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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1330706
審判番号 不服2016-9600  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-28 
確定日 2017-07-27 
事件の表示 特願2012- 16570「洗濯乾燥機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月15日出願公開、特開2013-153928〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月30日の出願であって、平成27年9月30日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年12月3日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成28年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年6月28日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年6月28日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年6月28日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1ないし3を、補正前の
「 【請求項1】
洗い、すすぎ、脱水および乾燥の洗濯乾燥運転を実行するための複数の洗濯機負荷と、
これらの洗濯機負荷を制御して前記洗濯乾燥運転を実行させる複数の制御部を有する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応する制御部に対してその期間内に電源供給を遮断する期間を設けるとともに、乾燥運転中の洗濯機負荷を使用する期間においては前記洗濯機負荷に対応する制御部に対して電源供給を遮断する期間を設けない制御を行うことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
洗い、すすぎ、脱水および乾燥の洗濯乾燥運転を実行するための複数の洗濯機負荷と、
これらの洗濯機負荷を制御して前記洗濯乾燥運転を実行させる複数のマイクロコンピュータを有する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してその期間内にクロックパルスの供給を停止させる期間を設けるとともに、乾燥運転中の洗濯機負荷を使用する期間においては前記洗濯機負荷に対応する前記マイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してクロックパルスの供給を停止させる期間を設けない制御を行うことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
洗い、すすぎ、脱水および乾燥の洗濯乾燥運転を実行するための複数の洗濯機負荷と、
これらの洗濯機負荷を制御して前記洗濯乾燥運転を実行させる複数のマイクロコンピュータを有する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してその期間内にクロックパルスの供給を低下させる期間を設けるとともに、乾燥運転中の洗濯機負荷を使用する期間においては前記洗濯機負荷に対応する前記マイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してクロックパルスの供給を低下させる期間を設けない制御を行うことを特徴とする洗濯乾燥機。」
から、補正後の
「 【請求項1】
洗い、すすぎ、脱水および乾燥の洗濯乾燥運転を実行するための複数の洗濯機負荷と、
これらの洗濯機負荷を制御して前記洗濯乾燥運転を実行させる複数のマイクロコンピュータを有する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータに対してその期間内に電源供給を遮断する期間を設けるとともに、乾燥運転中の洗濯機負荷を使用する期間においては前記洗濯機負荷に対応する前記マイクロコンピュータに対して電源供給を遮断する期間を設けない制御を行うものであり、
前記制御装置が有する複数のマイクロコンピュータのうちの1つは、乾燥運転を実行させるための洗濯機負荷としてのヒートポンプのコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御するマイクロコンピュータであり、
洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷とは、洗濯運転中は使用しない前記コンプレッサモータであることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
洗い、すすぎ、脱水および乾燥の洗濯乾燥運転を実行するための複数の洗濯機負荷と、
これらの洗濯機負荷を制御して前記洗濯乾燥運転を実行させる複数のマイクロコンピュータを有する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してその期間内にクロックパルスの供給を停止させる期間を設けるとともに、乾燥運転中の洗濯機負荷を使用する期間においては前記洗濯機負荷に対応する前記マイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してクロックパルスの供給を停止させる期間を設けない制御を行うものであり、
前記制御装置が有する複数のマイクロコンピュータのうちの1つは、乾燥運転を実行させるための洗濯機負荷としてのヒートポンプのコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御するマイクロコンピュータであり、
洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷とは、洗濯運転中は使用しない前記コンプレッサモータであることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
洗い、すすぎ、脱水および乾燥の洗濯乾燥運転を実行するための複数の洗濯機負荷と、
これらの洗濯機負荷を制御して前記洗濯乾燥運転を実行させる複数のマイクロコンピュータを有する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してその期間内にクロックパルスの供給を低下させる期間を設けるとともに、乾燥運転中の洗濯機負荷を使用する期間においては前記洗濯機負荷に対応する前記マイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してクロックパルスの供給を低下させる期間を設けない制御を行うものであり、
前記制御装置が有する複数のマイクロコンピュータのうちの1つは、乾燥運転を実行させるための洗濯機負荷としてのヒートポンプのコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御するマイクロコンピュータであり、
洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷とは、洗濯運転中は使用しない前記コンプレッサモータであることを特徴とする洗濯乾燥機。」
へと変更する補正事項を含むものである(下線は、補正箇所を示す。)。

2 補正の目的
上記補正事項は、
(1)補正前の請求項1ないし3に係る発明を特定する事項である「制御装置が有する複数のマイクロコンピュータ」について「ヒートポンプのコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御するマイクロコンピュータ」を含むことに限定するもの、
(2)補正前の請求項1ないし3に係る発明を特定する事項である「洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷」について、「コンプレッサモータ」に限定するもの、
(3)請求項1は、さらに、補正前の請求項1係る発明を特定する事項である「制御部」について「マイクロコンピュータ」に限定するもの、
であって、補正前の請求項1ないし3に記載された発明と補正後の請求項1ないし3に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1ないし3に記載された発明(以下「本願補正発明1」等という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明1ないし3
本願補正発明1ないし3は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、それぞれ上記「第2 1 補正の内容」の補正後の請求項1ないし3に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-296450号公報(以下「引用文献1」という。)及び特開平9-191569号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 引用文献1 (下線は当審で付与)
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗濯物を攪拌する洗濯モータと、前記洗濯モータを制御する洗濯制御回路と、圧縮機と熱交換器を有し前記被洗濯物の乾燥時に除湿動作を行うヒートポンプと、前記圧縮機を制御する圧縮機制御回路と、使用者による操作を受付け又前記使用者への表示を出力する操作/表示回路とを備え、前記洗濯制御回路と前記圧縮機制御回路と前記操作/表示回路のそれぞれに個別のマイクロコンピュータを配した洗濯乾燥機。」

(イ)「【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯乾燥機は、被洗濯物を攪拌する洗濯モータと、前記洗濯モータを制御する洗濯制御回路と、圧縮機と熱交換器を有し前記被洗濯物の乾燥時に除湿動作を行うヒートポンプと、前記圧縮機を制御する圧縮機制御回路と、使用者による操作を受付け又前記使用者への表示を出力する操作/表示回路とを備え、前記洗濯制御回路と前記圧縮機制御回路と前記操作/表示回路のそれぞれに個別のマイクロコンピュータを配したもので、洗濯モータ、圧縮機、操作/表示回路のそれぞれの制御を各マイクロコンピュータが分担して行うことになり、各マイクロコンピュータの仕事が抑えられ、処理遅れによる誤動作を防ぎ、安定して動作する信頼性の高い洗濯乾燥機を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗濯乾燥機は、洗濯モータ、圧縮機、操作/表示回路のそれぞれの制御を各マイクロコンピュータが分担して行うことになり、各マイクロコンピュータの仕事が抑えられ、処理遅れによる誤動作を防ぎ、安定して動作する信頼性の高いものとなる。」

(ウ)「【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯乾燥機の断面図を示すものである。
【0021】
図1において、本実施の形態における洗濯乾燥機は、被洗濯物である衣類41を収納する洗濯槽42と、洗濯槽42の回転軸43に直軸に接続され洗濯槽42を回転する洗濯モータ44と、乾燥工程時に衣類41の除湿動作を行うヒートポンプ50を有し、ヒートポンプ50は、圧縮機45と、吸熱する第1の熱交換器46と、発熱する第2の熱交換器47と、キャピラリチューブ48から構成されている。
【0022】
さらに、第1、第2の熱交換器46、47と洗濯槽42の間の空気を風路51内に循環して移動させる送風手段52を有している。」

(エ)「【0024】
そして、洗濯モータ44を駆動する第1の駆動回路55と、圧縮機45を駆動する第2の駆動回路56が接続されている。」

(オ)「【0029】
洗濯制御回路70は、第1の整流回路58と、第1の駆動回路55と、第1の駆動回路55を制御するマイクロコンピュータ71により構成されている。」

(カ)「【0031】
圧縮機制御回路76は、第2の駆動回路56と、第2の整流回路59と、第2の駆動回路56を制御するマイクロコンピュータ77により構成されている。
【0032】
ここで、マイクロコンピュータ71、73、77は、いずれも図示しないROM(読み出し専用メモリ)、RAM(読み書き可能なメモリ)、中央処理器、入出力ポート、発振回路などを備えており、前記発振回路からのクロック信号を受け、ROMに書き込まれたプログラムに従い、制御の動作を進めていくものである。」

(キ)「【0035】
第2の通信手段81は、洗濯制御回路70のマイクロコンピュータ71と、圧縮機制御回路76のマイクロコンピュータ77の間に設けられており、乾燥動作など圧縮機45を駆動する必要が生じた場合に、動作指令を洗濯制御回路70から圧縮機制御回路76に送る他、例えば高圧の圧力の上がり過ぎや圧縮機45の過電流時など、なんらかの原因で圧縮機45が停止した場合などには、その状況が圧縮機制御回路76から洗濯制御回路70に伝えられるという作用が行われるものとなっている。」

(ク)上記記載事項(ア)ないし(キ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「被洗濯物を攪拌する洗濯モータと、前記洗濯モータを制御する洗濯制御回路と、圧縮機と熱交換器とを有し前記被洗濯物の乾燥時に除湿動作を行うヒートポンプと、前記圧縮機を制御する圧縮機制御回路とを備え、前記洗濯制御回路と前記圧縮機制御回路のそれぞれに個別のマイクロコンピュータを配した洗濯乾燥機であって、
マイクロコンピュータは、ROM(読み出し専用メモリ)、RAM(読み書き可能なメモリ)、中央処理器、入出力ポート、発振回路などを備えており、前記発振回路からのクロック信号を受け、ROMに書き込まれたプログラムに従い、制御の動作を進めていくものであり、
第2の通信手段は、洗濯制御回路のマイクロコンピュータと、圧縮機制御回路のマイクロコンピュータの間に設けられており、乾燥動作など圧縮機を駆動する必要が生じた場合に、動作指令を洗濯制御回路から圧縮機制御回路に動作指令を送る、洗濯乾燥機。」

イ 引用文献2 (下線は当審で付与)
(ア)「【請求項9】 マイコンを有する電子機器の消費電力を低減させるような低消費電力装置において、
外部イベントおよび内部イベントを受け付け可能とされ、
マイコンの動作は、CPUが通常のクロック周波数で動作する通常動作モードと、上記CPUが動作していない休止モードと上記通常のクロック周波数より低いクロック周波数で上記CPUが動作している低クロック動作モードとの間の遷移が間欠的に繰り返される低消費電力動作モードとから成り、
上記外部イベントまたは上記内部イベントに基づいて、上記低消費電力動作モードから上記通常動作モードへと遷移させることを特徴とする低消費電力装置。」
(イ)「【請求項19】 請求項9に記載の低消費電力装置において、
上記マイコンが複数搭載され、
上記複数のマイコンのうち通常動作モードでの動作が必要無いマイコンは低消費電力動作モードに遷移させることを特徴とする低消費電力装置。」

(ウ)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばビデオカセットレコーダのような電子機器の消費電力を低減させるような低消費電力装置に関する。」

(エ)「【0048】次に、上述の電源の制御と併用することでより装置の消費電力を低減することができる、マイコン13の低消費電力動作について説明する。このマイコン13の低消費電力動作は、スイッチ2が開放状態とされた待機状態において用いるとより効果的なものである。
【0049】マイコン13を低消費電力動作させるためには、スリープモード,ストップモード,メインクロック分周動作モード,およびサブクロック動作モードの4種類の動作モードが考えられる。マイコン13がこれらのどのモードで動作するかは、ソフトウェアで設定可能である。図8は、マイコン13の内部構成およびこれらの各モードにおけるマイコン13の動作を示す。マイコン13は、例えば16MHzのクロック周波数を有するメインクロックおよびメインクロックより遅い例えば32KHzのクロック周波数を有するサブクロックとの、2つのクロックで動作することができる。」

(オ)「【0053】これらの、マイコン13を構成する各部の動作状態は、上述の各動作モードによってそれぞれ異なる。図8Aに示されるスリープモードにおいては、サブクロックを生成する発振回路46が動作しており、マイコン13のCPUクロックおよび周辺ハードウェア42に対するクロックがスピードの遅いサブクロックから供給される。一方、メインクロックを生成する発振回路41が停止状態とされており、タイミングジェネレータ43およびCPU44が共に停止状態とされる。また、周辺ハードウェア42は、その機能の一部のみが動作状態とされる。
【0054】図8Bに示されるストップモードにおいては、メインクロックおよびサブクロックの何れも停止状態とされる。したがって、タイミングジェネレータ43およびCPU44は、共に停止状態となっている。周辺ハードウェア42は、その一部の機能のみが動作状態とされる。
【0055】図8Cに示されるメインクロック分周動作モードにおいては、メインクロックおよびサブクロックの何れも生成され、これらのクロックは、周辺ハードウェア42およびタイミングジェネレータ43に供給される。そして、タイミングジェネレータ43に供給されたメインクロックは、タイミングジェネレータ43において例えば1MHzに分周され、より遅いクロックとされてCPU44に供給される。
【0056】図8Dに示されるサブクロック動作モードにおいては、メインクロックが停止状態とされ、サブクロックだけが生成される。このサブクロックが周辺ハードウェア42およびタイミングジェネレータ43を介してCPU44に対して供給される。したがって、マイコン13は、このサブクロックに基づき動作する。」

(カ)「【0102】一方、この機器の電源オン時には、複数あるサブマイコン51_(1) ,51_(2) ,・・・,51_(N) の全てが常に動作している必要があるとは限らない。例えば、サブマイコン51_(1)および51_(2) のみの動作が必要な場合や、あるいは、メインマイコン50のみが動作し、サブマイコン51_(1) ,51_(2) ,・・・,51_(N) 何れの動作も必要では無い場合も考えられる。このような場合に、動作の必要が無いサブマイコンをメインクロックによる通常動作をさせてしまうと、無駄に電力を消費してしまうことになる。
【0103】そこで、この実施の一形態の変形例では、メインマイコン50の制御によって、動作する必要の無いサブマイコンを低消費電力動作させ待機状態とする。そして、通信やポート制御によって、待機状態とされたサブマイコンに対してメインクロックによる通常動作状態への遷移の要求がなされた場合、そのサブマイコンをサブクロックによる低消費電力動作状態からメインクロックによる通常動作状態に戻す。」

(キ)「【0106】なお、上述では、この発明がビデオカセットレコーダに適用されるように説明したが、これはこの例に限定されるものではない。この発明は、電源オフ時に待機状態となり、特定のイベントをトリガとして待機状態から復帰し電源オンとなるような機器であれば、他の電子機器にも適用できるものである。例えば、リモートコントローラによって電源のオン/オフを指示するようなテレビジョン受像機やオーディオ機器に対してこの発明を適用することができる。また、電話やファックス装置に対してこの発明を適用した場合、例えば、電話のコールをトリガとすることによって、これらの機器における所定の機能を起動させることができる。」

(ク)上記記載事項(ア)ないし(キ)を総合すると、引用文献2には、次の技術的事項が記載されている。

A「複数のマイコンを有する機器において、消費電力を低減するために、動作の必要の無いマイコンのクロックを低いクロック周波数とし、当該マイコンを低消費電力動作状態とすること。」(以下「引用文献2記載の技術的事項1」という。)

B「消費電力を低減するために、動作の必要の無いマイコンのクロックを生成する発振回路を停止状態とし、CPUを停止状態とすること。」(以下「引用文献2記載の技術的事項2」という。)

(3)本願補正発明3について
ア 本願補正発明3と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「被洗濯物を攪拌する洗濯モータ」及び「圧縮機」は、本願補正発明3の「洗い、すすぎ、脱水および乾燥の洗濯乾燥運転を実行するための複数の洗濯機負荷」に相当し、引用発明の「圧縮機」は、本願補正発明3の「コンプレッサ」にも相当する。

(イ)引用発明の「洗濯制御回路」と「圧縮機制御回路」の「それぞれに個別」に配された「マイクロコンピュータ」は、本願補正発明3の「洗濯機負荷を制御し前記洗濯乾燥運転を実行させる複数のマイクロコンピュータ」に相当し、引用発明の「洗濯制御回路」及び「圧縮機制御回路」は、本願補正発明3の「洗濯機負荷を制御して前記洗濯乾燥運転を実行させる複数のマイクロコンピュータを有する制御装置」に相当する。

(ウ)引用発明の「発振回路」及び「クロック信号」は、本願補正発明3の「クロックパルス発生回路」及び「クロックパルス」に相当する。

(エ)引用発明の「圧縮機と熱交換器とを有し前記被洗濯物の乾燥時に除湿動作を行うヒートポンプ」は、本願補正発明3の「乾燥運転を実行させるための洗濯機負荷としてのヒートポンプ」に相当する。

(オ)引用発明において、「乾燥動作など圧縮機を駆動する必要が生じた場合に、動作指令を洗濯制御回路から圧縮機制御回路に動作指令を送る」とされていること、並びに、圧縮機は、乾燥時に動作し、洗濯時等の乾燥時以外には動作しないこと及び圧縮機の駆動源にモータを用いることは技術常識であることを踏まえると、引用発明の圧縮制御回路に配された「マイクロコンピュータ」は、本願補正発明3の「洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータ」及び「乾燥運転を実行させるための洗濯機負荷としてのヒートポンプのコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御するマイクロコンピュータ」といえ、引用発明の「圧縮機」は、本願補正発明3でいう「洗濯運転中は使用しないコンプレッサモータ」を備えているものといえる。

イ よって、本願補正発明3と引用発明とは、
「洗い、すすぎ、脱水および乾燥の洗濯乾燥運転を実行するための複数の洗濯機負荷と、
これらの洗濯機負荷を制御して前記洗濯乾燥運転を実行させる複数のマイクロコンピュータを有する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータを有し、
前記制御装置が有する複数のマイクロコンピュータのうちの1つは、乾燥運転を実行させるための洗濯機負荷としてのヒートポンプのコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御するマイクロコンピュータであり、
洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷とは、洗濯運転中は使用しない前記コンプレッサモータである洗濯乾燥機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明3の洗濯乾燥機は、「制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してその期間内にクロックパルスの供給を低下させる期間を設けるとともに、乾燥運転中の洗濯機負荷を使用する期間においては前記洗濯機負荷に対応する前記マイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してクロックパルスの供給を低下させる期間を設けない制御を行う」のに対して、引用発明の圧縮機制御回路に配されたマイクロコンピュータは、発振回路からのクロック信号を受けて動作するものの、そのようなクロック信号の供給の低下についての制御が特定されていない点(以下「相違点1」という。)。

ウ そこで、上記[相違点1]について検討する。
洗濯衣類乾燥機において、待機電力を抑制するなどの消費電力を抑えることは、周知の課題である(必要であれば、特開2009-148648号公報の段落0090等参照。)。
また、引用発明において、圧縮機制御回路に配されたマイクロコンピュータは、圧縮機が動作していない期間に、圧縮機が動作しているときと同じ動作を行うと、暗電流(待機電力)が消費されることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
そうすると、引用発明において、洗濯乾燥機の待機電力を抑制させるために、引用文献2記載の技術的事項1である「複数のマイコンを有する機器において、消費電力を低減するために、動作の必要の無いマイコンのクロックを低いクロック周波数とし、当該マイコンを低消費電力動作状態とすること。」を採用し、上記相違点1に係る本願補正発明3の構成とすることは、当業者であれば、容易になし得たことである。
そして、本願補正発明3の奏する効果についてみても、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項1から当業者が予測できる範囲内のものである。

(4)本願補正発明1及び2について
本願補正発明1及び2について検討すると、本願補正発明1と引用発明とは、本願補正発明1は、「制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータに対してその期間内に電源供給を遮断する期間を設けるとともに、乾燥運転中の洗濯機負荷を使用する期間においては前記洗濯機負荷に対応する前記マイクロコンピュータに対して電源供給を遮断する期間を設けない制御を行うもの」である点で相違する(以下「相違点2」という。)。
また、本願補正発明2と引用発明とは、本願補正発明2は、「制御装置は、前記洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷に対応するマイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してその期間内にクロックパルスの供給を停止させる期間を設けるとともに、乾燥運転中の洗濯機負荷を使用する期間においては前記洗濯機負荷に対応する前記マイクロコンピュータのクロックパルス発生回路に対してクロックパルスの供給を停止させる期間を設けない制御を行うもの」である点で相違する(以下「相違点3」という。)。

相違点2及び3について検討すると、本願補正発明3で検討したことと同様に、引用発明において、洗濯乾燥機の待機電力を抑制させるために、引用文献2記載の技術的事項2である「消費電力を低減するために、動作の必要の無いマイコンのクロックを生成する発振回路を停止状態とし、CPUを停止状態とさせること。」を採用し、または、電源供給自体を遮断し、マイクロコンピュータを停止状態となすことにより、上記相違点2及び3に係る構成とすることは、当業者であれば、容易になし得たことである。

そして、本願補正発明1及び2の奏する効果についてみても、引用発明、引用文献2記載の技術的事項2から当業者が予測できる範囲内のものである。
よって、本願補正発明1及び2は、引用発明、引用文献2記載の技術的事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(6)小括
したがって、本願補正発明1ないし3は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明(以下「本願発明1」等という。)は、平成27年12月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正前の請求項1ないし3参照。)により特定されるとおりのものと認める。

2 引用文献の記載事項及び引用発明
引用文献の記載事項及び引用発明は、上記「第2 3(2)引用文献の記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明1ないし3は、前記「第2 3 独立特許要件」で検討した本願補正発明から、制御装置が有する複数のマイクロコンピュータについて、「ヒートポンプのコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御するマイクロコンピュータ」に補正することの限定を省いたもの及び洗濯乾燥運転の実行中に使用しない期間を有する洗濯機負荷について、「コンプレッサモータ」に補正することの限定を省いたものである。
また、本願発明1は、さらに、前記「第2 3 独立特許要件」で検討した本願補正発明1から、「制御装置」について、「マイクロコンピュータ」に補正することの限定を省いたものである。
そして、本願発明3と引用発明とを対比すると、両者は前記「第2 3 (3)本願補正発明3について」の相違点1で相違し、該相違点1は、「第2 3 (3)本願補正発明3について」で示したように当業者が容易になし得たことであり、また、本願発明1及び本願発明2と引用発明とを対比すると、それぞれ「第2 3 (4)本願補正発明1及び2について」の相違点2または3で相違し、該相違点についは「第2 3 (4)本願補正発明1及び2について」で示したように当業者が容易になし得たことであるので、本願発明1ないし3は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし3は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-29 
結審通知日 2017-05-30 
審決日 2017-06-15 
出願番号 特願2012-16570(P2012-16570)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D06F)
P 1 8・ 575- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武井 健浩遠藤 邦喜  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 窪田 治彦
莊司 英史
発明の名称 洗濯乾燥機  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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