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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:357  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1331223
異議申立番号 異議2017-700334  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-05 
確定日 2017-08-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6001493号発明「ホットメルト接着剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6001493号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯

特許第6001493号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成28年9月9日にその特許権の設定登録がなされ、その後、平成29年4月5日付けで特許異議申立人佐藤義光(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明

特許第6001493号の本件請求項1?4の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明4」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体を含有するホットメルト接着剤であって、
(A)熱可塑性ブロック共重合体が以下の(A1)成分および(A2)成分を含有するものである、ホットメルト接着剤:
(A1)スチレン含有率が35?45重量%、ジブロック含有率が50?90重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が250mPa・s以下であるラジアル型スチレンブロック共重合体;及び
(A2)スチレン含有率が30重量%未満、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が250mPa・sより高いスチレンブロック共重合体。
【請求項2】
(A1)ラジアル型スチレンブロック共重合体は、3分岐型のスチレンブロック共重合体をを含むものである請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(A2)熱可塑性ブロック共重合体は、スチレン-イソプレンブロック共重合体を含むものである請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤を塗工して得られることを特徴とする使い捨て製品。」

3 申立理由の概要

申立人は、以下のとおり主張している。

(1)特許法第29条第2項について
本件発明1?4は、甲第1号証、甲第3号証の記載の事項、及び、周知の技術事項(甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証)に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、また、本件発明1、3、4は、甲第1号証、甲第6号証の記載の事項、及び、周知の技術事項(甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証)に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1?4に係る発明を取り消すべきものである(以下、「申立理由1」という。)。

甲第1号証:特開平02-232049号公報
甲第2号証:クレイトン^(TM)D1117物性データ
(2015年4月9日発行)
甲第3号証:特開平10-130349号公報
甲第4号証:国際公開第2014/017380号
甲第5号証:一般財団法人化学物質評価研究機構による試験報告書
(平成29年3月21日)
甲第6号証:特許第4436599号公報
甲第7号証:旭化成株式会社回答書(2017年4月3日)

なお、甲第4号証は、本件特許の出願日(2013年4月23日)より後である2014年1月30日に公開された文献であり、甲第5号証は、その実施例に基づく試験報告書である。

(2)特許法第36条第4項第1号について
本件特許の実施例で使用された旭化成ケミカルズ社製のHJ13、HJ13-2及びHJ10は、甲第7号証によると、市販されているものではなく、これらの製造方法が本件明細書に記載されていないことから、当業者であっても、本件特許発明を実施することができず、本件発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、取り消すべきものである(以下、「申立理由2」という。)。

(3)特許法第36条第6項第1号について
当業者であっても、本件特許の出願時の技術常識に照らして、低温塗工が可能で、ポリオレフィン基材への接着性に優れ、かつ耐クリープ性に優れたホットメルト接着剤、及び、そのホットメルト接着剤を用いて得られる使い捨て製品を提供するという本件特許の目的を達成できる本件特許発明まで、本件特許明細書に開示された内容を拡張ないし一般化できず、本件発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、取り消すべきものである(以下、「申立理由3」という。)。

4 甲第1?7号証の記載事項について(下線は当審が付した。)

(1)甲第1号証(特開平02-232049号公報)には、以下のことが記載されている。

記載事項1-A
「(6)
(a)式
(A-B)_(n)-Y
(ここで、Yは多価カップリング剤、Aはポリビニル置換芳香族ブロックを包含し、Bは重合ゴム状中間ブロックを包含し、nは3以上の整数)で示され少なくとも約145,000の分子量を有するラジアルブロック共重合体5ないし14重量%、
(b)C5樹脂、スチレン化C5樹脂、スチレン化テルペン樹脂、水素化C9樹脂、ロジン誘導体、スチレン化テルペンゴム、およびそれらの混合物からなる群から選ばれた相容性粘着付与樹脂約45ないし85重量%、および
(c)可塑化油約5ないし35重量%
を包含する、使い捨て製品構成のためのホットメルト接着剤組成物であって、該ホットメルト感圧接着剤は、100゜Fで少なくとも30分間の静的剪断、および100゜Fで約30%未満のクリープ抵抗性を有し、275゜Fで25,000cp未満の粘度を示す接着剤。」(請求項6)

記載事項1-B
「(7) Aがポリスチレンブロックを包含し、Bがブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を包含する水素化もしくは非水素化重合ブロックである請求項6記載の接着剤。」(請求項7)

記載事項1-C
「(14) 0.1ないし10重量%の線状A-B-Aブロック共重合体をさらに含み、Aがポリスチレンブロックを包含し、Bがブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を含む重合ゴム状中間ブロックを包含する請求項7記載の接着剤。」(請求項14)

記載事項1-D
「いくつかの使い捨ておむつは、マルチーライン構成および弾性的取付け両方のための単独の接着剤を用いて製造されるが、これらのおむつはしばしば、高品質の機械的一体性をもたず、そして弾性クリープまたは分離を示すという点で高級なおむつではない。
それゆえに、マルチーライン溝成及び弾性的取付けの両方に適用できる接着剤を与える特性を持った単独の接着剤に対する実質的な必要性が存在する。その必要性は、単独の接着剤において改善された結合強度、クリープ抵抗性及び低い塗布粘度を提供する上で有意の進歩を要求する。」(第5頁右下欄第14行目?第6頁左上欄第5行目)

記載事項1-E
「〔本発明の簡単な議論〕
約140,000より大きな、好ましくは160,000より大きな分子量を持つラジアルブロック共重合体の驚くほど低い濃度が、多目的構造及び弾性的取付け用接着剤においてクリープ抵抗性、結合強度の高い水準及び低い粘度分布を得るために使用できることが見出だされた。その接着剤は、マルチーラインまたはその他の使い捨て製品構造技術を使用する弾性バンド取付けおよび構造用の両方のための接着剤として適した特性を示す。
ラジアルブロック共重合体は、シュミット ジュニアらの米国特許第4,526,577号に代表されるような従来の技術の接着剤に比較して、驚くほど少ない量を適当な粘着付与樹脂と可塑化油とともにブレンドすることができる。本発明のラジアルブロック共重合体は、シュミットの特許らの従来の技術と比較したとき、より優れた接着性および凝着性、高い結合強度、クリープ抵抗性及び剥離抵抗性を持つ接着剤を生産するために線状A-B-A(S-I-S及びS-B-Sの両方)ブロック共重合体と任意に組合せることができる。」(第6頁左上欄第6行?右上欄第7行目)

記載事項1-F
「本発明の接着剤の製造に有用なラジアルブロック共重合体は、約145,000の分子量を有し、次の一般式で表される。

(A-B)_(nl)-Y-(B)_(n2)

式中のAは、重合されたビニル置換芳香族モノマーのガラス状ブロック、Bは4?12個の炭素原子を持つ重合されたジエンの飽和または不飽和ゴム状ブロック、Yは多官能性カップリング剤残基、n1は少なくとも3で、好ましくは3から10、最も好ましくは3から5の整数、n2は0から10、最も好ましくは0から4の整数である。」(第7頁左上欄第20行?右上欄第12行目)

記載事項1-G
「好ましいゴムは、次の一般式で表されるラジアルブロック共重合体である。
A-B-Y-(B-A)_(n)

B

A

式中で、nは1?3、Aブロックはスチレンを包含し、そしてBブロックは水素化されてもよいブタジエン、イソプレンまたはそれらの混合物を包含する。」(第7頁右上欄第17行?左下欄第8行目)

記載事項1-H
「A-B-Aブロック共重合体は、ラジアルブロック共重合体とともに使用することができる。そのようなA-B-Aブロック共重合体のAブロックは、重合されたビニル置換芳香族モノマーのブロックを包含し、Bブロックは4?12個の炭素原子を持つ重合されたジエンを包含する。好ましくはA-B-Aブロック重合体は、重合されたスチレンを含むAブロックと重合されたブタジエン、イソプレンまたはそれらの混合物を含むBブロックから作られる。このような共重合体は、典型的に約70,000?140,000の範囲の分子量を有し、かつ約12ないし35重量%のスチレンを持っている。」(第7頁右下欄第7行?第19行目)

記載事項1-I


」(表1)

記載事項1-J
「静的剪断
本試験は、使い捨て製品の使用温度にほぼ近い温度で、定荷重下で結合破損に抵抗する接着剤の能力の示度である。」(第14頁左上欄第18行?右上欄第1行目)

記載事項1-K
「本発明の好ましい高分子量ラジアルブロック共重合体であるクレイトンD1184を用いて調整した接着剤とステレオン840A(線状マルチブロックA-B-A-B-A-B共重合体)から調整された比較の接着剤が、比較されている。」(第18頁左上欄第1行目?第6行目)

記載事項1-L


」(表7)

記載事項1-M
「表7では、高分子量ラジアルブロック共重合体と組合わせた他のブロック共重合体の使用は、従来技術よりも改善された特性を持つ接着剤となるであろうということを示している。」(第19頁左上欄表下第1行?第4行目)

(2)甲第2号証(クレイトン^(TM)D1117物性データ)には、以下のことが記載されている。

記載事項2-A


」(第1頁)

・クレイトンD1117Pは、透明なスチレンとイソプレンの直鎖トリブロック共重合体(ポリスチレン含有量17%)であって、北アメリカから供された、以下で特定された物性を有するものである。
・ポリスチレン含有量(重量%) 15.6?19.2
・25重量%トルエン溶液の25℃での粘度(cP) 350?590
(日本語仮訳)

(3)甲第3号証(特開平10-130349号公報 )には、以下のことが記載されている。

記載事項3-A
「【請求項1】 下記一般式(I):
(A-B)_(n)X (I)
(式中、Aは芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであり、Xは4官能性またはそれ以上の多官能性カップリング剤の残基であり、nは4以上の整数である)で表わされる4以上の分枝をもつ分枝体成分を5?50重量%含有し、
下記一般式(II):
A′-B (II)
(式中、A′はAと同一または異なる芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであるで表わされるジブロック体成分を50?95重量%含有してなる重量平均分子量(Mw)が10,000?500,000の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体。
【請求項2】 有機リチウム開始剤と芳香族ビニル単量体とを接触させて、重合活性末端を有する芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAを生成し、次いで、イソプレンを添加して、重合活性末端を有するイソプレンの重合体ブロックBが芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAに直接結合したA-Bブロック共重合体を生成せしめ、次いで、少くとも4官能性のカップリング剤を添加して、A-Bブロック共重合体の一部を上記式(I)で表わされる4以上の分枝をもつ分枝体成分に変えることを特徴とする請求項1記載の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体を製造する方法。」

記載事項3-B
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ホットメルト接着剤その他の粘接着剤として有用な芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体、その製造方法、およびこのブロック共重合体を含む粘接着剤組成物に関する。」

記載事項3-C
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ホットメルト接着剤に要求される種々の特性、特に、低粘度低適用温度を有し、しかも、剥離接着力と剪断接着破壊温度とが良好にバランスされ、且つ高い値を示すホットメルト接着剤などの粘接着剤として有用なブロック共重合体およびその製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、低粘度低適用温度を有し、しかも、剥離接着力と剪断接着破壊温度とが良好にバランスされ、且つ高い値を示すホットメルト接着剤などの粘接着剤として有用な粘接着剤組成物を提供することにある。」

記載事項3-D
「【0011】
【発明の実施の形態】
芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体
本発明の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体は、前記式(I)で表わされる分枝体成分と前記式(II)で表わされるジブロック体成分とからなることを特徴とする。
【0012】(1)分枝体成分
本発明のブロック共重合体の第一成分である前記式(I)で表わされる分枝体成分は、芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAと、重合活性末端を有する共役ジエン系単量体の重合体ブロックBとよりなるA-Bブロック共重合体を、4官能性またはより多官能性のカップリング剤によりカップリングさせた構造を有する4以上の分枝を有するブロック共重合体である。上記分枝体成分に用いられる芳香族ビニル単量体は、特に限定されるものではなく、その具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどが挙げられるが、中でもスチレンが好ましい。
【0013】分枝体成分における芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAの割合は、格別限定されるものではないが、本発明のブロック共重合体全体中の芳香族ビニル単量体の重合体ブロックの含有量が10?50重量%、好ましくは25?50重量%、より好ましくは35?45重量%となることが望ましく、そのためには、分枝体成分中における芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAの含有量も10?50重量%、好ましくは25?50重量%、より好ましくは35?45重量%程度であることが望ましい。芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAの相対的割合が過小であると剪断接着破壊温度が低下し、また、この割合が過大であると剥離接着力が低下する。
【0014】分枝体成分の分子量は格別限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)として、本発明のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000?500,000、好ましくは50,000?250,000、より好ましくは80,000?150,000となるように適宜選択される。」

記載事項3-E
「【0016】(2)ジブロック体成分
本発明のブロック共重合体の第二成分である前記式(II)で表わされるジブロック体成分は、芳香族ビニル単量体の重合体ブロックA′とイソプレンの重合体ブロックBとからなる線状ジブロック共重合体である。ジブロック体成分の合成に用いられる芳香族ビニル単量体は、特に限定されるものではなく、その具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどが挙げられるが、中でもスチレンが好ましい。この芳香族ビニル単量体としては、通常、分枝体成分の重合体ブロックAの合成に用いられるものと同一のものが用いられるが、相違してもよい。」

記載事項3-F
「【0018】ジブロック体成分の分子量は格別限定されないが、GPCにより測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)として、本発明のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が通常3,000?250,000、好ましくは15,000?200,000、より好ましくは20,000?150,000となる範囲で適宜選定される。
【0019】本発明のブロック共重合体において、ジブロック体成分の含有量は、ブロック共重合体全重量の50?95重量%である。ジブロック体成分の含有量が過度に低いと剥離接着力が低下し、逆に、その含有量が過度に高いと高い剪断接着破壊温度を得ることができない。ジブロック体成分の含有量は、好ましくは50?85重量%、より好ましくは55?75重量%である。
【0020】(3)その他の成分
本発明の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体には、上記4以上の分枝をもつ分枝体成分とジブロック体成分の他に、2つの分枝をもつ分枝体成分および3つの分枝をもつ分枝体成分が含まれてもよい(これらの分枝体成分は、それぞれ、式(I)においてn=2およびn=3であるブロック共重合体に相当する)が、これらの分枝体成分の量が多量であることは好ましくない。一般に、2つの分枝をもつ分枝体成分と3つの分枝をもつ分枝体成分の合計量が4以上の分枝をもつ分枝体成分より少量であるときに、剪断接着破壊温度が改善され好適である。2つの分枝をもつ分枝体成分と3つの分枝をもつ分枝体成分の合計量は、通常、全芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体重量の20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。」

記載事項3-G
「【0024】(5)製法
本発明の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体を製造する方法は、格別限定されるものではないが、先ず、重合活性末端を有するイソプレンの重合体ブロックBが芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAに直接結合したA-Bジブロック共重合体を調製し、次いで、A-Bジブロック共重合体の一部をカップリングさせて4つ以上の分枝をもつブロック共重合体とすることによって、4つ以上の分枝をもつ分枝体成分とジブロック体成分とを一時に得る方法が好ましい。すなわち、好ましい製造方法は、有機リチウム開始剤と芳香族ビニル単量体とを接触させて、重合活性末端を有する芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAを生成し、次いで、イソプレンを添加して、重合活性末端を有するイソプレンの重合体ブロックBが芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAに直接結合したA-Bブロック共重合体を生成せしめ、次いで、少くとも4官能性のカップリング剤を添加して、A-Bブロック共重合体の一部を上記式(I)で表わされるブロック共重合体に変えることを特徴とする方法である。」

記載事項3-H
「【0037】粘接着剤組成物
本発明の粘接着剤組成物は上記のブロック共重合体と粘着付与樹脂から主としてなるものである。本発明の粘接着剤組成物に用いるブロック共重合体組成物においては、粘着剤組成物の特性が損なわれない限り、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体などのスチレン系ブロック共重合体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのジエン系重合体ゴム、天然ゴムなどの他のゴム成分を配合することができる。」

記載事項3-I
「【0042】ホットメルト型粘接着剤としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、病院用ガウン、ベッドパッド、手術用ドレープなどの使い捨て用品に、構造および弾性付着接着剤を含む多くの用途において特に好適に使用される。また、種々の粘着テープ、ラベル、製本、アッセンブリー用途などにも非常に有用である。粘着テープ用途は包装用、事務用、両面テープ用、マスキング用、電気絶縁用など多種にわたって適用可能であり、高接着力の特徴を示すとともに、低粘度の特性から溶剤法、ホットメルト法にかかわらず塗布時の操作性に優れている。ラベル用途ではやはり低粘度・高接着力の特性から塗布特性、粘着物性に優れるとともに、ダイカット性も良好である。」

記載事項3-J
「【0044】実施例1
ブロック共重合体の調製
50リットルの耐圧反応器を用い、n-ブタン/シクロヘキサン=30/70の割合の混合溶剤18.75kg、ジブチルエーテル(比誘電率3.06/25℃)240ミリモル、開始剤n-ブチルリチウム230ミリモルを存在させ、30℃で1時間、まずスチレン3.04kgを添加して重合し、続いてイソプレン4.96kgを添加し、反応温度が50℃から60℃の間になるように還流冷却により温度制御しながら約1時間半重合した。次いで、カップリング剤としてテトラメトキシシラン25ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行った。こののち、反応混合物に重合停止剤としてメタノールを50ml、酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを40g加えてよく混合し、得られた混合溶液を少量ずつ85?95℃に加熱された温水中に滴下して溶剤を揮発させた。得られたポリマーを粉砕し、85℃で熱風乾燥してブロック共重合体を得た。このブロック共重合体のスチレン含有量は38重量%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は96,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.43であり、4分枝体35.3%、3分枝体4.7%、2分枝体1.2%およびジブロック体58.8%が含まれていた。」

記載事項3-K
「【0047】実施例2?6、比較例1?7
カップリング剤として、テトラメトキシシラン(TMS)に代えてテトラクロロシラン(TCS;実施例2、実施例3および比較例1)またはフェニリトリクロロシラン(PTCS;比較例2)を表1に示す量用い、または、テトラメトキシシラン(TMS)の使用量(カップリング剤/開始剤モル比)を表1に示すように変え(実施例4、実施例5、実施例6および比較例3)た他は、実質的に実施例1と同様な手法によりブロック共重合体組成物を調製し、その特性を評価した。さらに、実施例1と同様にそれぞれのブロック共重合体組成物から接着剤組成物を調製し、接着物性を評価した。結果を表1および表2に示す。」

記載事項3-L
「【0049】
【表1】



記載事項3-M
「【0050】
【表2】



記載事項3-N
「【0051】
注:カップリング剤 TMS:テトラメトキシシラン
TCS:テトラクロルシラン
PTCS:フェニルトリクロルシラン
市販ブロック共重合体組成物 A:クレイトンD1124P(シェル社製)
市販ブロック共重合体組成物 B:ベクター4211(デキサコ社製)
市販ブロック共重合体組成物 C:ベタター4411(デキサコ社製)」

記載事項3-O
「【0052】
【発明の効果】本発明の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体はホットメルト接着剤組成物その他の粘接着剤組成物として有用であって、本発明のブロック共重合体から得られる粘接着剤組成物は低粘度低適用温度を有し、しかも、剥離接着力と剪断接着破壊温度とが良好にバランスされ、且つ高い値を示す。
【0053】本発明のブロック共重合体から調製されるホットメルト接着剤組成物は下記の基準特性を満足する。
150℃溶融粘度:5,000cps以下
剪断接着破壊温度:66℃以上
剥離接着力(対スチール):1,000N/m以上
(対ポリエチレン):500N/m以上」

(4)甲第4号証(国際公開第2014/017380号 )には、以下のことが記載されている。

記載事項4-A
「[請求項1]
成分(a):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、数平均分子量が10,000以上、60,000以下であるブロック共重合体:50質量%以上、90質量%以下と、
成分(b):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、数平均分子量が120,000を超えて、200,000以下であるブロック共重合体:10質量%以上、50質量%以下と、を含み、
前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が25?50質量%であり、15質量%トルエン溶液における粘度が10?40mPa・sであり、
前記成分(a)に対する前記成分(b)の数平均分子量比が2.0?4.0である、
粘接着剤用ブロック共重合体組成物。」

(5)甲第5号証(一般財団法人化学物質評価研究機構による試験報告書)には、以下のことが記載されている。

記載事項5-A




(6)甲第6号証(特許第4436599号公報)には、以下のことが記載されている。

記載事項6-A
「【請求項1】
(I)成分:ブロック共重合体、(II)成分:粘着付与剤及び(III)成分:可塑剤を含んで成るホットメルト接着剤であって、
(I)成分:ブロック共重合体は、スチレン含有率が35?50重量%、スチレン-ブタジエンジブロック含有率が50?75重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が20?40mPa・sである(A)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を、30重量%以上と、(A)以外の(B)他のブロック共重合体を70重量%未満含んで成り、
(B)他のブロック共重合体は、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が40mPa・sを超え、115mPa・s以下の相溶性ブロック共重合体であり、
(I)、(II)、及び(III)成分の総和に対して、(I)成分が17?30重量%、(III)成分が3?25重量%含まれるホットメルト接着剤。」

記載事項6-B
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホットメルト接着剤に関し、詳細には、紙おむつ、衛生ナプキン、ペットシート、病院用ガウン、手術用白衣等の使い捨て製品を構成するポリオレフィンフィルムと、不織布、吸水紙、弾性体等のその他の部材とを接着するために好適なホットメルト接着剤、及びそれを用いた使い捨て製品に関する。」

記載事項6-C
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のホットメルト型粘着組成物と比較して、ホットメルト接着剤の紙おむつの部材への接着性及び保持性の高さ、軟化点の高さ、粘度の低さ、熱安定性の高さから選択される少なくとも一種が改善されたホットメルト接着剤を提供することを目的とする。更に、総合的な性能に優れるホットメルト接着剤を提供することを目的とする。」

記載事項6-D
「【0017】
本発明において、特定の(A)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体が、ホットメルト接着剤のベースポリマーである(I)成分:ブロック共重合体に特定量含まれ、その(I)成分が所定量ホットメルト接着剤に含まれることによって、ホットメルト接着剤の紙おむつ部材への接着性及び保持性、軟化点、粘度、熱安定性から選択される少なくとも一種が改善されたホットメルト接着剤を得ることができ、好ましくは、それらのバランスに優れたホットメルト接着剤が得ることができる。
【0018】
(A)は、特定の化学構造及び性質(即ち、スチレン含有率が35?50重量%、スチレン-ブタジエンジブロック含有率が50?80重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が20?40mPa・s)を有し、好ましくはタック力および保持力(凝集力)の双方のバランスが良いホットメルト接着剤が得られる。更に、ホットメルト接着剤の粘度が低温(例えば、120℃)でも低く成り得るので、低温においても非接触塗布を容易に行うことができる。」

記載事項6-E
「【0022】
従って、本発明において「(I)成分:ブロック共重合体」とは、スチレン含有率が35?50重量%、スチレン-ブタジエンジブロック含有率が50?80重量%、25℃において15重量%トルエン溶液の粘度が20?40mPa・sである(A)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を、30重量%以上含んで成る上述のブロック共重合体を意味する。」

記載事項6-F
「【0024】
「スチレン含有率」とは、(A)に含まれるスチレンブロックの割合をいう。スチレン含有率は、35?50重量%であることが好ましく、35?45重量%であることがより好ましく、特に40?45重量%であることが好ましい。スチレン含有率が35重量%未満の場合、ホットメルト接着剤自体の保持力(凝集力)が減少し得、50重量%を超える場合、ホットメルト接着剤自体のタック力が減少し得る。
【0025】
「ジブロック含有率」とは、(A)におけるスチレン-ブタジエンジブロック共重合体(以下「S-B」ともいう)の割合をいう。ジブロック含有率は、50?80重量%であることが好ましく、55?75重量%であることがより好ましく、特に、60?70重量%であることが好ましい。ジブロック含有率が、50重量%未満の場合タック力が劣ることもあり得、特に高温においてせん断方向の付加が加わった場合、タック力が劣ることによってホットメルト接着剤とおむつの基材との界面で剥がれ易く成り得る。その結果、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルムに対する保持力が低いホットメルト接着剤を得ることと成り得る。また、ジブロック含有率が80重量%を超える場合、ホットメルト接着剤の保持力(凝集力)及び高温での接着力が低くなり得る。
【0026】
「15重量%トルエン溶液の25℃での粘度」とは、トルエンを溶媒とする15重量%の濃度の溶液の25℃における粘度をいい、各種粘度計を用いて測定することができるが、例えばブルックフィールドBM型粘度計(スピンドルNo.2)を用いて測定される。(A)の15重量%トルエン溶液の25℃での粘度は、20?40mPa・sであることが好ましく、特に、20?35mPa・sであることがより好ましい。(A)の15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が、20mPa・s未満の場合、(A)の分子量が低く、(A)を生産する際、ポリマーが固まり難く、即ち、ホットメルト接着剤にした場合、軟化点が低く成り得、その生産ラインでのブロッキングや成型後にコールドフローによるブロッキングを生じ得る。15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が、40mPa・sを超える場合、ホットメルト接着剤自体の粘度が高く、塗布しにくく成り得る。特に、低温では、非接触で塗布することが困難と成り得る。」

記載事項6-G
「【0067】
実施例において使用した、(I)?(IV)成分を以下に示す。
(I)成分に含まれる(A)として、(A1)旭化成工業(株)製のアサプレンJT96(商品名)(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、15重量%のトルエン溶液の25℃における粘度:28mPa・s、スチレン含有率:43重量%、ジブロック含有率:63重量%、1,2-ブタジエニルの形態の含有率:約14重量%、メルトフローレイト:約100g/10min)を用いた。」

記載事項6-H
「【0074】
実施例4?6及び比較例1?8のホットメルト接着剤の作製
下記の表1及び表2に示す成分を同表に示す割合で配合し、約150℃で溶融混合して実施例4?6及び比較例1?8のホットメルト接着剤を作製した。」

記載事項6-I
「【0075】
【表1】



記載事項6-J
「【0084】
【表3】



(7)甲第7号証(旭化成株式会社回答書)には、以下のことが記載されている。

「お問い合わせいただきました下記の対象材は、旭化成ケミカルズ株式会社では販売をしておらず、弊社でも販売しておりません。
下記の対象材名は弊社試作サンプル名であり、製品製造施設での製造を行っていないためサンプル供試も致しかねます旨、ご了承のほどよろしくお願いいたします。

対象材:スチレン-ブタジエンブロック共重合体 HJ10、HJ12、HJ13,HJ13-2,HJ14,HJ15」

(8)甲第1号証に記載の発明
甲第1号証には、使い捨て製品構成のためのホットメルト接着剤に関し、式(A-B)_(n)-Y(ここで、Yは多価カップリング剤、Aはポリビニル置換芳香族ブロックを包含し、Bは重合ゴム状中間ブロックを包含し、nは3以上の整数)で示され、Aがポリスチレンブロックを包含し、Bがブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を包含する水素化もしくは非水素化重合ブロックであるラジアルブロック共重合体と、線状A-B-Aブロック共重合体をさらに含み、Aがポリスチレンブロックを包含し、Bがブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を含む重合ゴム状中間ブロックを包含する、接着剤が記載されているといえる(記載事項1-A、1-B、1-C)。
したがって、甲第1号証には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「ポリスチレンブロック、及び、ブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を包含する水素化もしくは非水素化重合ブロックとの共重合体を含むホットメルト接着剤であって、
当該共重合体が以下の(1)成分及び(2)成分を含有するものである、ホットメルト接着剤。
(1)式(A-B)_(n)-Y(ここで、Yは多価カップリング剤、Aはポリビニル置換芳香族ブロックを包含し、Bは重合ゴム状中間ブロックを包含し、nは3以上の整数)で示され、Aがポリスチレンブロックを包含し、Bがブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を包含する水素化もしくは非水素化重合ブロックであるラジアルブロック共重合体、及び
(2)線状A-B-Aブロック共重合体(ここで、Aがポリスチレンブロックを包含し、Bがブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を含む重合ゴム状中間ブロックを包含する)。」

5 対比・判断

(1)申立理由1(特許法第29条第2項)について

ア 本件発明1と引用発明との対比
引用発明の「ポリスチレンブロック、及び、ブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を包含する水素化もしくは非水素化重合ブロックとの共重合体を含有するホットメルト接着剤」は、「ポリスチレンブロック」が「ビニル系芳香族炭化水素」のブロックであり、「ブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を包含する水素化もしくは非水素化重合ブロック」が「共役ジエン化合物」のブロックであり、これらの共重合体が熱可塑性であることは当業者に自明であるから、本件発明1の「(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体を含有するホットメルト接着剤」に相当する。
また、引用発明の「当該共重合体が以下の(1)成分及び(2)成分含有するものであるホットメルト接着剤」は、本件発明1の「(A)熱可塑性ブロック共重合体が以下の(A1)成分および(A2)成分を含有するものである、ホットメルト接着剤」に相当し、引用発明の「式(A-B)_(n)-Y(ここで、Yは多価カップリング剤、Aはポリビニル置換芳香族ブロックを包含し、Bは重合ゴム状中間ブロックを包含し、nは3以上の整数)で示され、Aがポリスチレンブロックを包含し、Bがブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を包含する水素化もしくは非水素化重合ブロックであるラジアルブロック共重合体」は、本件発明1の「(A1)ラジアル型スチレンブロック共重合体」に相当し、引用発明の「(2)線状A-B-Aブロック共重合体(ここで、Aがポリスチレンブロックを包含し、Bがブタジエン、イソプレンもしくはそれらの混合物を含む重合ゴム状中間ブロックを包含する。)」は、本件発明1の「(A2)スチレンブロック共重合体」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違していると認められる。

(一致点)
「(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体を含有するホットメルト接着剤であって、
(A)熱可塑性ブロック共重合体が以下の(A1)成分および(A2)成分を含有するものである、ホットメルト接着剤:
(A1)ラジアル型スチレンブロック共重合体;及び
(A2)スチレンブロック共重合体。」

(相違点1)
(A1)ラジアル型スチレンブロック共重合体について、本件発明1は「スチレン含有率が35?45重量%、ジブロック含有率が50?90重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が250mPa・s以下である」のに対して、引用発明は「スチレン含有率」、「ジブロック含有率」及び「25重量%トルエン溶液の25℃での粘度」が特定されていない点。

(相違点2)
(A2)スチレンブロック共重合体について、本件発明1は「スチレン含有率が30重量%未満、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が250mPa・sより高い」のに対して、引用発明は、「スチレン含有率」及び「25重量%トルエン溶液の25℃での粘度」が特定されていない点。

イ 判断
(ア)引用発明と甲第3号証を組み合わせる場合について
(ア-1)相違点2について
事案に鑑みて、まず相違点2について検討する。
甲第1号証には、表7に具体的な上記ラジアルブロック共重合体として「クレイトン1184」(「スチレン含有率」、「ジブロック含有率」及び「25重量%トルエン溶液の25℃での粘度」等の物性は不明)と、他のブロック共重合体として「クレイトン1117」とを含む接着剤が、従来技術よりも改善された特性を持つ接着剤となることが記載されている(記載事項1-K、1-L)。
当該「クレイトン1117」は、甲第2号証(クレイトン1117の物性データシート)によれば、スチレンとイソプレンの直鎖トリブロック共重合体であり、スチレン含有率が15.6?19.2重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が350?590mPa・sを示すものである(記載事項2-A)と認められる。
そうすると、甲第1号証には、(A2)スチレンブロック共重合体として、スチレンとイソプレンの直鎖トリブロック共重合体であり、スチレン含有率が15.6?19.2重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が350?590mPa・sである「クレイトン1117」が記載されており、当該「クレイトン1117」は、本件発明1における「(A2)スチレン含有率が30重量%未満、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が250mPa・sより高いスチレンブロック共重合体。」に相当するといえるから、相違点2は実質的な相違点ではない。

(ア-2)相違点1について
甲第3号証には、「下記一般式(I):
(A-B)_(n)X (I)
(式中、Aは芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであり、Xは4官能性またはそれ以上の多官能性カップリング剤の残基であり、nは4以上の整数である)で表わされる4以上の分枝をもつ分枝体成分を5?50重量%含有し、
下記一般式(II):
A′-B (II)
(式中、A′はAと同一または異なる芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであるで表わされるジブロック体成分を50?95重量%含有してなる重量平均分子量(Mw)が10,000?500,000の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」(記載事項3-A)が記載されて、当該芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体が、「ホットメルト接着剤に要求される種々の特性、特に、低粘度低適用温度を有し、しかも、剥離接着力と剪断接着破壊温度とが良好にバランスされ、且つ高い値を示すホットメルト接着剤などの粘接着剤として有用なブロック共重合体」の提供にあること、「本発明のブロック共重合体の第一成分である前記式(I)で表わされる分枝体成分は、芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAと、重合活性末端を有する共役ジエン系単量体の重合体ブロックBとよりなるA-Bブロック共重合体を、4官能性またはより多官能性のカップリング剤によりカップリングさせた構造を有する4以上の分枝を有するブロック共重合体である」こと、「分枝体成分における芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAの割合は、格別限定されるものではないが、本発明のブロック共重合体全体中の芳香族ビニル単量体の重合体ブロックの含有量が10?50重量%、好ましくは25?50重量%、より好ましくは35?45重量%となることが望ましく、そのためには、分枝体成分中における芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAの含有量も10?50重量%、好ましくは25?50重量%、より好ましくは35?45重量%程度であることが望ましい。芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAの相対的割合が過小であると剪断接着破壊温度が低下し、また、この割合が過大であると剥離接着力が低下する」こと(記載事項3-C,3-D)が、それぞれ記載されている。
そうすると、甲第3号証に記載された「芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」は、引用発明とは接着力の改善されたホットメルト接着剤の提供という点で課題が共通しており、さらに、「スチレン含有率が35?45重量%、ジブロック含有率が50?95重量%」であることも記載されている。
しかし、「25重量%トルエン溶液の25℃での粘度」を含め粘度に関する記載は一切記載されていない。
また、一般に、高分子(共重合体)における粘度は、共重合体の重量平均分子量や分子量分布などと関係があることが当業者に知られており、甲第3号証に「芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」の重量平均分子量、分子量分布等が記載されているが、これらの記載があるからといって「25重量%トルエン溶液の25℃での粘度」を予測することは、当業者といえども困難といわざるを得ず、ましてや、「25重量%トルエン溶液の25℃での粘度」を250mPa・s以下と限定することに想到することは困難といわざるを得ない。
そうすると、相違点1は、実質的な相違点であり、引用発明及び甲第3号証から当業者が容易に発明できたものとはいえない。

なお、申立理由1の中で、申立人は、「25重量%トルエン溶液の25℃での粘度」について、甲第4号証及び甲第5号証を提示して、甲第4号証に記載の「粘接着剤用ブロック共重合体組成物」が「15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が10?40mPa・sであ」ること(記載事項4-A)から、甲第3号証に記載された「芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」も同程度の粘度であること、また、甲第5号証で甲第4号証の実施例に相当する「粘接着剤用ブロック共重合体組成物」の粘度を「15重量%トルエン溶液の25℃」と「25重量%トルエン溶液の25℃」の二つの条件で測定し、甲第4号証の「15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が10?40mPa・s」が本件発明の範囲に含まれることを示している。
しかし、甲第4号証は、その公開日が2014年1月30日であり、本願出願日の平成25年(2013年)4月23日より後に公開された技術的事項であること、及び甲第5号証の試験報告書の結果は、甲第4号証の実施例に基づくものであることから、いずれも、本件発明の出願時の技術常識を示すものとしては採用できない。
また、本件発明の出願時に、甲第4号証及び甲第5号証に相当する技術常識が存在したことを証明するに足りる証拠も認められない。

(ア-3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の27頁?30頁において、甲第3号証の比較例2の「ブロック共重合体」は、粘着接着用として把握できるものであることを主張するが、そもそも当該「ブロック共重合体」は、比較例であり、甲第3号証に記載された実施例よりも剥離接着力が劣るものであることから、当該「ブロック共重合体」を積極的に採用する動機付けがあると認めることができない。
また、甲第4号証の記載から甲第3号証に記載の「芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」が重複する物性値を有している蓋然性が高い旨主張しているが、この点は、上記(ア-2)で検討したとおりである。
よって、申立人の主張は、採用できない。

(イ)引用発明に甲第6号証を組み合わせる場合について
(イ-1)相違点2について
事案に鑑みて、まず相違点2について検討する。
この点は、上記(ア-1)ですでに検討したとおりであり、相違点2は実質的な相違点ではない。

(イ-2)相違点1について
甲第6号証には、「スチレン含有率が35?50重量%、スチレン-ブタジエンジブロック含有率が50?75重量%、15重量%トルエン溶液の25℃での粘度が20?40mPa・sである(A)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体」が記載されている(記載事項6-A)。
甲第6号証の「スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体」の物性として、「スチレン含有率」が「35?45重量%」、「ジブロック含有率」が「50?90重量%」、「15重量%トルエン溶液の25℃での粘度」が「20?40mPa・sである」ものは、確かに、本件発明1の「(A1)ラジアル型スチレンブロック共重合体」の物性と類似の範囲であるいえる。
しかし、甲第6号証の当該「スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体」は、ラジアル型のスチレンブロック共重合体ではなく、いわゆる、リニア型スチレンブロック共重合体に含まれるものと認められる。
本件発明1も、本件明細書【0054】?【0055】によれば、「(A1)ラジアル型スチレンブロック共重合体」及び「(A2)スチレンブロック共重合体」に該当しない、その他のスチレンブロック共重合体を含むことが許容されており、甲第6号証の「スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体」は、本件発明1におけるその他のスチレンブロック共重合体に含まれるものと認められるが、甲第6号証に記載された当該「スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体」の物性が本願発明1の「(A1)ラジアル型スチレンブロック共重合体」の物性と重複する範囲だとしても、「(A1)ラジアル型スチレンブロック共重合体」の物性を、ラジアル型でない甲第6号証の「スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体」と組み合わせる動機付けはないといわざるをえない。
そうすると、相違点1は、実質的な相違点であり、引用発明及び甲第6号証から当業者が容易に発明できたものとはいえない。

また、甲第4号証及び甲第5号証については、上記(ア-2)で検討したとおりである。

ウ 本件発明2?4と引用発明との対比・判断

本件発明2?3は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであり、本件発明4は、それらを引用する使い捨て製品に関するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2?4は、いずれも引用発明、甲第3号証に記載の事項、及び、周知の技術事項(甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証)に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明2?4は、いずれも引用発明、甲第6号証に記載の事項、及び、周知の技術事項(甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証)に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)申立理由2(特許法第36条第4項第1号)について

申立人は、申立書(第34頁)において、本件発明1におけるA1成分である「スチレン含有率が35?45重量%、ジブロック含有率が50?90重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が250mPa・s以下であるラジアル型スチレンブロック共重合体」に関し、実施例で用いられたHJ13、HJ13-2及びHJ10は、甲第7号証によれば、試作サンプルであって、製造・販売を行っていないため、これらの製造法が不明であるから、出願時の技術常識を踏まえても、実施をすることができない旨主張している。
しかしながら、本件発明1で特定されたA1成分は、物性が明確であり、全く未知のものとはいえず、実際に、例えば、甲第3号証において、製造方法や、A1成分と類似の物性を有すること等が記載されており、当業者であれば、これらの技術的事項に基づくことにより、本件発明を実施することができないとまではいえないと認められる。
また、従来技術に基づいても、当業者が実施できないと認められない以上、単に、一般に販売されておらず、簡単に入手できないことをもって、当該発明が実施できないともいえない。
したがって、上記申立人の主張は採用できず、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとはいえない。

(3)申立理由3(特許法第36条第6項第1号)について

申立人は、申立書(第35頁)において、本件発明1におけるA1成分である「スチレン含有率が35?45重量%、ジブロック含有率が50?90重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度が250mPa・s以下であるラジアル型スチレンブロック共重合体」に関し、実施例で用いられたHJ13、HJ13-2及びHJ10は、甲第7号証によれば、試作サンプルであって、製造・販売を行っていないため、これらの製造法が不明であるから、本件特許明細書は、本件特許発明の目的、すなわち、低温塗工が可能で、ポリオレフィン基材への接着性に優れ、かつ耐クリープ性に優れたホットメルト接着剤を得るという目的を達成できると当業者が認識できる程度に、具体例を開示しているとはいえず、いかに当業者であっても、本件特許の出願時の技術常識に照らして、目的を達成できる本件特許発明の範囲まで、本件特許明細書に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨主張している。

しかしながら、本件明細書には、「スチレン含有率」、「ジブロック含有率」、「25℃における25重量%トルエン溶液の粘度」のそれぞれについて、【0041】、【0043】、【0046】に、数値限定の意義が記載され、特定された数値範囲であれば、上記目的が達成できることが開示されているといえる。
また、実施例においても、「スチレン含有率」については38?39重量%、「ジブロック含有率」については、60?80重量%、「25℃における25重量%トルエン溶液の粘度粘度」については、165?189mPa・sである、3分岐型スチレンブロック共重合体が記載されている。
そして、実施例で示されたそれぞれの数値範囲から、本件発明1で特定されたそれぞれの範囲まで拡張できないとする理由はない。
したがって、本件発明1におけるA1成分は、本件明細書に記載されているといえるから、申立人の上記主張は採用できない。

6 むすび

以上のとおりであるから、本件発明1?4は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえず、また、同法第36条第4項第1号及び第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものともいえず、同法第113条第2号または第4号に該当するものではないから、申立書に記載された申立理由1?3によっては、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-07-28 
出願番号 特願2013-90510(P2013-90510)
審決分類 P 1 651・ 357- Y (C09J)
P 1 651・ 121- Y (C09J)
P 1 651・ 536- Y (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松原 宜史  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 天野 宏樹
井上 能宏
登録日 2016-09-09 
登録番号 特許第6001493号(P6001493)
権利者 ヘンケルジャパン株式会社
発明の名称 ホットメルト接着剤  
代理人 山田 卓二  
代理人 鮫島 睦  
代理人 西下 正石  
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