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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1331048
審判番号 不服2015-14724  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-06 
確定日 2017-08-08 
事件の表示 特願2012-173604「通信手段を持つ適応誘導電源」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月 1日出願公開、特開2012-213324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年1月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年2月4日、米国:2003年10月20日、米国)を国際出願日とする特願2006-502919号の一部を平成21年6月24日に新たな出願とした特願2009-149553号の一部を平成24年8月6日に新たな出願としたものであって、平成27年3月31日付で平成27年2月4日付手続補正でした補正が却下されると共に拒絶査定がなされ(発送日:平成27年4月6日)、これに対し、平成27年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成28年7月21日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年7月25日)、これに対し、平成28年11月25日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明について
本願の特許請求の範囲は、平成28年11月25日付手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
遠隔装置に電力を誘電的に提供するための非接触電源において、
インダクタンスとキャパシタンスを有する共振回路であって、1)前記キャパシタンスに影響を与える可変キャパシタンスを有する可変コンデンサによる前記キャパシタンスと、2)前記インダクタンスに影響を与える可変インダクタンスを有する可変インダクタによる前記インダクタンスのうち少なくとも1つにおける変化の関数として可変である可変共振周波数を持ち、前記遠隔装置への電力伝達のための一次巻線を有する、前記共振回路と、
動作周波数、レール電圧及びデューティサイクルで電力を提供するためのインバータ回路と、
前記遠隔装置から情報を受信するための受信機と、
前記受信機及び前記電力を提供するための回路と電気的に接続されたコントローラとを含み、
前記コントローラは、
(1)前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記共振回路の前記可変共振周波数を変更し、当該可変共振周波数は
(i)前記共振回路の前記キャパシタンスを変更すること、
(ii)前記共振回路の前記インダクタンスを変更すること、
のうち少なくとも一方によって変更され、
(2)前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記動作周波数、前記レール電圧、前記デューティサイクルのうち少なくとも1つを変更するように構成されたことを特徴とする非接触電源。
【請求項2】
センサ出力を生成する回路センサをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の非接触電源。
【請求項3】
前記コントローラは、前記センサ出力に応じて前記動作周波数、前記レール電圧、前記デューティサイクルのうち少なくとも1つを変更することを特徴とする、請求項2に記載の非接触電源。
【請求項4】
前記回路センサは、前記共振回路と前記コントローラに電気的に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の非接触電源。
【請求項5】
前記コントローラは、前記遠隔装置から受信された情報に応じて、前記共振回路の前記可変共振周波数を変更することを特徴とする、請求項1に記載の非接触電源。
【請求項6】
前記コントローラは、前記遠隔装置からの電力情報に応じて、前記共振回路の前記可変共振周波数を変更することを特徴とする、請求項5に記載の非接触電源。
【請求項7】
遠隔装置に電力を誘電的に提供するための非接触電源システムであって、
前記非接触電源システムは、
デューティサイクル及び動作周波数を持つインバータと、
前記インバータと接続された共振回路であって、共振周波数を持ち、前記遠隔装置へ
電力伝達のための一次巻線を有する、前記共振回路と、
前記インバータと接続された電源であって、レール電圧を有する、前記電源と、
前記遠隔装置から電力情報を受信するための受信機と、
センサ出力を生成するための回路センサと、
前記受信機と電気的に通信するコントローラとを含み、
前記コントローラは、
(1)前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記センサ出力に応じて、前記非接触電源の第一特性であって、前記共振回路の前記共振周波数、前記インバータの前記動作周波数、前記電源の前記レール電圧、前記インバータの前記デューティサイクルのうちの1つである、前記第一特性を変更し、
(2)前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、前記非接触電源の第二特性であって、前記共振回路の前記共振周波数、前記インバータの前記動作周波数、前記電源の前記レール電圧、前記インバータの前記デューティサイクルのうちの1つであり、かつ、前記第一特性とは異なる、前記第二特性を変更するようにプログラムされたことを特徴とする非接触電源システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記センサ出力及び前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、前記第一特性を変更するようにプログラムされたことを特徴とする、請求項7に記載の非接触電源システム。
【請求項9】
前記第二特性は、前記共振回路の前記共振周波数であることを特徴とする、請求項7に記載の非接触電源システム。
【請求項10】
メモリをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の非接触電源システム。
【請求項11】
前記受信機は、送受信機の一部であることを特徴とする、請求項7に記載の非接触電源システム。
【請求項12】
前記送受信機は、複数の遠隔装置と通信することを特徴とする、請求項11に記載の非接触電源システム。
【請求項13】
前記送受信機は、前記複数の遠隔装置の各々から電力情報を受信することを特徴とする、請求項12に記載の非接触電源システム。
【請求項14】
前記送受信機は、前記メモリに前記電力情報のリストを生成することを特徴とする、請求項13に記載の非接触電源システム。
【請求項15】
前記コントローラは、前記リストに基づいて、レール電圧、共振周波数、デューティサイクルのうち少なくとも1つについて、最適な設定を決定することを特徴とする、請求項14に記載の非接触電源システム。
【請求項16】
ワークステーションと通信するための通信インターフェースをさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の非接触電源システム。
【請求項17】
前記コントローラは、前記送受信機を介して、前記ワークステーションと前記遠隔装置との間に、通信リンクを作成することを特徴とする、請求項16に記載の非接触電源システム。
【請求項18】
前記受信機は、前記一次巻線、RF送受信機、RF受信機、前記一次巻線から分離した通信コイル、前記一次巻線の一部である通信コイルのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項7に記載の非接触電源システム。
【請求項19】
誘導電源と遠隔装置を含む誘導電源システムを動作させる方法であって、
前記方法の各工程は前記誘導電源によって実行され、前記方法は、
前記遠隔装置に前記誘導電源を誘導的に接続する工程と、
前記誘導電源において、格納された電力情報を前記遠隔装置から受信する工程と、
電力の特性を検出する工程と、
前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、前記誘導電源の第一特性であって、前記誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、前記誘導電源の動作周波数、前記誘導電源のデューティサイクル、前記誘導電源のレール電圧のうちの1つである、前記第一特性を調整する工程と、
前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記検出された特性に応じて、前記誘導電源の第二特性であって、前記誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、前記誘導電源の動作周波数、前記誘導電源のデューティサイクル、前記誘導電源のレール電圧のうちの1つである、前記第二特性を調整する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記第一特性は、前記誘導電源における前記タンク回路の共振周波数であり、
前記共振周波数は、
(1)共振回路の可変コンデンサのキャパシタンスを調整すること、及び、
(2)前記共振回路の可変インダクタのインダクタンスを調整することによって、
調整されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第二特性は、前記検出した特性に応じて、かつ、前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、調整されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記受信機は、前記一次巻線、RF送受信機、RF受信機、前記一次巻線から分離した通信コイル、前記一次巻線の一部である通信コイルのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記格納された電力情報は、装置IDであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記検出された電力の特性は、誘導結合を介して影響を受けた前記遠隔装置の特性によって、作用した前記誘導電源において検出された特性であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。」


3.当審の拒絶の理由
当審で平成28年7月21日付で通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1に、「可変キャパシタンスを有する可変コンデンサと可変インダクタンスを有する可変インダクタのうち少なくとも1つを備える共振回路であって、前記可変コンデンサと前記可変インダクタのうち少なくとも1つに応じて変化する可変共振周波数を持ち」との訳語があり、少なくとも1つとあるから1つだけでも良いこととなるが、可変インダクタのみを有しながら可変コンデンサにのみ応じて変化するもの、可変コンデンサのみを有しながら可変インダクタにのみ応じて変化するものが含まれ、どの様に可変共振周波数を持つことができるのか不明(共振回路の構成と可変共振周波数の関係を明確にされたい)である。
更に、請求項1に、「動作周波数、レール電圧及びデューティサイクルで電力を提供するための回路」との訳語があるが、どの部分の何のための動作周波数であるのか不明(インバータ回路ではないのか。請求項7参照。)であり、「レール電圧」は一般的な用語ではないため構成が特定できず不明であり、動作周波数、レール電圧及びデューティサイクルをどの様に用いる回路であるのか構成を特定できず不明である。「レール電圧」が不明な点は請求項7も同様である。
更に、請求項1において、コントローラは遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、可変共振周波数のみを変更するのか[(1)記載の事項のみを行うのか]、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルのうち少なくとも1つを変更するのか[(2)記載の事項のみを行うのか]、両方行うのか[(1)、(2)の両方を行うのか]、それ以外か特定できず不明であり、仮に両方行う場合、(1)の制御と(2)の制御はどの様に重み付けをして行うのか何等開示が無く不明であり、又、少なくとも1つとあるから、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルのうち2つを変更する場合、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルを全部変更する場合、それぞれ、制御はどの様に重み付けをして行うのか何等開示が無く不明である。
更に、請求項2に、「センサ出力を生成する回路センサ」との訳語があるが、何を検知するセンサを用いるのか何ら開示が無く不明であり、当該出力を非接触電源においてどの様に用いるのか何ら開示が無く不明である。請求項4、7、8も同様である。
更に、請求項3に、「前記コントローラは、前記センサ出力に応じて前記動作周波数、前記レール電圧、前記デューティサイクルのうち少なくとも1つを変更する」との訳語があるが、センサ出力がどの様な物理量であるか不明であるにもかかわらず、何故コントローラが動作周波数等を変更できるのか不明であり、当該変更は電力量を制御するためであるのか否か不明であり、「応じて」とは曖昧な表現であり、コントローラは機械であるからセンサ出力と動作周波数等の間には何某かの関数があるはずであるが、どの様な関数を用いて出力するのか何ら開示が無く不明である。
更に、請求項5に、「前記遠隔装置から受信された情報に応じて」、請求項6に、「前記遠隔装置からの電力情報に応じて」との訳語があるが、「応じて」とは曖昧な表現であり、コントローラは機械であるからセンサ出力と動作周波数等の間には何某かの関数があるはずであるが、どの様な関数を用いて出力するのか何ら開示が無く不明である。請求項7も同様である。
更に、請求項7に、「非接触電源システム」との訳語があるが、請求項1の「非接触電源」と何が異なるのか不明(インバータを有さないものが非接触電源か。インバータを有さないものは明細書の何処に記載があるのか。)である。
更に、請求項7に、「前記遠隔装置から電力情報を受信するための受信機」との訳語があるが、電力情報とは一般的な用語ではないためどの様な情報であるのか特定できず不明(どの部分の電力のどの様な情報か。電力供給元の会社名でも良いのか。)である。請求項19も同様である。
更に、請求項7において、コントローラは遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、センサ出力に応じて第一特性を変更するのみか[(1)記載の事項のみを行うのか]、遠隔装置から受信した情報に応じて第二特性を変更するのみか[(2)記載の事項のみを行うのか]、両方行うのか[(1)、(2)の両方を行うのか]、それ以外か特定できず不明であり、仮に両方行う場合、(1)の制御と(2)の制御はどの様に重み付けをして行うのか何等開示が無く不明(例えばセンサ出力に応じて共振周波数を変更しても電力情報に応じて動作周波数を変更すれば、第一特性は実質的に変更されたことになる。)であり、又、センサ出力に応じて第一特性のうち、共振回路の共振周波数、インバータの動作周波数、電源のレール電圧、インバータのデューティサイクルのどれをどの様な選択基準で選択するのか何ら開示が無く不明であり、第二特性も同様に不明である。
更に、請求項8に、「前記センサ出力及び前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、前記第一特性を変更する」との訳語があるが、請求項7を引用しているため、第一特性は何に応じて変更するのか構成を特定できず不明であり、又、「応じて」とは曖昧な表現であり、コントローラは機械であるからセンサ出力及び遠隔装置から受信した情報と第一特性の間には何某かの関数があるはずであるが、どの様な関数を用いて出力するのか何ら開示が無く不明である。
更に、請求項9に、「前記第二特性は、前記共振回路の前記共振周波数である」との訳語があるが、請求項7を引用しているため、第一特性は何に応じて変更するのか構成を特定できず不明である。
更に、請求項15に、「前記コントローラは、前記リストに基づいて、レール電圧、共振周波数、デューティサイクルのうち少なくとも1つについて、最適な設定を決定する」との訳語があるが、最適な設定とはどの様な設定であるのか何ら開示が無く不明(最適とは、何にとってどの様な状態であれば最適となるのか。)であり、又、請求項15は請求項7の従属項であるが、第一及び第二特性の変更に加えて最適な設定を行うのか否か不明であり、仮に第一及び第二特性の変更に加えて最適な設定を行うのであれば、第一及び第二特性の変更は何故最適な設定を行わないのか不明であり、又、少なくとも1つとあるから、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルのうち2つに決定をする場合、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルの全部を決定する場合、それぞれ、決定はどの様に重み付けをして行うのか何等開示が無く不明である。
更に、請求項19に、「誘導電源」、「誘導電源システム」との訳語があるが、「非接触電源」、「非接触電源システム」と何がどの様に異なるのか何ら開示が無く不明である。
更に、請求項19に、「電力の特性を検出する工程」との訳語があるが、どの部分の電力のどの様な特性を検出するのか何ら開示が無く不明であり、電力情報と電力の特性は何がどの様に異なるのか何ら開示が無く不明である。
更に、請求項19において、遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、遠隔装置から受信した情報に応じて第一特性のみを調整するのか[前記誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、前記誘導電源の動作周波数、前記誘導電源のデューティサイクル、前記誘導電源のレール電圧のうちの1つである、前記第一特性を調整する工程のみを行うのか]、検出された特性に応じて第二特性をのみ調整するのか[前記誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、前記誘導電源の動作周波数、前記誘導電源のデューティサイクル、前記誘導電源のレール電圧のうちの1つである、前記第二特性を調整する工程のみを行うのか]、両方行うのか、それ以外か特定できず不明であり、仮に両方行う場合、両方の調整はどの様に重み付けをして行うのか何等開示が無く不明(例えば遠隔装置から受信した情報に応じて共振周波数を変更しても検出された特性に応じて動作周波数を変更すれば、第一特性は実質的に調整されたことになる。)であり、又、遠隔装置から受信した情報に応じて第一特性のうち、誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、誘導電源の動作周波数、誘導電源のデューティサイクル、誘導電源のレール電圧のどれをどの様な選択基準で選択するのか何ら開示が無く不明であり、第二特性も同様に不明であり、又、請求項7に記載された変更と調整はどの様に異なるのか不明であり、しかも、選択される対象が両者(請求項7と請求項19)で異なっており、何故両者で対象を異ならせるのか不明である。
更に、請求項20に、「前記第一特性は、前記誘導電源における前記タンク回路の共振周波数」との訳語があるが、請求項19を引用しているため、第一特性は何に応じて調整するのか構成を特定できず不明であり、又、共振周波数の調整はコンデンサ容量とコイルインダクタンスの両方を調整することとなるが、請求項1の非接触電源と調整の仕方が異なる(請求項1の非接触電源は必ずしも両方を調整していない。)が、どちらの調整方法を採用するのか不明(単一性違反の疑義がある)である。
更に、請求項21に、「前記第二特性は、前記検出した特性に応じて、かつ、前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、調整される」との訳語があるが、請求項19を引用しているため、第二特性は何に応じて調整するのか構成を特定できず不明であり、又、検出した特性と遠隔装置から受信した情報の両方を用いるから、第二特性を演算するためには、両者に重み付け、優先順位等を付けなければ演算できないが、何ら開示が無いため構成を特定できず不明である。
更に、請求項23に、「前記格納された電力情報は、装置IDである」との訳語があるが、何故装置IDが電力情報であるのか不明であり、ひいては電力情報の定義が不明である。
更に、請求項24の記載は日本語として意味が不明である。」


4.当審の拒絶の理由についての判断
請求項1に、「動作周波数、レール電圧及びデューティサイクルで電力を提供するためのインバータ回路」とあるが、「レール電圧」は日本語として一般的な用語ではないため構成が特定できず不明であり、動作周波数、レール電圧及びデューティサイクルをどの様に用いるインバータ回路であるのか構成を特定できず不明(非接触電源は機械であるから、動作周波数、レール電圧及びデューティサイクルの各々の値を決定するために何らかの演算を行うはずであるが、演算が何等示されておらず各々の値をどの様に決定するのか何等開示が無い。)である。なお、「レール電圧」が不明な点は請求項7も同様である。

請求項1に、「前記コントローラは、(1)前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記共振回路の前記可変共振周波数を変更し、当該可変共振周波数は(i)前記共振回路の前記キャパシタンスを変更すること、(ii)前記共振回路の前記インダクタンスを変更すること、のうち少なくとも一方によって変更され、(2)前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記動作周波数、前記レール電圧、前記デューティサイクルのうち少なくとも1つを変更する」とあるが、コントローラは遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、可変共振周波数のみを変更するのか[(1)記載の事項のみを行うのか]、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルのうち少なくとも1つを変更するのか[(2)記載の事項のみを行うのか]、両方行うのか[(1)、(2)の両方を行うのか]、それ以外か特定できず不明であり、仮に両方行う場合、機械である非接触電源が行うのであるから、(1)の制御と(2)の制御を行うために(1)の制御と(2)の制御に対してどの様に重み付け、優先順位付を行ってどの様な演算を行うのか何等開示が無く不明[(1)の共振周波数の変更を行っても、次に動作周波数・デューティサイクルを変更すれば、(1)で設定した共振周波数が変更され、最初の(1)の変更は無意味となる。]であり、又、少なくとも1つとあるから、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルのうち2つを変更する場合、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルを全部変更する場合、それぞれ、制御はどの様に重み付け、優先順位付けをして行うのか何等開示が無く不明である。なお、請求人は平成28年11月25日付意見書において、「少なくともこれらの開示に基づけば、指摘された事項は、共振周波数、デューティサイクル、レール電圧及びインバータの動作周波数のうち少なくとも2つを調整するものに関することは明らかであり、当該事項は当初明細書に明確な根拠となる記載があると思料します。」と主張するが、共振周波数、デューティサイクル、レール電圧及びインバータの動作周波数のうち少なくとも2つを調整すれば、2つをどの様に選択しても任意である点(共振周波数を必ずしも選択しなくても良い点)は請求項1の記載に基づくものではなく、請求人の上記主張は採用できない。

請求項2に、「センサ出力を生成する回路センサ」とあるが、どの様な物理量を検知するセンサを用いるのか何ら開示が無く不明であり、当該出力を非接触電源においてどの様に用いて共振周波数、デューティサイクル、レール電圧及びインバータの動作周波数を制御するのか明細書に何ら開示が無く不明(センサとしか記載がないので温度センサでも良いこととなるが、温度センサの出力をどの様に用いて制御するのか。なお、温度は電圧・電流等に比べて反応が遅く必要な制御が間に合わないのではないか。)である。請求項4、7、8も同様である。

請求項3に、「前記コントローラは、前記センサ出力に応じて前記動作周波数、前記レール電圧、前記デューティサイクルのうち少なくとも1つを変更する」とあるが、センサ出力がどの様な物理量に基づく出力をするものなのか不明であるにもかかわらず、何故コントローラが動作周波数等を変更できるのか不明(センサ出力をどの様な演算式で処理して動作周波数等を変更するのか)であり、当該変更は電力量を制御するためであるのか否か不明であり、「応じて」とは曖昧な表現であって構成が特定できず、応じるためにはコントローラは機械であるからセンサ出力と動作周波数等の間には何某かの関数があるはずであるが、どの様な関数を用いて出力するのか明細書に何ら開示が無く不明である。

請求項5に、「前記遠隔装置から受信された情報に応じて」、請求項6に、「前記遠隔装置からの電力情報に応じて」とあるが、「応じて」とは曖昧な表現であって構成が特定できず、応じるためにはコントローラは機械であるからセンサ出力と動作周波数等の間には何某かの関数があるはずであるが、どの様な関数を用いて出力するのか明細書に何ら開示が無く不明である。請求項7も同様である。

請求項7に、「非接触電源システム」とあるが、請求項1の「非接触電源」と何が異なるのか不明(請求項1の非接触電源は、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルのうち少なくとも1つを変更しているが、請求項7の非接触電源システムは、第一特性と第二特性に基づいて変更しても、共振回路の共振周波数、インバータの動作周波数、電源のレール電圧、インバータのデューティサイクルのうち2つしか変更できず、非接触電源システムのどの構成が異なっているのか不明。)である。

請求項7に、「前記遠隔装置から電力情報を受信するための受信機」とあるが、電力情報との日本語は一般的な用語ではないためどの様な情報であるのか特定できず不明(遠隔装置は様々な構成のものがあり、遠隔装置のどの部分の電力のどの様な情報か不明。非接触電源に電力を供給する電力供給元の会社名でも良いこととなるが、この情報を制御のためにどの様に機械が処理するのか。)である。請求項19も同様である。

請求項7に、「前記コントローラは、(1)前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記センサ出力に応じて、前記非接触電源の第一特性であって、前記共振回路の前記共振周波数、前記インバータの前記動作周波数、前記電源の前記レール電圧、前記インバータの前記デューティサイクルのうちの1つである、前記第一特性を変更し、(2)前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、前記非接触電源の第二特性であって、前記共振回路の前記共振周波数、前記インバータの前記動作周波数、前記電源の前記レール電圧、前記インバータの前記デューティサイクルのうちの1つであり、かつ、前記第一特性とは異なる、前記第二特性を変更するようにプログラムされた」とあるが、コントローラは遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、センサ出力に応じて第一特性を変更するのみか[(1)記載の事項のみを行うのか]、遠隔装置から受信した情報に応じて第二特性を変更するのみか[(2)記載の事項のみを行うのか]、両方行うのか[(1)、(2)の両方を行うのか]、それ以外か特定できず不明であり、仮に両方行う場合、機械である非接触電源が行うのであるから、(1)の制御と(2)の制御を行うために(1)の制御と(2)の制御に対してどの様に重み付け、優先順位付を行ってどの様な演算を行うのか明細書に何等開示が無く不明[(1)のセンサ出力に応じて第一特性の共振周波数の変更を行っても、(2)の電力情報に応じて第二特性の動作周波数を変更すれば、(1)で設定した共振周波数が変更され、最初の(1)の変更は無意味となる。]であり、又、センサ出力がどの様な物理量に基づく出力をするものなのか不明であるにもかかわらず、センサ出力に応じて第一特性の、共振回路の共振周波数、インバータの動作周波数、電源のレール電圧、インバータのデューティサイクルのうちの1つをどの様な選択基準で選択するのか明細書に何ら開示が無く不明であり、第二特性も同様に不明である。なお、請求人は平成28年11月25日付意見書において、「上記(1)から(3)等で述べたように、共振周波数、インバータの動作周波数、デューティサイクル及びレール電圧のうち少なくとも1つを、センサ入力に基づいて変化させ、これらのパラメータの別のものを、遠隔装置から受け取った情報に基づいて変化させることについての開示は本願明細書にあります。」と主張するが、共振周波数、インバータの動作周波数、デューティサイクル及びレール電圧のうち1つではなく少なくとも1つをセンサ出力に基づいて変化させること(共振周波数等の1つ以上を変化させること)は請求項7の記載に基づくものではなく、請求人の上記主張は採用できない。

請求項8に、「前記センサ出力及び前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、前記第一特性を変更する」とあるが、引用する請求項7はセンサ出力に応じて第一特性を変更しているため、第一特性は何に応じて変更するのか構成を特定できず不明であり、又、「応じて」とは曖昧な表現であって構成が特定できず、応じるためにはコントローラは機械であるからセンサ出力及び遠隔装置から受信した情報と第一特性の間には演算のために何某かの関数があるはずであるが、どの様な関数を用いて出力するのか明細書に何ら開示が無く不明である。

請求項9に、「前記第二特性は、前記共振回路の前記共振周波数である」とあるが、引用する請求項7は遠隔装置から受信した情報に応じて第二特性を変更しているため、第一特性は何に応じて変更するのか構成を特定できず不明[請求項7に「前記第一特性とは異なる、前記第二特性を変更するようにプログラムされた」とあるから、第二特性は第一特性と異ならなければならない。第一特性は、「前記共振回路の前記共振周波数、前記インバータの前記動作周波数、前記電源の前記レール電圧、前記インバータの前記デューティサイクルのうちの1つである」から、この記載に基づけば第一特性として共振周波数が選択される場合があるが、この場合は第一特性と第二特性が同じため、実施できない構成が記載されている。仮に、センサ出力に応じて第一特性のうちの1つを変更する場合、どの様なセンサ出力であれば、共振回路の共振周波数を選択せずに、インバータの動作周波数、電源のレール電圧、インバータのデューティサイクルのうちの1つを選択できるのか不明(変更の順序は、第一特性を変更してから第一特性と異なるように第二特性の変更を行っている。)である。]である。

請求項15に、「前記コントローラは、前記リストに基づいて、レール電圧、共振周波数、デューティサイクルのうち少なくとも1つについて、最適な設定を決定する」とあるが、最適な設定とはどの様な設定であるのか何ら開示が無く不明(最適とは、何にとってどの様な状態であれば最適となるのか何等開示が無い。)であり、又、請求項15は請求項7の従属項であるが、第一及び第二特性の変更に加えて最適な設定を行うのか否か不明であり、仮に第一及び第二特性の変更に加えて最適な設定を行うのであれば、第一及び第二特性の変更は何故最適な設定を行わないのか不明であり、又、少なくとも1つとあるから、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルのうち2つに設定を決定をする場合、動作周波数、レール電圧、デューティサイクルの全部に設定を決定する場合、それぞれ、決定はどの様に重み付け、優先順位付等をして演算を行うのか明細書に何等開示が無く不明である。

請求項19に、「誘導電源」、「誘導電源システム」とあるが、「非接触電源」、「非接触電源システム」と何がどの様に異なるのか何ら開示が無く不明(日本語が異なるから異なる物を意味すると考えられる)である。請求人は平成28年11月25日付意見書において、「上記(7)で説明したことと同様であります。本願明細書に開示された発明をそれぞれ異なる表現で表したものであります。本願明細書に十分開示があるものと思料します。」と主張するが、「誘導電源」、「誘導電源システム」と「非接触電源」、「非接触電源システム」が同じであると主張しているのか異なると主張しているのか判然とせず、したがって請求人の上記主張は採用できない。

請求項19に、「電力の特性を検出する工程」とあるが、どの部分の電力のどの様な特性を検出するのか何ら開示が無く不明であり、電力情報と電力の特性は何がどの様に異なるのか何ら開示が無く不明である。

請求項19に、「前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、前記誘導電源の第一特性であって、前記誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、前記誘導電源の動作周波数、前記誘導電源のデューティサイクル、前記誘導電源のレール電圧のうちの1つである、前記第一特性を調整する工程と、前記遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、前記検出された特性に応じて、前記誘導電源の第二特性であって、前記誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、前記誘導電源の動作周波数、前記誘導電源のデューティサイクル、前記誘導電源のレール電圧のうちの1つである、前記第二特性を調整する工程」とあるが、遠隔装置に伝送される電力量を制御するために、遠隔装置から受信した情報に応じて第一特性のみを調整するのか[前記誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、前記誘導電源の動作周波数、前記誘導電源のデューティサイクル、前記誘導電源のレール電圧のうちの1つである、前記第一特性を調整する工程のみを行うのか]、検出された特性に応じて第二特性をのみ調整するのか[前記誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、前記誘導電源の動作周波数、前記誘導電源のデューティサイクル、前記誘導電源のレール電圧のうちの1つである、前記第二特性を調整する工程のみを行うのか]、両方行うのか、それ以外か特定できず不明であり、仮に両方行う場合、機械である誘導電源が行うのであるから、両方の調整を行うために両方の調整に対してどの様に重み付け、優先順位付をして行うのか明細書に何等開示が無く不明(例えば遠隔装置から受信した情報に応じて共振周波数を変更しても検出された特性に応じて共振周波数を変更すれば、第一特性の調整は何故必要なのか不明である。)であり、又、遠隔装置から受信した情報に応じて第一特性のうち、誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、誘導電源の動作周波数、誘導電源のデューティサイクル、誘導電源のレール電圧のどれをどの様な選択基準で選択するのか何ら開示が無く不明であり、第二特性も同様に不明であり、又、請求項7に記載された変更と調整はどの様に異なるのか不明であり、しかも、選択される対象が両者(請求項7と請求項19)で異なっており、何故両者で対象を異ならせるのか不明である。

請求項20に、「前記第一特性は、前記誘導電源における前記タンク回路の共振周波数」とあるが、引用する請求項19は遠隔装置から受信した電力情報に応じて第一特性を調整しており、電力情報は例えば装置ID(請求項23)であって常に同じもの(値)であるから、装置IDによって、誘導電源におけるタンク回路の共振周波数、誘導電源の動作周波数、誘導電源のデューティサイクル、誘導電源のレール電圧のうちの1つを調整する場合と誘導電源におけるタンク回路の共振周波数のみを調整する場合が生じ、第一特性は何にどの様に応じて調整するのか構成を特定できず不明であり、又、共振周波数の調整はコンデンサ容量とコイルインダクタンスの両方を調整することとなるが、請求項1の非接触電源と調整の仕方が異なる(請求項1の非接触電源は少なくとも一方を変更するので必ずしも両方を調整していない。)が、どちらの調整方法を採用すると課題解決ができるのか不明である。

請求項21に、「前記第二特性は、前記検出した特性に応じて、かつ、前記遠隔装置から受信した前記情報に応じて、調整される」とあるが、引用する請求項19は検出された電力の特性に応じて第二特性を調整している、第二特性は何に応じて調整するのか構成を特定できず不明であり、又、検出した電力の特性と遠隔装置から受信した電力情報の両方を用いるから、機械である誘導電源が第二特性を演算するためには、両者に重み付け、優先順位等を付けなければ演算できないが、明細書に何ら開示が無いため構成を特定できず不明である。

請求項23に、「前記格納された電力情報は、装置IDである」とあるが、何故装置IDが電力情報であるのか不明(装置の定格は認識できても装置の現状は把握できない)であり、ひいては電力情報の定義が不明である。

したがって、請求項1-24の記載は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、かつ、請求項1-24の記載は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


5.むすび
したがって、請求項1-24の記載は特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-28 
結審通知日 2017-03-06 
審決日 2017-03-29 
出願番号 特願2012-173604(P2012-173604)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 通信手段を持つ適応誘導電源  
代理人 上杉 浩  
代理人 西島 孝喜  
代理人 須田 洋之  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 大塚 文昭  
代理人 近藤 直樹  
代理人 弟子丸 健  

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