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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B29D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B29D
管理番号 1331070
審判番号 不服2016-8757  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-13 
確定日 2017-08-29 
事件の表示 特願2011-225866号「非空気入りタイヤの製造方法およびそれを用いた非空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月13日出願公開、特開2013- 86274号、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年10月13日に出願されたものであって、平成27年9月7日付けで拒絶理由が通知され、同年11月12日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月14日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月18日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月3日に拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年6月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後当審において平成29年3月8日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年6月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月29日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年7月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?16に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明16」という。また、まとめて「本願発明」ということもある。)は、平成29年7月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される次のとおりものと認められる。
「【請求項1】
タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む非空気入りタイヤの製造方法において、
タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸びる支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を射出してインジェクション成型したことを特徴とする非空気入りタイヤの製造方法であって、
前記補強部材は、有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたものであり、
前記支持体は、タイヤ周方向に離間して複数配置されており、
前記周方向に複数配置されたそれぞれの支持体は、2つの割型の各側面における内表面から型内部に伸びる2つの支持体であり、前記2つの割型を合わせたときに前記2つの支持体の先端部が合わさり、
前記補強部材は、前記支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止されることを特徴とする非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項2】
前記窪み部は、前記2つの支持体の先端部が合わせたときに、当該先端部に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項3】
前記2つの支持体に予めそれぞれ窪み部が形成され、割型を合わせたときに前記窪み部はタイヤの赤道に対して略対称位置に存在することを特徴とする、請求項1に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項4】
前記支持体はタイヤ成型後もタイヤ内に残すことを特徴とする、請求項1?3のいずれかの項に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項5】
前記支持体はタイヤ材料と同程度の材料であり、インジェクション成形時にタイヤ材料と融着させることができる材料で構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項6】
前記補強部材が非空気入りタイヤの内部に配置される部分(補強部材の底部)のタイヤ接地面(タイヤ最外径)からの距離をm、および非空気入りタイヤの断面高さをSHとしたとき、m/SH(×100)は20?95の範囲に存在することを特徴とする、請求項1?5のいずれかの項に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項7】
タイヤ断面高さを100として、前記支持体のタイヤ径方向の長さが1?40の範囲にある事を特徴とする、請求項1?6のいずれかの項に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項8】
前記補強部材の最内径の周長を100として、前記補強部材の最内径側の露出部の長さは0?13である事を特徴とする、請求項1?7のいずれかの項に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項9】
前記支持体の周方向の幅は型内部に向かって小さくなることを特徴とする、請求項1?8のいずれかの項に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項10】
前記支持体により接地面以外のタイヤ外表面に切り欠き部が形成される事を特徴とする、請求項1?3のいずれかの項に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項11】
前記切り欠き部はリムに被われていることを特徴とする、請求項10に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項12】
前記射出したタイヤ材料は、熱可塑性エラストマー組成物、または熱可逆架橋エラストマー、またはこれらの混合物で構成されていることを特徴とする、請求項1?11のいずれかの項に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項13】
前記熱可逆架橋エラストマーは、マレイン酸変性オレフィン系エラストマー、含窒素複素環化合物、オレフィン系樹脂、スチレン系エラストマー、パラフィンオイルを含むことを特徴とする、請求項12に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項14】
前記含窒素複素環化合物は含窒素複素環多官能アルコールであり、前記オレフィン系樹脂はポリプロピレンであり、前記スチレン系エラストマーは水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体であることを特徴とする、請求項13に記載の非空気入りタイヤの製造方法。

【請求項15】
タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む非空気入りタイヤであって、
前記非空気入りタイヤにおいて、タイヤの赤道面に対して略対称位置の周方向タイヤ側面に複数の切り欠き部が存在し、1つのタイヤ側面における前記切り欠き部から補強部材が存在する領域を通して他方のタイヤ側面における前記切り欠き部へ通じる貫通孔が存在することを特徴とし、
前記補強部材は、有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたものであることを特徴とする非空気入りタイヤ。

【請求項16】
前記切り欠き部はリムに被われていることを特徴とする、請求項15に記載の非空気入りタイヤ。」

第3 原査定の理由の概要
平成28年2月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項11?14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、当該発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開昭61-241132号公報

ただし、平成29年7月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲においては、原査定の対象となった請求項は全て削除されている。

第4 当審拒絶理由1の概要
〔理由1〕 本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
〔理由2〕 この出願は、特許請求の範囲の記載に不備があり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


刊行物1:特開昭50-135701号公報
刊行物2:特開昭51-85104号公報
刊行物3:特開2005-81920号公報
本願発明は、刊行物1に記載された車輌タイヤの製造方法または車輌タイヤに係る発明及び周知技術、あるいは、刊行物2に記載された車輌タイヤの製造方法または車輌タイヤに係る発明及び周知技術、あるいは、刊行物3に記載された産業車両用ニューマチック形クッションタイヤの製造方法または産業車両用ニューマチック形クッションタイヤに係る発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 当審拒絶理由2の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載に不備があり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第6 原査定について
上記第3で述べたとおり、原査定の対象となった請求項は全て削除されているため、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第7 当審拒絶理由1及び2の特許法第36条第6項第2号について
平成29年7月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲は、上記第2に示したとおりであり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものとなった。

第8 当審拒絶理由1の特許法第29条第2項について
1 刊行物に記載された発明
(1)刊行物1
刊行物1に記載される車輌用タイヤは、第2ページ左上欄第10?15行及び第1?2図の記載より、針金芯2を内部に含むものであることは明らかであり、第3ページ左上欄第12?15行の記載より、針金芯2を構成するのは針金リングであることも明らかである。
また、第3ページ左上欄第12?15行の記載及び第3図の記載より、板14には針金リングを保持するための窪み部が形成され、針金リングはその窪み部に嵌合していることも明らかである。
そして、特許請求の範囲、第2ページ左上欄第10行?同ページ左下欄第9行、第3ページ左上欄第8行?同ページ右上欄第5行及び第1?3図の記載からみて、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。(なお、刊行物1では促音が大文字で記載されているが、小文字で表記する。)
「針金リングからなる針金芯2を内部に含む車輪リムにタイヤを取りつけたときに互いに横付けに並ぶ二つの半分部分から成り、該半分部分の各々が車道に接触する外側踏み面6、車輪リムに接触する内側面および該踏み面と内側面および該踏み面と内側面との間の弾性連結部分を有し、該連結部分はセグメントに分割されておりそしてその引続くセグメントにタイヤを車輪リムに取りつけたときに車輪リムの中央に向かってと車輪リムの縁に向かってとに交互に湾曲し、それらの連結部分の間の空孔によりタイヤの重量が減少せしめられている車輌タイヤの製造方法において、
針金リングを型の下半分10にいれそして板14により固定し、次に加硫性ゴムを型の上半分11に導入しそして型を閉じ、ピストン12により圧力を加える車輌タイヤの製造方法であって、
前記針金芯2は、中実の銅めっきした鋼鉄製であり、前記板14に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に固定される車輌タイヤの製造方法。」

また、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明2」という。)も記載されているものと認める。
「針金リングからなる針金芯2を内部に含む車輪リムにタイヤを取りつけたときに互いに横付けに並ぶ二つの半分部分から成り、該半分部分の各々が車道に接触する外側踏み面6、車輪リムに接触する内側面および該踏み面と内側面および該踏み面と内側面との間の弾性連結部分を有し、該連結部分はセグメントに分割されておりそしてその引続くセグメントにタイヤを車輪リムに取りつけたとこに車輪リムの中央に向かってと車輪リムの縁に向かってとに交互に湾曲し、それらの連結部分の間の空孔によりタイヤの重量が減少せしめられている車輌タイヤであって、
前記針金芯2は、中実の銅めっきした鋼鉄製である車輌タイヤ。」

(2)刊行物2
刊行物2に記載される車輌用タイヤは、第2ページ左下欄第2?12行及び第1図の記載からみて、補強ワイヤコア2を内部に含むものであることは明らかであり、第3ページ右下欄第2?4行、同ページ同欄第14行?第4ページ左上欄第2行の記載からみて、補強ワイヤコア2を構成するのはワイヤリングであることも明らかである。
また、第3ページ右下欄第14行?第4ページ左上欄第2行の記載及び第7図の記載より、リブ15にはワイヤリングを固定するための窪み部が形成され、ワイヤリングはその窪み部に嵌合していることも明らかである。
そして、特許請求の範囲、第3ページ左上欄第2行?同ページ右上欄第13行、同ページ右下欄第10行?第4ページ左上欄第11行及び第5?7図の記載からみて、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認める。(なお、刊行物2では促音が大文字で記載されているが、小文字で表記する。)
「ワイヤリングからなる補強ワイヤコア2を内部に含む車輌用タイヤを車輪外縁上に設置する時に相互に並置される2つの対称な半部から構成され、該半部の各々が、外側の湾曲トレッド面と、外縁に接触せしめられる連続状タイヤフットと、軸方向のカットアウトによって形成された複数個の支持部材から成る弾性補強連結部10とを有する車輌用タイヤの製造方法において、
ワイヤリングを金型の上半分12と下半分11の中に配置し、リブ15によつて固定し、加硫し得るゴム混合物を金型の上半分12内に注ぎ、金型を閉じてピストン13によって圧力を加える車輌用タイヤの製造方法であって、
前記補強ワイヤコア2は、銅メッキした中実スチールワイヤから成り、前記リブ15に形成された窪み部に嵌合することにより型内部に固定される車輌用タイヤの製造方法。」

また、刊行物2には次の発明(以下「引用発明4」という。)も記載されているものと認める。
「ワイヤリングからなる補強ワイヤコア2を内部に含む車輌用タイヤを車輪外縁上に設置する時に相互に並置される2つの対称な半部から構成され、該半部の各々が、外側の湾曲トレッド面と、外縁に接触せしめられる連続状タイヤフットと、軸方向のカットアウトによって形成された複数個の支持部材から成る弾性補強連結部10とを有する車輌用タイヤであって、
前記補強ワイヤコア2は、銅メッキした中実スチールワイヤから成る車輌用タイヤ。」

(3)刊行物3
特許請求の範囲の請求項1、段落【0011】、【0012】、【0018】及び図1の記載からみて、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されているものと認める。
「JATMA規定の標準リムに嵌合し、内部に空気室のない中実なソリッドゴム2からなり、ベース部に複数のビードコアBが埋設され、前記タイヤの側壁に前記リムの外径に相当する位置から径方向外側にリムフランジ高さの30?80%離れた位置と前記リムフランジ高さを超える位置とにわたる領域にタイヤ軸と同心環状に凹部を形成した産業車両用ニューマチック形クッションタイヤの製造方法。」

また、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明6」という。)も記載されているものと認める。
「JATMA規定の標準リムに嵌合し、内部に空気室のない中実なソリッドゴム2からなり、ベース部に複数のビードコアBが埋設され、前記タイヤの側壁に前記リムの外径に相当する位置から径方向外側にリムフランジ高さの30?80%離れた位置と前記リムフランジ高さを超える位置とにわたる領域にタイヤ軸と同心環状に凹部を形成した産業車両用ニューマチック形クッションタイヤ。」

2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 引用発明1との対比・判断
(ア)本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「車輌タイヤ」は非空気入りのものであることは明らかであるので、引用発明1の「車輌タイヤの製造方法」は、本願発明1の「非空気入りタイヤの製造方法」に相当する。

(イ)引用発明1の「針金リングからなる針金芯2を内部に含む車輪リムにタイヤを取りつけたときに互いに横付けに並ぶ二つの半分部分から成り、該半分部分の各々が車道に接触する外側踏み面6、車輪リムに接触する内側面および該踏み面と内側面および該踏み面と内側面との間の弾性連結部分を有し、該連結部分はセグメントに分割されておりそしてその引続くセグメントにタイヤを車輪リムに取りつけたとこに車輪リムの中央に向かってと車輪リムの縁に向かってとに交互に湾曲し、それらの連結部分の間の空孔によりタイヤの重量が減少せしめられている」という事項について検討するに、「針金芯2」は「補強部材」といえるものであり、また、「針金リング」からなるものであるから、「タイヤ周方向に延在する」ものであることは明らかである。
したがって、引用発明1の上記事項は、本願発明1の「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む」という事項を充足するといえる。

(ウ)引用発明1の「針金リングを型の下半分10にいれそして板14により固定し、次に加硫性ゴムを型の上半分11に導入しそして型を閉じ、ピストン12により圧力を加える」という事項について検討するに、第3図の記載からみて、「板14」は「型の下半分10」の表面から型の内部に伸びるものであることは明らかである。
したがって、引用発明1の上記事項と、本願発明1の「タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸びる支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を射出してインジェクション成型したこと」という事項とは、「タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸びる支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を導入して成型したこと」という限度で一致するといえる。

(エ)引用発明1の「前記針金芯2は、中実の銅めっきした鋼鉄製であり、前記板14に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に固定される」という事項と、本願発明1の「前記補強部材は、有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたものであり、」「前記支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止される」という事項とは、「前記補強部材は、前記支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止される」という限度で一致するといえる。

(オ)してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点1]
「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む非空気入りタイヤの製造方法において、
タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸びる支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を導入して成型した非空気入りタイヤの製造方法であって、
前記補強部材は、前記支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止される非空気入りタイヤの製造方法。」

[相違点1]
成型方法に関し、本願発明1が「タイヤ材料を射出してインジェクション成型した」ものであるのに対し、引用発明1は「加硫性ゴムを型の上半分11に導入しそして型を閉じ、ピストン12により圧力を加える」ものである点。

[相違点2]
補強部材に関し、本願発明1が「有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたもの」であるのに対し、引用発明1は「中実の銅めっきした鋼鉄製」の「針金」である点。

[相違点3]
支持体に関し、本願発明1が「前記支持体は、タイヤ周方向に離間して複数配置されており、前記周方向に複数配置されたそれぞれの支持体は、2つの割型の各側面における内表面から型内部に伸びる2つの支持体であり、前記2つの割型を合わせたときに前記2つの支持体の先端部が合わさり」というものであるのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。

(カ)事案に鑑み上記相違点3について検討する。
刊行物1には明示がないものの、「板14」は成型中に「針金芯2」を保持するためのものであるので、タイヤ周方向に離間して複数配置されていることは自明のことといえるから、引用発明1も、本願発明1の「前記支持体は、タイヤ周方向に離間して複数配置されており」という事項を実質的に有しているともいえるが、当該「板14」は、型の一方(下半分)に設けられて「針金芯2」を保持するものである。
そして、引用発明1において、「板14」に係る構成を大幅に変更して、本願発明1が有する「2つの割型の各側面における内表面から型内部に伸びる2つの支持体であり、前記2つの割型を合わせたときに前記2つの支持体の先端部が合わさり」という事項を有するものとすることを設計的事項ということはできない。そして、タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含むタイヤの製造方法において、当該事項が周知ないし公知であることを示す証拠も見当たらない。
したがって、引用発明1において、少なくとも上記相違点3に係る本願発明1の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(キ)よって、本願発明1は引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 引用発明3との対比・判断
(ア)本願発明1と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「車輌タイヤ」は非空気入りのものであることは明らかであるので、引用発明3の「車輌タイヤの製造方法」は、本願発明1の「非空気入りタイヤの製造方法」に相当する。

(イ)引用発明3の「ワイヤリングからなる補強ワイヤコア2を内部に含む車輌用タイヤを車輪外縁上に設置する時に相互に並置される2つの対称な半部から構成され、該半部の各々が、外側の湾曲トレッド面と、外縁に接触せしめられる連続状タイヤフットと、軸方向のカットアウトによって形成された複数個の支持部材から成る弾性補強連結部10とを有する」という事項について検討するに、「補強ワイヤコア2」は「補強部材」といえるものであり、また、「ワイヤリング」からなるものであるから、「タイヤ周方向に延在する」ものであることは明らかである。
したがって、引用発明3の上記事項は、本願発明1の「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む」という事項を充足するといえる。

(ウ)引用発明3の「ワイヤリングを金型の上半分12と下半分11の中に配置し、リブ15によつて固定し、加硫し得るゴム混合物を金型の上半分12内に注ぎ、金型を閉じてピストン13によって圧力を加える」という事項について検討するに、第7図の記載からみて、「リブ15」は「金型の上半分12と下半分11」の表面から型の内部に伸びるものであることは明らかである。
したがって、引用発明3の上記事項と、本願発明1の「タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸びる支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を射出してインジェクション成型したこと」という事項とは、「タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸びる支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を導入して成型したこと」という限度で一致するといえる。

(エ)引用発明3の「前記補強ワイヤコア2は、銅メッキした中実スチールワイヤから成り、前記リブ15に形成された窪み部に嵌合することにより型内部に固定される」という事項と、本願発明1の「前記補強部材は、有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたものであり、」「前記支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止される」という事項とは、「前記補強部材は、前記支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止される」という限度で一致するといえる。

(オ)してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点2]
「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む非空気入りタイヤの製造方法において、
タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸びる支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を導入して成型した非空気入りタイヤの製造方法であって、
前記補強部材は、前記支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止される非空気入りタイヤの製造方法。」

[相違点4]
成型方法に関し、本願発明1が「タイヤ材料を射出してインジェクション成型した」ものであるのに対し、引用発明3は「加硫し得るゴム混合物を金型の上半分12内に注ぎ、金型を閉じてピストン13によって圧力を加える」ものである点。

[相違点5]
補強部材に関し、本願発明1が「有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたもの」であるのに対し、引用発明3は「銅メッキした中実スチールワイヤから成」るものである点。

[相違点6]
支持体に関し、本願発明1が「前記支持体は、タイヤ周方向に離間して複数配置されており、前記周方向に複数配置されたそれぞれの支持体は、2つの割型の各側面における内表面から型内部に伸びる2つの支持体であり、前記2つの割型を合わせたときに前記2つの支持体の先端部が合わさり」というものであるのに対し、引用発明3はそのような特定がない点。

(カ)事案に鑑み上記相違点6について検討する。
刊行物2には明示がないものの、「リブ15」は成型中に「補強ワイヤコア2」を保持するためのものであるので、タイヤ周方向に離間して複数配置されていることは自明のことといえ、また、当該「リブ15」は「金型の上半分12と下半分11」の表面から型の内部に伸びるものであることから、引用発明3も、本願発明1の「前記支持体は、タイヤ周方向に離間して複数配置されており、前記周方向に複数配置されたそれぞれの支持体は、2つの割型の各側面における内表面から型内部に伸びる2つの支持体であり」という事項を実質的に有しているということもできる。
しかしながら、当該「リブ15」は金型の上半分12と下半分11を合わせても離間するものであり、「リブ15」が金型の上半分12と下半分11にあるのはそれぞれ個別に「補強ワイヤコア2」を保持するためであって、本願発明1の「前記2つの割型を合わせたときに前記2つの支持体の先端部が合わさり」という事項を有するものではなく、引用発明3の「リブ15」に係る構成を大幅に変更して、本願発明1が有する上記事項を有するものとすることは設計的事項ということはできない。そして、タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含むタイヤの製造方法において、当該事項が周知ないし公知であることを示す証拠も見当たらない。
したがって、引用発明3において、少なくとも上記相違点6に係る本願発明1の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(キ)よって、本願発明1は引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 引用発明5との対比・判断
(ア)本願発明1と引用発明5とを対比すると、引用発明5の「産業車両用ニューマチック形クッションタイヤ」は非空気入りのものであることは明らかであるので、引用発明5の「産業車両用ニューマチック形クッションタイヤの製造方法」は、本願発明1の「非空気入りタイヤの製造方法」に相当する。

(イ)引用発明5の「JATMA規定の標準リムに嵌合し、内部に空気室のない中実なソリッドゴム2からなり、ベース部に複数のビードコアBが埋設され、前記タイヤの側壁に前記リムの外径に相当する位置から径方向外側にリムフランジ高さの30?80%離れた位置と前記リムフランジ高さを超える位置とにわたる領域にタイヤ軸と同心環状に凹部を形成した」という事項について検討するに、「ビードコアB」は「補強部材」といえるものであり、また、タイヤの技術常識からみて「タイヤ周方向に延在する」ものであることは明らかである。
したがって、引用発明5の上記事項は、本願発明1の「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む」という事項を充足するといえる。

(ウ)してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点3]
「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む非空気入りタイヤの製造方法。」

[相違点7]
成型方法に関し、本願発明1が「タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸びる支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を射出してインジェクション成型した」ものであって、補強部材が「前記支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止される」ものであり、「前記支持体は、タイヤ周方向に離間して複数配置されており、前記周方向に複数配置されたそれぞれの支持体は、2つの割型の各側面における内表面から型内部に伸びる2つの支持体であり、前記2つの割型を合わせたときに前記2つの支持体の先端部が合わさり」というものであるのに対し、引用発明5は具体的な成型方法が明らかでない点。

[相違点8]
補強部材に関し、本願発明1が有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたもの」であるのに対し、引用発明5は具体的な材料が明らかでない点。

(エ)上記相違点7について検討する。
補強部材を有するタイヤの製造方法において、タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸びる支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を注入し、支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止することは周知技術(例えば、刊行物1、刊行物2、特開平5-116504号公報(特に段落【0029】、【0032】、図3参照。)、特開平6-278227号公報(特に段落【0022】、図2参照。)等。)といえ、また、非空気入りタイヤの製造方法において、タイヤ材料を射出してインジェクション成型することも周知技術(例えば、特開平1-95905号公報の第2ページ左上欄第11?13行、同ページ左下欄第4?8行、第5ページ左上欄第12?13行参照。)といえる。
しかしながら、支持体に係る上記周知技術の例示文献のものは、いずれも支持体に相当する部材が型の途中までの長さしか有しないものであって、引用発明に支持体に係る上記周知技術とインジェクション成型に係る上記周知技術を適用したとしても、本願発明1が有する「2つの割型の各側面における内表面から型内部に伸びる2つの支持体であり、前記2つの割型を合わせたときに前記2つの支持体の先端部が合わさり」という事項を有するものには至らず、また、当該事項を有するものとすることは設計的事項ということもできない。そして、タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含むタイヤの製造方法において、当該事項が周知ないし公知であることを示す証拠も見当たらない。
したがって、引用発明5において、少なくとも上記相違点7に係る本願発明1の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(オ)よって、本願発明1は引用発明5及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明15について
ア 引用発明2との対比・判断
(ア)本願発明15と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「車輌タイヤ」は非空気入りのものであることは明らかであるので、本願発明15の「非空気入りタイヤ」に相当する。

(イ)引用発明2の「針金リングからなる針金芯2を内部に含む車輪リムにタイヤを取りつけたときに互いに横付けに並ぶ二つの半分部分から成り、該半分部分の各々が車道に接触する外側踏み面6、車輪リムに接触する内側面および該踏み面と内側面および該踏み面と内側面との間の弾性連結部分を有し、該連結部分はセグメントに分割されておりそしてその引続くセグメントにタイヤを車輪リムに取りつけたとこに車輪リムの中央に向かってと車輪リムの縁に向かってとに交互に湾曲し、それらの連結部分の間の空孔によりタイヤの重量が減少せしめられている」という事項について検討するに、「針金芯2」は「補強部材」といえるものであり、また、「針金リング」からなるものであるから、「タイヤ周方向に延在する」ものであることは明らかである。
したがって、引用発明2の上記事項は、本願発明15の「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む」という事項を充足するといえる。

(ウ)してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点4]
「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む非空気入りタイヤ。」

[相違点9]
本願発明15が「タイヤの赤道面に対して略対称位置の周方向タイヤ側面に複数の切り欠き部が存在し、1つのタイヤ側面における前記切り欠き部から補強部材が存在する領域を通して他方のタイヤ側面における前記切り欠き部へ通じる貫通孔が存在する」のに対し、引用発明2はそのような特定がない点。

[相違点10]
補強部材に関し、本願発明15が「有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたもの」であるのに対し、引用発明2は「中実の銅めっきした鋼鉄製」の「針金」である点。

(エ)上記相違点9について検討する。
刊行物1には、針金リングを型の下半分10にいれそして板14により固定し、次に加硫性ゴムを型の上半分11に導入しそして型を閉じ、ピストン12により圧力を加えることも開示されており、板14は保持の機能からみて周方向に複数配置されるものであることは自明といえる。そして、板14のような構造であるなら、型からタイヤを外せば、タイヤの周方向側面に、補強部材の配置された部分まで伸びている複数の切り欠き部が存在するものと解される。
しかしながら、刊行物1の「板14」は型の途中までの長さしか有しないものであるから、上記のように形成された「切り欠き部」は、「1つのタイヤ側面における前記切り欠き部から補強部材が存在する領域を通して他方のタイヤ側面における前記切り欠き部へ通じる貫通孔が存在する」という事項を有する構成とはならないことが明らかであり、また、上記事項を有するものとすることを設計的事項ということはできない。そして、タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含むタイヤにおいて、当該事項が周知ないし公知であることを示す証拠も見当たらない。
したがって、引用発明2において、少なくとも上記相違点9に係る本願発明15の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(オ)よって、本願発明15は引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 引用発明4との対比・判断
(ア)本願発明15と引用発明4とを対比すると、引用発明4の「車輌タイヤ」は非空気入りのものであることは明らかであるので、本願発明15の「非空気入りタイヤ」に相当する。

(イ)引用発明4の「ワイヤリングからなる補強ワイヤコア2を内部に含む車輌用タイヤを車輪外縁上に設置する時に相互に並置される2つの対称な半部から構成され、該半部の各々が、外側の湾曲トレッド面と、外縁に接触せしめられる連続状タイヤフットと、軸方向のカットアウトによって形成された複数個の支持部材から成る弾性補強連結部10とを有する」という事項について検討するに、「補強ワイヤコア2」は「補強部材」といえるものであり、また、「ワイヤリング」からなるものであるから、「タイヤ周方向に延在する」ものであることは明らかである。
したがって、引用発明4の上記事項は、本願発明15の「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む」という事項を充足するといえる。

(ウ)してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点5]
「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む非空気入りタイヤ。」

[相違点11]
本願発明15が、「前記非空気入りタイヤにおいて、タイヤの赤道面に対して略対称位置の周方向タイヤ側面に複数の切り欠き部が存在し、1つのタイヤ側面における前記切り欠き部から補強部材が存在する領域を通して他方のタイヤ側面における前記切り欠き部へ通じる貫通孔が存在する」のに対し、引用発明4はそのような特定がない点。

[相違点12]
補強部材に関し、本願発明15が「有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたもの」であるのに対し、引用発明4は「銅メッキした中実スチールワイヤから成る」ものである点。

(エ)上記相違点11について検討する。
刊行物2には、ワイヤリングを金型の上半分12と下半分11の中に配置し、リブ15によつて固定し、加硫し得るゴム混合物を金型の上半分12内に注ぎ、金型を閉じてピストン13によって圧力を加えることも開示されており、リブ15は保持の機能からみて周方向に複数配置されるものであることは明らかであるといえる。そして、リブ15のような構造であるなら、型からタイヤを外せば、タイヤの周方向側面に、補強部材の配置された部分まで伸びている複数の切り欠き部が存在するものと解される。
しかしながら、刊行物2の「リブ15」は型の途中までの長さしか有しないものであるから、上記のように形成された「切り欠き部」は、「1つのタイヤ側面における前記切り欠き部から補強部材が存在する領域を通して他方のタイヤ側面における前記切り欠き部へ通じる貫通孔が存在する」という事項を有する構成とはならないことが明らかであり、また、上記事項を有するものとすることを設計的事項ということもできない。そして、タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含むタイヤにおいて、当該事項が周知ないし公知であることを示す証拠も見当たらない。
したがって、引用発明4において、少なくとも上記相違点11に係る本願発明15の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(オ)よって、本願発明15は引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 引用発明6との対比・判断
(ア)本願発明15と引用発明6とを対比すると、引用発明6の「産業車両用ニューマチック形クッションタイヤ」は非空気入りのものであることは明らかであるので、本願発明15の「非空気入りタイヤ」に相当する。

(イ)引用発明6の「JATMA規定の標準リムに嵌合し、内部に空気室のない中実なソリッドゴム2からなり、ベース部に複数のビードコアBが埋設され、前記タイヤの側壁に前記リムの外径に相当する位置から径方向外側にリムフランジ高さの30?80%離れた位置と前記リムフランジ高さを超える位置とにわたる領域にタイヤ軸と同心環状に凹部を形成した」という事項について検討するに、「ビードコアB」は「補強部材」といえるものであり、また、タイヤの技術常識からみて「タイヤ周方向に延在する」ものであることは明らかである。
したがって、引用発明6の上記事項は、本願発明15の「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む」という事項を充足するといえる。

(ウ)してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点6]
「タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含む非空気入りタイヤ。」

[相違点13]
本願発明15が、「前記非空気入りタイヤにおいて、タイヤの赤道面に対して略対称位置の周方向タイヤ側面に複数の切り欠き部が存在し、1つのタイヤ側面における前記切り欠き部から補強部材が存在する領域を通して他方のタイヤ側面における前記切り欠き部へ通じる貫通孔が存在する」のに対し、引用発明6はそのような特定がない点。

[相違点14]
補強部材に関し、本願発明15が有機繊維コード、スチールコード、またはこれらのコードをゴムまたは樹脂でコーティングしたもの」であるのに対し、引用発明6は具体的な材料が明らかでない点。

(エ)上記相違点13について検討する。
補強部材を有するタイヤを製造する際に、タイヤ周方向に延在する補強部材を型内表面から型内部に伸び、周方向に複数配置された支持体によって型内部に係止した状態でタイヤ材料を注入し、支持体に形成された窪み部に嵌合することによって型内部に係止することは周知技術(例えば、刊行物1、刊行物2、特開平5-116504号公報(特に段落【0029】、【0032】、図3参照。)、特開平6-278227号公報(特に段落【0022】、図2参照。)等。なお、刊行物1、2、特開平5-116504号公報には、支持部に相当する部材が周方向に複数配置することの直接的な記載はないが、その機能を考えれば、そのような配置になっていることは自明である。)である。
そして、引用発明6の具体的な成型方法としてこのような周知技術を採用したのであれば、型からタイヤを外せば、タイヤの周方向側面に、補強部材の配置された部分まで伸びている複数の切り欠き部が存在するものとなることは自明のことである。
しかしながら、上記周知技術の例示文献のものは、いずれも支持体に相当する部材が型の途中までの長さしか有しないものであるから、上記のように形成された「切り欠き部」は、「1つのタイヤ側面における前記切り欠き部から補強部材が存在する領域を通して他方のタイヤ側面における前記切り欠き部へ通じる貫通孔が存在する」という事項を有する構成とはならないことが明らかであり、また、上記事項を有するものとすることを設計的事項ということもできない。そして、タイヤ周方向に延在する補強部材を内部に含むタイヤにおいて、当該事項が周知ないし公知であることを示す証拠も見当たらない。
したがって、引用発明6において、少なくとも上記相違点13に係る本願発明15の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(オ)よって、本願発明15は引用発明6及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
以上検討したとおり、本願発明1は、引用発明1または3に基いて、あるいは、引用発明5及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、本願発明15は、引用発明2または4に基いて、あるいは、引用発明6及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとものとはいえない。
そして、本願発明2?14は、本願発明1をさらに限定したものであるので、同様に引用発明1または3に基いて、あるいは、引用発明5及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとものとはいえない。また、本願発明16は、本願発明15をさらに限定したものであるので、同様に引用発明2または4に基いて、あるいは、引用発明6及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-17 
出願番号 特願2011-225866(P2011-225866)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B29D)
P 1 8・ 121- WY (B29D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡▲さき▼ 潤平野 貴也  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 平田 信勝
一ノ瀬 覚
発明の名称 非空気入りタイヤの製造方法およびそれを用いた非空気入りタイヤ  
代理人 保坂 俊  

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