• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A01K
管理番号 1330968
審判番号 不服2016-11163  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-25 
確定日 2017-08-24 
事件の表示 特願2012-284068「管状体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月 7日出願公開、特開2014-124148、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月27日の出願であって、平成27年11月13日付けで拒絶理由通知がされ、平成27年12月16日付けで手続補正がされ、平成28年5月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年7月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年5月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-240280号公報

第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成27年12月16日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-2は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
繊維強化樹脂材によって形成される管状体本体上に、複数色の着色材をドット状に重ねながら色相を形成した着色層を備えた装飾層を有し、
前記着色層は、前記着色材の形成密度が異なる多角形状の複数の領域を具備し、隣接する多角形状の領域の間には直線状の境界が形成されており、
前記多角形状の複数の領域は夫々が矩形形状であり、規則的に組み合わされると共に、ドットが付与されない領域、及び/又は、ドットに濃淡を有する領域が含まれており、
前記各領域を区分けする直線状の境界は、略平行に形成されると共に、直交する方向に交差させて、前記多角形状の複数の領域で格子模様を形成していることを特徴とする管状体。

【請求項2】
繊維強化樹脂材によって形成される管状体本体上に、複数色の着色材をドット状に重ねながら色相を形成した着色層を備えた装飾層を有し、
前記着色層は、前記着色材の形成密度が異なる多角形状の複数の領域を具備し、隣接する多角形状の領域の間には直線状の境界が形成されており、
前記複数の多角形状の領域は、規則的に配列され、異なる形状を隣接させると共に、ドットが付与されない領域、及び/又は、ドットに濃淡を有する領域が含まれており、前記各領域を区分けする直線状の境界を所定の角度で交差させて、前記多角形状の複数の領域で複数軸織り模様を形成していることを特徴とする管状体。」

なお、本願発明3-5の概要は以下のとおりである。

本願発明3は、本願発明1-2を減縮した発明である。

本願発明4は、本願発明1-3を減縮した発明である。

本願発明5は、本願発明1-4を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
この発明は、曲面状の外周面に装飾が施された釣竿に関する。」

「【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る釣竿は、無数のドットを有するドットの集合体を大小様々に組み合わせて、曲面状の外周面に装飾部を形成したことを特徴とする。
また、前記ドットの集合体のドットの密度を前記集合体ごとに変化させて色の濃淡を表現するようにしたことが好適である。
また、前記集合体の大きさは、30μmから150μmであることが好適である。

【0008】
前記ドットの集合体は、隣接する集合体との間隔を調整することにより色の濃淡を表現するようにしたことが好適である。

【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ドットの集合体の中に大きさや色が異なる小さなドットが点在しているので、1つのドットの集合体で色の濃淡、色調等を任意に設定することができるとともに、ドット集合体の配置を設定することにより、外観の濃淡等を簡単に調整可能な釣竿を提供することができる。」

「【0010】
……
図1には、中空または中実の釣竿10の曲面状の外周面に印刷により例えば文字「A」が装飾として施されている例を示す。……

【0011】
以下、曲面状である釣竿10の外周面に施された図1中の文字「A」を釣竿10の装飾部12と称することとする。……
図2から図4に示す装飾部12は、コンピュータ制御により、無数のドットdが集められたドットdの集合体(以下、主として単に集合体と称する)αが多数集められて表現されている。なお、上述したように、ドットdとは、顔料、染料を含む合成樹脂の流滴が微細な点状に釣竿の表面に付着して形成される、微細な点のことである。」

「【0014】
ドットdには、減法混合の三原色(通常、黄,マゼンタ,シアン、及び、黒または所望の色に調色されたインキ)が用いられる。そして、集合体αは、これらの色を組み合わせて種々の色が表現される。……」

「【0020】
なお、本実施形態では装飾部12として文字「A」を印刷により施した場合について説明したが、装飾部12は、例えば竹の節の形状、木の年輪、木目等、種々の形状や模様、色彩をドットの集合体として表現することができる。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「中空の釣竿10の曲面状の外周面に印刷により装飾部12が施され、
装飾部12は、無数のドットdが集められたドットdの集合体αが多数集められて表現されており、
ドットdとは、顔料、染料を含む合成樹脂の流滴が微細な点状に釣竿の表面に付着して形成される、微細な点のことであり、
ドットdには、減法混合の三原色(通常、黄,マゼンタ,シアン、及び、黒または所望の色に調色されたインキ)が用いられ、
集合体αは、これらの色を組み合わせて種々の色が表現され、
装飾部12は、例えば竹の節の形状、木の年輪、木目等、種々の形状や模様、色彩をドットの集合体として表現することができる釣竿。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「中空の釣竿10」は、外周面が曲面状であるから、本願発明1における「管状体」に相当する。

イ 引用発明における「釣竿10」には、「無数のドットdが集められたドットdの集合体αが多数集められて表現され」た「装飾部12」が施されており、「ドットdとは、顔料、染料を含む合成樹脂の流滴が微細な点状に釣竿の表面に付着して形成される、微細な点のことであり、ドットdには、減法混合の三原色(通常、黄,マゼンタ,シアン、及び、黒または所望の色に調色されたインキ)が用いられ、集合体αは、これらの色を組み合わせて種々の色が表現され」ている。してみると、引用発明における「釣竿10」は、本願発明1における「管状体」と同様に、その本体上に「複数色の着色材をドット状に重ねながら色相を形成した着色層を備えた装飾層を有」するものであると認められる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「管状体本体上に、複数色の着色材をドット状に重ねながら色相を形成した着色層を備えた装飾層を有する管状体。」

(相違点1)
本願発明1の「管状体本体」は「繊維強化樹脂材によって形成される」のに対し、引用発明の「釣竿10」はそのように特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1では、「前記着色層は、前記着色材の形成密度が異なる多角形状の複数の領域を具備し、隣接する多角形状の領域の間には直線状の境界が形成されており、前記多角形状の複数の領域は夫々が矩形形状であり、規則的に組み合わされると共に、ドットが付与されない領域、及び/又は、ドットに濃淡を有する領域が含まれており、前記各領域を区分けする直線状の境界は、略平行に形成されると共に、直交する方向に交差させて、前記多角形状の複数の領域で格子模様を形成している」のに対し、引用発明では、「装飾部12は、無数のドットdが集められたドットdの集合体αが多数集められて表現されており、」かつ「集合体αは、これらの色を組み合わせて種々の色が表現され、」また、「装飾部12は、例えば竹の節の形状、木の年輪、木目等、種々の形状や模様、色彩をドットの集合体として表現することができる」点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、釣竿を繊維強化樹脂材によって形成することは、例えば特開2010-221568号公報(特に請求項1、段落0001を参照。)記載されているように、周知技術である。したがって、引用発明において、釣竿を繊維強化樹脂材によって形成することは、当業者が容易に想到できたものである。
次に、上記相違点2について検討する。引用発明は、「装飾部12は、無数のドットdが集められたドットdの集合体αが多数集められて表現されており、」かつ「集合体αは、これらの色を組み合わせて種々の色が表現され」ているものである。しかしながら、本願発明1のように「前記着色層は、前記着色材の形成密度が異なる多角形状の複数の領域を具備し、隣接する多角形状の領域の間には直線状の境界が形成されて」いるものではない。また、引用発明は、「装飾部12は、例えば竹の節の形状、木の年輪、木目等、種々の形状や模様、色彩をドットの集合体として表現することができる」ものである。しかしながら、特定の模様を表現するために、「前記着色層は、前記着色材の形成密度が異なる多角形状の複数の領域を具備し、隣接する多角形状の領域の間には直線状の境界が形成されて」いるようになすことに加え、「前記多角形状の複数の領域は夫々が矩形形状であり、規則的に組み合わされると共に、ドットが付与されない領域、及び/又は、ドットに濃淡を有する領域が含まれて」いるようになすことや、「前記各領域を区分けする直線状の境界は、略平行に形成されると共に、直交する方向に交差させて、前記多角形状の複数の領域で格子模様を形成している」ことは、引用文献1には記載も示唆もされておらず、また、模様を表現するために通常用いられる一般的な手法でもないので、当業者といえども容易に想到することはできない。そして、本願発明1は、相違点2に係る構成を有することにより、「単なる格子状の模様層にしただけでは平面的になると共に、グラデーションを出すことが難しく、実際のプリプレグシートで視認できるような精密性を出すことはできない。」(段落0004を参照。)といった課題を解決するものである。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明とを対比すると、本願発明1に対して検討したように、本願発明2と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「管状体本体上に、複数色の着色材をドット状に重ねながら色相を形成した着色層を備えた装飾層を有する管状体。」

(相違点1)
本願発明2の「管状体本体」は「繊維強化樹脂材によって形成される」のに対し、引用発明の「釣竿10」はそのように特定されていない点。
(相違点3)
本願発明2では、「前記着色層は、前記着色材の形成密度が異なる多角形状の複数の領域を具備し、隣接する多角形状の領域の間には直線状の境界が形成されており、前記複数の多角形状の領域は、規則的に配列され、異なる形状を隣接させると共に、ドットが付与されない領域、及び/又は、ドットに濃淡を有する領域が含まれており、前記各領域を区分けする直線状の境界を所定の角度で交差させて、前記多角形状の複数の領域で複数軸織り模様を形成している」のに対し、引用発明では、「装飾部12は、無数のドットdが集められたドットdの集合体αが多数集められて表現されており、」かつ「集合体αは、これらの色を組み合わせて種々の色が表現され、」また、「装飾部12は、例えば竹の節の形状、木の年輪、木目等、種々の形状や模様、色彩をドットの集合体として表現することができる」点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、本願発明1に対して検討したように、引用発明において、釣竿を繊維強化樹脂材によって形成することは、当業者が容易に想到できたものである。
次に、上記相違点3について検討する。引用発明は、「装飾部12は、無数のドットdが集められたドットdの集合体αが多数集められて表現されており、」かつ「集合体αは、これらの色を組み合わせて種々の色が表現され」ているものである。しかしながら、本願発明2のように「前記着色層は、前記着色材の形成密度が異なる多角形状の複数の領域を具備し、隣接する多角形状の領域の間には直線状の境界が形成されて」いるものではない。また、引用発明は、「装飾部12は、例えば竹の節の形状、木の年輪、木目等、種々の形状や模様、色彩をドットの集合体として表現することができる」ものである。しかしながら、特定の模様を表現するために、「前記着色層は、前記着色材の形成密度が異なる多角形状の複数の領域を具備し、隣接する多角形状の領域の間には直線状の境界が形成されて」いることに加え、「前記複数の多角形状の領域は、規則的に配列され、異なる形状を隣接させると共に、ドットが付与されない領域、及び/又は、ドットに濃淡を有する領域が含まれて」いることや、「前記各領域を区分けする直線状の境界を所定の角度で交差させて、前記多角形状の複数の領域で複数軸織り模様を形成している」ことは、引用文献1には記載も示唆もされておらず、また、模様を表現するために通常用いられる一般的な手法でもないので、当業者といえども容易に想到することはできない。そして、本願発明2は、相違点3に係る構成を有することにより、「単なる格子状の模様層にしただけでは平面的になると共に、グラデーションを出すことが難しく、実際のプリプレグシートで視認できるような精密性を出すことはできない。」(段落0004を参照。)といった課題を解決するものである。
したがって、本願発明2は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3-5について
本願発明3-5も、本願発明1の相違点2に係る構成と同一の構成または本願発明2の相違点3に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1-2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-5は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-14 
出願番号 特願2012-284068(P2012-284068)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A01K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 太田 恒明
井上 博之
発明の名称 管状体  
代理人 水野 浩司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ