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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 B62D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B62D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B62D
管理番号 1331001
審判番号 不服2017-3855  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-16 
確定日 2017-08-29 
事件の表示 特願2015- 89801号「トレーラーの横転防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-199247号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月9日の出願であって、平成28年4月19日付けで拒絶理由が通知され、同年7月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年3月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後当審において同年6月20日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2011-111051号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

[理由1] 平成29年3月16日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
[理由2] この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由3] 本願請求項1に係る発明は、以下の刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開2011-111051号公報(原査定の引用文献1)
刊行物2:実願昭58-132189号(実開昭60-43488号)の マイクロフィルム
(原査定の拒絶理由通知の引用文献2、原査定では不使用)

第4 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年7月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりと認められる。
「セミトラクターに載置されるトレーラー連結繋引装置である一軸式カプラーの上面ベースの幅を車幅一杯に形成し、該カプラーをシャシーに設けた水平方向に回転する回転テーブル上に設置したことを特徴とするトレーラーの横転防止装置。」

第5 当審拒絶理由の[理由1]、[理由2]について
請求項1の記載は、上記第4に示すとおりに補正された結果、上記[理由1]、[理由2]はいずれも解消した。

第6 当審拒絶理由の[理由3]について
1 刊行物、引用発明等
(1)刊行物1の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された刊行物1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。以下同様。)
ア 「【請求項1】
トレーラより下方に突出したキングピンをトラクタのカプラのスリットに挿入して、トレーラとトラクタを連結するトレーラ連結装置において、トラクタに装備されるカプラと、トレーラに装備される嵌合具を備え、カプラはトレーラのキングピンを挿入するスリットと、嵌合具に接触する接触部を備え、嵌合具は前記キングピンと、カプラの前記接触部が嵌合する嵌合部を備え、嵌合部と接触部は嵌合部がトレーラの横幅方向への傾斜に伴って同方向に傾斜すると互いに接触して嵌合部の前記傾斜を規制してトレーラの傾斜を抑制することを特徴とするトレーラ連結装置。」

イ 「【0001】
本願発明は牽引車両、特に、セミトレーラ方式の牽引車両の連結装置に関し、牽引車(トラクタヘッド)の後方に連結された被牽引車(トレーラ)のカーブ時の傾きを抑制できるトレーラ連結装置と、その連結装置で連結されたトレーラ連結車両に関するものである。」

ウ 「【0006】
本願発明の課題は、トレーラの傾きを抑制(規制)することによって、トレーラの横転を防止可能なトレーラ連結装置と、その装置でトラクタとトレーラを連結したトレーラ連結車両を提供することにある。」

エ 「【0014】
(実施形態1)
本願発明のトレーラ連結装置及びその連結装置を装備したトレーラ連結車両の第1の実施形態を、図1?図4を参照しながら説明する。図1?図4のトレーラ連結装置50は、図1(a)に示すようにトラクタ1に装備されるカプラ2と、トレーラ4に装備される嵌合具5を備えている。
【0015】
前記カプラ2は、図3(a)に示すように、円盤状の支持盤3のほぼ中央部上面に肉厚盤3aを重合固定して中央部を肉厚にし、支持盤3の外周縁部をカプラ2の接触部2aとし、支持盤3及び肉厚盤3aに支持盤3の外周縁に開口するスリット7を形成してある。図示した支持盤3は円盤状であるがその形状は他の形状であってもよい。カプラ2は図1?図4のように支持盤3の上に肉厚盤3aを重合固定するのではなく、一枚の肉厚盤材で形成することもできる。
【0016】
前記カプラ2は、図2に示すように、トラクタ1の後方連結部1aの上に取り付けられるものであり、スリット7はトレーラ4のキングピン6を係止するためのものである。支持盤3の裏面には図3(b)に示すように2つの上軸受け9が間隔をあけて設けられ、この上軸受け9はトラクタ1の後方連結部1aの上に固定された2つの下軸受け8(図2)の横に並べて配置され、両軸受け8、9の貫通孔に回転軸10を通すことにより前後に首振り自在に連結されるようにしてあり、この連結によりトラクタ1の後方連結部1aにその移動方向前後に首振り自在に装備されるようにしてある。
【0017】
前記カプラ2の支持盤3、肉厚盤3a、下軸受け8、上軸受け9及び回転軸10は、いずれもトレーラ4の横幅方向の傾斜を規制することができるだけの強度を備えた金属製と形の材料で製作できる。」

オ 「【0019】
前記嵌合具5はトレーラ4のフレーム14に溶接とか他の固定手段によって固定され、キングピン6をカプラ2のスリット7内に挿入すると、図4(a)のように、カプラ2の接触部2aが回転ローラ13の間の嵌合空間Sに嵌入するようにしてある。
【0020】
前記嵌合具5を装備したトレーラ4は、カプラ2のスリット7にキングピン6を挿入し、カプラ2の接触部2aを嵌合具5の嵌合空間Sに嵌入させることにより、嵌合空間Sへの接触部2aの嵌合が安定し、図示していないジョーをキングピン6の外側に回してロックすることによって、トラクタ1がキングピン6を案内軸として回動可能に連結されて、トラクタ1が左右に自在に方向転換できるようにしてある。また、前記嵌合空間Sの高さ(上下の広さ)をカプラ2の接触部2aの肉厚よりも広くして、嵌合空間Sとそれに嵌入された接触部2aの間に空間(遊び)ができて、トラクタ1が自由に前傾又は後傾でき、坂道を登ったり下ったりすることもできるようにしてある。この場合、トレーラ4の横幅方向への傾斜が大きくなるとカプラ2の接触部2aが回転ローラ13に接触して傾斜が規制されてそれ以上は傾斜しないようにしてある。」

(2)引用発明
以上のことより、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「トレーラ4より下方に突出したキングピン6をセミトレーラ方式のトラクタ1のカプラ2のスリット7に挿入して、トレーラ4とトラクタ1を連結するトレーラ連結装置において、トラクタ1に装備されるカプラ2と、トレーラ4に装備される嵌合具5を備え、前記カプラ2には上軸受け9が間隔をあけて設けられ、この上軸受け9はトラクタ1の後方連結部1aの上に固定された2つの下軸受け8の横に並べて配置され、両軸受け8、9の貫通孔に回転軸10を通すことにより前後に首振り自在に連結されるようにしてあり、前記カプラ2はトレーラ4のキングピン6を挿入するスリット7と、嵌合具5に接触する接触部2aを備え、嵌合具5は前記キングピン6と、カプラ2の前記接触部2aが嵌合する嵌合部を備え、嵌合部と接触部2aは嵌合部がトレーラ4の横幅方向への傾斜に伴って同方向に傾斜すると互いに接触して嵌合部の前記傾斜を規制してトレーラ4の傾斜を抑制するトレーラ連結装置。」

(3)刊行物2の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された刊行物2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「本考案は、トラクタとトレーラの連結部のロツク装置に関する。
従来、第1図に示すように、トラクタでセミトレーラを牽引する場合や特にフルトレーラを牽引する場合、走行中に急制動をかけると、トラクタとセミ・フルトレーラとの制動遅れのために車輌はターンテーブル部を折点としてくの字に曲折して停止するいわゆるジヤクナイフ現象を起こす。」(明細書第2ページ第2?9行)

イ 「第2図は、カプラとドーリフレームとの連結部の構造を示すもので、キングピン及びストツパを介してトレーラフレーム1に連結されるカプラ5は、カプラマウント材(カプラ支持台)6に傾斜のみ許容されるようにして支持され、該カプラマウント材6は、ドーリフレーム2に支持部材7、軸受7aを介して回転自在に支持されたターンテーブル8によつて支持されている。」(明細書第3ページ第19行?第4ページ第6行)

2 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 後者の「セミトレーラ方式のトラクタ」は前者の「セミトラクター」に相当する。

イ 後者の「カプラ2」は、「上軸受け9」、「下軸受け8」、「回転軸10」に係る事項より、一軸式であることは明らかであり、また、当該「カプラ2」は連結繋引装置といえるものである。また、後者の「トレーラ4に装備される嵌合具5を備え」、「前記カプラ2は」、「嵌合具5に接触する接触部2aを備え、嵌合具5は前記キングピン6と、カプラ2の前記接触部2aが嵌合する嵌合部を備え」と、前者の一軸式カプラーの「上面ベースの幅を車幅一杯に形成し」とは、「横転防止手段」ということで共通するものといえる。
そうすると、後者の「トレーラ4より下方に突出したキングピン6をセミトレーラ方式のトラクタ1のカプラ2のスリット7に挿入して、トレーラ4とトラクタ1を連結するトレーラ連結装置において、トラクタ1に装備されるカプラ2と、トレーラ4に装備される嵌合具5を備え、前記カプラ2には上軸受け9が間隔をあけて設けられ、この上軸受け9はトラクタ1の後方連結部1aの上に固定された2つの下軸受け8の横に並べて配置され、両軸受け8、9の貫通孔に回転軸10を通すことにより前後に首振り自在に連結されるようにしてあり、前記カプラ2はトレーラ4のキングピン6を挿入するスリット7と、嵌合具5に接触する接触部2aを備え、嵌合具5は前記キングピン6と、カプラ2の前記接触部2aが嵌合する嵌合部を備え」と、前者の「セミトラクターに載置されるトレーラー連結繋引装置である一軸式カプラーの上面ベースの幅を車幅一杯に形成し」とは、「セミトラクターに載置されるトレーラー連結繋引装置である一軸式カプラーを備え、横転防止手段を有する」という限度で一致するといえる。

ウ 後者の「トレーラ4の傾斜を抑制するトレーラ連結装置」は、傾斜を抑制することにより、横転事故を防止するものであることは明らかであるので、前者の「トレーラーの横転防止装置」に相当するといえる。

エ してみると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点1]
「セミトラクターに載置されるトレーラー連結繋引装置である一軸式カプラーを備え、横転防止手段を有するトレーラーの横転防止装置。」

[相違点1]
「横転防止手段」について、本願発明が、一軸式カプラーの「上面ベースの幅を車幅一杯に形成し」たのに対し、引用発明は、「トレーラ4に装備される嵌合具5を備え」、「前記カプラ2は」、「嵌合具5に接触する接触部2aを備え、嵌合具5は前記キングピン6と、カプラ2の前記接触部2aが嵌合する嵌合部を備え」ており、「嵌合部と接触部2aは嵌合部がトレーラ4の横幅方向への傾斜に伴って同方向に傾斜すると互いに接触して嵌合部の前記傾斜を規制してトレーラ4の傾斜を抑制する」ものである点。

[相違点2]
本願発明は、「該カプラーをシャシーに設けた水平方向に回転する回転テーブル上に設置した」のに対し、引用発明は、当該事項を有していない点。

3 判断
上記相違点1について検討する。
ア 引用発明における横転防止手段としての主要構成は、「トレーラ4」に装備される「嵌合具5」と、「カプラ2」に備えられ当該嵌合具5に嵌合する「嵌合部」である。しかしながら、本願発明がトレーラ側には特段嵌合具に相当するような部材を有さず、トラクタ側の一軸式カプラーの「上面ベースの幅を車幅一杯に形成し」たことにより課題を解決しているものであり、当該嵌合具5及びそれに嵌合する嵌合部を必須とする引用発明において、それら事項を廃し、さらに、カプラの上面ベースの幅を車幅一杯にするという変更をする合理的な理由は見当たらない。

イ また、刊行物2には、上記1(3)に示したように「ターンテーブル8」に係る事項が開示されてはいるが、上記相違点1に係る本願発明の事項に関する開示はない。

ウ よって、引用発明において、少なくとも上記相違点1に係る本願発明の事項を有するものとすることは当業者にとって容易とはいえないことから、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 小括
以上検討したとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成29年7月10日付けの手続補正により、補正後の請求項1は、「一軸式カプラーの上面ベースの幅を車幅一杯に形成し」という事項を有するものとなった。
当該事項は、原査定における引用文献1(当審拒絶理由における刊行物1)には記載されておらず、上記第6 3で述べたように、当業者にとって容易になし得たということもできない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-16 
出願番号 特願2015-89801(P2015-89801)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B62D)
P 1 8・ 55- WY (B62D)
P 1 8・ 121- WY (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 政道  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 出口 昌哉
一ノ瀬 覚
発明の名称 トレーラーの横転防止装置  
代理人 特許業務法人スズエ国際特許事務所  

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