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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1331083
審判番号 不服2016-14225  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-23 
確定日 2017-08-29 
事件の表示 特願2013-268583「チャートのビジュアルプロパティをテーブル内のセルにリンクする」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月17日出願公開、特開2014- 67447、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年1月29日の国際出願(パリ条約による優先権主張日:2008年3月12日、米国)の一部を平成25年12月26日に新たな特許出願としたものであって、平成27年11月10日付けで拒絶理由通知がされ、これに対し、平成28年2月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものの、同年5月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月23日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年5月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-20に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1 Y/数値軸目盛の最大値と最小値にセルの値を入れたい!,日本,2006年2月 3日,[online],
2 (エクセルVBA2003)セルの入力値が変ったら処理をする,日本,2008年1月14日,[online],

第3 本願発明
本願請求項1-20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明20」という。)は、平成28年2月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。

「 スプレッドシート内に提示されたデータのチャート表示のビジュアルプロパティを選択するものをコンピュータが受けるステップであって、前記ビジュアルプロパティは、
前記チャート表示内の軸の最大値、または、
前記チャート表示内の軸の最小値
である、ステップと、
前記スプレッドシート内の少なくとも1つのセルを選択するものを前記コンピュータが受けるステップと、
前記ビジュアルプロパティを前記少なくとも1つのセルに前記コンピュータがリンクするステップと、
前記少なくとも1つのセルの内容に対する、他のセルにおける変化による変化を前記コンピュータがテストするステップと、
前記少なくとも1つのセルの前記内容に対する前記変化に応答して、前記チャート表示の前記ビジュアルプロパティを前記コンピュータが更新するステップと
を含む方法。」

なお、本願発明2-20の概要は以下のとおりである。

本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明3は、本願発明1(改行を「/」で示す。以下、同様。)の「スプレッドシート内に提示されたデータのチャート表示のビジュアルプロパティを選択するものをコンピュータが受けるステップであって、前記ビジュアルプロパティは、/前記チャート表示内の軸の最大値、または、/前記チャート表示内の軸の最小値である、ステップ」、「前記スプレッドシート内の少なくとも1つのセルを選択するものを前記コンピュータが受けるステップ」及び「前記ビジュアルプロパティを前記少なくとも1つのセルに前記コンピュータがリンクするステップ」を、「チャートデータのグラフィカルディスプレイの少なくとも1つのビジュアルプロパティをユーザが選択して、テーブル内のセルの内容とリンクするのをコンピュータが可能にするステップであって、前記ビジュアルプロパティは、/チャートデータの前記グラフィカルディスプレイ内の軸の最大値、または、/チャートデータの前記グラフィカルディスプレイ内の軸の最小値である、ステップ」に置き換え、さらに、「前記少なくとも1つのセルの内容に対する、他のセルにおける変化による変化を前記コンピュータがテストするステップ」及び「前記少なくとも1つのセルの前記内容に対する前記変化に応答して、前記チャート表示の前記ビジュアルプロパティを前記コンピュータが更新するステップ」を、「前記ビジュアルプロパティを前記セルの前記内容に前記コンピュータがリンクして、前記セルの前記内容に対する、他のセルにおける変化による変化がテストされ、前記セルの前記内容に対する前記変化がチャートデータの前記グラフィカルディスプレイの前記ビジュアルプロパティに影響を与えるようにするステップ」に置き換えた発明である。

本願発明4-8は、本願発明3を減縮した発明である。

本願発明9は、本願発明1の「スプレッドシート内に提示されたデータのチャート表示のビジュアルプロパティを選択するものをコンピュータが受けるステップであって、前記ビジュアルプロパティは、/前記チャート表示内の軸の最大値、または、/前記チャート表示内の軸の最小値である、ステップ」、「前記スプレッドシート内の少なくとも1つのセルを選択するものを前記コンピュータが受けるステップ」、「前記ビジュアルプロパティを前記少なくとも1つのセルに前記コンピュータがリンクするステップ」、「前記少なくとも1つのセルの内容に対する、他のセルにおける変化による変化を前記コンピュータがテストするステップ」及び「前記少なくとも1つのセルの前記内容に対する前記変化に応答して、前記チャート表示の前記ビジュアルプロパティを前記コンピュータが更新するステップ」を、「チャート表示のビジュアルプロパティの少なくとも1つの表現であって、前記ビジュアルプロパティは、/前記チャート表示内の軸の最大値、または、/前記チャート表示内の軸の最小値である、表現と、/テーブル内のセルの少なくとも1つの表現と/を含むユーザインタフェースをコンピュータが提示するステップ」及び「前記ユーザインタフェースは、前記セルの内容に対する、他のセルにおける変化による変化がテストされ、前記セルの前記内容に対する前記変化が前記チャート表示の前記ビジュアルプロパティに影響を与えるように、ユーザ入力に応答して前記セルを前記ビジュアルプロパティにリンクする(ステップ)」に置き換えた発明である。

本願発明10は、本願発明9を減縮した発明である。

本願発明11-20は、それぞれ、本願発明1-10に対応するプログラム発明であり、本願発明1-20とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。

「QY/数値軸メモリの最大値と最小値にセルの値を入れたい!」

「グラフの元のデータの変更に応じて変化する横棒グラフを作っています。

「Y/数値軸目盛」の「最大値」と「最小値」に、グラフの元のデータ以外のセルの値を入れたいです。・・・」

「質問者が選んだベストアンサー
・2006-02-03 12:18:00
・回答No.1」

「こんにちは。
VBAを使用した作成例です。(グラフをシートで作成してある場合)
*グラフシート名:Graph1
最小値のセル:Sheet1のA20
最大値のセルSheet1のA21
メモリ間隔:Sheet1のA22とした場合

ツール>マクロ>VisualBasicEdito
左ツリーからSheet1をダブルクリックして以下のコードをペースト

Private Sub Worksheet_BeforeDoubleClick(ByVal Target As Range, Cancel
As Boolean)
Sheets("Graph1").Select
With ActiveChart.Axes(xlValue)
.MinimumScale = Sheets("Sheet1").Range("A20")'最小値
.MaximumScale = Sheets("Sheet1").Range("A21")'最大値
.MajorUnit = Sheets("Sheet1").Range("A22")'メモリ間隔
End With
End Sub」

してみると、引用文献1には、

Private Sub Worksheet_BeforeDoubleClick(ByVal Target As Range, Cancel
As Boolean)
Sheets("Graph1").Select
With ActiveChart.Axes(xlValue)
.MinimumScale = Sheets("Sheet1").Range("A20")'最小値
.MaximumScale = Sheets("Sheet1").Range("A21")'最大値
・・・
End With
End Sub
というVBAのコードを実行することによって、グラフの「Y/数値軸目盛」の「最大値」と「最小値」に、グラフの元のデータ以外のセルの値を入れる方法

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。

「ワークシートのセルに何か値を入力したら処理を行うと言う時には、ワークシートのChangeイベントを使いますね。
このイベントは、セルに値をキー入力してEnterキーを押下したときに発生します。」

「今、ワークシートのA1セルに値がキー入力されたら処理を行う事とします。(以下のコードはシートモジュールに書きます。)
Private Sub Worksheet_Change(ByVal Target As Range)
Dim SavVal As Variant
If Target.Address<> "$A$1" Then Exit Sub
SavVal = Target.Value
Application.EnableEvents = False
Application.Undo
If SavVal = Target.Value Then
MsgBox “変っていません”
GoTo Owari
Else
Target.Value = SavVal
MsgBox “値が変りました”
EndIf
Owari:
Application.EnableEvents = True
End Sub」

してみると、引用文献2には、

シートモジュールに書かれた
Private Sub Worksheet_Change(ByVal Target As Range)
Dim SavVal As Variant
If Target.Address<> "$A$1" Then Exit Sub
SavVal = Target.Value
Application.EnableEvents = False
Application.Undo
If SavVal = Target.Value Then
MsgBox “変っていません”
GoTo Owari
Else
Target.Value = SavVal
MsgBox “値が変りました”
EndIf
Owari:
Application.EnableEvents = True
End Sub
を実行することによって、ワークシートのセルにすでに入力されている値と違う値が入力された時にも処理を行う方法

の技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「グラフ」、「.MinimumScale」及び「.MaximumScale」、「最大値」、「最小値」、「Range("A20")」及び「Range("A21")」は、それぞれ、本願発明1の「チャート表示」、「ビジュアルプロパティ」、「最大値」、「最小値」、「少なくとも1つのセル」に相当する。
そして、引用発明の「With ActiveChart.Axes(xlValue)/.MinimumScale = Sheets("Sheet1").Range("A20")'最小値/.MaximumScale = Sheets("Sheet1").Range("A21")'最大値」は、「最大値」及び「最小値」を示す「ビジュアルプロパティ」である「.MinimumScale」及び「.MaximumScale」の値を「少なくとも1つのセル」の値を示す「Range("A20")」及び「Range("A21")」の値と同じにすることによって、前者の値を後者の値とする形式で両者をリンクする処理をコンピュータが実行する処理であるといえるから、本願発明1の「前記ビジュアルプロパティを前記少なくとも1つのセルに前記コンピュータがリンクする」に相当する。
また、引用発明の「VBA」がスプレッドシート向けのものであることは、「少なくとも1つのセル」である「Range("A20")」及び「Range("A21")」や「ビジュアルプロパティ」である「.MinimumScale」及び「.MaximumScale」からみて、明らかである。

そして、引用発明の「With ActiveChart.Axes(xlValue)/.MinimumScale = Sheets("Sheet1").Range("A20")'最小値/.MaximumScale = Sheets("Sheet1").Range("A21")'最大値」は、「Private Sub Worksheet_BeforeDoubleClick(ByVal Target As Range, Cancel As Boolean)」との記載によれば、引用発明のワークシートに対するダブルクリックイベントの検出に伴う動作として、「少なくとも1つのセル」である「Range("A20")」及び「Range("A21")」の値によってこれらにリンクする「ビジュアルプロパティ」である「.MinimumScale」及び「.MaximumScale」の値を更新するから、「少なくとも1つのセル」の「内容」に対する「変化」に応答するものでない(相違点)ものの、本願発明と同様に、「チャート表示」の「ビジュアルプロパティ」を「コンピュータ」が「更新する」ものである。

してみると、両者は、
<一致点>
スプレッドシート内に提示されたデータのチャート表示のビジュアルプロパティを選択するものをコンピュータが受けるステップであって、前記ビジュアルプロパティは、
前記チャート表示内の軸の最大値、または、
前記チャート表示内の軸の最小値
である、ステップと、
前記スプレッドシート内の少なくとも1つのセルを選択するものを前記コンピュータが受けるステップと、
前記ビジュアルプロパティを前記少なくとも1つのセルに前記コンピュータがリンクするステップと、
前記チャート表示の前記ビジュアルプロパティを前記コンピュータが更新するステップ
を含む方法

である点で一致している。

そして、
<相違点>
本願発明1が「前記少なくとも1つのセルの内容に対する、他のセルにおける変化による変化を前記コンピュータがテストするステップ」を含み、チャート表示内の軸の最大値またはチャート表示内の軸の最小値であるビジュアルプロパティを「前記少なくとも1つのセルの前記内容に対する前記変化に応答して」コンピュータが更新するのに対し、引用発明は、チャート表示内の軸の最大値またはチャート表示内の軸の最小値であるビジュアルプロパティをコンピュータが更新する際の更新がダブルクリックイベントの検出に伴う動作として行われる点

(2)相違点についての判断
「第4 引用文献、引用発明等」の「2 引用文献2について」に示したとおり、引用文献2には、
「シートモジュールに書かれた
Private Sub Worksheet_Change(ByVal Target As Range)
Dim SavVal As Variant
If Target.Address<> "$A$1" Then Exit Sub
SavVal = Target.Value
Application.EnableEvents = False
Application.Undo
If SavVal = Target.Value Then
MsgBox “変っていません”
GoTo Owari
Else
Target.Value = SavVal
MsgBox “値が変りました”
EndIf
Owari:
Application.EnableEvents = True
End Sub
を実行することによって、ワークシートのセルにすでに入力されている値と違う値が入力された時にも処理を行う方法」の技術的事項が記載されている。
しかしながら、ここで示された「Worksheet_Change」のイベントプロシジャにおける「Target.Address<> "$A$1"」という条件判断処理は、セルの内容の変化をテストするものであるということはできるものの、「セルの内容に対する、他のセルにおける変化による変化」をテストするものであるということはできない上、他のセルに値がキー入力されたことによりA1セルの内容が変化したときには「Worksheet_Change」のイベントプロシジャにおける「Target.Address<> "$A$1"」という条件判断処理は真となり「Exit Sub」が実行されることとなって「End Sub」の前の行までの処理が実行されないこととなる。
また、一般に、引用文献2に記載された「Worksheet_Change」のイベントプロシジャの処理のみでは、「引用文献2に記載の技術を適用する」際「更に他のセル」の値の更新に応じて連鎖的に処理を進める構成を実現することはできないし、引用文献2に記載されていない他のイベントプロシジャ(例えば「再計算(SheetCalculate/Culculate)」のイベントプロシジャ)を組み合わせる等して「少なくとも1つのセルの内容に対する、他のセルにおける変化による変化」に「応答」して「前記チャート表示の前記ビジュアルプロパティを前記コンピュータが更新する」ことが可能であることを示す証拠は見当たらない。
してみると、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から、相違点に係る本願発明1の構成に容易に想到するとはいえない。
なお、原査定は、「引用文献2に記載の技術を適用する」際「更に他のセル」の値の更新に応じて連鎖的に処理を進める構成を実現することができる旨をいうが、このように連鎖的に処理を進める構成を実現することが引用文献2の開示のみからでは実現できないこと、及び、このことが可能であることを示す証拠が見当たらないことは、上述したとおりである。

2 本願発明2-20について
本願発明2-20も、1で本願発明1と引用発明との相違点として検討した点に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-20は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-17 
出願番号 特願2013-268583(P2013-268583)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伏本 正典本郷 彰川▲崎▼ 博章伊藤 隆夫  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 宇多川 勉
相崎 裕恒
発明の名称 チャートのビジュアルプロパティをテーブル内のセルにリンクする  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 上田 忠  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  

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