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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
管理番号 1331253
異議申立番号 異議2016-700700  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-08 
確定日 2017-07-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第5857237号発明「太陽電池セル及び太陽電池モジュール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5857237号の請求項1?5、8、9に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5857237号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成27年12月25日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 柴田 基(以下「申立人1」という。)及び特許異議申立人 木暮 隆一郎(以下「申立人2」という。)より請求項1、2、3、4、5、8及び9に対して特許異議の申立てがされ、平成28年10月17日付けで取消理由が通知され、同年12月26日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年1月27日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年4月3日に意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正」と呼ぶ。)がされ、同年4月28日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年6月2日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正は、特許第5857237号の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし9からなる一群の請求項に係り平成29年4月3日付け訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その訂正の内容のうち、「訂正事項2」は以下のとおりである。

・「訂正事項2」
特許請求の範囲の請求項1において、特許請求の範囲の減縮を目的として、「前記斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない、」と記載されているのを、「前記斜辺部は前記バスバー部と直接接続されておらず、前記端部において、前記透明導電膜は、前記面取り状角部の端辺に沿って形成されており、かつ、前記一対の斜辺部よりも外側に至る様に設けられており、さらに、前記一対の斜辺部に沿う前記透明導電膜の端面と前記一対の斜辺部との距離は、前記上底部および前記下底部を含み前記第2の方向に沿って延びる前記台形状電極部の複数の電極部のうち前記第1の方向に隣り合う電極部の距離の半分以下である、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4、8、9も同様に訂正する)。

2 訂正の適否の検討
(1)訂正請求書において、特許権者は、訂正事項2について下記のとおり説明する(平成29年4月3日付け訂正請求書8頁15行?10頁18行)。また、あわせて、図4及び5について下記のもの(同訂正請求書11頁?12頁)を示している(以下それぞれを「訂正請求書の図4」ないし「訂正請求書の図5」という。)。
ア 「訂正事項2は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
この透明導電膜に係る説明として、図1、図2、図5、および段落【0016】には、『前記端部において、前記透明導電膜は、前記面取り状角部の端辺に沿って形成されており、かつ、前記一対の斜辺部よりも外側に至る様に設けられている(例えば、図1において、第1の端部20a2において、透明導電膜25aは、面取り状角部20A及び20Bの端辺に沿って形成されており、かつ、一対の斜辺部32a3および32a4よりも外側に至る様に設けられている)』ことが明示されており、当該透明導電膜を用いる作用効果も、上記段落に記載されたとおりのものである。
また、この透明導電膜の端面と一対の斜辺部との配置関係については、願書に添付した、図4、図5、および明細書段落【0032】?【0034】に説明されている。
まず、明細書段落【0033】には、『例えば、端部においても、台形状電極部が設けられておらず、複数の線状電極部131が設けられている場合は、受光面120aのうち、y方向において線状電極部131と近接していない非近接領域120a21において生じたキャリア100が線状電極部131により収集されるまでに移動しなければならない距離が長い。このため、非近接領域120a21における集電抵抗が大きくなる。その結果、光電変換効率が低くなる。』と記載されている。これを、下記に示す図4および図4の拡大図を用いて説明すると、隣り合う線状電極部131に挟まれた領域Cでは、キャリアは移動距離L1(図4ご参照)またはL2(図4ご参照)で線状電極部131に到達する。また、領域A(図4拡大図)では、キャリアは移動距離L3(図4ご参照)で線状電極部131に到達する。つまり、当該キャリアの最大移動距離は、図4に示された領域AおよびCにおけるキャリアの最大移動経路(図4の矢印)から、隣り合う線状電極部131の間隔の1/2(L)であることが理解される。
一方、y方向において線状電極部131と近接していない非近接領域120a21、つまり、透明導電膜の端面と線状電極部131の一端との間の領域B(図4拡大図ご参照)において生じたキャリアは、線状電極部131により収集されるまでに移動しなければならない距離はL4となり、図4に記載された非近接領域120a21におけるキャリアの最大移動経路(図4の矢印)から、L1、L2およびL3と比べて長くなる。このため、領域Bにおける集電抵抗が大きくなり、光電変換効率が低くなる。一方、段落【0034】には、『領域20a21において生じたキャリア35は、斜辺部32a3、32a4、32b3、32b4により収集される。このため、キャリア35が電極21aにより収集されるまでに移動しなければならない距離が短い。よって、領域20a21における集電抵抗を低減することができる。従って、光電変換効率を改善することができる。』と記載されている。これを、下記に示す図5および図5拡大図を用いて説明すると、領域20a21、つまり、上底部32a1の右端および線状電極部32a5の右端と透明電極膜の端面との間の領域BおよびA(図5拡大図)において生じたキャリアは、斜辺部32a4により収集される。このため、当該キャリアの移動距離L5(図5の矢印)は、斜辺部32a4がない場合と比較して短くなり、上底部32a1と線状電極部32a5との間隔の1/2(図5拡大図のLに相当)以下とできることが理解される。つまり、図5および段落【0034】から、斜辺部32a4がある場合には、領域Bにおけるキャリアの移動距離は、y軸方向に隣り合う電極部の間隔の1/2(=L)以下とできることが理解される。この関係は、斜辺部32a4と透明導電膜の端面との間に発生したキャリアについて成立するものである。
なお、透明電極膜の外側領域における移動距離による集電抵抗の影響は、透明電極膜の内側領域と比べるとほとんど問題とならない。これは、明細書段落【0016】の『透明導電膜25a、25bを設けることにより、生成したキャリアが再結合する前に効率的に電極21a、21bに収集される。従って、より改善された光電変換効率を実現することができる。』との記載から自明である。
以上より、『さらに、前記一対の斜辺部に沿う前記透明導電膜の端面と前記一対の斜辺部との距離は、前記上底部および前記下底部を含み前記第2の方向に沿って延びる`前記台形状電極部の複数の電極部のうち前記第1の方向に隣り合う電極部の距離の半分以下である』ことが導き出される。
よって、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。」

イ 訂正請求書の図4及び訂正請求書の図5は次のものである。




(2)本件明細書及び図面の記載
ア 本件の願書に添付した明細書及び図面(以下、あわせて「本件明細書等」という。)には、図4及び5に関して次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る太陽電池セルの受光面の略図的平面図である。
【図2】第1の実施形態における太陽電池セルの裏面の略図的平面図である。
【図3】図1の線III-IIIに示す部分の略図的断面図である。
【図4】第1の比較例における太陽電池セルの受光面の一部分を拡大した模式的拡大平面図である。
【図5】第1の実施形態における太陽電池セルの受光面の一部分Vを拡大した模式的拡大平面図である。
【図6】第1の変形例に係る太陽電池セルの受光面の略図的平面図である。
【図7】第2の変形例に係る太陽電池セルの受光面の略図的平面図である。
【図8】第2の実施形態に係る太陽電池セルの受光面の略図的平面図である。
【図9】第2の比較例における太陽電池セルの受光面の一部分を拡大した模式的拡大平面図である。
【図10】第2の実施形態における太陽電池セルの受光面の一部分を拡大した模式的拡大平面図である。
【図11】第3の変形例に係る太陽電池セルの受光面の略図的平面図である。
【図12】第3の実施形態に係る太陽電池モジュールの略図的断面図である。」

(イ)「【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る太陽電池セルの受光面の略図的平面図である。・・・
【0016】
受光面20aの上には、面状の透明導電膜(TCO:Transparent Conductive Oxide)25aが設けられている。受光面20aの端縁部を除いた部分は、この透明導電膜25aにより覆われている。同様に、裏面20bの上には、面状の透明導電膜25bが設けられている。裏面20bの端縁部を除いた部分は、この透明導電膜25bにより覆われている。これら透明導電膜25a、25bは、下記の電極21a、21bによる集電を補助する機能を有している。透明導電膜25a、25bを設けることにより、生成したキャリアが再結合する前に効率的に電極21a、21bに収集される。従って、より改善された光電変換効率を実現することができる。
【0017】
なお、透明導電膜25a、25bは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などにより形成することができる。透明導電膜25a、25bの厚みは、例えば、50nm?150nm度とすることができる。
【0018】
受光面20aの上には、電極21aが配されている。詳細には、この電極21aは、受光面20aの上に設けられた透明導電膜25aの上に配されている。一方、裏面20bの上には、電極21bが配されている。詳細には、この電極21bは、裏面20bの上に設けられた透明導電膜25bの上に配されている。・・・
【0032】
ところで、例えば、台形状電極部を設けずに、第1及び第2の端部の上にも複数の線状電極部を形成することも考えられる。すなわち、電極を複数の線状電極部のみ、または複数の線状電極部及びバスバー部により構成することも考えられる。しかしながら、その場合は、光電変換効率の面取り状角部における集電抵抗が高くなる。従って、光電変換効率が低くなる。以下、この理由について、図4を参照しながら説明する。
【0033】
例えば、端部においても、台形状電極部が設けられておらず、複数の線状電極部131が設けられている場合は、受光面120aのうち、y方向において線状電極部131と近接していない非近接領域120a21において生じたキャリア100が線状電極部131により収集されるまでに移動しなければならない距離が長い。このため、非近接領域120a21における集電抵抗が大きくなる。その結果、光電変換効率が低くなる。
【0034】
それに対して、本実施形態では、端部20a2,20a3に、台形状電極部32a、32bが設けられている。台形状電極部32a、32bは、斜辺部32a3,32a4,32b3,32b4を含む。そして、斜辺部32a3,32a4,32b3,32b4は、面取り状角部20A?20Dの端辺に沿って延びている。従って、図5に示すように、領域20a21において生じたキャリア35は、斜辺部32a3,32a4,32b3,32b4により収集される。このため、キャリア35が電極21aにより収集されるまでに移動しなければならない距離が短い。よって、領域20a21における集電抵抗を低減することができる。従って、光電変換効率を改善することができる。」

(ウ)図1、4及び5は次のものである(以下それぞれを「本件特許の図1」、「本件特許の図4」ないし「本件特許の図5」という。)。




イ 本件明細書等には、「透明導電膜」と「線状電極部」に関して次の記載がある。
「【0043】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る太陽電池セルの受光面の略図的平面図である。
【0044】
上記第1の実施形態では、複数の線状電極部31の全体が透明導電膜25aの上に位置しており、線状電極部31の端部が、透明導電膜25aの端辺に至っていない例について説明した。
【0045】
それに対して、本実施形態では、線状電極部31の端部は、透明導電膜25aの端辺に至っている。具体的には、線状電極部31の端部は、光電変換部20の端辺にまで至っている。このため、より改善された光電変換効率を得ることができる。以下、この理由について、図9及び図10を参照して説明する。
【0046】
図9に示すように、線状電極部31の端部が透明導電膜25aの端辺に至っていない場合は、透明導電膜25aの端縁部25a1で生成したキャリアが線状電極部31により収集されるまでに移動しなければならない距離が長くなる。このため、端縁部25a1における集電抵抗が高くなる。その結果、光電変換効率が低くなる傾向にある。
【0047】
それに対して、図10にも示すように、線状電極部31の端部が透明導電膜25aの端辺に至っている場合は、端縁部25a1で生成したキャリアが線状電極部31により収集されるまでに移動しなければならない距離が短くなる。このため、端縁部25a1における集電抵抗を低くすることができる。その結果、光電変換効率をさらに改善することができる。
【0048】
具体的に、本実施形態の太陽電池セルを作製し、光電変換効率を測定した結果、線状電極部31の端部が透明導電膜25aの端辺に至っている第2の実施形態の太陽電池セルの方が、線状電極部31の端部が透明導電膜25aの端辺に至っていない第1の実施形態の太陽電池セル10よりも光電変換効率が約1%高くなることが確認された。
【0049】
(第3の変形例)
図11は、第3の変形例に係る太陽電池セルの受光面の略図的平面図である。図11に示すように、電極21aは、上底部32a1、32b1、下底部32a2,32b2及び線状電極部32a5,32b5のそれぞれの端部から、x方向に沿って延び、透明導電膜25aの端部にまで至る線状の電極部32a6?32a11、32b6?32b11をさらに備えていてもよい。この構成によれば、面取り状角部20A?20Dにおける集電抵抗をより低減できる。その結果、より改善された光電変換効率を得ることができる。」

(3)判断
ア 上記「(2)」「ア」「(ア)」によれば、本件明細書等の図4及び5は、第1の比較例ないし第1の実施形態における太陽電池セルの受光面の一部分を拡大した模式的拡大平面図とされるものであって、「模式的な」図面である。

イ そして、上記「(2)」「ア」「(イ)」(第1の実施形態)によれば、当該模式的な図面とされる本件明細書等の図4及び5を用いて、「台形状電極部が設けられておらず、複数の線状電極部131が設けられている場合」(本件特許の図4)は、「受光面120aのうち、y方向において線状電極部131と近接していない非近接領域120a21において生じたキャリア100が線状電極部131により収集されるまでに移動しなければならない距離が長い」こと、及び、「斜辺部32a3,32a4,32b3,32b4は、面取り状角部20A?20Dの端辺に沿って延びている」(本件特許の図5)場合は、「領域20a21において生じたキャリア35は、斜辺部32a3,32a4,32b3,32b4により収集される。このため、キャリア35が電極21aにより収集されるまでに移動しなければならない距離が短い」こと、つまり、キャリアが電極により収集されるまでに移動しなければならない距離の長短を説明するにとどまる。
よって、図4及び5は、具体的な距離の大きさまでも示すものとして記載されたものとはいえないから、図4及び5には、「訂正事項2」における「一対の斜辺部に沿う透明導電膜の端面と一対の斜辺部との距離」と「上底部および下底部を含み第2の方向に沿って延びる台形状電極部の複数の電極部のうち第1の方向に隣り合う電極部の距離」の半分のどちらが大きいかについてまで記載されているということはできない。

ウ また、当該第1の実施形態(上記「(2)」「ア」「(イ)」)には、「透明導電膜」と「電極」に関して、「これら透明導電膜25a、25bは、下記の電極21a、21bによる集電を補助する機能を有している。透明導電膜25a、25bを設けることにより、生成したキャリアが再結合する前に効率的に電極21a、21bに収集される。」(段落【0016】)及び「詳細には、この電極21aは、受光面20aの上に設けられた透明導電膜25aの上に配されている。一方、裏面20bの上には、電極21bが配されている。詳細には、この電極21bは、裏面20bの上に設けられた透明導電膜25bの上に配されている。」(段落【0018】)と記載されるにとどまり、「台形状電極部の複数の電極部のうち第1の方向に隣り合う電極部の距離」との関係に係る記載や示唆はない。

エ そして、「透明導電膜」と「線状電極部」に関して、上記「(2)」「イ」(第2の実施形態)によれば、「第1の実施形態」は、「複数の線状電極部31の全体が透明導電膜25aの上に位置しており、線状電極部31の端部が、透明導電膜25aの端辺に至っていない例」であり、また、「第2の実施形態」は、「線状電極部31の端部は、透明導電膜25aの端辺に至っている」例であるとされ、線状電極部31の端部が、透明導電膜25aの端辺に至っていない、あるいは、至っていると記載されるにとどまり、「一対の斜辺部に沿う透明導電膜の端面と一対の斜辺部との距離」と「台形状電極部の複数の電極部のうち第1の方向に隣り合う電極部の距離」との大きさの関係に係る記載や示唆はない。
しかるに、訂正請求書の図4及び5は、本件明細書等の図4及び5に、特許権者が説明や符号を付加したものであるところ、本件明細書等には、「一対の斜辺部に沿う透明導電膜の端面と一対の斜辺部との距離」と「上底部および下底部を含み第2の方向に沿って延びる台形状電極部の複数の電極部のうち第1の方向に隣り合う電極部の距離」の大きさの関係に係る記載はなく、このような記載を付加してなされた、訂正請求書における上記(1)の説明は本件明細書等に基づいた説明であると認められず、また、当業者から見て本件明細書等の複数の記載から自明な事項であるとする理由も見あたらない。

オ したがって、本件明細書等には、「一対の斜辺部に沿う透明導電膜の端面と一対の斜辺部との距離」が、「上底部および下底部を含み第2の方向に沿って延びる台形状電極部の複数の電極部のうち第1の方向に隣り合う電極部の距離」の半分以下であることを示す記載や示唆はなく、また、当業者から見て、本件明細書等の記載から自明な事項といえるものでもないから、上記訂正事項2は、本件明細書等に記載されたすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえないため、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

(4)平成29年6月2日付け意見書
ア 平成29年6月2日付け意見書の概要は次のとおりである。
「(2)訂正拒絶理由について
審判官殿は、平成29年4月28日付起案の訂正拒絶理由通知書において、本件訂正は、その訂正事項2において、特許法120条の5第9項の規定によって準用する特許法126条第5項の規定に適合しないので、当該訂正を認めることはできない、と判断されました。
本件特許権者は、審判官殿のご判断を踏まえ、取消理由が通知された請求項(特許発明)を維持することを断念いたします。つまり、取消理由が通知されていない請求項6、請求項7、請求項8のうち請求項6および7を引用する発明、ならびに、請求項9のうち請求項6?8を引用する発明を維持することを求めます。
なお、請求項8については、請求項1?7を引用しておりましたが、請求項1?5の削除に伴い、請求項1?5の引用関係を解消し、請求項6および7のみを引用するものとして維持されることを求めるものであります。
また、請求項9については、請求項1?8を引用しておりましたが、請求項1?5の削除に伴い、請求項1?5の引用関係を解消し、請求項6?8のみを引用するものとして維持されることを求めるものであります。」

イ 平成29年6月2日付け意見書について
訂正拒絶理由通知後に訂正請求書の補正を行うことができるが、訂正請求書の補正ができる範囲は限られており、訂正事項の削除や、軽微な瑕疵の補正等の訂正請求書の要旨を変更しない微修正に限られる。
ここで、平成28年10月17日付け取消理由通知及び平成29年1月27日付け取消理由(決定の予告)通知は、いずれも、実質的には、請求項1?5を引用する請求項8、9について審理するものである。
しかしながら、上記の意見書で述べられた「なお、請求項8については、請求項1?7を引用しておりましたが、請求項1?5の削除に伴い、請求項1?5の引用関係を解消し、請求項6および7のみを引用するものとして維持されることを求めるものであります。」及び「また、請求項9については、請求項1?8を引用しておりましたが、請求項1?5の削除に伴い、請求項1?5の引用関係を解消し、請求項6?8のみを引用するものとして維持されることを求めるものであります。」との訂正事項の補正を行うことは、当該請求項1?5を引用する請求項8、9を削除することであるため、請求項6、7を引用する請求項8、9について、改めて審理する必要を生じさせるものとなる。
そして、このような訂正事項の補正を行った場合は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第131条の2第1項の審理対象の拡張変更による審理遅延を防止するとの趣旨(知財高判平18.10.25(平17(行ケ)10706号)、東高判平12.3.29(平10(行ケ)407号))に反する、訂正事項を変更し訂正請求書の要旨を変更する補正を行うこととなるため、このような訂正事項の補正は認められない。
なお、平成28年12月26日付けの訂正請求は、平成29年4月3日付けの訂正請求により取り下げられたものとみなされる。

3 小括
以上のように、本件訂正は、請求項1ないし9からなる一群の請求項の請求項1に係る訂正事項2において、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項の規定に適合しないので、当該請求項1ないし9からなる一群の請求項に係る訂正である本件訂正を認めない。

第3 当審の判断
1 上記第2のとおり本件訂正は認められないので、特許第5857237号の請求項1ないし9の特許に係る発明は、それぞれ、本件の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定される次のとおりのものである(以下、それぞれを「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」という。)。
「【請求項1】
角部が面取り状である矩形状の光電変換部と、前記光電変換部の一主面の上に配された電極とを有する太陽電池セルであって、
前記一主面は、第1の方向において前記面取り状角部が設けられている端部と、前記第1の方向において前記面取り状角部よりも中央側に位置している中央部とを含み、
前記電極は、
前記中央部に設けられており、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部と、
前記端部に設けられており、前記第2の方向に沿って延びる上底部及び下底部と、前記上底部の端部と前記下底部の端部とを接続しており、前記面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部とを含む台形状電極部と、
前記第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と少なくとも前記端部で接続され、前記複数の線状電極部、前記上底部及び前記下底部と直接接続されている少なくともひとつのバスバー部とを有し、
前記斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない、太陽電池セル。
【請求項2】
前記バスバー部は、前記端部から前記中央部にわたり一体的な矩形形状を有する、請求項1記載の太陽電池セル。
【請求項3】
前記台形状電極部は、前記第1の方向において前記上底部と前記下底部との間に位置しており、前記一対の斜辺部間を接続している線状の電極部をさらに含む、請求項1または2に記載の太陽電池セル。
【請求項4】
前記電極は、前記台形状電極部を複数含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の太陽電池セル。
【請求項5】
前記一主面と前記電極との間において、前記一主面の端縁部を除いた部分を覆うように設けられている面状の透明導電膜をさらに備える、請求項1?4のいずれか一項に記載の太陽電池セル。
【請求項6】
前記複数の線状電極部は、前記透明導電膜の端辺に至るように設けられている、請求項5に記載の太陽電池セル。
【請求項7】
前記電極は、前記上底部及び前記下底部の少なくとも一方の端部から前記第2の方向に沿って延び、前記透明導電膜の端辺に至る電極部をさらに有する請求項5または6に記載の太陽電池セル。
【請求項8】
前記一主面は、受光面である、請求項1?7のいずれか一項に記載の太陽電池セル。
【請求項9】
請求項1?8のいずれか一項に記載の複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルを電気的に接続している配線材と、
を備え、
前記配線材は、前記複数の線状電極部と交差するように配されている、太陽電池モジュール。」

2 刊行物の記載
取消理由で通知した次の引用文献1ないし11には、下記(1)ないし(11)に摘記した事項が記載され、下記に示した発明ないし記載された事項が記載されていると認められる。

・引用文献1:「SOLAR CELLS, Operating Principles, Technology and System Applications」, MARTIN A.GREEN, 1998年12月、xii頁、93頁、111?113頁、153頁?154頁、及び、156頁(申立人1)提出の甲第1号証。)
・引用文献2:特開2010-109334号公報(申立人1提出の甲第2号証)
・引用文献3:特開平11-312820号公報(申立人1提出の甲第3号証)
・引用文献4:「High performance-Stable yields. Bosch Solar Cell M 3BB」, BOSCH, 2010年5月、1?2頁(申立人1提出の甲第4号証)
・引用文献5:米国特許第4487989号明細書(申立人1提出の甲第5号証)
・引用文献6:「High Efficiency Solar Electric Modules」,Copyright 1991 Siemens Solar Industries,111-700019-01(2244)Printed in the USA 6-91、1?2頁(申立人1提出の甲第6号証)
・引用文献7:「THE INFLUENCE OF TEXTURED SURFACES OF SOLAR CELLS AND MODULES ON THE ENERGY RATING OF PV SYSTEMS」、20th European Photovoltaic Solar Energy Conference, 6-10 June 2005, Barcelona, Spain 2384?2387頁(申立人2)提出の甲第1号証。)
・引用文献8:「Large scale production of silicon solar cells at Q-Cells AG in Thalheim: History, Status and Future Prospects」、1?17頁、URL:http://www.gaccwest.com/fileadmin/ahk_sanfrancisco/Dokumente/2005-11_Solar_Day/Q-Cells.pdf 印刷日:平成28年7月12日(申立人2提出の甲第2号証)
・引用文献9:「www. Greener Energy SOLAR CELLS」、1?32頁、URL:http://www.greenerenergy.ca/Produets_Available/GreenerEnergy_Solar_%20Cells.pdf/ 印刷日:平成28年7月12日(申立人2提出の甲第3号証)
・引用文献10:特開2009-111034号公報(申立人2提出の甲第4号証)
・引用文献11:特開2005-260150号公報(申立人2提出の甲第5号証)

(1)引用文献1には、以下の記載がある。
ア 「This solar cell is made from a thin wafer of the semiconductor silicon, about 10cm square and only a fraction of a millimeter thick. When the cell is illuminated, it converts the energy of the photons in the incident light into electrical energy. Under bright sunshine, the cell can supply a current of up to 3A at a voltage of about 1/2V to an electrical load connected between the metallic contact grid apparent here and a second at the rear of the cell. (Photograph courtesy of Motorola, Inc.)」
(申立人1による和訳:この太陽電池セルは、半導体シリコンの薄いウェハから形成され、約10cm角で1mmにも満たない厚みを有している。そのセルが受光すると、セルは入射光における光子エネルギーを電気エネルギーに変換する。日照下において、セルは、図に表されている金属電極グリッドと、セルの裏面に設けられた第2電極とに接続された電気負荷に最大で3Aの電流、約1/2Vの電圧を供給することができる。(Motorola,Inc.の厚意の写真))(xii頁)

イ 「

Figure 5.4. Major features of a solar cell. Dimensions in the vertical direction are exaggerated compared to lateral dimensions for the purposes of illustration.」
(申立人1による和訳:

図5.4.太陽電池セルの主要特徴部分。垂直方向の寸法は、説明のために水平方向に比4て大きく表示している。)(93頁 図5.4)

ウ 「2. The necessi ty of making electrical contact to both p-a nd n-type regions of solar cells generally results in a metal grid contact on the side of the cell exposed to sunlight. This blocks 5 to 15% of the incoming light.
(申立人1による和訳:2.一般に太陽電池セルのp型及びn型領域の両方に電極接点を形成する必要があり、太陽光が照射される側のセルに金属グリッド電極が設けられる。これは、5?15%の入射光を遮っている。)(93頁1?4行)

エ 「6.6 SOLAR CELLS TO SOLAR CELL MODULES」
(申立人1による和訳:6.6複数の太陽電池セルから太陽電池モジュールへ)(111頁4行)

オ 「

Figure 6.8. Stress relief loop, as generally required in the metallic interconnections between cells to prevent fatigue due to cyclic thermal and wind loading stresses. For maximum effect, the thickness of the interconnect, t, should be small and the height of the arch high as discussed in Ref. 6.5.」
(申立人1による和訳:

図6.8.一般的に応力緩和ループは、セル間をつなぐ金属配線において、繰り返しの熱負荷や風荷重の応力による疲労を防ぐ必要があった。最大の効果が得られるように、配線の厚みtは小さくし、Ref.6.5で述べたように、アーチの高さを高くすべきである。)(113頁 図6.8)

カ 「Another important area of module design concerns the interconnections between the cells. It is common practice to use multiple interconnects for redundancy. This increases the module tolerance to interconnect failure (by corrosion or fatigue) as well as to cracked cells. Cyclic stresses are set up in the interconnects due to differentials in temperature expansion coefficients and wind loading. A stress-relief loop as indicated in Fig. 6.8 is generally required in the interconnect (Ref.6.5)」
(申立人1による和訳:モジュール設計におけるその他の重要な部分は、セル間をつなぐ配線である。たるみを設けて複数の配線を使用することは一般的である。これは、配線の(腐食や疲労による)不具合やセルの破損に対するモジュールの許容値を増加させている。熱膨張係数の違いや風荷重のために、配線には繰り返し応力が生じる。図6.8に示されるように応力緩和ループは、配線において一般に必要とされている。(Ref.6.5))(113頁4?11行)

キ 「8.6 TOP-CONTACT DESIGN
One important area of cell design is the design of the top metal contact grid. This area becomes increasingly important as the size of individual cells increases. Figure 8.10 shows some of the diverse approaches to top contact design which have been used in terrestrial cells.
There are several power-loss mechanisms associated with the top contact. The loss due to lateral current flow in the top diffused layer of the cell has already been described. Additionally, there are losses due to the series resistance of the metal lines and the contact resistance between these lines and the semiconductor. Finally, there are the losses due to the shadowing of the cell by these lines.
In this section, the design of contacts for square or rectangular cells will be considered. Parallel techniques can be used for cells of more general shape. For common contact designs, two types of metallic elements can be identified as indicated in Fig. 8.11(a). Busbars are relatively heavy area of metallization directly connected to the external leads to the cell; fingers are finer elements which collect current for delivery to a busbar. As shown in Fig. 8.10, there can be more than one level of fingers in some cell designs. Fingers and busbars are usually either of constant width, linearly tapered, or have step changes in width.」
(申立人1による和訳:8.6 上部電極形状
セル設計の一つの重要な部分は、上部金属電極グリッドの形状である。この部分は、個々のセルのサイズが大きくなるほど、ますます重要となる。図8.10には、地上用セルに使用された異なる上部電極形状を示している。
上部電極形状に関連していくつかの出力損失の構造がある。セルの上部拡散層内を水平方向に流れる電流による損失は既に述べている。加えて、金属電極の直列抵抗と、これらの電極と半導体との接触抵抗のために損失を生じる。最後に、これらの電極によってセルに影が生じるために損失を生じる。
この節では、正方形または長方形のセルのための電極の形状について考察する。電極を平行に設けた技術は、より一般的な形状のセルに使用される。一般的な電極形状は、図8.11(a)に示されるように、2つの金属部分に識別される。バスバーは、セルに対する外部導線が直接接続される比較的に金属領域が大きい部分である。フィンガーは、バスバーに送るために電流を集める、細い部分である。図8.10に示されるように、セル設計においてフィンガーの階層を1以上にすることができる。フィンガーとバスバーは通常、幅が一定か、直線的に幅が小さくなるか、段階的に幅が変わるかのいずれかである。)(153頁26行?154頁8行)

ク 「Figure 8.10. Collection of production silicon solar cells, showing diverse approaches to the design of the top contact to the cell.」
(申立人1による和訳:図8.10.異なる上部電極形状を示すシリコン太陽電池セルの製品群)(154頁 図8.10)

ケ 「

Figure 8.11. (a)Schematic of a top contact design showing busbars and fingers. Also shown is the symmetry in this particular design whereby the contact can be broken down into 12 identical unit cells. (b)Important dimensions of a typical unit cell.」
(申立人1による和訳:

図8.11(a)バスバーとフィンガーを示している上部電極形状の概略図。また、電極が12個の同じュニットセルに分けられ、その特定形状の対称性が示されている。(b)典型的なユニットセルの重要な寸法)(156頁 図8.11)

コ xii頁の写真及び図8.10は次のものである。
【xii頁の写真】

【xii頁の写真についての申立人1による説明図(説明図1)】

(※写真でとらえられた太陽電池セルを線画で描いて符号を付した申立人1による説明図)

【図8.10】


サ 上記アないしケの記載を踏まえて、上記コのxii頁の写真、図5.4、図6.8、図8.10及び図8.11をみると、次の事項が見てとれる。
(ア)xii頁の写真には、金属電極グリッドが設けられた太陽電池セルが示されている。このため、xii頁の写真で捉えられた白っぽい線状のグリッド状の部分が、電極である。

(イ)図5.4には、太陽電池セルの太陽光が照射される側に金属グリッド電極が設けられることが記載されている。

(ウ)図6.8には、セル間をつなぐ配線が記載されている。

(エ)図8.11には、電極形状は、2つの金属部分(外部導線が直接接続される比較的に金属領域が大きい部分であるバスバー、及びバスバーに送るために電流を集める、細い部分であるフィンガー)に識別されることが記載されている。

シ 以上アないしサを踏まえると、xii頁の写真には、角部が面取り状の光電変換部の一主面上に電極が配されており、写真の上下方向(第1の方向)において、角部が面取り状の光電変換部のうちの面取り状角部が設けられている端部に台形状の電極が存在し、一主面の中央側に複数のフィンガーが配されていることが示されている。
また、xii頁の写真には、複数のフィンガーと、台形状の電極の上底部及び下底部とを直接接続しており、台形状の電極の斜辺部には直接接続されていないバスバー部が示されている。
また、「フィンガーとバスバーは通常、幅が一定か、直線的に幅が小さくなるか、段階的に幅が変わるかのいずれかである」(上記キ)とされるから、バスバーは幅が一定、つまり、バスバー部(33)は、端部(20a2,20a3)から中央部(20a1)にわたり一体的な矩形形状を有するもの、であってよいといえる。
また、図6.8には、太陽電池セルの受光面の少なくとも一端部に金属配線が接続されていることが示されている。
つまり、xii頁の写真及び図6.8の記載などから、少なくとも面取り状角部が設けられている端部において、バスバー部に金属配線が接続されることがわかる。

ス 上記アないしシによれば、引用文献1には、下記(ア)の発明及び(イ)の記載事項が認められる。
(ア)「[1A]角部が面取り状である矩形状の光電変換部(20)と、該光電変換部の一主面(20a)の上に配された電極(21a)とを有する太陽電池セル(10)であって、
[1B]一主面は、第1の方向において面取り状角部(20A?20D)が設けられている端部(20a2,20a3)と、第1の方向において面取り状角部よりも中央側に位置している中央部(20a1)とを含み、
[1C]電極(21a)は、
[1D]中央部に設けられており、第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部(31)と、
[1E]端部に設けられており、第2の方向に沿って延びる上底部(32a1,32b1)及び下底部(32a2,32b2)と、上底部の端部と下底部の端部とを接続しており、面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部(32a3,32a4,32b3,32b4)とを含む台形状電極部(32a,32b)と、
[1F]第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と少なくとも端部で接続され、複数の線状電極部、上底部及び下底部と直接接続されている少なくともひとつのバスバー部(33)とを有し、
[1G]斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない、太陽電池セル(10)。」(申立人1のいう「甲1物発明」。)

(イ)「[1H]バスバー部(33)は、端部(20a2,20a3)から中央部(20a1)にわたり一体的な矩形形状を有する、
[1J]電極(21a)は、台形状電極部(32a,32b)を複数含む、
太陽電池セル(10)。」
「[1L]一主面は、受光面(20a)である」、
「[1M]複数の太陽電池セル(10)と、
[1N]複数の太陽電池セルを電気的に接続している配線材と、を備え、
[1O]配線材は、複数の線状電極部と交差するように配されている、太陽電池モジュール」

(2)引用文献2には、以下の記載がある。
ア 「【0004】・・・ハイブリッド型太陽電池における太陽電池セルは、図1に示すように、n型単結晶シリコン基板11の受光面側に非結晶質のアモルファスシリコン層12が形成され、このアモルファスシリコン層12上にITOからなる透明電極13、更に、透明電極13上には、集電極14が形成される。」

イ 「【0043】・・・太陽電池セルの集電極は、例えば、太陽電池セルの平面を模式的に表した図2に示すように、2本のバスバー部14aと、このバスバー部14aと直交する複数本からなるフィンガー部14bとを備える。」

ウ 「【0046】
また、図3に示すように、一般に太陽電池モジュール30は、リード線31により太陽電池セル32同士を相互に電気的に接続されることで形成される。」

エ 図1ないし3は次のものである。


オ 上記アないしウの記載を踏まえて、上記エの図1ないし3を見ると、下記事項が見てとれる。
(ア)上記エの図2には、バスバー部14aが、複数本のフィンガー部14bの全てと直交していることが記載されている。

(イ)上記エの図3には、バスバー部14aに沿ってリード線31が接続されていることが記載されている。

カ 上記アないしオによれば、上記エの図2及び図3には、太陽電池セル12の受光面の端部近傍において少なくともバスバー部14aの一端部にリード線31が接続されることが記載されている。

キ 上記アないしカによれば、引用文献2には、下記(ア)ないし(エ)の記載事項が認められる。
(ア)「[2Ff]第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セル(32)を電気的に接続するリード線(31)と少なくとも端部で接続されている、バスバー部(14a)」

(イ)「[2K]一主面と電極(14)との間において、一主面を覆うように設けられているITOからなる透明電極(13)をさらに備える」

(ウ)「[2M]複数の太陽電池セル(32)と、
[2N]複数の太陽電池セルを電気的に接続しているリード線(31)と、を備え、
[2O]リード線は、複数のバスバー部(14b)と交差するように配されている、太陽電池モジュール(30)」

(エ)「第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セル(32)を電気的に接続するリード線(31)と少なくとも端部で接続され、複数のバスバー部(14b)と直接接続されている少なくともひとつのバスバー部(14a)」

(3)引用文献3には、以下の記載がある。
ア 「【0006】図4は通常の太陽電池モジュールに使用される太陽電池の一例を示す図であり、同図(A)は断面構造図、また(B)は平面図である。
【0007】同図において、11はp型の導電性を有する単結晶シリコンの基板である。そして、基板11の表面には約5μm程度の深さにまでn層12が、n型不純物を熱拡散させることにより形成されており、該n層12上に櫛型状の集電極13が形成されている。また、基板11の裏面には前記集電極13と対をなす裏面電極14が形成されている。
【0008】また、同図(B)を参照して、集電極13は、光の入射により基板11内で生成された電子・正孔の光生成キャリアを収集するためのフィンガー部13Aと、フィンガー部13Aにより収集されたキャリアを集電するためのバスバー部13Bとから構成されている。・・・
【0010】次いで、図5は斯かる構造の太陽電池同士を接続タブ2にて接続した状態を示す図であり、同図(A)は断面図、同図(B)は平面図である。尚、同図において、図3及び4と同様の構成を有する部分には、同一の符号を付している同図に示す如く、隣接する太陽電池1,1は、一方の太陽電池1の集電極13におけるバスバー部13Bと、他方の太陽電池1の裏面電極14とが接続タブ2により接続されることで、互いに電気的に接続されている。」

イ 図4及び5は次のものである。


ウ 上記アの記載を踏まえて、上記イの図5を見ると、下記事項が見てとれる。
図5には、バスバー部13Bが、複数本のフィンガー部13Aの全てと直交しており、バスバー部13Bに沿って接続タブ2が接続されていることが記載されている。

エ 上記アないしウによれば、上記イの図5には、太陽電池1の受光面の端部近傍において少なくともバスバー部13Bの一端部に接続タブ2が接続されることが記載されている。

オ 上記アないしエによれば、引用文献3には、下記(ア)及び(イ)の記載事項が認められる。
(ア)「[3Ff]第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材(2)と少なくとも端部で接続されている、バスバー部(13B)」

(イ)「[3M]複数の太陽電池セル(1)と、[3N]複数の太陽電池セルを電気的に接続している配線材(2)と、を備え、[30]配線材は、複数の線状電極部(13A)と交差するように配されている、太陽電池モジュール」

(4)引用文献4には、以下の記載がある。
ア 「High performance-Stable yields. Bosch Solar Cell M 3BB」
(申立人1による和訳:高特性一安定生産 ボッシュ太陽電池セルM3BB)」(1頁 表題)

イ 「


(申立人1による和訳:

)
(2頁 上の表(テーブル))

ウ 「


(申立人1による和訳:

)
(2頁 外観図)
(2頁のFront(表)についての申立人1による説明図(説明図4)

※太陽電池セルの外縁と電極を線画で描いて符号を付した申立人1による説明図)

エ 1頁の写真は次のものである。
【1頁の写真】


オ 以上アないしウを踏まえて、上記エの1頁の写真及び2頁の外観図をみると、次の事項が見てとれる。
(ア)2頁の製品特徴を示す上の表(テーブル)には、太陽電池の表電極に、銀を含有する3本のバスバーが含まれていることが示されている。このため、1頁の写真及び2頁の外観図の表(Front)の白っぽい線状のグリッド状の部分が、電極である。

(イ)2頁の製品特徴を示す上の表(テーブル)には、表電極として、1.5mm幅の3本の銀のバスバーが設けられている旨が記載されている。よって、外観図の表(Front)には、表電極に、横方向に伸びる複数の細い線状のフィンガー電極(線状電極部に相当)と、上下の端部にそれぞれ形成された台形状電極部と、複数のフィンガー電極と台形状電極部の上底部と下底部とに直接接続されているバスバー部と、が含まれていることが記載されている。

カ 上記アないしオによれば、引用文献4には、下記(ア)の発明及び(イ)の記載事項が認められる。
(ア)「[4A]角部が面取り状である矩形状の光電変換部(20)と、該光電変換部の一主面(20a)の上に配された電極(21a)とを有する太陽電池セル(10)であって、
[4B]一主面は、第1の方向において面取り状角部(20A?20D)が設けられている端部(20a2,20a3)と、第1の方向において面取り状角部よりも中央側に位置している中央部(20a1)とを含み、
[4C]電極(21a)は、
[4D]中央部に設けられており、第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部(31)と、
[4E]端部に設けられており、第2の方向に沿って延びる上底部(32a1,32b1)及び下底部(32a2,32b2)と、上底部の端部と前記下底部の端部とを接続しており、面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部(32a3,32a4,32b3,32b4)とを含む台形状電極部(32a,32b)と、
[4Fr]複数の線状電極部、上底部及び下底部と直接接続されている少なくともひとつのバスバー部(33)とを有し、
[4G]斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない、太陽電池セル(10)。」(申立人1のいう「甲4物発明」。)

(イ)「[4I]台形状電極部(32a,32b)は、第1の方向において上底部(32a1,32b1)と下底部(32a2,32b2)との間に位置しており、一対の斜辺部(32a3,32a4,32b3,32b4)間を接続している線状の電極部(32a5,32b5)をさらに含む」
「[4J]電極(21a)は、台形状電極部(32a,32b)を複数含む」
「[4L]一主面は、受光面(20a)である」

(5)引用文献5には、以下の記載がある。
ア 「The front electrical contact 16 has two rows of solder pads--a left row 22 and a right row 24 (with reference to the view of FIG. 1). These rows of pads and one of the indicated pairs of body sides are parallei to one another. That pad-row-parallei pair of body sides cons ists of a left side 26 and a right side 28 (with reference to the vi ew of FIG. 1). The other, pad-row-transverse pair of body sides cons ists of a top 30 and bottom 32 side (with reference to the vi ew of FIG. 1.
The cross-sectional view of FIG. 5 shows these transverse sides.」
(申立人1による和訳:表面電極16は、左列22と右列24からなる2列の半田パッドを有する(図1を参照)。これらのパッドの列と、表示された本体側部の一対のうちの1つとは、互いに平行である。パッド列に平行な本体側部の一対は左側部26と、右側部28とから構成される(図1を参照)。一方で、パッド列を横断する本体側部の一対は、上部30と、底部32とから構成される(図1を参照)。図5の断面図は、パッド列を横断する側部を示す。)(5欄38?48行)

イ 「The front contact has a number of sets of contact strips paral lei to each of the pairs of body s ides.」
(申立人1による和訳:表面電極は、本体側部の一対のそれぞれと平行である多くの一組の電極細線部を有する。)(5欄51?52行)

ウ 「The details of the angle strips, the other strips and the pads are shown in FIG. 3, which shows the lower, right quadrant of FIG. 1. As is apparent by reference to FIG. 1, the upper, right quadrant is symmetrical to the lower, right quadrant, with respect to the midline of the cell face perpendicular to the pad-row-parallel s ides 26 and 28: the lower, left quadrant is symmetrical to the lower, right quadrant with respect to the midl ine perpendicular to the pad-row-transverse body sides 30 and 32; and the upper, left quadrant is symmetrical to the lower, right quadrant with respect to the point of intersection of these two midlines.」
(申立人1による和訳:傾斜細線部、他の細線部及びパッドの詳細は図3に示され、図3は図1の右下の四半部を示している。図1を参照すれば、パッド列に平行な側部2.6、28と直角をなすセル表面の中心線に対して、右上の四半部は右下の四半部と対称であり;パッド列を横断する本体の側部30、32と直角をなす中心線に対して、左下の四半部は右下の四半部と対称であり;そして、これら2本の中心線の交差点に対して、左上の四半部は右下の四半部と対称である。)(5欄60行?6欄3行)

エ 「still continuing by way of introduction, the rear contact of the solar cell also has sets of strips parallel to the pad-row-parallel body sides 26 and 28, and parallel to the pad-row-transverse body sides 30 and 32, as well as a set of angle strips. It further has a left row of solder pads 52 and a right row of solder pads 54 (with reference to the view of FIG. 2), which run parallel to the pad-row-parallel body sides.」
(申立人1による和訳:続けて、太陽電池セルの裏面電極もパッド列に平行な本体側部26、28と平行である、または、パッド列を横断する本体側部30、32と平行である一組の細線部、及び一組の傾斜細線部を有する。裏面電極は、更に半田パッドの左列52及び半田パッドの右列54を有し(図2を参照)、半田パッドの列はパッド列に平行な本体側部と平行な方向に伸びている。)(6欄4?11行)

オ 「The generally checkerboard pattern resulting from the pad-row parallei strips and from the pad-row-transverse strips, ofcourse, is well evident.」
(申立人1による和訳:もちろん、パッド列に平行な細線部とパッド列を横断する細線部とによって、一般的な格子形状が形成されることは明らかである。)(7欄54?57行)

カ 「It is also particularly adapted to decrease the significance of a misalignment of the connector strip which is soldered along a row of solder pads to connect cells such as the cell 12 in an array.」
(申立人1による和訳:また、裏面電極の特別な形状は、アレイ内の太陽電池セル12を接続するために半田パッド列に沿って半田付けされる接続体のずれの影響を軽減するためにも、特に、適している。)(8欄6?10行)

キ 「A pad-row-transverse, end-pad-crossing-strip 122, crosses the end pad 106 and, in the immediate vicinity of the end pad, crosses the outside pad-row-parallel connector strip 112 and the end ins ide pad-row-parallel connector strip 114.」
(申立人1による和訳:パッド列を横断し、端部パッドと交差する細線部122は、端部パッド106と交差して、端部パッド近傍に設けられ、パッド列に平行で接続する外側の細線部112とパッド列に平行で接続する内側端部の細線部114と交差する。)(9欄59?63行)

ク 「There is also a pad-row-transverse, Second-from-the-end pad cross ing strip 124. It crosses the second-from-the-end pad 108 and, in the immediate vicinity of such pad, crosses the outside pad-row-parallel connector strip 112 and the end inside pad-row-parallel connector strip 114.」
(申立人1による和訳:また、パッド列を横断し、第2の端部パッドと交差する細線部124も設けられる。細線部124は、第2の端部パッド108と交差して、そのパッド近傍に設けられ、パッド列に平行で接続する外側の細線部112とパッド列に平行で接続する内側端部の細線部11.4と交差する。)(9欄68行?10欄5行)

ケ 「Further with regard to pad-row-transverse strips, four of seven pad-row-transverse, middle-pad-crossing strips 126 are present in FIG. 3.」
(申立人1による和訳:さらにパッド列を横断する細線部に関して、7個のパッド列を横断し、中央パッドと交差する細線部126のうち4個が図3に示されている。)(10欄18?20行)

コ 「Eighteen of a total of thirty-six pad?row?transverse, non-pad-cross ing strips 127 are present in FIG. 3.」
(申立人1による和訳:合計36個のパッド列を横断し、パッドと交差しない細線部127のうち18個は図3に示されている。)(10欄29?31行)

サ 「The larger size of the end 106 and the Second-from-the-end 108 pad, as compared to the middle pads 110, is considered a significant advantage in addressing the misalignment of connector strips which are to be soldered along the pad rows.」
(申立人1による和訳:中央パッド110と比較して、端部パッド106及び第2の端部パッド108が大きなサイズを有することは、パッド列に沿って半田付けされる接続体のずれに対処する上で大変有利である。)(10欄51?55行)

シ 「A corner strip 128 shown in FIG. 3 has a single width which is the smallest of the widths which have been discussed in connect ion with other of the strips.」
(申立人1による和訳:図3に示されるコーナー細線部128は単一の幅を有し、その幅は上記した他の細線部の最も小さい幅と同じである。)(10欄64?67行)

ス 図1ないし図4は次のものである。
【図1】 【図2】

(図1についての申立人1による説明図(説明図5)

※図1に引き出し線と符号を付した申立人1による説明図)

【図3】

【図4】


セ 以上アないしシを踏まえて、上記スの図1ないし図4をみると、次の事項が見てとれる。
(ア)図1及び図3には、太陽電池セルの表面電極16が、左列22と右列24からなる2列の半田パッド、パッド列を横断してパッドと交差する細線部122,124,126、パッド列を横断してパッドと交差しない細線部127、及びコーナー細線部128を含むことが記載されている。

(イ)図2及び図4には、太陽電池セルの裏面電極20が、表面電極16と類似した構成を有していることが記載されている。
また、太陽電池セル12のアレイにおいて太陽電池セル間を接続する接続体が、表面電極16のパッド列に沿って半田付けされるとともに、裏面電極20のパッド列に沿って半田付けされる(8欄6?10行目及び10欄51?55行)。

(ウ)このため、図1から図4では、横方向に伸びる複数の細線部(線状電極部に相当)に直接接続されているパッド列(バスバー部に相当)が開示されていることが分かる。

ソ 上記アないしセによれば、引用文献5には、下記(ア)の発明及び(イ)の記載事項が認められる。
(ア)「[5A]角部が面取り状である矩形状の光電変換部(14)と、該光電変換部の一主面(20a)の上に配された電極(16)とを有する太陽電池セル(12)であって、
[5B]一主面は、第1の方向において面取り状角部(20A?20D)が設けられている端部(20a2,20a3)と、第1の方向において面取り状角部よりも中央側に位置している中央部(20a1)とを含み、
[5C]電極(16)は、
[5D]中央部に設けられており、第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部(122,124,126,127)と、
[5E]端部に設けられており、第2の方向に沿って延びる上底部(32a1,32b1)及び下底部(32a2,32b2)と、上底部の端部と下底部の端部とを接続しており、面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部(128)とを含む台形状電極部(32a,32b)と、
[5Fa]第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と接続され、複数の線状電極部と直接接続されている、バスバー部とを有し、
[5G]斜辺部(128)はバスバー部と直接接続されていない、太陽電池セル(12)。」(申立人1のいう「甲5物発明」。)

(イ)「[5I]台形状電極部(32a,32b)は、第1の方向において上底部(32a1,32b1)と下底部(32a2,32b2)との間に位置しており、一対の斜辺部(128)間を接続している線状の電極部(32a5,32b5)をさらに含む」
「[5J]電極(16)は、台形状電極部(32a,32b)を複数含む」
「[5L]一主面は、受光面(20a)である」
「[5M]複数の太陽電池セル(12)と、
[5N]複数の太陽電池セルを電気的に接続している配線材と、を備え、
[5O]配線材は、複数の線状電極部(122,124,126,127)と交差するように配されている、太陽電池モジュール」

(6)引用文献6には、以下の記載がある。
ア 「High Efficiency Solar Electric Modules」
(高効率太陽電池モジュール)(1頁 写真の見出し)

イ 「Siemens Single Crystal-A Superior Solar Cell」
(Siemens単結晶一高特性太陽電池セル)(2頁 左上の写真の見出し)

ウ 1頁の写真及び2頁の左上の写真は次のものである。
【1頁の写真】


【2頁の左上の写真】


(2頁の左上の写真についての申立人1による説明図(説明図6)

※太陽電池セルの外縁と電極を黒く描いている申立人1による説明図)

エ 以上ア及びイを踏まえて、上記ウの1頁の写真及び2頁の左上の写真をみると、次の事項が見てとれる。
(ア)1頁の写真には、面取り状角部を有する複数の太陽電池セルが一方向に沿って配線材で接続されてなる太陽電池モジュールが記載されていることが示されている。

(イ)2頁の左上の写真には、横方向に伸びる複数の細い線状のフィンガー電極(線状電極部に相当)と、上下の端部にそれぞれ形成された台形状電極部と、複数のフィンガー電極と台形状電極部の上底部と下底部とに直接接続されているバスバー部が存在していることが示されている。
また、2頁の左上の写真には、台形状電極部は、バスバー部が伸びる第1の方向において上底部と下底部との間に、一対の斜辺鋤間を接続している線状の電極部が位置していることが示されている。

オ 上記アないしエによれば、引用文献6には、下記の記載事項が認められる。
「[6Fb]第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と少なくとも端部で接続され、複数の線状電極部、上底部及び下底部と直接接続されている少なくともひとつのバスバー部(33)」
「[6I]台形状電極部(32a,32b)は、前記第1の方向において上底部(32a1,32b1)と下底部(32a2,32b2)との間に位置しており、一対の斜辺部(32a3,32a4,32b3,32b4)間を接続している線状の電極部(32a5,32b5)をさらに含む」
「[6J]電極(21a)は、台形状電極部(32a,32b)を複数含む。」

(7)引用文献7には、以下の記載がある。
ア 「2 MEASUREMENTS
2.1 Indoor measurements
Six single-cell-modules were prepared using two different cell types from Q-cells and three different glass types from Saint Gobain Glass, see Table 1. All glass samples were 3 mm thick. The 156mm multicrystalline cells Q6L were alkaline etched resulting in nearly non-textured surface and the 150mm monocrystalline cells Q6M were textured in the classical alkaline/ethanol bath resulting in the well-known pyramid structure with a very good texturisation effect. White Tedlar back sheets were used for the encapsulation of the single-cell modules, with black Tedlar laminated inside to form a frame with a surrounding gap of 3mm to the single cell in the center, see Figure 1. The short circuit Isc of the samples was measured on three different sun simulators each using the same measurement principle for the angle dependence of the Isc, i.e. a measurement stage, which allowed tilting the sample between incident angles θof 0°(perpendicular) and 90°.」
(申立人2による和訳:2 測定
2.1屋内測定
Qセルズの2の異なるタイプのセルとサンゴパンガラスの3つの異なるタイプのガラスとを組み合わせて、6つのシングルセルモジュールを作製した、表1参盟。すべてのガラスサンプルは3mmの厚みであった。156mmの多結晶セルQ6Lはアルカリエッチングによるほとんどテクスチャ化されていない表面を有していた。150mmの単結晶セルQ6Mは古典的なアルカリ/エタノール浴によりテクスチャ化され、よく知られているピラミッド構造を有し、極めて良好なテクスチャ化効果を有していた。シングルセルモジュールの封止には白テドラーバックシートが用いら,れ、中央のシングルセルに対して3mmの周辺ギャップを有するフレームを形成するように、黒テドラーが内側に積層されていた、図1参照。サンプルの短絡電流Iscを3つの異なる太陽シミュレータで測定した。いずれのシミュレータも、Iscの角度依存性に関して同一の測定原理、すなわち、入射角θが0°(垂直)と90°の間でチルト可能な測定ステージを用いるものであった。)(2384頁左欄26行?右欄5行)

イ「


(申立人2による和訳:

)
(2384頁右欄表1)

ウ 「

Figure 1: Single-cell-module used for indoor mesurements」
(申立人2による和訳:

図1:室内定用シングルセルモジユール )
(2384頁右欄図1)

エ 「2.1 Outdoor measurements
Outdoor measurements were performed with a large 2-axis tracker hosting twelve 500 Watt modules (″Mover″ from Solon-PV GmbH). The 500 Watt modules consist of 6 mm Diamant cover glass, white Tedlar back sheet and 80 series connected Q6M monocrystalline cells with a cell-to-cell distance of 3 mm. The angle dependence of the Isc was measured for a center module (Solon SerNo.217365) from perpendicular to horizontal irradiance in steps of 5°by using the automatic control of the 2 axis tracker in manual mode.
In a second run, the module was rotated in horizontal position around its second axis (″helicopter mode″) to investigate the effect of various orientations between the plane of incidence and the cell edge orientation. The angle of incidence was 40°, i.e. the sun hei^t was hs =50°.」
(申立人2による和訳:2.1屋外測定
12個の500ワットモジュール(Solon-PVGmbHの”Mover”)を保持した大型2軸ドラッカーにより屋外測定を実施した。500ワットモジュールは、6mmのディアマントカバーガラスと、テドラーバックシートと、3mmのセル間距離で80個が直列接続されたQ6M単結晶セルとを備える。2軸ドラッカーのマニュアルモードの自動コントロールを用いて、中央のモジュール(Solonシリアル番号217365)のIscの角度依存性を、垂直から水平までの照射を5°間隔で測定した。
第2ランでは、モジュールを水平位置における第2軸周りに回転させ(ヘリコプターモード)、平面入射からセル端部の向きの間の種々の配置の影響を調査した。
入射角は40°、すなわち太陽高度hs=50°であった。)(2385頁左欄1?16行)

オ 「

Figure 2: 2-axis tracker used for outdoor angle dependence measurement of the Isc (″Mover″ from Solon-PV GmbH; Pmax =6kW at STC)」
(申立人2による和訳:

図2. Iscの屋外角度依存測定の測定に用いた2軸ドラッカー(Solon-PVGmbHの”Mover”;STCにおけるPmax=6kW)(2385頁左欄図2)

カ 「For 0°and 180°the fingers on the cell are perpendicular to the plane of incidence. The increase of the Isc for orientations between -45°and -135°by 1% is attributed to the reduced shading effect of the screen printed fingers of the cells, when the plane of incidence is parallel to the fingerers. With a 2.1 mm distance between the fingers and a height of 15 μm height this calculates to 0.6% shading loss for the used incident angle of 40°in the perpendicular case. For the sake of unified measurement conditions, all measurement in the following were performed with the fingers orientation perpendicular to the plane of incidence」
(申立人2による和訳:0°および180°では、セル上のフィンガーは入射面と垂直である。入射面がフィンガーと平行である場合、-45°から-135°において1%のIscの増加がみられたのは、セル上のスクリーン印刷フィンガーの遮光効果の低減に起因すると考えられる。垂直の場合に用いた入射角40°における遮光ロスを、フィンガー間距離2.1mm、高さ15Atmで計算すると、0.6%であった。以降の全ての測定は、一様な測定環境のために、フィンガーの配向を入射面と直交とした。)(2385頁左欄下から8行?右欄4行)

キ 以上アないしカを踏まえて、上記ウの図1及び上記オの図2をみると、次の事項が見てとれる。
(ア)図1には、屋内測定に用いたシングルセルモジュールの写真が示されている。
シングルモジュールでは、太陽電池セルの上面に、図の左右方向(y方向)に延在する2本の配線材が配されており、太陽電池セルの下面に白バックシートが配されている。太陽電池セルは、略正方形状(いわゆるセミスクェア型)であり、4つの角部は曲線形状の切り欠きを有する面取り状である。太陽電池セルの上面には、図の上下方向(x方向)に延在するフィンガー電極が設けられている。さらに、図の左右方向の中央部では、複数のフィンガー電極の端部を接続するように、図の左右方向(y方向)に延在する電極が設けられており、図の左右方向の両端部(角部)では、約45°の斜め方向に延在する電極が設けられ、この斜め方向の電極(斜辺部)が、複数のフィンガー電極を接続している。太陽電池セルの下面に配置された白バックシートは光を透過しないから、図1に示されている太陽電池セル(およびシングルモジュール)は、上面が受光面であることは明らかである。

(イ)図2には、2軸ドラッカーを用いてMoverの屋外測定でのIscの角度依存性を測定した様子が写真で示されている。

ケ 上記アないしクによれば、引用文献7には、下記発明が認められる。
「(a) 4つの角部(120A,120B,120Cおよび120D)が面取り状である矩形状の結晶シリコン基板を含むセル本体部(120)と、
(b) セル本体部の受光面上に配された電極と、
(f) を有する太陽電池セル(110);
(l) 太陽電池セルの受光面上に配された配線材(143);および
(z) 太陽電池セルの裏面に配された白バックシート(145)を有し、
(c) セル本体部(120)の受光面は、y方向において面取り状角部が設けられている端部(120a2および120a3)と、y方向において面取り状角部よりも中央側に位置している中央部(120a1)とを含み、
(d) セル本体部の受光面に配された電極は、
(d1) 中央部(120a1)に設けられており、x方向に沿って延びる約50本の線状フィンガー電極(131)と、
(d2) 端部(120a2および120a3)に設けられており、x方向に沿って延びる上底部(132a1および132b1)及び下底部(132a2および132b2)と、上底部の端部と下底部の端部とを接続しており、面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部(132a3と132a4、および132b3と132b4)とを含む2つの台形状電極部(132aおよび132b)とを有し、
(h) 2つの台形状電極部(132aおよび132b)のそれぞれは、y方向において上底部(132a1および132b1)と下底部(132a2および132b2)との間に位置しており、一対の斜辺部(132a3と132a4、および132b3と132b4)間を接続している7本の線状フィンガー電極(132a5および132b5)をさらに含み、
(m) 太陽電池セルの受光面上のy方向に沿って、線状フィンガー電極(131、ならびに132a5および132b5)と直交するように2本の配線材(143)が設けられており、
(v) 配線材(143)は、2つの端部(120a2および120a3)と中央部(120a1)で太陽電池セルに接続されており、
(e) 斜辺部(132a3,132a4,132b3,132b4)は、配線材(143)と直接接続されていない、
(w) シングルセルモジュール。」(申立人2のいう「引用発明1」。)

(8)引用文献8には、以下の記載がある。
ア 「Large scale production of silicon solar cells at Q-cells AG in Thalheim: Histry, Status and Future Prospects」
(申立人2による和訳:QセルズAGのタルハイムにおけるシリコン太陽電池の大規模製造:歴史、現状および将来の展望)(1頁の表題)

イ 「■Q6LTT Multi
- 156mm x 156mm x 220μm, high efficient multicrystalline cell, acidic texured ->200μm in 2005
- Alternative: Q6L Multi 156mm x 156mm x 220μmalkaline etched
■Q6L-M Mono 10% more efficiency
- High aesthetical appearance
■210mm Q8TT 2&3&4 bus bars
- The new standard, 80% more power per cell
Back contact Q8BC
- Advantageous for innovative module technologies
■Others
- Qi: 3 bus bars 4 inch replacement for consumer products
■R&D on: 17% multi and 20% mono cells」
(申立人2による和訳:■Q6LTT Multi
-156mm × 156mm × 220μm、高効率多結晶セル、酸テクスチャ化 → 2005年に200μm
-代替品:Q6L Multi 156mm × 156mm × 220μmアルカリエッチングされたもの
■Q6L-M Mono さらに10%効率的
-高い審美的外観
■210mm Q8TT 2&3&4 バスバー
-新標準、1セルあたり80%さらに高出力
バックコンタクトQ8BC
-革新的なモジュール技術で有用
■その他
-Qi: 消費財用の3バスバー4インチ代替品
■R&Dでは: 17% multi 及び 20% monoセル)(5頁2行?最下行)

ウ 「■Product : Q5 (2001) -> Q6 (2002) ->Q8 (2004)
power: 100% 144% 280%
■ ->lower production cost over the whole value chain」
(申立人2による和訳:■製品: Q5(2001) → Q6(2002) → Q8(2004)
出力: 100% 144% 280%
→バリューチェーン全体で低製造コスト)(6頁2?4行)

エ 「■Innovative product strategy
-The six inch cells ..Q6″and ″Q6L″introduced in 2002/2004 are copied by a most all European competitors now」
(申立人2による和訳:■革新的な製品戦略
2002/2004年に導入された6インチセル『Q6』および『Q06L』は、今ではほとんどすべての欧州の競合他社がコピーしている)(7頁5?7行)

オ 「Ramp-up years: Facts & Figures


(申立人2による和訳:年次の増加:事実と数字
■事実と数字

)
(8頁1?2行及び表)

カ 「


(申立人2による和訳:

)
(11頁の表)

キ 「Future Technology Approaches:2006」
(申立人2による和訳:将来の技術アプローチ:2006)

ク 6頁の写真は次のものである。
【6頁の写真】


ケ 以上アないしキを踏まえて、上記クの6頁の写真をみると、次の事項が見てとれる。
Q5(2001)、Q6(2002)、Q8(2004)との記載があり、その下に太陽電池セルの写真が4つ並んでいる。左から2番目のQ6LTT/Q6L-Mの写真によれば、Qセルズが2002年頃から製造販売しているQ6LTTおよびQ6L-Mの写真であることが分かる。そして、背面に写っている太陽電池セルは、角部が面取り状であり、面取り状角部の端辺に沿って45°方向に延びる電極(斜辺部)を有している。写真の前面に写っている太陽電池セルは、写真の横方向に延在するフィンガー電極と、縦方向に延在する2本のバスバー電極を備え、バスバー電極は両端部が先細った形状となっている。背面に写っている太陽電池セルは、写真の横方向に延在するフィンガー電極と縦方向に延在する2本のバスバー電極を備え、バスバー電極は先細っておらず縦方向を長辺とする矩形形状であること。

(9)引用文献9には、以下の記載がある。
ア 「


(申立人2による和訳:

)
(19頁の「The Q-Cells Q6LM」及び「The Q-Cells Q6LTT」の写真及び説明)

イ 「


(申立人2による和訳:

)
(20頁の「PRODUCT PORTFOLIO」の図)

ウ 「Proof has been furnished that the requirements according to
DIN EN ISO 9001:2000
are fulfilled
The certficate is valid until 2008-08-14
Certificate Regtstration No.01 100 055125」
(申立人2による和訳:DIN EN ISO 9001:2000による要求を満足していることの証明書が備わっている。この証明書は2008-08-14まで有効である。証明書番号:01 100 055125)
(22頁の「CERTFICATE」の段落の下から5行?最下行)

(10)上記(8)の引用文献8の記載事項及び上記(9)の引用文献9からは下記の記載事項が認められる。
「Q6LMの外観は、引用文献7の図1に示されている太陽電池セルと同一である。」
「Qセルズ製のQ6シリーズの結晶シリコン太陽電池は、フィンガー電極に直交するバスバー電極を備えていた。」

(11)引用文献10には、以下の記載がある。
ア 「【0024】
図5及び図6に示すように、上記太陽電池素子5、5、・・・は、上面及び下面にそれぞれ数μmから数十μmの高さを有するピラミッド状凹凸を有するn型単結晶シリコン基板11の該上面上にi型非晶質シリコン層12、p型非晶質シリコン13及び酸化インジウムスズ(ITO)膜等の透明電導膜14がこの順序で形成されている。
【0025】
そして、前記透明電導膜14の上面上には、銀(Ag)ペーストが硬化されてなる集電極15が形成されており、該集電極15は互いに平行な2本の幅約1.5mm、厚さ約50μmの直線状のバスバー部15a、15aとフィンガー部15bで構成されている。」

イ 「【0035】
前記第3の接続部材26、26は一方の太陽電池素子群6の一方の太陽電池素子5の上面側のバスバー部15a、15a上と他方の太陽電池素子5の上面側のバスバー部15a、15a上にその直線部が半田により接合されると共に、その延在部が折り曲げられ、他方の太陽電池素子群6の隣り合う側の太陽電池素子5の下面上の第1の接続部材21の端部上にその端部が半田により接合されている。」

ウ 図1、2、3、5及び6は次のものである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図5】

【図6】


エ 以上ア及びイを踏まえて、上記ウの図1、2、3、5及び6をみると、次の事項が見てとれる。
図2、3には太陽電池モジュールの概略構成図(平面図)が示されており、図1には太陽電池モジュールの概略断面図が示されている。図5には太陽電池素子の平面図が示されており、図6には太陽電池素子の断面図が示されている。
図6によれば、太陽電池素子は、n型単結晶シリコン基板(11)上に、i型非晶質シリコン層(12)、p型非晶質シリコン(13)及び酸化インジウムスズ(ITO)膜等の透明電導膜(14)を備え、透明電導膜(14)上に、直線状のバスバー部(15a)とフィンガー部(15b)で構成される集電極15を備える。
図5(a)によれば、受光面のバスバー部15aとフィンガー部15bとは直交している(図5(a))。図5(a)および図5(b)において、バスバー部(15a,19a)は、太陽電子素子の両端部を結ぶ一体的な矩形形状を有している。
図1に示す太陽電池モジュールにおいて、太陽電池素子(5)は、角部が面取りされた矩形状である。受光面のバスバー部(15a)は、接続部材(26)と半田により接合されている。

オ 上記アないしエによれば、引用文献10には、下記の記載事項が認められる。
「角部が面取り状の矩形状である光電変換部の受光面上に、フィンガー部(15b)とフィンガー部に直交するバスバー部(15a)とからなる集電極(15)を備え、光電変換部の受光面と集電極との間にITO等からなる透明導電膜(14)を備える太陽電池素子。」
「複数の太陽電池素子(5)のバスバー電極(15a,19a)を、接続部材(21,22,26?40)を介して電気的に接続した太陽電池モジュール。」

(12)引用文献11には、以下の記載がある。
ア 「【0016】
また、p型非晶質シリコン(a-Si)層4上には、約100nmの厚みを有する透明導電膜としてのスパッタ法によりITO膜5が形成されている。このITO膜5は、SnO_(2)を添加したIn_(2)O_(3)によって形成されている。なお、ITO膜5の光の透過率を向上させるために、ITO膜5中のSnの含有率は、好ましくは、約5質量%以下、より好ましくは、約2質量%以下に設定する。この発明によるITO膜5は、後述するように、水との接触角が1度以下になるように、表面が改質されている。
【0017】
更に、このITO膜5の上面上の所定領域には、櫛型状の集電極(ペースト電極)6が形成されている。この集電極6は、銀(Ag)からなる導電性フィラーと熱硬化性樹脂とによって構成され、印刷により所定のパターンに形成されている。この集電極6は、図2に示すように、フィンガー部6Aとバスバー部6Bで構成されている。」

イ 「【0045】
図9に、この発明による光電変換素子素子1を用いた太陽電池モジュール11を示す。図9に示すように、太陽電池モジュール11は、複数の光電変換素子1を備えている。この複数の光電変換素子1の各々は、互いに隣接する他の太陽電池素子1と扁平形状の銅箔からなるタブ12を介して直列に接続されている。また、タブ12の一方端側は、所定の太陽電池素子1の上面側の集電極6(図1参照)に接続されるとともに、他方端側は、その所定の太陽電池素子1に隣接する別の太陽電池素子1の下面側の集電極10(図1参照)に接続されている。」

ウ 図1、2及び9は次のものである。


エ 以上ア及びイを踏まえて、上記ウの図1、2及び9をみると、次の事項が見てとれる。
図2によれば、集電極(6)は、フィンガー部(6A)と、フィンガー部に直交するバスバー部(6B)で構成される櫛形電極である。バスバー部(6B)は、太陽電子素子の両端部を結ぶ一体的な矩形形状を有している。
図1では、上面側のi型非晶質シリコン層(3)、p型非晶質シリコン層(4)およびITO膜(5)、ならびに裏面側のi型非晶質シリコン層(7)、n型非晶質シリコン層(8)およびITO膜(9)の端部が、n型単結晶シリコン基板(2)の端部よりも内側に位置している。
図9の太陽電池モジュール(11)は、複数の太陽電池素子(1)が、互いに隣接する他の太陽電池素子1と扁平形状の銅箔からなるタブ(12)を介して直列に接続されている。タブ(12)の一方端側は、所定の太陽電池素子(1)の上面側の集電極(6)に接続されるとともに、他方端側は、その所定の太陽電池素子1に隣接する別の太陽電池素子1の下面側の集電極(10)に接続されている。

オ 上記アないしエによれば、引用文献11には、下記の記載事項が認められる。
「上面側のi型非晶質シリコン層(3)、p型非晶質シリコン層(4)およびITO膜(5)、ならびに裏面側のi型非晶質シリコン層(7)、n型非晶質シリコン層(8)およびITO膜(9)の端部が、n型単結晶シリコン基板(2)の端部よりも内側に位置している。」
「透明導電膜としてのITO膜(5,8)が、シリコン基板の両主面の端縁部を除いた部分を覆うように設けられている。」

3 判断
(1)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1物発明とを対比する。
(ア)甲1物発明における「[1A]角部が面取り状である矩形状の光電変換部(説明図1の20)と、該光電変換部の一主面(説明図1の20a)の上に配された電極(説明図1の21a)とを有する太陽電池セル(説明図1の10)」は、本件特許発明1における「角部が面取り状である矩形状の光電変換部と、前記光電変換部の一主面の上に配された電極とを有する太陽電池セル」に相当する。

(イ)甲1物発明における「[1B]一主面は、第1の方向において面取り状角部(説明図1の20A?20D)が設けられている端部(説明図1の20a2,20a3)と、第1の方向において面取り状角部よりも中央側に位置している中央部(説明図1の20a1)とを含み」は、本件特許発明1における「前記一主面は、第1の方向において前記面取り状角部が設けられている端部と、前記第1の方向において前記面取り状角部よりも中央側に位置している中央部とを含み」に相当する。

(ウ)甲1物発明における「[1C]電極(説明図1の21a)」は、本件特許発明1における「前記電極」に相当する。

(エ)甲1物発明における「[1D]中央部に設けられており、第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部(説明図1の31)」は、本件特許発明1における「前記中央部に設けられており、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部」に相当する。

(オ)甲1物発明における「[1E]端部に設けられており、第2の方向に沿って延びる上底部(説明図1の32a1,32b1)及び下底部(説明図1の32a2,32b2)と、上底部の端部と下底部の端部とを接続しており、面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部(説明図1の32a3,32a4,32b3,32b4)とを含む台形状電極部(説明図1の32a,32b)」は、本件特許発明1における「前記端部に設けられており、前記第2の方向に沿って延びる上底部及び下底部と、前記上底部の端部と前記下底部の端部とを接続しており、前記面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部とを含む台形状電極部」に相当する。

(カ)甲1物発明における「[1F]第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と少なくとも端部で接続され、複数の線状電極部、上底部及び下底部と直接接続されている少なくともひとつのバスバー部(説明図1の33)」は、本件特許発明1における「前記第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と少なくとも前記端部で接続され、前記複数の線状電極部、前記上底部及び前記下底部と直接接続されている少なくともひとつのバスバー部」に相当する。

(キ)甲1物発明における「[1G]斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない、太陽電池セル(説明図1の10)。」は、本件特許発明1における「前記斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない、太陽電池セル。」に相当する。

(ク)上記(ア)ないし(キ)によれば、両者は
「角部が面取り状である矩形状の光電変換部と、前記光電変換部の一主面の上に配された電極とを有する太陽電池セルであって、
前記一主面は、第1の方向において前記面取り状角部が設けられている端部と、前記第1の方向において前記面取り状角部よりも中央側に位置している中央部とを含み、
前記電極は、
前記中央部に設けられており、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に沿って延びる複数の線状電極部と、
前記端部に設けられており、前記第2の方向に沿って延びる上底部及び下底部と、前記上底部の端部と前記下底部の端部とを接続しており、前記面取り状角部の端辺に沿って延びる一対の斜辺部とを含む台形状電極部と、
前記第1の方向に沿って設けられた複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線材と少なくとも前記端部で接続され、前記複数の線状電極部、前記上底部及び前記下底部と直接接続されている少なくともひとつのバスバー部とを有し、
前記斜辺部は前記バスバー部と直接接続されていない、太陽電池セル。」
である点で一致する。

イ 以上アの検討によれば、甲1物発明は本件特許発明1の構成をすべて備えている。
よって、本件特許発明1は、甲1物発明である。

(2)本件特許発明2について
ア 本件特許発明2は本件特許発明1を引用する発明であって、本件特許発明1に「前記バスバー部は、前記端部から前記中央部にわたり一体的な矩形形状を有する」との発明特定事項(以下「発明特定事項1」という。)を付加するものである。

イ 本件特許発明2と甲1物発明の対比
甲1物発明における「[1H]バスバー部(説明図1の33)は、端部(説明図1の20a2,20a3)から中央部(説明図1の20a1)にわたり一体的な矩形形状を有する(xii頁の写真)、太陽電池セル」は、発明特定事項1に相当する。
したがって、上記(1)での検討を踏まえると、甲1物発明は本件特許発明2の構成をすべて備えている。
よって、本件特許発明2は、甲1物発明である。

(3)本件特許発明3について
ア 本件特許発明3は本件特許発明1または2を引用する発明であって、本件特許発明1または2に、「前記台形状電極部は、前記第1の方向において前記上底部と前記下底部との間に位置しており、前記一対の斜辺部間を接続している線状の電極部をさらに含む」との発明特定事項(以下「発明特定事項2」という。)を付加するものである。

イ 本件特許発明3と甲1物発明の対比
発明特定事項2の点については、引用文献4に、「[4I]台形状電極部(32a,32b)は、第1の方向において上底部(32a1,32b1)と下底部(32a2,32b2)との間に位置しており、一対の斜辺部(32a3,32a4,32b3,32b4)間を接続している線状の電極部(32a5,32b5)をさらに含む」(上記「2」「(4)」「カ」「(イ)」)ことが、引用文献5に、「[5I]台形状電極部(32a,32b)は、第1の方向において上底部(32a1,32b1)と下底部(32a2,32b2)との間に位置しており、一対の斜辺部(128)間を接続している線状の電極部(32a5,32b5)をさらに含む」(上記「2」「(5)」「ソ」「(イ)」)ことが、及び、引用文献6に、「[6I]台形状電極部(32a,32b)は、前記第1の方向において上底部(32a1,32b1)と下底部(32a2,32b2)との間に位置しており、一対の斜辺部(32a3,32a4,32b3,32b4)間を接続している線状の電極部(32a5,32b5)をさらに含む」(上記「2」「(6)」「オ」)ことが記載されているといえる。
そして、甲1物発明の太陽電池セルにおいて、集電効率を上げることは周知の解決すべき課題であるところ、上記引用文献4?6に記載された事項のように、台形状電極部において、第1の方向において上底部と下底部との間に、一対の斜辺部間を接続している線状の電極部をさらに設けると集電効率が上がること当業者にとって明らかである。
したがって、甲1物発明に上記引用文献4?6に記載された事項を適用して、発明特定事項2に係る本件特許発明3の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。

(4)本件特許発明4について
ア 本件特許発明4は本件特許発明1ないし3のいずれかを引用する発明であって、本件特許発明1ないし3のいずれかに、「前記電極は、前記台形状電極部を複数含む」との発明特定事項(以下「発明特定事項3」という。)を付加するものである。

イ 本件特許発明4と甲1物発明の対比
発明特定事項3の点については、甲1物発明における「[1J]電極(21a)は、台形状電極部(32a,32b)を複数含む」が、発明特定事項3に相当する。
したがって、上記(1)及び(2)での検討を踏まえると、甲1物発明は本件特許発明1または2を引用し本件特許発明3を引用しない本件特許発明4の構成をすべて備えているから当該本件特許発明4は、甲1物発明である。
また、上記(3)での検討を踏まえると、本件特許発明3を引用する本件特許発明4は、甲1物発明に引用文献4?6に記載された事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

(5)本件特許発明5について
ア 本件特許発明5は本件特許発明1ないし4のいずれかを引用する発明であって、本件特許発明1ないし4のいずれかに、「前記一主面と前記電極との間において、前記一主面の端縁部を除いた部分を覆うように設けられている面状の透明導電膜をさらに備える」との発明特定事項(以下「発明特定事項4」という。)を付加するものである。

イ 本件特許発明5と甲1物発明の対比
発明特定事項4について検討する。
(ア)a 引用文献2に、「[2K]一主面と電極(14)との間において、一主面を覆うように設けられているITOからなる透明電極(13)をさらに備える」(上記「2」「(2)」「キ」「(イ)」)ことが記載されている。
また、引用文献2には、「透明電極13上には、集電極14が形成される」(上記「2」「(2)」「ア」)ことが記載されている。
b 引用文献10には、「角部が面取り状の矩形状である光電変換部の受光面上に、フィンガー部(15b)とフィンガー部に直交するバスバー部(15a)とからなる集電極(15)を備え、光電変換部の受光面と集電極との間にITO等からなる透明導電膜(14)を備える太陽電池素子。」(上記「2」「(11)」「オ」)が記載されている。
c 引用文献11には、「上面側のi型非晶質シリコン層(3)、p型非晶質シリコン層(4)およびITO膜(5)、ならびに裏面側のi型非晶質シリコン層(7)、n型非晶質シリコン層(8)およびITO膜(9)の端部が、n型単結晶シリコン基板(2)の端部よりも内側に位置している。」こと、及び、「透明導電膜としてのITO膜(5,8)が、シリコン基板の両主面の端縁部を除いた部分を覆うように設けられている。」(上記「2」「」(12)」「オ」)ことが記載されている。

(イ)甲1物発明の「太陽電池セル(10)」のような太陽電池セルにおいて集電効率を向上することは周知の課題であるところ、上記(ア)のとおり、「(半導体層からなる光電変換部の)一主面と電極との間において、一主面を覆うように設けられている面状の透明導電膜」を設けることは周知技術であり、このような、透明導電膜を設ければ、光電変換部と電極の間の接続による電気抵抗を低減し、集電効率が向上することは予測し得る程度のことにすぎないから、透明導電膜を設けることに格別の困難性はない。

(ウ)そして、甲1物発明の「面取り状角部」を有する「太陽電池セル(10)」に、「一主面と電極との間において、一主面を覆うように設けられている面状の透明導電膜」を設けるに際して、その端部をどのようにするかは、適宜定めるべき設計的事項であるところ、「電極」と「面状の透明導電膜」の関係は、引用文献2に「透明電極13上には、集電極14が形成される」(上記「(イ)」「a」)、及び、引用文献10に「受光面と集電極との間にITO等からなる透明導電膜(14)を備える」(上記「(イ)」「b」)と記載されているように、端部での集電効率を考慮すれば、その端部において透明導電膜が一対の斜辺部(電極)よりも外側に至る様に設けられることは当然の構成にすぎない。
さらに、引用文献11に「ITO膜の端部が、n型単結晶シリコン基板(2)の端部よりも内側に位置している」(上記「(イ)」「c」)と記載されている構成を採用して、端部において透明導電膜を面取り状角部の端辺に沿って形成されてものとなすことにも格別の技術的困難性はない。
よって、引用文献2、10及び11に記載の周知の技術的事項より上記発明特定事項4に係る本件特許発明5の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ したがって、上記(1)、(2)及び(4)での検討を踏まえると、本件特許発明3を引用しない本件特許発明5は、甲1物発明、並びに、引用文献2、10及び11に記載の周知の技術的事項より当業者が容易に想到し得たものである。
また、上記(1)ないし(4)での検討を踏まえると、本件特許発明3を引用する本件特許発明5は、甲1物発明、引用文献4?6に記載された事項、並びに、引用文献2、10及び11に記載の周知の技術的事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

(6)本件特許発明8について
ア 本件特許発明8は本件特許発明1?7のいずれかを引用する発明であって、本件特許発明1?7のいずれかに、「前記一主面は、受光面である」との発明特定事項(以下「発明特定事項5」という。)を付加するものである。

イ 本件特許発明1?5のいずれかを引用し、本件特許発明6及び7を引用しない本件特許発明8(以下「当該本件特許発明8」という。)と甲1物発明の対比
発明特定事項5の点については、甲1物発明における「[1L]一主面が、受光面(20a)である」が、発明特定事項5に相当する。
したがって、上記(1)、(2)及び(4)での検討を踏まえると、甲1物発明は、本件特許発明1または2を引用する本件特許発明8、ないし、本件特許発明3を引用しない本件特許発明4を引用する本件特許発明8の構成をすべて備えている。
よって、本件特許発明1または2を引用する本件特許発明8、ないし、本件特許発明3を引用しない本件特許発明4を引用する本件特許発明8は、甲1物発明である。
また、上記(1)ないし(4)での検討を踏まえると、本件特許発明3を引用する本件特許発明8、及び、本件特許発明3を引用する本件特許発明4を引用する本件特許発明8は、甲1物発明に引用文献4?6に記載された事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。
さらに、上記(1)ないし(5)での検討を踏まえると、本件特許発明3を引用しない本件特許発明5を引用する本件特許発明8は、甲1物発明、並びに、引用文献2、10及び11に記載の周知の技術的事項より当業者が容易に想到し得たものであり、また、本件特許発明4を引用する本件特許発明5を引用する本件特許発明8は、甲1物発明、引用文献4?6に記載された事項、並びに、引用文献2、10及び11に記載の周知の技術的事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

(7)本件特許発明9について
ア 本件特許発明9は本件特許発明1?8のいずれかを引用する発明であって、本件特許発明1?8のいずれかの複数の太陽電池セルに関して、「前記複数の太陽電池セルを電気的に接続している配線材と、を備え、前記配線材は、前記複数の線状電極部と交差するように配されている、太陽電池モジュール。」との発明特定事項(以下「発明特定事項6」という。)を付加するものである。

イ 本件特許発明1?5のいずれかを引用し、本件特許発明6及び7を引用しない本件特許発明9、並びに、本件特許発明1?5のいずれかを引用し、本件特許発明6及び7を引用しない本件特許発明8を引用する本件特許発明9(以下「当該本件特許発明9」という。)と甲1物発明の対比
発明特定事項6の点については、甲1物発明における、「[1M]複数の太陽電池セル(10)と、[1N]複数の太陽電池セルを電気的に接続している配線材と、を備え、[1O]配線材は、複数の線状電極部と交差するように配されている、太陽電池モジュール」が、発明特定事項6に相当する。
したがって、上記(1)、(2)、(4)及び(6)での検討を踏まえると、甲1物発明は、本件特許発明1または2を引用する本件特許発明9、本件特許発明1または2を引用し本件特許発明3を引用しない本件特許発明4を引用する本件特許発明9、本件特許発明1または2を引用し本件特許発明3を引用しない本件特許発明4を引用する本件特許発明8を引用する本件特許発明9の構成をすべて備えているから、当該本件特許発明9は、甲1物発明である。
また、上記(1)ないし(4)及び(6)での検討を踏まえると、本件特許発明3を引用し本件特許発明5を引用しない本件特許発明9は、甲1物発明に引用文献4?6に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
さらに、上記(1)ないし(6)での検討を踏まえると、本件特許発明5を引用する本件特許発明9は、甲1物発明、引用文献4?6に記載された事項、並びに、引用文献2、10及び11に記載の周知の技術的事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件特許発明1、2、4、8、9の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
また、本件特許発明3?5、8、9の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許発明1?5、8、9の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-06-16 
出願番号 特願2010-265592(P2010-265592)
審決分類 P 1 652・ 113- ZB (H01L)
P 1 652・ 536- ZB (H01L)
P 1 652・ 121- ZB (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 佐藤 俊彦  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森林 克郎
松川 直樹
登録日 2015-12-25 
登録番号 特許第5857237号(P5857237)
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 太陽電池セル及び太陽電池モジュール  
代理人 寺谷 英作  
代理人 新居 広守  
代理人 道坂 伸一  

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