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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 C25C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C25C |
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管理番号 | 1331161 |
異議申立番号 | 異議2016-700643 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-07-27 |
確定日 | 2017-06-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5849064号発明「コリウムおよび使用済み核燃料の安定化処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5849064号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-18〕について訂正することを認める。 特許第5849064号の請求項1-7、10-18に係る特許を維持する。 特許第5849064号の請求項8、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5849064号の請求項1?18に係る特許についての出願は、平成25年4月18日(パリ条約による優先権主張2012年4月23日、米国)を出願日とする出願であって、平成27年12月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人政平愛弓により特許異議の申立てがされ、平成28年9月14日付けで取消理由が通知され、平成28年12月12日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年1月26日に特許異議申立人政平愛弓から意見書が提出され、平成29年3月6日付けで取消理由が通知され、平成29年4月17日(同年同月18日特許庁受付)に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年5月23日に特許異議申立人政平愛弓から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 (1)請求項1に係る訂正事項1 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1に 「安定した廃棄物形態を得ることによりコリウムを安定化させる方法であって、 第1の溶融塩電解液、および前記コリウムを保持するように構成された還元装置カソードアセンブリを含む電解還元装置内へ、前記コリウムを装入するステップと、 前記電解還元装置の前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させて、前記還元装置カソードアセンブリ内で還元物質を得るステップと、 前記第1の溶融塩電解液内で還元装置廃棄物を蓄積させるステップと、 第2の溶融塩電解液、精錬装置カソードアセンブリ、および前記還元物質を保持するように構成された精錬装置アノードアセンブリを含む電解精錬装置内へ、前記還元物質を装入するステップと、 前記還元物質を前記電解精錬装置の前記第2の溶融塩電解液内で電解溶解させて、前記精錬装置カソードアセンブリ上で精製金属生成物を得るステップと、 前記第2の溶融塩電解液内で第1の精錬装置廃棄物を蓄積させ、前記精錬装置アノードアセンブリ内で第2の精錬装置廃棄物を蓄積させるステップと、 を含む方法。」 とあるのを、 「安定した廃棄物形態を得ることによりコリウムを安定化させる方法であって、 還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入するステップと、 前記還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬するステップと、 前記電解還元装置の前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させて、前記還元装置カソードアセンブリ内で還元物質を得るステップと、 前記第1の溶融塩電解液内で還元装置廃棄物を蓄積させるステップと、 第2の溶融塩電解液、精錬装置カソードアセンブリ、および前記還元物質を保持するように構成された精錬装置アノードアセンブリを含む電解精錬装置内へ、前記還元物質を装入するステップと、 前記還元物質を前記電解精錬装置の前記第2の溶融塩電解液内で電解溶解させて、前記精錬装置カソードアセンブリ上で精製金属生成物としてウランを得るステップと、 前記第2の溶融塩電解液内で第1の精錬装置廃棄物として超ウラン元素を含むハロゲン化合物を蓄積させ、前記精錬装置アノードアセンブリ内で第2の精錬装置廃棄物としてジルコニウムおよび貴金属を蓄積させるステップと、 を含む方法。」 とする訂正を請求する。(請求項1の記載を引用する請求項2?7及び10?18も同様に訂正する。)(以下、「訂正事項1」という。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を表すために付与したものである。以下、同様。) (2)請求項2及び4に係る訂正事項2 特許権者は、特許請求の範囲の請求項2及び4に「前記電解還元装置内へ前記コリウムを装入する前記ステップが、」とあるのを「前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入する前記ステップが、」とする訂正を請求する。(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)(以下、「訂正事項2」という。) (3)請求項5に係る訂正事項3 特許権者は、特許請求の範囲の請求項5に「前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させる前記ステップが、」とあるのを「前記第1の溶融塩電解液内へ浸漬する前記ステップが、」とする訂正を請求する。(以下、「訂正事項3」という。) (4)請求項8及び9に係る訂正事項4 特許権者は、特許請求の範囲の請求項8及び9を削除する訂正を請求する。(以下、「訂正事項4」という。) 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無及び一群の請求項 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的の適否 a 訂正事項1-1 請求項1に記載の「第1の溶融塩電解液、および前記コリウムを保持するように構成された還元装置カソードアセンブリを含む電解還元装置内へ、前記コリウムを装入するステップと、」を、「還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入するステップと、前記還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬するステップと、」とする訂正について(以下、「訂正事項1-1」という。) 訂正前の請求項1では、「第1の溶融塩電解液、および前記コリウムを保持するように構成された還元装置カソードアセンブリを含む電解還元装置内へ、前記コリウムを装入するステップと、」と記載され、コリウムが還元装置内へ装入される以前から、カソードアセンブリは電解還元装置内に配置されているものと解釈され得るところ、訂正前の請求項1を請求項4では、「前記コリウムおよび前記還元装置カソードアセンブリが原子炉の既存のプール内に浸漬されている間に、」と記載されており、どの段階で「還元装置カソードアセンブリ」が既存のプール内に浸漬されるようになったのか不明であった。 そこで、発明の詳細な説明の記載及び図面を参酌するに、以下の様な記載がある。 「【0017】 図4は、本発明の非限定的な実施形態による図2のステップ220の流れ図である。図4のステップ220aを参照すると、水中で還元装置カソードアセンブリ内に核物質を装入することができる。図4のステップ220bを参照すると、核物質および還元装置カソードアセンブリを脱水することができる。図4のステップ220cを参照すると、核物質を有する還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬することができる。図4のステップ220dを参照すると、第1の溶融塩電解液によって核物質を電解還元させて、還元装置カソードアセンブリ内で還元物質を得ることができる。図4のステップ220eを参照すると、電解還元装置の還元装置カソードアセンブリ内の核物質の電解還元の副生成物として、還元装置廃棄物を生成することができる。還元装置廃棄物は、電解還元装置の第1の溶融塩電解液内で蓄積させることができる。」(なお、下線は当審で付与したものである。)」 「【図4】 」 してみると、訂正前の請求項1の記載は、「電解還元装置」、「還元装置カソードアセンブリ」及び「コリウム」の関係が明瞭でなかったために、請求項4に記載の構成と整合していなかったものであり、訂正事項1-1は、発明の詳細な説明段落【0017】及び【図4】に記載されるように、「還元装置カソードアセンブリ内へ核物質(コリウム)を装入する」ものであり、その「核物質(コリウム)を有する還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬する」関係であることを明瞭にすることを目的とするものである。 したがって、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 訂正事項1-2 請求項1に記載の「精製金属生成物」について、「精製金属生成物としてウラン」と特定する訂正について(以下、「訂正事項1-2」という。) 訂正事項1-2は、「精製金属生成物」の材料を「ウラン」と特定して減縮するものであるから、当該訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 c 訂正事項1-3 請求項1に記載の「第1の精錬装置廃棄物」について、「精錬装置廃棄物として超ウラン元素を含むハロゲン化合物」と特定する訂正について(以下、「訂正事項1-3」という。) 訂正事項1-3は、「第1の精錬装置廃棄物」の材料を「超ウラン元素を含むハロゲン化合物」と特定して減縮するものであるから、当該訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 d 訂正事項1-4 請求項1に記載の「第2の精錬装置廃棄物」について、「第2の精錬装置廃棄物としてジルコニウムおよび貴金属」と特定する訂正について(以下、「訂正事項1-4」という。) 訂正事項1-4は、「第2の精錬装置廃棄物」の材料を「ジルコニウムおよび貴金属」と特定して減縮するものであるから、当該訂正事項1-4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 a 訂正事項1-1 訂正事項1-1は、発明特定事項である「電解還元装置」、「還元装置カソードアセンブリ」及び「コリウム」の関係を明瞭とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 b 訂正事項1-2、1-3及び1-4 訂正事項1-2、1-3及び1-4は、発明特定事項である「精製金属生成物」、「第1の精錬装置廃棄物」及び「第2の精錬装置廃棄物」をそれぞれ減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 新規事項の有無 a 訂正事項1-1 訂正事項1-1は、明細書の段落【0017】及び【図4】に「図4は、本発明の非限定的な実施形態による図2のステップ220の流れ図である。図4のステップ220aを参照すると、水中で還元装置カソードアセンブリ内に核物質を装入することができる。・・・ステップ220cを参照すると、核物質を有する還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬することができる。」(なお、下線は当審で付与したものである。)と記載されているから、当該訂正事項1-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 b 訂正事項1-2 訂正事項1-2について、明細書の段落【0030】に「この電解精錬システムを使用して、比較的多くの不純物が混じった供給核物質(たとえば、不純物の混じったウラン供給物質)から精製金属(たとえば、ウラン)を回収することができる。」と記載され、段落【0040】に「電解精錬システムでは、複数のカソードアセンブリおよびアノードアセンブリに電力系統が接続される。電解精錬システムの動作中、電力系統は、複数のアノードアセンブリ内の不純物の混じったウラン供給物質を酸化させてウランイオンを形成するのに十分な電圧を供給するように構成され、これらのウランイオンは、溶融塩電解液内を移動して、複数のカソードアセンブリの複数のカソードロッド上に精製ウランとして堆積する。」と記載されているから、当該訂正事項1-2は、本願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 c 訂正事項1-3及び1-4 訂正事項1-3及び1-4について、明細書の段落【0026】に「たとえば、第1の精錬装置廃棄物は、超ウラン元素を含むハロゲン化合物を含むことができる。」、「第2の精錬装置廃棄物は、ジルコニウムおよび/または貴金属を含むことができる。」と記載されているから、当該訂正事項1-3及び1-4は、本願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、訂正事項1-1と同様に、「電解還元装置」、「還元装置カソードアセンブリ」及び「コリウム」の関係が明瞭でなかったものを明瞭にするためのものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、発明特定事項である「電解還元装置」、「還元装置カソードアセンブリ」及び「コリウム」の関係を明瞭とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 新規事項の有無 訂正事項2は、明細書の段落【0017】に「水中で還元装置カソードアセンブリ内に核物質を装入することができる。」と記載され、段落【0021】に「汚染の拡散を鎮静化するために核物質および還元装置カソードアセンブリが水中に位置する間に、核物質を還元装置カソードアセンブリ内へ入れることができる。たとえば、核物質および還元装置カソードアセンブリが原子炉の既存のプール(たとえば、燃料プール、抑制プール)内に浸漬されている間に、核物質を還元装置カソードアセンブリ内へ入れることができる。」と記載されているから、当該訂正事項2は、本願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的の適否 訂正事項3の「前記第1の溶融塩電解液内へ浸漬する前記ステップが、塩化リチウムの溶融塩槽内に前記コリウムを浸漬するステップを含む、請求項1に記載の方法。」とする訂正は、訂正前の請求項5の前半の記載である「前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させる前記ステップ」と、後半の記載である「塩化リチウムの溶融塩槽内に前記コリウムを浸漬するステップ」とが不整合であり不明瞭であったものを、「浸漬する」の用語に統一することで、明瞭にするものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、「浸漬する」の用語に統一することで、明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 新規事項の有無 訂正事項3は、明細書の段落【0017】に「核物質を有する還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬する」と記載され、段落【0024】に「電解還元装置内の第1の溶融塩電解液は、塩化リチウム(LiCl)の溶融塩槽を含むことができる。」と記載されているから、当該訂正事項3は、本願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的の適否 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項8及び9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4は、請求項の削除であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 新規事項の有無 訂正事項4は、請求項の削除であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (5)一群の請求項 訂正事項1ないし4に係る訂正前の請求項1ないし18は、当該訂正事項1を含む請求項1の記載を訂正前の請求項2ないし18がそれぞれ引用しているものであるから、これらに対応する訂正後の請求項〔1ないし18〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 小括 したがって、特許第5829177号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし18〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし18に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」ないし「本件特許発明18」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 安定した廃棄物形態を得ることによりコリウムを安定化させる方法であって、 還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入するステップと、 前記還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬するステップと、 前記電解還元装置の前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させて、前記還元装置カソードアセンブリ内で還元物質を得るステップと、 前記第1の溶融塩電解液内で還元装置廃棄物を蓄積させるステップと、 第2の溶融塩電解液、精錬装置カソードアセンブリ、および前記還元物質を保持するように構成された精錬装置アノードアセンブリを含む電解精錬装置内へ、前記還元物質を装入するステップと、 前記還元物質を前記電解精錬装置の前記第2の溶融塩電解液内で電解溶解させて、前記精錬装置カソードアセンブリ上で精製金属生成物としてウランを得るステップと、 前記第2の溶融塩電解液内で第1の精錬装置廃棄物として超ウラン元素を含むハロゲン化合物を蓄積させ、前記精錬装置アノードアセンブリ内で第2の精錬装置廃棄物としてジルコニウムおよび貴金属を蓄積させるステップと、 を含む方法。 【請求項2】 前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入する前記ステップが、前記コリウムおよび前記還元装置カソードアセンブリが水中にある間に、前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記電解還元装置の前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させる前に、前記還元装置カソードアセンブリを脱水するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。 【請求項4】 前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入する前記ステップが、前記コリウムおよび前記還元装置カソードアセンブリが原子炉の既存のプール内に浸漬されている間に、前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記第1の溶融塩電解液内へ浸漬する前記ステップが、塩化リチウムの溶融塩槽内に前記コリウムを浸漬するステップを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 還元装置廃棄物を蓄積させる前記ステップが、第1族元素および第2族元素の少なくとも1つを含むハロゲン化合物を蓄積させるステップを伴う、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記第2の溶融塩電解液内で前記還元物質を電解溶解する前記ステップが、塩化リチウムまたはLiCl-KCl共融混合物の溶融塩槽内に前記還元物質を浸漬するステップを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 前記電解還元装置内へ前記コリウムを装入する前に、前記コリウムを複数の断片に分割するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項11】 前記コリウムを分割する前記ステップが水中で実行される、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記コリウムを分割する前記ステップが、前記コリウムが原子炉の既存のプール内に浸漬されている間に実行される、請求項10に記載の方法。 【請求項13】 前記電解還元装置からの前記還元装置廃棄物および前記電解精錬装置からの前記第1の精錬装置廃棄物をセラミックの廃棄物形態に変換するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項14】 セラミックの廃棄物形態に変換する前記ステップが、ガラス方ソーダ石を得るステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記電解精錬装置からの前記第2の精錬装置廃棄物を金属の廃棄物形態に変換するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項16】 金属の廃棄物形態に変換する前記ステップが、金属インゴットを得るステップを含む、請求項15に記載の方法。 【請求項17】 前記コリウムが炉心溶融中に形成され、原子炉を冷却するために海水が投入される、請求項1に記載の方法。 【請求項18】 前記コリウムは海塩を含む、請求項1に記載の方法。 」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし18に係る特許に対して平成28年9月14日付け及び平成29年3月6日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)(拡大先願) 本件発明1、5?18は、その優先日(平成24年4月23日)前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願当初明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 ・先願 :特願2011-225488号 ・出願日 :平成23年10月13日 ・出願公開 :平成25年5月13日 ・出願公開番号:特開2013-88117号 (以下、「甲第1号証」という。) ・発明者 :藤田玲子、水口浩司、中村等、金村祥平、高橋優也、 宮本真哉、大森孝 ・出願人 :株式会社東芝 (2)(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ア 請求項2、3について 請求項1には、「第1の溶融塩電解液、および前記コリウムを保持するように構成された還元装置カソードアセンブリを含む電解還元装置内へ、前記コリウムを装入するステップと、」と記載され、コリウムが還元装置内へ装入される以前から、カソードアセンブリは電解還元装置内に配置されているものと解される。 ところが、請求項1を引用する請求項2では、「前記コリウムおよび前記還元装置カソードアセンブリが水中にある間に、」と記載されており、どの段階で「還元装置カソードアセンブリ」が水中にあるようになったのか不明である。 また、請求項3は、請求項2を引用するものであるから、請求項3も同様な理由で不明である。 したがって、本件発明2,3は明確でない。 イ 請求項4について 請求項1では、「第1の溶融塩電解液、および前記コリウムを保持するように構成された還元装置カソードアセンブリを含む電解還元装置内へ、前記コリウムを装入するステップと、」と記載され、コリウムが還元装置内へ装入される以前から、カソードアセンブリは電解還元装置内に配置されているものと理解される。 ところが、請求項1を引用する請求項4では、「前記コリウムおよび前記還元装置カソードアセンブリが原子炉の既存のプール内に浸漬されている間に、」と記載されており、どの段階で「還元装置カソードアセンブリ」が既存のプール内に浸漬されるようになったのか不明である。 したがって、本件発明4は明確でない。 ウ 平成28年12月12日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1には、「第1の溶融塩電解液、および前記コリウムを保持するように構成された還元装置カソードアセンブリを含む電解還元装置内へ、前記コリウムを装入するステップと、」と記載され、コリウムが還元装置内へ装入される以前から、カソードアセンブリは電解還元装置内に配置されているものと解される。 一方、「前記コリウムを装入するステップは、前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入するステップと、前記還元装置カソードアセンブリを前記電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬するステップと、を含む」と、コリウムが還元装置内へ装入される以前から、カソードアセンブリは電解還元装置内に配置される構成とは反するステップについても記載されている。 よって、訂正後の請求項1に係る発明は、明確でない。 3 甲各号証の記載 (1)甲第1号証 本件特許出願の優先日(平成24年4月23日)前に出願され、その出願後に出願公開(甲第1号証:特開2013-88117号公報)された先願(特願2011-225488号 )の先願当初明細書には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。以下、同様。 (a) 「【0004】 原子力事故により冷却能力が喪失すると、核燃料の崩壊熱により、燃料集合体及び炉心構造物が過熱融解し、炉心溶融物が発生する可能性がある。 このような炉心溶融物は、圧力容器や格納容器を切断し、これらと一体化して取り出される。このため炉心溶融物は、圧力容器を構成するFe系材料と、格納容器を構成するコンクリート材料と、被覆管やチャンネルボックスを構成するZr材料と、核燃料を構成する酸化ウラン及び酸化プルトニウムと、が混在している。 しかし、このような放射性物質を含む炉心溶融物の処理方法については、石棺処理を除き、これまで提案されていない。」 (b) 「【0028】 (第2実施形態) 図6のフローチャートに示される第2実施形態に係る炉心溶融物の処理方法は、図2、図3、図7、図8、図9に例示される炉心溶融物の処理システム(処理システム10(10A,10B,10E,10F,10G))を用いて具体的に実施される。 なお、図6のS21?S23,S27及びS28は、それぞれ図1のS11?S13,S18及びS19と同一工程であり、詳細説明の重複記載を省略する。 【0029】 第2実施形態に係る炉心溶融物の処理方法は、図2に示すように炉心溶融物15Aを陽極13に装荷し(図6;S21)、陰極14Aに金属Zrを電解析出させる工程(図6;S22)と、図3に示すように交換した陰極14Bに金属Feを電解析出させる工程(図6;S23)と、図3に示す陽極13に残留する金属酸化物(UO_(2),PuO_(2))を図7に示すように陰極14Eとして電解還元する工程(図6;S24)と、図8に示すように電解還元された金属(U,Pu)を陽極13として金属Uを陰極14Fに電解析出させる工程(図6;S25)と、図9に示すように陽極13に残留する金属Puを陰極14Gに電解析出させる工程(図6;S26)と、陽極13に残留する残留物(主にコンクリート)を回収する工程(図6;S27)と、図10に示すように電解浴12に含まれる核分裂生成物を回収する工程(図6;S28)と、を含む。 【0030】 図7(図6;S24も適宜参照)に示す処理システム10Eは、処理システム10A,10B(図2、図3)でZr及びFeの回収された炉心溶融物15Bを引き上げて、引き続き処理を実施するものである。そして、陰極14Eに装荷された炉心溶融物15Eは、含まれるU酸化物及びPu酸化物が電解還元されて金属U及び金属Puとなる。 処理システム10Eでは、陰極14Eに炉心溶融物15Eが収容されるバスケットを接続し、陽極13Eに炭酸ガスの発生を防止する観点から炭素系材料以外の材料、例えば白金を使用する。 【0031】 そして、適用される電解浴12Eは、LiClにLi_(2)Oを溶解させた溶融塩、MgCl_(2)にMgOを溶解した溶融塩、CaCl_(2)にCaOを溶解した溶融塩を使用することができる。 【0032】 処理システム10E(図7)に、電圧が印加されると、式(9)に示すように陰極14EにおいてU酸化物及びPu酸化物が還元され金属U及び金属Puが生成する。さらに生成した酸素イオンが陽極13Eに移動し、式(10)に示す電極反応によりO_(2)ガスが発生する。これにより、陰極14Eのバスケットには、金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属(MA;Np,Am,Cm等)が残留する。 【0033】 陰極: UO_(2) + PuO_(2) + 8e^(-) → U + Pu + 4O^(2-) (9) 陽極: 4O^(2-) → 2O_(2) + 8e^(-) (10) 【0034】 図8(図6;S25も適宜参照)に示す処理システム10Fは、処理システム10E(図7)で電解還元された炉心溶融物15Eを引き上げて、引き続き処理を実施するものである。そして、陽極13に装荷された炉心溶融物15Fに含まれる金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属(MA)のうち、金属Uを陰極14Fに電解析出させる。 【0035】 処理システム10Fは、電解浴12Fを収容する電解槽11と、金属U及び金属Puを含む炉心溶融物15Fを収容するバスケット状の陽極13と、金属Uを電解析出させる陰極14Fと、から構成されている。 【0036】 ここで電解浴12Fは、LiCl-KClの共晶塩である場合の他に、LiCl-NaCl、LiCl-RbCl、LiCl-CsCl、LiCl-MgCl_(2)、LiCl-CaCl_(2)、LiCl-SrCl_(2)、NaCl-KCl、RbCl-NaCl、CsCl-NaCl、RbCl-KCl、CsCl-KCl、NaCl-MgCl_(2)、NaCl-KCl、KCl-SrCl_(2)、KCl-CaCl_(2)、NaF-KF、LiF-KF、NaF-LiF、NaCl-NaF、KCl-KF等の混合塩が挙げられる。 【0037】 処理システム10F(図8)に、電圧が印加されると、式(11)に示すように陽極13から酸化還元電位がより貴である金属Uがまずイオン化して電解浴12Fに溶出する。そして、式(12)に示すように溶出したUイオンが陰極14Fに析出し金属Uが高純度で回収される。 【0038】 陽極: U → U^(4+) + 4e^(-) (11) 陰極: U^(4+) + 4e^(-) → U (12) 【0039】 図9(図6;S26も適宜参照)に示す処理システム10Gは、処理システム10F(図8)の状態を引き継ぎ、新しい陰極14Gに交換してから印加電圧を高く設定する。そして、炉心溶融物15Gから陰極14Gに、金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属の合金を電解析出させる。 この陰極14Gは、セラミック製るつぼに、液体カドミウムを収容させて構成されている。 なお、処理システム10G(図9)における電解浴12G及び陽極13は、処理システム10F(図8)における電解浴12F及び陽極13と同じでよい。 【0040】 処理システム10G(図9)に、電圧が印加されると、式(13)に示すように陽極13から金属Puがまずイオン化して電解浴12Gに溶出する。そして、式(14)に示すように溶出したPuイオンが陰極14Gに析出し金属Puが回収される。 なお、電極反応式の記載を省略するがこの工程においては、前工程において回収されなかった金属Uやマイナーアクチニド金属(MA)も共に回収され、陰極14Gには、U-Pu-MA合金が電解析出する。 【0041】 陽極: Pu → Pu^(4+) + 4e^(-) (13) 陰極: Pu^(4+) + 4e^(-) → Pu (14) 【0042】 第2実施形態に係る炉心溶融物の処理方法によれば、Puが単独で回収されないために核不拡散性の高いプロセスとなる。また、金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属(MA)を回収した後の陽極13のバスケットには、格納容器に由来するコンクリート材を主とする残留物が残存する。 この残留物は、そのまま取り出すか、もしくは電解終了後に電解槽11のヒータを切り、自然冷却して溶融塩を凝固させると、コンクリート等の残留物と溶融塩とを分離して容易に回収することができる。 【0043】 図10(図1;S19、図6;S28も適宜参照)に示す吸着塔19は、ゼオライトが収容され、各実施形態の各工程における使用済の電解浴12を通過させることにより、含まれる核分裂生成物(FP)を回収するものである。 この回収処理により、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素の核分裂生成物(FP)が選択的に除去され、電解浴12を再利用することができる。また、核分裂生成物(FP)が吸着させたゼオライトは、熱をかけてソーダライトにした後、人工鉱物の形態にして処分する。もしくは核分裂生成物(FP)が吸着させたゼオライトに圧力をかけて(HIP処理をして)、ガラス材と混合し、ガラス固化体にして処分する。」 (c)【図6】?【図10】 「 」 以上の記載から、先願当初明細書には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。 「放射性物質を含む炉心溶融物の処理方法であって、炉心溶融物15Aを陽極13に装荷し陰極14Aに金属Zrを電解析出させる工程と、交換した陰極14Bに金属Feを電解析出させる工程と、陽極13に残留する金属酸化物(UO_(2),PuO_(2))を陰極14Eとして電解還元する工程と、電解還元された金属(U,Pu)を陽極13として金属Uを陰極14Fに電解析出させる工程と、陽極13に残留する金属Puを陰極14Gに電解析出させる工程と、陽極13に残留する残留物(主にコンクリート)を回収する工程と、電解浴12に含まれる核分裂生成物を回収する工程とを含み、 処理システム10Eは、処理システム10A,10BでZr及びFeの回収された炉心溶融物15Bを引き上げて、引き続き処理を実施するものであり、 処理システム10Eでは、陰極14Eに炉心溶融物15Eが収容されるバスケットを接続し、適用される電解浴12Eは、LiClにLi_(2)Oを溶解させた溶融塩であり、 処理システム10Eに、電圧が印加されると、陰極14EにおいてU酸化物及びPu酸化物が還元され金属U及び金属Puが生成し、 処理システム10Fは、処理システム10Eで電解還元された炉心溶融物15Eを引き上げて、引き続き処理を実施するものであり、電解浴12Fを収容する電解槽11と、金属U及び金属Puを含む炉心溶融物15Fを収容するバスケット状の陽極13と、金属Uを電解析出させる陰極14Fと、から構成され、ここで電解浴12Fは、LiCl-KClの共晶塩であり、処理システム10Fに、電圧が印加されると、溶出したUイオンが陰極14Fに析出し金属Uが高純度で回収され、 処理システム10Gは、処理システム10Fの状態を引き継ぎ、新しい陰極14Gに交換してから印加電圧を高く設定し、炉心溶融物15Gから陰極14Gに、金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属(MA;Np,Am,Cm等)の合金を電解析出させ、この陰極14Gは、セラミック製るつぼに、液体カドミウムを収容させて構成されており、 吸着塔19は、ゼオライトが収容され、各工程における使用済の電解浴12を通過させることにより、含まれる核分裂生成物(FP)を回収するものであり、 この回収処理により、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素の核分裂生成物(FP)が選択的に除去され、核分裂生成物(FP)が吸着させたゼオライトは、熱をかけてソーダライトにした後、人工鉱物の形態にして処分し、もしくは核分裂生成物(FP)が吸着させたゼオライトに圧力をかけて(HIP処理をして)、ガラス材と混合し、ガラス固化体にして処分する 方法。」 (2)甲第2号証 特開平6-148390号公報(以下、「甲第2号証」という。)には、以下の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】原子力発電において発生する使用済核燃料中には、核燃料の組成や燃焼度,冷却期間等によって相違するが、主としてルテニウム(Ru),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd)等の核分裂生成貴金属が含まれ、その総含有量は全核分裂生成物の1/10程度に達する。これらの核分裂生成貴金属は、硝酸による再処理工程を経ると不溶解残渣と高レベル放射性廃液の双方に含まれるが、かかる核分裂生成貴金属を回収する方法としては鉛溶融による方法が知られている。」 (3)甲第3号証 特開2000-298190号公報(以下、「甲第3号証」という。)には、以下の記載がある。 「【0008】 【発明が解決しようとする課題】これらの方法のうち、第1と第2の方法では、陽極での電解により酸化物燃料を溶解する過程が含まれる。使用済み燃料はウラン,プルトニウムおよびマイナーアクチナイドからなる核燃料物質と、Ruのような放射能の高い貴金属および、その他の核分裂生成物が含まれている。貴金属は陽極で電解し難く、陰極で析出しやすい。このため、前記第1の方法において、貴金属が一端電解溶解によって溶融塩に溶解してしまうと、陰極に析出しやすいため、回収ウランに混入する。また前記第2の方法では、貴金属を溶解すれば陰極に析出しやすいため、回収ウランに混入し、溶解しなければ陽極に残るため回収プルトニウムに混入する。貴金属は放射能が高いため、ウランまたはプルトニウムに混入する量が多ければ、これらを用いた燃料製造工程を遠隔自動化する必要が生じ、燃料のリサイクルのコストが増加する。即ち、前記第1および第2の方法に於いて回収されたウランおよび回収されたプルトニウムへの貴金属の混入を抑制する技術の開発が必要である。」 (4)甲第4号証 米国特許第8968547号明細書(以下、「甲第4号証」という。)には、以下の記載がある。なお、原文の後の日本語訳は、異議申立人によるものである。 「 14. The method of claim 13 , wherein the converting into a ceramic waste form includes producing a glass-bonded sodalite.」(第16欄第13行?15行) (セラミックの廃棄物形態に変換する方法が、ガラス方ソーダ石を得ることを含む請求項13に記載の方法。) (5)甲第5号証 電中研レビュー第37号「乾式リサイクル技術・金属燃料FBRの実現に向けて」 財団法人電力中央研究所広報部発行 発行日平成12年1月24日 pp.27?29,pp.61?64(以下、「甲第5号証」という。)には、以下の記載がある。 第28頁の図4-1-1には、使用済燃料の電解精製技術において、陽極側にZr及び貴金属元素FPが残留し蓄積されることが記載されている。 第64頁左欄第1行?第9行には以下の記載がある。 「乾式再処理プロセスの電解槽の陽極溶解バスケット中に被覆管ハル、燃料成分のジルコニウム、および貴(金属としてより安定)な金属FP(ルテニウム、パラジウム、テクネチウムなど)が不溶解物として残る。 ANLでは、これらを溶解炉で溶かし、鋳型に流し込んで固め、金属廃棄物固化体にして処理・処分することを考えている。金属廃棄物固化体の組成はステンレス鋼とジルコニウムの合金に貴な金属FPを最大で4%入れたものが検討されている。」 4 取消理由通知に記載した取消理由についての当審の判断 (1)(拡大先願) ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と先願発明とを対比する。 先願発明の「放射性物質を含む炉心溶融物」は、本件発明1の「コリウム」に相当する。 先願発明の「放射性物質を含む炉心溶融物の処理方法」は、炉心溶融物から、核分裂生成物(FP)等を回収し、ガラス固化体にして処分する方法であるから、本件発明1の「安定した廃棄物形態を得ることによりコリウムを安定化させる方法」に相当する。 先願発明の「電解浴12E」、「炉心溶融物15Eが収容されるバスケットを接続」した「陰極14E」は、本件発明1の「第1の溶融塩電解液」、「前記コリウムを保持するように構成された還元装置カソードアセンブリ」に相当する。 また、先願発明において、「処理システム10Eは、処理システム10A,10BでZr及びFeの回収された炉心溶融物15Bを引き上げて、引き続き処理を実施するものであり、処理システム10Eでは、陰極14Eに炉心溶融物15Eが収容されるバスケットを接続し、適用される電解浴12Eは、LiClにLi_(2)Oを溶解させた溶融塩であ」るから、先願発明の「処理システム10E」は、本件発明1の「第1の溶融塩電解液、および前記コリウムを保持するように構成された還元装置カソードアセンブリを含む電解還元装置」に相当し、引き上げられた炉心溶融物15Bはバスケットに装入されており、バスケットは電解浴12E内へ移動することは明らかであるから、先願発明は、本件発明1の「還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入するステップと、前記還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬するステップ」を含んでいるといえる。 先願発明の「処理システム10Eに、電圧が印加されると、陰極14EにおいてU酸化物及びPu酸化物が還元され金属U及び金属Puが生成」すること(工程)は、本件発明1の「前記電解還元装置の前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させて、前記還元装置カソードアセンブリ内で還元物質を得るステップ」に相当する。 先願発明の「電解浴12F」、「陰極14F」、「金属U及び金属Puを含む炉心溶融物15Fを収容するバスケット状の陽極13」は、本件発明1の「第2の溶融塩電解液」、「精錬装置カソードアセンブリ」、「前記還元物質を保持するように構成された精錬装置アノードアセンブリ」に相当する。 先願発明の「処理システム10F」は、「電解浴12Fを収容する電解槽11と、金属U及び金属Puを含む炉心溶融物15Fを収容するバスケット状の陽極13と、金属Uを電解析出させる陰極14Fと、から構成され」ているから、本件発明1の「第2の溶融塩電解液、精錬装置カソードアセンブリ、および前記還元物質を保持するように構成された精錬装置アノードアセンブリを含む電解精錬装置」に相当する。 また、先願発明は、「処理システム10Fは、処理システム10Eで電解還元された炉心溶融物15Eを引き上げて、引き続き処理を実施するものであ」るから、本件発明1の「電解精錬装置内へ、前記還元物質を装入するステップ」に相当する工程を有している。 先願発明において、「陰極14Fに析出し金属Uが高純度で回収され」るから、先願発明の「高純度」の「金属U」は、本件発明1の「精製金属生成物としてウラン」に相当する。 そして、先願発明の「処理システム10Fに、電圧が印加されると、溶出したUイオンが陰極14Fに析出し金属Uが高純度で回収され」ること(工程)は、本件発明1の「前記還元物質を前記電解精錬装置の前記第2の溶融塩電解液内で電解溶解させて、前記精錬装置カソードアセンブリ上で精製金属生成物としてウランを得るステップ」に相当する。 先願発明において、「処理システム10Gは、処理システム10Fの状態を引き継ぎ、新しい陰極14Gに交換してから印加電圧を高く設定し、炉心溶融物15Gから陰極14Gに、金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属の合金を電解析出させ」ており、処理システム10F(図8)の状態を引き継いぐ際のバスケット状の陽極13に収容されている「炉心溶融物15G」は、本件発明1の「前記精錬装置アノードアセンブリ内」の「第2の精錬装置廃棄物」に相当するから、先願発明において、「処理システム10F」で処理している間に、本件発明1の「前記精錬装置アノードアセンブリ内で第2の精錬装置廃棄物を蓄積させるステップ」に相当する工程を行っているといえる。 先願発明において、「吸着塔19は、ゼオライトが収容され、各工程における使用済の電解浴12を通過させることにより、含まれる核分裂生成物(FP)を回収するものであり、」各工程における使用済の電解浴12には核分裂生成物(FP)が含まれていることは明らかである。この電解浴12中の核分裂生成物(FP)は、炉心溶融物由来の物質であり、処理システムの処理に伴って電解浴中に蓄積されたものである。 よって、先願発明は、処理システム10Eで処理している間に、本件発明1の「前記第1の溶融塩電解液内で還元装置廃棄物を蓄積させるステップ」に相当する工程を行っているといえ、また、処理システム10F(図8)で処理している間に、本件発明1の「前記第2の溶融塩電解液内で第1の精錬装置廃棄物を蓄積させ」「るステップ」に相当する工程を行っているといえる。 以上の相当関係から、本件発明と先願発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 (一致点) 「安定した廃棄物形態を得ることによりコリウムを安定化させる方法であって、 還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入するステップと、 前記還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬するステップと、 前記電解還元装置の前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させて、前記還元装置カソードアセンブリ内で還元物質を得るステップと、 前記第1の溶融塩電解液内で還元装置廃棄物を蓄積させるステップと、 第2の溶融塩電解液、精錬装置カソードアセンブリ、および前記還元物質を保持するように構成された精錬装置アノードアセンブリを含む電解精錬装置内へ、前記還元物質を装入するステップと、 前記還元物質を前記電解精錬装置の前記第2の溶融塩電解液内で電解溶解させて、前記精錬装置カソードアセンブリ上で精製金属生成物としてウランを得るステップと、 前記第2の溶融塩電解液内で第1の精錬装置廃棄物を蓄積させ、前記精錬装置アノードアセンブリ内で第2の精錬装置廃棄物を蓄積させるステップと、 を含む方法。」 (相違点1) 第1の精錬装置廃棄物について、本件発明1は、「超ウラン元素を含むハロゲン化合物」であるのに対し、先願発明は、第1の精錬装置廃棄物としてどのようなものが含まれているか不明である点。 (相違点2) 第2の精錬装置廃棄物について本件発明1は、「ジルコニウムおよび貴金属」であるのに対し、先願発明は、第2の精錬装置廃棄物としてどのようなものが含まれているか不明である点。 事案に鑑み、相違点2について先に検討する。 本件発明1は、「前記電解還元装置の前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させて、前記還元装置カソードアセンブリ内で還元物質を得るステップ」の後に「前記精錬装置アノードアセンブリ内で第2の精錬装置廃棄物としてジルコニウムおよび貴金属を蓄積させるステップ」を含んでいる。 一方、先願発明は、「炉心溶融物15Aを陽極13に装荷し陰極14Aに金属Zrを電解析出させる工程」、「交換した陰極14Bに金属Feを電解析出させる工程」の後に、「Zr及びFeの回収された炉心溶融物15Bを」「電解還元する工程」で処理を実施している。 ここで、ジルコニウムについての処理タイミングに注目すると、本件発明1においては、「還元物質を得るステップ」の後であり、先願発明は、「電解還元する工程」の前である。 一般にUの核分裂反応の結果、Pd(パラジウム)、Rh(ロジウム)等の貴金属が生成されること(甲第2号証、甲第3号証参照。)、Zr及び貴金属元素FP(核分裂生成物)を含有する使用済み燃料を溶融塩中で電解精製した際に、陽極側にZr及び貴金属元素FPが残留し蓄積されること(甲第5号証第28頁の図4-1-1、第64頁左欄第1行?第9行)に鑑みれば、先願発明の「電解還元する工程」の後、陰極14F及びGに、金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属の合金を電解析出させる処理システムF及びGにおいて、陽極側にZr及び貴金属元素FPが残留し蓄積される可能性があるとしても、先願当初明細書は、「電解還元する工程」の前にZrを回収する発明を開示するものであって、少なくとも、「電解還元する工程」の後の処理システムF及びGにおいて、陽極側にZrを残留させ蓄積される発明を開示するものであるとはいえない。 よって、第2の精錬装置廃棄物について、本件発明1は、「ジルコニウムおよび貴金属」であるのに対し、少なくとも、先願発明は、第2の精錬装置廃棄物として「ジルコニウム」を含むとする技術思想を有しているとはいえず、本件発明1と先願発明は明らかに相違する。 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、先願発明と同一ではない。 イ 本件特許発明2?7及び10?18について 本件特許発明1の構成を全て含む本件特許発明2?7及び10?18は、本件特許発明1の相違点2に係る構成を含むものであるから、本件特許発明1と同じ理由により、本件特許発明1の構成を全て含む本件特許発明2?7及び10?18は、先願発明と同一であるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1?7及び10?18は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。 (2)(明確性) 訂正前の請求項1では、「第1の溶融塩電解液、および前記コリウムを保持するように構成された還元装置カソードアセンブリを含む電解還元装置内へ、前記コリウムを装入するステップと、」と記載され、コリウムが還元装置内へ装入される以前から、カソードアセンブリは電解還元装置内に配置されているものと解釈され得たところ、「還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入するステップと前記還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬するステップと、」と訂正され、「電解還元装置」、「還元装置カソードアセンブリ」及び「コリウム」の関係が明瞭となった。 したがって、訂正後の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 第4 むすび 特許異議申立書に記載された特許異議申立理由は、取消理由通知に記載した取消理由と同じであり、該取消理由についての当審の判断は、上記「第3」「4」に記載のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1?7及び10?18に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?7及び10?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項8及び9に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項8及び9に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 安定した廃棄物形態を得ることによりコリウムを安定化させる方法であって、 還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入するステップと、 前記還元装置カソードアセンブリを電解還元装置の第1の溶融塩電解液内へ浸漬するステップと、 前記電解還元装置の前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させて、前記還元装置カソードアセンブリ内で還元物質を得るステップと、 前記第1の溶融塩電解液内で還元装置廃棄物を蓄積させるステップと、 第2の溶融塩電解液、精錬装置カソードアセンブリ、および前記還元物質を保持するように構成された精錬装置アノードアセンブリを含む電解精錬装置内へ、前記還元物質を装入するステップと、 前記還元物質を前記電解精錬装置の前記第2の溶融塩電解液内で電解溶解させて、前記精錬装置カソードアセンブリ上で精製金属生成物としてウランを得るステップと、 前記第2の溶融塩電解液内で第1の精錬装置廃棄物として超ウラン元素を含むハロゲン化合物を蓄積させ、前記精錬装置アノードアセンブリ内で第2の精錬装置廃棄物としてジルコニウムおよび貴金属を蓄積させるステップと、 を含む方法。 【請求項2】 前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入する前記ステップが、前記コリウムおよび前記還元装置カソードアセンブリが水中にある間に、前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記電解還元装置の前記第1の溶融塩電解液内で前記コリウムを還元させる前に、前記還元装置カソードアセンブリを脱水するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。 【請求項4】 前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを装入する前記ステップが、前記コリウムおよび前記還元装置カソードアセンブリが原子炉の既存のプール内に浸漬されている間に、前記還元装置カソードアセンブリ内へ前記コリウムを配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記第1の溶融塩電解液内へ浸漬する前記ステップが、塩化リチウムの溶融塩槽内に前記コリウムを浸漬するステップを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 還元装置廃棄物を蓄積させる前記ステップが、第1族元素および第2族元素の少なくとも1つを含むハロゲン化合物を蓄積させるステップを伴う、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記第2の溶融塩電解液内で前記還元物質を電解溶解する前記ステップが、塩化リチウムまたはLiCl-KCl共融混合物の溶融塩槽内に前記還元物質を浸漬するステップを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 前記電解還元装置内へ前記コリウムを装入する前に、前記コリウムを複数の断片に分割するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項11】 前記コリウムを分割する前記ステップが水中で実行される、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記コリウムを分割する前記ステップが、前記コリウムが原子炉の既存のプール内に浸漬されている間に実行される、請求項10に記載の方法。 【請求項13】 前記電解還元装置からの前記還元装置廃棄物および前記電解精錬装置からの前記第1の精錬装置廃棄物をセラミックの廃棄物形態に変換するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項14】 セラミックの廃棄物形態に変換する前記ステップが、ガラス方ソーダ石を得るステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記電解精錬装置からの前記第2の精錬装置廃棄物を金属の廃棄物形態に変換するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項16】 金属の廃棄物形態に変換する前記ステップが、金属インゴットを得るステップを含む、請求項15に記載の方法。 【請求項17】 前記コリウムが炉心溶融中に形成され、原子炉を冷却するために海水が投入される、請求項1に記載の方法。 【請求項18】 前記コリウムは海塩を含む、請求項1に記載の方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-06-06 |
出願番号 | 特願2013-87022(P2013-87022) |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YAA
(C25C)
P 1 651・ 537- YAA (C25C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 國方 康伸 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
伊藤 昌哉 森 竜介 |
登録日 | 2015-12-04 |
登録番号 | 特許第5849064号(P5849064) |
権利者 | ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー |
発明の名称 | コリウムおよび使用済み核燃料の安定化処理方法 |
代理人 | 田中 拓人 |
代理人 | 田中 拓人 |
代理人 | 荒川 聡志 |
代理人 | 黒川 俊久 |
代理人 | 黒川 俊久 |
代理人 | 荒川 聡志 |
代理人 | 小倉 博 |
代理人 | 小倉 博 |