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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1330707 |
審判番号 | 不服2016-9726 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-29 |
確定日 | 2017-07-27 |
事件の表示 | 特願2012-258983「内視鏡及び内視鏡システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 9日出願公開、特開2014-104138〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成24年11月27日を出願日とする出願であって,平成27年7月21日付けで拒絶理由が通知され,同年9月14日に手続補正がなされ,平成28年3月23日付けで拒絶査定がなされ,同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。 さらに,平成29年2月13日付で当審から拒絶理由が通知され,同年4月17日に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?9に係る発明は,平成29年4月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されたものであって,その請求項5に係る発明は,次のとおりであると認める。 「 【請求項5】 被検体の体腔内に挿入可能な筒形形状を有して形成された挿入部と, 前記挿入部の先端部において,前記筒形形状を呈する当該挿入部の内部に配設され,前記体腔内に存在する被写体を照明するための照明光を,前記先端部の前方へ照射するように構成された照明光照射部と, 前記照明光照射部から出射される前記照明光の戻り光を受光する受光部と, 前記挿入部の先端部と一体にまたは別体に設けられ,前記体腔内に存在する病変部の治療に用いられる治療光を照射するように構成された治療光照射部と, 前記治療光照射部の端部に設けられ,前記治療光を拡散して照射するように形成された光拡散部と, を有し, 前記照明光照射部は,照明光供給部から供給される前記照明光を伝送して端部から出射する照明光伝送部と,所定の走査パターンに応じた軌跡を描くように前記照明光伝送部の前記端部を揺動させる光走査部とを有する ことを特徴とする内視鏡。」(以下,「本願発明5」という。) 本願発明5は,以下のとおり当審にて,分節しA)?G)の見出しを付けた。 「A) 被検体の体腔内に挿入可能な筒形形状を有して形成された挿入部と, B) 前記挿入部の先端部において,前記筒形形状を呈する当該挿入部の内部に配設され,前記体腔内に存在する被写体を照明するための照明光を,前記先端部の前方へ照射するように構成された照明光照射部と, C) 前記照明光照射部から出射される前記照明光の戻り光を受光する受光部と, D) 前記挿入部の先端部と一体にまたは別体に設けられ,前記体腔内に存在する病変部の治療に用いられる治療光を照射するように構成された治療光照射部と, E) 前記治療光照射部の端部に設けられ,前記治療光を拡散して照射するように形成された光拡散部と, を有し, F) 前記照明光照射部は,照明光供給部から供給される前記照明光を伝送して端部から出射する照明光伝送部と,所定の走査パターンに応じた軌跡を描くように前記照明光伝送部の前記端部を揺動させる光走査部とを有する G) ことを特徴とする内視鏡。」 第3 原査定についての判断 1 引用文献,引用発明について (1) 本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された文献である特開昭61-71039号公報(以下,「引用文献1)という。)には,「レーザプローブ」について次の事項が記載されている。 (1-ア) 「2.特許請求の範囲 (1)光透過材料でほぼ球形中空形状の光拡散部を先端に設け,この光拡散部内に光散乱媒質を封入する一方,手元側から前記光拡散部内に導光ファイバーを挿入して該ファイバーのレーザ光出射端を球形中空形状の光拡散部の略中心に配置したことを特徴とするレーザプローブ。」(第1頁左下欄4行?10行) (1-イ) 「[発明の技術分野] 本発明は,腫瘍を消失させるため体腔内の該腫瘍に向けてレーザ光を照射するレーザプローブに関するものである。」(第3頁左下欄20行?同頁右下欄3行) (1-ウ) 「[発明の目的] 本発明は,これらの事情に鑑みてなされたもので,レーザ光を極めて広範囲に且つ均一な強度で拡散照射することができるようにして体腔内に広範囲に発生ずる表在性腫瘍等のレーザ光照射による治療・消失を短時間で行えるようにしたレーザープローブを提供することを目的としている。」(第2頁左上欄13行?19行) (1-エ) 「[発明の実施例] 以下,図面を参照して本発明の詳細な説明する。 第1図および第2図は本発明レーザプローブの第一実施例に係り,第1図は断面図,第2図は使用状態を示す説明図である。 ・・・ このように,体腔内のほぼ中心に本発明のレーザプローブ1の球形中空形状の光拡散部5を位置させることにより,光拡散部5を体腔内で走査することなしに体腔内全体へ均一強度でレーザ光を照射でき,レーザ光照口1による腫瘍の治療を短時間で行える。又,レーザプローブ1先端部2の光拡散部5はねじにより着脱でき,従ってその交換,及び封入した光散乱媒質8の交換等を容易に行える。更に,レーザプローブ1は,既存のシース18に組付けて使用できるので,安全,確実且つ容易に体腔内に挿入できる。」(第2頁右上欄16行?第3頁左下欄15行) (1-オ) 「第3図には本発明の第二実施例に係る断面図が示されている。この実施例は,前述の第一実施例と同一構成のレーザプローブ1を内視鏡26に使用するものである。この内視鏡26は硬性及び軟性のいずれにも使用可能であり,該内視鏡26は,手元側の把持部を兼ねた操作部と挿入部と先端構成部27とからなり,図示しない照明光学系と観察光学系28とを有し,挿入した体腔内25を観察できるようになっている。そして,この内視鏡26は操作部から挿入部を経て先端構成部27端面に至る鉗子チャンネル29を有し,本発明のレーザプローブ1はこの鉗子チャンネル29を通して体腔内25に挿入される。この内視鏡26による実施では,内視鏡観察下での治療が可能であり,光拡散部5の位置,及びレーザ光照射状況が常時把握でき,安全且つ確実に治療を行うことができる。」(第3頁左下欄16行?右下欄12行) (1-カ) 図3 (1-キ)内視鏡26の先端構成部27が,円筒形であることは自明であるから,図3から内視鏡26の円筒形である先端構成部27の内部に観察光学系28が,配設されて おり,先端構成部27の前方を観察すること見て取れる。また,レーザプローブ1先端に光拡散部5が位置していることもみてとれる。 上記(1-ア)?(1-キ)及び刊行物1全体を総合すると,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「a) 手元側の把持部を兼ねた操作部と挿入部と円筒形である先端構成部27とからな内視鏡26であって, b) 照明光学系と先端構成部27の前方を観察する観察光学系28とを有し,円筒形である先端構成部27の内部に観察光学系28が,配設されており,挿入した体腔内25を観察できるよにうになっており, c) この内視鏡26は操作部から挿入部を経て先端構成部27端面に至る鉗子チャンネル29を有し, d) レーザプローブ1はこの鉗子チャンネル29を通して体腔内25に挿入され, e) 体腔内のほぼ中心にレーザプローブ1先端の球形中空形状の光拡散部5を位置させることにより体腔内全体へ均一強度でレーザ光を照射でき腫瘍の治療を短時間で行える f) 内視鏡26。」 (2)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2011-101665号公報(以下,「引用文献2」という。)には,「電子内視鏡システム」について,図面とともに次の事項が記載されている。 (2-ア) 「【0005】 そこで,固体撮像素子自体を不要とした構造を採用することによって,従来型の固体撮像素子を搭載した電子内視鏡よりも細径化させることが可能な光走査型電子内視鏡が提案されている。この種の光走査型電子内視鏡を有する電子内視鏡システムの一例が,特許文献2に開示されている。特許文献2に記載の光走査型電子内視鏡は,単一の光ファイバの先端を共振させて所定の走査光により対象物を所定の走査パターンで走査する。かかる光走査型電子内視鏡は,対象物からの反射光を検出して光電変換しビデオプロセッサに順次出力する。ビデオプロセッサは,光電変換された信号を処理して画像化しモニタに出力する。医師は,このようにして得られた体腔内の映像をモニタを通じて観察し検査や施術等を行うことができる。」 (2-イ) 「【0023】 シングルモードファイバ先端部30の出射端から出射された結合光は,観察対象部位において反射し,再び光走査型電子内視鏡100の先端部に進行して受光用ファイバ40に入射する。受光用ファイバ40は複数本設けられ,光走査型電子内視鏡100のシース39外周に円環状に配置されており,外被チューブ41によってシース39と挟まれるように被覆されている。反射光は,受光用ファイバ40を伝搬してビデオプロセッサ200内の光分離器5に到達する。光分離器5は,受光用ファイバ40によって伝搬される反射光をR,G,B,Oに対応する各波長の光へと分離するための光分離部である。また,検出器6a?6dは,光分離器5によって分離されたλ1,λ2,λ3,λ4の波長の光をそれぞれ検出し,光電変換によりR光信号,G光信号,B光信号,そしてO光信号に変換する。」 2 対比・判断 ア 本願発明5のA)の特定事項について アー1 引用発明の「a) 手元側の把持部を兼ねた操作部と挿入部と円筒形である先端構成部27とからな内視鏡26」は「e) 体腔内のほぼ中心にレーザプローブ1の球形中空形状の光拡散部5を位置させることにより体腔内全体へ均一強度でレーザ光を照射でき腫瘍の治療を短時間で行える f) 内視鏡26。」である。 アー2 内視鏡で治療する腫瘍は,被検体の体腔内にあるものといえるので,内視鏡の先端構成部27は,被検体の体腔内に挿入可能であることは自明である。 アー3 そうすると引用発明の「a)円筒形である先端構成部27」は,本願発明5の「A) 被検体の体腔内に挿入可能な筒形形状を有して形成された挿入部」に相当する。 イ 本願発明5のB),C),F)の特定事項について イー1 引用発明は「b) 照明光学系と先端構成部27の前方を観察する観察光学系28とを有し,円筒形である先端構成部27の内部に観察光学系28が,配設されており,挿入した体腔内25を観察できるようになって」いるものである。 イー2 そうすると,引用発明の「b)照明光学系」は先端構成部27の前方を観察するための照明光を照射するのであるから,先端構成部27の前方に照射するといえる。 イー3 上記イー2,ア-2に照らせば引用発明の「b)照明光学系」は,腫瘍を発見し治療する体腔内の視野領域に,先端構成部27において照明光を前方へ照射するものであるから, 引用発明の「b)照明光学系」と, 本願発明5の「B) 前記挿入部の先端部において,前記筒形形状を呈する当該挿入部の内部に配設され,前記体腔内に存在する被写体を照明するための照明光を,前記先端部の前方へ照射するように構成された照明光照射部」,「F) 前記照明光照射部は,照明光供給部から供給される前記照明光を伝送して端部から出射する照明光伝送部と,所定の走査パターンに応じた軌跡を描くように前記照明光伝送部の前記端部を揺動させる光走査部とを有する」とは, 「前記挿入部の先端部において,前記体腔内に存在する被写体を照明するための照明光を,前記先端部の前方へ照射するように構成された照明光照射部」で共通する。 イー4 一方,引用発明の「b)観察光学系28」は,「先端構成部27の前方を観察する」ものであり,「円筒形である先端構成部27の内部に,配設されており」,「挿入した体腔内25を観察できるようになって」いるのであり,観察する光は,照明光学系から照射され体腔内の領域から戻ってくる光であるから,その光を受ける部分を備えていることは自明である。 イー5 そうすると,引用発明の「b)観察光学系28」の光を受ける部分は,本願発明5の「C) 前記照明光照射部から出射される前記照明光の戻り光を受光する受光部」に相当する。 ウ 本願発明5のD)の特定事項について 引用発明の「c) この内視鏡26は操作部から挿入部を経て先端構成部27端面に至る鉗子チャンネル29を有し, d) レーザプローブ1はこの鉗子チャンネル29を通して体腔内25に挿入され, e) 体腔内のほぼ中心にレーザプローブ1先端の球形中空形状の光拡散部5を位置させることにより体腔内全体へ均一強度でレーザ光を照射でき腫瘍の治療を短時間で行える」ものである。 ウ-1 そうすると,引用発明の「レーザプローブ1」は,「e)レーザ光を照射でき腫瘍の治療を短時間で行える」のであるから,本願発明5の「D)治療光照射部」に相当する。 ウ-2 また,引用発明の「レーザプローブ1」は「鉗子チャンネル29」の「c)先端構成部27端面」から「d)体腔内25に挿入され」のであるから,本願発明5の「D)挿入部の先端部と別体に設けら」れているといえる。 ウー3 ウー1,ウー2より,引用発明の「レーザプローブ1」は,本願発明5の「D) 前記挿入部の先端部と一体にまたは別体に設けられ,前記体腔内に存在する病変部の治療に用いられる治療光を照射するように構成された治療光照射部」に相当する。 エ 本願発明5のE)の特定事項について 引用発明の「球形中空形状の光拡散部5」は「レーザプローブ1先端」にあり,「e) 体腔内のほぼ中心に」「位置させることにより体腔内全体へ均一強度でレーザ光を照射でき」るのであるから,本願発明5の「E) 前記治療光照射部の端部に設けられ,前記治療光を拡散して照射するように形成された光拡散部」に相当する。 オ 本願発明5のG)の特定事項について 上記ア?エより,引用発明の「f) 内視鏡26。」は本願発明5のA)?F)の特定事項に対応する構成を備えているので本願発明の「G)内視鏡。」に相当する。 カ そうすると,本願発明5と引用発明とは, (一致点) 「被検体の体腔内に挿入可能な筒形形状を有して形成された挿入部と, 前記挿入部の先端部において,前記体腔内に存在する被写体を照明するための照明光を,前記先端部の前方へ照射するように構成された照明光照射部と, 前記照明光照射部から出射される前記照明光の戻り光を受光する受光部と, 前記挿入部の先端部と別体に設けられ,前記体腔内に存在する病変部の治療に用いられる治療光を照射するように構成された治療光照射部と, 前記治療光照射部の端部に設けられ,前記治療光を拡散して照射するように形成された光拡散部と, を有する内視鏡。」 である点で一致し,以下の点で相違するといえる。 (相違点) 「照明光照射部」について,本願発明5は,「当該挿入部の内部に配設され」, 「照明光供給部から供給される前記照明光を伝送して端部から出射する照明光伝送部と,所定の走査パターンに応じた軌跡を描くように前記照明光伝送部の前記端部を揺動させる光走査部とを有する」のに対して, 引用発明は,そのような特定がされていない点。 (1)相違点についての検討 「照明光供給部から供給される前記照明光を伝送して端部から出射する照明光伝送部と,所定の走査パターンに応じた軌跡を描くように前記照明光伝送部の前記端部を揺動させる光走査部とを有する照明光照射部」は,例えば引用文献2に,「【0005】・・・光走査型電子内視鏡は,単一の光ファイバの先端を共振させて所定の走査光により対象物を所定の走査パターンで走査する。」と記載されている。 そして,内視鏡において挿入部を細径化させることは周知の課題である。 そうすると,引用発明の「照明光照射部」として挿入部の細径化のために上記周知の技術事項を採用することは,当業者が容易に想到するものといえ,内視鏡において照明光照射部を挿入部の内部に設けることが慣用されている技術事項であることに鑑みれば,その具体化において「挿入部の内部に配設され」るように構成することは,当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない。 (2)そして,本願発明5の作用効果は,引用文献1記載の事項,及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず,格別顕著なものともいえない。 (3)したがって,本願発明5は,引用発明,及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。 (4)小括 以上のとおり,本願発明5は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その他の理由について検討するまでもなく,本願発明5は特許を受けることができない。 第4 当審拒絶理由についての検討 上記「第3」のとおり本願発明5は特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,当審拒絶理由を検討するまでもなく,本願発明5は特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり,本願発明5は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-29 |
結審通知日 | 2017-05-30 |
審決日 | 2017-06-14 |
出願番号 | 特願2012-258983(P2012-258983) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 樋熊 政一 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
信田 昌男 郡山 順 |
発明の名称 | 内視鏡及び内視鏡システム |
代理人 | 篠浦 治 |
代理人 | 伊藤 進 |
代理人 | 長谷川 靖 |