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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1330879
審判番号 不服2016-6949  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-12 
確定日 2017-08-03 
事件の表示 特願2011-84092号「外科用コンソールおよびハンドヘルド外科用デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月4日出願公開、特開2011-218164号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月5日(パリ条約による優先権主張 平成22年4月13日 (US)アメリカ合衆国)に出願したものであって、平成26年10月6日付けで拒絶理由が通知され、同年12月26日付けで手続補正がなされ、さらに、平成27年5月18日付けで拒絶理由が通知され、同年8月10日付けで手続補正がなされたが、平成28年1月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の特定事項である
「外科用デバイスであって、
該外科用デバイスは、ハンドヘルドのバッテリ式駆動ユニットを備え、」を
「外科用デバイスであって、該外科用デバイスは、ハンドヘルドのバッテリ式駆動ユニットを備え、」と補正するものであって、一行目の「改行」を削除するものであって、明りようでない記載の釈明を目的とするものに、一応該当する。
そうすると、本願の請求項1?10に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されたものと認められ、その内の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

【請求項1】
「外科用デバイスであって、該外科用デバイスは、ハンドヘルドのバッテリ式駆動ユニットを備え、
該ハンドヘルドのバッテリ式駆動ユニットは、
筐体であって、該筐体は、
基部と、
該基部から延びる遠位の半分区間と、該遠位の半分区間に選択的に固定可能である近位の半分区間とを含む中間部分と、
該中間部分の該遠位の半分区間と該近位の半分区間との間に挿入されたガスケットと、
該筐体内に配置されたプロセッサであって、該プロセッサは、該外科用デバイスの動作を制御するために、ユーザ制御要素から双方向無線通信リンクを介してユーザコマンドに対応するユーザ入力信号を受信するように構成されている、プロセッサと
を含む、筐体と、
該中間部分の該遠位の半分区間に設けられた取付け部分であって、該取付け部分は、外科用アタッチメントの対応する部分を受け入れるように構成されている、取付け部分とを含み、
該プロセッサは、該外科用アタッチメントが該取付け部分に取り付けられている場合に、該外科用アタッチメントから電気信号を受信するように構成されており、該電気信号は、該外科用アタッチメントの識別データを示す、外科用デバイス。」

第3 引用刊行物およびその記載事項
1 刊行物1
本件優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である登録実用新案第3018959号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「整形手術具駆動装置と付設バッテリ」について、第1?25図とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)
「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は整形手術機具を駆動するための、再充電可能コードレスバッテリ電力供給式駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
整形外科用駆動装置(ドライブアッセンブリ)は技術的に周知のものである。この種の駆動装置は穴明け、ねじ込み、穴広げ(リーミング)、ワイヤドライビング、ピンニング、のこ切り〔往復動と1方動(sagittal)の両方の〕等の色々な整形外科処置のために利用される。この代表的な駆動装置は再充電可能バッテリシステム(例えばコードレスシステム)によるか、或いは装置を駆動するのに圧縮流体を利用する空圧式システムにより動力が供給される。」

(1-イ)
「【0012】
駆動装置は更にハウジングのハンドル部分に対し相対動可能な引き金装置(トリガーアッセンブリ)と、モータを制御するために引き金装置と連携して作動する電気回路手段を含む。」

(1-ウ)
「【0020】
【実施例】
図1-図11には、整形手術具(インストルメント)を駆動するための本考案に係る再充電可能コードレスバッテリ電力供給式駆動装置の1例が全体的に参照番号10で指定されて示されている。この駆動装置10は長尺の駆動部分4と取っ手部分6とを有するハウジングを含む。駆動部分4と取っ手部分(ハンドル部分)6は長手軸線DとHを夫々規定している。駆動部分4と取っ手部分6の重要部分は2個の大きなハウジング個片(図8参照)で修理に際して装置分解の便宜に供し得るように組み合わせることにより組立られている。」

(1-エ)
「【0023】
駆動装置10によって駆動されるチアック、その他のホルダ或いはインストルメント(手術具)を付設するための連結具が配設されている。この連結具はノーズインサート26を含む。このノーズインサートはソケットを有し、駆動部材18の内面の相手となるスプライン17と係合されてインストルメントが回転駆動されることになるカラーと、ハウジングが端部に開口した長手方向に延在するスロット15に係合されることになるインストルメント円筒部の半径方向に突出したピン(図示省略)とを具備した斯ゝる手術具(インストルメント)の円筒部がこのソケットの中へ突入可能である。ヘリックス・ピン/カラー・アッセンブリ25はハウジング駆動部分の軸線Dに関して回転可能であり、且つ捩りばね27によって付勢(偏倚)されて、スロット15の近傍にあるカラー25の環状突出フックが手術インストルメントの前記ピンと係合してピンをスロット内に維持し、それらにより手術インストルメントを駆動装置10で駆動可能な係合状態に維持出来るようになっている。
【0024】
手術インストルメントは事例として、これらに限定されるものではないが、ドリル、スクリュー、リーマ、ピン及びソー(往復動とサジタルの両方)或いはこれらのいづれかのインストルメントと共に使用するための適宜設計に成るチアック或いはアダプタ等の整形手術で使用するのに適したインストルメントを包含する。」

(1-オ)
「【0029】
駆動装置10は更にモータ12を制御するために引き金装置40と連携作動する電気回路手段を含む。図示の電気回路手段はオン/オフ・ホールセンサ52と速度制御ホールセンサ54を含む。
【0030】
オン/オフ・ホールセンサ52はオン状態とオフ状態に対応する2種のレベルの出力信号を有するデジタル式ホールセンサである。・・・
【0031】
オン/オフ・ホールセンサ52からの出力信号は電界回路によって条件付けられ、この回路によりオン/オフ・ホールセンサ52がオフ信号を生じたときに待機信号が与えられる。この待機信号はモータ駆動回路と速度制御ホールセンサを不能にする。それ故に、待機信号は、引き金装置40が解除位置にある限り(図2)、モータがオフになることを保証する。・・・
【0032】
速度制御ホールセンサ54はこの変動スピード検出器が検出する磁場の強さに基づく一定範囲のレベルを有する速度制御信号を与える線形(リニア)ホールセンサである。磁場の強さが増大すると、速度制御ホールセンサ54はそれだけ高いレベルの速度制御信号を生み出す。引き金装置40が押込められると、マグネット44が速度制御ホールセンサ54の方へ移動して、このセンサを横切る磁場を増大させる。速度制御ホールセンサ54からの速度制御信号は条件付けられてモータ制御回路を駆動し、速度制御信号に比例したモータ速度を与える。それ故に、引き金装置40は更に押込められると、モータ制御回路は駆動装置10のモータ速度(スピード)を増大させる。このように、駆動装置10はオプションとして速度を変化させる装置を含み得る。」

(1-カ)
「【0038】
ハンドグリップ部分5は外科医の手で気楽に保持されるハンドルになるように特定の形状の表面を含む。ハンドグリップ5の中間部分は保持に便利なハンドルを形成するように湾曲した前面を含む。ボタン部材45に隣接してリップ部分51を形成し、これでハンドル部分6とボタン45の間にこのボタンが押込められたときに外科医のグローブが喰込むような事態を阻止するようにしてある。
【0039】
図示のように、ハンドグリップ部分5の幅と長さはその高さに沿って変化し、駆動装置10の都合の良い把持が出来るようになっている。ハンドグリップ部分5の底はバッテリ受容部分48を有し、この部分はバッテリ30がこれに受容されたときにバッテリ接点33と係合するようにした前記バッテリ端子39を有している(後に詳述される)。
【0040】
バッテリハウジング31(図2、3)は、好ましくはオートクレーブ処理の可能な耐圧材料から作られた対立する実質的に平坦な前壁201と後壁203を含む。適当な材料の事例は後述される。
【0041】
バッテリ30は少くとも1個の再チアージ可能セル、好ましくは図2に示すように8個の実質的に円筒形のセル32を含む。セル32は使用者が駆動装置10を把持しようとする個所の下に、或いはそこから離れた位置にあるので、ハンドグリップ部分は上述の電気回路手段の1部分を構成する電子プリント回路板等のその他の電気的及び/或いは機械的要素を搭載するのに使用することが自在に可能となる。」

(1-キ)
「【0043】
駆動装置10の重量分布は、バッテリセルとモータ/トランスミッション装置等の相対的に重いエレメントがハンドグリップ部分5の対立端(頂端Tと底端B)側に離れて配置されるようにハンドグリップ部分5を中心に実質的にバランスするように設定される。ハンドグリップ空洞(キャビティ)53はハンドグリップ部分5の内部に形成される。手で把持されるように設計された装置ハウジング部分の中にバッテリやモータを含んでいる従来式駆動装置とは反対に、この空洞53にはバッテリ、モータ、トランスミッション、即ちギア装置のいづれも収容されることはない。バッテリセル30(以下に詳述)はハンドル部分6のバッテリ受容部分の下に配位しているので、上述の電子制御回路の或る種のものをハンドル部分6のハンドグリップ空洞53に配置させることが出来る。この配置は駆動装置10の有利なバランスとハンドリング特性に更に寄与する。」

摘記事項(1-ア)の「本考案は整形手術機具を駆動するための、再充電可能コードレスバッテリ電力供給式駆動装置に関する。」、同(1-カ)の「ハンドグリップ部分5は外科医の手で気楽に保持されるハンドルになるように特定の形状の表面を含む。」、同(1-キ)の「駆動装置10の重量分布は、バッテリセルとモータ/トランスミッション装置等の相対的に重いエレメントがハンドグリップ部分5の対立端(頂端Tと底端B)側に離れて配置されるようにハンドグリップ部分5を中心に実質的にバランスするように設定される。・・・この配置は駆動装置10の有利なバランスとハンドリング特性に更に寄与する。」との記載および図8からみて、刊行物1には整形外科用デバイスであって、該整形外科用デバイスは、ハンドヘルドのコードレスバッテリ電力供給式駆動装置を備えることが記載されているといえる。

摘記事項(1-ウ)の「この駆動装置10は長尺の駆動部分4と取っ手部分6とを有するハウジングを含む。駆動部分4と取っ手部分(ハンドル部分)6は長手軸線DとHを夫々規定している。駆動部分4と取っ手部分6の重要部分は2個の大きなハウジング個片(図8参照)で修理に際して装置分解の便宜に供し得るように組み合わせることにより組立られている。」、同(1-カ)の「【0039】・・・ハンドグリップ部分5の底はバッテリ受容部分48を有し・・・」との記載および図8からみて、刊行物1のハウジングは、バッテリ受容部分と、該バッテリ受容部分から延びるハンドグリップ部分と、駆動部分のハウジング個片を含む取っ手部分を含むこと、およびハンドグリップ部分と駆動部分のハウジング個片とは、選択的に固定可能であることが理解できる。また、摘記事項(1-オ)の「電気回路手段」と、同(1-キ)の「電子制御回路」とは同じものを指すことは明らかであることを踏まえると、同(1-オ)の「駆動装置10は更にモータ12を制御するために引き金装置40と連携作動する電気回路手段を含む。図示の電気回路手段はオン/オフ・ホールセンサ52と速度制御ホールセンサ54を含む。・・・オン/オフ・ホールセンサ52はオン状態とオフ状態に対応する2種のレベルの出力信号を有するデジタル式ホールセンサである。・・・速度制御ホールセンサ54からの速度制御信号は条件付けられてモータ制御回路を駆動し、速度制御信号に比例したモータ速度を与える。」との記載からみて、刊行物1の電子制御回路はデジタル信号処理装置を備えたものということができる。さらに、摘記事項(1-ウ)の「取っ手部分6」および「取っ手部分(ハンドル部分)6」と同(1-キ)の「ハンドル部分6」とが同一の部分を示すことは明らかであり、かつハウジングの一部をなすことを踏まえれば、同(1-キ)の「上述の電子制御回路の或る種のものをハンドル部分6のハンドグリップ空洞53に配置させることが出来る。」との記載からみて、デジタル信号処理装置を備えた電子制御回路はハウジング内に配置されているといえる。これらを併せ見れば、刊行物1にはハウジングであって、該ハウジングは、バッテリ受容部分と、該バッテリ受容部分から延びるハンドグリップ部分と、該ハンドグリップ部分に選択的に固定可能である駆動部分のハウジング個片とを含む取っ手部分と、該ハウジング内に配置されたデジタル信号処理装置とを含むことが記載されているといえる。

摘記事項(1-ウ)の「本考案に係る再充電可能コードレスバッテリ電力供給式駆動装置の1例が全体的に参照番号10で指定されて示されている。この駆動装置10は長尺の駆動部分4と取っ手部分6とを有するハウジングを含む。」、同(1-エ)の「駆動装置10によって駆動されるチアック、その他のホルダ或いはインストルメント(手術具)を付設するための連結具が配設されている。この連結具はノーズインサート26を含む。このノーズインサートはソケットを有し、駆動部材18の内面の相手となるスプライン17と係合されてインストルメントが回転駆動されることになるカラーと、ハウジングが端部に開口した長手方向に延在するスロット15に係合されることになるインストルメント円筒部の半径方向に突出したピン(図示省略)とを具備した斯ゝる手術具(インストルメント)の円筒部がこのソケットの中へ突入可能である」との記載および図8からみて、刊行物1にはコードレスバッテリ電力供給式駆動装置は、ハウジングと、駆動部分に設けられた連結具であって、該連結具は、外科用インストルメントの対応する部分を受け入れるように構成されている、該連結具を含むことが記載されているといえる。

摘記事項(1-エ)の「手術インストルメントは事例として、これらに限定されるものではないが、ドリル、スクリュー、リーマ、ピン及びソー(往復動とサジタルの両方)・・・を包含する。」との記載からみて、刊行物1の整形外科用デバイスは複数種類の先端器具を装着可能なものであることが明らかである。

以上を総合すれば、刊行物1には次の発明が記載されていると認めることができる。(以下、「引用発明」という。)

「複数種類の先端器具を装着可能な整形外科用デバイスであって、該整形外科用デバイスは、ハンドヘルドのコードレスバッテリ電力供給式駆動装置を備え、
該コードレスバッテリ電力供給式駆動装置は、
ハウジングであって、該ハウジングは、
バッテリ受容部分と、
該バッテリ受容部分から延びるハンドグリップ部分と、該ハンドグリップ部分に選択的に固定可能である駆動部分のハウジング個片とを含む取っ手部分と、
該ハウジング内に配置されたデジタル信号処理装置と
を含む、ハウジングと、
該駆動部分に設けられた連結具であって、該連結具は、外科用インストルメントの対応する部分を受け入れるように構成されている、該連結具とを含む、整形外科用デバイス。」

2 刊行物2
本件優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2008-246188号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「滅菌後の外科器具のプログラミング」について、第1?22図とともに次の事項が記載されている。

(2-ア)「【0013】
・・・本発明は、器具がパッケージングされて滅菌された後にプログラミング装置によってプログラムすることができるプログラム可能な制御ユニットを含む外科器具に関する。このような一実施形態では、プログラミング装置は、無線で制御ユニットをプログラムすることができる。」

(2-イ)「【0059】
γ線などの放射線を用いて器具10を滅菌すると、制御ユニット300の構成要素、特にメモリ308およびプロセッサ306が損傷して不安定になることがある。したがって、本発明の様々な実施形態に従って、器具10のパッケージングおよび滅菌の後に制御ユニット300をプログラムすることができる。」

(2-ウ)「【0060】
図17に示されているように、ハンドヘルド装置とすることができる遠隔プログラミング装置320は、制御ユニット300と無線通信することができる。・・・
【0061】
図19を参照すると、制御ユニット300は、遠隔プログラミング装置320から無線信号を受け取るための誘導コイル402を含むことができる。・・・
【0062】
受信アンテナとして機能するコイル402が受信した入力信号は・・・プログラム命令(例えば、コード)を含むことができる。プロセッサ306は、器具10が動作している時にコードを実行することができる。例えば、コードにより、プロセッサ306を作動させて、センサ368から受信したデータに基づいてモータ65などの器具10の様々なサブシステムに制御信号を出力することができる。
・・・
【0064】
制御ユニット300は、例えば、肯定応答およびハンドシェーク信号などの信号を遠隔プログラミングユニット320に返信することもできる。 ・・・制御ユニット300および遠隔プログラミング装置320は、任意の適当な無線通信プロトコル(例えば、ブルートゥース)および任意の適当な周波数(例えば、ISM帯域)を用いて通信することができる。」

摘記事項(2-イ)の「制御ユニット300の構成要素、特にメモリ308およびプロセッサ306」との記載から、制御ユニット300がプロセッサ306を含むことは明らかであることを踏まえ、同(2-ウ)「遠隔プログラミング装置320は、制御ユニット300と無線通信することができる・・・制御ユニット300は、例えば、肯定応答およびハンドシェーク信号などの信号を遠隔プログラミングユニット320に返信することもできる。・・・任意の適当な無線通信プロトコル(例えば、ブルートゥース)・・・を用いて通信することができる。」との記載を見れば、刊行物2の制御ユニットのプロセッサは、遠隔プログラミングユニットと双方向無線通信を行うものであるといえる。そして、摘記事項(2-ウ)「受信アンテナとして機能するコイル402が受信した入力信号は・・・プログラム命令(例えば、コード)を含むことができる。プロセッサ306は、器具10が動作している時にコードを実行することができる。例えば、コードにより、プロセッサ306を作動させて、センサ368から受信したデータに基づいてモータ65などの器具10の様々なサブシステムに制御信号を出力する」との記載によれば、刊行物2のプロセッサは、外科器具のモータなどの動作を制御するために、遠隔プログラミング装置から双方向無線通信によりプログラム命令を受信するものということができる。

以上より、刊行物2には次の技術的事項が記載されている。

「外科器具のプロセッサを、該外科器具のモータなどの動作を制御するために、遠隔プログラミングユニットから双方向無線通信によりプログラム命令を受信するように構成すること」(以下、「刊行物2事項」という。)

3 対比
本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「整形外科用デバイス」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本願発明の「外科用デバイス」に相当する。以下同様に「コードレスバッテリ電力供給式駆動装置」は「バッテリ式駆動ユニット」に、「ハウジング」は「筐体」に、「バッテリ受容部分」は「基部」に、「ハンドグリップ部分」は「遠位の半分区間」に、「駆動部分のハウジング個片」は「近位の半分区間」に、「取っ手部分」は「中間部分」に、「外科用インストルメント」は「外科用アタッチメント」に、「連結具」は「取付け部分」に、「デジタル信号処理装置」は「プロセッサ」に、それぞれ相当することは明らかである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「外科用デバイスであって、該外科用デバイスは、ハンドヘルドのバッテリ式駆動ユニットを備え、
該ハンドヘルドのバッテリ式駆動ユニットは、
筐体であって、該筐体は、
基部と、
該基部から延びる遠位の半分区間と、該遠位の半分区間に選択的に固定可能である近位の半分区間とを含む中間部分と、
該筐体内に配置されたプロセッサと
を含む、筐体と、
該中間部分の該遠位の半分区間に設けられた取付け部分であって、該取付け部分は、外科用アタッチメントの対応する部分を受け入れるように構成されている、取付け部分とを含む、外科用デバイス。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「筐体」は、本願発明では「該中間部分の該遠位の半分区間と該近位の半分区間との間に挿入されたガスケット」を含むのに対して、引用発明ではそのような構成であるか不明である点。

(相違点2)
「プロセッサ」は、本願発明では「プロセッサであって、該プロセッサは、外科用デバイスの動作を制御するために、ユーザ制御要素から双方向無線通信リンクを介してユーザコマンドに対応するユーザ入力信号を受信するように構成されている」のに対して、引用発明のデジタル信号処理装置は、そのような構成であるか明らかでない点。

(相違点3)
「プロセッサ」および「外科用アタッチメント」について、本願発明では「該プロセッサは、該外科用アタッチメントが該取付け部分に取り付けられている場合に、該外科用アタッチメントから電気信号を受信するように構成されており、該電気信号は、該外科用アタッチメントの識別データを示す」のに対して、引用発明ではそのような構成ではない点。

第4 当審の判断
上記相違点1?3について検討する。
1 相違点1について
電気電子機器の分野において、防じん性や防水性を高めるために、「一対の筺体を組み立てる際に、ガスケットを介在させる」ことは常套手段であるといえる(必要があれば、本件優先日前に頒布された特開2001-187968号公報(特に、【0002】「【従来の技術】・・・電気電子機器には様々な機能が求められているが、その一つとして防塵や防水機能があげられる。この種の電気電子機器に防塵や防水機能を付与する場合には、(1)電気電子機器を形成する上下一対の筺体1・2を組み立てる際に、これらの対向する開口周面間に各種ゴムからなる枠状ガスケット10を介在させ、この枠状ガスケット10に僅かな凹凸や隙間を吸収させる方法・・・が用いられる。」等の記載を参照。)。
そして、電気電子機器である引用発明においても、防じん性や防水性を高めるために、そのハウジングのハンドグリップ部分に駆動部分のハウジング個片を固定する際に上記常套手段を適用することにより、相違点1における本願発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得る事項である。

2 相違点2について
デジタル信号処理装置を備えた電気電子機器が、その製造過程ないし使用時までの間に、その動作内容を指示するためのプログラムや命令の入力を要することは技術常識である。
してみると、引用発明の整形外科用デバイスも、デジタル信号処理装置を備えた電気電子機器ともいえるのであるから、プログラムや命令の入力を要することは明らかである。
一方、外科器具のプロセッサに対し、プログラムや命令を入力するための構成として、刊行物2には刊行物2事項が記載されているといえる。
そして、刊行物2事項の「外科器具のモータなどの動作を制御するため」は、外科用デバイスの動作を制御するためといえる。同様に、「遠隔プログラミングユニット」は医師等のユーザが外科器具を操作あるいは制御するためのものであるからユーザ制御要素と、「双方向無線通信により」は双方向無線通信リンクを介してと、「プログラム命令」はユーザの操作に応じた信号であるから、ユーザコマンドに対応するユーザ入力信号ということができる。
してみると、引用発明において、デジタル信号処理装置にプログラムや命令を入力するための具体的手段として、刊行物2事項を適用し、引用発明のデジタル信号処理装置を、外科用デバイスの動作を制御するために、ユーザ制御要素から双方向無線通信リンクを介してユーザコマンドに対応するユーザ入力信号を受信するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
したがって、引用発明に刊行物2事項を適用することにより、相違点2における本願発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得る事項である。

3 相違点3について
複数種類の先端器具を装着可能な医療器具において、先端器具を装着した際に、該先端器具内の抵抗に電流を供給し、その抵抗値を測定することにより、該先端器具を識別し、該先端器具に適合させて該医療器具を制御することは、本件優先日前周知の事項である(必要があれば、本件優先日前に頒布され、原査定の拒絶査定において周知例として提示された刊行物である特開2002-35009号公報(特に、「【0010】一方、この方法の場合、装着されたインスツルメントに適合した電源などを供給し、インスツルメントを駆動させるために、装置本体側で、チューブ102に装着されたインスツルメントがいずれのインスツルメントであるかを特定する必要があり、そのために、この例では、インスツルメントを装着した際には、装置本体側から電流を供給し、これらの抵抗105a?105fの抵抗値を測定することによって、どのインスツルメントが装着されたかを特定するようにしていた。」との記載を参照。)、本件優先日前に頒布された刊行物である特開平3-47249号公報(特に、「ハンドピース2の識別用抵抗29に接続される端子72、72が設けられ、・・・制御回路61は、抵抗29の端子間電圧により、ハンドピース2の種類を判別するようになっている。」(4頁右下欄2?10行)および「コントロールユニット3の制御回路61は、ハンドピース2のコネクタ26に設けられた識別用抵抗29によって、接続されたハンドピース2の種類を識別し、2種類のハンドピース2A、2Bを、それぞれ異なる特性で駆動することができるようになっている。」(5頁左下欄16行?同頁右下欄1行)との記載を参照。)等を参照。)。そして、上記周知の事項において、「電流を供給し、その抵抗値を測定する」ことが本願発明の「先端器具から電気信号を受信する」ことを意味し、同様に「抵抗値」が「識別データ」に相当することは明らかである。
してみると、複数種類の先端器具を装着可能な医療器具である引用発明において、上記周知の事項を適用して、相違点3における本願発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得る事項である。

4 本願発明の効果について
本願発明の効果をみても、引用発明、刊行物2事項および常套手段ないし周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものとはいえない。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2事項および常套手段ないし周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-10 
結審通知日 2017-03-13 
審決日 2017-03-24 
出願番号 特願2011-84092(P2011-84092)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智弥  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 関谷 一夫
内藤 真徳
発明の名称 外科用コンソールおよびハンドヘルド外科用デバイス  
代理人 大塩 竹志  

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