ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G |
---|---|
管理番号 | 1331017 |
審判番号 | 不服2016-10667 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-14 |
確定日 | 2017-08-09 |
事件の表示 | 特願2013-518244「表面表示方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月 5日国際公開、WO2012/002701、平成25年10月17日国内公表、特表2013-539058〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年6月28日(パリ条約による優先権主張、2010年6月29日、韓国、2010年7月19日、韓国、2010年7月19日、韓国、2010年7月26日、韓国、2010年8月16日、韓国、2010年8月27日、韓国、2010年8月31日、韓国、2011年4月8日、韓国、2011年6月27日、韓国、2011年6月27日、韓国、2011年6月27日、韓国、2011年6月27日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成25年1月23日付けで翻訳文が提出され、平成26年6月17日付けで手続補正がなされたが、平成27年6月1日付けで拒絶理由が通知され、平成27年9月4日付けで手続補正がなされたが、平成28年3月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年7月14日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年7月14日付けでなされた手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成28年7月14日付けでなされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである(下線は、補正箇所を示す)。 「【請求項1】 少なくとも1つの検知手段を用いて情報を獲得する情報獲得ステップと、 前記獲得された情報に基づいて電圧信号を生成する電圧信号生成ステップと、 前記生成された電圧信号に基づいて表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節する表示ステップとを含み、 前記表示領域は、少なくとも一方が透明である2以上の電極及び、該電極間に配置され、かつ溶媒及び前記溶媒内に分散された複数の粒子からなる溶液を含み、 前記溶液は、前記粒子及び前記溶媒の少なくとも一方に誘発された電気分極量が、印加された電場の強度又は方向に応じて誘発される電気分極によって変化するという、可変電気分極特性を示し、 前記可変電気分極特性に基づき、前記複数の粒子のうち一粒子と該一粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第1分極領域が形成され、前記複数の粒子のうち他の粒子と該他の粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第2分極領域が形成され、前記第1分極領域及び前記第2分極領域はそれぞれ一つの粒子のように働いて互いに相互作用し、 前記電極間に前記電圧信号に対応する前記電場を印加し、前記電場の強度及び方向のうちの少なくとも一方を調節して前記粒子間の間隔又は前記粒子の位置を制御することによって、前記対象の表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節するようにしたことを特徴とする方法。 【請求項2】 前記粒子間の間隔を制御して前記粒子から反射される光の波長を変化させ、それにより前記対象の表示領域のカラーを可変的に調節するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記情報獲得ステップは、サンプル領域上に漸進的に変化するサンプルカラーを表示し、前記サンプル領域上に表示されるサンプルカラーのうち、ユーザによって少なくとも1つのカラーが選択されることによりなされることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記溶媒は可視光線透過性物質で構成され、前記粒子から反射される光の波長が赤外線又は紫外線帯域に該当するようになれば、前記表示領域は可視光領域で透明になることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記粒子は同一の符号の電荷を有し、 前記電場が印加されることによって、電場の強度に比例して粒子に作用する電気泳動力と、前記可変電気分極特性により粒子間に作用する静電気的引力と、同一の符号の電荷を有する粒子間に作用する静電気的反発力が相互作用して前記粒子間の間隔が特定の範囲に到達するようになり、前記粒子間の間隔が特定の範囲に到達するようになることによって、前記複数の粒子から特定波長の光が反射されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記複数の粒子は、互いに立体障害効果を示し、 前記電場が印加されることによって、前記可変電気分極特性により粒子間に作用する静電気的引力と、前記粒子間に作用する立体障害反発力が相互作用して前記粒子間の間隔が特定の範囲に到達するようになり、前記粒子間の間隔が前記特定の範囲に到達するようになることによって、前記複数の粒子から特定波長の光が反射されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記溶液は、光透過性物質でカプセル化されるか、絶縁性媒体で区画化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項8】 前記溶液は、電場を印加して所定のカラーを前記表示領域に表示した後、前記電場を除去しても、所定時間前記所定のカラーを維持することを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項9】 前記電場を印加すれば、前記粒子は、前記溶媒内で3次元的に短範囲規則度を有しながら、配列することを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項10】 前記電場を前記電極の特定部分にのみ印加して前記粒子を前記電極の特定部位に移動させることで、前記表示領域のカラー又は透過度が調節されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項11】 少なくとも1つの検知手段を用いて情報を獲得する情報獲得部と、 前記獲得された情報に基づいて電圧信号を生成する電圧信号生成部と、 前記生成された電圧信号に基づいてカラー及び透過度のうちの少なくとも一方が可変的に調節される表示部とを含み、 前記表示部は、少なくとも一方が透明である2以上の電極及び、該電極間に配置され、かつ溶媒及び前記溶媒内に分散された複数の粒子からなる溶液を含み、 前記溶液は、前記粒子及び前記溶媒の少なくとも一方に誘発された電気分極量が、印加された電場の強度又は方向に応じて誘発される電気分極によって変化するという、可変電気分極特性を示し、 前記可変電気分極特性に基づき、前記複数の粒子のうち一粒子と該一粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第1分極領域が形成され、前記複数の粒子のうち他の粒子と該他の粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第2分極領域が形成され、前記第1分極領域及び前記第2分極領域はそれぞれ一つの粒子のように働いて互いに相互作用し、 前記電極間に前記電圧信号に対応する前記電場を印加し、前記電場の強度及び方向のうちの少なくとも一方を調節して前記粒子間の間隔又は前記粒子の位置を制御することによって、前記表示部のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節するように構成したことを特徴とする装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の平成27年9月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 少なくとも1つの検知手段を用いて情報を獲得する情報獲得ステップと、 前記獲得された情報に基づいて電圧信号を生成する電圧信号生成ステップと、 前記生成された電圧信号に基づいて表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節する表示ステップとを含み、 前記表示領域は、少なくとも一方が透明である2以上の電極及び、該電極間に配置され、かつ溶媒及び前記溶媒内に分散された複数の粒子からなる溶液を含み、 前記溶液は、前記粒子及び前記溶媒の少なくとも一方に誘発された電気分極量が、印加された電場の強度又は方向に応じて誘発される電気分極によって変化するという、可変電気分極特性を示し、 前記電極間に前記電圧信号に対応する前記電場を印加し、前記電場の強度及び方向のうちの少なくとも一方を調節して前記粒子間の間隔又は前記粒子の位置を制御することによって、前記対象の表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節するようにしたことを特徴とする方法。 【請求項2】 前記粒子間の間隔を制御して前記粒子から反射される光の波長を変化させ、それにより前記対象の表示領域のカラーを可変的に調節するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記情報獲得ステップは、サンプル領域上に漸進的に変化するサンプルカラーを表示し、前記サンプル領域上に表示されるサンプルカラーのうち、ユーザによって少なくとも1つのカラーが選択されることによりなされることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記溶媒は可視光線透過性物質で構成され、前記粒子から反射される光の波長が赤外線又は紫外線帯域に該当するようになれば、前記表示領域は可視光領域で透明になることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記粒子は同一の符号の電荷を有し、 前記電場が印加されることによって、電場の強度に比例して粒子に作用する電気泳動力と、前記可変電気分極特性により粒子間に作用する静電気的引力と、同一の符号の電荷を有する粒子間に作用する静電気的反発力が相互作用して前記粒子間の間隔が特定の範囲に到達するようになり、前記粒子間の間隔が特定の範囲に到達するようになることによって、前記複数の粒子から特定波長の光が反射されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記複数の粒子は、互いに立体障害効果を示し、 前記電場が印加されることによって、前記可変電気分極特性により粒子間に作用する静電気的引力と、前記粒子間に作用する立体障害反発力が相互作用して前記粒子間の間隔が特定の範囲に到達するようになり、前記粒子間の間隔が前記特定の範囲に到達するようになることによって、前記複数の粒子から特定波長の光が反射されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記溶液は、光透過性物質でカプセル化されるか、絶縁性媒体で区画化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項8】 前記溶液は、電場を印加して所定のカラーを前記表示領域に表示した後、前記電場を除去しても、所定時間前記所定のカラーを維持することを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項9】 前記電場を印加すれば、前記粒子は、溶媒内で3次元的に短範囲規則度を有しながら、配列することを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項10】 前記電場を前記電極の特定部分にのみ印加して前記粒子を前記電極の特定部位に移動させることで、前記表示領域のカラー又は透過度が調節されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項11】 前記粒子は電荷を有さず、電気分極特性を有し、立体障害反発力を発生させることができる立体構造物を有し、該粒子の電気分極量が印加された前記電場によって変化することを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項12】 少なくとも1つの検知手段を用いて情報を獲得する情報獲得部と、 前記獲得された情報に基づいて電圧信号を生成する電圧信号生成部と、 前記生成された電圧信号に基づいてカラー及び透過度のうちの少なくとも一方が可変的に調節される表示部とを含み、 前記表示部は、少なくとも一方が透明である2以上の電極及び、該電極間に配置され、かつ溶媒及び前記溶媒内に分散された複数の粒子からなる溶液を含み、 前記溶液は、前記粒子及び前記溶媒の少なくとも一方に誘発された電気分極量が、印加された電場の強度又は方向に応じて誘発される電気分極によって変化するという、可変電気分極特性を示し、 前記電極間に前記電圧信号に対応する前記電場を印加し、前記電場の強度及び方向のうちの少なくとも一方を調節して前記粒子間の間隔又は前記粒子の位置を制御することによって、前記表示部のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節するように構成したことを特徴とする装置。 【請求項13】 前記粒子は電荷を有さず、電気分極特性を有し、立体障害反発力を発生させることができる立体構造物を有し、該粒子の電気分極量が印加された前記電場によって変化することを特徴とする請求項12に記載の装置。」 2 補正の適否 上記補正は、次のとおりである。 ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項11、13を削除する。 イ 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、12に「前記可変電気分極特性に基づき、前記複数の粒子のうち一粒子と該一粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第1分極領域が形成され、前記複数の粒子のうち他の粒子と該他の粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第2分極領域が形成され、前記第1分極領域及び前記第2分極領域はそれぞれ一つの粒子のように働いて互いに相互作用し」との限定を付加し、新たな請求項1、11とする。 ウ 本件補正前の特許請求の範囲の請求項9に「前記粒子は、溶媒内で」とあったところを、「前記粒子は、前記溶媒内で」と補正する。 よって、本件補正は、上記ア、イについては、特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)及び特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものに該当する。 また、上記ウについては、特許法第17条の2第5項第3号(誤記の訂正)に掲げる事項を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1を引用する請求項7に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明を独立形式で書き下せば、次のとおりである。 「少なくとも1つの検知手段を用いて情報を獲得する情報獲得ステップと、 前記獲得された情報に基づいて電圧信号を生成する電圧信号生成ステップと、 前記生成された電圧信号に基づいて表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節する表示ステップとを含み、 前記表示領域は、少なくとも一方が透明である2以上の電極及び、該電極間に配置され、かつ溶媒及び前記溶媒内に分散された複数の粒子からなる溶液を含み、 前記溶液は、前記粒子及び前記溶媒の少なくとも一方に誘発された電気分極量が、印加された電場の強度又は方向に応じて誘発される電気分極によって変化するという、可変電気分極特性を示し、 前記可変電気分極特性に基づき、前記複数の粒子のうち一粒子と該一粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第1分極領域が形成され、前記複数の粒子のうち他の粒子と該他の粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第2分極領域が形成され、前記第1分極領域及び前記第2分極領域はそれぞれ一つの粒子のように働いて互いに相互作用し、 前記電極間に前記電圧信号に対応する前記電場を印加し、前記電場の強度及び方向のうちの少なくとも一方を調節して前記粒子間の間隔又は前記粒子の位置を制御することによって、前記対象の表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節するようにし、 前記溶液は、光透過性物質でカプセル化されるか、絶縁性媒体で区画化されることを特徴とする方法。」 (2)引用例の記載事項等 (引用例1) 本願について、原査定の理由で引用された、パリ条約に基づく優先権主張の基礎とされた、最先の出願の出願日(2010年6月29日、以下「優先日」という。)前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、韓国公開特許第10-2009-0086192号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 ア (当審訳:技術分野 <1> 本発明は、光結晶性を利用した表示方法と表示装置に関するものである。より詳細には、電荷を有する複数の粒子に電界を印加して上記粒子の間の間隔を制御して、それに応じて粒子から反射される光の波長を制御する光結晶性を利用した表示方法と表示装置に関するものである。) イ (当審訳:課題解決手段 <9> 上述した目的を達成するために、本発明に係る光結晶性を利用した表示方法は、電荷を有する複数の粒子が分散した状態で、電界を印加して上記粒子の間の間隔を制御することを特徴とする。 <10> そして、本発明に係る光結晶性を利用した表示方法は、電荷を有する複数の粒子が分散した状態で、電界と磁界を印加して上記粒子の間の間隔を制御することを特徴とする。 <11> 上記粒子はコロイド状態であることができる。 <12> 上記電界の強さや方向のうちの少なくともいずれかの変化に応じて上記粒子の間の間隔が変化し、上記間隔の変化に応じて上記粒子から反射される光の波長が変化することができる。 <13> 上記粒子は、それ自体で電荷を持ったり、粒子の性質を任意に変化させて電荷を持つようにすることができる。 <14> 上記粒子は、任意の溶媒中で分散した状態で光透過性物質のカプセルにカプセル化することができる。 <15> 上記粒子は、任意の溶媒中で分散した状態で光透過性物質の媒質内に散在することができる。) ウ (当審訳: <48> 次に、本発明の一実施例によれば、電界印加部(322、324、326)は、表示部(310)に対して所定の電界を印加する機能を実行し、電界印加部(322、324、326)を介して印加される電界の強さと方向は表示部(310)から反射されることを希望する光の波長に合わせて適切に制御することができる。また、本発明の一実施例によれば、表示部(310)に含まれるコロイド粒子(312)との間の間隔をより正確かつ独立して制御するために、電界印加部(322、324、326)は、表示部(310)の一部の領域についてのみ独立して電界を印加することができる複数の電極(322、324、326)で構成されることがあり、このような複数の電極(322、324、326)は薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)のような微細駆動回路によって個別に制御することができる。一方、本発明の一実施例によれば、電界印加部(322、324、326)は、表示部(310)から放出される光の進行を妨げないために、光透過性物質で構成されることがあり、例えば、光透過性電極材料であるインジウムスズ酸化物(Indium TinOxide; ITO)、酸化チタン(TiO2)、カーボンナノチューブ、およびその他の導電性ポリマーフィルムなどで構成することができる。) エ (当審訳: <53> 図5は、本発明の一実施例に基づいて表示装置に含まれるコロイド粒子を複数のカプセルにカプセル化する構成を例示的に示す図である。 <54> 図5を参照すると、本発明の一実施形態に係る表示装置(500)に含まれるコロイド粒子は、任意の溶媒中で分散した状態で、光透過性物質からなる複数のカプセル(512、514、516、518)でカプセル化することができる。本発明の一実施例によれば、コロイド粒子をカプセル化することにより、別のカプセルに含まれるコロイド粒子の間に混入などの直接的な干渉が発生することを防止することができ、これにより、表示装置(500)に含まれるコロイド粒子間の間隔を各カプセルごとに独立して制御することができる。) オ (当審訳: <57> 図6は、本発明の一実施例に基づいて表示装置に含まれるコロイド粒子を媒質内に散在させる構成を例示的に示す図である。 <58> 図6を参照すると、本発明の一実施形態に係る表示装置(600)に含まれる粒子は、任意の溶媒中で分散した状態(すなわち、コロイド状態)で光透過性物質からなる媒質内に散在することができる。より具体的には、電場などの外部刺激に対して柔軟でない光透過性物質(616)内に所定量のコロイド粒子を水滴(Droplet)の形で散在して分布させることにより表示装置(600)に含まれるコロイド粒子を互いに隔離させることができる。本発明の一実施例によれば、媒質内にコロイド粒子が分散されたコロイド溶媒を散在して分布させることにより、異なる溶媒の領域に含まれるコロイド粒子の間に混入などの直接的な干渉が発生することを防止することができ、これにより、表示装置(500)に含まれるコロイド粒子間の間隔をより独立して制御することができる。 <59> 続いて、図6を参照すると、本発明の一実施形態に係る表示装置(500)は、媒質(616)内に含まれる複数の溶媒領域(612、614)を含むことができる。より具体的には、第1の電圧が印加される第1電極(622)との間に位置する第1溶媒の領域(612)に含まれるコロイド粒子間の間隔と第2の電圧が印加される第2電極(624)との間に位置する第2の溶媒の領域(614)に含まれるコロイド粒子間の間隔は互いに独立して制御することができ、これにより、第1溶媒の領域と第2の溶媒の領域は異なる波長の光を反射することになる。したがって、本発明の一実施形態に係る表示装置(600)によれば、各溶媒の領域ごとに互いに独立したディスプレイを実装できるようになる。) カ (当審訳: <60> 図7及び図8は、本発明の一実施例に基づいて媒質内に散在しているコロイド粒子の構成を例示的に示す図である。ちなみに、図7及び図8は、図6で説明した表示装置(600)の断面を電子顕微鏡で撮影した結果得られた写真である。 <61> 図7及び図8を参照すると、本発明の一実施例に基づいて電場、磁場などの外部刺激に対して流動的でない固体(solid)またはゲル(gel)状態の光透過性物質からなる媒質(820)内に散在しているコロイド溶媒(810)内に分散されているコロイド粒子(812)を確認することができる。より具体的には、本発明の一実施例によれば、任意のコロイド溶媒内に電荷を持つコロイド粒子を分散させてエマルジョン状態のコロイド溶液を生成し、上記コロイド溶液を水滴(droplet)の形で光透過性媒質内に均一に混合させることができる。本発明の一実施例によれば、コロイド粒子は、電荷層がコーティングされた酸化鉄(FeO_(x))クラスタであることがあり、コロイド溶媒(810)は、EG(ethylene glycol)であることがあり、媒質(820)はPDMS(Polydimethylsiloxane)である場合もある。 <62> 以上で述べたように、本発明の一実施例に基づいてコロイド粒子を含むコロイド溶液をカプセル化したり、媒質内に散在している場合、カプセルまたはコロイド溶媒領域に含まれているコロイド粒子の間隔を独立して制御することができ、より精密なディスプレイを可能にすることができ、表示装置の維持及び補修を容易にする効果が達成される。) キ (当審訳: <74> 図10は、本発明に基づいて電荷と磁性を有するコロイド粒子に対して電場を印加して、実際にディスプレイを実装した結果を示す図である。 <75> 参考までに、本実施例において、コロイド粒子としては、酸化鉄(Fe_(3)O_(4);マグネタイト)を含むコロイド粒子の負電荷を有するシリコン酸化物(SiO_(X))をコーティングしたものが使用され、上記コロイド粒子は、コロイド溶媒に分散されたまま表示装置内に注入された。そして、本実施例において、電界を印加するための手段としては、光透過性電極材料のいずれかであるインジウムスズ酸化物が使用された。また、本実施例において、表示装置の上部電極に正の電圧を印加することにより負電荷を有するコロイド粒子が上部電極に向かって偏って配列されるようにした。) よって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「電荷を有する複数の粒子が分散した状態で、電界を印加して前記粒子の間の間隔を制御する表示方法であって(上記「イ」より。以下、同様。)、 電界の強さや方向のうちの少なくともいずれかの変化に応じて前記粒子の間の間隔が変化し、上記間隔の変化に応じて前記粒子から反射される光の波長が変化することができ(「イ」)、 表示装置(600)に含まれる粒子は、任意の溶媒中で分散した状態(すなわち、コロイド状態)で光透過性物質からなる媒質内に散在することができ、より具体的には、電場などの外部刺激に対して柔軟でない光透過性物質(616)内に所定量のコロイド粒子を水滴(Droplet)の形で散在して分布させることにより表示装置(600)に含まれるコロイド粒子を互いに隔離させることができ、媒質内にコロイド粒子が分散されたコロイド溶媒を散在して分布させることにより、異なる溶媒の領域に含まれるコロイド粒子の間に混入などの直接的な干渉が発生することを防止することができ、第1の電圧が印加される第1電極(622)との間に位置する第1溶媒の領域(612)に含まれるコロイド粒子間の間隔と第2の電圧が印加される第2電極(624)との間に位置する第2の溶媒の領域(614)に含まれるコロイド粒子間の間隔は、互いに独立して制御することができ、これにより、第1溶媒の領域と第2の溶媒の領域は、異なる波長の光を反射することになり、したがって、各溶媒の領域ごとに互いに独立したディスプレイを実現できるようになり(「オ」)、 コロイド粒子は、電荷層がコーティングされた酸化鉄(FeO_(x))クラスタであることがあり、コロイド溶媒(810)は、EG(ethylene glycol)であることがあり、媒質(820)は、PDMS(Polydimethylsiloxane)である場合もあり(カ)、 電界を印加するための手段としては、光透過性電極材料が使用される(キ)、 表示方法。」 (引用例2) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2004-62052号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面ともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【要約】 【課題】塗装の塗り替えや外装体の付け換えなどを行うことなく外観を自由に変更できる装置を提供する。 【解決手段】装置1はコンピュータの表示装置であり、液晶表示パネル2と駆動回路などを筐体3内に収容してなる。筐体3の前面パネル部3aは、前面パネル基体5と、不揮発性表示媒体6と、可視光を良好に透過する材質で形成されたカバー7とを備えている。不揮発性表示媒体6は、装置1内の不揮発性表示媒体用の駆動回路によって駆動される。この駆動回路は、液晶表示パネル2用の駆動回路とともにコンピュータ本体に接続されており、コンピュータ本体からの制御信号に従って不揮発性表示媒体6を駆動する。コンピュータ本体には、不揮発性表示媒体6に任意の画像や色調を表示させるためのプログラムがインストールされており、マウスなどの入力装置を操作して、不揮発性表示媒体6に表示させる画像や色調を変化させることにより、前面パネル部3aの色調や模様を変化させることができる。」 よって、引用例2には、次の技術(以下、「引用例2に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる。 「外観を自由に変更できる装置であって、筐体3の前面パネル部3aは、表示媒体6を備え、マウスなどの入力装置を操作して、表示媒体6に表示させる画像や色調を変化させることにより、前面パネル部3aの色調や模様を変化させることができる装置。」 (引用例3) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2006-293002号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面ともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「特許文献2では、筐体の外表面上に電子ペーパーを設け、その電子ペーパーに表示されるデザイン画像を変更可能とした電子機器が開示されている。この電子機器によれば、ユーザーの好みに応じて筐体デザインを簡単に変更することができるようになる。筐体デザインは、一般に、長い期間ずっと表示状態が維持されることを望まれるが、このような長い期間ずっと電力を消費し続けることとなれば、実用性に欠けるものとなる。上記特許文献2に開示の電子機器は、筐体デザインを表示する手段として電子ペーパーを用いているので、電力を消費せずに筐体デザインを長い期間表示し続けることができ、実用性が高いと言える。」(段落【0002】) よって、引用例3には、次の技術(以下、「引用例3に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる。 「筐体の外表面上に電子ペーパーを設け、その電子ペーパーに表示されるデザイン画像を変更可能とし、ユーザーの好みに応じて筐体デザインを簡単に変更することができるようになる電子機器。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1において「第1の電圧が印加される第1電極(622)」(引用例1の第6図(下図)に示されているとおり、上下一対の電極を意味している)または「第2の電圧が印加される第2電極(624)」(引用例1の第6図(下図)に示されているとおり、上下一対の電極を意味している)は、第1電極(622)との間に位置する第1溶媒の領域(612)、または第2電極(624)との間に位置する第2の溶媒の領域(614)に「電界を印加するための手段」であって「光透過性電極材料が使用される」から、本願補正発明における「少なくとも一方が透明である2以上の電極」に相当する。 イ 引用発明1における「第1の電圧が印加される第1電極(622)との間に位置する第1溶媒の領域(612)」、または「第2の電圧が印加される第2電極(624)との間に位置する第2の溶媒の領域(614)」は「コロイド粒子」を含むものであるから、該「コロイド粒子」が「溶媒中で分散した状態(すなわち、コロイド状態)」となっているコロイド溶液が、本願補正発明における「該電極間に配置され、かつ溶媒及び前記溶媒内に分散された複数の粒子からなる溶液」に相当する。 ウ 引用発明1の「コロイド状態」の溶液における「コロイド粒子」が、「電荷層がコーティングされた酸化鉄(FeO_(x))クラスタ」であること、または、引用発明1の「コロイド状態」の溶液における「コロイド溶媒(810)」が「EG(ethylene glycol)」であり「電圧が印加される」と「コロイド粒子間の間隔」を「制御することができ」ること(つまり、「電界の強さや方向のうちの少なくともいずれかの変化に応じて前記粒子の間の間隔が変化」すること)と、本願補正発明における「前記溶液は、前記粒子及び前記溶媒の少なくとも一方に誘発された電気分極量が、印加された電場の強度又は方向に応じて誘発される電気分極によって変化するという、可変電気分極特性を示し、前記可変電気分極特性に基づき、前記複数の粒子のうち一粒子と該一粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第1分極領域が形成され、前記複数の粒子のうち他の粒子と該他の粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第2分極領域が形成され、前記第1分極領域及び前記第2分極領域はそれぞれ一つの粒子のように働いて互いに相互作用」することとは、「前記溶液は、印加された電場の強度又は方向に応じて、粒子同士の相互作用が変化する」点で共通する。 エ 引用発明1における「電界の強さや方向のうちの少なくともいずれかの変化に応じて前記粒子の間の間隔が変化し、上記間隔の変化に応じて前記粒子から反射される光の波長が変化することができ」、「第1の電圧が印加される第1電極(622)との間に位置する第1溶媒の領域(612)に含まれるコロイド粒子間の間隔と第2の電圧が印加される第2電極(624)との間に位置する第2の溶媒の領域(614)に含まれるコロイド粒子間の間隔は、互いに独立して制御することができ、これにより、第1溶媒の領域と第2の溶媒の領域は、異なる波長の光を反射することになり、したがって、各溶媒の領域ごとに互いに独立したディスプレイを実現できるようにな」ることとが、本願補正発明における「前記電極間に前記電圧信号に対応する前記電場を印加し、前記電場の強度及び方向のうちの少なくとも一方を調節して前記粒子間の間隔又は前記粒子の位置を制御することによって、前記対象の表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節する」ことに相当する。 オ 引用発明1における「コロイド状態」の溶液を、「電場などの外部刺激に対して柔軟でない光透過性物質(616)内に所定量のコロイド粒子を水滴(Droplet)の形で散在して分布させることにより表示装置(600)に含まれるコロイド粒子を互いに隔離させること」ることと、本願補正発明における「前記溶液は、光透過性物質でカプセル化されるか、絶縁性媒体で区画化される」こととは、「前記溶液は、光透過性物質で隔離される」点で共通する。 すると、本願補正発明と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) 表示領域は、少なくとも一方が透明である2以上の電極及び、該電極間に配置され、かつ溶媒及び前記溶媒内に分散された複数の粒子からなる溶液を含み、 前記溶液は、印加された電場の強度又は方向に応じて、粒子同士の相互作用が変化し、 前記電極間に前記電圧信号に対応する前記電場を印加し、前記電場の強度及び方向のうちの少なくとも一方を調節して前記粒子間の間隔又は前記粒子の位置を制御することによって、前記対象の表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節するようにし、 前記溶液は、光透過性物質で隔離されることを特徴とする方法。 (相違点1) 本願補正発明では、「少なくとも1つの検知手段を用いて情報を獲得する情報獲得ステップと、前記獲得された情報に基づいて電圧信号を生成する電圧信号生成ステップと、前記生成された電圧信号に基づいて表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節する表示ステップとを含」むのに対し、引用発明1には、「電荷を有する複数の粒子が分散した状態で、電界を印加して前記粒子の間の間隔を制御する表示方法であって」、「第1の電圧が印加される第1電極(622)との間に位置する第1溶媒の領域(612)」または「第2の電圧が印加される第2電極(624)との間に位置する第2の溶媒の領域(614)」は、「コロイド粒子間の間隔」を制御することで、「異なる波長の光を反射することになり、したがって、各溶媒の領域ごとに互いに独立したディスプレイを実現できる」ものの、本願補正発明のような情報獲得ステップ、電圧信号生成ステップ及び表示ステップについて特定がない点。 (相違点2) 本願補正発明では、「前記溶液は、前記粒子及び前記溶媒の少なくとも一方に誘発された電気分極量が、印加された電場の強度又は方向に応じて誘発される電気分極によって変化するという、可変電気分極特性を示し、前記可変電気分極特性に基づき、前記複数の粒子のうち一粒子と該一粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第1分極領域が形成され、前記複数の粒子のうち他の粒子と該他の粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第2分極領域が形成され、前記第1分極領域及び前記第2分極領域はそれぞれ一つの粒子のように働いて互いに相互作用」するのに対し、引用発明1では、「コロイド状態」の溶液における「コロイド粒子」が、「電荷層がコーティングされた酸化鉄(FeO_(x))クラスタ」であること、及び、引用発明1の「コロイド状態」の溶液における「コロイド溶媒(810)」が「EG(ethylene glycol)」であり「電圧が印加される」と「コロイド粒子間の間隔」を「制御することができ」ることは示されているものの、印加された電場の強度又は方向に応じて、「コロイド状態」の溶液における「コロイド粒子」と「コロイド溶媒(810)」とがどのような物理的挙動を示すのか、明記されていない点。 (相違点3) 本願補正発明では「前記溶液は、光透過性物質でカプセル化されるか、絶縁性媒体で区画化される」のに対し、引用発明1では、「コロイド状態」の溶液を、「電場などの外部刺激に対して柔軟でない光透過性物質(616)内に所定量のコロイド粒子を水滴(Droplet)の形で散在して分布させることにより表示装置(600)に含まれるコロイド粒子を互いに隔離させ」ている点。 (4)判断 上記相違点について以下に検討する。 ア 相違点1について 引用例2に記載された技術を再掲すれば、次のとおりである。 「外観を自由に変更できる装置であって、筐体3の前面パネル部3aは、表示媒体6を備え、マウスなどの入力装置を操作して、表示媒体6に表示させる画像や色調を変化させることにより、前面パネル部3aの色調や模様を変化させることができる装置。」 また、引用例3に記載された技術を再掲すれば、次のとおりである。 「筐体の外表面上に電子ペーパーを設け、その電子ペーパーに表示されるデザイン画像を変更可能とし、ユーザーの好みに応じて筐体デザインを簡単に変更することができるようになる電子機器。」 引用発明1の表示方法に係る「表示装置(600)」は、「電界の強さや方向のうちの少なくともいずれかの変化に応じて前記粒子の間の間隔が変化し、上記間隔の変化に応じて前記粒子から反射される光の波長が変化することができ」る表示装置であるから、引用発明1に示された「表示装置(600)」に、引用例2に記載された技術又は引用例3に記載された技術を適用して、引用発明1に示された「表示装置(600)」を筐体の外表面上に設け、ユーザーの好みを検知して、第1電極(622)に印加される第1の電圧や第2電極(624)に印加される第2の電圧を制御して、反射される光の波長を変化させ、表示装置(600)に表示させる画像や色調を変化させ、筐体デザイン(色調や模様)を簡単に変更するようにし、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について 引用発明1における「コロイド溶媒(810)」は、「EG(ethylene glycol)」であるが、「EG(ethylene glycol)」は、例えば、特開2004-89996号公報の段落【0017】に「媒体は、極性媒体であれば特に制限なく用いることができる。例えば、水、極性の有機媒体(アルコール、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド)及びこれらの混合物などが挙げられ、これらを用いてコロイド結晶が形成され得ることが確認されている。」(下線は、強調のため、当審で付与した。)と記載されているとおり、極性溶媒である。 また、酸化鉄(FeO_(x))の比誘電率が1より大きいことはいうまでもないことである。 よって、引用発明1における「コロイド溶媒(810)」(EG(ethylene glycol))または「コロイド粒子」(酸化鉄(FeO_(x)))に関して、印加された電場の強度又は方向に応じて、コロイド粒子及びコロイド溶媒(810)の少なくとも一方に誘発された電気分極量が、印加された電場の強度又は方向に応じて誘発される電気分極によって変化するという、可変電気分極特性を示すことは、明らかなことである。 また、国際公開第2009/157554号の段落【0026】に、「ここで一般的に粒子が溶媒に分散する理由として、粒子表面が帯電していることが挙げられる。粒子表面が帯電している場合、水などの極性の大きい溶媒との親和性が高く、分散する。なお、微粒子表面の帯電は「正」であっても「負」であってもよい。さらに詳しくいえば、ナノ粒子間に静電的斥力相互作用を働かせ、溶媒中での凝集を起こさせず、結果として溶媒に分散させることができる。特に溶媒として水を利用する場合、水分子が極性を持っているため好ましい。このように水に分散可能な微粒子(水分散性の微粒子)とすることで、例えば、水性媒体(水、水とアルコールとの混合液、塩酸や水酸化ナトリウム水溶液などの無機塩の水溶液)、アルコールなどの極性溶媒に分散させることができる。」(下線は、強調のため、当審で付与した。)と記載されているとおり、微粒子表面が帯電している場合、微粒子は、これと親和した極性溶媒の分子と一体となって、溶媒中を泳動することは、物理的に明らかである。 そして、引用発明1のコロイド溶液は、コロイド粒子が、電荷層がコーティングされた酸化鉄(FeO_(x))クラスタであり、溶媒が、アルコールなどの極性溶媒である「EG(ethylene glycol)」であるから、電荷層がコーティングされた酸化鉄(FeO_(x))クラスタは、これと親和した「EG(ethylene glycol)」の分子と一体となって、溶媒中を泳動することは、上記のとおり、物理的に明らかなことである。 よって、上記相違点2に係る本願補正発明の構成は、帯電したコロイド粒子と極性溶媒とからなるコロイド流体において生じている物理現象を表現したものであって、かかる物理現象は、引用発明1においても同様に生じていると認められるから、上記相違点2は、実質的な相違点とはいえない。 ウ 相違点3について 引用発明1では、「媒質内にコロイド粒子が分散されたコロイド溶媒を散在して分布させることにより、異なる溶媒の領域に含まれるコロイド粒子の間に混入などの直接的な干渉が発生することを防止することができ」、これにより、「表示装置(500)に含まれるコロイド粒子間の間隔をより独立して制御することができる」(引用例1段落<58>参照。)ものであるが、引用例1には、「コロイド粒子は、任意の溶媒中で分散した状態で、光透過性物質からなる複数のカプセル(512、514、516、518 )でカプセル化することができ」(段落<54>)、「コロイド粒子をカプセル化することにより、別のカプセルに含まれるコロイド粒子の間に混入などの直接的な干渉が発生することを防止することができ」(段落<54>)ること、また、「コロイド粒子を含むコロイド溶液をカプセル化したり、媒質内に散在している場合、カプセルまたはコロイド溶媒領域に含まれているコロイド粒子の間隔を独立して制御することができ、より精密なディスプレイを可能にすることができ、表示装置の維持及び補修を容易にする効果が達成される。」(段落<62>)ことが記載されている。 よって、引用発明1において、媒質内にコロイド粒子が分散されたコロイド溶媒を散在して分布させることに代え、コロイド粒子は、任意の溶媒中で分散した状態で、光透過性物質からなる複数のカプセル(512、514、516、518 )でカプセル化するようにして、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 エ 従って、本願補正発明は、引用発明1及び引用例2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)まとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成28年7月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成27年9月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1を引用する請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、独立形式で書き下せば、次のとおりである。 「【請求項1】 少なくとも1つの検知手段を用いて情報を獲得する情報獲得ステップと、 前記獲得された情報に基づいて電圧信号を生成する電圧信号生成ステップと、 前記生成された電圧信号に基づいて表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節する表示ステップとを含み、 前記表示領域は、少なくとも一方が透明である2以上の電極及び、該電極間に配置され、かつ溶媒及び前記溶媒内に分散された複数の粒子からなる溶液を含み、 前記溶液は、前記粒子及び前記溶媒の少なくとも一方に誘発された電気分極量が、印加された電場の強度又は方向に応じて誘発される電気分極によって変化するという、可変電気分極特性を示し、 前記電極間に前記電圧信号に対応する前記電場を印加し、前記電場の強度及び方向のうちの少なくとも一方を調節して前記粒子間の間隔又は前記粒子の位置を制御することによって、前記対象の表示領域のカラー及び透過度のうちの少なくとも一方を可変的に調節するようにし、 前記溶液は、光透過性物質でカプセル化されるか、絶縁性媒体で区画化されることを特徴とする方法。」 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「前記可変電気分極特性に基づき、前記複数の粒子のうち一粒子と該一粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第1分極領域が形成され、前記複数の粒子のうち他の粒子と該他の粒子の有する電荷による電気的引力が作用する領域に存在する前記溶媒によって第2分極領域が形成され、前記第1分極領域及び前記第2分極領域はそれぞれ一つの粒子のように働いて互いに相互作用し」との限定を解除したものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1及び引用例2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び引用例2、3に記載された技術に基づいてい、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-06 |
結審通知日 | 2017-03-07 |
審決日 | 2017-03-27 |
出願番号 | 特願2013-518244(P2013-518244) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小野 健二、波多江 進 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
清水 稔 関根 洋之 |
発明の名称 | 表面表示方法及び装置 |
代理人 | 特許業務法人 大島特許事務所 |