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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01D
管理番号 1331155
審判番号 不服2016-16605  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-07 
確定日 2017-08-29 
事件の表示 特願2012-117945「位置検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 9日出願公開、特開2013-245959、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月23日の出願であって、平成27年12月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年3月1日付けで手続補正がされ、同年8月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月7日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年8月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-3に係る発明は、下記の引用文献1-3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平10-227657号公報
2.特開2009-8536号公報
3.特開2004-239737号公報

第3 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成28年3月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
被検出体の変動に応じて変動し、互いに90度位相が異なる2相信号x=V・cosθ+Va、y=V・sinθ+Vbに基づいて被検出体の位置を検出する位置検出装置であって、
φを任意の角度、αを微小角度とした場合、前記2相信号の瞬時値(x,y)のうち、φ-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+αを満たす瞬時値を(x1,y1)、φ+90-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+90+αを満たす瞬時値を(x2,y2)、φ+180-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+180+αを満たす瞬時値を(x3,y3)、φ+270-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+270+αを満たす瞬時値を(x4,y4)、として保持する瞬時値保持部と、
前記2相信号の軌跡が描く円または楕円の中心と一致する前記直流成分(Va,Vb)の値を、前記4組の瞬時値(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3),(x4,y4)に基づいて算出する直流成分検出部と、
前記直流成分検出部で算出された直流成分(Va,Vb)と前記2相信号(x,y)との差信号に基づいて、前記被検出体の位置を検出する位置検出部と、
を具備したことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出装置であって、
前記被検出体が歯数m、回転数n(rpm)のギヤであり、前記瞬時値の抽出周期がTの場合、前記微小角度αは、3mnT≦α≪45°である、ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位置検出装置であって、
前記直流成分検出部は、
Va=1/2・[{(x1^(2)-x3^(2))(y2-y4)-(x2^(2)-x4^(2))(y1-y3)+(y1-y3)(y2-y4)(y1+y3-y2-y4)}/{(x1-x3)(y2-y4)-(x2-x4)(y1-y3)}]、
Vb=1/2・[{(y1^(2)-y3^(2))(x2-x4)-(y2^(2)-y4^(2))(x1-x3)+(x1-x3)(x2-x4)(x1+x3-x2-x4)}/{(y1-y3)(x2-x4)-(y2-y4)(x1-x3)}]、
の式に基づいて、直流成分検出値Va,Vbを演算する、ことを特徴とする位置検出装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】被検出体の位置に応じて、所定の位相を有し、互いに90度位相の異なる2相信号x=V・cosθ+Va,y=V・sinθ+Vbを用いて前記被検出体の位置を検出する位置検出装置において、前記2相信号の軌跡の、円周上の相異なる少なくとも3点以上の瞬時値(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)を保持する瞬時値保持部と、前記2相信号の直流成分と前記軌跡の円中心とが一致することにより、前記瞬時値(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)より、前記軌跡の円の中心として直流成分検出値Va,Vbを演算する直流成分検出部と、前記直流成分検出値Va,Vbを保持する直流成分保持部と、前記瞬時値(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)のそれぞれに対して、前記円の半径を表わす二乗和R1=x1^(2)+y1^(2),R2=x2^(2)+y2^(2),R3=x3^(2)+y3^(2)を求め、当該二乗和R1,R2,R3の相互の差が所定値以上の場合には前記直流成分保持部に対して保持信号を出力する振幅変動検出部と、前記直流成分保持部によって保持された直流成分検出値Va,Vbと前記2相信号との差信号により前記被検出体の位置を検出する位置検出部とを具備したことを特徴とする誤差補正機能付き位置検出装置。」

「【請求項2】請求項1に記載の誤差補正機能付き位置検出装置において、前記瞬時値保持部は前記2相信号の瞬時値x,yから、
(x1,y1)はx≧0かつy≧0かつ|x|≧|y|、
(x2,y2)はx≧0かつy<0かつ|x|<|y|、
(x3,y3)はx<0かつy<0かつ|x|≧|y|、
(x4,y4)はx<0かつy≧0かつ|x|<|y|からなる演算、もしくは
(x1,y1)はx≧0かつy≧0かつ|x|<|y|、
(x2,y2)はx≧0かつy<0かつ|x|≧|y|、
(x3,y3)はx<0かつy<0かつ|x|<|y|、
(x4,y4)はx<0かつy≧0かつ|x|≧|y|からなる演算に基づいて前記軌跡の円周上の相異なる点である前記2相信号の瞬時値(x1,y1)?(x4,y4)を抽出し、保持することを特徴とする誤差補正機能付き位置検出装置。」

「【請求項3】請求項1又は2に記載の誤差補正機能付き位置検出装置において、前記直流成分検出部は前記2相信号の瞬時値(x1,y1)?(x4,y4)を用いて
Va=1/2・[{(x1^(2)-x3^(2))(y2-y4)-(x2^(2)-x4^(2))(y1-y3)+(y2-y4)(y1-y3)(y1+y3-y2-y4)}/{(x1-x3)(y2-y4)-(x2-x4)(y1-y3)}]
Vb=1/2・[{(y2^(2)-y4^(2))(x1-x3)-(y1^(2)-y3^(2))(x2-x4)+(x2-x4)(x1-x3)(x2+x4-x1-x3)}/{(x1-x3)(y2-y4)-(x2-x4)(y1-y3)}]
からなる演算に基づいて前記直流成分検出値Va,Vbを演算することを特徴とする誤差補正機能付き位置検出装置。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「被検出体の位置に応じて、所定の位相を有し、互いに90度位相の異なる2相信号x=V・cosθ+Va,y=V・sinθ+Vbを用いて前記被検出体の位置を検出する位置検出装置において、前記2相信号の軌跡の、円周上の相異なる少なくとも3点以上の瞬時値を保持する瞬時値保持部と、前記2相信号の直流成分と前記軌跡の円中心とが一致することにより、前記瞬時値より、前記軌跡の円の中心として直流成分検出値Va,Vbを演算する直流成分検出部と、前記直流成分検出値Va,Vbを保持する直流成分保持部と、前記直流成分保持部によって保持された直流成分検出値Va,Vbと前記2相信号との差信号により前記被検出体の位置を検出する位置検出部とを具備し、
前記瞬時値保持部は前記2相信号の瞬時値x,yから、
(x1,y1)はx≧0かつy≧0かつ|x|≧|y|、
(x2,y2)はx≧0かつy<0かつ|x|<|y|、
(x3,y3)はx<0かつy<0かつ|x|≧|y|、
(x4,y4)はx<0かつy≧0かつ|x|<|y|からなる演算、もしくは
(x1,y1)はx≧0かつy≧0かつ|x|<|y|、
(x2,y2)はx≧0かつy<0かつ|x|≧|y|、
(x3,y3)はx<0かつy<0かつ|x|<|y|、
(x4,y4)はx<0かつy≧0かつ|x|≧|y|からなる演算に基づいて前記軌跡の円周上の相異なる点である前記2相信号の瞬時値(x1,y1)?(x4,y4)を抽出し、保持し、
前記直流成分検出部は前記2相信号の瞬時値(x1,y1)?(x4,y4)を用いて
Va=1/2・[{(x1^(2)-x3^(2))(y2-y4)-(x2^(2)-x4^(2))(y1-y3)+(y2-y4)(y1-y3)(y1+y3-y2-y4)}/{(x1-x3)(y2-y4)-(x2-x4)(y1-y3)}]
Vb=1/2・[{(y2^(2)-y4^(2))(x1-x3)-(y1^(2)-y3^(2))(x2-x4)+(x2-x4)(x1-x3)(x2+x4-x1-x3)}/{(x1-x3)(y2-y4)-(x2-x4)(y1-y3)}]
からなる演算に基づいて前記直流成分検出値Va,Vbを演算する、
位置検出装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0031】
図2の(a)のような励磁コイル23に励磁電圧VEXを印加すると、検出コイル24および25に電圧V1およびV2がそれぞれ誘起され、これらは、式(1)および(2)のように表すことができる。ここで、θは、ロータ22の回転角度(回転位置)すなわちレゾルバが接続された回転体の回転角度(回転位置)を表し、Kは、検出コイル24および25の変圧比を表す。
【数1】
(略)」

「【0037】
簡略化のため、KVEX=1とし、原点Oを中心とした単位円41を描く。回転角度が誤差を含まないθである場合、式(1)および(2)より、電圧V1およびV2は単位円41上に存在する。しかしながら、検出回路の電気的特性や素子のバラツキ等に起因して、電圧V1およびV2にオフセットα1およびα2が生じると、X軸はα2だけずれ、Y軸はα1だけずれる。変圧比Kにブレが生じると、V1/V2にブレが生じ、よって、Y軸方向にさらにβ倍ずれると考えることができる。結果として、回転角度が誤差を含むθeである場合、V1およびV2は、X軸方向にα2だけずれ、Y軸方向にβα1だけずれた原点O’を中心とした楕円42上に存在すると考えることができる。」

「【0058】
レゾルバ1のロータの回転速度が一定であるとき、レゾルバ回転の1周期T(図2参照)の間に、レゾルバ1から出力される回転角度θeを複数の時点でサンプリングする。回転速度が一定であるかどうかは、周期Tの時間をタイマで計測することにより判断される。たとえば、θe=0が検出されたことに応じて図のように0度検出パルスを発し、該パルス間の長さを計測することにより、周期Tを計測する。同じ長さの周期が連続して計測されたならば、回転速度が一定であると判断する。また、サンプリングする複数の時点は、予め決められた時点であり、タイマにより計測されることにより特定されることができる。図では、一例として、2回連続して同じ長さの周期Tが計測されたことに応じて、3周期目において回転角度θeのサンプリングが行われている。サンプリングタイミングの一例が白丸で示されている。」

「【0063】
他の実施例では、回転角度θe=0の時点を検出し、該時点から1周期Tの間に、T/8、3T/8、5T/8、および7T/8の4点でサンプリングを行う。たとえば、タイマは、0度検出パルスに応答して該4つの時点を計測する。T/8、3T/8、5T/8および7T/8の各時点に対応すべき真の回転角度θは、T=360度であるので、それぞれ、45,135,225,315度であるべきである。よって、各時点で取得された回転角度θeは、真の角度θが45、135、225、および315度の時の誤差を含んだ回転角度と考えられる。
【0064】
したがって、式(4)に、各時点の回転角度θeを代入すると、式(28)?(31)が得られる。
【数18】
(略)
【0065】
前述した3点の場合と同様に、誤差パラメータα1およびα2が1に比べて十分小さく設計されていることを用いると、誤差パラメータα1、α2およびβは、以下の式(32)?(34)に従って算出される。
【数19】
(略)」

したがって、上記引用文献2には、レゾルバ1のロータの回転速度が一定であるとき、レゾルバ回転の1周期Tの間に、レゾルバ1から出力される回転角度θeを、T/8、3T/8、5T/8、及び7T/8の4点でサンプリングを行い、レゾルバの検出コイルに誘起される電圧V1及びV2のオフセットである誤差パラメータα1、α2を算出する、という技術的事項が記載されていると認められる。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0009】
具体的には、前記特許文献2に示される相対角検出方式の回転角度検出装置の分解能は1.5゜に設定され、光センサからの出力位相差が1.5゜となっている。よって、回転角度検出装置が間欠的に動作される周期(サンプリング周期)は、少なくとも回転板が1.5゜回転されるまでに必要な時間よりも短い時間間隔に設定されている必要がある。すなわち、例えば回転板の許容最高回転速度が秒速2回転(=720゜/秒)の場合、約1ミリ秒以下のサンプリング周期が必要となる。」

したがって、上記引用文献3には、回転角度検出装置が間欠的に動作される周期(サンプリング周期)は、少なくとも回転板が1.5゜(回転角度検出装置の分解能)回転されるまでに必要な時間よりも短い時間間隔に設定されている必要がある、という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「被検出体の位置に応じて、所定の位相を有し、互いに90度位相の異なる2相信号x=V・cosθ+Va,y=V・sinθ+Vbを用いて前記被検出体の位置を検出する位置検出装置」は、本願発明1における「被検出体の変動に応じて変動し、互いに90度位相が異なる2相信号x=V・cosθ+Va、y=V・sinθ+Vbに基づいて被検出体の位置を検出する位置検出装置」に相当する。

イ 引用発明における、「前記2相信号の軌跡の、円周上の相異なる少なくとも3点以上の瞬時値を保持」し、「前記2相信号の瞬時値x,yから、(x1,y1)はx≧0かつy≧0かつ|x|≧|y|、(x2,y2)はx≧0かつy<0かつ|x|<|y|、(x3,y3)はx<0かつy<0かつ|x|≧|y|、(x4,y4)はx<0かつy≧0かつ|x|<|y|からなる演算、もしくは(x1,y1)はx≧0かつy≧0かつ|x|<|y|、(x2,y2)はx≧0かつy<0かつ|x|≧|y|、(x3,y3)はx<0かつy<0かつ|x|<|y|、(x4,y4)はx<0かつy≧0かつ|x|≧|y|からなる演算に基づいて前記軌跡の円周上の相異なる点である前記2相信号の瞬時値(x1,y1)?(x4,y4)を抽出し、保持」する「瞬時値保持部」は、本願発明1における「φを任意の角度、αを微小角度とした場合、前記2相信号の瞬時値(x,y)のうち、φ-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+αを満たす瞬時値を(x1,y1)、φ+90-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+90+αを満たす瞬時値を(x2,y2)、φ+180-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+180+αを満たす瞬時値を(x3,y3)、φ+270-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+270+αを満たす瞬時値を(x4,y4)、として保持する瞬時値保持部」と、「前記2相信号の瞬時値(x,y)のうち、(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)を保持する瞬時値保持部」である点で共通する。

ウ 引用発明における、「前記2相信号の直流成分と前記軌跡の円中心とが一致することにより、前記瞬時値より、前記軌跡の円の中心として直流成分検出値Va,Vbを演算」し、「前記2相信号の瞬時値(x1,y1)?(x4,y4)を用いてVa=1/2・[{(x1^(2)-x3^(2))(y2-y4)-(x2^(2)-x4^(2))(y1-y3)+(y2-y4)(y1-y3)(y1+y3-y2-y4)}/{(x1-x3)(y2-y4)-(x2-x4)(y1-y3)}] Vb=1/2・[{(y2^(2)-y4^(2))(x1-x3)-(y1^(2)-y3^(2))(x2-x4)+(x2-x4)(x1-x3)(x2+x4-x1-x3)}/{(x1-x3)(y2-y4)-(x2-x4)(y1-y3)}]からなる演算に基づいて前記直流成分検出値Va,Vbを演算」する「直流成分検出部」は、本願発明1における「前記2相信号の軌跡が描く円または楕円の中心と一致する前記直流成分(Va,Vb)の値を、前記4組の瞬時値(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3),(x4,y4)に基づいて算出する直流成分検出部」に相当する。

エ 引用発明における「前記直流成分検出値Va,Vbを保持する直流成分保持部と、前記直流成分保持部によって保持された直流成分検出値Va,Vbと前記2相信号との差信号により前記被検出体の位置を検出する位置検出部」は、本願発明1における「前記直流成分検出部で算出された直流成分(Va,Vb)と前記2相信号(x,y)との差信号に基づいて、前記被検出体の位置を検出する位置検出部」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「被検出体の変動に応じて変動し、互いに90度位相が異なる2相信号x=V・cosθ+Va、y=V・sinθ+Vbに基づいて被検出体の位置を検出する位置検出装置であって、
前記2相信号の瞬時値(x,y)のうち、(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)を保持する瞬時値保持部と、
前記2相信号の軌跡が描く円または楕円の中心と一致する前記直流成分(Va,Vb)の値を、前記4組の瞬時値(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3),(x4,y4)に基づいて算出する直流成分検出部と、
前記直流成分検出部で算出された直流成分(Va,Vb)と前記2相信号(x,y)との差信号に基づいて、前記被検出体の位置を検出する位置検出部と、
を具備した位置検出装置。」

(相違点)
本願発明1においては、「瞬時値保持部」が「φを任意の角度、αを微小角度とした場合、前記2相信号の瞬時値(x,y)のうち、φ-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+αを満たす瞬時値を(x1,y1)、φ+90-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+90+αを満たす瞬時値を(x2,y2)、φ+180-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+180+αを満たす瞬時値を(x3,y3)、φ+270-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+270+αを満たす瞬時値を(x4,y4)、として保持する」のに対し、引用発明においては、「瞬時値保持部」が「前記2相信号の瞬時値x,yから、(x1,y1)はx≧0かつy≧0かつ|x|≧|y|、(x2,y2)はx≧0かつy<0かつ|x|<|y|、(x3,y3)はx<0かつy<0かつ|x|≧|y|、(x4,y4)はx<0かつy≧0かつ|x|<|y|からなる演算、もしくは(x1,y1)はx≧0かつy≧0かつ|x|<|y|、(x2,y2)はx≧0かつy<0かつ|x|≧|y|、(x3,y3)はx<0かつy<0かつ|x|<|y|、(x4,y4)はx<0かつy≧0かつ|x|≧|y|からなる演算に基づいて前記軌跡の円周上の相異なる点である前記2相信号の瞬時値(x1,y1)?(x4,y4)を抽出し、保持」する点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、瞬時値保持部が、φを任意の角度、αを微小角度とした場合、2相信号(x=V・cosθ+Va、y=V・sinθ+Vb)の瞬時値(x,y)のうち、φ-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+αを満たす瞬時値を(x1,y1)、φ+90-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+90+αを満たす瞬時値を(x2,y2)、φ+180-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+180+αを満たす瞬時値を(x3,y3)、φ+270-α≦tan^(-1)(y/x)≦φ+270+αを満たす瞬時値を(x4,y4)、として保持する、という上記相違点に係る構成が記載されていない。引用文献2には、レゾルバ1のロータの回転速度が一定であるとき、レゾルバ回転の1周期Tの間に、レゾルバ1から出力される回転角度θeを、T/8、3T/8、5T/8、及び7T/8の4点でサンプリングを行い、レゾルバの検出コイルに誘起される電圧V1及びV2のオフセットである誤差パラメータα1、α2を算出するという技術的事項が記載されていると認められる(上記「第4」「2」)が、当該技術的事項は、2相信号の瞬時値(x,y)のうち、「tan^(-1)(y/x)」の値が所定の条件を満たすものを瞬時値(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)として保持するものではない。
また、引用文献3にも、上記相違点に係る構成は記載されていない。
そうすると、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項から、相違点に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
したがって、本願発明1は、引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2、3について
請求項2、3は、直接又は間接的に請求項1を引用するから、本願発明2、3も、本願発明1と同じ理由により、引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-3は、引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-17 
出願番号 特願2012-117945(P2012-117945)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉田 久  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 関根 洋之
須原 宏光
発明の名称 位置検出装置  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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