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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 D02G |
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管理番号 | 1331252 |
異議申立番号 | 異議2017-700544 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-05-30 |
確定日 | 2017-08-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6037716号発明「抗スナッグ糸及びそれを用いた布帛」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6037716号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第6037716号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成24年8月17日(優先権主張 平成23年8月19日)に出願され、平成28年11月11日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められ、その請求項1には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 抗スナッグ糸を布帛表面側に70wt%以上使用した編物又は織物である布帛であって、該布帛のJIS-L1058(D-3法)に準ずる15時間の試験によるスナッグ性は、3級以上であり、該布帛が編地の場合、JIS-L1018 8.33.1による、布帛が織物の場合、JIS-L1096 8.27.1A法による通気性は、80cc/cm^(2)/s以上であり、該布帛より抜き出した抗スナッグ糸は、単糸クリンプ数が75個/2.54cm以上である捲縮糸を含み、かつ、該抗スナッグ糸の嵩高係数は、0.01?0.06である前記布帛。」 3.申立理由の概要 特許異議申立人は、以下の甲第1?10号証を提出し、請求項1に係る発明は、1)甲第1号証記載の発明及び周知技術(例えば甲第3?10号証に記載)に基いて、あるいは、2)甲第2号証記載の発明及び周知技術(例えば甲第3?10号証に記載)に基いて、当業者が容易に想到することができたものである旨を主張している。 甲第1号証:特開2001-64838号公報 甲第2号証:国際公開第2008/001920号 甲第3号証:特開2005-105420号公報 甲第4号証:登録実用新案第3127007号公報 甲第5号証:特開平8-246279号公報 甲第6号証:特開2002-249944号公報 甲第7号証:特開2002-155442号公報 甲第8号証:特開2002-30535号公報 甲第9号証:特開平7-229026号公報 甲第10号証:特開2002-61038号公報 4.甲第1、2号証記載の発明 (1)甲第1号証 甲第1号証には、以下の甲1発明が記載されている(段落【0001】、【0013】、【0015】?【0016】、【0023】?【0024】)。 「スパンライク加工糸のみを使用して編み立てた布帛であって、該布帛のJIS-1058、スナッグ試験法(D-3法、フレイング法)に準拠したスナッギング性は、3-4級である前記布帛。」 (2)甲第2号証 甲第2号証には、以下の甲2発明が記載されている(請求項1、第1頁第5?7行、第7頁第12?14行、第8頁第11?15行、)。 「複合糸が編地の全重量に対して70重量%以上含まれている編地であって、該編地のJISL 1058 D3法のカナノコにより15時間テストした抗スナッギング性は、3級以上である前記編地。」 5.当審の判断 (1)甲1発明に基づく進歩性について 本件発明と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 相違点1.本件発明は、布帛より抜き出した抗スナッグ糸が、単糸クリンプ数が75個/2.54cm以上である捲縮糸を含み、かつ、該抗スナッグ糸の嵩高係数が0.01?0.06であるのに対して、甲1発明は単糸クリンプ数、嵩高係数について特定がない点 相違点2.本件発明は、布帛が編地の場合、JIS-L1018 8.33.1による、布帛が織物の場合、JIS-L1096 8.27.1A法による通気性は、80cc/cm^(2)/s以上であるのに対して、甲1発明は通気性について特定がない点 相違点1について検討する。 布帛に用いる抗スナッグ糸について、布帛より抜き出した抗スナッグ糸の単糸クリンプ数と嵩高係数を、それぞれ相違点1に係る数値範囲に設定することは、甲第3?10号証のいずれにも記載されておらず、示唆する記載もない。また、周知技術ともいえない。 そして、本件発明は、上記相違点1に係る構成を備えることで、スナッグの発生を起こりにくくするものである(本件特許明細書の段落【0015】?【0016】)。 したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明及び甲第3?10号証に示される従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 特許異議申立人は、本件発明が、単糸クリンプ数および嵩高係数が所定の範囲内であることにより、3級以上のスナッグ性を達成しており、一方、甲1発明は4級のスナッギング性を示すから、単糸クリンプ数および嵩高係数が所定の範囲内である旨を主張する。しかし、3級以上のスナッグ性は、単糸クリンプ数および嵩高係数のみにより決まるものではなく、他の要因との連関によるものであることは明らかであるから、4級のスナッギング性を示すことをもって、直ちに、甲1発明のスパンライク糸が、本件の単糸クリンプ数および嵩高係数を備えるものとはいえない。 また、特許異議申立人は、甲第5号証には「通常の仮撚加工糸」に比べて細かい捲縮形態を示す仮撚加工糸が記載され、「通常の仮撚加工糸」の単糸クリンプ数は76個/2.54cm程度以下であるから、甲第5号証の仮撚加工糸の単糸クリンプ数は75個/2.54cm以上であると主張する。そして、「通常の仮撚加工糸」の単糸クリンプ数は76個/2.54cm程度以下であることの根拠として、甲第9号証(捲縮加工糸を構成する各フィラメントの捲縮数を約10?30個/インチにした:段落【0030】)、甲第10号証(仮撚加工糸のけん縮数を4?30個/cm(10?76.2個/2.54cm)とした:【請求項8】)を挙げるが、甲第5号証でいう「通常の仮撚加工糸」が甲第9?10号証の仮撚加工糸であるとする根拠はなく、仮に甲第9号証の仮撚加工糸だとしても甲第5号証は捲縮数が31個/インチ以上というにとどまるのだから、これをもってただちに甲第5号証の仮撚加工糸の単糸クリンプ数が75個/2.54cm以上であるということにはならない。しかも、嵩高係数については何ら記載されていない。 さらに、特許異議申立人は、甲第6?8号証に記載された被覆弾性糸は、本件発明と同様の製造方法によって作製されるから、これらの被覆弾性糸の単糸クリンプ数および嵩高係数は本件発明と同様である旨を主張する。しかし、製造方法の共通点は、予め仮撚加工を施した仮撚捲縮糸をさらに仮撚加工する点が共通するにとどまり、仮撚数などの具体的な仮撚条件が共通するものではないから、仮撚条件に依存する単糸クリンプ数や嵩高係数が共通するとまではいえない。 よって、特許異議申立人の上記主張は、いずれも採用することができない。 (2)甲2発明に基づく進歩性について 本件発明と甲2発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 相違点3.本件発明は、布帛より抜き出した抗スナッグ糸が、単糸クリンプ数が75個/2.54cm以上である捲縮糸を含み、かつ、該抗スナッグ糸の嵩高係数が0.01?0.06であるのに対して、甲2発明は単糸クリンプ数、嵩高係数について特定がない点 相違点4.本件発明は、布帛が編地の場合、JIS-L1018 8.33.1による、布帛が織物の場合、JIS-L1096 8.27.1A法による通気性は、80cc/cm^(2)/s以上であるのに対して、甲2発明は通気性について特定がない点 そして、相違点3は、5.(1)の相違点1と同じ相違点であるから、同様に当業者が容易に想到し得た事項とはいえないから、相違点4について検討するまでもなく、本件発明は、甲2発明及び甲第3?10号証に示される従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6.むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-08-03 |
出願番号 | 特願2012-180992(P2012-180992) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(D02G)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 斎藤 克也 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
小野田 達志 井上 茂夫 |
登録日 | 2016-11-11 |
登録番号 | 特許第6037716号(P6037716) |
権利者 | 旭化成株式会社 |
発明の名称 | 抗スナッグ糸及びそれを用いた布帛 |
代理人 | 三間 俊介 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 中村 和広 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 齋藤 都子 |
代理人 | 古賀 哲次 |