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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16L |
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管理番号 | 1330741 |
審判番号 | 不服2016-10864 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-19 |
確定日 | 2017-08-15 |
事件の表示 | 特願2012-286790号「管継手」拒絶査定不服審判事件〔平成26年7月10日出願公開、特開2014-129828号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年12月28日の出願であって、平成26年8月27日に手続補正書が提出され、平成27年2月4日付けで拒絶理由が通知され、同年4月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月1日付けで拒絶理由が通知され、同年11月9日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月11日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正書が提出され、平成29年3月9日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成29年5月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 チューブが挿入されるボディと、 前記ボディの内部に設けられ、前記チューブを前記ボディに対して着脱自在に装着する着脱機構と、 を備える管継手であって、 前記着脱機構は、前記チューブを保持するチャックと、前記チャックに係合する第1ガイド部材と、前記第1ガイド部材の外方に位置し、前記ボディ内で、前記第1ガイド部材を前記ボディに固定する第2ガイド部材と、前記第1ガイド部材の内方に位置し、前記第1ガイド部材に沿って変位自在なリリースブッシュとを含み、 前記チャックは、軸線方向に沿って所定の長さを有する胴部と、前記胴部の一端側にあって該胴部よりも直径が大なる部位を備えた膨出部と、前記膨出部から延在する係止爪と、前記胴部の他端側に設けられたフランジ部と、を有する弾性のある板体により略円筒状に形成され、 さらに、前記チャックは、前記膨出部を経て前記胴部へと延在して等間隔に複数本形成されたスリットを具備し、 1個の前記係止爪は、隣接する2本の前記スリット間の各々に配設されるとともに、一対の刺入部と、前記一対の刺入部間に形成されたストッパ部とを一体的に備え、 前記一対の刺入部は前記ストッパ部よりも先端部が前記チューブ側に突出するとともに、前記ストッパ部は前記チューブの外周面に当接する当接面を有し、 前記ストッパ部は、前記係止爪の、前記一対の刺入部の間であって且つ該一対の刺入部よりも長尺な先端が直径方向外方に折曲された折曲部からなることを特徴とする管継手。 【請求項2】 請求項1記載の管継手において、 前記ストッパ部は、前記チューブの外周面に当接する当接面が湾曲面に形成されることを特徴とする管継手。 【請求項3】 請求項1又は2記載の管継手において、 前記刺入部は、前記チャックの軸線に対して点対称に複数設けられる ことを特徴とする管継手。」 第3 刊行物に記載された事項及び発明 原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由に引用された刊行物は、以下のとおりである。 特開2002-267073号公報(以下、「刊行物1」という。) 特開2012-77804号公報(以下、「刊行物2」という。) 特開2010-261555号公報(以下、「刊行物3」という。) 1 刊行物1について (1)刊行物1に記載された事項 刊行物1には、図1?13とともに次の事項が記載されている。 なお、下線は、当審が加筆した。以下同様である。 (1a) 「【0010】 【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。 (実施形態1)図1乃至図5に示すように、この実施形態の管継手は、挿入されたチューブ1を保持するための把持部材2を具備する。前記チューブ1として、自動車やトラック等の流体配管用の外径6、8、10、12φのナイロンチューブなどを例示することができる。」 (1b) 「【0011】図1に示すように、前記把持部材2はネジ部3を有するボディ4に収容され、該ボディ4内にはチューブ1の内周を規制するための内筒部5、流体密性を担保するためのシール部材6、チューブ1を開放する際に押し込むリリース筒部材7などが配設されている。」 (1c) 「【0012】図2乃至図5に示すように、前記把持部材2は略王冠状に形成され、チューブ1の外周に食い込んで把持するための複数の爪部8が連結領域9を介して連設されている。すなわちこの把持部材2は、爪部8と連結領域9とがジグザグ状に連結された形状としている。 【0013】前記連結領域9は把持部材2における爪部8と逆端側に、拡径方向10に形成されると共に管挿入方向11にも形成されている。 【0014】そして、前記拡径方向10の連結領域9の長さにより、該連結領域9を、破壊に対する耐性が得られる断面積に設定している。また管挿入方向11に形成された連結領域9の長さにより、チューブ1の把持力を所望に設定している。」 (1d) 「【0015】次に、この実施形態の管継手の使用状態を説明する。 【0016】管継手にチューブ1が挿入されると、爪部8の先端が押し広げられて拡径方向10の力が作用し全体的に変形が生じる。」 (1e) 「【0017】この管継手によると、拡径方向10に形成された連結領域9により柔軟に変形してバネ性を担保しつつ連結領域9の断面積を増やすことができ破壊に対する耐性を有する。また管挿入方向11に形成された連結領域9の長さによりチューブ1の把持力を所望に設定することができ、従来よりもチューブ1への食い付きがよいという利点がある。」 (1f) 「【0018】さらに、前記拡径方向10の連結領域9の長さにより破壊に対する耐性が得られる断面積に設定したので、破壊に対する耐性が得られる必要最小限の断面積に設定することができるという利点がある。 【0019】その上、管挿入方向11の連結領域9の長さと拡径方向10の連結領域9の長さを適宜に設定することにより、応力集中を少なくすることができると共にチューブ1を保持するために必要な把持力に設定することができるという利点がある。」 (2)刊行物1に記載された発明 ア 上記(1)(1b)及び図1を踏まえると、上記(1)(1d)の「管継手にチューブ1が挿入される」ことは、チューブ1が管継手のボディ4に挿入されることであるといえる。 イ 上記(1)(1c)を踏まえると、図2?5から、「複数の爪部8の連結領域9側の部分は、管挿入方向11に形成された連結領域9よりも直径が大なる領域を備えており、複数の爪部8の先端部側の部分は、複数の爪部8の連結領域9側の部分から延在していること」、及び、「爪部8の先端部側の部分及び爪部8の連結領域9側の部分に沿って、管挿入方向11に形成された連結領域9へと延在するスリットが、等間隔に複数本設けられ、爪部8の先端部側の部分は、隣接スリット間に位置していること」が看取できる。 ウ 上記ア?イ並びに上記(1)(1a)?(1f)及び図1?9から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 [引用発明] 「チューブ1が管継手のボディ4に挿入され、 把持部材2はネジ部3を有するボディ4に収容され、該ボディ4内にはチューブ1の内周を規制するための内筒部5、チューブ1を開放する際に押し込むリリース筒部材7などが配設され、 把持部材2は、略王冠状に形成され、チューブ1の外周に食い込んで把持するための複数の爪部8が連結領域9を介して連設され、複数の爪部8と連結領域9とがジグザグ状に連結された形状であり、前記連結領域9は、複数の爪部8と逆端側に拡径方向10に形成された連結領域9と、管挿入方向11に形成された連結領域9とからなり、拡径方向10に形成された連結領域9により柔軟に変形してバネ性を担保し、 複数の爪部8の連結領域9側の部分は、管挿入方向11に形成された連結領域9よりも直径が大なる領域を備えており、複数の爪部8の先端部側の部分は、複数の爪部8の連結領域9側の部分から延在しており、 爪部8の先端部側の部分及び爪部8の連結領域9側の部分に沿って、管挿入方向11に形成された連結領域9へと延在するスリットが、等間隔に複数本設けられ、 爪部8の先端部側の部分は、隣接スリット間に位置している、 管継手。」 2 刊行物2について 刊行物2には、図1?13とともに次の事項が記載されている。 (2a) 「【0029】 抜け止めリング5aは、図5に示すように、リング状の本体51と、この本体51の内周側に複数の係止爪52と、食い込み規制部53とを交互に備えている。 そして、この抜け止めリング5aは、まず、ステンレス鋼の薄板を打ち抜き、図6に示すように、本体51の内側に、係止爪52と、この係止爪52の両側に食い込み規制部53となる舌片50を備えた打ち抜き片5を得たのち、図7に示すように、打ち抜き片5の舌片50を係止爪52の食い込み規制部53からの突出長さが複合管9の外層91の厚み未満となる位置で180°折り曲げ、さらに、図8に示すように、この折り曲げ部及び係止爪52を本体51に対して40?45°の交差角となるように立ち上げることによって得られる。」 (2b) 「【0030】 そして、抜け止めリング5aは、本体51が抜け止めリング位置決め凹部24に嵌り込むとともに、係合爪52及び食い込み規制部53が拡径部23に収容された状態に保持されている(図11参照)。」 (2c) 「【0035】 この管継手Aは、上記のようになっており、以下のような優れた効果を備えている。 (1)抜け止めリング5aを備えているので、複合管9の抜けを確実に防止することができる。すなわち、複合管9に抜け方向の力が加わり、複合管9が抜け方向に動こうとすると、まず、係止爪52が図11に示すように、複合管9の外層91に食い込み、加わった力が大きくないときは、この食い込みのみによって抜け方向の動きを抑える。しかも、抜け止めリング5aが、係止爪52の両側に食い込み規制部53を備えているので、係止爪52が所定位置まで食い込むと、食い込み規制部53が複合管9に外周面に当接し、それ以上の係止爪52の外層91への食い込みを防止する。したがって、係止爪52の食い込みすぎによる複合管9の破損を防止することができる。 (2)係止爪52の食い込み長さが、複合管9の外層91の厚み未満に規制されるので、係止爪52が、外層91をつき破って中間層93に達することがない。すなわち、中間層93と抜け止めリング5aとの直接接触による異種金属間接触腐食を防止することができる。 (3)そして、加わった力が大きい場合、複合管9の抜け方向への移動に伴って、図12に示すように、外層91に食い込んだ係止爪52が本体51と平行になるように起き上がるが、食い込み規制部53によって、複合管9の管壁がノズル部1d方向に縮径し、ノズル部1dの第1環状溝11内に入り込むので、入り込んだ複合管9の管壁によっても抜け方向の動きが規制され、それ以上の抜けが防止される。・・・」 3 刊行物3について 刊行物3には、図1?11とともに次の事項が記載されている。 (3a) 「【0028】 図3には、図1に示す管継手10に用いられるロックリング30の単体が示されている。図3(A)はロックリング30の斜視図、図3(B)はロックリング30の平面図、(C)はロックリング30の半裁断面図、である。 【0029】 このロックリング30は、環状の板材を略V字形に折り曲げて形成されたリング部31を備えている。このリング部31には、周方向(以下、リング部31の周方向を単に、周方向Sとして記載する。)の所定間隔で内周側からリング部31を径方向に切り欠く切欠部32、及び、切欠部32とは異なる位置でリング部31を外周側から径方向に切り欠く切欠部34が形成されている(本実施形態では各々8箇所)。なお、ロックリング30は、切欠部32、34の構成されていない部分を軸方向に沿って切断した断面が横向きの略V字形となっている。また、以下では、リング部31の隣り合う切欠部32間に形成される板部分を傾斜板部42として説明する。なお、傾斜板部42は、切欠部32間に形成されることから、リング部31の内周側に周方向Sに所定間隔で配置されている。また、傾斜板部42は、リング部31の軸方向に傾斜している。 【0030】 傾斜板部42の先端には、リング部31の径方向内側へ延出する爪部36が複数形成されている。なお、本実施形態では、爪部36が2つ形成されている。この爪部36は、傾斜板部42の先端の周方向Sの両端側にのみ設けられており、図4(A)に示すように、周方向Sからみて、リング部31のV字に沿った方向からV字の外側へ向かう方向に屈曲している。なお、爪部36の先端部は尖っており、管体40の外周面に食い込みやすい形状となっている。 【0031】 また、爪部36の周方向Sの両隣には、規制部38が形成されている。規制部38は、爪部36が管体40に食い込んだときに管体40の外周面に当接する傾斜板部42の先端面であり、この先端面が管体40の外周面に当接することにより爪部36の管体40への食い込みを規制するようになっている。また、図3及び図4(B)に示されるように、本実施形態では、傾斜板部42の先端部は、端面がロックリング30の軸方向とほぼ平行、又は若干傾斜した先端形状となっている。なお、上述の先端部の端面は、ロックリング30に挿入された管体40に抜け出し方向の力が作用し爪部36が管体40へ食い込んだ際に、管体40の外周面に当接するようになっている。」 (3b) 「【0039】 そして、爪部36が傾斜板部42の先端の周方向Sの両端部側に設けられているので、爪部が傾斜板部42の先端の周方向Sの中央に設けられるよりも、爪部36に管体40への食い込み方向の力が伝わり難い。すなわち、傾斜板部42の先端中央に爪部を設けた場合には、爪部が抜け出し方向に引っ張られた際に規制部が管体40の外周面に食い込む可能性があるが、本実施形態のように、傾斜板部42の先端の周方向Sの両端部側に爪部36を設けた場合には、爪部36が抜け出し方向に引っ張られた際に規制部28が管体40に食い込み難くい。」 (3c) 「【0042】 なお、上記実施形態では、傾斜板部42の規制部38としての先端部は、端面がロックリング30の軸方向とほぼ平行、又は若干傾斜した形状となっているが、本発明はこの構成に限定されず、上記先端部の端面を断面視で凸状に湾曲させた形状としてもよく、図11に示すように上記先端部の端面を断面視で略直角に切り落とされたフラットな形状としてもよく、図10に示すように傾斜板部42の規制部38に湾曲した突起44を設ける構成としてもよい。なお、規制部38としての先端部の端面を凸状に湾曲させた形状とした場合には管体40に規制部38がより食い込み難くなり、図11に示すように規制部38としての先端部の端面を略直角に切り落とされたフラットな形状とした場合には、傾斜板部42に規制部38を切断加工のみで形成できるため経済的であり、規制部38としての先端部に湾曲した突起44を設けた場合には、突起44の吐出量を調整することで爪部36の管体40への食い込み量を調整できる。 【0043】 また、上記実施形態では、爪部36を傾斜板部42の先端の周方向Sの両端部側にのみ形成した例について説明したが、爪部36の位置は、この位置に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、爪部36を傾斜板部42の中央部に形成したりなどして、爪部36を合計3つ又はそれ以上にしてもよい。 【0044】 また、上記実施形態では、ロックリング30の傾斜板部42の数が8個であったが、この構成に限定するものではなく、他の個数としてもよい。また、爪部36と規制部38の寸法及び形状は、これに限定されず、他の構成としてもよい。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「管継手のボディ4」は、「チューブ1が」「挿入され」るから、本願発明1の「チューブが挿入されるボディ」に相当する。 イ 引用発明の「把持部材2」は、「チューブ1の外周に食い込んで把持するための複数の爪部8が連結領域9を介して連設され」ているから、本願発明1の「チャック」に相当する。 ウ 引用発明の「チューブ1の内周を規制するための内筒部5」及び「チューブ1を開放する際に押し込むリリース筒部材7」は、それぞれ、その機能及び構造から、本願明細書の段落【0029】に記載の「着脱機構40」の「流体用チューブ12を案内する略円筒状のスリーブ32」及び「リリースブッシュ58」に相当するといえるから、着脱機構を構成する部材といえる。 したがって、引用発明の「ボディ4に収容され」る「把持部材2」及び「ボディ4内に」「配設され」る「チューブ1の内周を規制するための内筒部5、チューブ1を開放する際に押し込むリリース筒部材7など」は、本願発明1の「ボディの内部に設けられ、チューブを前記ボディに対して着脱自在に装着する着脱機構」に相当し、かつ、上記イを踏まえると、本願発明1の「前記着脱機構は、前記チューブを保持するチャックと、前記チャックに係合する第1ガイド部材と、前記第1ガイド部材の外方に位置し、前記ボディ内で、前記第1ガイド部材を前記ボディに固定する第2ガイド部材と、前記第1ガイド部材の内方に位置し、前記第1ガイド部材に沿って変位自在なリリースブッシュとを含」む構成と、「前記着脱機構は、前記チューブを保持するチャックと、リリースブッシュとを含」む構成の限りで共通する。 エ 引用発明の「管挿入方向11に形成された連結領域9」は、本願発明1の「軸線方向に沿って所定の長さを有する胴部」に相当する。 オ 引用発明の「複数の爪部8の連結領域9側の部分」は、「管挿入方向11に形成された連結領域9よりも直径が大なる領域を備えて」いるから、本願発明1の「胴部の一端側にあって該胴部よりも直径が大なる部位を備えた膨出部」に相当する。 カ 引用発明の「複数の爪部8の先端部側の部分」は、「複数の爪部8の連結領域9側の部分から延在して」いるから、本願発明1の「膨出部から延在する係止爪」に相当する。 キ 引用発明の「複数の爪部8と逆端側に拡径方向10に形成された連結領域9」は、本願発明1の「胴部の他端側に設けられたフランジ部」に相当する。 ク 上記イ及びエ並びに図1?5を踏まえると、引用発明の「把持部材2」は、「略王冠状に形成され」、「拡径方向10に形成された連結領域9により柔軟に変形してバネ性を担保し」ていることは、本願発明1の「チャック」は、「弾性のある板体により略円筒状に形成され」ていることに相当する。 ケ 上記エ?キを踏まえると、引用発明の「把持部材2は、略王冠状に形成され、チューブ1の外周に食い込んで把持するための複数の爪部8が連結領域9を介して連設され、複数の爪部8と連結領域9とがジグザグ状に連結された形状であり、前記連結領域9は、複数の爪部8と逆端側に拡径方向10に形成された連結領域9と、管挿入方向11に形成された連結領域9とからなり、拡径方向10に形成された連結領域9により柔軟に変形してバネ性を担保し、複数の爪部8の連結領域9側の部分は、管挿入方向11に形成された連結領域9よりも直径が大なる領域を備えており、複数の爪部8の先端部側の部分は、複数の爪部8の連結領域9側の部分から延在して」いることは、本願発明1の「チャックは、軸線方向に沿って所定の長さを有する胴部と、前記胴部の一端側にあって該胴部よりも直径が大なる部位を備えた膨出部と、前記膨出部から延在する係止爪と、前記胴部の他端側に設けられたフランジ部と、を有する弾性のある板体により略円筒状に形成され」ることに相当する。 コ 上記オを踏まえると、引用発明の「把持部材2」は、「爪部8の先端部側の部分及び爪部8の連結領域9側の部分に沿って、管挿入方向11に形成された連結領域9へと延在するスリットが、等間隔に複数本設けられ」ることは、本願発明1の「チャックは、前記膨出部を経て胴部へと延在して等間隔に複数本形成されたスリットを具備している」ことに相当する。 以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「チューブが挿入されるボディと、 前記ボディの内部に設けられ、前記チューブを前記ボディに対して着脱自在に装着する着脱機構と、 を備える管継手であって、 前記着脱機構は、前記チューブを保持するチャックと、リリースブッシュとを含み、 前記チャックは、軸線方向に沿って所定の長さを有する胴部と、前記胴部の一端側にあって該胴部よりも直径が大なる部位を備えた膨出部と、前記膨出部から延在する係止爪と、前記胴部の他端側に設けられたフランジ部と、を有する弾性のある板体により略円筒状に形成され、 さらに、前記チャックは、前記膨出部を経て前記胴部へと延在して等間隔に複数本形成されたスリットを具備している管継手。」 <相違点1> 本願発明1では、「前記着脱機構は」、「前記チャックに係合する第1ガイド部材と、前記第1ガイド部材の外方に位置し、前記ボディ内で、前記第1ガイド部材を前記ボディに固定する第2ガイド部材と、前記第1ガイド部材の内方に位置し、前記第1ガイド部材に沿って変位自在なリリースブッシュとを含む」のに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。 <相違点2> 本願発明1は、 「1個の前記係止爪は、隣接する2本の前記スリット間の各々に配設されるとともに、一対の刺入部と、前記一対の刺入部間に形成されたストッパ部とを一体的に備え、 前記一対の刺入部は前記ストッパ部よりも先端部が前記チューブ側に突出するとともに、前記ストッパ部は前記チューブの外周面に当接する当接面を有し、 前記ストッパ部は、前記係止爪の、前記一対の刺入部の間であって且つ該一対の刺入部よりも長尺な先端が直径方向外方に折曲された折曲部からなる」のに対して、 引用発明は、 「爪部8の先端部側の部分は、隣接スリット間に位置している」点。 (2)判断 以下、相違点1について検討する。 ア 刊行物1の図1を参照すると、リリース筒部材7の外方に位置しリリース筒部材7を押し込む際にガイドとなる部材(本願発明1の「第1ガイド部材」に相当)と、かかるガイドとなる部材をボディ4が直接保持していることが看取できるが、刊行物1には、上記相違点1に係る本願発明1の「第1ガイド部材の外方に位置し、ボディ内で、前記第1ガイド部材を前記ボディに固定する第2ガイド部材」は記載されていない。 また、ボディ4に直接保持されている上記ガイドとなる部材を、あえて、ボディ4とは別の部材を使用して、ボディ内で固定するように構成することが、設計事項であるといえる根拠も見当たらない。 イ さらに、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、刊行物2及び3のいずれにも、記載されていない。 ウ したがって、刊行物2又は3に記載された技術事項を引用発明に適用しても、上記相違点に係る本願発明1の構成に至るものではない。 エ 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物2?3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2?3について 本願発明2?3は、本願発明1の発明特定事項を全て備え、さらに減縮した発明であるから、本願発明1と同じ理由(上記1(2))により、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物2?3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 3 小括 以上のとおり、本願の請求項1?3に係る発明(本願発明1?3)は、その出願前において頒布された刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物2?3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1?3に係る発明について、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物2?3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかしながら、平成29年5月15日付けの手続補正により補正された請求項1?3に係る発明は、上記第4のとおり、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物2?3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-08-01 |
出願番号 | 特願2012-286790(P2012-286790) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F16L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 黒石 孝志 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 平田 信勝 |
発明の名称 | 管継手 |
代理人 | 坂井 志郎 |
代理人 | 関口 亨祐 |
代理人 | 仲宗根 康晴 |
代理人 | 千葉 剛宏 |
代理人 | 宮寺 利幸 |
代理人 | 大内 秀治 |
代理人 | 千馬 隆之 |