(4)後者の「所定方向に並列に配置されているY(イエロー)画像形成部、M(マゼンタ)画像形成部、C(シアン)画像形成部、K(ブラック)画像形成部は、それぞれクリーナーレスの電子写真画像形成機構」であり、「帯電器を具備し」、「転写後、感光ドラム上に残留したトナーは帯電器に一旦取り込まれ」るものであるから、後者の「帯電器」は、「各感光体に対応して設けられ、トナー像がシートに転写された後に感光体に付着している付着物を回収する複数の回収部材」といえる。
(5)後者の「転写後、感光ドラム上に残留したトナーは帯電器に一旦取り込まれ、静電的特性を変化させて再び感光ドラム上に戻し、現像器の動作を止めることにより感光ドラム上の残留トナーを転写ベルトへ転写して転写ベルトクリーナーで回収する」ことは、前者の「各感光体、ベルトおよび各回収部材を制御して、各回収部材に回収された付着物を、各回収部材から対応する感光体を経由してベルトに転移させてから、ベルトクリーナに除去させるクリーニング処理」に相当するから、後者の「電子写真方式のカラー画像形成装置」は、前者の「クリーニング処理実行部」を有するといえる。
(6)後者の「複数の感光ドラムおよびベルトクリーナー」は、転写ベルトの周回方向において、ベルトクリーナ、イエローに対応する感光ドラム、マゼンタに対応する感光ドラム、シアンに対応する感光ドラム、ブラックに対応する感光ドラムの順に配置されているから、「複数の感光体およびベルトクリーナは、ベルトの周回方向において、ベルトクリーナ、イエローに対応する感光体、マゼンタに対応する感光体、シアンに対応する感光体、ブラックに対応する感光体の順に配置され」ているといえる。

したがって、両者は、
「単色のトナー像による画像または複数色のトナー像の重ね合わせによる画像を、受信した画像データに基づいてシートに形成する画像形成装置であって、
所定方向に並列に配置されている複数の感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電器と、
前記帯電器に帯電された前記感光体を露光することにより、前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光器と、
前記露光器に露光された前記感光体上の静電潜像にトナーを供給する現像器と、
前記所定方向に走行し、各前記感光体に形成されるトナー像をシートに転写するためのベルトと、
各前記感光体に対応して設けられ、トナー像がシートに転写された後に前記感光体に付着している付着物を回収する複数の回収部材と、
前記ベルトに付着している付着物を除去するベルトクリーナと、
各前記感光体、前記ベルトおよび各前記回収部材を制御して、各前記回収部材に回収された付着物を、各前記回収部材から対応する前記感光体を経由して前記ベルトに転移させてから、前記ベルトクリーナに除去させるクリーニング処理を実行するクリーニング処理実行部と、
前記複数の感光体は、イエローに対応する感光体と、マゼンタに対応する感光体と、シアンに対応する感光体と、ブラックに対応する感光体と、を含み、
前記複数の感光体および前記ベルトクリーナは、前記ベルトの周回方向において、前記ベルトクリーナ、イエローに対応する前記感光体、マゼンタに対応する前記感光体、シアンに対応する前記感光体、ブラックに対応する前記感光体の順に配置される、画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明が、「シートに形成される画像の色に基づいて、前記クリーニング処理が実行される時間を決定するクリーニング時間決定部とを含み」、「前記クリーニング時間決定部は、シートにカラー画像が形成されたか否かを判断するカラー判断処理と、前記カラー判断処理においてシートにカラー画像が形成されたと判断した場合に、イエローに対応する前記感光体にトナー像が形成されるか否かを前記画像データに基づいて判断する第1判断処理と、前記第1判断処理においてイエローに対応する前記感光体にトナー像が形成されないと判断した場合、マゼンタに対応する前記感光体にトナー像が形成されるか否かを前記画像データに基づいて判断する第2判断処理と、を含む感光体判断処理と、前記感光体判断処理の第1判断処理においてイエローに対応する前記感光体にトナー像が形成されると判断した場合、前記クリーニング処理が実行される時間を、前記付着物がイエローに対応する前記感光体に対応する前記回収部材からイエローに対応する前記感光体を介して前記ベルトへ転移させられてから、さらに周回する前記ベルト上の前記付着物が前記ベルトクリーナまで移動するためにかかる第1時間に決定する第1決定処理と、前記感光体判断処理の第2判断処理において、マゼンタに対応する前記感光体にトナー像が形成されると判断した場合、前記クリーニング処理が実行される時間を、前記付着物がマゼンタに対応する前記感光体に対応する前記回収部材からマゼンタに対応する前記感光体を介して前記ベルトへ転移させられてから、さらに周回する前記ベルト上の前記付着物が前記ベルトクリーナまで移動するためにかかる時間であって、前記第1時間よりも短い時間である第2時間に決定する第2決定処理と、前記感光体判断処理の第2判断処理において、マゼンタに対応する前記感光体にトナー像が形成されないと判断した場合、前記クリーニング処理が実行される時間を、前記付着物がシアンに対応する前記感光体に対応する前記回収部材からシアンに対応する前記感光体を介して前記ベルトへ転移させられてから、さらに周回する前記ベルト上の前記付着物が前記ベルトクリーナまで移動するためにかかる時間であって、前記第2時間よりも短い時間である第3時間に決定する第3決定処理と、前記カラー判断処理においてシートにカラー画像が形成されていないと判断した場合に、前記クリーニング処理が実行される時間を第3時間よりも短い第4時間に決定する第4決定処理とを実行する」ものであるのに対し、引用発明1は、その点明らかでない点。

2.相違点についての判断
相違点に係る本願発明の発明特定事項は、上記引用発明1には記載されていないし、設計的事項といえる理由もない。
そして、本願発明は、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項により、「そこで、クリーニング処理が実行される時間(クリーニング時間)の長さは、シートに形成される画像の色に基づいて決定される。たとえば、シートに単色の画像が形成される場合、その現像剤像が形成された感光体の位置に基づいて、クリーニング時間の長さが決定されるとよい。これにより、クリーニング時間を現像剤像が形成された感光体の位置からベルトクリーナまでの所定方向の長さに応じた適切な時間に設定することができる。
よって、クリーニング処理に長い時間が無駄に費やされることを防止でき、クリーニング処理前の画像形成動作の終了からクリーニング処理後の画像形成動作の開始までの時間を短くすることができる。」(【0012】及び【0013】参照。)という作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

なお、後記「第8 2.」で示すように、原審で提示された上記引用文献2を見ても、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は記載されていない。


第7 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第2号)について
当審では、請求項1の「クリーニング処理を実行する」、「クリーニング処理が実行される」、「クリーニング処理を実行する」時間、「クリーニング処理が実行される時間」、「前記ベルトクリーナの位置を基準として、現像剤像が形成された前記感光体のうちの前記ベルトの周回方向の最上流側に配置される前記感光体が、前記第1感光体であるか前記第2感光体であるかを、前記画像データに基づいて判断する」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年6月1日付けの補正において、
「各前記感光体、前記ベルトおよび各前記回収部材を制御して、各前記回収部材に回収された付着物を、各前記回収部材から対応する前記感光体を経由して前記ベルトに転移させてから、前記ベルトクリーナに除去させるクリーニング処理を実行するクリーニング処理実行部と、
シートに形成される画像の色に基づいて、前記クリーニング処理が実行される時間を決定するクリーニング時間決定部とを含み」
、及び
「前記クリーニング時間決定部は、
シートにカラー画像が形成されたか否かを判断するカラー判断処理と、
前記カラー判断処理においてシートにカラー画像が形成されたと判断した場合に、イエローに対応する前記感光体にトナー像が形成されるか否かを前記画像データに基づいて判断する第1判断処理と、前記第1判断処理においてイエローに対応する前記感光体にトナー像が形成されないと判断した場合、マゼンタに対応する前記感光体にトナー像が形成されるか否かを前記画像データに基づいて判断する第2判断処理と、を含む感光体判断処理と、
前記感光体判断処理の第1判断処理においてイエローに対応する前記感光体にトナー像が形成されると判断した場合、前記クリーニング処理が実行される時間を、前記付着物がイエローに対応する前記感光体に対応する前記回収部材からイエローに対応する前記感光体を介して前記ベルトへ転移させられてから、さらに周回する前記ベルト上の前記付着物が前記ベルトクリーナまで移動するためにかかる第1時間に決定する第1決定処理と、
前記感光体判断処理の第2判断処理において、マゼンタに対応する前記感光体にトナー像が形成されると判断した場合、前記クリーニング処理が実行される時間を、前記付着物がマゼンタに対応する前記感光体に対応する前記回収部材からマゼンタに対応する前記感光体を介して前記ベルトへ転移させられてから、さらに周回する前記ベルト上の前記付着物が前記ベルトクリーナまで移動するためにかかる時間であって、前記第1時間よりも短い時間である第2時間に決定する第2決定処理と、
前記感光体判断処理の第2判断処理において、マゼンタに対応する前記感光体にトナー像が形成されないと判断した場合、前記クリーニング処理が実行される時間を、前記付着物がシアンに対応する前記感光体に対応する前記回収部材からシアンに対応する前記感光体を介して前記ベルトへ転移させられてから、さらに周回する前記ベルト上の前記付着物が前記ベルトクリーナまで移動するためにかかる時間であって、前記第2時間よりも短い時間である第3時間に決定する第3決定処理と、
前記カラー判断処理においてシートにカラー画像が形成されていないと判断した場合に、前記クリーニング処理が実行される時間を第3時間よりも短い第4時間に決定する第4決定処理とを実行する」
と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第8 原査定についての判断
1.特許法第36条第6項第2号違反について
原審では、請求項1の「前記感光体から前記ベルトクリーナ2ーまでの距離」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年6月1日付けの補正において、上記記載は削除された結果、この拒絶の理由は、解消された。

2.特許法第29条第2項違反について
本願発明と引用発明2とを対比すると、
(1)後者の「トナー像」、「カラー画像」、「記録媒体」、「画像形成装置」、「感光体ドラム」、「帯電ローラ」、「露光器」、「現像器」、「中間転写体ベルト」、「クリーニングロール」、及び「クリーナのブレード」は、それぞれ、前者の「トナー像」、「画像」、「シート」、「画像形成装置」、「感光体」、「感光体を帯電させる帯電器」、「帯電器に帯電された感光体を露光することにより、感光体の表面に静電潜像を形成する露光器」、「露光器に露光された感光体上の静電潜像にトナーを供給する現像器」、「所定方向に走行し、各前記感光体に形成されるトナー像をシートに転写するためのベルト」、「回収部材」、及び「ベルトに付着している付着物を除去するベルトクリーナ」に相当する。
(2)後者の「画像形成装置」は、像担持体上に形成された静電潜像をトナーによって現像し、像担持体上の現像されたトナー像を記録媒体に転写することによって画像を形成するものであって、各画像形成ユニットにより形成された互いに異なる色のトナー像は、中間転写体ベルトのベルト面上で、互いに重なり合うように中間転写体ベルトに各々転写され、これにより、中間転写体ベルト上にカラーのトナー像が形成されるものであるから、「複数色のトナー像の重ね合わせによる画像を、受信した画像データに基づいてシートに形成する画像形成装置」といえる。
(3)後者の「複数の感光体ドラムおよびクリーナのブレード」は、「中間転写体ベルトの周回方向において、クリーナのブレード、イエローに対応する感光体ドラム、マゼンタに対応する感光体ドラム、シアンに対応する感光体ドラム、ブラックに対応する感光体ドラムの順に配置され」ているものであるから、「複数の感光体は、イエローに対応する感光体と、マゼンタに対応する感光体と、シアンに対応する感光体と、ブラックに対応する感光体と、を含み、前記複数の感光体およびベルトクリーナは、ベルトの周回方向において、前記ベルトクリーナ、イエローに対応する前記感光体、マゼンタに対応する前記感光体、シアンに対応する前記感光体、ブラックに対応する前記感光体の順に配置される」といえる。
(4)後者の「クリーニングロール」は、感光体ドラムの周面の転写ローラよりも下流側に配置され、感光体ドラム上の転写残トナー又はリトランスファートナーを一時的に保持するものであるから、「各感光体に対応して設けられ、トナー像がシートに転写された後に感光体に付着している付着物を回収する複数の回収部材」といえる。
(5)後者の「クリーニングロールによって回収されたリトランスファートナーは、ジョブが終了した場合等の非画像形成時に実行されるクリーニングモードによって、感光体ドラム上に吐き出され、感光体ドラム上に吐き出されたリトランスファートナーは、感光体ドラムの回転により転写位置まで搬送され、転写位置まで搬送されたリトランスファートナーは、転写ローラによって中間転写体ベルト上に転写され、中間転写体ベルトによってクリーナへと搬送され、クリーナのブレードによって擦り取られる」ことは、前者の「各感光体、ベルトおよび各回収部材を制御して、各回収部材に回収された付着物を、各回収部材から対応する感光体を経由してベルトに転移させてから、ベルトクリーナに除去させるクリーニング処理」に相当するから、後者の「画像形成装置」は、前者の「クリーニング処理実行部」を有するといえる。
(6)後者の「複数の感光体ドラムおよびクリーナのブレード」は、中間転写体ベルトの周回方向において、クリーナのブレード、イエローに対応する感光体ドラム、マゼンタに対応する感光体ドラム、シアンに対応する感光体ドラム、ブラックに対応する感光体ドラムの順に配置されているから、「複数の感光体およびベルトクリーナは、ベルトの周回方向において、ベルトクリーナ、イエローに対応する感光体、マゼンタに対応する感光体、シアンに対応する感光体、ブラックに対応する感光体の順に配置され」ているといえる。

したがって、両者は、
「単色のトナー像による画像または複数色のトナー像の重ね合わせによる画像を、受信した画像データに基づいてシートに形成する画像形成装置であって、
所定方向に並列に配置されている複数の感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電器と、
前記帯電器に帯電された前記感光体を露光することにより、前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光器と、
前記露光器に露光された前記感光体上の静電潜像にトナーを供給する現像器と、
前記所定方向に走行し、各前記感光体に形成されるトナー像をシートに転写するためのベルトと、
各前記感光体に対応して設けられ、トナー像がシートに転写された後に前記感光体に付着している付着物を回収する複数の回収部材と、
前記ベルトに付着している付着物を除去するベルトクリーナと、
各前記感光体、前記ベルトおよび各前記回収部材を制御して、各前記回収部材に回収された付着物を、各前記回収部材から対応する前記感光体を経由して前記ベルトに転移させてから、前記ベルトクリーナに除去させるクリーニング処理を実行するクリーニング処理実行部と、
前記複数の感光体は、イエローに対応する感光体と、マゼンタに対応する感光体と、シアンに対応する感光体と、ブラックに対応する感光体と、を含み、
前記複数の感光体および前記ベルトクリーナは、前記ベルトの周回方向において、前記ベルトクリーナ、イエローに対応する前記感光体、マゼンタに対応する前記感光体、シアンに対応する前記感光体、ブラックに対応する前記感光体の順に配置される、画像形成装置。」
の点で一致し、上記「第6 対比・判断 1.対比」における[相違点]と同じ点で相違する。

そして、上記「第6 対比・判断 2.相違点についての判断」で検討したとおり、上記[相違点]は、いずれの引用発明にも記載されていないし、設計的事項といえる理由もない。

したがって、本願発明は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-26 
出願番号 特願2011-81812(P2011-81812)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野口 聖彦松本 泰典  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 画像形成装置  

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