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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10B
管理番号 1331110
審判番号 不服2015-12242  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-29 
確定日 2017-08-10 
事件の表示 特願2014-533238「石油残渣のディレードコーキング」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月 6日国際公開、WO2014/035280、平成26年10月16日国内公表、特表2014-527572〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年8月29日を国際出願日とする出願であって、出願後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成25年10年15日 翻訳文提出
平成26年10月29日付 拒絶理由通知
平成27年 2月 5日 意見書・手続補正書提出
同年 2月25日付 拒絶査定
同年 6月29日 審判請求書・手続補正書提出
同年 7月23日付 前置報告
平成28年10月28日付 審尋(審判請求人からの回答なし)

第2 本願発明

本件審判の請求と同時になされた、平成27年6月29日提出の手続補正書による補正は、特許請求の範囲についてする補正であって、その目的は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りようでない記載の釈明であるとともに、同条第3項及び第4項の要件を満たすものであるから、認容されるべきものである。
そうすると、本願の請求項1及び2に係る発明は、当該補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
コーキングドラム内で原料をコーキングしてコークスを析出させることと、
精留塔内の留出生成物を蒸気生成物、軽質軽油、重質軽油および重質塔底液に分留することと、
コークスを水蒸気でスチーミングすることと、
コークスを水冷することと、
コークスのスチーミングおよび冷却により得られた冷却生成物を質量交換アセンブリを具備した吸収塔に導入することと、
吸収塔内でスチーミングおよび冷却生成物を蒸気および液相に分留して、吸収塔の塔底部からの塔底液を質量交換アセンブリに導入することにより蒸気相からの低揮発性石油生成物を吸収することと、
凝縮器/冷却器内で、精留塔内で生成された蒸気成分を冷却および凝結することと、
分留塔内の冷却生成物を気体、石油生成物および水に分留することと、を含み、
生成された重質軽油が、複数の流れに分離し、その1つが、リサーキュレートとして用いられて蒸発塔内で原料と混合された後コーキングされ、第二の流れが、吸収塔に導入される前にコークスのスチーミングおよび冷却の生成物を希釈するために用いられ、第三の流れが、吸収塔の最上の質量交換アセンブリに導入され、塔底液が吸収塔の塔底部分から吸収塔の中間部分に位置する質量交換アセンブリに、好ましくは3番目?4番目の質量交換アセンブリに戻され、吸収塔から得られた塔底の残りの部分および分留塔から分離された石油生成物が、精留塔の塔底部分に戻されること、を特徴とする、石油残渣のディレードコーキングの方法。」

第3 原査定の拒絶理由

原査定の拒絶の理由は、「平成26年10月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由1」を含むものであって、要するに、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記引用文献1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
・引用文献1 ロシア国実用新案第86948号明細書
・引用文献2 ロシア国特許第2256687号明細書

第4 当審の判断

1 引用文献1に記載された発明(引用発明)
引用文献1の図面及びその説明(特に4頁17行?7頁11行参照)を参酌すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、引用発明の認定にあたっては、引用文献1の言語の特殊性にも鑑み、本願発明との対応関係をも考慮しながら、本願発明の用語にならって表記した。そして、このような引用発明の認定については、平成28年10月28日付審尋において、審判請求人にその妥当性についての意見を述べる機会を設けたが、何ら回答はなかった(下記相違点の認定についても同じ)。
「コーキングドラム内で原料をコーキングしてコークスを析出させることと、
精留塔内の留出生成物を蒸気生成物、軽質軽油、重質軽油および重質塔底液に分留することと、
コークスを水蒸気でスチーミングすることと、
コークスを水冷することと、
コークスのスチーミングおよび冷却により得られた冷却生成物を質量交換アセンブリを具備した吸収塔に導入することと、
吸収塔内でスチーミングおよび冷却生成物を蒸気および液相に分留して、吸収塔の塔底部からの塔底液を質量交換アセンブリに導入することにより蒸気相からの低揮発性石油生成物を吸収することと、
凝縮器/冷却器内で、精留塔内で生成された蒸気成分を冷却および凝結することと、
分留塔内の冷却生成物を気体、石油生成物および水に分留することと、を含み、
生成された重質軽油が、複数の流れに分離し、その複数の流れのうちの1つ(第二の流れ)が、吸収塔に導入される前にコークスのスチーミングおよび冷却の生成物を希釈するために用いられ、その複数の流れのうちの1つ(第三の流れ)が、吸収塔の最上の質量交換アセンブリに導入され、塔底液が吸収塔の塔底部分から吸収塔の中間部分に位置する質量交換アセンブリに、好ましくは3番目?4番目の質量交換アセンブリに戻され、吸収塔から得られた塔底の残りの部分および分留塔から分離された石油生成物が、精留塔の塔底部分に戻される、石油残渣のディレードコーキングの方法。」
念のため、本願発明を構成する主な設備要素と、これに対応する引用文献1の図面に記載された設備要素(その番号)との対応関係を整理すると、以下のとおりである。
<本願発明の設備要素> <引用文献1の設備要素の番号>
・コーキングドラム6 1
・精留塔7 4
・質量交換アセンブリを
具備した吸収塔13 10
・分留塔18 17

2 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、次の点で相違し、その余の点で一致するといえる。
・相違点:本願発明は、精留塔において「生成された重質軽油が、複数の 流れに分離し、その1つが、リサーキュレートとして用いられ て蒸発塔内で原料と混合された後コーキングされ」ているの対 して、引用発明は、この点の開示がない点

3 相違点の検討
上記相違点について検討する。
引用文献2の図面及びその説明(特に5頁21?32行参照)には、精留塔6において生成された重質軽油の一部を、リサーキュレートとして、蒸発塔3内で一次原料と混合した後、これを二次原料としてコーキングすることが記載されている。
また、引用発明は、精留塔内で生成された重質軽油の一部を既に吸収塔などにおいて利用しているのであるが、当該重質軽油のさらなる有効活用(当該重質軽油をより一層効率的に無駄なく処理すること)は、当業者が当然に望む事項であり、当該引用発明に所望される自明な課題であると解するのが合理的である。
そうすると、引用発明は、コーキングに供される原料について開示するものではないが、当該原料として、上記引用文献2に教示された、精留塔において生成された重質軽油の一部をリサーキュレートとして、蒸発塔内で一次原料と混合した二次原料を用いることは、上記引用発明に所望される自明な課題にも符合する選択でもあるから、当業者が容易に想到し得る事項というべきである。そして、上記相違点に係る本願発明の技術的事項(上記原料の選択)により奏される効果が、引用文献1、2の記載から予測し得ないほど顕著なものとも認められない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-10 
結審通知日 2017-03-14 
審決日 2017-03-27 
出願番号 特願2014-533238(P2014-533238)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 健一  
特許庁審判長 國島 明弘
特許庁審判官 岩田 行剛
日比野 隆治
発明の名称 石油残渣のディレードコーキング  
代理人 関口 一哉  

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