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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1330713
審判番号 不服2017-335  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-11 
確定日 2017-07-27 
事件の表示 特願2015-249605「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月24日出願公開、特開2016- 40635〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権出張を伴う平成26年6月23日(優先日、平成25年8月10日)に特許出願した特願2014-128148号の一部を、平成27年12月22日に新たな特許出願としたものであって、手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年12月22日付け: 上申書の提出
平成28年 8月 1日付け: 拒絶理由の通知
平成28年 9月20日付け: 意見書及び手続補正書の提出
平成28年11月22日付け: 拒絶の査定
平成29年 1月11日付け: 審判請求書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
平成29年1月11日付け手続補正書による補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項4ないし6を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除に該当する。また、当該補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定にも適合する。
そして、本件特許出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年1月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
記録材を収容する記録材収容部と、
前記記録材収容部から搬送された記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により記録材に形成されたトナー像を熱定着する定着部と、
前記記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部と、
画像形成装置の近傍の所定の位置に操作者が存在することを検出する検出部と、
画像形成命令を受ける前に前記検出部が操作者の存在を検出したことに伴い前記定着部の立上げ処理を先行して開始させるとともに、前記定着部の立上げ処理を前記格納部に格納された情報に応じた時間に亘って実行させる実行部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。」

第3 刊行物の記載事項
1 特開2009-37208号公報(以下「引用文献1」という。)
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同様。)。

(1)「【請求項1】
画像形成装置において、
加熱されることによりトナー画像を媒体に定着させる定着手段と、
前記画像形成装置に対する所定の操作を検知する検知手段と、
前記定着手段の動作を制御するエンジン制御手段と、
前記エンジン制御手段との間で所定の開通処理を行うことにより使用可能となる通信線と、前記通信線と別個に設けられた専用線とを介して前記エンジン制御手段と接続された通信制御手段と、を備え、
前記通信制御手段は、前記検知手段から、前記操作を検知したことを示す検知信号を受信し、前記検知信号を受信した場合に、ユーザによる前記画像形成装置の操作を検知したことを示すユーザ操作信号を、前記開通処理の完了前に前記専用線を介して前記エンジン制御手段に送出し、
前記エンジン制御手段は、前記ユーザ操作信号を受信したか否かを判断し、前記ユーザ操作信号を受信したと判断した場合に前記定着手段を加熱するように制御すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記定着手段への電力の供給を停止または制限する状態である省エネモードの解除を指示する省エネ解除スイッチであり、
前記通信制御手段は、前記省エネ解除スイッチの押下を検知したことを示す前記検知信号を前記省エネ解除スイッチから受信すること、を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。」

(2)「【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電源投入時や省エネモード復帰時において迅速に画像形成することができるとともに、無駄な定着部の加熱を行うことがない画像形成装置、および定着加熱制御方法を提供することを目的とする。」

(3)「画像形成装置」の技術分野において、一般に、「画像形成装置」が「媒体を収容する媒体収容部と、前記媒体収容部から搬送された媒体にトナー像を形成する画像形成部」を備えることは技術常識であるから、上記ア に示された「画像形成装置」においても、上記の「媒体を収容する媒体収容部」と「前記媒体収容部から搬送された媒体にトナー像を形成する画像形成部」を備えていることは自明である。

(4)上記(1)において、「省エネ解除スイッチの押下を検知」したときに「定着手段を加熱する」場合、「エンジン制御手段」は、画像形成命令を受ける前に「省エネ解除スイッチの押下を検知したこと」を示す「ユーザ操作信号」を受信し、定着手段の加熱、つまり立上げ処理を、画像形成命令に対して先行して開始していることは自明である。

上記(1)ないし(4)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「媒体を収容する媒体収容部と、
前記媒体収容部から搬送された媒体にトナー像を形成する画像形成部と、
加熱されることによりトナー画像を媒体に定着させる定着手段と、
前記画像形成装置に対する所定の操作を検知する検知手段と、
前記定着手段の動作を制御するエンジン制御手段と、
通信制御手段と、を備え、
前記通信制御手段は、前記検知手段から、前記操作を検知したことを示す検知信号を受信し、前記検知信号を受信した場合に、ユーザによる前記画像形成装置の操作を検知したことを示すユーザ操作信号を、前記エンジン制御手段に送出し、
前記エンジン制御手段は、前記ユーザ操作信号を受信したと判断した場合に前記定着手段を加熱するように制御し、
前記検知手段は、前記定着手段への電力の供給を停止または制限する状態である省エネモードの解除を指示する省エネ解除スイッチであり、
前記通信制御手段は、前記省エネ解除スイッチの押下を検知したことを示す前記検知信号を前記省エネ解除スイッチから受信し、
省エネモード復帰時において迅速に画像形成することができ、
エンジン制御手段は、画像形成命令を受ける前に前記省エネ解除スイッチの押下を検知したことを示すユーザ操作信号を受信し、定着手段の立上げ処理を、画像形成命令に対して先行して開始する、
画像形成装置。」

2 特開2006-30823号公報(以下「引用文献2」という。)
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献2には、以下の記載がある。

(1)「【請求項1】
印刷命令を受け付ける受付手段と、
複数の給紙カセットと、各給紙カセットに収納される用紙の種類を対応付けて記憶する記憶手段と、
給紙カセットが指定されると、指定された給紙カセットと対応付けて記憶された用紙の種類に基いて、上記受付手段が印刷命令を受け付けるまでの間、定着ローラが保持されるデフォルト定着温度を決定する温度決定手段と、
上記受付手段が印刷命令を受け付けるまで、デフォルト定着温度で定着ローラを保持する温度制御手段とを備えたこと特徴とする画像形成装置。」

(2)「【0003】
定着温度は、用紙の厚みなど用紙の種類等によって異なる。そのため、通常は普通紙に対応する定着温度で定着ローラを保持し、実施に印刷を行う際に印刷に使用される用紙に対応する定着温度まで定着ローラを上昇または低下させる形態が従来の画像形成装置に採られている。このような技術は、特開2003-15461号公報に開示されている。この公報には、印刷を行う際に用紙の厚みを検知して、検知した厚みに対応する温度まで定着ローラを上昇または低下させてから、印刷を行うことが記載されている。」
【0004】
しかし、上記公報に記載のように印刷を行う際に用紙の厚みに応じて定着温度を変更する場合、定着ローラが用紙の厚みに対応する定着温度になるまで印刷が実行できないので、印刷効率が低い。」

(3)「【0019】
ユーザによって、例えば頻繁に使用する薄紙が収納された給紙カセットCが操作パネル105で指定されると、上記温度決定手段303は、記憶手段306に給紙カセットCに対応付けられたデータに基いて温度を決定する。」

(4)「【0024】
このように、給紙カセットを指定すると、その後、ユーザが指定した給紙カセットに収納される用紙の定着温度で定着ローラ208が保持される。
【0025】
上記のように薄紙の定着温度で定着ローラ208が保持されているときに、ユーザが、操作パネル105で用紙の種類を指定して、図1に示すスタートキー106を押下したとする。スタートキー106が押下されると、受付手段305は、スタートキー106が押下させるときに操作パネル105にて指定された用紙の種類を温度決定手段303に通知すると共に、印刷手段307に印刷命令があった旨を通知する。」

(5)「【0029】
よって、スタートキー106が押下される前から定着ローラ208は薄紙の定着温度となっているので、薄紙を指定した場合は、直ぐに印刷を実行できる。」

(6)上記(1)の「受付手段が印刷命令を受け付けるまで、デフォルト定着温度で定着ローラを保持する温度制御手段」が温度制御を開始して、「定着ローラ」の温度が「デフォルト定着温度」になるまでの間は、(2)【0004】のとおり「デフォルト定着温度」に対応する用紙を印刷できないから、「定着ローラ」は立ち上がっていないといえる。したがって、「温度制御手段」が温度制御を開始して「定着ローラ」が「デフォルト定着温度」となるよう制御することは、「定着ローラ」の立ち上げ処理といえるから、「温度制御手段」は「定着ローラの立ち上げ処理」を実行しているといえる。また、上記(1)の記載より、「温度制御手段」は「印刷命令を受け付けるまで、デフォルト定着温度で定着ローラを保持する」ものであるから、前記「定着ローラの立ち上げ処理」は「印刷命令」に先行して開始されていることは自明であり、上記(2)【0003】のとおり、定着温度は、用紙の厚みなど用紙の種類等によって異なるから、上記の「定着ローラの立ち上げ処理」にかかる時間は、上記(1)の「指定された給紙カセットと対応付けて記憶された用紙の種類」に応じた時間となることは自明である。

上記(1)ないし(6)を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「印刷命令を受け付ける受付手段と、
複数の給紙カセットと、各給紙カセットに収納される用紙の種類を対応付けて記憶する記憶手段と、
給紙カセットが指定されると、指定された給紙カセットと対応付けて記憶された用紙の種類に基いて、上記受付手段が印刷命令を受け付けるまでの間、定着ローラが保持されるデフォルト定着温度を決定する温度決定手段と、
上記受付手段が印刷命令を受け付けるまで、デフォルト定着温度で定着ローラを保持する温度制御手段とを備えた画像形成装置であって、
上記温度制御手段は上記定着ローラの立ち上げ処理を実行し、上記定着ローラの立ち上げ処理は上記印刷命令に先行して開始され、上記定着ローラの立ち上げ処理にかかる時間は、上記指定された給紙カセットと対応付けて記憶された用紙の種類に応じた時間となり、
ユーザによって、例えば薄紙が収納された給紙カセットが指定されると、
ユーザが指定した給紙カセットに収納される用紙の定着温度で定着ローラが保持され、
ユーザが、用紙の種類を指定してスタートキーを押下したとすると、指定された用紙の印刷命令があった旨を通知し、
スタートキーが押下される前から定着ローラは薄紙の定着温度となっているので、薄紙を指定した場合は、直ぐに印刷を実行できる、
画像形成装置。」

3 特開2013-109292号公報(以下「引用文献3」という。)
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献3には、以下の記載がある。

(1)「【0013】
画像形成ユニット10には、スキャナユニット(後述)を動作させ所謂ライン走査によって用紙上の画像を読み取る画像読み取り部22、用紙に対して画像を形成する画像形成手段の一例としての画像形成部24が設けられている。また、画像形成ユニット10には、画像読み取り部22、画像形成部24、課金ユニット12、およびインタフェースユニット16を制御する制御部60が設けられている。ここで、画像形成ユニット10はコピー機能を備えており、コピーの指示がユーザからあった場合、上記画像形成部24が、画像読み取り部22にて取得された画像データに基づき用紙に対し画像の形成を行う。なおこの際、画像形成部24の下方に配置された用紙供給部30から画像形成部24に対して用紙が供給される。」

(2)【0019】
ここで、画像形成制御部611は、画像形成部24に設けられた各機構(後述)の制御を行うとともに用紙供給部30の制御を行う。この制御によって、用紙供給部30による画像形成部24への用紙の供給がなされ、また、画像形成部24による用紙への画像形成がなされる。画像読み取り制御部612は、スキャナユニット(後述)などの画像読み取り部22に設けられた各機構の駆動を行う。これにより、画像読み取り部22にセットされた用紙上の画像の読み取りが行われる。また、UI制御部613は、インタフェースユニット16の動作制御を行う。より具体的には、モニタ18上に表示を行ったり、モニタ18上の表示の変更を行ったりする。また、例えば、インタフェース部20に設けられたランプ(不図示、記憶媒体の挿入箇所をユーザに指し示すためのランプ)の点灯制御を行う。」

(3)「【0023】
一方、画像形成部24には、図4に示すように、用紙Pにトナー像を形成するトナー像形成部100、トナー像形成部100により用紙P上に形成されたトナー像を加熱および加圧しこのトナー像を用紙Pに定着する定着部200が設けられている。
ここで、トナー像形成部100は、感光体ドラム110、帯電装置120、露光装置130、現像装置140、転写装置150、およびクリーニング装置160を備える。これらのうち、感光体ドラム110は、その外周面に感光層を備えており、図中矢印方向に回転する。帯電装置120は、回転する感光体ドラム110を予め定められた電位に帯電する。露光装置130は、帯電装置120によって予め定められた電位に帯電した感光体ドラム110を選択的に露光して静電潜像を形成する。」

(4)「【0066】
また、上記では説明を省略したが、画像形成装置1には、図1に示すように、画像形成装置1を操作するユーザを検知する検知センサSEを設けることが好ましい。このように検知センサSEを設けた場合、省エネモードから復帰してから一枚目の用紙Pが排出されるまでの時間をより短くすることができるようになる。ここで本実施形態では、モニタ18等に対する操作が予め定められた時間なされかった場合に、省エネモードに設定され、各部に対する給電が停止される。そして、検知センサSEによりユーザが検知された場合、通常モードに復帰し定着部200など各部への給電が再開される。」

(5)「【0067】
ここで、省エネモードを解除するためのボタンを設けておき、このボタンがユーザにより押圧された際に省エネモードを解除する構成とすることもできるが、この場合、ボタンの押圧があった時点を開始点として各部への給電を再開する。一方で、本実施形態では、ユーザが画像形成装置1の前に立った時点でユーザが検知センサSEにより検知されて各部への給電が再開される。このため、本実施形態では、ボタン操作によって省エネモードが解除される場合に比べ、省エネモードからの復帰がより短い時間で行われるようになる。」

上記(1)ないし(5)を総合すると、引用文献3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。

「指示がユーザからあった場合、画像形成部が、用紙に対し画像の形成を行い、
用紙供給部から画像形成部に対して用紙が供給され、
画像形成制御部が、画像形成部に設けられた各機構の制御を行い、
用紙にトナー像を形成するトナー像形成部、トナー像形成部により用紙上に形成されたトナー像を加熱および加圧しこのトナー像を用紙に定着する定着部が設けられ、
ユーザを検知する検知センサを設け、
検知センサによりユーザが検知された場合、通常モードに復帰し定着部など各部への給電が再開され、
ユーザが画像形成装置の前に立った時点でユーザが検知センサにより検知されて各部への給電が再開され、
ボタン操作によって省エネモードが解除される場合に比べ、省エネモードからの復帰がより短い時間で行われる、
画像形成装置。」

第4 当審の判断
1 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「媒体」、「媒体収容部」は、それぞれ本願発明の「記録材」、「記録材収容部」に相当する。
引用発明1の「加熱されることによりトナー画像を媒体に定着させる定着手段」は、本願発明の「画像形成部により記録材に形成されたトナー像を熱定着する定着部」に相当する。
引用発明1の「画像形成命令を受ける前に」、「定着手段の立上げ処理を、画像形成命令に対して先行して開始する」ことは、本願発明の「画像形成命令を受ける前に」、「前記定着部の立上げ処理を先行して開始させる」ことに相当する。
引用発明1の「エンジン制御手段」は、本願発明の「実行部」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「記録材を収容する記録材収容部と、
前記記録材収容部から搬送された記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により記録材に形成されたトナー像を熱定着する定着部と、
画像形成命令を受ける前に前記定着部の立上げ処理を先行して開始させる実行部と、
を有する画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1は「前記記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部」を有するのに対し、引用発明1はこれについて明らかでない点。

[相違点2]
本願発明1は「画像形成装置の近傍の所定の位置に操作者が存在することを検出する検出部」を有するのに対し、引用発明1はこれについて明らかでない点。

[相違点3]
本願発明1は実行部が「前記検出部が操作者の存在を検出したことに伴い」前記定着部の立上げ処理を先行して開始させるとともに、「前記定着部の立上げ処理を前記格納部に格納された情報に応じた時間に亘って実行させる」のに対し、引用発明1はこれについて明らかでない点。

2 判断
上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
引用発明2の「給紙カセット」、「収納される用紙」、「記憶する」、「記憶手段」は、それぞれ本願発明の「記録材収容部」、「収容された記録材」、「格納する」、「格納部」に相当する。また、引用発明2の「複数の給紙カセット」と「対応付けて記憶」された「各給紙カセットに収納される用紙の種類」は、本願発明の「記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報」に相当する。したがって、引用発明2の「複数の給紙カセットと、各給紙カセットに収納される用紙の種類を対応付けて記憶する記憶手段」は、本願発明の「前記記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部」に相当する。
したがって、引用発明2は、上記相違点1に係る本願発明の特定事項である「前記記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部」を有している。
そして、引用発明1と引用発明2とは、ともに迅速に画像形成ができるものである点で共通するから、引用発明1に引用発明2を適用し、上記相違点1に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
引用発明3の「ユーザ」、「用紙」、「用紙供給部」、「画像形成制御部」、「トナー像形成部」、「検知」、「検知センサ」は、それぞれ本願発明の「操作者」、「記録材」、「記録材収容部」、「実行部」、「検出」、「検出部」に相当する。
引用発明3において、「ユーザが画像形成装置の前に立った時点」で「検知センサ」により「ユーザ」を「検知」することは、「画像形成装置の近傍の所定の位置に操作者が存在することを検出すること」といえる。
したがって、引用発明3は、上記相違点2に係る本願発明の特定事項である「前記記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部」を有している。
そして、引用発明1と引用発明3とは、ともに迅速に画像形成ができるものである点で共通するから、引用発明1に引用発明3を適用し、上記相違点2に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(3)相違点3について
さらに、引用発明2の「定着ローラ」、「温度制御手段」は、それぞれ本願発明の「定着部」、「実行部」に相当する。
引用発明2の「温度制御手段」は、「指定された給紙カセットと対応付けて記憶された用紙の種類に応じた時間」に亘って「定着ローラの立ち上げ処理」を実行させるから、「格納部に格納された情報に応じた時間に亘って定着部の立上げ処理を実行させる」といえる。
したがって、引用発明2は、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項である「前記定着部の立上げ処理を前記格納部に格納された情報に応じた時間に亘って実行させる」点も備えている。
また、引用発明3において「ユーザ」の「指示」すなわち画像形成命令は「ボタン操作」によって与えられるものであるから、「ユーザが画像形成装置の前に立った時点」で「検知センサによりユーザが検知され」ることに伴い、「省エネモードが解除され」、「通常モードに復帰し定着部などへの給電が再開され」る場合、定着部への給電の再開が画像形成命令より前に行われることは自明である。そして、給電の再開により行われる定着部の立ち上げ処理が画像形成命令に先行して開始されることも自明である。
したがって、引用発明3は、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項である「前記検出部が操作者の存在を検出したことに伴い」前記定着部の立上げ処理を先行して開始させる点も備えているといえる。
そして、引用発明1ないし3は、すべて定着手段の立ち上げ処理を画像形成命令に先行して開始して、迅速に画像形成ができるものである点で共通するから、引用発明1に引用発明2及び3を適用し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るものである。
また、本願発明が奏する効果は、引用発明1ないし3から予想できる範囲のものである。

(4)小括
よって、本願発明は、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-23 
結審通知日 2017-05-30 
審決日 2017-06-12 
出願番号 特願2015-249605(P2015-249605)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 古田 敦浩
吉村 尚
発明の名称 画像形成装置  
代理人 高梨 幸雄  

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