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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G |
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管理番号 | 1330955 |
審判番号 | 不服2016-10849 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-19 |
確定日 | 2017-08-01 |
事件の表示 | 特願2012-132398「感光体帯電および除電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 7日出願公開、特開2013- 3582〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成24年6月11日(パリ条約による優先権主張2011年6月15日、米国)の出願であって、平成27年6月5日付けで手続補正書が提出され、平成27年10月9日に拒絶理由が通知され、平成28年1月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月17日に拒絶査定(謄本送達日同年同月22日)がなされ、これに対して平成28年7月19日付けで審判請求書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成28年1月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるとおりのものであって、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。 「感光体に電荷を加え、前記感光体から電荷を消去するシステムであって、 感光体表面と、 誘電体層および複数の導電層を含む第1帯電デバイスと、 誘電体層および複数の導電層を含む第2帯電デバイスと、 前記第1および第2帯電デバイスの前記複数の導電層に接続される単一の可変交流電圧源と単一の可変直流電圧源を有する単一の電源とを含み、 前記電源によって電圧を加えられると、前記第1帯電デバイスが、前記複数の導電層に交流および直流電圧を両方とも加えて前記感光体を帯電し、前記第2帯電デバイスが、ゼロ電位電荷を出力する状態で前記複数の導電層に交流電圧を加えて前記感光体上に残留する任意の直流電荷を消去するように、前記帯電デバイスが構成される、システム。」 第3 刊行物 原査定の拒絶の理由で引用され、本願優先日前である平成12年9月22日に頒布された特開2000-258975号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある。 1 「【0010】一方、帯電用放電電極には、第2の直流バイアス電源から被帯電体の帯電電位と同極性の直流バイアス電圧が印加される。これにより、帯電用電極に形成された放電口がら沿面コロナ放電が発生し、放電口付近の空気中のガスがイオン化され被帯電体が帯電される。なお、除電用放電電極は、被帯電体の帯電電位と逆極性の電圧を印加せずに0Vとなるようにしてもよい。 2 「【0016】感光体14は、図中矢印B方向に回転し、除電帯電装置10によりその表面を一様に帯電される。露光装置16は、除電帯電装置10により帯電された感光体14を形成すべき画像に応じて露光し、静電潜像を形成する。現像装置18は、静電潜像が形成された部位にトナーを付着させることにより現像する。転写装置20は、矢印A方向に搬送される記録用紙26に感光体14上に形成されたトナー像を転写する。記録用紙26は、トナー像が転写された後、定着装置28により定着処理が施され、画像形成が終了する。 【0017】一方、感光体14は、クリーニング装置22により転写されずに残ったトナーがクリーニングされた後、除電帯電装置10により除電され、1サイクルが終了する。」 3 「【0019】除電帯電装置10は、アルミナ基板30上に帯状の除電用の励起電極32が感光体14の回転方向(図2において矢印B方向)上流側に形成されると共に、帯電用の励起電極34A、34B、34Cが前記回転方向の下流側に形成されている。 【0020】そして、これらの電極を被うように誘電体層36が形成され、さらに、誘電体層36を挟んで励起電極32と対向する位置に放電穴38が複数個形成された放電電極40が形成され、誘電体層36を挟んで励起電極34A、34B、34Cと対向する位置に放電穴42A、42B、42Cが複数個形成された放電電極44が形成されている。」 【0021】励起電極32は、交流電源46に接続されており、交流電源46は直流バイアス電源48のプラス側及び放電電極40も接続されている。直流バイアス電源48のマイナス側は接地されている。 【0022】励起電極34A、34B、34Cは、それぞれ交流電源50に接続されており、交流電源50は直流バイアス電源52のマイナス側及び放電電極44にも接続されている。直流バイアス電源52のプラス側は接地されている。」 4 「【0039】図6に示す除電帯電装置10”が図1に示す除電帯電装置10と異なる点は、交流電源46をなくし、励起電極32及び励起電極34A、34B、34Cに供給する交流電圧を共に交流電源50から供給するようにした点と、直流バイアス電源52のマイナス側と接続していた交流電源50を接地するようにした点である。」 5 【図6】から、直流バイアス電源52のマイナス側は放電電極44に接続されていること、及び直流バイアス電源48は可変直流電圧源であり、プラス側は放電電極40に接続されていることが見て取れる。 6 上記2の「感光体」は「除電帯電装置10によりその表面を一様に帯電され」、「除電帯電装置10により除電され」るとの記載からすれば、「感光体」の「表面」の「帯電」、「除電」は、「感光体」と「除電帯電装置」からなるシステムにより行われることは自明であるから、刊行物には、感光体表面を帯電、除電するシステムが記載されているといえる。 上記3の記載から、「誘電体層36を挟んで除電用の励起電極32と対向する位置に形成された放電電極40」は、「除電用放電電極」であるといえる。同様に、「誘電体層36を挟んで帯電用の励起電極34A、34B、34Cと対向する位置に形成された放電電極44」は「帯電用放電電極」といえる。 上記1ないし6を総合すると、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「感光体表面を帯電、除電するシステムであって、 除電用の励起電極が感光体の回転方向上流側に形成されると共に、帯電用の励起電極が前記回転方向の下流側に形成され、 これらの電極を被うように誘電体層が形成され、誘電体層を挟んで除電用の励起電極と対向する位置に除電用放電電極が形成され、誘電体層を挟んで帯電用の励起電極と対向する位置に帯電用放電電極が形成され、 除電用の励起電極及び帯電用の励起電極に供給する交流電圧を共に交流電源から供給するようにし、交流電源は接地され、 直流バイアス電源52のプラス側は接地され、 直流バイアス電源52は、マイナス側は帯電用放電電極に接続され、 直流バイアス電源48のマイナス側は接地され、 直流バイアス電源48は、可変直流電圧源であり、プラス側は除電用放電電極に接続され、 除電用放電電極は0Vとなる、 システム。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「感光体表面を帯電」すること、「感光体表面を除電」することは、それぞれ本願発明の「感光体に電荷を加え」ること、「感光体から電荷を消去する」ことに相当する。 引用発明は「感光体表面を帯電、除電する」から、本願発明が備える「感光体表面」を備えている。 引用発明の「帯電用の励起電極、誘電体層、及び誘電体層を挟んで帯電用の励起電極と対抗する位置に形成された帯電用放電電極」は、本願発明の「誘電体層および複数の導電層を含む第1帯電デバイス」に相当する。 引用発明の「除電用の励起電極、誘電体層、及び誘電体層を挟んで除電用の励起電極と対抗する位置に形成された除電用放電電極」は、本願発明の「誘電体層および複数の導電層を含む第2帯電デバイス」に相当する。 引用発明の「除電用の励起電極及び帯電用の励起電極に供給する交流電圧を共に供給する交流電源」は、本願発明の「第1および第2帯電デバイスの前記複数の導電層に接続される単一の交流電圧源」に相当する。 引用発明の「マイナス側は帯電用放電電極に接続されている直流バイアス電源52」は、本願発明の「第1帯電デバイス」の「導電層に接続される直流電圧源」に相当する。 引用発明の「交流電源」と「直流バイアス電源52」と「直流バイアス電源48」とは、3つ合わせて単一の電源を構成しているといえるから、本願発明の「単一の交流電圧源と直流電圧源を有する単一の電源」に相当する。 引用発明において、直流バイアス電源52のマイナス側は帯電用放電電極に接続されており、また、帯電用の励起電極には交流電源から交流電圧が供給されているので、帯電用放電電極と帯電用の励起電極は、直流バイアス電源52による直流電圧と、交流電源による交流電圧の両方とも加わるものである。したがって、引用発明の「帯電用の励起電極、誘電体層及び帯電用放電電極」は、本願発明の「電源によって電圧が加えられると、前記第1の帯電デバイスが、前記複数の導電層に交流および直流電圧を両方とも加えて前記感光体に帯電する第1帯電デバイス」に相当する。 引用発明において、除電用放電電極は0Vであり、除電用の励起電極には交流電源から交流電圧が供給され、除電するものであるから、引用発明の「除電用の励起電極、誘電体層、及び除電用放電電極」は、本願発明の「電源によって電圧が加えられると、ゼロ電位電荷を出力する状態で前記複数の導電層に交流電圧を加えて前記感光体上に残留する任意の直流電荷を消去する第2帯電デバイス」に相当する。 以上より、本願発明と引用発明とは、 「感光体に電荷を加え、前記感光体から電荷を除去するシステムであって、 感光体表面と、 誘電体層および複数の導電体を含む第1帯電デバイスと、 誘電体層および複数の導電体を含む第2帯電デバイスと、 前記第1および第2帯電デバイスの前記複数の導電層に接続される単一の交流電圧源と、直流電圧源を有する単一の電源とを含み、 前記電源によって電圧を加えられると、前記第1帯電デバイスが、前記複数の導電層に交流および直流電圧を両方とも加えて前記感光体を帯電し、前記第2帯電デバイスが、ゼロ電位電荷を出力する状態で前記複数の導電層に交流電圧を加えて前記感光体上に残留する任意の直流電荷を消去するように、前記帯電デバイスが構成される、システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明は「可変交流電圧源」、「可変直流電圧源」を有するが、引用発明の「交流電圧源」、「直流バイアス電源52」は「可変交流電圧源」、「可変直流電圧源」ではない点。 [相違点2] 本願発明は「単一の直流電圧源」を有するが、引用発明は「直流バイアス電源52」、「直流バイアス電源48」の2つの直流電圧源を有する点。 第5 判断 1 相違点1について 一般に、電気回路の技術分野において、「可変交流電圧源」、「可変直流電圧源」は技術常識であるから、引用発明において、「交流電圧源」、「直流電圧源」をそれぞれ「可変交流電圧源」、「可変直流電圧源」とすることは、当業者が適宜選択できる設計的事項である。また、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は、格別の技術的意義を奏するものではない。 よって、上記相違点に係る本願発明特定事項は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 2 相違点2について 一般に、電気回路の技術分野において、接地により電位を0Vとすることは技術常識であるから、引用発明において、「除電用放電電極」の電位を0Vとするために、「直流バイアス電源48」を省いて「除電用放電電極」を直接接地し、単一の直流電圧源とすることは、当業者が適宜選択できる設計的事項である。また、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は、格別の技術的意義を奏するものではない。 また、本願発明全体が奏する効果は、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 第6 まとめ 以上より、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、本願は特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-01 |
結審通知日 | 2017-03-06 |
審決日 | 2017-03-17 |
出願番号 | 特願2012-132398(P2012-132398) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 國田 正久 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
黒瀬 雅一 植田 高盛 |
発明の名称 | 感光体帯電および除電システム |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 豊島 匠二 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 西島 孝喜 |