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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1330972
審判番号 不服2016-16433  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-02 
確定日 2017-08-29 
事件の表示 特願2015- 41376「顧客対応支援システム、およびその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 5日出願公開、特開2016-162281、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年3月3日の出願であって,平成28年5月20日付けで拒絶理由通知がされ,同年6月13日付けで手続補正がされ,同年7月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年12月5日に前置報告がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年7月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-8に係る発明は,以下の引用文献1-3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-164615号公報
2.特開2012-238205号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
3.特開2014-63378号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)


第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下,「本件補正」という。)は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
本件補正によって,請求項1に係る発明は,本件補正前に
「前記端末装置または前記モバイル端末から受付コードが設定された受付データを受信することに応じて、当該受信した受付データで前記受付データ記憶部を更新する受付データ更新手段であって、端末装置から受付データを受信した場合、前記受付データに含まれる作業担当者に基づいて、前記作業担当者データ記憶部からモバイル端末アドレスを取得して、当該取得したモバイル端末アドレスに前記受付データを配信する、受付データ更新手段」
であったものを,本件補正後に
「前記モバイル端末から受付コードが設定された第2の受付データを受信したことに応じて、当該受信した第2の受付データで前記受付データ記憶部を更新し、および、
前記端末装置から受付コードが設定された第3の受付データを受信したことに応じて、当該受信した第3の受付データで前記受付データ記憶部を更新し、前記第3の受付データに含まれる作業担当者に基づいて、前記作業担当者データ記憶部からモバイル端末アドレスを取得して、当該取得したモバイル端末アドレスに前記第3の受付データを配信する、受付データ更新手段」
とし,かつ,本件補正前に
「前記モバイル端末は、
前記配信された受付データを受信し、
前記受付データを受信したことに応答して、前記受付データの受信を知らせる通知を出力し、および
前記受信した受付データを画面に表示し、前記受付データは、前記受付データに含まれる対応予定日時ごとにカレンダー形式で表示される」
よう構成されるものであったものを,本件補正後に
「前記モバイル端末は、
前記配信された第1および/または第3の受付データを受信し、
前記第1および/または第3の受付データを受信したことに応答して、前記第1および/または第3の受付データの受信を知らせる通知を出力し、および
前記受信した第1および/または第3の受付データを画面に表示し、前記第1および/または第3の受付データは、前記第1および/または第3の受付データに含まれる対応予定日時ごとにカレンダー形式で表示される」
よう構成されるものとする補正は,本件補正前の「受付データ更新手段」における「受付データ」につき,「モバイル端末」から受信する受付データを「第2の受付データ」とし,「端末装置」から受信する受付データを「第3の受付データ」とし,「受付データ記憶部」で更新される受付データが「第2の受付データ」及び「第3の受付データ」であることを限定的に減縮するとともに,モバイル端末では,「第1の受付データおよび/または第3の受付データ」を受信し,通知を出力し,カレンダー形式で表示することを限定的に減縮するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また,当該追加された事項は,当初明細書の段落56-73に記載されているから,当該補正は新規事項を追加するものではないといえる。
また,請求項4についてなされた補正事項も,請求項1についてなされた,上記補正事項に準じたものであって,同様の理由により,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,本件補正後の請求項1-7に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は,平成28年11月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
顧客からの問い合わせに対応する受付者と、顧客宅で作業を行う作業担当者との間での情報共有を可能とする顧客対応支援システムであって、前記システムは、顧客対応支援サーバ、前記作業担当者が所有するモバイル端末、および受付者が利用する端末装置を備え、
前記顧客対応支援サーバは、
顧客コード、顧客名、郵便番号、および住所を含む顧客情報を格納する顧客データ記憶部と、
顧客コード、メーカー、器種、および製造年月を含む設備情報を格納する設備データ記憶部と、
郵便番号、担当営業所、作業担当者、および前記作業担当者が所有するモバイル端末のモバイル端末アドレスを含む作業担当者情報を格納する作業担当者データ記憶部と、
受付コード、顧客コード、顧客名、郵便番号、住所、対応予定日時、担当営業所、作業担当者、および受付メモを含む受付情報を格納する受付データ記憶部と、
受付者が利用する端末装置からの検索要求に応じて、前記顧客データ記憶部、前記設備データ記憶部、または前記受付データ記憶部からデータを取得し、前記端末装置に送信するデータ取得手段と、
前記端末装置から顧客コードを含む受付データ作成指示を受信したことに応じて、当該顧客コードに対応する顧客名、郵便番号、住所を前記顧客データ記憶部から取得し、および、前記取得した郵便番号に対応する担当営業所、および作業担当者を前記作業担当者データ記憶部から取得し、受付データを作成して前記端末装置に送信する受付データ作成手段と、
前記端末装置から受付コードが設定されていない第1の受付データを受信したことに応じて、受付コードを設定して前記受付データ記憶部に登録し、および前記受信した第1の受付データに含まれる作業担当者に基づいて、前記作業担当者データ記憶部からモバイル端末アドレスを取得して、当該取得したモバイル端末アドレスに前記第1の受付データを配信する受付データ登録手段と、
前記モバイル端末から受付コードが設定された第2の受付データを受信したことに応じて、当該受信した第2の受付データで前記受付データ記憶部を更新し、および、
前記端末装置から受付コードが設定された第3の受付データを受信したことに応じて、当該受信した第3の受付データで前記受付データ記憶部を更新し、前記第3の受付データに含まれる作業担当者に基づいて、前記作業担当者データ記憶部からモバイル端末アドレスを取得して、当該取得したモバイル端末アドレスに前記第3の受付データを配信する、受付データ更新手段と
を備え、
前記モバイル端末は、
前記配信された第1および/または第3の受付データを受信し、
前記第1および/または第3の受付データを受信したことに応答して、前記第1および/または第3の受付データの受信を知らせる通知を出力し、および
前記受信した第1および/または第3の受付データを画面に表示し、前記第1および/または第3の受付データは、前記第1および/または第3の受付データに含まれる対応予定日時ごとにカレンダー形式で表示される
ように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記端末装置または前記モバイル端末から、受付コード、修理依頼先情報、および請求先情報を含む修理依頼指示を受信したことに応じて、前記修理依頼指示に含まれる修理依頼先に、前記受付コードにより特定される受付データと、前記請求先情報とを送信する修理依頼手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記顧客データ記憶部は、保証サービスに加入しているか否かを示す保証サービス加入フラグをさらに含む顧客情報を格納し、
前記請求先情報は、前記保証サービス加入フラグおよび前記製造年月に基づいて、顧客、または受付者と作業担当者とが所属する事業者が設定されることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
顧客コード、顧客名、郵便番号、および住所を含む顧客情報を格納する顧客データ記憶部と、顧客コード、メーカー、器種、および製造年月を含む設備情報を格納する設備データ記憶部と、郵便番号、担当営業所、作業担当者、および前記作業担当者が所有するモバイル端末のモバイル端末アドレスを含む作業担当者情報を格納する作業担当者データ記憶部と、受付コード、顧客コード、顧客名、郵便番号、住所、対応予定日時、担当営業所、作業担当者、および受付メモを含む受付情報を格納する受付データ記憶部とを備えた顧客対応支援サーバにおいて、
前記顧客対応支援サーバのデータ取得手段が、端末装置から顧客検索要求を受信したことに応答して、前記顧客データ記憶部から顧客データを取得して送信するステップと、
前記データ取得手段が、設備検索要求を受信したことに応答して、前記設備データ記憶部から設備データを取得して送信するステップと、
前記顧客対応支援サーバの受付データ作成手段が、前記端末装置から顧客コードを含む受付データ作成指示を受信したことに応答して、当該顧客コードに対応する顧客名、郵便番号、住所を前記顧客データ記憶部から取得し、および、前記取得した郵便番号に対応する担当営業所、および作業担当者を前記作業担当者データ記憶部から取得し、受付データを作成して送信するステップと、
前記顧客対応支援サーバの受付データ登録手段が、前記端末装置から受付コードが設定されていない第1の受付データを受信したことに応答して、受付コードを設定して前記受付データ記憶部に登録するステップと、
前記受付データ登録手段が、前記受信した第1の受付データに含まれる作業担当者に基づいて、前記作業担当者データ記憶部からモバイル端末アドレスを取得して、当該取得したモバイル端末アドレスに前記第1の受付データを配信するステップと、
前記顧客対応支援サーバの受付データ更新手段が、前記モバイル端末から受付コードが設定された第2の受付データを受信したことに応答して、当該受信した第2の受付データで前記受付データ記憶部を更新するステップと、
前記受付データ更新手段が、前記端末装置から受付コードが設定された第3の受付データを受信したことに応じて、当該受信した第3の受付データで前記受付データ記憶部を更新し、および前記第3の受付データに含まれる作業担当者に基づいて、前記作業担当者データ記憶部からモバイル端末アドレスを取得して、当該取得したモバイル端末アドレスに前記第3の受付データを配信するステップと
を実行し、
前記モバイル端末において、
前記配信された第1および/または第3の受付データを受信するステップと、
前記第1および/または第3の受付データを受信したことに応答して、前記第1および/または第3の受付データの受信を知らせる通知を出力するステップと、
前記受信した第1および/または第3の受付データを画面に表示するステップであって、前記第1および/または第3の受付データは、前記第1および/または第3の受付データに含まれる対応予定日時ごとにカレンダー形式で表示される、ステップと
を実行することを特徴とする方法。
【請求項5】
前記顧客対応支援サーバの修理依頼手段が、前記端末装置または前記モバイル端末から、受付コード、修理依頼先情報、および請求先情報を含む修理依頼指示を受信したことに応答して、前記修理依頼指示に含まれる修理依頼先に、前記受付コードにより特定される受付データと、前記請求先情報とを送信するステップとをさらに実行することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記顧客データ記憶部は、保証サービスに加入しているか否かを示す保証サービス加入フラグをさらに含む顧客情報を格納し、
前記請求先情報は、前記保証サービス加入フラグおよび前記製造年月に基づいて、顧客、または受付者と作業担当者とが所属する事業者が設定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。」


第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0002】
従来、顧客からの依頼に従って作業等を行う場合等に、その依頼を予め設定された基準に従って各区分に分類し、その区分を担当する担当者に各依頼を割り当てることが行われていた。…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記方法において、担当区域によっては作業依頼が多い区域と少ない区域とが生じてしまい、全体として効率的に作業を進められない問題があった。また、区域ごとの作業の件数の差を解消するために作業指示者等が指示を行うようにすると、作業指示者に負担がかかる。」

(2)「【0041】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した作業担当者支援システムについての第1の実施形態を図1?図13に従って説明する。…(中略)…
管理サーバ11は、顧客からの作業依頼を受付ける管理センタに設置される。…(中略)…
【0043】
管理サーバ11は、ネットワークNを介して作業担当者端末13に接続されている。作業担当者端末13は、作業担当者が使用する携帯電話の端末であり、GPS(Global Positioning System)機能を有する。…(中略)…
【0044】
また、管理サーバ11は、サービス部門端末15及び故障診断サーバ16と、ネットワークNを介して接続されている。サービス部門端末15は、管理センタに設置され、受付担当者又は作業指示者が使用する端末である。このサービス部門端末15は、顧客から受付けた作業依頼情報を入力するための画面を表示したり、受付けた作業依頼情報を管理サーバ11に送信したりすると共に、故障診断サーバ16から受信した作業依頼に対する故障の原因及び対処方法等の情報を表示部に表示する。…(中略)…ここで、管理サーバ11、作業担当者端末13、サービス部門端末15及び故障診断サーバ16はコンピュータシステムを構成する。
【0045】
また、管理サーバ11は、受付情報記憶部20、受付詳細情報記憶部21、顧客情報記憶部22、担当者情報記憶部23、及び担当者詳細情報記憶部24を有する。なお、受付情報記憶部20は、受付情報記憶手段及び作業受付情報記憶手段に対応する。担当者情報記憶部23は、特許請求の範囲の担当者情報記憶手段に対応する。
【0046】
次に、各記憶部のデータ構造を図2に従って説明する。
受付情報記憶部20には、顧客からの作業依頼を受付けた際に入力された、作業受付情報としての受付情報が、受付番号ごとに格納されている。受付情報には、受付番号、顧客コード、エリアコード、機種、シリアルナンバー(S/N)、受付日時、作業日時、指定担当者、作業の緊急の要否、時間指定及び機器の不具合に関する状況についての情報が格納されている。エリアコードは、顧客先である作業位置に対応する区域の識別子である。また、作業日時は、作業を行う予定日を示す。この作業予定日は、作業指示者によって決定される。この受付情報は、受付番号を識別子としている。
【0047】
受付詳細情報記憶部21には、故障診断サーバ16や作業担当者端末13等から受付けた情報が受付番号ごとに格納されている。受付詳細情報には、受付番号、修理方法、見込み時間、作業を担当した作業担当者の識別子である、担当者コード、作業に必要なスキルの情報である要求スキル、進捗コードが格納されている。…(中略)…
【0048】
顧客情報記憶部22には、顧客に関する情報が顧客ごとに格納されている。…(中略)…顧客情報には、顧客コード、顧客名、住所、エリアコード、電話番号、緯度、経度及び契約状況等の詳細情報が格納されている。エリアコードは、顧客先の住所が含まれる区域の識別子である。緯度及び経度は、顧客の住所に対応している。顧客コードは顧客情報の識別子として用いられ、受付情報の顧客コードに対応している。
【0049】
担当者情報記憶部23には、作業担当者に関する情報が作業担当者ごとに格納されている。作業担当者情報には、担当者コード、担当者名、担当エリアコード、担当機種、スキル、作業担当者端末13の携帯電話番号、作業担当者端末13の電子メールアドレス、管理サーバ11にアクセスする際のID及びパスワードが格納されている。」

(3)「【0051】
次に、サービス部門端末15の表示部に表示される作業依頼画面15aについて、図3に従って説明する。作業依頼画面15aには、受付情報と、顧客から伝えられた機械の故障状況を故障診断サーバ16により故障診断したときの情報とが表示されている。作業依頼画面15aの上部では、受付番号、作業位置である顧客先の名称や住所及び機械の機種等の受付情報が表示されている。」

(4)「【0053】
…(中略)…作業指示者は担当者表示部15jに表示された作業担当者から、作業の対象の機種、要求スキルを満たす作業担当者を選択する。担当者表示部15jに作業担当者の番号が入力された状態で、移動時間表示用ボタン15kをクリックすると、別画面(図示せず)に移動経路と移動時間が表示される。このため、作業指示者は、移動時間が短い作業担当者を選択することが可能である。
【0054】
また、受付番号表示部15iに受付番号が入力され、担当者表示部15jに作業担当者の番号が入力された状態で、通知用ボタン15mをクリックすると、図5に示す通知用画面15qが表示される。通知用画面15qには、依頼詳細表示部15r、編集用ボタン15s及び送信用ボタン15tが表示されている。依頼詳細表示部15rには、作業状況監視用画面15fで選択された作業の情報が表示されており、受付番号、受付日時、作業位置の区域区分、緊急の要否、顧客の情報及び故障に関する情報等が示されている。また、この状態で、送信用ボタン15tをクリックすると、画面の右上方に示された作業担当者に依頼詳細表示部15rの内容を含む電子メールが、作業担当者端末13に送信される。」

(5)「【0059】
次に、管理サーバ11が提供する作業担当者支援システムについて、作業担当者の作業を支援するための各種手順を説明する。
まず、顧客から依頼を受付ける手順について、図9に従って説明する。管理センタに配置される受付担当者等は、電話や電子メール等により、顧客からの作業依頼を受付ける。この作業依頼は、既に設置してある機械に不具合が生じたときに依頼されるものである。受付担当者は、顧客から、顧客コード又は顧客名、機械の機種、シリアルナンバー及び故障状況等についての情報を得て、サービス部門端末15に入力する。さらに、管理センタの受付担当者は、受付番号、受付日時、作業予定日、必要に応じて緊急の要否、時間の指定、担当者の指定に関する情報等をサービス部門端末15に入力する(S1-1)。サービス部門端末15にそれらの情報が入力されると、サービス部門端末15は、管理サーバ11及び故障診断サーバ16にそれらの情報を送信する(S1-2)。管理サーバ11は、それらの情報を受信して受付情報記憶部20に記憶する(S1-3)。」

(6)「【0065】
次に、作業担当者が作業を受任する手順について、図13に従って説明する。
…(中略)…作業担当者により一つの作業が選択され、案件受取ボタン13iが選択されると、管理サーバ11に受任報告としての進捗更新命令が送信される(S5-5)。管理サーバ11は、この進捗更新命令を受信すると、選択された作業の進捗コードと、作業担当者の進捗コードとを「01」、すなわち受任済みとする。そして、受付詳細情報に担当者コードを格納して、担当者詳細情報と受付詳細情報を更新する(S5-6)。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「顧客からの依頼に従って作業等を行う作業担当者支援システムであって,
依頼を予め設定された基準に従って各区分に分類し,その区分を担当する担当者に各依頼を割り当てて顧客先に設置された機器の保守業務に適用され,
担当区域によっては作業依頼が多い区域と少ない区域とが生じてしまい,全体として効率的に作業を進められないことを課題とし,
顧客からの作業依頼を受付ける管理センタに設置された管理サーバ11と,
前記管理サーバ11とネットワークNを介して接続された,作業担当者が使用する携帯電話の端末である作業担当者端末13と,サービス部門端末15とを備え,
前記管理サーバ11は,受付情報記憶部20,受付詳細情報記憶部21,顧客情報記憶部22,担当者情報記憶部23,及び担当者詳細情報記憶部24を有し,
前記受付情報記憶部20には,顧客からの作業依頼を受付けた際に入力された,作業受付情報としての受付情報が,受付番号ごとに格納されており,前記受付情報には,受付番号,顧客コード,エリアコード,機種,シリアルナンバー(S/N),受付日時,作業日時,指定担当者,作業の緊急の要否,時間指定及び機器の不具合に関する状況についての情報が格納され,
前記受付詳細情報記憶部21には,作業担当者端末13から受付けた情報が受付番号ごとに格納されており,受付詳細情報には,受付番号,修理方法,見込み時間,作業を担当した作業担当者の識別子である,担当者コード,進捗コードが格納され,
顧客情報記憶部22には,顧客に関する情報が顧客ごとに格納され,顧客情報には,顧客コード,顧客名,住所,エリアコード,電話番号,緯度,経度及び契約状況等の詳細情報が格納され,
担当者情報記憶部23には,作業担当者に関する情報が作業担当者ごとに格納され,作業担当者情報には,担当者コード,担当者名,担当エリアコード,担当機種,スキル,作業担当者端末13の携帯電話番号,作業担当者端末13の電子メールアドレス,管理サーバ11にアクセスする際のID及びパスワードが格納され,
前記サービス部門端末15の表示部には作業依頼画面15aが表示され,当該作業依頼画面15aには,受付番号,作業位置である顧客先の名称や住所及び機械の機種等の受付情報が表示され,
作業指示者は担当者表示部15jに表示された作業担当者から、作業の対象の機種、要求スキルを満たす作業担当者を選択し,担当者表示部15jに作業担当者の番号が入力された状態で、移動時間表示用ボタン15kをクリックすると、別画面に移動経路と移動時間が表示され,このため、作業指示者は、移動時間が短い作業担当者を選択することが可能であり,
前記サービス部門端末15の表示部に表示された受付番号表示部15iに受付番号が入力され,担当者表示部15jに作業担当者の番号が入力された状態で,通知用ボタン15mをクリックすると,通知用画面15qが表示され,当該通知用画面15qには,依頼詳細表示部15r,編集用ボタン15s及び送信用ボタン15tが表示され,当該依頼詳細表示部15rには,受付番号,受付日時,作業位置の区域区分,緊急の要否,顧客の情報及び故障に関する情報等が示されており,この状態で,送信用ボタン15tをクリックすると,画面の右上方に示された作業担当者に依頼詳細表示部15rの内容を含む電子メールが,作業担当者端末13に送信され,
管理センタに配置される受付担当者は,電話や電子メール等により,顧客からの作業依頼を受付け,顧客から,顧客コード又は顧客名,機械の機種,シリアルナンバー及び故障状況等についての情報を得て,サービス部門端末15に入力し,受付番号,受付日時,作業予定日,必要に応じて緊急の要否,時間の指定,担当者の指定に関する情報等をサービス部門端末15に入力し,前記サービス部門端末15にそれらの情報が入力されると,管理サーバ11にそれらの情報を送信し,前記管理サーバ11は,それらの情報を受信して受付情報記憶部20に記憶し,
前記作業担当者により一つの作業が選択され,案件受取ボタン13iが選択されると,前記管理サーバ11に受任報告としての進捗更新命令が送信され,前記管理サーバ11は,この進捗更新命令を受信すると,選択された作業の進捗コードと,前記作業担当者の進捗コードとを受任済みとし,前記受付詳細情報に担当者コードを格納して,前記担当者詳細情報と前記受付詳細情報を更新する
作業担当者支援システム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0017】
本明細書では、LPガス容器を使用している顧客宅の設備の保安点検をサポートするシステムについて説明するが、これは単なる例示である。本発明の技術思想は、顧客宅に設置された電気設備、ガス設備、水道設備、および各種の警報機などの保安点検をサポートするシステムに適用可能である。また、本明細書では、メータに貼付された二次元コードを携帯電話機で読み取ることを開示しているが、顧客を識別可能な情報であれば他の手段(例えば、バーコード)であっても良い。」

(2)「【0044】
図7は、携帯電話機110に表示されるスケジュールデータの一例を示す。スケジュールデータは、月、週および日単位で表示することができる。図7の例では、カレンダーは月単位および日単位で表示される。月単位のカレンダーでは、携帯電話機110を操作してカーソルを特定の日付に合わせると、その日の予定のサマリーが画面に表示され、所定の日にカーソルを合わせてボタンを押下すると日単位のカレンダーが表示される。日単位のカレンダーでは、特定の顧客名にカーソルを合わせてボタンを押下するとその顧客の詳細データ(例えば、電話番号、設置容器、設置設備)が表示される。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
本発明は、消火器などの設備を点検するための設備点検システムに用いられる管理サーバ関する。」

(2)「【0017】
設備点検システム10は、スマートフォン11と、管理サーバ100とが、インターネットなどの通信網12を介して接続されている。また、設備点検システム10は、管理サーバ100と、顧客側端末13とが、通信網12を介して接続されている。ここで、管理サーバ100は、管理者側と顧客側とで共有されるので、共有サーバと呼んでもよい。管理サーバ100は管理側端末14と接続される。また、スマートフォン11は、設備点検を請け負った会社の社員によって携帯される。」

(3)「【0023】
表示制御部105は、記憶部103からのカレンダー情報を用いて、設備点検を行う各施設の施設名を、設備点検を行う日に対応するカレンダーの日付欄に配置して表示するモニター106に表示させる。また、表示制御部105は、点検が終了した施設名と点検が終了していない施設名の色を、異なる色で表示させる。」

4.引用文献2および3に記載された周知技術
上記2.(1)-(2)および3.(1)-(3)に記載の事項より,下記の技術は本願出願前周知であったといえる。

「点検システムにおいて,点検スケジュールをカレンダー形式で表示すること。」


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明における「管理サーバ11」,「顧客」,「作業担当者」,「受付担当者」,「作業担当者が使用する携帯電話の端末である作業担当者端末13」,「サービス部門端末15」,「受付番号」,「作業担当者端末13の電子メールアドレス」はそれぞれ,本願発明1における「顧客対応支援サーバ」,「顧客」,「顧客宅で作業を行う作業担当者」,「顧客からの問い合わせに対応する受付者」,「作業担当者が所有するモバイル端末」,「受付者が利用する端末装置」,「受付コード」,「モバイル端末のモバイル端末アドレス」に相当する。

イ 引用発明の「作業担当者支援システム」は,本願発明1の「顧客対応支援システム」と下記の点で相違するものの,“顧客対応支援サーバ”,“作業担当者が所有するモバイル端末”,および“受付者が利用する端末装置”を備える“システム”の点で一致する。

ウ 引用発明の「管理サーバ11」に設けられる「顧客情報記憶部22」には,「顧客コード,顧客名,住所,エリアコード,電話番号,緯度,経度及び契約状況等の詳細情報」が格納されていて,本願発明1の「顧客データ記憶部」とは,“顧客コード、顧客名、および住所を含む顧客情報を格納”する点で一致する。

エ 引用発明の「管理サーバ11」に設けられる「受付情報記憶部20」および「受付詳細情報記憶部21」にはそれぞれ,「受付番号,顧客コード,エリアコード,機種,シリアルナンバー(S/N),受付日時,作業日時,指定担当者,作業の緊急の要否,時間指定及び機器の不具合に関する状況についての情報」および「受付番号,修理方法,見込み時間,作業を担当した作業担当者の識別子である,担当者コード,作業に必要なスキルの情報である要求スキル,進捗コード」が格納されていて,本願発明1の「受付データ記憶部」とは,“受付コード、顧客コード、対応予定日時、作業担当者、および受付メモを含む受付情報を格納”する点で一致する。

オ 引用発明の「管理サーバ11」に設けられる「担当者情報記憶部23」には,「担当者コード,担当者名,担当エリアコード,担当機種,スキル,作業担当者端末13の携帯電話番号,作業担当者端末13の電子メールアドレス,管理サーバ11にアクセスする際のID及びパスワード」が格納されていて,本願発明1の「作業担当者データ記憶部」とは,“作業担当者、および前記作業担当者が所有するモバイル端末のモバイル端末アドレスを含む作業担当者情報を格納”する点で一致する。

カ 引用発明の「サービス部門端末15の表示部」には,「作業依頼画面15aが表示され,当該作業依頼画面15aには,受付番号,作業位置である顧客先の名称や住所及び機械の機種等の受付情報が表示」される一方,「管理センタに配置される受付担当者」が,「電話や電子メール等により,顧客からの作業依頼を受付け,顧客から,顧客コード又は顧客名,機械の機種,シリアルナンバー及び故障状況等についての情報を得て,サービス部門端末15に入力し,受付番号,受付日時,作業予定日,必要に応じて緊急の要否,時間の指定,担当者の指定に関する情報等をサービス部門端末15に入力し,前記サービス部門端末15にそれらの情報が入力されると,管理サーバ11にそれらの情報を送信し,前記管理サーバ11は,それらの情報を受信して受付情報記憶部20に記憶」していることからして,「管理サーバ11」に設けられた「受付情報記憶部20」および「受付詳細情報記憶部21」や「顧客情報記憶部22」からのデータを,「サービス部門端末15」からの検索要求に応じて取得し,当該「サービス部門端末15」に送信していることは明らかであり,本願発明1とは,“受付者が利用する端末装置からの検索要求に応じて、前記顧客データ記憶部、または前記受付データ記憶部からデータを取得し、前記端末装置に送信するデータ取得手段”を有する点で一致する。

キ 引用発明では,「管理センタに配置される受付担当者」が,「電話や電子メール等により,顧客からの作業依頼を受付け,顧客から,顧客コード又は顧客名,機械の機種,シリアルナンバー及び故障状況等についての情報を得て,サービス部門端末15に入力し,受付番号,受付日時,作業予定日,必要に応じて緊急の要否,時間の指定,担当者の指定に関する情報等をサービス部門端末15に入力し,前記サービス部門端末15にそれらの情報が入力されると,管理サーバ11にそれらの情報を送信し,前記管理サーバ11は,それらの情報を受信して受付情報記憶部20に記憶」していることから,本願発明1とは,“前記端末装置から顧客コードを含む受付データ作成指示を受信したことに応じて、当該顧客コードに対応する顧客名、住所を前記顧客データ記憶部から取得し、受付データを作成して前記端末装置に送信する受付データ作成手段”を有する点で一致する。

ク 引用発明では,「サービス部門端末15の表示部に表示された受付番号表示部15iに受付番号が入力され,担当者表示部15jに作業担当者の番号が入力された状態で,通知用ボタン15mをクリックすると,通知用画面15qが表示され,当該通知用画面15qには,依頼詳細表示部15r,編集用ボタン15s及び送信用ボタン15tが表示され,当該依頼詳細表示部15rには,受付番号,受付日時,作業位置の区域区分,緊急の要否,顧客の情報及び故障に関する情報等が示されており,この状態で,送信用ボタン15tをクリックすると,画面の右上方に示された作業担当者に依頼詳細表示部15rの内容を含む電子メールが,作業担当者端末13に送信され」ることから,本願発明1とは,“作業担当者に基づいて、前記作業担当者データ記憶部からモバイル端末アドレスを取得して、当該取得したモバイル端末アドレスに第1受付データを配信する受付データ登録手段”を有する点で一致する。

ケ 引用発明では,「作業担当者により一つの作業が選択され,案件受取ボタン13iが選択されると,前記管理サーバ11に受任報告としての進捗更新命令が送信され,前記管理サーバ11は,この進捗更新命令を受信すると,選択された作業の進捗コードと,前記作業担当者の進捗コードとを受任済みとし,前記受付詳細情報に担当者コードを格納して,前記担当者詳細情報と前記受付詳細情報を更新する」ことから,当該「進捗コード」の情報は本願発明1の「第2の受付データ」に相当するといえ,したがって本願発明1とは,“前記モバイル端末から受付コードが設定された第2の受付データを受信したことに応じて、当該受信した第2の受付データで前記受付データ記憶部を更新”する手段を有する点で一致するといえる。

コ 引用発明の「作業担当者端末13」には,「管理サーバ11」から送信された「メニュー画面」や「依頼リスト画面13a」が表示され,そのうち,「依頼リスト画面13a」内の「受付情報表示部13c」には,「受付番号、緊急の要否、機種、時間指定等の作業依頼についての情報が表示」されていて,当該「受付番号、緊急の要否、機種、時間指定等の作業依頼についての情報」は,本願発明1の「第1の受付データ」に相当するといえ,本願発明1とは,“モバイル端末”が,“第1の受付データを受信し、前記受信した第1の受付データを画面に表示”する点で一致するといえる。


したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「顧客からの問い合わせに対応する受付者と,顧客宅で作業を行う作業担当者との間での情報共有を可能とする顧客対応支援システムであって,前記システムは,顧客対応支援サーバ,前記作業担当者が所有するモバイル端末,および受付者が利用する端末装置を備え,
前記顧客対応支援サーバは,
顧客コード,顧客名,および住所を含む顧客情報を格納する顧客データ記憶部と,
受付コード,顧客コード,対応予定日時,作業担当者,および受付メモを含む受付情報を格納する受付データ記憶部と,
作業担当者,および前記作業担当者が所有するモバイル端末のモバイル端末アドレスを含む作業担当者情報を格納する作業担当者データ記憶部と,
受付者が利用する端末装置からの検索要求に応じて,前記顧客データ記憶部,または前記受付データ記憶部からデータを取得し,前記端末装置に送信するデータ取得手段と,
前記端末装置から顧客コードを含む受付データ作成指示を受信したことに応じて,当該顧客コードに対応する顧客名,住所を前記顧客データ記憶部から取得し,受付データを作成して前記端末装置に送信する受付データ作成手段と,
作業担当者に基づいて,前記作業担当者データ記憶部からモバイル端末アドレスを取得して,当該取得したモバイル端末アドレスに第1受付データを配信する受付データ登録手段と,
前記モバイル端末から受付コードが設定された第2の受付データを受信したことに応じて,当該受信した第2の受付データで前記受付データ記憶部を更新する手段を備え,
前記モバイル端末は,
第1の受付データを受信し,前記受信した第1の受付データを画面に表示する
ように構成されているシステム。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「顧客コード、メーカー、器種、および製造年月を含む設備情報を格納する設備データ記憶部」という構成を備えるのに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。
(相違点2)本願発明1の「受付データ記憶部」は「顧客名、郵便番号、住所、担当営業所」の情報を含むのに対し,引用発明はそのような情報を含まない点。
(相違点3)本願発明1の「受付データ作成手段」は,「郵便番号」を「顧客データ記憶部から取得」し,「前記取得した郵便番号に対応する担当営業所、および作業担当者を前記作業担当者データ記憶部から取得」するのに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。
(相違点4)本願発明1の「受付データ登録手段」は,「前記端末装置から受付コードが設定されていない第1の受付データを受信したことに応じて、受付コードを設定して前記受付データ記憶部に登録」し,「前記受信した第1の受付データに含まれる作業担当者に基づい」て「第1受付データを配信する」のに対し,引用発明では,「受付コード」の設定がいつ行われるか不明であり,また「作業担当者」が,当該「受付コード」が設定された「第1の受付データ」に含まれているのか不明な点。
(相違点5)本願発明1は「前記端末装置から受付コードが設定された第3の受付データを受信したことに応じて、当該受信した第3の受付データで前記受付データ記憶部を更新し、前記第3の受付データに含まれる作業担当者に基づいて、前記作業担当者データ記憶部からモバイル端末アドレスを取得して、当該取得したモバイル端末アドレスに前記第3の受付データを配信する、受付データ更新手段」を有するのに対し,引用発明ではそのような構成を備えていない点。
(相違点6)本願発明1の「モバイル端末」は,「前記第1および/または第3の受付データを受信したことに応答して、前記第1および/または第3の受付データの受信を知らせる通知を出力」し,「前記受信した第1および/または第3の受付データを画面に表示し、前記第1および/または第3の受付データは、前記第1および/または第3の受付データに含まれる対応予定日時ごとにカレンダー形式で表示され」るものであるのに対し,引用発明では,そのような通知や表示について言及されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点2および3について検討する。
本願発明1は,顧客対応の作業担当者を決定するに際し,「顧客データ記憶部」に記憶されている「郵便番号」を取得し,当該取得された「郵便番号に対応する担当営業所、および作業担当者を前記作業担当者データ記憶部から取得」するものである。
一方,引用発明は,「顧客からの依頼に従って作業等を行う作業担当者支援システム」であって,「依頼を予め設定された基準に従って各区分に分類し,その区分を担当する担当者に各依頼を割り当てて顧客先に設置された機器の保守業務」を行うことを前提としていて,「担当区域によっては作業依頼が多い区域と少ない区域とが生じてしまい,全体として効率的に作業を進められないことを課題」とし,「サービス部門端末15の表示部」に「表示された受付番号表示部15iに受付番号が入力され,担当者表示部15jに作業担当者の番号が入力された状態で,通知用ボタン15mをクリックする」すなわち,サービス部門で顧客からの修理依頼を受けた「受付者」が作業を選択し,当該顧客からの修理依頼に基づく作業を請け負う,作業担当者へ電子メールが送られるものである。そして,当該作業者の選択にあたっては,「作業指示者」が,「移動時間が短い作業担当者を選択」するなどして,上記課題,すなわち「担当区域によっては作業依頼が多い区域と少ない区域とが生じてしまい,全体として効率的に作業を進められない」課題の解決を図るものである。
したがって,「郵便番号」に基づいて「担当営業所および作業担当者」を,いわば自動的に決定する本願発明1とは,その根本的技術思想を異にするものというべきであり,郵便番号を用いて作業担当者等を決定する,例えば本願出願前公知の特開2006-318311号公報(平成18年11月24日公開。要約,段落16等参照。)や同特開2005-158046号公報(平成17年6月16日公開。段落39等参照。)などに記載の周知技術の存在をもってしても,引用発明から相違点2および3に係る構成に到達するには,当業者と雖も容易であったということはできない。
したがって,上記相違点2および3以外の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2および3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2,3について
本願発明2および3も,本願発明1の「顧客名、郵便番号、住所、担当営業所」の情報を含む「受付データ記憶部」を備え,「郵便番号」を「顧客データ記憶部から取得」し,「前記取得した郵便番号に対応する担当営業所、および作業担当者を前記作業担当者データ記憶部から取得」する「受付データ作成手段」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2および3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明4-7について
本願発明4は概ね,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1の「顧客名、郵便番号、住所、担当営業所」の情報を含む「受付データ記憶部」を備え,「郵便番号」を「顧客データ記憶部から取得」し,「前記取得した郵便番号に対応する担当営業所、および作業担当者を前記作業担当者データ記憶部から取得」する「受付データ作成手段」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2および3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえず,本願発明4と同一の構成を有する本願発明5-7も同様である。


第7 原査定について
上記「第6 対比・判断」の項で示したとおり,本願発明1-7は,当業者であっても引用発明,引用文献2および3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえず,原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-16 
出願番号 特願2015-41376(P2015-41376)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 須田 勝巳
山崎 慎一
発明の名称 顧客対応支援システム、およびその方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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