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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01J
管理番号 1330751
審判番号 不服2016-10995  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-21 
確定日 2017-08-18 
事件の表示 特願2014-220215「イオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 5日出願公開、特開2015- 26623、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年(平成21年)2月11日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2008年2月11日、米国)を国際出願日とする特願2010-546872号(以下「原出願」という。)の一部を平成26年10月29日に新たな特許出願とした特願2014-220215号であって、平成26年10月29日に手続補正がされるとともに上申書が提出され、平成27年7月30日付け(発送 同年8月3日)で拒絶理由が通知され、同年11月2日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたが、平成28年3月17日付けで拒絶査定(送達同年同月22日)がされ(以下「原査定」という。)、これに対し、同年7月21日に拒絶査定不服審判請求がされるとともに、同時に手続補正がされ、同年8月2日に審判請求の理由が補正がされ、その後、平成29年4月11日付けで当審にて拒絶理由通知がされ(以下「当審拒絶理由」という。)、同年7月10日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成29年7月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし6は以下のとおりである。
「【請求項1】
カソードを有するイオン源を備えるイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法であって、
(a)イオン注入処理中にイオン源チャンバにドーパントガスを供給すること、
(b)前記カソード上への堆積と、前記カソードからのエッチングに影響する1つ以上の条件をモニタすること、
(c)上記モニタに応答して、少なくとも1つの洗浄ガスと少なくとも1つのフッ素化堆積ガスとを含むガス混合物と前記カソードとを接触させること、堆積又はエッチングを生じさせるのに十分な温度へ前記イオン源の温度を調整すること、を含み、前記ガス混合物が、前記温度に基づき、前記カソード上への材料の堆積と、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱を行い、
前記洗浄ガスが、AsH_(3)、PH_(3)、SiH_(4)、H_(2)/Xe、GeH_(4)、H_(2)、B_(2)H_(6)、CO、CH_(4)、Xe/NH_(3),Ar/NH_(3),Ne/NH_(3)、及びAr/Xeから選択される1以上のガス又はガス混合物を含む気相反応性材料を含み、前記洗浄ガスが前記イオン源における前記温度を制御することにより前記カソード上の堆積物のエッチングに効果的であり、
前記フッ素化堆積ガスが、F_(2)、N_(2)F_(4)、AsF_(3)、PF_(3)、PF_(5)、SiF_(4)、GeF_(4)、BF_(3)、CF_(4)、COF_(2)、ClF_(3)、WF_(6)、MoF_(6)、及びNF_(3)から選択される少なくとも1つのガスを含み、前記ドーパントガスがフッ素化ドーパントガスを含む場合に前記フッ素化ドーパントガス及び前記フッ素化堆積ガスが同一であってもよいことを条件に、前記イオン源における前記温度を制御することにより前記フッ素化堆積ガスが前記カソードを再成長させることに効果的である、
方法。
【請求項2】
前記ガス混合物のガスが、前記カソードに接触するように同時に流れる、請求項1に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項3】
前記ガス混合物が、少なくとも1つの非ドーパントガスと少なくとも1つのドーパントガスとの組合せを含む、請求項1に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項4】
前記ガス混合物が、吸着脱着ガス貯蔵および計量供給システム、圧力調整ガス貯蔵および計量供給システム、およびハイブリッド吸着脱着圧力調整ガス貯蔵および計量供給システムから選択されるガス貯蔵および計量供給システムにより貯蔵および計量供給される、請求項1または2に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項5】
前記ガス混合物のガスが、前記カソードに接触するように同時に流れる、請求項1に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項6】
前記ガス混合物が、吸着脱着ガス貯蔵および計量供給システム、圧力調整ガス貯蔵および計量供給システム、およびハイブリッド吸着脱着圧力調整ガス貯蔵および計量供給システムから選択されるガス貯蔵および計量供給システムにより貯蔵および計量供給される、請求項1に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。」

なお、本願発明2ないし6は、本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された本願の原出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(国際公開第2007/127865号)には、図面とともに次の事項が記載されている(訳は、特表2010-503977号公報に基づいて当審が付した。また、下線は当審が付した。以下同じ)。
ア 「100. An ion implantation method, comprising generating a plasma in an arc chamber of an ion implantation system from a dopant source gas flowed through the arc chamber to form dopant source ions for implantation, and during at least part of the time during which the dopant source gas is flowed through the arc chamber, flowing cleaning gas through the arc chamber concurrently with the dopant source gas, to effect cleaning in the ion implantation system, wherein the cleaning gas comprises gas-phase reactive material.
101. The method of claim 100, wherein the gas-phase reactive material comprises at least one gas selected from the group consisting of XeF_(2), XeF_(4), XeF_(6), NF_(3), IF_(5), IF_(7), KrF_(2), SF_(6), C_(2)F_(6), F_(2), CF_(4), Cl_(2), HCl, ClF_(3), ClO_(2), N_(2)F_(4), N_(2)F_(2), N_(3)F, NFH_(2), NH_(2)F, HOBr, Br_(2), C_(3)F_(8), C_(4)F_(8), C_(5)F_(8), CHF_(3), CH_(2)F_(2), CH_(3)F, COF_(2), HF, C_(2)HF_(5), C_(2)H_(2)F_(4), C_(2)H_(3)F_(3), C_(2)H_(4)F_(2), C_(2)H_(5)F, C_(3)F_(6),COCl_(2), CCl_(4), CHCl_(3), CH_(2)Cl_(2), and CH_(3)Cl.・・・
108. A method of cleaning at least one component of a semiconductor processing system, said method comprising:
(a) continuously flowing a gas-phase reactive material from a cleaning composition source into a vacuum chamber of the semiconductor processing system;
(b) reacting the gas-phase reactive material with a residue in the vacuum chamber to at least partially remove the residue from the interior of the vacuum chamber or at least one component contained therein; and
(c) regulating the partial pressure of the gas-phase reactive material in the chamber by use of a control valve on an output of the chamber, wherein the gas-phase reactive material reacts selectively with the residue on the vacuum chamber or the at least one component therein.・・・
111. The method of claim 108, wherein said at least one component is selected from the group consisting of vacuum chambers, arc chambers, electrodes, filaments, high voltage bushings, magnet waveguides, wafer handling components, clamp rings, wheels and discs.」(特許請求の範囲)
(【請求項100】
アークチャンバを通して流されるドーパント源ガスからイオン注入システムの前記アークチャンバ内にプラズマを生成して、注入用のドーパント源イオンを生成するステップと、前記ドーパント源ガスが前記アークチャンバを通り流される間の少なくとも一部の時間の間に、前記ドーパント源ガスと同時に前記アークチャンバを通して洗浄ガスを流して、前記イオン注入システム内の洗浄を行うステップとを含み、前記洗浄ガスは、気相反応物質を含む、イオン注入方法。
【請求項101】
前記気相反応物は、XeF_(2)、XeF_(4)、XeF_(6)、NF_(3)、IF_(5)、IF_(7)、KrF_(2)、SF_(6)、C_(2)F_(6)、F_(2)、CF_(4)、Cl_(2)、HCl、ClF_(3)、ClO_(2)、N_(2)F_(4)、N_(2)F_(2)、N_(3)F、NFH_(2)、NH_(2)F、HOBr、Br_(2)、C_(3)F_(8)、C_(4)F_(8)、C_(5)F_(8)、CHF_(3)、CH_(2)F_(2)、CH_(3)F、COF_(2)、HF、C_(2)HF_(5)、C_(2)H_(2)F_(4)、C_(2)H_(3)F_(3)、C_(2)H_(4)F_(2)、C_(2)H_(5)F、C_(3)F_(6)、COCl_(2)、CCl_(4)、CHCl_(3)、CH_(2)Cl_(2)およびCH_(3)Clからなる群から選択される少なくとも1つのガスを含む、請求項100に記載の方法。・・
【請求項108】
(a)洗浄組成物源から半導体処理システムの真空チャンバ内に気相反応物質を連続的に流すステップと、
(b)前記真空チャンバの内側部分または前記真空チャンバ内に含まれる少なくとも1つのコンポーネントから残留物を少なくとも部分的に除去するために、前記真空チャンバ内で前記残留物に前記気相反応物質を反応させるステップと、
(c)前記チャンバの排出口の調整弁を使用することにより、前記チャンバ内の前記気相反応物質の分圧を調整するステップと
を含み、前記気相反応物質は、前記真空チャンバまたはその中の前記少なくとも1つのコンポーネントの上の前記残留物と選択的に反応する、半導体処理システムの少なくとも1つのコンポーネントを洗浄する方法。・・・
【請求項111】
前記少なくとも1つのコンポーネントは、真空チャンバ、アークチャンバ、電極、フィラメント、高電圧ブッシング、磁石導波管、ウェーハ処理コンポーネント、クランプリング、ホイールおよびディスクからなる群から選択される、請求項108に記載の方法。)

イ 「FIELD OF THE INVENTION
[0002] The present invention relates to cleaning of semiconductor processing systems.」
(技術分野
[0002]本発明は、半導体処理システムの洗浄に関する。)

ウ 「[0039] A further aspect of the invention relates to a method of cleaning one or more components of an ion implantation system for at least partial removal of ionization-related deposits from said one or more components, said method comprising contacting said one or more components with a cleaning composition comprising a gas-phase reactive material, under conditions enabling reaction of the gas-phase reactive material with the deposits to effect said at least partial removal.」
([0039]本発明の他の態様が、イオン注入システムの少なくとも1つまたは複数のコンポーネントからのイオン化関連堆積物の少なくとも部分的な除去を行うように、気相反応物質と堆積物との反応を可能にする条件下において、気相反応物質を含む洗浄組成物に前記1つまたは複数のコンポーネントを接触させるステップを含む、イオン注入システムの1つまたは複数のコンポーネントからイオン化関連堆積物を少なくとも部分的に除去するための、イオン注入システムの前記1つまたは複数のコンポーネントを洗浄する方法に関する。)

エ 「[0102] The ionization-related deposits can include material deposited during generation of dopant ions, e.g., boron, phosphorus, arsenic, germanium, silicon, molybdenum, tungsten, selenium, antimony, indium, tantalum, etc.
[0103] In all cleaning methods of the invention, the cleaning may optionally be coupled with additional methods and apparatus for extending the lifetime of the ion implantation system, in particular the ion source. Such may include modification of an ion implantation system utilized in the invention to accommodate the selection of substrate, deposits formed and/or gas-phase reactive material. 」
([0102]イオン化関連堆積物として、例えばホウ素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、ケイ素、モリブデン、タングステン、セレン、アンチモン、インジウム、タンタルなどの、ドーパントイオンの生成の際に堆積する物質が含まれることが可能である。
[0103]本発明の全ての洗浄方法において、この洗浄は、イオン注入システムの、特にイオン源の寿命を延ばすために、追加の方法および装置と適宜結合することができる。このことは、選択される、基板、形成される堆積物、および/または気相反応物質に対応するための、本発明において使用されるイオン注入システムの変更を含んでよい。)

オ 「[0116] The cleaning of residue formed from the same material as the component(s) does result in some wear of the component itself. Specifically, use of XeF_(2) as a cleaning agent to remove tungsten deposits from a system utilizing a tungsten arc chamber will result in removal of some tungsten from the interior of the arc chamber. However, in the interest of maximizing system efficiency, loss of some of the interior material of the arc chamber is not significant when viewed in light of the decreased system performance if the system is not cleaned and the tungsten deposits are allowed to accumulate in the system.
[0117] As used herein, "ion source region" includes the vacuum chamber, the source arc chamber, the source insulators, the extraction electrodes, the suppression electrodes, the high voltage insulators, the source bushing, the filament and the repeller electrode.」
([0116]コンポーネント(または複数のコンポーネント)と同一の物質から形成される残留物の除去は、コンポーネント自体のいくらかの損耗を実際にもたらす。具体的には、タングステン製アークチャンバを使用するシステムからタングステンの堆積物を除去するために洗浄剤としてXeF_(2)を使用することにより、アークチャンバの内側部分から幾分かのタングステンの除去が生じる。しかし、システム効率を最大限に引き出すためには、アークチャンバの内側部分の物質の幾分かの損失は、システムが洗浄されず、タングステンの堆積物がシステム内に蓄積することが可能になる場合のシステムの作動性能の低下という観点から考えれば、重要ではない。
[0117]本明細書において使用される際に、「イオン源領域」は、真空チャンバ、イオン源アークチャンバ、イオン源絶縁体、引出電極、抑制電極、高電圧絶縁体、イオン源ブッシング、フィラメントおよび反射電極を含む。)

カ 「[0182] In another embodiment of the invention, the reactive halide gas is fluorine, for example as delivered from a VAC(R) source container, commercially available from ATMI, Inc. (Danbury, Connecticut, USA). Fluorine is an extremely corrosive gas and can be used with or without thermal or electrical activation. Without activation, the fluorine gas can be admitted directly to the ion source region, wherein the gas is permitted to spontaneously react for sufficient time and under sufficient conditions to at least partially remove the residue. If additional activation is required, components may be heated or left at an elevated temperature and the gas permitted to react for sufficient time to at least partially remove the residue. In the alternative, a plasma may be generated within the arc chamber (as described previously) to further induce fluorine activation.」(なお、分中の(R)は丸付きRである。)
([0182]本発明の別の実施形態において、反応性ハロゲン化物ガスは、例えばATMI, Inc. (Danbury, Connecticut, USA)より市販されるVAC(登録商標)源容器より送出されるフッ素である。フッ素は、極度に腐食性のガスであり、熱または電気による活性化により、または熱または電気による活性化なしに使用することが可能である。活性化なしで、フッ素ガスは、イオン源領域に直接入ることが可能であり、ガスは、十分な時間の間および十分な条件下において自然に反応して、残留物を少なくとも部分的に除去することが可能である。付加的な活性化が必要である場合には、コンポーネントを加熱してまたは高温の状態におき、ガスが十分な時間の間反応して残留物を少なくとも部分的に除去することが可能となるようにしてよい。代替としては、プラズマが、アークチャンバ内で生成されて(先に説明されたように)、フッ素の活性化をさらに誘起してよい。)

キ 図3(FIG.3)は次のものである。
図3


(2)上記(1)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる
「アークチャンバを通して流されるドーパント源ガスからイオン注入システムの前記アークチャンバ内にプラズマを生成して、注入用のドーパント源イオンを生成するステップと、前記ドーパント源ガスが前記アークチャンバを通り流される間の少なくとも一部の時間の間に、前記ドーパント源ガスと同時に前記アークチャンバを通して洗浄ガスを流して、前記イオン注入システム内の洗浄を行うステップとを含み、前記洗浄ガスは、気相反応物質を含み、
前記気相反応物は、XeF_(2)、XeF_(4)、XeF_(6)、NF_(3)、IF_(5)、IF_(7)、KrF_(2)、SF_(6)、C_(2)F_(6)、F_(2)、CF_(4)、Cl_(2)、HCl、ClF_(3)、ClO_(2)、N_(2)F_(4)、N_(2)F_(2)、N_(3)F、NFH_(2)、NH_(2)F、HOBr、Br_(2)、C_(3)F_(8)、C_(4)F_(8)、C_(5)F_(8)、CHF_(3)、CH_(2)F_(2)、CH_(3)F、COF_(2)、HF、C_(2)HF_(5)、C_(2)H_(2)F_(4)、C_(2)H_(3)F_(3)、C_(2)H_(4)F_(2)、C_(2)H_(5)F、C_(3)F_(6)、COCl_(2)、CCl_(4)、CHCl_(3)、CH_(2)Cl_(2)およびCH_(3)Clからなる群から選択される少なくとも1つのガスを含み、
前記イオン注入システムの少なくとも1つまたは複数のコンポーネントからのイオン化関連堆積物の少なくとも部分的な除去を行うように、気相反応物質と堆積物との反応を可能にする条件下において、気相反応物質を含む洗浄組成物に前記1つまたは複数のコンポーネントを接触させるステップを含み、
この洗浄は、イオン注入システムの、特にイオン源の寿命を延ばすためであって、
タングステン製アークチャンバを使用するシステムからタングステンの堆積物を除去するために洗浄剤としてXeF_(2)を使用することにより、アークチャンバの内側部分から幾分かのタングステンの除去が生じる、
イオン注入方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献2(特開昭63-48730号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「第1図の装置において、被イオン化ガスの導入と同時に、ある種の活性ガス(例えばO_(2))を導入し、プラズマを発生させると、時間の経過と共にイオン化箱内壁の一部が熱陰極に堆積し、熱陰極の一部となることが本発明者の実験で確認されている。被イオン化ガスとして三フッ化ホウ素(BF3)を85%、活性ガスとして酸素(O_(2))を15%、イオン化箱としてモリブデン(Mo)、熱陰極として直径2mm、長さ80mmのタングステン(W)を使用した例をあげると、第2図に示す熱陰極1が、約5時間で第4図に示す様に直径が約1.3倍に成長する。即ち、熱陰極1のスパッタリング及び成長を制御する様に活性ガスを導入することにより、陰極1の減少(消耗)及び断線を防止でき、その長寿命化を図ることができるのである。
本実施例によれば更に、被イオン化ガスとして三フッ化リン(PF_(3))を使用し、導入ガスの15%をO_(2)とし、フィラメント1として直径2mm、長さ80mmのタングステン(W)、イオン化箱4ととてモリブデン(Mo)を使用し、アーク電圧100V、アーク電流0.5Aに固定した時のデータを第第5図に示すが、線O-Pがバルブ19を閉している時の時間に対するフィラメント電流の値である。ところが、バルブ19が開いている状態では、イオン化箱4内壁の一部がフィラメントの一部に堆積することにより、時間の経過と共にフィラメント電流が増えるが、第5図の線P-Qがこれに対応する。
ガス自動制御器12がフィラメント電流値、フィラメント電圧値、アーク電圧値及びアーク電流値からフィラメント量を算出し、フィラメント量が一定範囲に納まるようにバルブ19を制御することにより、フィラメント寿命を半永久的にし、極めて高寿命のイオン源が実現する。
第1図の例の様に、被イオン化ガスとの相乗効果あるいはそれら自身の効果によりフィラメント1を成長させる作用をする活性ガスを、被イオン化ガスと同時に導入することにより、フィラメント寿命は半永久的となる。さらに、フィラメント1の量が一定になる様に制御することにより、フィラメント1がスパッタされることによりイオン化箱4の内壁に堆積したフィラメントの一部が再びフィラメントに戻ってくるサイクルを繰り返すため、イオン化箱の劣化が少なく、極めて高寿命のイオン源が実現する。第1図と同様の制御をホウ素イオン源に適用し、通常のイオン注入装置のイオン源として連続運転させた時の、時間に対するフィラメント電流のデータ例を第6図に示しているが、本発明が大きな効果を表わしていることがわかる。
第1図の例は、被イオン化ガスを一定量流しておき、決められた量の活性ガスを間欠的に流すことにより制御しているが、活性ガスの流量を制御しても同様の効果が得られる。さらに、スパッタ率と成長率が同じになる様な比率で予め混合されたガスを使用しても同様の効果を得ることができる。
活性ガスもO_(2)に限らず、他のガス(例えばCO_(2)、H_(2)O_(2))であってよい。活性ガスの供給方式も変更でき、被イオン化ガスと別々に導入してもよい。また、上述の例は、イオン化箱の一部をフィラメントに堆積させることで目的を達成しているが、活性ガスとしてその内部にフィラメントの一部に成り得る高融点金属を含むガス、例えばWF_(6)、MoF_(6)を使用しても本目的を達成できる。
被イオン化ガスの種類によっては一種類の活性ガスでは本効果を表わさないものがあるが、二種類以上の活性ガスを使用することにより本目的を達成することが出来る。したがって、本発明はフィラメントの寿命を半永久的にすることを目的として被イオン化ガスの導入と同時に活性ガスを導入するものであり、活性ガスの種類及びその数には依存しない。使用するフィラメント及びイオン化箱はMo、WやTa等の高融点金属からなるが、他の材質であってもよい。また、例としてイオン注入装置におけるイオン源を挙げたが、熱陰極を使用するイオン源ならば本発明は適用出来る。」(2頁右下欄1行?3頁左下欄18行)

イ 第1図は次のものである。


3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献3(特開2004-363050号公報)には次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
プラズマ室内にイオン源ガスを供給してプラズマを形成し、複数の電極からなる引出電極系によって前記プラズマから電界の作用でイオンビームを引き出すイオン源装置において、前記引出電極系の各電極面に付着堆積したイオン源材料により生じる絶縁膜を除去するクリーニング最適化方法であって、
前記イオン源ガスの代わりに希ガスを前記プラズマ室内に供給して、前記希ガスによるプラズマを形成し、
前記プラズマ室から引き出されて前記引出電極系の各電極面に衝突する際の前記希ガスのイオンビームにおけるビーム径を変化させる設定パラメータを調整し、
前記絶縁膜をスパッタする強度が高い前記ビーム径の有効設定範囲に前記希ガスのイオンビームを集束させて、前記絶縁膜を均一に除去する、各ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記設定パラメータは、引出電極系の引出電圧および希ガスの供給量のいずれか一方または両方であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記設定パラメータは、さらに、アンテナの高周波電力(W)と、希ガスに含まれるH2の混合比を含んでいることを特徴とする請求項1または請求項2記載の方法。」(特許請求の範囲)

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的に、イオン注入装置に用いるイオン源装置、特に、イオン源の室内および引き出し電極系に堆積したボロンまたはリン等の付着物を除去するためのクリーニング機能を備えたイオン源装置およびこの装置を用いたクリーニング最適化方法に関する。」

ウ 「【0042】
本発明では、特に、イオン源ガスとして、ジボランを用いた場合にイオン源の内壁及び引出電極系に堆積する絶縁膜としてのボロン膜を除去することを目的としている。このために、イオン源ガスの供給回路に希ガス供給源60が接続され、圧力スイッチ19を介してイオン源ガスと希ガス(本実施例では、純ArガスまたはH_(2)ガスとArガスの混合ガス)のいずれかを選択することができる。この希ガス供給源60は、イオン源ガス10の供給回路とは別個に構成することも可能である。
【0043】
本発明において使用するスパッタ用ガスとして、He、Ne、Ar,Kr、Xeの希ガスを用いることができる。なお、特に、ボロンの絶縁体膜を除去するには、純Arガス、またはH2ガスを含む混合アルゴンガスのいずれかを使用することが望ましい。スパッタ用ガスは、プラズマ室内に均等に供給されるようにするために、アンテナ7を挟む形で対称位置に配置されたノズル32から導入される。図5a及び図5bには、アンテナ7が4つの場合と3つの場合におけるノズルの配置が示されている。また、図6の導入装置では、導入管からイオン源内に直接導入する場合に、拡散板34を用いて、プラズマ室の頂部壁の内壁との隙間をできるだけ少なくして、拡散板の周囲からスパッタ用ガスが均等に導入される構造となっている。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献4(特開2000-340165号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項4】薄膜トランジスタ形成プロセスに使用するイオンドーピング装置において、イオン源内部のアノード電極(7)またはイオン源内壁(1a)を、プラズマから引き出した陽イオンのスパッタリングによりクリーニングする、ことを特徴とするセルフクリ-ニングイオンドーピング方法。
【請求項5】クリーニング用のプラズマを発生させるガスとして、ドーピングに用いる材料ガス、アルゴンなどの希ガス、水素、あるいはそれらの混合ガスを用いる、ことを特徴とする請求項4に記載のセルフクリーニングイオンドーピング方法。」(特許請求の範囲)

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオンドーピング装置とその方法に関する。」

ウ 「【0032】図1に示したイオン源内壁のほかに補助的なアノード電極7を用いる場合のクリーニングでは、ドーピングに用いる材料ガス、アルゴンなどの希ガス、水素、あるいはそれらの混合ガスを導入し、フィラメント8をカソードとし、イオン源内壁1aをアノードとして用いプラズマを発生させる。ここで、アノード電極7にプラズマに対して負のバイアス電圧を加えることにより、プラズマ中の正イオンをアノード電極に加速し、スパッタさせる。このスパッタ作用により、アノード電極上の堆積物は除去され、清浄なアノード電極表面を作ることができるので、均一な放電を起こさせることができ、イオン源特性を改善することができる。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「アークチャンバ」、「ドーパント源ガス」、「イオン注入システム」、「注入用のドーパント源イオン」、「洗浄ガス」、「気相反応物質」及び「イオン注入方法」は、本願発明1における「イオン源チャンバ」、「ドーパントガス」、「イオン注入システム」、「イオン源」、「洗浄ガス」、「気相反応性材料」及び「方法」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「イオン注入方法」「は、イオン注入システムの」「イオン源」が、「タングステン製アークチャンバを使用する」ものであって、「この洗浄は、イオン注入システムの、特にイオン源の寿命を延ばすため」であるから、本願発明1の「カソードを有するイオン源を備えるイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法」に相当する

ウ 引用発明の「洗浄」は、「イオン注入システムの少なくとも1つまたは複数のコンポーネントからのイオン化関連堆積物の少なくとも部分的な除去を行うように、気相反応物質と堆積物との反応を可能にする条件下において、気相反応物質を含む洗浄組成物に前記1つまたは複数のコンポーネントを接触させ」、「アークチャンバの内側部分から幾分かのタングステンの除去が生じる」ものであるから、本願発明1の「少なくとも1つの洗浄ガスと少なくとも1つのフッ素化堆積ガスとを含むガス混合物と前記カソードとを接触させること」、堆積又はエッチングを生じさせるのに十分な温度へ前記イオン源の温度を調整すること、を含み、前記ガス混合物が、前記温度に基づき、前記カソード上への材料の堆積と、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱を行い、前記洗浄ガスが、AsH_(3)、PH_(3)、SiH_(4)、H_(2)/Xe、GeH_(4)、H_(2)、B_(2)H_(6)、CO、CH_(4)、Xe/NH_(3),Ar/NH_(3),Ne/NH_(3)、及びAr/Xeから選択される1以上のガス又はガス混合物を含む気相反応性材料を含み、前記洗浄ガスが前記イオン源における前記温度を制御することにより前記カソード上の堆積物のエッチングに効果的であり」と、「少なくとも1つの洗浄ガスと前記カソードとを接触させること、を含み、前記ガスが、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱を行い、前記洗浄ガスが気相反応性材料を含み、前記洗浄ガスが前記イオン源における前記カソード上の堆積物のエッチングに効果的であ」る点で一致する。

エ したがって、上記アないしウによれば、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「カソードを有するイオン源を備えるイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法であって、
イオン注入処理中にイオン源チャンバにドーパントガスを供給すること、
少なくとも1つの洗浄ガスと前記カソードとを接触させること、を含み、前記ガスが、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱を行い、
前記洗浄ガスが気相反応性材料を含み、前記洗浄ガスが前記イオン源における前記カソード上の堆積物のエッチングに効果的である、方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「ガス」が「ガス混合物」であって「F_(2)、N_(2)F_(4)、AsF_(3)、PF_(3)、PF_(5)、SiF_(4)、GeF_(4)、BF_(3)、CF_(4)、COF_(2)、ClF_(3)、WF_(6)、MoF_(6)、及びNF_(3)から選択される少なくとも1つのガスを含」む「フッ素化堆積ガス」を含むのに対し、引用発明はそのような「フッ素化堆積ガス」を含むとは特定されない点。

(相違点2)本願発明1は、「前記カソード上への堆積と、前記カソードからのエッチングに影響する1つ以上の条件をモニタする」構成を含み、「上記モニタに応答して、少なくとも1つの洗浄ガスと少なくとも1つのフッ素化堆積ガスとを含むガス混合物と前記カソードとを接触させること、堆積又はエッチングを生じさせるのに十分な温度へ前記イオン源の温度を調整すること、を含」むのに対し、引用発明はそのような構成を含むとは特定されない点。

(相違点3)本願発明1は、「ガス混合物」が、「前記温度に基づき、前記カソード上への材料の堆積と、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱を行い」、「前記洗浄ガスが前記イオン源における前記温度を制御することにより前記カソード上の堆積物のエッチングに効果的であり」、「前記ドーパントガスがフッ素化ドーパントガスを含む場合に前記フッ素化ドーパントガス及び前記フッ素化堆積ガスが同一であってもよいことを条件に、前記イオン源における前記温度を制御することにより前記フッ素化堆積ガスが前記カソードを再成長させることに効果的である」のに対し、引用発明はそのような構成を備えるとは特定されない点。

(相違点4)「洗浄ガス」が、本願発明1は「AsH_(3)、PH_(3)、SiH_(4)、H_(2)/Xe、GeH_(4)、H_(2)、B_(2)H_(6)、CO、CH_(4)、Xe/NH_(3),Ar/NH_(3),Ne/NH_(3)、及びAr/Xeから選択される1以上のガス又はガス混合物を含む気相反応性材料を含」むのに対して、引用発明は、「気相反応物質を含み、前記気相反応物は、XeF_(2)、XeF_(4)、XeF_(6)、NF_(3)、IF_(5)、IF_(7)、KrF_(2)、SF_(6)、C_(2)F_(6)、F_(2)、CF_(4)、Cl_(2)、HCl、ClF_(3)、ClO_(2)、N_(2)F_(4)、N_(2)F_(2)、N_(3)F、NFH_(2)、NH_(2)F、HOBr、Br_(2)、C_(3)F_(8)、C_(4)F_(8)、C_(5)F_(8)、CHF_(3)、CH_(2)F_(2)、CH_(3)F、COF_(2)、HF、C_(2)HF_(5)、C_(2)H_(2)F_(4)、C_(2)H_(3)F_(3)、C_(2)H_(4)F_(2)、C_(2)H_(5)F、C_(3)F_(6)、COCl_(2)、CCl_(4)、CHCl_(3)、CH_(2)Cl_(2)およびCH_(3)Clからなる群から選択される少なくとも1つのガスを含む」ものである点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて上記相違点3について先に検討すると、引用発明のガスは、「ガス混合物」ではなく、「前記温度に基づき、前記カソード上への材料の堆積と、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱を行い」、「前記洗浄ガスが前記イオン源における前記温度を制御することにより前記カソード上の堆積物のエッチングに効果的であり」、「前記ドーパントガスがフッ素化ドーパントガスを含む場合に前記フッ素化ドーパントガス及び前記フッ素化堆積ガスが同一であってもよいことを条件に、前記イオン源における前記温度を制御することにより前記フッ素化堆積ガスが前記カソードを再成長させることに効果的である」ものとなす構成は、引用文献1ないし4に記載されておらず、示唆もない。
したがって、上記相違点1、2及び4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2ないし6も、本願発明1の上記相違点3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断)
原査定は、(平成27年11月2日にされた手続補正における)請求項5に係る発明、及び、請求項5を引用する請求項7ないし9に係る発明は、引用文献1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年7月10日付け手続補正により補正された請求項1ないし6は、それぞれ、本願発明1の上記相違点3に係る構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし6は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 当審では概略、下記拒絶の理由を通知した。
(1)本願請求項1に係る発明(同項を引用する請求項2、4及び6に係る発明も同様)は、「堆積ガス」を発明特定事項とする。
しかしながら、単に「堆積ガス」と特定するのみで、その具体的組成が特定されないので、いかなるガスが含まれるのか漠然としていて不明確である(特許法第36条第6項第2号)。

(2)本願請求項1に係る発明(請求項5に係る発明も同様)は、「ガス混合物が、前記カソード上への材料の堆積と、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱との均衡を保」つことを発明特定事項とするが、本願明細書等の記載を見ても、上記「ガス混合物が、前記カソード上への材料の堆積と、前記カソードからの」「他の材料の剥脱との均衡を保」つにおける「均衡」が、どのような「均衡」であるのか明らかではない(特許法第36条第6項第2号)。

(3)本願請求項5で特定する「混合ガス」のうち、水素含有ガスを含まないフッ素含有ガスのみの「F_(2)/BF_(3)」及び「COF_(2)/F_(2)」は、上記イの本件明細書の発明の詳細な説明の記載を見ても、どの成分が「洗浄ガスとして働き」あるいは「堆積ガスとして働」くのか、さらには、なぜ「前記ガス混合物が、前記カソード上への材料の堆積と、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱との均衡を保」つことができるのか理解できない(特許法第36条第6項第2号及び特許法第36条第4項第1号)。
また、本願請求項5で特定する「混合ガス」のうち、「CO/F_(2)、CO/CF_(4)、COF_(2)/CH_(4)」の「CO」に係る成分は、本願明細書等における「酸素含有添加物」であると理解される。
しかしながら、本願明細書等を見ても「酸素含有添加物」は「洗浄剤」と組み合わせるものと記載されるにとどまり、「酸素含有添加物」が「洗浄ガスとして働」くとの記載は見あたらないから、上記の「混合ガス」はどのガスが「洗浄ガスとして働き」あるいは「堆積ガスとして働」くのか、さらには、「前記ガス混合物が、前記カソード上への材料の堆積と、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱との均衡を保」つことができるのか理解できない(特許法第36条第6項第2号及び特許法第36条第4項第1号)。

(4)本願請求項6に係る発明(請求項8に係る発明も同様)は、「吸着脱着ガス貯蔵および計量供給システム、圧力調整ガス貯蔵および計量供給システム、およびハイブリッド吸着脱着圧力調整ガス貯蔵および計量供給システムから選択されるガス貯蔵および計量供給システムにより貯蔵および計量供給される」ことを発明特定事項とする。
しかしながら、引用する各請求項に記載の「堆積ガス」、「洗浄ガス」並びに「混合ガス」とどのように関連することで、上記発明特定事項を実施できるのか理解できないから、請求項6及び8は記載が不明確である(特許法第36条第6項第2号)。

2 平成29年7月10日付けの補正によって上記「第2」に記載の通りに補正された結果、これらの拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし6は当業者が引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-08 
出願番号 特願2014-220215(P2014-220215)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01J)
P 1 8・ 537- WY (H01J)
P 1 8・ 121- WY (H01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野 健二波多江 進  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
伊藤 昌哉
発明の名称 イオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 江口 昭彦  

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