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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1330877
審判番号 不服2016-6373  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-28 
確定日 2017-08-03 
事件の表示 特願2013-521072「燃料電池を動作させるための水素添加ポリシランによる水素生成」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月26日国際公開、WO2012/010639、平成25年 8月22日国内公表、特表2013-533597〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2011年(平成23年)7月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年7月23日、(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成27年4月16日付けで拒絶理由が通知され、平成27年12月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成28年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成28年4月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年4月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容

1-1.本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「航空機(300)における燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス(100)であって、
水素添加ポリシラン(126)またはその混合物を水と反応させるために設計される反応室(120)と、
少なくとも1つの反応物を前記反応室(120)に給送するための給送デバイス(112)と、
前記反応によって形成される水素を燃料電池(150)に導くための吐出デバイス(122、123、124)と
を有し、
前記吐出デバイス(122、123、124)が、製造された前記水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイス(130)を有する、
燃料電池供給デバイス(100)。
(以下,略)」

1-2.本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「航空機(300)における燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス(100)であって、
水素添加ポリシラン(126)またはその混合物を水と反応させるために設計される反応室(120)と、
少なくとも1つの反応物を前記反応室(120)に給送するための給送デバイス(112)と、
前記反応によって形成される水素を燃料電池(150)に導くための吐出デバイス(122、123、124)と
を有する燃料電池供給デバイス(100)。
(以下,略)」

2.補正の適否
前記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「吐出デバイス」について、「前記吐出デバイス(122、123、124)が、製造された前記水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイス(130)を有する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2-1.本件補正発明
本件補正後の請求項1ないし14に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、前記「1-1.」に記載したとおりのものである。

2-2.引用例の記載事項
(1)引用例1
(1-1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2009-545842号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【請求項2】
以下の工程:
- 固形のポリシラン又はポリシラン溶液を中間貯蔵する工程、
- ポリシラン又はポリシラン溶液を反応チャンバに移送する工程、
- ポリシランを反応チャンバ中で水溶液又は水蒸気と反応させ、H_(2)を放出する工程、
- 固体及び/又は液体の反応生成物を反応チャンバから分離する工程、
- 形成されたH_(2)を燃料電池に移送する工程
を含む、燃料電池に水素を供給するための方法。
・・・(中略)・・・
【請求項18】以下:
- 液体シラン、シラン溶液又はポリシラン溶液のための中間貯蔵部、
- 水溶液のための中間貯蔵部、
- 2つの中間貯蔵部からの少なくとも2つの液体導管が導かれている反応チャンバ、
- 固体及び/又は液体の反応生成物からH_(2)ガスを分離するためのセパレータ装置
を含有する、燃料電池用水素発生装置。」(第2頁第10行?第3頁第17行)
(イ)「【0001】本発明は、水素担体として、液状又は固体形の吸蔵可能なシラン、ポリシラン、シラン溶液又はポリシラン溶液を使用し、加水分解により水素を分離する、燃料電池に水素を供給するための方法に関する。特に、燃料電池に水素を供給するための水素吸蔵材料としてのSi_(3)H_(8)の使用に関する。」
(ウ)「【0002】例えば自動車における燃料電池の幅広い使用に関して、燃料(水素担体又はH_(2))の貯蔵は依然として十分に解決されていない問題である。H_(2)の貯蔵に関しては、多様な方法が公知である:
・・・(中略)・・・
- H_(2)Oを用いてH_(2)に分解される、錯体金属水素化物、例えばLiAlH_(4)、NaBH_(4)等の形での貯蔵;
上記方法の大部分は、技術的又はエネルギー的に極めて費用がかかり、少量のH_(2)の貯蔵のみが可能となるに過ぎないか、もしくはより幅広い適用に関して安全技術的に認められない。
【0003】
それに対して、最後に記載した錯体金属水素化物を用いたH_(2)の貯蔵は、より多量のH_(2)の技術的に容易な、安全でかつエネルギー的に有利な貯蔵の可能性を有している。
・・・(中略)・・・
【0005】
金属水素化物を用いたH_(2)の貯蔵の欠点として、金属水素化物又は錯体金属水素化物が通常固体であることが挙げられる。前記固体は、貯蔵、運搬及び計量供給が困難を伴ってのみ可能である。前記固体はしばしば不溶性である。特に自動車において、既に前記物質のタンクへの装荷は大きな問題である。場合により自動車において必要とされる前置タンクから水素発生器への金属水素化物の運搬も困難である。もう1つの欠点は、金属水素化物の分解生成物ないし加水分解生成物の大部分が強度に腐食性のアルカリ液、特にLiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)_(2)等であることである。前記分解生成物は高腐食性であり、環境に対して有害である。前記物質を大工業的に使用する際には、常に、分解生成物の意図しない放出及び同時に形成をも考慮しなければならないため、前記物質はその環境親和性に関しても憂慮すべきである。
【0006】従って、本発明の課題は、貯蔵、運搬及び計量供給に関する改善された取扱い性並びに改善された環境親和性を有する水素吸蔵材料を提供すること、並びに、燃料電池のための好適な水素製造法を示すことである。」
(エ)「【0007】前記課題は、本発明によれば、・・・(中略)・・・・請求項2記載の特徴を有する、以下の工程:
- 固形のポリシラン又はポリシラン溶液を中間貯蔵する工程、
- ポリシラン又はポリシラン溶液を反応チャンバに移送する工程、
- ポリシランを反応チャンバ中で水溶液又は水蒸気と反応させ、H_(2)を放出する工程、
- 固体及び/又は液体の反応生成物を反応チャンバから分離する工程、
- 形成されたH_(2)を燃料電池に移送する工程
を含む、燃料電池に水素を供給するための方法により解決される。」
(オ)「【0009】従って本発明によれば、水素のための貯蔵媒体(水素吸蔵材料)として、又は水素担体として、シラン又はポリシランを使用することが予定される。ここで、シランは液状ないし溶解形で存在してよく、ポリシランは固体形又は溶解形で存在してよい。シランは一般式Si_(n)H_(2n+2)の二元化合物である。これはアルカンのSi類似体である。
【0010】シランとポリシランとの相違は、その分子量ないしnの大きさにあり、その際、しばしば標準条件下で液体のものはシランと呼称され、固体のものはポリシランと呼称されている。本発明の範囲内で、約20までのnを有するシランをシランと呼称し、それを上回る場合にはポリシランという呼称が選択される。(ポリ)シランとは、シラン及び/又はポリシランであると解釈されるべきである。
・・・(中略)・・・
【0013】しかしながら、液体の変法の場合とは異なる運搬装置も必要である場合には、固体としてのポリシランを使用することも同様に可能である。
【0014】この場合、シランは純粋な形で存在してよい。これは、本発明の範囲内で、シランとわずかな質量割合の種々の添加物質との混合物と解釈すべきである。他方で、シランは、シランの物質クラスの種々の代表物の混合物であってよい。」
(カ)「【0017】本発明の有利な実施態様において、液状のシラン又はシラン溶液が中間貯蔵される。特に自動車における前置容器又は液体タンクを中間貯蔵部として解釈することができる。この場合、中間貯蔵部は無加圧又はわずかな過圧下で運転することができる。易揮発性シランを使用する場合には、わずかな過圧が目的にかなう。加圧容器は特に据置き型装置又は燃料装荷装置の場合には有利な実施態様である。有利に、過圧は0.1?1バールに制限される。しかしながら特に有利に、中間貯蔵部は、特に自動車のような可動的な適用に関しては、圧力下では存在しない。
・・・(中略)・・・
【0019】もう1つの実施態様は、ポリシランを固体形で中間貯蔵し、反応チャンバへの移送の際に初めて溶剤を用いて流動化し、液状にすることを予定している。」
(キ)「【0020】
次の工程において、(ポリ)シラン又はその溶液を中間貯蔵部から反応チャンバに移送することが予定されている。固体の水素貯蔵とは対照的に、ここでは容易に貯蔵と水素生成とを分離することができる。このことは、特に水素生成の際に生じる反応生成物の分離に関して極めて重要である。
【0021】反応チャンバは、例えば連続的な反応器、特に貫流反応器として構成されていてよい。シラン又はシラン溶液は、水溶液が充填された反応チャンバに供給されることができ、又は反応チャンバ中に装入され、かつ水ないし水溶液が供給されることができる。
・・・(中略)・・・
【0024】固体のポリシランの場合には、中間貯蔵部及び反応チャンバは構成的に統合されてもよい。このことは、水溶液がポリシランの上方に導かれるか又は貫通し、かつ水素及び反応生成物が形成されることを意味する。従って、反応生成物は、目的にかなうように、コロイド状に溶解されたケイ酸又はシリカゾルとして液状で、水中で不溶性のポリシランから分離され、かつ反応チャンバ/中間貯蔵部から洗い流される。」
(ク)「【0028】形成された水素は燃料電池ないし燃料電池ユニットへ移送される。」
(ケ)「【0041】(ポリ)シランの反応に使用される水溶液は、純粋な水か、又は、水及び添加物質を含む。添加物質の重要なクラスは、低級アルコールである。アルコールもSi-H-結合の分解及び水素の放出に好適である。水に対して、アルコールの反応性及び放出された反応熱はより低い。H_(2)Oとアルコールとからなる混合物を介して、反応チャンバ中での反応を必要な場合にはより良好に制御することができる。低級アルコール、C_(1)?C_(3)アルコール、特にメタノール及びエタノールは有利である。」
(コ)「【0042】反応器中のpH値を酸性又は塩基性に調節するための水溶液中の他の添加物質として、鉱酸又はアルカリを挙げることができる。これらは触媒的に(ポリ)シランの加水分解に作用する。有利に、例えば苛性ソーダ液の使用によりアルカリ性条件に調節される。これにより、シランの反応性は高められ、かつ加水分解の際に形成されるケイ酸の溶解度は改善され、かつ、液体シリカゾルの形成が促進される。」
そして、記載事項(イ)、(ウ)及び(カ)からみて、次の事項が理解できる。
(サ)燃料電池用水素発生装置は、自動車のような可動的なものに適用される燃料電池に水素を供給するための装置である。
記載事項(カ)及び(キ)からみて、引用例1には次の事項が開示されていると理解できる。
(シ)固体のポリシランのための中間貯蔵部及び固体のポリシランを中間貯蔵部から反応チャンバに移送するための手段と、水溶液のための中間貯蔵部及び水溶液を中間貯蔵部から反応チャンバに移送するための手段と、の少なくとも一方を含有する燃料電池用水素発生装置。
記載事項(キ)及び(ク)からみて、次の事項が理解できる。
(ス)燃料電池用水素発生装置は、反応チャンバで形成された水素を燃料電池へ移送するための手段を含有する。
(1-2)そうすると、これらの記載からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「自動車のような可動的なものに適用される燃料電池に水素を供給するための燃料電池用水素発生装置であって、
固体のポリシランを水溶液と反応させ、水素を放出させるための反応チャンバと、
固体のポリシランのための中間貯蔵部及び固体のポリシランを該中間貯蔵部から前記反応チャンバに移送するための手段と、水溶液のための中間貯蔵部及び水溶液を該中間貯蔵部から前記反応チャンバに移送するための手段と、の少なくとも一方と、
前記反応チャンバで形成された水素を燃料電池へ移送するための手段と、
を含有し、
前記水溶液として水を用いる、
燃料電池用水素発生装置。」
(2)引用例2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2010-516025号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(セ)「【0001】本発明は、特に航空機の使用に適した燃料電池システムにおける燃料供給装置、この種の燃料供給装置を装備した燃料電池システムおよび、この種の燃料供給装置の監視方法に関する。」
(ソ)「【背景技術】
【0002】燃料電池システムは、電流を低レベルの排出かつ高効率で生成することを可能にする。したがってこれまでのところ、航空機上で必要な電気エネルギーを生成する燃料電池システムを使用するための試みが航空機の構造において行われている。例えば、現在航空機の電力供給として使用され、主電力装置または補助タービンにより動いている発電機を燃料電池システムによって置き換えることが考えられる。また、燃料電池システムは、航空機の緊急電力供給として使用することもでき、現在は緊急電力装置として使用されているラムエアタービン(RAT)に置き換わる。」
(タ)「【0033】
燃料電池18は、従来のRATの代わりに緊急電力装置として作用し、」
(3)引用例3
本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2009-514151号公報(本願明細書段落0007に「特許文献1」として示された独国特許発明第10 2005 051 583号明細書のパテントファミリー。以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(チ)「【0002】本発明は、航空機システムに供給するための燃料電池システム、航空機用の水供給システム、および航空機の燃料電池システムを運転する方法に関し、特に水の供給にも適している燃料電池システムに関する。」
(ツ)「【背景技術】
【0003】今日の航空機技術においては、燃料電池を用いて航空機上で水を生成するアセンブリが知られている。このようなアセンブリにより、例えば1つ以上の高温燃料電池としての水生成ユニットの航空機エンジンへの部分的または完全な一体化が可能となり、航空機エンジンの燃焼室の全部または一部が高温燃料電池に置き換えられる。」
(4)引用例4
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-25696号公報(本件国際出願(PCT/EP2011/062466)の国際調査報告で引用された欧州特許出願公開第0957026号明細書のパテントファミリー。以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(テ)「【0005】飛行中における燃料電池の使用はドイツ連邦共和国特許出願公開第19600936号明細書及び第4009772号明細書から既に公知である。両方の場合燃料電池により発生される電気エネルギーが航空機の駆動に用いられる。しかし燃料電池システムの具体的な構造及び航空機へのその統合は開示されていない。」
(ト)「【0008】本発明によるエネルギー供給装置は、エネルギー変換器として直流を発生する燃料電池を含んでいる。燃料電池として特にPEM(陽子交換膜)燃料電池が使用される。」
・・・(中略)・・・
【0011】本発明はあらゆる種類の航空機に適しているが、特に旅客機及び大型旅客機に適している。
【0012】航空機の機内にある本発明によるエネルギー供給装置の有利な構成は特に次の通りである。
主駆動装置発電機
今まで使用された発電機(エネルギー変換:燃料から電流)はPEM燃料電池により置換される。・・・(中略)・・・ガス発生器を燃料電池に代えることにより、著しく高い効率を持つ機内電流が発生される。なぜならば
1. 燃料が直接電流に変換され、
2. ガスタービンの効率は比較的悪いからである。これにより燃料消費が少なくなり、従って運ぶべき燃料の重量が少なくなり、有害物質の放出が少なくなる。
【0013】補助駆動装置(APU)
今まで使用されたガス発電機(エネルギー変換:燃料から圧縮空気及び電流)は、PEM燃料電池に代えられる。・・・(中略)・・・ガス発電機を燃料電池に代えることによって、機内電流が著しく高い効率で発生される。なぜならば、
1.燃料が電流に直接変換され、
2.ガスタービンの効率が比較的悪いからである。これにより燃料消費が少なくなり、従って運ぶべき燃料の重量節約及び有害放出物の減少が可能になる。
【0014】ラム空気タービン(RAT)
このエネルギー変換機(エネルギー変換:外部周囲流からの空力動力)は、PEM燃料電池駆動装置により代えられる。・・・(中略)・・・RATを燃料電池に代えることにより、液圧エネルギー又は機内電流が確実に発生される。更にこのシステムは、機内給電装置に場合によっては生じる需要ピークもまかなうことができ、従って独立した別の機内電流発生システムを形成することもできる。」
(5)引用例5
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-243565号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ナ)「【0001】
本発明は、燃料電池の制御等の目的のために、燃料電池へ供給される水素を含む燃料ガスや燃料電池から排出される水素を含む排ガスといった、水素を含むガスの流量、水素濃度、圧力等を測定する燃料電池用ガス測定方法、この測定を行うための燃料電池用ガス測定装置、並びにこの燃料電池用ガス測定装置を具備する燃料電池システムに関するものである。」
(ニ)「【0039】
請求項14に係る発明によれば、燃料電池7に供給される燃料ガスの状態を監視しながら、この燃料ガスの状態に応じて供給源を制御することにより、燃料電池システムを安定して作動させることができる。」
(6)引用例6
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-9685号公報(以下、「引用例6」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ヌ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述した燃料電池、特に、固体高分子型プロトン導電体(プロトン交換膜)を用いた燃料電池においては、プロトン交換膜に接する燃料ガス中の水素ガス濃度が変動すると、出力が安定しないという問題があった。
【0005】この対策として、燃料ガス中の水素ガス酸素を検出し、水素ガス濃度を一定に制御することが考えられるが、前記燃料ガスの雰囲気において、好適に水素ガス濃度を検出できるセンサがないのが実情である。本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、被測定ガス中の水素ガス濃度を検出することができる水素ガスセンサ、燃料電池システム、及び水素ガス濃度測定方法を提供することを目的とする。」
(ネ)「【0030】
【発明の実施の形態】・・・(中略)・・・
(実施例)本実施例の水素ガスセンサは、燃料電池システムにおいて、その燃料電池に供給される燃料ガス中の水素ガス濃度を検出するものである。」
(7)引用例7
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-132929号公報(以下、「引用例7」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ノ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池車両に搭載された燃料電池用の水素供給装置に関し、さらに詳しくは、燃料電池に供給される水素が所定品位(所定濃度)以下にならないように水素を透過させる水素分離器を備えた燃料電池用の水素供給装置に関する。」
(ハ)「【0007】これら不純物含有量の多い低品位水素(低純度水素)を使用すると、燃料電池が深刻な性能低下を生じる。例えば燃料電池において水素燃料中に不純物が混入して不純物により電極での化学反応が抑制されると、燃料電池の発電電圧の低下、すなわち燃料電池の出力低下を生じる。そのため車両搭載用を初めとする水素貯蔵・供給装置を有する燃料電池(オンボード型燃料電池)においては、水素充填施設(オンサイト)から供給される水素中の不純物の混入に対しては利用装置側(オンボード)で対策を施し、燃料電池へ不純物が供給されるのを抑制する必要がある。」
(ヒ)「【0022】このような構成と作用を有する第一実施形態の燃料電池用の水素供給装置によれば、・・・(中略)・・・
(2)燃料電池4へ供給する水素の濃度を検知する水素濃度検知手段であるプロセスガスクロ9を水素貯蔵容器2に備え、水素中の水素濃度が所定濃度よりも低いと判定したときは、バイパス流路BPに設けられた膜分離装置3を経由して燃料電池4へ水素が供給できるように三方弁6を切り替えることにより、燃料電池4の要求する高品位(高純度)の水素を燃料電池4に供給することができる。」

2-3.本件補正発明と引用発明との対比・判断
(1)対比
(1-1)本件補正発明は、航空機における燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイスに関するものであって(本願明細書段落0001参照)、航空機における燃料電池のための単純で、かつ、安全な水素供給を提供することを課題とするものである(本願明細書段落0008参照)。
一方、引用発明は、自動車のような可動的なものに適用される燃料電池に水素を供給するための燃料電池用水素発生装置に関するものである。引用発明の「自動車のような可動的なもの」は、本件補正発明の「航空機」と、「可動的なもの」である点で一致しているから、引用発明の「自動車のような可動的なものに適用される燃料電池に水素を供給するための燃料電池用水素発生装置」は、本件補正発明の「航空機における燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス」と、「可動的なものに適用される燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス」である点で一致する。したがって、本件補正発明と引用発明は、いずれも、可動的なものに適用される燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイスに関するものである点において技術分野が共通する。
更に、引用発明は、H_(2)の貯蔵に関する公知の方法がより幅広い適用に関して安全技術的に認められないところ、より多量のH_(2)の技術的に容易な、安全でかつエネルギー的に有利な貯蔵の可能性を有している錯体金属水素化物を用いたH_(2)の貯蔵が持つ欠点を踏まえて、燃料電池のための好適な水素製造法を示すことを課題の1つとしているから(前記記載事項(ウ)参照)、燃料電池のための安全な水素製造法を示すことを目的としているといえる。そうすると、本件補正発明と引用発明は、可動的なものに適用される燃料電池のための安全な水素供給を提供する点において目的が一致する。
(1-2)引用発明の「自動車のような可動的なもの」は、前記のとおり、本件補正発明の「航空機」と、「可動的なもの」である点で一致しているから、引用発明の「自動車のような可動的なものに適用される燃料電池に水素を供給するための燃料電池用水素発生装置」は、本件補正発明の「航空機における燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス」と、「可動的なものに適用される燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス」である点で一致する。
本願明細書の「本発明の文脈を通して、「ポリシラン」という用語は、一般に、実験式Si_(n)H_(2n)またはSi_(n)H_(2n+2)を有する化合物を表しており、nは6より大きい(n>6)。以下では同じく略語HPSで示される「水素添加ポリシラン」は、標準状態の下では固体形態のポリシランとして理解されたい。本発明における意味では、ポリシランは、個別の化合物としての固体である固体形態として示されているか、あるいはいくつかのポリシランの混合物中における固体である。」との記載(段落0011)を参照すれば、引用発明の「固形のポリシラン」は、本件補正発明の「水素添加ポリシランまたはその混合物」に相当する。更に、引用発明は、「水溶液として水を用いる」。そうすると、引用発明の「固体のポリシランを水溶液と反応させ、水素を放出させるための反応チャンバ」は、本件補正発明の「水素添加ポリシランまたはその混合物を水と反応させるために設計される反応室」に相当する。
前記のとおり、引用発明は、固体のポリシランと水溶液とを反応させて水素を放出させるものであるから、引用発明の「固体のポリシラン」及び「水溶液」は、いずれも、本件補正発明の「少なくとも1つの反応物」にも相当する。したがって、引用発明の「固体のポリシランのための中間貯蔵部及び固体のポリシランを該中間貯蔵部から前記反応チャンバに移送するための手段」及び「水溶液のための中間貯蔵部及び水溶液を該中間貯蔵部から前記反応チャンバに移送するための手段」は、いずれも、本件補正発明の「少なくとも1つの反応物を前記反応室に給送するための給送デバイス」に相当する。
引用発明の「前記反応チャンバで形成された水素を燃料電池へ移送するための手段」は、本件補正発明の「前記反応によって形成される水素を燃料電池に導くための吐出デバイス」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
【一致点】
「可動的なものに適用される燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイスであって、
水素添加ポリシランまたはその混合物を水と反応させるために設計される反応室と、
少なくとも1つの反応物を前記反応室に給送するための給送デバイスと、
前記反応によって形成される水素を燃料電池に導くための吐出デバイスと
を有する、
燃料電池供給デバイス。」

【相違点1】
本件補正発明は、「航空機における燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス」であるのに対し、引用発明は、「可動的なものに適用される燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス」ではあるものの、「航空機における」燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイスではない点。
【相違点2】
本件補正発明は、吐出デバイスが「製造された水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイスを有する」のに対し、引用発明は、吐出デバイスが水素測定デバイスを有しない点。
(2)判断
(2-1)相違点1について検討する。
航空機に燃料電池を用い、従来よりも高効率な電源供給を可能にすることは、本願の優先日前における周知の技術的事項(周知技術1)であり(例えば引用例2?4(前記「第2[理由]2-2.(2)?(4)」)参照)、燃料電池を航空機に用いるにあたって、該燃料電池に水素を供給する手段を航空機に備える必要があることは、当業者にとって明らかである。そして、前記のとおり、本件補正発明の「航空機」と引用発明の「自動車のような可動的なもの」は、可動的なものである点で共通しているから、引用発明を「航空機における燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス」として用いることは、前記周知技術1に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。

この点に関し、審判請求人は、平成28年5月27日付けの手続補正により補正した審判請求書(以下、単に「審判請求書」という。)の請求の理由において、「5-1)用途としての自動車と航空機の対比
また前審審査官殿は、『航空機の非常用電源として燃料電池を用いることは、当業者にとって周知な技術的事項であり(・・・)、引用文献1(審決注:本審決の引用例1)に記載の発明の燃料電池システム用水素発生装置は自動車用であることから、移動体として共通する航空機に、引用文献1に記載の発明の燃料電池システム用水素発生装置を適用することは、当業者にとって容易に想到し得た事項である。』と指摘される。
この指摘は自動車も航空機もその上位概念としての『移動体』として同じ範疇にあるとの括りであるが、自動車は概ね道路等の陸上交通機関であるに対し、飛行機は空中を移動し墜落等の危険も生じうる移動体であり、両者は円滑な運航の面では全く異なるシステムといって差し支えない。
殊に、2.1)本願発明において記載したように、『航空機の場合、低温タンクまたは圧力容器などの古典的な貯蔵デバイスの使用は、安全上の理由および容量の理由の両方で制限されて』おり(本願明細書段落0005)、コンパクトなデバイスが求められている。これは地上を走行する自動車とは本質的に異なるところであり、自動車に適用できても航空機では適用困難となりうることに留意すべきである。
このため、航空機においては、効率的な燃料電池、つまり比較的軽量なシステムが望まれ、また燃料源を水素とした場合に、その純度、及び燃料としての制御を可能とすることが望まれる。
前述に、『また、『例えば重合体電解質(PEMすなわち陽子交換膜)燃料電池またはアルカリ燃料電池などの特定の燃料電池には、極めて高い純度の水素が必要であ』り(本願明細書段落0004)、高純度の水素を生成する手段と共に、高純度の水素を測定し、制御できる手段を備える必要がある。』とした通りである。」と主張している。
審判請求人の当該主張について検討する。
自動車が陸上交通機関であって、空中を移動する移動体ではないことは、審判請求人の主張するとおりである。しかしながら、自動車の運行にあたっても事故等の危険があることは、当業者にとって明らかである。そうすると、自動車と航空機は、移動体であって、その移動に際して危険が生じうるものである点で共通しているから、円滑な運行の面で全く異なるシステムとはいえない。
引用発明は固体のポリシランを用いるものであるから、該ポリシランのための中間貯蔵部を低温タンクとする必要がないことは、当業者にとって明らかであり、更に引用例1には「中間貯蔵部は、特に自動車のような可動的な適用に関しては、圧力下では存在しない。」と記載されている。また、自動車に用いられるデバイスであっても、自動車内の限られた空間に設置するためには、コンパクトであることが求められることは、技術常識である。
更に、後記「第2[理由]2-3.(2-2)」において述べるように、燃料電池は、一般的に、燃料ガス中の水素ガス濃度に応じて性能が変動し得るものであり、このため、燃料電池に供給される燃料ガスの状態を監視しながら、この燃料ガスの状態に応じて供給源を制御することは、本願の優先日前において周知であり、これを自動車のような可動的なものに適用される燃料電池に水素を供給するための燃料電池用水素発生装置に適用する点に格別の困難性は見いだせない。
以上のことから、審判請求人の前記主張は、採用することができない。

(2-2)相違点2について検討する。
燃料電池は、一般的に、燃料ガス中の水素ガス濃度に応じて性能が変動し得るものであり、このため、燃料電池に供給される燃料ガスの状態を監視しながら、この燃料ガスの状態に応じて供給源を制御することは、本願の優先日前における周知の技術的事項(周知技術2)である(例えば引用例5?7(前記「第2[理由]2-2.(5)?(7)」)参照)。そして、いずれの用途に燃料電池を適用するとしても、その性能が安定していることが当然に求められることは、当業者にとって明らかである。そうすると、引用発明において、吐出デバイスが製造された水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイスを有するようにすることは、前記周知技術2に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。

この点に関し、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「5-3)水素測定デバイスとセンサ
前審審査官殿は、『燃料電池システムにおいて、水素タンクなどの水素供給部から燃料電池62の間の水素供給流路に、水素ガスの濃度などを検出するためのセンサを配置することは、当業者にとって周知な技術事項であり(本願補正前の請求項9に対する指摘であり、引用文献13(審決注:本審決の引用例5)、14(審決注:本審決の引用例6)に係る)、公知の技術を採用するにすぎない』とのご指摘です。
しかしながら、前審審査官殿が摘示されました引用文献13の『気体熱伝導式センサ』(引用文献13の段落[0045]?[0049]及び図1)および引用文献14の『水素ガスセンサ』(引用文献14の段落[0049])ですが、あくまで『センサ』にすぎません。
・・・(中略)・・・
これに対し、本願請求項1に記載の『製造された前記水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイス(130)』は、例えば水素の純度を極めて正確に検出することができ(本願明細書段落0035)、さらに、製造される水素の品質および/または量は、水素測定デバイスを使用することによって制御することができ(本願明細書段落0061)、例えばガスクロマトグラフが例示される。従って、本願発明に用いられる水素の品質および/または量を測定するために設計される『水素測定デバイス』は引用文献13,14に記載の『センサ』とは異なることは明らかである。」と主張している。
しかしながら、審判請求人の当該主張は、本件補正後の請求項1に記載した事項に基づく主張ではない。ガスクロマトグラフは、本願明細書に水素測定デバイスの一例として記載されているにすぎず(段落0035?0036参照)、本願明細書には「さらに、他の水素測定デバイスを使用することも可能であり、例えば、ガスクロマトグラフとは対照的に、水素含量または監視に関連する他のトレースガスを連続的に検出することができる測定センサまたは選択性電極を使用することができる。」とも記載されている(段落0037参照)。そして、本件補正後の請求項1には「製造される水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイス」の具体的な構成について何ら記載されておらず、更に本願明細書を参照しても、同請求項に記載された「製造される水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイス」が特定の形式の水素測定デバイスを意味すると解することはできない。(ちなみに、燃料電池用の水素測定デバイスとして、ガスクロマトグラフを用いることは、例えば引用例7の段落0022に記載されているように、周知の技術的事項である。)
以上のように、審判請求人の前記主張は、本件補正後の請求項1に記載していない事項について述べたものであり、本件補正発明を特定する事項についての主張とはいえないから、失当である。したがって、審判請求人の前記主張は、採用することができない。
更に、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「5-3)水素測定デバイスとセンサ
・・・(中略)・・・
さらに、引用文献1には、本願請求項1に記載の『前記吐出デバイス(122、123、124)が、製造された前記水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイス(130)を有する』ことについて記載、示唆はない。
この点について、本願請求項1に係る発明は、『航空機における燃料電池のための単純で、かつ、安全な水素供給を提供すること』(本願明細書段落0008)という課題を解決するためになされた発明であり、この要件を備える発明により、例えば『製造される水素の純度のレベルおよび純度ならびに量および/または圧力を検証することができる。』(本願明細書段落0035)という効果を奏するものである。
・・・(中略)・・・
そして、単純で、かつ、安全な水素供給を提供するために、『吐出デバイス(122、123、124)が、製造された前記水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイス(130)を有する』という構成を採用する。
引用文献1においては、『貯蔵、運搬及び計量供給に関する改善された取扱い性並びに改善された環境親和性を有する水素吸蔵材料を提供すること、並びに、燃料電池のための公的な水素製造法を示すこと』(引用文献1の段落0006)を課題とする。すなわち、『水素吸蔵材料』としてSi_(3)H_(8)を挙げる(引用文献1の段落0001)ように、燃料電池のための材料提供を指向する発明であって、本願発明の指向する『燃料電池供給デバイス』とは異なっていることは明らかである。」と主張している。
審判請求人の当該主張について検討すると、先に述べたとおり、引用発明において、吐出デバイスが製造された水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイスを有するようにすることは、前記周知技術2に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。
更に、前記「第2[理由]2-3.(1-1)」において検討したとおり、引用発明は、本件補正発明と、可動的なものに適用される燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイスに関するものである点において一致している。
以上のとおりであるから、審判請求人の前記主張も、採用することができない。

(2-3)審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、更に「5-2)水素製造用原料の形態と用途
引用文献1は前審審査官殿が摘示されますように『自動車に用いる燃料電池システム用水素発生装置において、固形のポリシランと水又は水溶液とを反応チャンバに供給し、前記反応チャンバ内で生成された水素を燃料電池に供給する、燃料電池システム用水素発生装置の発明』が記載されています。
しかしながら、引用文献1では『金属水素化物を用いたH_(2)の貯蔵の欠点として、金属水素化物又は錯体金属水素化物が通常固体であることが挙げられる。前記固体は、貯蔵、運搬及び計量供給が困難を伴ってのみ可能である。前記固体はしばしば不溶性である。特に自動車において、既に前記物質のタンクへの装荷は大きな問題である。場合により自動車において必要とされる前置タンクから水素発生器への金属水素化物の運搬も困難である。』(引用文献1の段落0005)とされる通り、自動車では物質のタンクへの装荷が大きな問題となることから、固体ではない形態での運搬が望ましいとされている。
このことは、『有利に、シランは、一般式Si_(n)H_(2n+2)[式中、n=1、2、3、4、5、6、7又は8]の直鎖又は分枝鎖シランから選択される。Si_(3)H_(8)及びn-又はi-Si_(4)H_(10)は室温で液体であるため、特に安定剤を混和した純粋な形で使用するのが特に有利である。』(引用文献1の段落0031?0032)との記述からも明らかである。
本願請求項1に係る発明では、『水素添加ポリシラン』との規定ではあるが、『航空機における燃料電池のための水素を生成するための燃料電池供給デバイス』であることから、用いる原料の観点において、本願発明は引用文献1とは相違することは明らかである。」と主張している。
しかしながら、審判請求人の当該主張は、本件補正後の請求項1に記載した事項に基づく主張ではない。審判請求人が自ら「本願請求項1に係る発明では「水素添加ポリシラン」との規定である」旨述べているとおり、本件補正後の請求項1には、水素製造用原料であるポリシランについて「水素添加ポリシラン」としか記載されていない。
一方、引用例1に、金属水素化物又は錯体金属水素化物が通常固体であることは金属水素化物を用いたH_(2)の貯蔵の欠点である旨記載されていることは、審判請求人が主張するとおりであるが、引用例1には、固体のポリシランを用いることもまた明確に記載されている。
そして、本願明細書を参照しても、本件補正発明の「水素添加ポリシラン」と引用発明の「固形のポリシラン」が異なるものではないことは、前記「第2[理由]2-3.(1-2)」において述べたとおりである。
以上のとおりであるから、審判請求人の前記主張は、補正後の本願請求項1に記載していない事項について述べたものであり、本件補正発明を特定する事項についての主張とはいえないから、失当である。そして、本件補正発明の「水素添加ポリシラン」と引用発明の「固形のポリシラン」は、異なるものではない。したがって、審判請求人の主張を採用することはできない。
(2-4)そして、前記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1、2から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(2-5)したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-4.本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成28年4月28日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、当該補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2[理由]1-2.」に記載のとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び周知技術1の根拠として挙げた引用例2ないし4並びにそれらの記載事項は、前記「第2[理由]2-2.」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2-3.」で検討した本件補正発明から、吐出デバイスに関して、「前記吐出デバイスが、製造された前記水素の品質および/または量を測定するために設計される水素測定デバイスを有する」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、「前記第2[理由]2-3.」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-06 
結審通知日 2017-03-08 
審決日 2017-03-23 
出願番号 特願2013-521072(P2013-521072)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01M)
P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 121- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 創  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
久保 竜一
発明の名称 燃料電池を動作させるための水素添加ポリシランによる水素生成  
代理人 長門 侃二  
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