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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1331134
審判番号 不服2017-100  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-05 
確定日 2017-09-04 
事件の表示 特願2014-506318「電力使用状態の表示方法及びその方法を適用した携帯機器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月26日国際公開、WO2012/144770、平成26年 7月24日国内公表、特表2014-517955、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年4月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年4月19日 大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月17日付けで拒絶理由が通知され、同年6月28日付けで手続補正がなされたが、同年8月29日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成29年1月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がされ、同年3月1日に前置報告がされたものである。


第2 原査定の理由の概要
原査定(平成28年8月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献1-4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2005-250734号公報
2.米国特許出願公開第2010/0191487号明細書
2.特開2004-012148号公報
3.特開2003-240335号公報


第3 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成29年1月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
カメラを通じてキャプチャされディスプレイされた画面上のイメージで少なくとも一つの電子機器を識別するステップと、
前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用情報を受信するステップと、
前記受信された電力使用情報を用いて、前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態を判断するステップと、
前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態の段階に応じて異なるGUIを、前記少なくとも一つの電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成し、前記画面上で前記少なくとも一つの電子機器上にオーバーラップさせてディスプレイするステップと、
前記生成されたGUIが選択されると、前記選択されたGUIに対応する電子機器の電力使用に対する情報及び当該電子機器の電力使用を制御することのできるメニューが含まれたメニューウィンドウをディスプレイするステップと、
前記メニューウィンドウを介して入力されたユーザ命令に基づいて前記電子機器の電力使用を制御するための制御命令を前記電子機器に伝送するステップと
を含む電力使用状態の表示方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つの電子機器の位置情報または形状情報を保存するステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電力使用状態の表示方法。
【請求項3】
前記識別するステップは、
前記予め保存された少なくとも一つの電子機器の位置情報または形状情報を用いて、前記少なくとも一つの電子機器を識別することを特徴とする請求項2に記載の電力使用状態の表示方法。
【請求項4】
前記GUIは、
前記電力使用状態の段階に応じて、前記電子機器を色別に表示したGUIであることを特徴とする請求項1に記載の電力使用状態の表示方法。
【請求項5】
前記GUIは、
前記電力使用状態の段階に応じて、異なる形態で表示されるアイコンであることを特徴とする請求項1に記載の電力使用状態の表示方法。
【請求項6】
前記判断するステップは、
電子機器の現在の電力使用量が基準使用量目標値を超過しているか否か、または現在の電子機器の使用パターンで使用する場合に前記基準使用量目標値を超過すると予想されるか否かを判断し、前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態を判断することを特徴とする請求項1に記載の電力使用状態の表示方法。
【請求項7】
時間帯別の電気代に対する情報を受信するステップを更に含み、
前記判断するステップは、
前記受信した時間帯別の電気代に基づき現在の時間帯の電気代に比べて高い瞬間電力を使用するか否かを判断し、前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態を判断することを特徴とする請求項1に記載の電力使用状態の表示方法。
【請求項8】
前記受信するステップは、 Wi-Fiネットワーク、Zigbee(登録商標)ネットワーク、NFCネットワーク及びブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))ネットワークのうち何れか一つを用いて、前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用情報を受信することを特徴とする請求項1に記載の電力使用状態の表示方法。
【請求項9】
前記電力使用情報は、
前記少なくとも一つの電子機器に対する現在までの電力使用量、瞬間電力使用量及び電気代情報のうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の電力使用状態の表示方法。
【請求項10】
少なくとも一つの電子機器を撮影するカメラを含む撮影部と、
前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用情報を受信する通信部と、
GUIを生成するためのGUI生成部と、
前記撮影部により撮影された画像を画面上にディスプレイするディスプレイ部と、
前記撮影部により撮影された画像内から前記少なくとも一つの電子機器を識別し、前記受信された電力使用情報を用いて、前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態を判断し、前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態の段階に応じて異なるGUIを、前記少なくとも一つの電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成し、前記ディスプレイ部の画面上の前記少なくとも一つの電子機器上にオーバーラップさせてディスプレイし、前記生成されたGUIが選択されると、前記選択されたGUIに対応する電子機器の電力使用に対する情報及び当該電子機器の電力使用を制御することのできるメニューが含まれたメニューウィンドウをディスプレイするように前記GUI生成部及び前記ディスプレイ部を制御し、前記メニューウィンドウを介して入力されたユーザ命令に基づいて前記電子機器の電力使用を制御するための制御命令を前記通信部を介して前記電子機器に伝送する制御部と
を含む携帯機器。
【請求項11】
前記少なくとも一つの電子機器の位置情報または形状情報を保存する保存部を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の携帯機器。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、家電機器の操作情報やセンサ情報などの環境情報をu-Photoと呼ばれる写真ファイル内に埋め込むことで環境情報を画像上に視覚化する方式に関する。」(5頁44-47行)

イ.「【0022】
本発明の特徴は、家電機器の操作情報やセンサ情報などの環境情報を画像データに付加した点にある。例えば、JPEGの画像データに環境情報を記述したXMLデータを埋め込んだものである。以下の説明において、本発明に係る家電などの機器(デバイスと表記することがある)の操作情報やセンサ情報などの環境情報を画像データに付加したデータ(ファイルと表記することがある)を、「u-Photo」と名付けることにする。「u-Photo」は発明者らによる造語である。以下、「u-Photo」の機能要件について説明する。」(9頁16-22行)

ウ.「【0037】
以上の図面を参照してu-Photo Creator システムについて詳細な説明を加える。
【0038】
図1において、1はu-Photo ファイルを生成するためのu-Photo Creatorである。u-Photo Creator1は環境の画像データを取得するための撮影手段1aを備える。u-Photo Creator1はPDAにより実現可能である。撮影手段1aは典型的にはCCD撮像素子を備えるカメラであるが、これ以外のものであっても環境の画像データを取得できるものであれば利用可能である。環境とは、u-Photo Creator1で撮影可能な周囲という程度の意味である。u-Photo Creator1は図示しない無線又は有線通信手段を備え、環境に存在する機器2やディレクトリサーバ3と通信可能である。図1において、点線の領域100はu-Photo Creator1で通信可能な範囲を示す。
【0039】
2は環境に存在する各種の機器(エアコンやテレビのような家電機器、パソコンやプリンタのようなOA機器、など)である。発明の実施の形態1に係るu-Photo Creator1の処理の対象となる機器は、自己の状態の情報を提供する状態提供部2aと画像認識用タグ2bとを備えるものである。機器2も図示しない無線又は有線通信手段を備える。状態提供部2aは、u-Photo Creator1から問い合わせを受けて、機器の状態、作業の内容、これらを制御するための情報などを含む作業状態をu-Photo Creator1へ送る。画像認識用タグ2bは画像内にある機器を検索するために使用されるものであって、機器上又は機器の近傍に設けられたLED タグや二次元バーコードといったID 認識可能なタグである。画像認識用タグ2bに基づき機器2のID と機器2の画像中の座標が画像解析によって取得される。」(10頁48行-11頁19行)

エ.「【0048】
図2はu-Photoの生成方法を示すフローチャートである。図2において、S1乃至S8、S11、S12はu-Photo Creator1の処理、S5及びS6はディレクトリサーバ3の処理、S9及びS10は機器2の処理である。
【0049】
カメラ1aで機器2を含む環境の写真を撮影し、画像データを得る(S1)。画像の例を図6(a)に示す。この例はテーブルの上にプリンタが2台(PRN1,PRN2)とパソコン(PC1)が置かれている例を示す。2台のプリンタ(PRN1,PRN2)とパソコン(PC1)はいずれも画像認識用タグ(2b-PRN1,2b-PRN2,PC1-2b)を備えるので、これらについてu-Photoファイルを作成することができる。カメラ1aで撮影された写真には画像認識用タグ2bも含まれる。画像データ内を検索し、画像認識用タグ2bを発見する(S2)。画像認識用タグ2bを発見したら、これから機器のIDと、画像認識用タグ2bの画像中の座標を取得する(S3)。ディレクトリサーバ3へ機器情報を問い合わせる(S4)。問い合わせには機器IDを含める。ディレクトリサーバ3で機器IDに基づき機器情報を検索する(S5)。検索した機器情報をu-Photo Creator1へ送る(S6)。機器情報には、機器名、機器の種類、機器の操作情報、機器の情報提供部のアドレスが含まれる(図7参照)。
【0050】
機器情報を受信したら(S7)、機器の情報提供部のアドレス宛てに現在の作業状態を問い合わせる(S9)。問い合わせを受けた機器は現在の作業状態を回答する(S10,S11)。作業状態には、機器の状態(ON/OFF、使用可能/不能など)、作業の内容(照明、印刷、ビデオの再生など)、これらを制御するための情報が含まれる。
【0051】
作業状態の回答を受信したらu-Photoファイルを生成するに必要な情報、つまり環境の画像データ、機器ID、その座標、機器情報、作業状態が揃う(S11)。これらの情報をまとめ画像内に埋め込むことによりu-Photoファイルを生成する(S12)。
【0052】
こうして生成されたu-PhotoファイルはPDAで閲覧することもできるし、メールに添付して送付することもできる。u-Photoファイルを閲覧できる装置を用いて、ネットワークを通じて遠方から各種機器を操作したり、機器の状態を監視することができる。
【0053】
図3はu-Photoの閲覧方法を示すフローチャートである。S20乃至S26、S30はu-Photo閲覧装置(例えばPDA)の処理、S27乃至S29は機器2の処理である。
【0054】
u-Photoファイルを開いて解析する(S20,S21)。u-Photoファイルから、環境の画像データとともに、機器ID、その座標、機器情報、作業状態を取得できる。画像を表示し(S22)、座標に従い機器の位置にアイコンを配置する(S23)。機器情報に従い機器のON/OFFなどの操作手段を表示する(S24)。u-Photoファイル内の作業状態情報に従い作業状態を表示する(S25)。ここで表示される画面の例を図6(b)に示す。画像識別タグ2bの近くにアイコン(ICON1?3)が表示され、その近くに操作手段(SW1?SW3)が表示される。さらに、作業状態を示すコメントボックス(BOX1?3)も表示されている。操作手段にカーソルを合わせてクリックすることによ
り、機器のON/OFFを制御できる。なお、図6(b)は一例を示すに過ぎない。例えば、操作手段(SW1?SW3)やコメントボックス(BOX1?3)を常時表示するのではなく、必要に応じて表示するようにしてもよい。ユーザにより操作手段が操作されると、操作命令を生成して機器2へ送信する(S26)。
【0055】
制御命令を受けて機器2は機器を制御する(S28、S29)。その結果作業状態が変化したら、作業状態をu-Photo閲覧装置へ送る(S30)。これを受けて作業状態を更新する(S25)。」(12頁9行-13頁8行)

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉

「家電などの機器の操作情報を画像データに付加したデータであるu-Photoを生成し閲覧する方法であって、
u-Photo Creator1のカメラ1aで、二次元バーコードからなる画像認識用タグ2bを有する機器2を含む環境の写真を撮影し、画像データを得るステップ(S1)と、
画像データ内を検索し、画像認識用タグ2bを発見するステップ(S2)と、
画像認識用タグ2bを発見したら、これから機器のIDと、画像認識用タグ2bの画像中の座標を取得するステップ(S3)と、
ディレクトリサーバ3へ機器情報を問い合わせるステップ(S4)と、
問い合わせに含まれる機器IDに基づき、ディレクトリサーバ3が、機器名、機器の種類、機器の操作情報、機器の情報提供部のアドレスを含む機器情報を検索するステップ(S5)と、
検索した機器情報をu-Photo Creator1へ送るステップ(S6)と、
u-Photo Creator1が機器情報を受信するステップ(S7)と、
機器の情報提供部のアドレス宛てに現在の作業状態を問い合わせるステップ(S9)と、
問い合わせを受けた機器は現在の作業状態を回答するステップ(S10,S11)と、
u-Photo Creator1が、作業状態の回答を受信し、u-Photoファイルを生成するのに必要な情報である、環境の画像データ、機器ID、その座標、機器情報、作業状態が揃えられるステップ(S11)と、
これらの情報をまとめ画像内に埋め込むことによりu-Photoファイルを生成するステップ(S12)と、
u-Photoファイルを開いて解析するステップ(S20,S21)と、
u-Photoファイルから、環境の画像データとともに、機器ID、その座標、機器情報、作業状態を取得できる画像を表示するステップ(S22)と、
座標に従い機器の位置にアイコンを配置するステップ(S23)と、
その近くに、機器情報に従い機器のON/OFFなどの操作手段を表示するステップ(S24)と、
その近くに、u-Photoファイル内の作業状態情報に従い作業状態を示すコメントボックスを表示するステップ(S25)と、
ユーザにより操作手段が操作されると、操作命令を生成して機器2へ送信するステップ(S26)と、
制御命令を受けて機器2は機器を制御するステップ(S28、S29)と、
その結果作業状態が変化したら、作業状態をu-Photo閲覧装置へ送るステップ(S30)と、
これを受けて作業状態を更新するステップ(S25)と、
からなる、u-Photoを生成し閲覧する方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(当審仮訳は、引用文献2の公表公報である特表2012-516133号公報の記載に基づく。)

ア.「[0014] By identifying the load signature and the state for each electrical device, the energy monitoring device is able to provide detailed energy usage for each electrical device that consumes energy in the home or small business. The detailed energy usage information for each electrical device can be displayed on the energy monitoring device, a remote display device such as a smart phone (i.e., an iPhone@, Droid@, Blackberry@), a tablet PC, a PDA, or remote laptop, or on a local personal computer. The detailed energy usage information can be displayed generally through any wired or wireless device. Detailed energy usage information can comprise power consumption, energy, current, power factor, THD, spectral content and other relevant parameters that benefit the user. Energy usage information is able to be tracked by time of day, elapsed time, week, month, and season for comparison. Energy costs can be calculated and displayed showing the current consumption rate in dollars per hour as well as cumulative costs over a period. The energy monitoring device can provide projections of energy consumption by week, month, quarter, season or year based on the history of energy usage tracked by the energy monitor. Detailed energy usage information can further comprise specific information about electrical devices having a standby mode of operation, and information about energy consumption at off hours, such as the night time or when a user is away on vacation. Detailed energy usage information can also comprise advice to the end-user such as how to reduce their monthly electrical bill. This may include adding devices to improve the power factor, replacing old or inefficient appliances, or alternatively, advice on how to correct time-of-day scheduling of energy usage for a more favorable use of a tariff schedule, or suggesting of an alternate tariff schedule. Detailed energy usage information is further able to be used to optimize the settings of various appliances such the temperature setting of a refrigerator. Advice information is further able to comprise notices from a power utility such as urgent warnings from the utility, offers or incentives, notices of tariff schedule changes, or notice that a user's account is due or past due. The energy monitoring device is also able to monitor the quality of the network and notify as to weak power factor, weak total harmonic distortion, under-performance or noisy grid, and ways to improve or correct these inefficiencies.」(3頁右欄)
(当審仮訳:[0014] 負荷シグニチャ及び電気機器毎の状態を識別することによって、エネルギ監視装置は、住宅又は中小企業でエネルギが消費される各電気機器毎の詳細なエネルギ使用情報を提示する。各電気機器毎の詳細なエネルギ使用情報は、エネルギ監視装置、遠隔表示機器、例えばスマートフォン(iPhone(商標)、アンドロイド(商標)、ブラックベリー(商標))、タブレットPC、PDA、又は遠隔ラップトップコンピュータ、あるいはローカルなパーソナルコンピュータ上に表示することができる。詳細なエネルギ使用情報は、通常、有線又は無線で接続された機器により表示することができる。詳細なエネルギ使用情報は、消費電力、エネルギ、電流、力率、全高調波歪み、スペクトル内容、及びユーザ用の他の適切なパラメータから構成することができる。エネルギ使用情報は、比較のため、時刻、経過時間、週、月、季節毎に追跡することができる。エネルギコストを、計算し、任意の期間の累積コストだけではなく、1時間当たりの現在のドルでの消費率を表しながら表示することができる。エネルギ監視装置は、当該エネルギ監視装置により追跡した使用エネルギの履歴に基づいて、週、月、四半期、季節、及び年毎に、エネルギ消費を予測することができる。更に、詳細なエネルギ使用情報は、スタンバイ動作モードを有する電気機器に関する特定情報と、オフタイム、例えば夜間、又はユーザが休暇中に不在であるときにおける消費エネルギに関する情報とを有してもよい。また、詳細なエネルギ使用情報は、エンドユーザへのアドバイス、例えば彼らの毎月の電気使用料金を減らす方法を有してもよい。このようなアドバイスは、力率を向上させるために機器を加えること、老朽化した又は効率の悪い家電機器を取り替えること、又はこれらの代わりとして、料金表から最も適した使用をするためにエネルギを使用する時間帯別スケジュールをどのように修正するか、代替の料金表を提案することを含んでもよい。更に、詳細なエネルギ使用情報を用いて、種々の家電機器の設定、例えば冷蔵庫の温度設定を最適化することができる。更に、アドバイス情報は、電力事業者からの通知、例えば電力事業者からの緊急警告、提案、又は奨励、料金表の変更の通知、あるいはユーザアカウントの料金又は過去の料金の通知を有してもよい。また、エネルギ監視装置は、電気機器ネットワークの特性を監視し、弱力率、弱全高調波歪み、低性能又はノイズ送電網、及びこれらの非効率を改善又は修正する方法に関して通知することができる。)

イ.「[0042] FIG. 1B illustrates an energy monitoring device coupled to a power supply according to some embodiments. In FIG. 1B , a power usage trend line is shown on the display 170 , with total kilowatt-hours (“ΣKWH”) of power used and the current kilowatt-hours (“KWH”) used, displayed over an hourly trend line. In some embodiments, the energy monitoring device is able to display power consumption, energy, current, power factor, THD, and spectral content by time, time of the day, week, month, and season. Energy monitoring information is able to be transmitted to a remote device via communications module 130 and, for example, a wireless antenna 134 . Utilizing the input module 180 , alternate views of energy usage information (not shown) can be displayed, such as energy usage for a specific device, energy usage per room or per floor, energy usage per circuit, energy usage per type of appliance, mixed display where for instance energy usage is mixed with logos of appliances turned on and/or colors are providing information, a list of connected devices and their current state, a list of devices in a specific state and their energy usage information. The keypads are also able to be used to select configuration screens and enter energy monitoring device configuration information.」(7頁左欄)
(当審仮訳:[0042] 図1Bは、電源に接続された、いくつかの実施の形態に基づいたエネルギ監視装置を示す。図1Bでは、1時間毎の電力使用傾向ラインが表示モジュール170上に表示されるとともに、使用電力が総キロワット時([Sigma] KWH)で表示され、現在の使用電力がキロワット時(KWH)で表示される。いくつかの実施の形態において、エネルギ監視装置は、時間、日、週、月、及び季節単位で、消費電力、エネルギ、電流、力率、全高調波歪み、スペクトル内容を表示することができる。エネルギ監視情報は、通信モジュール130と例えば無線アンテナ134とを介して、遠隔機器に送信することができる。入力モジュール180を用いて、エネルギ使用情報の表示画面を切り換えて(図示せず)を表示することができ、例えば、特定の装置における使用エネルギ、部屋又はフロア毎の使用エネルギ、サーキットブレーカ毎の使用エネルギ、家電機器の種類毎の使用エネルギ、例えばスイッチがオンである家電機器のロゴ及び/又は情報が与えられる色が使用エネルギに組み合わせられた組合せ表示、接続された装置とこれらの電流状態とのリスト、特定の状態における装置とこれらの装置のエネルギ使用情報とのリストを、交互に換えて表示することができる。更に、キーパッドを用いて、設定画面を選択し、エネルギ監視装置の設定情報を入力することができる。)

したがって、引用文献2には、以下の技術的事項(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「エネルギ監視装置が、負荷シグニチャ及び電気機器毎の状態を識別することによって、電気機器毎の詳細なエネルギ使用情報(消費電力、エネルギ、電流、力率等)を提示でき、当該情報を、スマートフォンなどの遠隔機器に送信し、遠隔機器の表示画面に、電気機器の種類毎の使用エネルギを表示する。」

3.その他の文献について
また、前置報告書において周知技術を示す文献として引用された引用文献5(神武直彦ほか5名,“StateSnap:状態再現可能な情報機器操作のためのスナップショットインタフェース”,ヒューマンインタフェース学会誌,日本,ヒューマンインタフェース学会,2004年11月25日,第6巻 第4号,pp.379-388)には、以下の技術的事項(以下、「引用文献5記載の技術的事項」という。)が記載されている。

「対象としている情報機器を撮影することで画像データととも機器の状態に関するデータを取得し、画像データとともに認識された情報機器の名称がアイコンとしてディスプレイにオーバーレイ表示され、操作する情報機器に対応するアイコンを選択すると、撮影した情報機器の状態を表示するためのステータス、情報機器を制御するコントロールのメニューが表示される。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「カメラ1a」、「家電などの機器」は、本願発明1の「カメラ」、「電子機器」に相当する。
また、引用発明1の「画像データ内」の「二次元バーコードである画像認識用タグ2b」はイメージと認められ、さらに、引用発明1の「画像認識用タグ2b」から「機器のID」を「取得」することは、機器を識別しているといえる。
したがって、引用発明の「u-Photo Creator1のカメラ1aで機器2を含む環境の写真を撮影し、画像データを得るステップ(S1)」と、「画像データ内を検索し、二次元バーコードである画像認識用タグ2bを発見するステップ(S2)」と、「画像認識用タグ2bを発見したら、これから機器のIDと、画像認識用タグ2bの画像中の座標を取得するステップ(S3)」を合わせたステップは、本願発明1の「カメラを通じてキャプチャされディスプレイされた画面上のイメージで少なくとも一つの電子機器を識別するステップ」に相当する。

イ.引用発明の「作業状態の回答を受信し、u-Photoファイルを生成するのに必要な情報である、環境の画像データ、機器ID、その座標、機器情報、作業状態が揃えられるステップ(S11)」は、「機器」の「作業状態」の情報を受信することを含むステップであるから、引用発明の「揃えるステップ(S11)」と、本願発明1の「前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用情報を受信するステップ」とは、「前記少なくとも一つの電子機器に対する情報を受信するステップ」の点では共通する。

ウ.引用発明の「その近くに、u-Photoファイル内の作業状態情報に従い作業状態を示すコメントボックスを表示するステップ(S25)」における、「コメントボックス」はGUIと認められることから、引用発明の「作業状態を表示するステップ」と、本願発明1の「前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態の段階に応じて異なるGUIを、前記少なくとも一つの電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成し、前記画面上で前記少なくとも一つの電子機器上にオーバーラップさせてディスプレイするステップ」とは、「前記少なくとも一つの電子機器に対する情報のGUIを、ディスプレイするステップ」の点では共通する。

エ.引用発明の「u-Photoを生成し閲覧する方法」は、「機器」の「作業状態」の表示を行うものであるから、引用発明の「u-Photoを生成し閲覧する方法」と、本願発明1の「電力使用状態の表示方法」とは、「機器の状態の表示方法」の点では共通する。

よって、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。

(一致点)
「カメラを通じてキャプチャされディスプレイされた画面上のイメージで少なくとも一つの電子機器を識別するステップと、
前記少なくとも一つの電子機器に対する情報を受信するステップと、
前記少なくとも一つの電子機器に対する情報のGUIを、ディスプレイするステップと、
を含む機器の状態の表示方法。」

(相違点1)
本願発明1は、
「電力使用状態の表示方法」であって、電子機器に対する情報を受信するステップの情報が、「電力使用情報」であり、「受信された電力使用情報を用いて、前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態を判断するステップ」を含み、「電子機器に対する情報のGUIを、ディスプレイするステップ」の「GUI」は、「前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態の段階に応じて異なるGUIを、前記少なくとも一つの電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成し、前記画面上で前記少なくとも一つの電子機器上にオーバーラップさせてディスプレイする」ものであるのに対して、
引用発明は、
そのような構成を含むものではない点。

(相違点2)
本願発明1は、
「前記生成されたGUIが選択されると、前記選択されたGUIに対応する電子機器の電力使用に対する情報及び当該電子機器の電力使用を制御することのできるメニューが含まれたメニューウィンドウをディスプレイするステップと、前記メニューウィンドウを介して入力されたユーザ命令に基づいて前記電子機器の電力使用を制御するための制御命令を前記電子機器に伝送するステップ」を含むのに対して、
引用発明は、
そのような構成を含むものではない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
上記「第4」2.の引用文献2には、エネルギ監視装置が、負荷シグニチャ及び電気機器毎の状態を識別することによって、電気機器毎の詳細な詳細なエネルギ使用情報(消費電力、エネルギ、電流、力率等)を提示でき、当該情報を、スマートフォンなどの遠隔機器に送信し、遠隔機器の表示画面に、電気機器の種類毎の使用エネルギを表示する、という技術的事項が記載されている。
しかしながら、引用文献2の「機器毎の電力の使用状態に応じた情報」の表示は、「電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成し、前記画面上で前記少なくとも一つの電子機器上にオーバーラップさせてディスプレイする」ものではない。
また、「第4」3.の引用文献5には、アイコンを機器にオバーレイさせて表示させるという技術的事項が記載されているが、アイコンは電力の使用状態を表示するものではなく、また、「電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成」されたものでもない。
したがって、引用文献2、5記載の技術的事項を引用発明に適応できたとしても、本願発明の相違点1に係る構成を得られるものでない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、5記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


2.本願発明2-9について
本願発明2-9は、請求項1をさらに限定するものであって、本願発明1の「前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態の段階に応じて異なるGUIを、前記少なくとも一つの電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成し、前記画面上で前記少なくとも一つの電子機器上にオーバーラップさせてディスプレイするステップ」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、5記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明10について
本願発明10は、本願発明1に対応する携帯装置の発明であり、本願発明1の「前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態の段階に応じて異なるGUIを、前記少なくとも一つの電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成し、前記画面上で前記少なくとも一つの電子機器上にオーバーラップさせてディスプレイするステップ」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、5記載の技術的事項に基づいて容易に発明

できたものとはいえない。

2.本願発明11について
本願発明11は、請求項10をさらに限定するものであって、本願発明1の「前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態の段階に応じて異なるGUIを、前記少なくとも一つの電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成し、前記画面上で前記少なくとも一つの電子機器上にオーバーラップさせてディスプレイするステップ」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、5記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-11は「前記少なくとも一つの電子機器に対する電力使用状態の段階に応じて異なるGUIを、前記少なくとも一つの電子機器の前記画面上での大きさ及び形状にマッチングするように生成し、前記画面上で前記少なくとも一つの電子機器上にオーバーラップさせてディスプレイするステップ」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-22 
出願番号 特願2014-506318(P2014-506318)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 聡史  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
山澤 宏
発明の名称 電力使用状態の表示方法及びその方法を適用した携帯機器  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  
代理人 崔 允辰  

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