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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1330925
審判番号 不服2016-10037  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-04 
確定日 2017-08-02 
事件の表示 特願2014-550330「センサー素子を含む無線周波数識別装置トランスポンダ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/101539、平成27年 2月 2日国内公表、特表2015-503797〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許出願は、平成24年12月18日(パリ条約による優先権主張 平成23年12月27日 米国、平成24年9月14日 米国)を国際出願日としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年11月21日 :手続補正書(方式)の提出
平成27年 5月26日付け:拒絶理由の通知
平成27年12月 2日 :意見書及び手続補正書の提出
平成28年 2月29日付け:拒絶査定
平成28年 7月 4日 :審判請求書及び手続補正書の提出
平成28年 8月 5日付け:前置報告書
平成28年11月17日 :上申書の提出


第2.平成28年7月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成28年7月4日付けの手続補正を却下する。


[理由]

1.補正の内容

平成28年7月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成27年12月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)について、以下のとおりの特許請求の範囲(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)に補正することを含むものである。

(補正前の特許請求の範囲)

「【請求項1】
タグを含むセンサーシステムであって、前記タグは、センサーの環境の所定の変化に反応して、第1の電気的状態から第2の電気的状態へと遷移するように適合された少なくとも1つのセンサーであって、前記センサーは少なくとも1つの出力端子を有する、センサーと、少なくとも1ビットを含むバイナリコード化ワードの電気ストレージを含むメモリ素子、入力端子及び出力端子を含む無線周波チップであって、前記入力端子は、前記少なくとも1つのセンサーの前記少なくとも1つの出力端子と電気通信するように配置され、及びメモリの少なくとも1ビットに対して電気通信するように配置されている、無線周波チップと、前記無線周波チップの前記出力端子と電気通信するように配置された第1アンテナとを含み、
前記センサーの前記少なくとも1つの出力端子は、前記メモリの複数のビットに対して電気通信するように配置されている、センサーシステム。

【請求項2】
電源と、前記第1アンテナの共振周波数を含む電磁放射線を生成するように適合された第2アンテナと、電磁放射線を検出し、前記検出された電磁放射線を復調して、前記検出された電磁放射線から埋め込まれたデータを抽出するように適合された受信機とを更に含む、問い合わせ器を更に含む、請求項1に記載のセンサーシステム。

【請求項3】?【請求項10】 (省略)

【請求項11】
製品情報を判定する方法であって、前記方法は、
タグを含む少なくとも1つの製品を提供する工程であって、前記タグは、その環境の所定の変化に反応して、第1の電気的状態から第2の電気的状態へと遷移するように適合された少なくとも1つのセンサーであって、前記センサーは、少なくとも1つの出力端子を有するセンサーと、少なくとも1ビットを含む、バイナリコード化ワードの電気ストレージを含むメモリ素子、入力端子及び出力端子を含む無線周波チップであって、前記入力端子は、前記少なくとも1つのセンサーの前記少なくとも1つの出力端子と電気通信するように配置され、及びメモリの少なくとも1ビットに対して電気通信するように配置されている、無線周波チップと、前記チップの前記出力端子と電気通信するように配置された第1アンテナとを含む、工程と、
前記タグの環境状態と関連する放射線を検出するように適合された問い合わせ器を提供するか、又は既に提供されている、工程と、
前記タグの状態を問い合わせる工程と、
前記タグの状態を解釈する工程と、
前記解釈された前記タグの状態と関連する出力を提供する工程とを含み、
前記センサーの前記少なくとも1つの出力端子は、前記メモリの複数のビットに対して電気通信するように配置されている、方法。

【請求項12】?【請求項14】 (省略) 」


(補正後の特許請求の範囲)

「【請求項1】
センサーシステムであって、
タグと、
問い合わせ器と
を具え、
前記タグは、
センサーの環境状態の所定の変化に反応して、第1の電気的状態から第2の電気的状態へと遷移するように適合された少なくとも1つのセンサーであって、前記センサーは少なくとも1つの出力端子を有する、センサーと、少なくとも1ビットを含むバイナリコード化ワードの電気ストレージを含むメモリ、入力端子及び出力端子を含む無線周波チップであって、前記入力端子は、前記少なくとも1つのセンサーの前記少なくとも1つの出力端子と電気通信するように配置され、及び前記メモリの少なくとも1ビットに対して電気通信するように配置されている、無線周波チップと、前記無線周波チップの前記出力端子と電気通信するように配置された第1アンテナとを含み、
前記センサーの前記少なくとも1つの出力端子は、前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移と関連するデータをビット値の変更として記憶するために、前記メモリの複数のビットに対して電気通信するように配置され、
前記問い合わせ器は、
電源と、前記第1アンテナの共振周波数を含む電磁放射線を生成するように適合された第2アンテナと、前記電磁放射線を検出し、前記検出された電磁放射線を復調して、前記検出された電磁放射線から埋め込まれたデータを抽出するように適合された受信機とを含み、
前記タグに関連する通信周波数範囲は、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移を検出するための特定の必要性により決定される適切に選択された周波数範囲であり、
前記問い合わせ器は、前記第2アンテナを介して、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移と関連するデータを前記メモリの前記ビット値の変更から検出するために、前記選択された周波数範囲内での前記第1アンテナの共振周波数を含む電磁放射線を生成することを特徴とするセンサーシステム。

【請求項2】?【請求項9】 (省略)

【請求項10】
製品情報を判定する方法であって、前記方法は、
タグを含む少なくとも1つの製品を提供する工程であって、前記タグは、センサーの環境状態の所定の変化に反応して、第1の電気的状態から第2の電気的状態へと遷移するように適合された少なくとも1つのセンサーであって、前記センサーは、少なくとも1つの出力端子を有するセンサーと、少なくとも1ビットを含む、バイナリコード化ワードの電気ストレージを含むメモリ、入力端子及び出力端子を含む無線周波チップであって、前記入力端子は、前記少なくとも1つのセンサーの前記少なくとも1つの出力端子と電気通信するように配置され、及び前記メモリの少なくとも1ビットに対して電気通信するように配置されている、無線周波チップと、前記チップの前記出力端子と電気通信するように配置された第1アンテナとを含み、前記センサーの前記少なくとも1つの出力端子は、前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移と関連するデータをビット値の変更として記憶するために、前記メモリの複数のビットに対して電気通信するように配置された、該工程と、
前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移と関連する電磁放射線を検出するように適合された問い合わせ器を提供するか、又は既に提供されている、工程であって、前記問い合わせ器は、電源と、前記第1アンテナの共振周波数を含む電磁放射線を生成するように適合された第2アンテナと、前記電磁放射線を検出し、前記検出された電磁放射線を復調して、前記検出された電磁放射線から埋め込まれたデータを抽出するように適合された受信機とを含む、該工程と、
前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化を問い合わせる工程と、
前記問い合わせ器は、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化を解釈して、前記所定の変化に対応する前記遷移を分析する工程であって、
前記タグに関連する通信周波数範囲は、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移を検出するための特定の必要性により決定される適切に選択された周波数範囲であり、前記問い合わせ器は、前記第2アンテナを介して、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移と関連するデータを前記メモリの前記ビット値の変更から検出するために、前記選択された周波数範囲内での前記第1アンテナの共振周波数を含む電磁放射線を生成する、該分析する工程と、
前記問い合わせ器は、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記分析された遷移と関連する出力を提供する工程とを含み、
ていることを特徴とする方法。

【請求項11】?【請求項13】 (省略) 」

なお、補正後の特許請求の範囲の【請求項2】以降の請求項は、補正前の特許請求の範囲の【請求項2】が削除されたことにより、それぞれ項番が1つ繰り上がったものである。


2.本件補正の目的及び新規事項の有無

(1)本件補正にかかる補正事項

補正前後の請求項1の記載、及び、補正前の請求項11と補正後の請求項10とを対比すると、本件補正は、以下の補正事項を含むものである。

(a)補正後の請求項1に「前記タグに関連する通信周波数範囲は、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移を検出するための特定の必要性により決定される適切に選択された周波数範囲であり、」との事項を付加する補正事項。

(b)補正前の請求項11にかかる「前記タグの状態を解釈する工程と、」を補正後の請求項10に記載されている様に「前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化を解釈して、前記所定の変化に対応する前記遷移を分析する工程であって、前記タグに関連する通信周波数範囲は、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移を検出するための特定の必要性により決定される適切に選択された周波数範囲であり、前記問い合わせ器は、前記第2アンテナを介して、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移と関連するデータを前記メモリの前記ビット値の変更から検出するために、前記選択された周波数範囲内での前記第1アンテナの共振周波数を含む電磁放射線を生成する、該分析する工程と、」とする補正事項。


(2)新規事項の有無について

上記補正事項(a)及び(b)を含む本件補正が,特許法第17条の2第3項の規定に該当するかについて検討する。

上記補正事項(a)について、審判請求人は、平成28年7月4日付け審判請求書において補正の根拠を出願当初の明細書の段落【0019】の記載とし、同審判請求書にて「これにより、タグと無線通信する問い合わせ器は、ある特定のセンサーのみに注目して、その特定のセンサーの所定の変化に対応する遷移に関する情報を得たいような場合には、その遷移と関連するデータのみをメモリからビット値の変更として抽出するために、タグに関連する所定の周波数範囲を選択します。この場合、タグの関連する通信周波数範囲は、HF、UHF、又は意図される環境及びタグの使用におけるタグの特定の必要性により決定される適切に選択された周波数範囲であることを特徴とします(段落[0019]参照)。」と主張している。

しかしながら、出願当初の明細書の段落【0019】に記載されている様に、タグに関連する通信周波数範囲は「HF、UHF、又は意図される環境及びタグの使用における、タグの特定の必要性により決定される適切に選択された」ものであり、補正後の『前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移を検出するための特定の必要性により決定される適切に選択された』の様に、「タグ」の「特定の必要性」を『前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移を検出するための特定の必要性』としたり、それを想起させる様な記載は、出願当初の明細書には見いだせない。また、同様に、審判請求人が主張する上記下線部の内容を示唆する記載も見いだせない。

してみると、上記補正事項(a)は、出願当初の明細書に記載された事項とは認められないので、特許法第17条の2第3項に違反するものである。

また、同様に上記補正事項(b)の「前記タグに関連する通信周波数範囲は、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移を検出するための特定の必要性により決定される適切に選択された周波数範囲であり、」の部分は、出願当初の明細書に記載された事項とは認められないので、当該事項を含む補正事項(b)も特許法第17条の2第3項に違反するものである。

したがって、上記補正事項(a)及び(b)を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。


(3)目的要件について

上記補正事項(b)を含む本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。

(ア)特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)、同第3号(誤記の訂正)、同第4号(明りょうでない記載の釈明)を目的とするものであるかについて

上記補正事項(b)は、タグの状態を解釈する工程について、「前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化を解釈して、前記所定の変化に対応する前記遷移を分析する工程であって、前記タグに関連する通信周波数範囲は、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移を検出するための特定の必要性により決定される適切に選択された周波数範囲であり、前記問い合わせ器は、前記第2アンテナを介して、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移と関連するデータを前記メモリの前記ビット値の変更から検出するために、前記選択された周波数範囲内での前記第1アンテナの共振周波数を含む電磁放射線を生成する、該分析する工程と、」との事項を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号、第3号、第4号を目的とするものでないことは明らかである。

(イ)特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものであるかについて

特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。また、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

上記補正事項(b)は、補正前の請求項11にかかる「前記タグの状態を解釈する工程と、」を補正後の請求項10に記載されている様に「『前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化を解釈して、前記所定の変化に対応する前記遷移を分析する工程であって、』前記タグに関連する通信周波数範囲は、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移を検出するための特定の必要性により決定される適切に選択された周波数範囲であり、前記問い合わせ器は、前記第2アンテナを介して、前記タグの前記センサーの環境状態での前記所定の変化に対応する前記遷移と関連するデータを前記メモリの前記ビット値の変更から検出するために、前記選択された周波数範囲内での前記第1アンテナの共振周波数を含む電磁放射線を生成する、該分析する工程と、」とするものであるが、上記下線部で示した様に、補正前において「解釈する」とされていた工程に対して、補正後では前記「解釈する工程」とは別の「分析する工程」が加えられており、補正前の発明特定事項である「タグの状態を解釈する工程」の内容を変更するものであるから、補正前の発明特定事項である「タグの状態を解釈する工程」を限定的に減縮したものとは認められない。

したがって、上記補正事項(b)は、補正前の請求項11にかかる発明の発明特定事項を限定するものに該当するとはいえないから、特許法第17条の2第5項第2号でいうところの「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとはいえない。


(4)まとめ

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定、及び、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について

平成28年7月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年12月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「「第2.平成28年7月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」「1.補正の内容」における(補正前の特許請求の範囲)の【請求項1】」参照。)により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
タグを含むセンサーシステムであって、前記タグは、センサーの環境の所定の変化に反応して、第1の電気的状態から第2の電気的状態へと遷移するように適合された少なくとも1つのセンサーであって、前記センサーは少なくとも1つの出力端子を有する、センサーと、少なくとも1ビットを含むバイナリコード化ワードの電気ストレージを含むメモリ素子、入力端子及び出力端子を含む無線周波チップであって、前記入力端子は、前記少なくとも1つのセンサーの前記少なくとも1つの出力端子と電気通信するように配置され、及びメモリの少なくとも1ビットに対して電気通信するように配置されている、無線周波チップと、前記無線周波チップの前記出力端子と電気通信するように配置された第1アンテナとを含み、
前記センサーの前記少なくとも1つの出力端子は、前記メモリの複数のビットに対して電気通信するように配置されている、センサーシステム。」


第4.引用例

1.引用例1

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-187715号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(ア)「本発明は電気的な情報を多数の電子タグを使って転送するシステムに関し、特に、対象に取付け可能な無線周波数電子タグと、コンピュータネットワークに接続されたタグ読取装置とに関する。」(【0001】)

(イ)「電子タグ46に、任意にセンサ47を取り付けることもできる。様々なセンサのモードをサポートすることができ、このセンサモードは、ジャイロスコープセンサ、加速度計、または音響又は赤外線範囲技術によって決定される絶対的又は相対的な位置情報を含む。従来の光、像、熱、電磁、振動、または音響センサを含む環境センサが存在してもよい。所望の適用法に依存して、環境又は位置センサを使うことができる。このような位置センサは、差動GPS位置検出、像分析又は認識、音響又は音声識別、又は差動熱センサを組み込む。センサは、加速度計、圧縮又は張力変形センサ、又はその他の埋め込まれた又は取付けられたセンサを含んでもよい。特定の適用例では、連続的なセンサ(例えば二層シートのキャパシタンスセンサ)を用いてもよい。特に有効な連続的なセンサの種類の一つは、多数のキャパシタンス又は抵抗ストリップを使い、変形圧力の結果、変形圧力に比例した、位置を特定できるアナログ信号を生じる。単純なキャパシタンスセンサ、抵抗変形(応力)センサ、アナログ又はデジタル圧力スイッチ、誘導性センサ、または流体流れセンサ等の様々な種類のセンサを使うことができる。用いられるセンサの種類に依存して、センサデータは、直接電子タグ46にデジタル形式で送ることもでき、又は、典型的には4から8ビットの範囲を提供する汎用アナログ-デジタル変換器によってデジタル形式に変換することもできる(ただし、少なくは1ビットから多くは32ビットまでが様々な適用例により要求されてもよい)。このようなセンサシステムの使用により、入力情報が追加され、この入力情報は、電子タグによって一部が可能にされるユーザインターフェースの一部を形成することができることを理解されたい。」(【0025】)

(ウ)「図3は図2のタグ読取装置100の略図である。図3に示すように電子タグ150はメモリ152を含み、メモリ152は、識別番号、他のユーザ又はシステムが定義するデータ、及びセンサ160からの任意のセンサデータを保持する。メモリ152に接続されたプロセッサ154が、ボード上の論理を処理し、この論理は任意のデータ予備処理、電力制御、及び送信/受信タスクを含む。プロセッサ154は、少ない論理構成部分のみを含むこともでき、又はマイクロプロセッサチップ上にメモリ152を備えるフル機能マイクロプロセッサであってもよい。電源156(例えば、電池、誘導電力変換器、光起電性セルなど)を使い、タグ150に電力を供給し、データ送信をアンテナ158によって放送する。タグ読取装置120は、タグ読取装置-プロセッサ/メモリ-バッファ120と電磁読取コイル122を備える。



」(【0035】、【図3】)

したがって、上記摘記事項(ア)?(ウ)の記載から引用例1には、

「電気的な情報を電子タグを使って転送するシステムであって、電子タグ150はメモリ152を含み、メモリ152は、センサ160からの任意のセンサデータを保持し、メモリ152に接続されたプロセッサ154が、ボード上の論理を処理し、この論理は任意のデータ予備処理、電力制御、及び送信/受信タスクを含み、プロセッサ154は、少ない論理構成部分のみを含むこともでき、又はマイクロプロセッサチップ上にメモリ152を備えるフル機能マイクロプロセッサであってもよく、電源156(例えば、電池、誘導電力変換器、光起電性セルなど)を使い、タグ150に電力を供給し、データ送信をアンテナ158によって放送する、システム。」(以下、「引用例1発明」という。)が開示されているものと認められる。


2.引用例2

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2006-4015号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(エ)「図1は本発明のバッテリーレス型プログラム制御可能な論理回路付きRFID応答器の第一実施例における概略回路ブロック図であり、CPU内蔵RFIDチップ1にCPU7を内蔵して構成したRFID応答器を表している。
該CPU内蔵RFIDチップ1は、図5で示した同調回路15,整流回路16,変復調回路17,電源回路18及びロジック回路19等で構成されるRFID部5と、CPU7と信号伝送を行うための通信インターフェース部6と、センサー14からの入力信号を処理するための外部インターフェース部8と、前記通信インターフェース部6や外部インターフェース部8を制御するためのCPU7で構成する。また、CPU内蔵RFIDチップ1のアンテナ接続端子10にアンテナ4を接続し、コンデンサ接続端子11に大容量コンデンサ9を接続してRFID応答器を構成する。更には必要に応じてセンサー14をセンサー接続端子13に接続する。
上記CPU7内にはメモリ部を含み、該CPU7をソフト制御するためのプログラムと、センサー14からの入力信号を処理して得られた計測データ又は入力データ等を蓄積することができる。なお、外部インターフェース8にアナログ出力のセンサー14を接続した場合、温度,圧力,光,加速度等のあらゆるエネルギー状態の検出ができ、デジタル出力のセンサー14を接続した場合、直接データを入力することができる。」(【0023】?【0025】)


第5.対比・判断

1.対比

本願発明と引用例1発明とを対比する。

(1)引用例1発明は、「電気的な情報を電子タグを使って転送するシステム」であり、転送する電気的な情報は、「センサ160からの任意のセンサデータ」であるから、本願発明でいうところの『タグを含むセンサーシステム』といえる。

(2)引用例1発明においては、「センサ160からの任意のセンサデータはメモリ152に保持」されるのであり、そして、上記摘記事項(ウ)の【図3】からも明らかな様に、引用例1発明にかかる「センサ160」は出力端子を有しているから、本願発明でいうところの『センサー』に対応するといえ、そして、「センサ160の出力端子」は「メモリ152」に対して電気通信する様に配置している、といえる。

(3)引用例1発明にかかる「プロセッサ154」は、「マイクロプロセッサチップ上にメモリ152を備えるフル機能マイクロプロセッサであってもよく、電源156(例えば、電池、誘導電力変換器、光起電性セルなど)を使い、タグ150に電力を供給し、データ送信をアンテナ158によって放送する」のであるから、本願発明でいうところの『無線周波チップ』に対応するといえ、そして、上記摘記事項(ウ)の【図3】からも明らかな様に、『入力端子』及び『出力端子』を備えているといえる。
また、引用例1発明にかかる「メモリ152」は、本願発明でいうところの『メモリ素子』に対応することも明らかである。
してみると、引用例1発明は、本願発明でいうところの『メモリ素子、入力端子及び出力端子を含む無線周波チップであって、前記入力端子は、前記少なくとも1つのセンサーの前記少なくとも1つの出力端子と電気通信するように配置され、及びメモリに対して電気通信するように配置されている、無線周波チップ』を備えているといえる。

(4)引用例1発明は、「メモリ152は、センサ160からの任意のセンサデータを保持し、メモリ152に接続されたプロセッサ154が、ボード上の論理を処理し、この論理は任意のデータ予備処理、電力制御、及び送信/受信タスクを含み、・・・途中省略・・・電源156(例えば、電池、誘導電力変換器、光起電性セルなど)を使い、タグ150に電力を供給し、データ送信をアンテナ158によって放送する」のであるから、当該「アンテナ158」は「プロセッサ154」の出力端子と電気通信する様に配置されていることは明らかである。
そして、上記(3)で対比した様に「プロセッサ154」は本願発明でいうところの『無線周波チップ』に対応するのであるから、引用例1発明にかかる「アンテナ158」は、本願発明でいうところの『無線周波チップと、前記無線周波チップの前記出力端子と電気通信するように配置された第1アンテナ』といえる。

したがって、両者は、
「タグを含むセンサーシステムであって、前記タグは、センサーであって、前記センサーは少なくとも1つの出力端子を有する、センサーと、メモリ素子、入力端子及び出力端子を含む無線周波チップであって、前記入力端子は、前記少なくとも1つのセンサーの前記少なくとも1つの出力端子と電気通信するように配置され、及びメモリに対して電気通信するように配置されている、無線周波チップと、前記無線周波チップの前記出力端子と電気通信するように配置された第1アンテナとを含み、
前記センサーの前記少なくとも1つの出力端子は、前記メモリ対して電気通信するように配置されている、センサーシステム。」
で一致しており、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明にかかるセンサーには、「センサーの環境の所定の変化に反応して、第1の電気的状態から第2の電気的状態へと遷移するように適合された」との事項が特定されているのに対し、引用例1発明にかかる「センサ160」にはその様な事項が特定されていない点。

[相違点2]
本願発明にかかるメモリ素子には、「少なくとも1ビットを含むバイナリコード化ワードの電気ストレージを含む」との事項が特定されているのに対し、引用例1発明にかかる「メモリ152」にはその様な事項が特定されていない点。

[相違点3]
無線周波チップの入力端子の配置について、本願発明は「メモリの少なくとも1ビットに対して電気通信するように配置されている、」と限定しているのに対し、引用例1発明にはかかる事項が限定されていない点。

[相違点4]
センサーの出力端子の配置について、本願発明は「メモリの複数のビットに対して電気通信するように配置されている、」と限定しているのに対し、引用例1発明にはかかる事項が特定されていない点。

2.判断

(1)[相違点1]及び[相違点2]について

引用例1には、上記摘記事項(イ)で摘記した様に、「電子タグ46に、任意にセンサ47を取り付けることもできる。」、「光、像、熱、電磁、振動、または音響センサを含む環境センサが存在してもよい。所望の適用法に依存して、環境又は位置センサを使うことができる。」、「用いられるセンサの種類に依存して、センサデータは、直接電子タグ46にデジタル形式で送ることもでき、」なる事項が記載されており、センサデータをデジタル形式で出力する環境センサ自体は、本件特許出願の優先権主張日前において普通に知られている事項である。

また、引用例2には、上記摘記事項(エ)で摘記した様に、「CPU7内にはメモリ部を含み、該CPU7をソフト制御するためのプログラムと、センサー14からの入力信号を処理して得られた計測データ又は入力データ等を蓄積することができる。なお、外部インターフェース8にアナログ出力のセンサー14を接続した場合、温度,圧力,光,加速度等のあらゆるエネルギー状態の検出ができ、デジタル出力のセンサー14を接続した場合、直接データを入力することができる。」との事項が記載されており、デジタル出力のセンサー14からデータをメモリに入力する場合、当該メモリはデジタル形式でデータを記憶できる形式のものであることは明らかであるから、デジタル形式でデータを記憶できる形式のメモリ自体も本件特許出願の優先権主張日前において普通に知られている事項である。

なお、センサから出力されたデジタル形式の情報は、“0”と“1”の組み合わせからなるバイナリコードであること、及び、センサから出力される情報量によってメモリに記憶するために必要なビット数が変わることは、いずれも自明な事項である。

してみると、[相違点1]及び[相違点2]で特定されている事項は、いずれも本件特許出願の優先権主張日前において普通に知られている事項であるから、引用例1発明において、電子タグが備える「センサ160」及び「メモリ152」を測定対象に応じて本願発明において特定されている様なものに適宜変更することは当業者であれば容易になし得るものと認められる。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1発明と引用例2に開示されている事項より当業者ならば容易に予測することができる程度のものである。

(2)[相違点3]及び[相違点4]について

上記「(1)[相違点1]及び[相違点2]について」で検討した様に、引用例1発明が備える「メモリ152」を測定対象に応じて「デジタル形式でデータを記憶できる形式のもの」に変更することが当業者であれば容易になし得るものであるから、当該変更に伴って必然的に「無線周波チップの入力端子」や「センサーの出力端子」が電気通信するものはデジタル形式である「ビット」であること、及び、情報量に応じてメモリ内で必要となるビット数が変わることも明らかである。

したがって、[相違点3]及び[相違点4]についても、当業者にとって格別なる事項とは認められない。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1発明と引用例2に開示されている事項より当業者ならば容易に予測することができる程度のものである。

(3)まとめ

したがって、本願発明は、引用例1発明と引用例2に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1発明と引用例2に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-06 
結審通知日 2017-03-07 
審決日 2017-03-21 
出願番号 特願2014-550330(P2014-550330)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
P 1 8・ 572- Z (G06K)
P 1 8・ 561- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡北 有平月野 洋一郎  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 佐藤 智康
相崎 裕恒
発明の名称 センサー素子を含む無線周波数識別装置トランスポンダ  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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