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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G08G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08G |
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管理番号 | 1331013 |
審判番号 | 不服2016-7636 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-25 |
確定日 | 2017-08-09 |
事件の表示 | 特願2011-225854「基本安全メッセージデータを生成するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月17日出願公開、特開2012- 94135〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年10月13日(パリ条約による優先権主張2010年10月28日、米国、2010年12月30日、米国)を出願日とする出願であって、平成26年8月21日付で手続補正書が提出され、平成27年4月28日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年5月7日)、これに対し、平成27年7月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月15日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成28年1月26日)、これに対し平成28年5月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 平成28年5月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年5月25日付けの手続補正についての補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成28年5月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」と言う。)により、次のように補正された。 (1)本件補正前 「【請求項1】 基本安全メッセージ(BSM)データを生成するための路側インフラストラクチャシステムであって、 路側モジュールを含む前記システムは、 予め定められた固定領域の画像を提供するように構成されたカメラと、 前記カメラに結合され、前記画像を処理して前記画像内の物体を検出するように構成されたビデオ分析器とを備え、前記ビデオ分析器は検出物体の位置を出力するようにさらに構成され、 前記システムは、 前記ビデオ分析器に結合され、前記検出物体の位置を受信するとともに、前記物体の位置および前記BSMが前記路側モジュールによって生成されたことを識別する指示を含むBSMを生成するように構成されたBSM生成器と、 前記BSM生成器に結合され、前記BSM生成器から前記BSMを受信するとともに、前記BSMを送信するように構成されたアンテナと、 前記アンテナおよび前記BSM生成器に結合されたプロセッサとをさらに備え、 前記アンテナは、BSM生成物体からBSMデータを受信するようにさらに構成され、 前記プロセッサは、前記検出物体が、BSM生成物体に対応するか否かを決定するとともに、前記BSM生成器を制御して非BSM生成検出物体についてのみ前記BSMを生成する、システム。」 (2)本件補正後 「【請求項1】 基本安全メッセージ(BSM)データを生成するための路側インフラストラクチャシステムであって、 路側モジュールを含む前記システムは、 予め定められた固定領域の画像を提供するように構成されたカメラと、 前記カメラに結合され、前記画像を処理して前記画像内の物体を検出するように構成されたビデオ分析器とを備え、前記ビデオ分析器は検出物体の位置を出力するようにさらに構成され、 前記システムは、 前記ビデオ分析器に結合され、前記検出物体の位置を受信するとともに、前記物体の位置および前記BSMが前記路側モジュールによって生成されたことを識別する指示を含むBSMを生成するように構成されたBSM生成器と、 前記BSM生成器に結合され、前記BSM生成器から前記BSMを受信するとともに、 前記BSMを送信するように構成されたアンテナと、 前記アンテナおよび前記BSM生成器に結合されたプロセッサと、 前記ビデオ分析器に結合されたセンサとをさらに備え、 前記アンテナは、BSM生成物体からBSMデータを受信するようにさらに構成され、 前記プロセッサは、前記検出物体が、BSM生成物体に対応するか否かを決定するとともに、前記BSM生成器を制御して非BSM生成検出物体についてのみ前記BSMを生成し、前記システムは、前記センサから収集された情報および前記BSMデータで与えられる情報を用いて前記検出物体の経路を予測する、システム。」 (下線部は、補正された箇所を示す。また、本件補正後の請求項1に係る発明を、以下、「本願補正発明」という。) 2.新規事項の追加について 本件補正により、本願補正発明は、「前記センサから収集された情報および前記BSMデータで与えられる情報を用いて前記検出物体の経路を予測する」ものである、「路側インフラストラクチャシステム」となった。 しかし、本願の出願当初の明細書の段落0019には、「装備車両110の各々は、装備車両の経路を予測するために用いられることができる情報を検出するように構成されたオンボード機器150を含む。」、「オンボード機器150は、オンボード機器センサから収集された情報を用いて装備車両110の経路を予測する経路予測回路を任意的に含み得る。経路予測回路は、他の装備車両110からの受信されたBSMデータで与えられる情報を用いて、それらの車両の経路も予測し得る。オンボード機器は、検出車両の予測された経路がその装備車両との衝突をもたらす場合に、装備車両の運転者に警告を与えるように構成され得る。」と記載されており、装備車両110に設けられたオンボード機器150が経路の予測を行うことは記載されているものの、出願当初の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」と言う。)には、当該オンボード機器150が「路側インフラストラクチャシステム」の一部であることの記載はなく、他に、路側インフラストラクチャシステムが、検出物体の経路を予測することは記載されていない。 また、本願補正発明は、経路の予測に「前記センサ」から収集された情報を用いるものであるが、この「前記センサ」はこの記載より前に記載された「前記ビデオ分析器に結合されたセンサ」であると解される。しかし、当初明細書等には、オンボード機器センサから収集された情報を経路の予測に用いることは記載されているものの、ビデオ分析器に結合されたセンサであるセンサ230から収集された情報を経路の予測に用いることは記載されておらず、また、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。 したがって、「前記センサから収集された情報および前記BSMデータで与えられる情報を用いて前記検出物体の経路を予測する」「路側インフラストラクチャシステム」との補正事項を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 3.むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成27年7月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(「第2.1.(1)」参照。以下、これを「本願発明」と言う。)。 2.引用発明について (1)引用例1について 原査定の拒絶の理由で引用された特開2005-11252号公報(以下、「引用例1」と言う。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は車両用情報提供装置、すなわち、離散的に配置されたDSRC(Dedicated Short Range Communication)による受信情報を使用するAHS(走行支援システム:Advanced Cruise-Asist Highway Systems)において、車両側に搭載されて走行支援、特に右折衝突防止支援のためにドライバーに情報を提供する車両用情報提供装置に関するものである。」 (イ)「【0012】 <本実施形態の車両用情報提供装置の構成例> 図1は、本実施形態の車両用情報提供装置を含むAHSの構成例を示す図である。 (中略) 【0015】 16は車載アンテナ17を介してインフラ情報を受信する路車間通信機、17は車載アンテナであり、路上のセンサやカメラ等のインフラセンサ22からの情報に基づきAHS基地局CPU20が作成した対向車及び道路情報を、路側アンテナ21を介して受信する。又、自車の位置を確認するために、GPS30からの情報も受信する。 【0016】 以上が、本実施形態に関連する重要な構成要素であるが、図1では、他の情報伝達、例えば交通情報報知用のVICSなどは煩雑さを避けるために省いている。」 (ウ)「【0017】 <交差点における右折用のAHS情報の例> 図2は、本実施形態を適用可能なAHSの交差点付近における構成を例示する図である。図2に示すAHSは、交差点における自車両の右折(右折待ちを含む)に際して、対向道路を走行する対向車との衝突防止を支援するシステムである。 【0018】 図2に示す構成には、信号機の設置された少なくとも片側1車線の道路R1と、この道路R1と交差する少なくとも片側1車線の道路R2との交差点及びこの交差点付近において、交差点手前(例えば、30m)の道路R1における自車両V1の走行車線側の路側に設置された基点23と、道路R1における自車両V1の走行車線に対向する他車両(対向車両)V2の走行車線側の路側に設置された車両検出センサ22と、交差点付近の道路R1における自車両V1の走行車線側(走行道路側)と対向車線側(対向道路側)の両路側に対角線上に設置された2つの路側アンテナ21とが設けられている。 【0019】 ここで、道路R1は、自車両V1が走行する走行車線を含む走行道路と、対向車両V2が走行する少なくとも1つの車線(対向車線)を含む対向道路とからなる。 【0020】 基点23は、固有の識別情報(以下、基点IDという)とこの基点IDに対応付けられた提供情報を識別するための提供ID(後述する)とを、自車両V1に搭載された基点検出器による検出が可能に保持されており、自車両V1は、この基点23を通過したことを基点検出器により検出すると共に、この基点通過時に基点IDと提供IDとを基点23から取得する。 【0021】 また、基点23は、当該基点23から交差点への自車両V1の走行距離を計測するための基準位置となる。この基点23から交差点への走行距離は、路側アンテナ21による提供情報受信区間A1を特定するための基準となる。 【0022】 車両検出センサ22は、交差点内の中間地点付近(地点Z)から交差点手前の所定検出範囲B1の自車両V1の対向道路に存在する他車両(対向車両)V2を検出し、当該所定検出範囲B1における他車両V2の位置情報、車速情報、並びに車種情報などを検出してAHS基地局CPU20に送信する。 【0023】 ここで、交差点内の中間地点付近である地点Zは、本実施形態において、対向車両の交差点への到達予想時間Tの基準位置(T=0、L=0)である。 【0024】 路側アンテナ21は、上記基点23と同様に固有の識別情報(以下、提供IDという)とこの提供IDに対応付けられた基点IDを持ち、この提供IDと共に、基点ID、車両検出センサ22によって検出された他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状(交差点及びその周辺の勾配の状態、車線幅、車線数など)に関する情報を、上記提供情報受信区間A1において自車両V1に送信(提供)する。 【0025】 尚、前記の道路形状に関する情報は、路側アンテナ21を介して入手するのではなく、例えば自車両V1に搭載されたところの、道路地図の表示や経路誘導に際して参照される地図情報データベースから入手しても良い。 【0026】 即ち、提供情報受信区間A1において、自車両V1に搭載された路車間通信機16は、路側アンテナ21から送出された基点ID、提供ID、他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報(以下、これらを総称して提供情報と称する)を受信し、AHS車載CPU10は、受信した提供情報に基づいて、表示装置14及び/またはスピーカ15を利用して、自車両V1の乗員に対する情報提供(情報提示)のための制御処理を行なう。この情報提示には、表示装置14を利用した画像や文字表示の他に、スピーカ15からの音声メッセージや警告音の出力などが含まれる。」 また、引用例1に記載された事項に関して以下のように認めることができる。 (エ)車両検出センサ22が「他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状(交差点及びその周辺の勾配の状態、車線幅、車線数など)に関する情報」を検出して、AHS基地局CPU20に送信し(段落0022、0024参照)、AHS基地局CPU20が「対向車及び道路情報」を作成し(段落0015)、AHS基地局CPU20に接続される路側アンテナ21がAHS基地局CPU20から「対向車及び道路情報」を受信し(図1参照)、路側アンテナ21が「基点ID、提供ID、他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報(以下、これらを総称して提供情報と称する)」を自車両V1に送信する(段落0026)ことを踏まえると、車両検出センサ22は、「他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報」を検出してAHS基地局CPU20に送信し、AHS基地局CPU20は、車両検出センサ22からの情報を受信して「対向車及び道路情報」としての「他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報」を作成し、路側アンテナ21は、AHS基地局CPU20からの「対向車及び道路情報」としての「他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報」を受信して「対向車及び道路情報」としての「他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報」に「基点ID、提供ID」を加えて「提供情報」を生成し、自車両V1に送信するものと認められる。 (オ)車両検出センサ22、AHS基地局CPU20、路側アンテナ21及び基点23が「路側走行支援システム」を構成していると認められ(段落0001、0018、0022、0024、図1、2参照)、この「路側走行支援システム」から「提供情報」が送信されるから、そのためのデータである「提供情報データ」は「路側走行支援システム」で生成されるものであると認められる。 (カ)車両検出センサ22は「路上のセンサやカメラ等」であり(段落0015参照)、また、「交差点内の中間地点付近(地点Z)から交差点手前の所定検出範囲B1の自車両V1の対向道路に存在する他車両(対向車両)V2を検出」するものであるから(段落0022参照)、引用例1には、「所定検出範囲B1の画像を提供するように構成された車両検出センサ22のカメラ」が記載されていると認められる。 以上を踏まえると、引用例1には以下の発明が記載されていると認められる(以下、この発明を「引用発明」と言う。) 「提供情報データを生成するための路側走行支援システムであって、 前記システムは、 所定検出範囲B1の画像を提供するように構成された車両検出センサ22のカメラを備え、当該カメラは当該所定検出範囲B1における他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報を検出して、送信するように構成され、 前記システムは、 前記カメラから前記他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報を受信するとともに、対向車及び道路情報としての他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報を生成するように構成されたAHS基地局CPU20と、 前記AHS基地局CPU20から、前記対向車及び道路情報を受信するとともに、前記対向車及び道路情報報及び路側アンテナ21の固有の識別情報である提供IDを含む提供情報を送信する路側アンテナ21と を備えるシステム。」 (2)引用例2について 原査定の拒絶の理由で引用された米国特許出願公開第2009/0224942号明細書(以下、「引用例2」と言う。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 (キ)「[0041](前略)Moreover, the intersection unit 17 is preferably configured to periodically broadcast a signal indicative of the traffic intersection information and the basic Safety (heartbeat) message in the broadcast area via the roadside unit 16 .(後略)」 (当審による仮訳:さらに、交差点ユニット17は、好ましくは、周期的に路側ユニット16を介して送信エリアに交差点情報と基本安全(心拍)メッセージを示す信号を送信するように構成されている。) (3)引用例3について 原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2008/053912号(原査定時の引用例5。以下、「引用例3」と言う。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。 (ク)「[0013](実施の形態1) 図1は、本実施の形態のシステム構成図である。以下、まず各構成要素について説明し、後に本発明の動作フローを説明する。 [0014]まず、交差点や道路上に設置された路側機100は、画像認識部101、非搭載車両判定部102、移動先一致度判定部103、保持車両特定部104、非搭載車両情報提供部105、車両移動情報検出部106を備える。一般的に路側機は、交差点や交通監視システム(Nシステム)等と同様、所定の交差点や路側に設置され、通信や画像を介して情報を送受信する機能を有する装置とする。画像認識部101、非搭載車両判定部102及び車両移動情報検出部106は、他の車両と通信するための通信モジユールを搭載している車両である搭載車両の存在及び位置を検出する搭載車両検出手段と、他の車両と通信するための通信モジュールを搭載していない車両である非搭載車両の存在及び位置を検出する非搭載車両検出手段との一例である。前記搭載車両検出手段はさらに、搭載車両の移動方向を検出する。すなわち、前記非搭載車両検出手段は、動画像を取得し、取得した動画像中の移動体を認識することで、動画像中の車両を抽出する画像認識部101と、車両が備える通信モジュールと通信し合うことによって、通信モジュールを備える車両から当該車両の位置情報を取得することで車両の移動情報を検出する車両移動情報検出部106と、前記画像認識部によって抽出された車両のうち、前記車両移動情報検出部によって通信し合うことができなかった車両を前記非搭載車両と判定する非搭載車両判定部102とを有する。前記画像認識部101はさらに、抽出した車両の前記動画像における座標から、当該車両の位置を特定し、前記非搭載車両判定部102は、前記画像認識部101によって特定された車両の位置と前記車両移動情報検出部106によって取得された位置情報とを照合することで、前記画像認識部101によって抽出された車両から、前記車両移動情報検出部106によって位置情報が取得された車両を除外し、除外後に残った車両を前記非搭載車両と判定する。前記搭載車両検出手段および前記非搭載車両検出手段の一例である画像認識部101、非搭載車両判定部102及び車両移動情報検出部106と、前記保持車両特定手段の一例である保持車両特定部104、及び、前記非搭載車両情報提供手段の一例である非搭載車両情報提供部105は、交差点又は道路上に設置された路側機に収納されている。」 (ケ)「[0015]路側機100における画像認識部101は、カメラ等によって交差点や経路の画像を認識する手段である。図2は路側機による交差点の画像の認識を示す図である。図2において華町1交差点には、路側機100が設置されている。この路側機100は、画像認識部101である交差点カメラを有しており、例えば点線の枠で示すように交差点等所定の範囲を画像として認識する。 [0016]図3は画像認識部101で認識した華町1交差点の画像の一例を示したものである。本実施の形態ではまず、画像認識部101において移動体を抽出する。所定のサンプリング周期で認識された画像から、その差分をとることで移動体を抽出することができる。例えば図3において、あるタイミングで認識した車両1Aが次のタイミングで1Bへ移動しており、つまりこの物体を移動体として抽出することができる(車両1とする)。同様に認識された画像の差分から、図3では車両1の他、車両2、車両3が移動体として抽出されているとする。 [0017]また本実施の形態では、これら抽出された移動体の位置情報を算出する。路側機は設置された場所等、所定の基準点を有しているため、その基準点をもとに認識された移動体の位置情報を算出することが可能となる。図4は、画面左下を原点として横軸をX座標、縦軸をY座標とし、認識されたピクセルから各移動体の位置を算出する一例を示す図である。例えば本例の場合、認識する画像の四隅の座標が「Ε135.30.00、Ν35.10.00」、「Ε135.30.00、Ν35.12.00」、「Ε135.31.00、Ν35.12.00」、「Ε135.31.00、Ν35.10.00」となっており、これより各移動体の位置を算出することができる。例えば図4に示すように画面左下を原点として横軸をX座標、縦軸をY座標とし、認識されたピクセルから算出する。本例の場合、例えば左下の座標(0、0)である「Ε135.30.00、Ν35.10.00」に対して車両1の座標は(10、10)であり、位置は「Ε135.30.10、Ν35.11.10」と算出される。同様に車両2の位置は「Ε135.30.13、Ν35.11.15」、車両3の位置は「Ε135.30.15、Ν35.11.10」と、各車両の位置が算出されている。さらに、検出するサンプリング間隔と位置の差分を基に、移動体の速度と移動方向も算出することができる。例えば本例の場合、車両1は1Aにいる時点で「Ε135.30.11、Ν35.11.10」で検出され、0.5秒後の1Bの時点で「Ε135.30.10、Ν35.11.10」で検出されたとする。その間の距離は東経1秒であり、時速約50kmの速度で西方向へ移動していると算出できる。なお、東経1秒は約25メートルとして算出している。同様に例えば車両2の速度「40km」、移動方向「北」、車両3の速度「50km」、移動方向「西」と認識されたとする。」 (コ)「[0018]車両移動情報検出部106は、各車両の位置情報を検出する手段である。近年、車両にはカーナビなど、GPSによって現在位置を検出する手段が備えられている。さらに車々間通信ではこのGPS等で検出された位置情報を通信し合い、出会い頭の衝突防止や、安全な合流等に用いられる。また、車々間で通信するのみならず、交差点や経路に設置された路側機に自車両の移動情報等を送信し、サーバ側で渋滞に関する情報として用いる技術も知られている。本実施の形態においても路側機においてこれら各車両の移動情報を検出するものとする。」 (サ)「[0019]図5は路側機100によって検出された各車両の移動情報を示した図である。図5(a)は、路側機が通信により検出した搭載車両の位置情報の一例を示す図である。例えば車両1から検出された移動情報として車両ID「001」、位置情報「135.30.10、N35.11.10」、移動方向「西」、速度「50km」が検出されている。同様に車両2から検出された移動情報として車両ID「002」、位置情報「135.30.13、N35.11.10」、移動方向「北」、速度「40km」が検出されている。 [0020]図5(b)は、路側機100が画像認識によって検出した車両の位置情報の一例を示す図である。一方、車々間で行われる通信や路側機との通信は、この通信を可能とするモジュールを介して行われるため、通信モジュールを有さない車両(非搭載車両)とは通信することができないこととなる。したがって、例えば車々間通信によって認識した車両との出会い頭衝突を通知するシステムを車両が有していても、非搭載車両を認識することはできず、かえって非搭載車両と衝突してしまう危険性も生じてしまう。そこで本実施の形態では、非搭載車両を特定し、この非搭載車両の情報を搭載車両に保持させることで衝突の危険性を回避することを目的とする。 [0021]非搭載車両判定部102は、画像認識部101で認識された画像と、車両移動情報検出部106で検出された各車両の位置情報から、通信モジュールを搭載していない非搭載車両を判定する手段である。 [0022]図5は非搭載車両の判定を示す図である。まず前述に示すように車両移動情報検出部106において各車両の移動情報が検出されている。一方、前述の図2に示すように画像認識部101において移動体と、各移動体の位置、移動速度、移動方向が認識されている。これらの情報をもとに、非搭載車両判定部102は、非搭載車両を判定する。例えば車両移動情報検出部106で検出された車両1の移動情報である位置「E135.30.10、N35.11.10」、移動方向「西」、速度「50km」(図5(a)参照)は、画像認識部101で認識した移動体の一つである認識ID「101」の位置「E135.30.10、N35.11.10」、移動方向「西」、速度「50km」(図5(b)参照)と一致するため、認識ID「101」は車両1のことであると特定できる。同様に、車両2の移動情報である位置「E135.30.13、N35.11.10」、移動方向「北」、速度「40km」(図5(a)参照)は、画像認識部101で認識した移動体の一つである認識ID「102」の位置「E135.30.13、N35.11.10」、移動方向「北」、速度「40km」(図5(b)参照)と一致するため、認識ID「102」は車両2のことであると特定できる。図5(c)は、非搭載車両であると特定された車両の位置情報の一例を示す図である。一方、図5(b)に示す認識ID「103」として認識された車両に関する情報は車両移動情報検出部106では検出されておらず、したがつてこの車両は通信モジュールを搭載しない非搭載車両として特定されることとなる(図5(c)参照)。なお、本実施の形態では位置や速度が一致するものを対応する車両として特定したが、画像認識では位置や速度に誤差を生じ、またGPS等で検出される位置にも誤差を生じることがあるため、必ずしも一致のみならず、所定の閾値を設けて対応する車両を特定することとしてもよい。さらに、画像によって認識した移動物体と、他の手段で検出された位置情報等を用いて両情報を対応させる技術は従来知られており、ここではその詳細を問わないこととする。」 (シ)[0023]「保持車両特定部104は、前記搭載車両検出手段で検出された搭載車両の位置と前記非搭載車両検出手段で検出された非搭載車両の位置とに基づいて、前記搭載車両検出手段で検出された搭載車両から、前記非搭載車両の位置に関する情報を含む非搭載車両情報を保持すべき搭載車両である保持車両を特定する保持車両特定手段の一例であり、非搭載車両判定部102で判定された非搭載車両の情報を保持させる車両(以下、保持車両という)を特定する手段である。移動先一致度判定部103は、前記走行支援システムはさらに、前記搭載車両検出手段で検出された搭載車両の位置と前記非搭載車両検出手段で検出された非搭載車両の位置とに基づいて、搭載車両及び非搭載車両の移動先に関する一致度を判定する移動先一致度判定手段の一例であり、これに対し、保持車両特定手段は、前記移動先一致度判定手段で非搭載車両の移動先との一致度が高いと判定された搭載車両を前記保持車両として特定する。また、前記移動先一致度判定手段は、前記搭載車両検出手段で検出された搭載車両の移動方向と前記非搭載車両検出手段で検出された非搭載車両の移動方向とがー致している場合に、搭載車両及び非搭載車両の移動先に関する一致度が高いと判定する。さらに、前記移動先一致度判定手段は、前記移動先予測手段で予測された搭載車両及び非搭載車両の移動先に基づいて、前記一致度を判定する。例えば本実施の形態では、移動先一致度判定部103において、画像認識部101で認識した各車両の移動情報をもとに、非搭載車両との移動の一致度を判定し、判定された移動先の一致度をもとに非搭載車両の情報を保持させる車両を特定することとする。 [0024]図6は移動先の一致度を用いて保持車両の特定を説明する図である。図6(a)は、搭載車両の位置情報の一例を示す図である。今、前述に示すように車両1、車両2の位置、移動方向、速度が特定されている。図6(b)は、非搭載車両として特定された車両の位置情報の一例を示す図である。対して非搭載車両として特定された車両(以下、車両3とする)の位置、移動方向、速度も認識されている。そこで移動先一致度判定部103は非搭載車両と、各車両との移動先の一致度を判定する。図6において非搭載車両の移動方向「西」速度「50km」に対して、車両2の移動方向「北」、速度「40km」と異なっている。この場合、車両2に非搭載車両である車両3の情報を保持させても、移動方向が異なるためすぐに両車両は離れてしまい、保持車両としては適さない。一方、車両1は移動方向「西」、速度「50km」と一致しており、両車両の移動は類似しており、したがって本例の場合車両1を保持車両として特定する。」 (ス)「[0025]非搭載車両情報提供部105は、前記保持車両特定手段で特定された保持車両に対して、前記非搭載車両情報を提供する非搭載車両情報提供手段の一例であり、本実施の形態では非搭載車両(審決注:保持車両の誤記)として特定された車両に、非搭載車両の情報を提供する手段である。図7は非搭載車両情報の提供を説明する図である。今、路側機100によって保持車両として特定された車両1に非搭載車両である車両3に関する情報が提供されている。非搭載車両に関する情報は、例えば当該保持車両と非搭載車両との相対位置と、移動速度とする。図6(c)には、非搭載車両に関する情報である非搭載車両情報の一例が示されている。例えば検出された位置の差分をもとに相対位置「後方125m(=東経5秒×25m)」、速度「50km」が、非搭載車両に関する情報として示されている。非搭載車両情報提供部105は、このように保持車両である車両1に、非搭載車両として特定された車両3に関する情報を提供する。」 また、引用例3に記載された事項に関して以下のように認めることができる。 (セ)路側機100は、画像認識部101、非搭載車両判定部102、移動先一致度判定部103、保持車両特定部104、非搭載車両情報提供部105、車両移動情報検出部106を備え(段落0014、図1参照)、非搭載車両判定部102は、画像認識部101で認識された画像と、車両移動情報検出部106で検出された各車両の位置情報から、車々間で位置情報を通信するための通信モジュールを搭載していない非搭載車両を判定するものであって(段落0014、0018、0021参照)、非搭載車両情報提供部105は、非搭載車両として特定された車両に関する情報を提供するものであるから(段落0025参照)、引用例3の路側器100は、車々間で位置情報を通信するための通信モジュールを搭載していない非搭載車両として特定された車両に関する情報を提供するものであると認められる。 (ソ)非搭載車両情報提供部105は、非搭載車両として特定された車両に関する情報を提供するものであり(段落0025参照)、その提供は無線通信で行われるものであると認められるから(図1、7参照)、引用例3の非搭載車両情報提供部105は、アンテナを備えているものと認められる。 (タ)車両移動情報検出部106は、車両が備える通信モジュールと通信し合うことによって、通信モジュールを備える車両から当該車両の位置情報を取得することで車両の移動情報を検出するものであるから(段落0014参照)、引用例3の車両移動情報検出部106は、搭載車両から位置情報を受信するためのアンテナを備えているものと認められる。 以上を踏まえると、引用例3には以下の事項が記載されていると認められる(以下、「引用例3に記載の事項」と言う。)。 「車々間で位置情報を通信するための通信モジュールを搭載していない非搭載車両として特定された車両に関する情報を提供する路側機100であって、 前記路側機100は、 所定の範囲を画像として認識する画像認識部101の交差点カメラを備え、所定のサンプリング周期で認識された画像から、その差分をとることで移動体を抽出し、位置情報を算出するようにさらに構成され、 前記路側機100は、 車両移動情報検出部106、非搭載車両判定部102、移動先一致度判定部103、保持車両特定部104及び非搭載車両情報提供部105をさらに備え、 前記車両移動情報検出部106は、通信モジュールを搭載している車両である搭載車両から当該車両の位置情報を受信するアンテナを備え、 前記非搭載車両判定部102は、前記画像認識部101で認識された画像と、前記車両移動情報検出部106で検出された各車両の位置情報から、通信モジュールを搭載していない非搭載車両を判定し、 前記移動先一致度判定部103は、搭載車両及び非搭載車両の移動先に関する一致度を判定し、 前記保持車両特定部104は、非搭載車両の移動先との一致度が高いと判定された搭載車両を保持車両として特定し、 前記非搭載車両情報提供部105は、アンテナを備え、前記保持車両に、非搭載車両として特定された車両に関する情報を提供する、路側機100。」 3.対比・判断 (1)本願発明と引用発明の対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「路側走行支援システム」は本願発明の「路側インフラストラクチャシステム」又は「路側モジュール」に相当し、以下同様に、「他車両V2」は「物体」に、「位置情報」は「位置」に、「路側アンテナ21」は「アンテナ」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「提供情報」と、本願発明の「BSM」は、その情報の内容からみて、「走行支援情報」という点で共通する。なお、本願発明の「BSM」とは、明細書に「車両対車両(車車)安全アプリケーションについてのSAE J2735メッセージ仕様『基本安全メッセージデータ(BSM)』」(段落0003)と記載されているから、車両対車両(車車)安全アプリケーションについての特定の仕様に沿ったデータを意味すると認められる。 また、引用発明の「車両検出センサ22のカメラ」は、「路側に設置」(段落0018)され、「交差点内の中間地点付近(地点Z)から交差点手前の所定検出範囲B1」(段落0022)を検出範囲とするものであるから、路側に固定されているものと認められる。そうすると、引用発明の「所定検出範囲B1」は、本願発明の「予め定められた固定領域」に相当する。また、引用発明の「車両検出センサ22のカメラ」は、「所定検出範囲B1の画像を提供する」とともに「当該所定検出範囲B1における他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報を検出して、送信する」ものであるから、その機能からみて、本願発明の「予め定められた固定領域の画像を提供するように構成されたカメラ」に相当する部分と「前記カメラに結合され、前記画像を処理して前記画像内の物体を検出するように構成され」、「検出物体の位置を出力する」ものである「ビデオ分析器」に相当する部分を備えたものであると認められる。 また、引用発明において「AHS基地局CPU20」は「車両検出センサ22のカメラ」から「前記他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報」を受信することから、「AHS基地局CPU20」は「車両検出センサ22のカメラ」のうち「ビデオ分析器」に相当する部分に結合されていることは明らかである。 また、引用発明の「対向車及び道路情報としての他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報」と、本願発明の「前記物体の位置および前記BSMが前記路側モジュールによって生成されたことを識別する指示を含むBSM」とは、「位置を含む情報」という点で共通するから、引用発明の「前記他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報を受信するとともに、対向車及び道路情報としての他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報を生成するように構成されたAHS基地局CPU20」と、本願発明の「前記検出物体の位置を受信するとともに、前記物体の位置および前記BSMが前記路側モジュールによって生成されたことを識別する指示を含むBSMを生成するように構成されたBSM生成器」は、「前記検出物体の位置を受信するとともに、前記物体の位置を含む情報を生成するように構成された情報生成器」という点で一致する。 また、「路側アンテナ21」(アンテナ)は「AHS基地局CPU20」から「前記対向車及び道路情報」を受信することから、両者が結合されていることも明らかである。 また、引用発明の「提供情報」に含まれる「路側アンテナ21の固有の識別情報である提供ID」は、「提供情報」(走行支援情報)の発信源が「路側走行支援システム」(路側モジュール)であることを示すものでもあるから、本願発明の「前記BSMが前記路側モジュールによって生成されたことを識別する指示」と、「走行支援情報が路側モジュールによって生成されたことを識別する指示」という点で共通する。 したがって、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「走行支援情報データを生成するための路側インフラストラクチャシステムであって、 路側モジュールを含む前記システムは、 予め定められた固定領域の画像を提供するように構成されたカメラと、 前記カメラに結合され、前記画像を処理して前記画像内の物体を検出するように構成されたビデオ分析器とを備え、前記ビデオ分析器は検出物体の位置を出力するように構成され、 前記システムは、 前記ビデオ分析器に結合され、前記検出物体の位置を受信するとともに、前記物体の位置を含む情報を生成するように構成された情報生成器と、 前記情報生成器に結合され、前記情報生成器から前記物体の位置を含む情報を受信するとともに、前記物体の位置を含む情報および前記走行支援情報が前記路側モジュールによって生成されたことを識別する指示を含む前記走行支援情報を送信するように構成されたアンテナと を備えるシステム。」 <相違点1> 本願発明は「BSM」を生成するシステムであるが、引用発明は「提供情報」を生成するシステムであって、「提供情報」の仕様が、車両対車両(車車)安全アプリケーションについての仕様である「BSM」の仕様に沿ったものであるか否かが不明な点。 <相違点2> 本願発明では、「前記物体の位置および前記BSMが前記路側モジュールによって生成されたことを識別する指示を含む」ものである「BSM」(走行支援情報)が「BSM生成器」で作成されており、走行支援情報が「BSM生成器」という1つの生成器で生成されているのに対し、引用発明では、「対向車及び道路情報としての他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報」が「AHS基地局CPU20」において生成され、「前記対向車及び道路情報報及び路側アンテナ21の固有の識別情報である提供IDを含む提供情報」(走行支援情報)が「路側アンテナ21」において生成されており、走行支援情報が「AHS基地局CPU20」と「路側アンテナ21」で生成されている点。 <相違点3> 本願発明は、「前記アンテナおよび前記BSM生成器に結合されたプロセッサとをさらに備え、前記アンテナは、BSM生成物体からBSMデータを受信するようにさらに構成され、前記プロセッサは、前記検出物体が、BSM生成物体に対応するか否かを決定するとともに、前記BSM生成器を制御して非BSM生成検出物体についてのみ前記BSMを生成する」ものであるのに対し、引用発明は、「路側アンテナ21」(アンテナ)が走行支援情報生成体から走行支援情報データを受信するように構成されておらず、また、検出物体が、走行支援情報生成体に対応するか否かを決定するとともに、走行支援情報生成器を制御して非走行支援情報生成検出物体についてのみ走行支援情報を生成するような「プロセッサ」も備えていない点。 (2)相違点についての判断 ア.相違点1について 引用例2に記載されているように、走行支援情報として「基本安全メッセージ(BSM)」は周知の事項であるから(必要であれば、米国特許出願公開第2010/0267344号の段落0003も参照。)、引用発明において、走行支援情報である「提供情報」の仕様を「BSM」の仕様に沿ったものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ.相違点2について 引用発明においては、「提供情報」(走行支援情報)は、「AHS基地局CPU20」において生成された「対向車及び道路情報」に、「路側アンテナ21」(アンテナ)において「路側アンテナ21の固有の識別情報である提供ID」(前記路側モジュールによって生成されたことを識別する指示)を付加することによって生成されているが、情報をシステム内において一の生成器で生成するか、複数の生成器で生成するかは当業者が適宜決定し得る設計的事項であるから、「AHS基地局CPU20」という一の生成器において「対向車および道路情報」と「路側アンテナ21の固有の識別情報である提供ID」を含む情報を生成させることは、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。 ウ.相違点3について 引用例3に記載された事項に関して、以下のように認めることができる。 (ア)引用例3に記載された事項の「路側機100」は、「非搭載車両として特定された車両に関する情報を提供する」ものであって、この「(非搭載車両として特定された)車両に関する情報」は、「この非搭載車両の情報を搭載車両に保持させることで衝突の危険性を回避することを目的」(段落0020)とした情報であるから「走行支援情報」であると言え、「路側機100」は、そのためのデータを生成しているものであると認められる。 (イ)引用例3に記載された事項の「画像認識部101の交差点カメラ」は、「所定のサンプリング周期で認識された画像から、その差分をとることで移動体を抽出し、位置情報を算出する」ように構成されているから、移動体を検出し、位置情報を算出するものであると言える。 (ウ)引用例3に記載された事項の「車々間で位置情報を通信するための」「通信モジュールを搭載している車両である搭載車両」は「走行支援情報生成物体」と言えるから、「車両移動情報検出部106」の「アンテナ」は走行支援情報生成物体から位置情報を受信するものと言える。 (エ)引用例3に記載された事項の「非搭載車両判定部102」は、「前記画像認識部101で認識された画像と、車両移動情報検出部106で検出された各車両の位置情報から、通信モジュールを搭載していない非搭載車両を判定」するものであるから、検出された移動体が走行支援情報生成物体に対応するか否かを決定するものであると言える。 (オ)引用例3に記載された事項の「非搭載車両情報提供部105」は、「前記保持車両に、非搭載車両として特定された車両に関する情報を提供する」ものであって、例えば「当該保持車両と非搭載車両との相対位置と、移動速度」(段落0025参照)のような情報(走行支援情報)を生成するものである。また、生成される情報は非搭載車両についての情報であって、「非搭載車両」とは非走行支援情報生成検出物体であると言える。そうすると、「非搭載車両情報提供部105」は、非走行支援情報検出物体について走行支援情報を生成するものと言える。 (カ)「非搭載車両判定部102」は上記(エ)のとおり検出された移動体が走行支援情報生成物体に対応するか否かを決定する処理を行うものであり、また、「移動先一致度判定部103」及び「保持車両特定部104」は「保持車両」を特定するための処理を行うものである。そして、これら「非搭載車両判定部102」、「移動先一致度判定部103」及び「保持車両特定部104」での処理結果に基いて、上記(オ)のように、「非搭載車両情報提供部105」において非走行支援情報検出物体について走行支援情報が生成されるものであるから、「非搭載車両判定部102」、「移動先一致度判定部103」及び「保持車両特定部104」は、「非搭載車両情報提供部105」における走行支援情報の生成を制御しているものと言える。そして、「非搭載車両判定部102」、「移動先一致度判定部103」及び「保持車両特定部104」での処理にプロセッサが用いられていることは明らかである。 そうすると、引用例3に記載された事項から、以下の事項も認めることができる。 「走行支援情報データを生成する路側器100であって、 移動体を検出し、位置情報を算出する画像認識部101の交差点カメラと、 走行支援情報を生成する非搭載車両情報提供部105と、 走行支援情報を送信するように構成された非搭載車両情報提供部105のアンテナと、 走行支援情報生成物体から位置情報を受信するように構成された車両移動情報検出部106のアンテナと、 検出された移動体が走行支援情報生成物体に対応するか否かを決定し、非搭載車両情報提供部105を制御して非走行支援情報生成物体について走行支援情報を生成させる、非搭載車両判定部102、移動先一致度判定部103及び保持車両特定部104のプロセッサと、を有する、路側器100。」 そして、引用発明と引用例3に記載された事項は、ともに、カメラからの情報を利用して走行支援情報を生成、送信する路側インフラストラクチャシステムに関するものであり、また、情報通信の技術分野において通信量を減らすことは周知の課題であるから、走行支援情報の送信量を減らすことを目的として、引用発明に、引用例3に記載された事項を適用し、引用発明を、走行支援情報生成物体から走行支援情報データを受信するように構成されたアンテナ、及び、検出された移動体が走行支援情報生成物体に対応するか否かを決定するとともに、非走行支援情報生成検出物体についてのみ走行支援情報を生成するプロセッサを備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、アンテナを情報の送信と受信の両方ができるようなものとすることは例示するまでもない周知技術であるから、引用発明に引用例3に記載された事項を適用する際に、「走行支援情報を送信するように構成されたアンテナ(提供情報を送信する路側アンテナ21)」と「走行支援情報データを受信するように構成されたアンテナ」を一体とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 そうすると、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された周知の事項、引用例3に記載された事項及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された周知の事項、引用例3に記載された事項及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そうすると、本願は、原査定の理由によって拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-01 |
結審通知日 | 2017-03-07 |
審決日 | 2017-03-28 |
出願番号 | 特願2011-225854(P2011-225854) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G08G)
P 1 8・ 121- Z (G08G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 倉橋 紀夫、小川 恭司 |
特許庁審判長 |
久保 竜一 |
特許庁審判官 |
松永 謙一 藤井 昇 |
発明の名称 | 基本安全メッセージデータを生成するためのシステムおよび方法 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |