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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1331601
審判番号 不服2016-9845  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-30 
確定日 2017-08-14 
事件の表示 特願2012- 72335「光拡散フィルム、偏光板、画像形成装置および表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 7日出願公開、特開2013-205512〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月27日の出願であって、平成27年9月7日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月16日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出され、平成28年3月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年6月30日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年6月30日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成28年6月30日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成28年6月30日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、平成27年10月16日付け手続補正によって補正された本件補正前の請求項8に、
「透過光を拡散させる光拡散フィルムであって、
前記光拡散フィルムのフィルム面への法線方向に進む光を拡散させる複数の回折格子素子を備え、
前記複数の回折格子素子は、互いに異なる格子パターンで形成され、前記光拡散フィルムのフィルム面に沿って並べられており、
前記回折格子素子の格子パターンが、凹凸面によって形成されており、
前記複数の回折格子素子の間で、前記凹凸面のピッチに対する前記凹凸面をなす凸部の幅の比、前記凹凸面をなす凸部の高さ、及び、前記凹凸面の断面形状、のうちの一以上が異なっている、
光拡散フィルム。」とあったものを、

「透過光を拡散させる光拡散フィルムであって、
前記光拡散フィルムのフィルム面への法線方向に進む光を拡散させる複数の回折格子素子を備え、
前記複数の回折格子素子は、互いに異なる格子パターンで形成され、前記光拡散フィルムのフィルム面に沿って並べられており、
前記回折格子素子の格子パターンが、凹凸面によって形成されており、
前記複数の回折格子素子の間で、前記凹凸面のピッチに対する前記凹凸面をなす凸部の幅の比、前記凹凸面をなす凸部の高さ、及び、前記凹凸面の断面形状、のうちの一以上が異なっており、
前記複数の回折格子素子に、一定方向から入射する光の当該複数の回折格子素子での回折方向の少なくとも一部は、互いに重なり合う、
光拡散フィルム。」とする補正を含むものである(下線は当審で付した。以下同様。)。

(2)本件補正後の請求項8に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項8に係る発明を特定するために必要な事項である「複数の回折格子素子」に入射する光の回折方向について、「前記複数の回折格子素子に、一定方向から入射する光の当該複数の回折格子素子での回折方向の少なくとも一部は、互いに重なり合う」とするものである。

2 本件補正の目的
上記1の補正は、本件補正前の請求項8において記載されていた「複数の回折格子素子」を、当初明細書の【0076】の記載に基づいて、その「複数の回折格子素子」に「一定方向から入射する光の当該複数の回折格子素子での回折方向の少なくとも一部は、互いに重なり合う」であることに限定するものである。
そうすると、本件補正後の請求項8は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正は、本件補正前の請求項8に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項8に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。以下「独立特許要件」という。)について以下検討する。

3 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-202112号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 モザイク状の素子要素に分割されており、各素子要素はモザイク状に配置された格子単位からなり、各格子単位には直線回折格子が形成されており、格子単位の素子要素上での配置位置に応じて、その直線回折格子の格子間隔と格子方向が異なっており、素子要素に所定の方向から特定波長の照明光を入射させる場合に、素子要素中での格子単位の配置位置に対応してその格子単位からの回折光が所定の観察面上の別々の領域に入射するように、前記直線回折格子の格子間隔と格子方向が設定されていることを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】 モザイク状の素子要素に分割されており、各素子要素には曲線回折格子が形成されており、素子要素上での位置に応じてその曲線回折格子の格子間隔と格子方向が異なっており、素子要素に所定の方向から特定波長の照明光を入射させる場合に、素子要素中での曲線回折格子の位置に対応してその曲線回折格子からの回折光が所定の観察面上の別々の領域に入射するように、前記曲線回折格子の格子間隔と格子方向が設定されていることを特徴とする回折光学素子。
【請求項3】 回折光学素子面上での位置に応じて格子間隔と格子方向が異なる波状曲線状の曲線回折格子が形成されており、回折光学素子に所定の方向から特定波長の照明光を入射させる場合に、曲線回折格子の位置に対応してその曲線回折格子からの回折光が所定の観察面上の別々の領域に入射するように、前記曲線回折格子の格子間隔と格子方向が設定されていることを特徴とする回折光学素子。
【請求項4】 各素子要素は同一回折特性のものからなることを特徴とする請求項1又は2記載の回折光学素子。
【請求項5】 各素子要素は回折光学素子面上での配置位置に応じて回折方向が変調されており、回折光学素子面から一定の距離において同一範囲中に回折光を向ける回折特性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の回折光学素子。
【請求項6】 前記曲線回折格子は繰り返しパターンからなることを特徴とする請求項3記載の回折光学素子。
【請求項7】 前記曲線回折格子は回折光学素子面上での配置位置に応じて回折方向が変調されており、回折光学素子面から一定の距離において同一範囲中に回折光を向ける回折特性を有することを特徴とする請求項3記載の回折光学素子。
【請求項8】 反射型液晶表示装置の一部に反射板として配置されていることを特徴とする請求項1から7の何れか1項記載の回折光学素子。」
イ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、光学素子に散乱機能を持たせるという観点から見ると、干渉露光により作成されたホログラム素子は、散乱機能は実現できるが、感光材料に無数の干渉縞が多重記録されることになり、現在の感光材料では回折効率が低下してしまう。また、散乱性の物体光同志の干渉によるノイズの記録によっても回折効率が低下してしまう問題がある。
【0006】また、セル型の計算機ホログラムの場合は、その作成のための計算に時間がかかり、一般に理想的な干渉縞を得ることはできず、ノイズが多く回折効率が低い。また、インラインのホログラムの計算方法はあるが、オフラインの計算方法は確立していない問題がある。
【0007】本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単なパターンの回折格子集合体を用いて高い回折効率で散乱機能を有する回折光学素子を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の回折光学素子は、モザイク状の素子要素に分割されており、各素子要素はモザイク状に配置された格子単位からなり、各格子単位には直線回折格子が形成されており、格子単位の素子要素上での配置位置に応じて、その直線回折格子の格子間隔と格子方向が異なっており、素子要素に所定の方向から特定波長の照明光を入射させる場合に、素子要素中での格子単位の配置位置に対応してその格子単位からの回折光が所定の観察面上の別々の領域に入射するように、前記直線回折格子の格子間隔と格子方向が設定されていることを特徴とするものである。」
ウ 「【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の回折光学素子の実施例について説明する。図1は本発明の実施例1の回折光学素子の構成と作用を説明するための図である。図1(a)に示すように、この実施例の回折光学素子1は、2次元的に規則的あるいは不規則にモザイク状に配置された同じ特性の素子要素2からなる。図の場合は、素子要素2は碁盤の目状に配置されている。各素子要素2は、図1(b)に示すように、2次元的に規則的あるいは不規則にモザイク状に配置された格子単位2’からなる。図の場合は、格子単位2’は素子要素2中に碁盤の目状に配置されている。いま、格子単位2’を配置位置に応じて図示のようにa,b,c,d,・・・・と符号と付ける。
【0015】さて、回折光学素子1の各素子要素2に、図1(a)に示すように、所定の方向から入射する特定波長λの照明光3を照射すると、回折光学素子1が反射型の場合は反射方向に、透過型の場合は透過方向に(図の場合は、反射型としている。)回折光4を回折し、その回折光4は観察面5に入射するように素子要素2が構成されている。これを詳細に見ると、各素子要素2の格子単位2’(a)で回折された光は観察面5の領域aに、格子単位2’(b)で回折された光は観察面5の領域bに、格子単位2’(c)で回折された光は観察面5の領域cというように、格子単位2’の配置位置に対応してそれからの回折光4が観察面5上の別々の領域に入射する。図1の場合は、格子単位a,b,c,d,・・・・の相対位置と、観察面5の領域a,b,c,d,・・・・の相対位置とが相互に相似形の位置になっているが、この条件は必ずしも必要ではない。
【0016】図1(c)に図1(a)に示したような対応で各素子要素2から回折光4が観察面5に入射するための各素子要素2の格子単位2’に配置される回折格子の形を模式的に示してある。各格子単位2’に直線状の回折格子が刻まれており、格子単位2’の素子要素2上での配置位置に応じて、その直線回折格子の格子間隔と格子方向が異なっており、上記のように、格子単位2’(a)で回折された光は観察面5の領域aに、格子単位2’(b)で回折された光は観察面5の領域bに、格子単位2’(c)で回折された光は観察面5の領域cというように、格子単位2’の配置位置に対応してそれからの回折光4が観察面5上の別々の領域に入射するようになっている。
【0017】回折光学素子1上に2次元的に規則的あるいは不規則に配置された素子要素2は全て同じ特性を有するので、観察面5上での各素子要素2からの回折光4は相互に素子要素2の縦横寸法分ずれるが、図1(a)に示した破線の枠で囲まれる観察面5の大きさが回折光学素子1の大きさより大きい場合には、観察面5の略中央に位置する観察者の眼には、回折光学素子1の略全ての領域から回折光4が入射することになるので、回折光学素子1は高い回折効率の散乱機能を有する反射型あるいは透過型の拡散板として使用可能である。
【0018】なお、各素子要素2の格子単位2’に刻まれる直線回折格子としては、振幅型、位相型、レリーフ型、体積型何れでもよいが、レリーフ型で構成するのが現実的である。また、その描画方法としては、電子ビームあるいはレーザービームを用いて描画する方法、2つの平行光束を干渉させて露光する方法等があるが、ビームで描画する方法が現実的である。」
エ 「【0022】ところで、図1(a)に示したような構成と特性を有する回折光学素子1を反射型でレリーフ型の拡散板10(図2)として構成するには、図1(c)に示したような直線回折格子6の群からなる凹凸レリーフパターンを、例えば透明樹脂11表面にエンボスし、エンボスされた凹凸レリーフパターン上にアルミニウム等の反射金属からなる反射膜12あるいは反射多層薄膜12を形成することにより作成される。
【0023】このような特性の反射型でレリーフ型の拡散板10は、例えば図2に断面を示したような液晶表示素子40の観察側とは反対側に配置することにより、明るい表示が可能な反射型液晶表示装置を実現することができる。ここで、液晶表示素子40は、例えば図9について説明したような構成とする。本発明による反射型の拡散板10を液晶表示素子40とこのように組み合わせることにより、液晶表示素子40の表示側から入射する照明光32を、液晶表示装置の観察域に合致する角度範囲θに拡散光33を拡散反射させ、明所で自発光型のバックライトを使用することなしに明るい表示が可能になる。なお、本発明による反射型の拡散板10を反射型液晶表示装置の液晶層と背面基板の間に反射板として配置してもよい。この場合は、回折光学素子1の反射層12が光反射性電極を兼ねることになる。
【0024】ところで、以上のような回折光学素子1及びレリーフ型の拡散板10は、図1の説明から明らかなように、観察位置あるいは観察方向により色がついて見える。このような着色を防止するためには、回折光学素子1あるいは拡散板10に自体に、回折による散乱性に加えて、スリガラスのような散乱性を合わせ持たせると、白色に見えるようになる。そのためには、例えば、反射型でレリーフ型の拡散板10の場合、裏面に凹凸レリーフパターンを有する透明樹脂11の表面側を微細な凹凸からなるスリ面18にするか(図3(a))、その透明樹脂11中に屈折率の異なる微細な粉末19を分散させて(図3(b))回折光を散乱させるようにすればよい。
【0025】次に、図4に図1の実施例の変形例を示す。図1(b)、(c)を参照すると明らかなように、各素子要素2の格子単位2’の回折格子6を図の上辺部のaからeにわたって滑らかに接続すると、図4(b)のa?b?cに示すように、連続的な曲線からなる回折格子6’になる。図1(b)、(c)の下辺部についても同様に滑らかに接続すると、図4(b)のd?e?fに示すように、連続的な曲線からなる回折格子6”になる。ただし、図4(b)の上辺部のa?b?cの回折格子6’の格子間隔は、下辺部のd?e?fの回折格子6”の格子間隔よりも狭くなる。」
オ 「【0028】ところで、以上の図1、図4、図5何れの実施例においても、回折光学素子1の面上の何れの領域の素子要素2あるいは回折格子も位置によらず同じ回折特性を有するものであった。すなわち、図6(a)に示すように、回折光学素子1の異なる位置(領域)1’、1”から回折される光が観測できる観察可能領域5’、5”は位置(領域)1’、1”のずれ分だけ相互にずれており、図6(a)の場合には、回折光学素子1の左右端の領域1’、1”が見える観察可能域は斜線ハッチを付した領域に限定され狭くなってしまう。
【0029】そこで、別の実施例においては、回折光学素子1の面上の素子要素2あるいは回折格子を位置によらず同じ回折特性のものとするのではなく、図1、図4の実施例においては、素子要素2中の回折格子6、6’、6”等の形状を回折光学素子1中の素子要素2の位置に応じて変形させ、また、図5の実施例においては、回折格子16、16’等の形状を回折光学素子1中の位置に応じて変形させ、それぞれの位置から回折光4の主光線がある位置(回折光学素子1から距離Lの位置)で一致するようにする。この様子を図6(b)に示してある。図6(b)に示すように、回折光学素子1の異なる位置(領域)1’、1”から回折される光が観測できる観察可能領域5’、5”は、回折光学素子1から距離Lの位置で一致するので、この一致する領域5’(5”)内では回折光学素子1の全面が見えるため、図6(a)の場合に比べて観察可能範囲が広くなる。
【0030】以上に、本発明の回折光学素子のいくつかの実施例について説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限定されず種々の変形が可能である。なお、本発明に基づく回折光学素子1を反射型でレリーフ型の拡散板10(図2)として構成する場合には、反射膜12として半透過性のものを用い、液晶表示素子40と反対側にバックライト光源を配置し、暗所ではこのバックライト光源を点灯することにより、明るい表示が可能な透過型と反射型の表示が可能な液晶表示装置とすることもできる。また、本発明の回折光学素子は、反射型液晶表示装置用の反射拡散板以外にも、例えば表示用の反射板等に用いることが可能である。また、本発明の回折光学素子は反射板だけでなく、反射層12を設けないで透過型として透過板として構成してもよい。」
カ 「【図1】


キ 「【図6】


ク 上記アないしキからみて、引用例1には、透明樹脂11表面にエンボスし、エンボスされた凹凸レリーフパターン上にアルミニウム等の反射金属からなる反射膜12あるいは反射多層薄膜12を形成することにより作成された反射型の拡散板10において、反射層12を設けずに構成した回折光学素子からなる透過型の拡散板として、次の発明が記載されている。
「回折光学素子1からなる透過型の拡散板であって、
所定の方向から入射する特定波長λの照明光3を照射すると、透過方向に回折光4を回折し、
前記回折光学素子1は、2次元的に規則的あるいは不規則にモザイク状に配置された同じ特性の素子要素2からなり、
各素子要素2は、2次元的に規則的あるいは不規則にモザイク状に配置された格子単位2’からなり、
各格子単位2’に直線回折格子が刻まれており、格子単位2’の素子要素2上での配置位置に応じて、その直線回折格子の格子間隔と格子方向が異なっており、
前記直線回折格子は、凹凸レリーフパターンを、透明樹脂11表面にエンボスして作成され、
回折格子等の形状を回折光学素子1中の位置に応じて変形させることにより、それぞれの位置から回折光4の主光線が回折光学素子1から距離Lの位置で一致するようにし、回折光学素子1の異なる位置(領域)1’、1”から回折される光が観測できる観察可能領域5’、5”は、回折光学素子1から距離Lの位置で一致し、この一致する領域5’(5”)内では回折光学素子1の全面が見えるようにした、
透過型の拡散板。」(以下「引用発明」という。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用文献6として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-100224号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の発光装置は、第1,第2のプリズムアレイ板38,39に多数のプリズムがあるとはいえ、その一辺が例えば0.16mmと光の波長に比べて相当大きいものであるうえ、各プリズムが協同することなく個別に光を純幾何光学的に全反射または屈折するものであるため、出射面の輝度を全体に高めようとすると、各プリズムの谷間にあたる箇所で乱反射が起きて出射光量が減り、出射面である第2のレンズフィルム43面に極端な明暗のコントラストが生じるという問題がある。また、上記従来の発光装置は、反射ミラー32、レンズフィルム33、冷陰極管34からなる1対の光源ユニット35a,35b、2つのプリズムアレイ板38,39、2つのレンズフィルム40,43、透明板41、拡散板42、反射板36など多数の部材で複雑に構成されているため、これら光媒体を通る間の光損失も大きく、線光源の発生光量を高効率で面照明に変換できないうえ、製造コストの低減および装置の軽量化や薄型化が難しいという問題がある。ここで、装置を小型化すべく線光源である冷陰極管34に代えて、点光源である発光ダイオードなどを使おうとすると、上述の明暗のコントラストや光路中の光損失が原因で、十分な輝度の満足な均一線光源を得ることができない。
【0005】そこで、本発明の目的は、光の幾何光学的性質を利用した従来のプリズムによる全反射や屈折でなく、微細加工の難しさなどから今まで用いられることがなかった回折格子による光の波動的性質に基づく回折現象を利用して、コストダウンと小型化を図りつつ、従来より遥かに高効率に点光源を均一な輝度の線光源に変換でき、さらには導光板の端面の線光源として利用すれば好適な点-線光源変換導光体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の点光源を線光源に変換する点-線光源変換導光体は、矩形断面をもつ透明な棒状体からなり、この棒状体の一方の側面または少なくとも一端面から点光源の光が入射するとともに、上記棒状体の一方の側面または他方の側面に、上記点光源から入射した光を上記他方の側面から出射するように回折させる回折格子が設けられ、この回折格子の断面形状または単位幅における非格子部幅に対する格子部幅の割合の少なくとも1つが、上記他方の側面における輝度が増大し、かつ均一化されるように変化せしめられていることを特徴とする。」
イ 「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図2(A),(B)は、本発明の請求項1に記載の点-線光源変換導光体の一実施形態を示す夫々斜視図、平面図である。この点-線光源変換導光体1は、図2(A)に示すように、正方形断面をもつ透明樹脂製の棒状体からなり、この棒状体の両端面1c,1dから点光源5a,5b(図2(B)参照)の光Iが入射するとともに、棒状体の一方の側面1aに入射した光Iを他方の側面1bから出射するように回折させる反射型の回折格子2が設けられている。回折格子2は、図2(A)では図1と同様に一定格子間隔dで設けられているように描かれているが、実際には、図2(B)に示す単位幅Wにおける非格子部幅に対する格子部幅の割合が、両端面1c,1dからの到達光量の減少に応じて回折光量が増加するように、中央部に近づくに従って次第に大きくなるように設定されている。ここで、単位幅Wとは、1つの格子部幅3と1つの非格子部幅4との和であり、単位区間の幅である。図2(B)の導光板1の側面1aには、模式的に示された単位幅Wを有する14個の区間が設けられ、格子部幅は各区間の太線部分3、非格子部幅は各区間の細線部分4で夫々示されており、中央部に近づくほど各区間での太線部分3の割合、つまり格子部幅が増えていることから、回折光量が増えることが理解できる。なお、上記区間の数は、説明の便宜上14個としたが、実際には遥かに多い数で、例えば1例では1000個程度である。また、回折格子2の断面形状および格子間隔dは、光源の波長λに対して側面1bの照明に寄与する高次の回折光の全回折光に占める割合が多くなるように設定されている。
【0015】この実施形態では、格子部3と非格子部4を各単位幅Wの左右に2分して設けたが、両者を1つの単位幅中に交互に設けてその単位幅に特定の非格子部幅に対する格子部幅の割合が得られるようにしてもよい。また、非格子部幅に対する格子部幅の割合は、必ずしも図2(B)のように中央部に近づくにつれて漸増させる必要はなく、他方の側面1bで高くかつ均一な輝度が得られる限り、任意に変化させることができる。この実施形態では、回折格子2は、格子間隔dが数μmで、内面に刻線溝を機械加工した金型を用いて導光体と同時に成形されるが、本発明の回折格子は、間隔dが0.1?10μm、回折格子のホログラム膜を内挿したインモールド成形、導光板裏面への刻線溝の機械加工、または導光板裏面への印刷やホログラムによる回折格子膜の張付けによっても作成することができる。」
ウ 「【0020】図3は、請求項1に記載の点-線光源変換導光体の他の実施形態を示す斜視図である。この点-線光源変換導光体11は、図2の両端面にある点光源5a,5bを一方の側面11aの後方に置き換えて4個にするとともに、一方の側面11aの回折格子を透過型にした点が図2の実施形態と異なる。反射型と透過型の回折格子のレリーフ形状は、Maxwell の方程式から導かれる回折の理論式に基づいて、所望の回折を起こさせるような計算をコンピュータを用いて行なうことにより求めることができ、その際、反射率を変化させることができる。また、側面1aの各単位幅Wにおける非格子部幅に対する格子部幅の割合は、4つの点光源5に対する各単位幅Wの相対位置によって決まる点光源からの受光量が減じるにしたがって、次第に大きくなっている。
【0021】この実施形態によれば、点光源5からの光は、側面11aの受光量の多い単位幅部で弱く、受光量の少ない単位幅部で強く夫々回折されるので、他方の側面1bは非常に均一な輝度で照らされるから、点光源5,5,…からの光を高輝度で均一な線光源に変換することができる。なお、この実施形態の他方の側面11bにも、既に述べたと同様に縦方向または横方向にプリズムアレイを設けることができ、これによって一層効率的な点光源から線光源への変換を行なうことができる。」
エ 「【図2】

【図3】



(3)原査定の拒絶の理由に引用文献7として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-325218号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明な板状体の少なくとも一端面から入射する光源からの光を、上記板状体の裏面に設けられた回折格子によって板状体の表面側へ回折させる導光板であって、
上記回折格子の断面形状または単位幅における格子部幅/非格子部幅の比の少なくとも1つが、上記導光板の表面における輝度が増大し、かつ均一化されるように変化せしめられていることを特徴とする導光板。」
イ 「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図2は、液晶表示装置のバックライトに用いられた導光板の一実施の形態を示しており、この液晶表示装置は、液晶表示パネル10と、この下部に設けられた平面照光装置1からなる。上記平面照光装置1は、裏面2bに回折格子3が設けられた透明プラスティック樹脂からなる導光板2と、この導光板2の厚肉側端辺2cに沿って配置された光源としての冷陰極またはセミホット電極をもつ蛍光管4と、上記導光板2の表面2a以外と蛍光管4を囲むように覆って光を反射するリフレクタ5と、上記導光板2の表面2a側に平行に配置された拡散板6と、この拡散板6の表面側に平行に配置された集光用のプリズムシート7で構成される。
【0014】上記導光板2の裏面2bは、蛍光管4から略水平に入射する光を全面で受け得るように表面2aに対して0.5°?5°の角度で傾斜するとともに、微細な刻線溝として成形加工された回折格子3を有する。回折格子3の格子間隔dは、回折の関係式(1)で既に述べたように、低次の回折光が表面2aから略垂直でかつ全反射の方向に一致して出射するように設定される。また、回折格子3の単位幅における格子部幅/非格子部幅の比は、蛍光管4からの到達光量の減少に応じて回折光量が増加するように、端辺2cから離れるに従って次第に大きくなるように設定されている。ここで、単位幅とは、1つの格子部幅と1つの非格子部幅との和であり、単位区間の幅である。図2の導光板2の裏面2bには、模式的に示された単位幅を有する11個の区間が設けられ、格子部幅は各区間の太線部分、非格子部幅は各区間の細線部分で夫々示されており、端辺2cから離れるほど各区間での太線部分の割合,つまり格子部幅が増えていることから、回折光量が増えることが理解できる。なお、上記区間の数は、説明の便宜上11個としたが、実際には遥かに多い数で、例えば1例では1000個程度である。」
ウ 「【図2】



4 対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「透過型の拡散板」は、透過した光を拡散させる板、すなわちフィルムといえるから、本願補正発明の「透過光を拡散させる光拡散フィルム」に相当する。
イ 引用発明の「透過型の拡散板」(本願補正発明の「透過光を拡散させる光拡散フィルム」に相当。以下「」に続く()内の用語は対応する本願補正発明の用語を表す。)は、回折光学素子1からなり、前記回折光学素子1は、2次元的に規則的あるいは不規則にモザイク状に配置された同じ特性の素子要素2からなり、各素子要素2は、2次元的に規則的あるいは不規則にモザイク状に配置された格子単位2’からなり、各格子単位2’に直線回折格子が刻まれ、前記直線回折格子は、凹凸レリーフパターンを、透明樹脂11表面にエンボスして作成されている。そうすると、引用発明の「格子単位2’」は、格子パターンが凹凸面によって形成された直線回折格子が刻まれて構成されており、本願補正発明の「回折格子素子」に相当する。また、引用発明は、本願補正発明の「前記回折格子素子の格子パターンが、凹凸面によって形成されており、」との構成を具備することも明らかである。
ウ 引用発明の「透過型の拡散板」(光拡散フィルム)は、所定の方向から入射する特定波長λの照明光3を照射すると、透過方向に回折光4を回折するものである。そうすると、引用発明の「格子単位2’」(回折格子素子)が、入射する照明光3を回折させ、結果として、照明光3を拡散させていることは技術常識である。そして、引用発明において、「透過型の拡散板」(光拡散フィルム)の板面への法線方向に進む光についても拡散させることは明らかである。してみると、引用発明は、本願補正発明の「前記光拡散フィルムのフィルム面への法線方向に進む光を拡散させる複数の回折格子素子を備え」るとの構成を具備する。
エ 引用発明において、「格子単位2’」(回折格子素子)の素子要素2上での配置位置に応じて、刻まれている直線回折格子の格子間隔と格子方向が異なっており、直線回折格子の格子間隔と格子方向は格子パターンであるといえるから、複数の「格子単位2’」(回折格子素子)は、素子要素2上、すなわち「透過型の拡散板」(光拡散フィルム)面に沿って並べられている配置位置に応じて、格子パターンが異なっているといえる。そして、本願補正発明において、「複数の回折格子素子」が「互いに異なる格子パターンで形成され」ていることは、本願の明細書の記載全体を参酌しても、光拡散フィルムのフィルム面に沿って並べられる全ての回折格子素子が異なる格子パターンを有しているという意味ではなく、複数種類の格子パターンを有する回折格子素子が存在するという意味であると解される。してみると、引用発明は、本願補正発明の「前記複数の回折格子素子は、互いに異なる格子パターンで形成され、前記光拡散フィルムのフィルム面に沿って並べられており、」との構成を具備するといえる。
オ 引用発明において、回折格子等の形状を回折光学素子1中の位置に応じて変形させることにより、それぞれの位置から回折光4の主光線が回折光学素子1から距離Lの位置で一致するようにし、回折光学素子1の異なる位置(領域)1’、1”から回折される光が観測できる観察可能領域5’、5”は、回折光学素子1から距離Lの位置で一致し、この一致する領域5’(5”)内では回折光学素子1の全面が見えるようにしたものであるから、一定方向から入射する光の各「格子単位2’」(回折格子素子)での回折方向は、互いに重なり合うといえる。そうすると、引用発明は、本願補正発明の「前記複数の回折格子素子に、一定方向から入射する光の当該複数の回折格子素子での回折方向の少なくとも一部は、互いに重なり合う」との構成を具備する。
カ 上記アないしオからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「透過光を拡散させる光拡散フィルムであって、
前記光拡散フィルムのフィルム面への法線方向に進む光を拡散させる複数の回折格子素子を備え、
前記複数の回折格子素子は、互いに異なる格子パターンで形成され、前記光拡散フィルムのフィルム面に沿って並べられており、
前記回折格子素子の格子パターンが、凹凸面によって形成されており、
前記複数の回折格子素子に、一定方向から入射する光の当該複数の回折格子素子での回折方向の少なくとも一部は、互いに重なり合う、
光拡散フィルム。」である点(以下、「一致点」という。)で一致し、次の点で相違する。

・相違点
本願補正発明では、「前記複数の回折格子素子の間で、前記凹凸面のピッチに対する前記凹凸面をなす凸部の幅の比、前記凹凸面をなす凸部の高さ、及び、前記凹凸面の断面形状、のうちの一以上が異なって」いるのに対し、
引用発明では、複数の格子単位(回折格子素子)の間で、直線回折格子の格子間隔と格子方向が異なっているものではあるものの、凹凸面のピッチに対する前記凹凸面をなす凸部の幅の比、前記凹凸面をなす凸部の高さ、及び、前記凹凸面の断面形状、のうちの一以上が異なっているものではない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 回折格子の単位幅における非格子部幅に対する格子部幅の割合を変化させることにより、観察面側における輝度を均一化することは本願の出願前に周知(以下「周知技術」という。例.上記引用例2(上記3(2)参照。)、上記引用例3(上記3(3)参照。))である。
イ 引用発明において、観察可能領域における輝度を均一化することが望ましいことは明らかであり、格子単位2’の素子要素2上での配置位置に応じて、その直線回折格子の凹凸面のピッチに対する前記凹凸面をなす凸部の幅の比(デューティ比)を調整することで、前記輝度の均一化が達成できることは、上記周知技術に接した当業者であれば容易に想起し得たことである。してみると、引用発明において、観察可能領域の輝度が均一化するように、格子単位2’の素子要素2上での配置位置に応じて、その直線回折格子の格子間隔と格子方向だけでなく、凹凸面のピッチに対する前記凹凸面をなす凸部の幅の比(デューティ比)を変化させた構成も採用すること、すなわち、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。
ウ また、以下に示す理由によっても、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことといえる。
(ア)回折格子において、デューティ比や格子の高さ等を調整することにより所望の回折効率を得ることは技術常識(例.特開2011-170257号公報(【0061】参照。)、特開2011-209662号公報(【請求項5】参照。)、特開2007-173614号公報(【0018】参照。))である。
(イ)引用発明は、回折光学素子1の異なる位置(領域)1’、1”から回折される光が観測できる観察可能領域5’、5”は、回折光学素子1から距離Lの位置で一致し、この一致する領域5’(5”)内では回折光学素子1の全面が見えるようにしたのである。当該事項を踏まえると、引用発明において、観察者が、観察可能領域の略中央位置で視聴することを想定すると、観察可能領域の端部位置(例えば1’,1”)からの光は、出射角度が大きい回折光で、観察可能領域の中央位置からの光は、出射角0°近傍の回折光ということになる。観察可能領域の略中央位置で視聴することを想定して、観察可能領域における輝度の均一化を実現するには、端部近傍の素子では高次数の回折光の強度を強くし、中央部近傍の素子では低次数の回折光の強度を強くする必要がある。
(ウ)引用例1の【0007】(上記3(1)イ)には、発明の目的として、簡単なパターンの回折格子集合体を用いて高い回折効率で散乱機能を有する回折光学素子を提供することが記載されており、上記(イ)からみて、引用発明において、高い回折効率を実現するには、各素子単位2’のそれぞれで、異なる方向の回折効率を高める必要があることは当業者に自明である。
(エ)してみると、引用発明において、高い回折効率を実現するために、格子単位2’の素子要素2上での配置位置に応じて、その直線回折格子の格子間隔と格子方向だけでなく、凹凸面のピッチに対する前記凹凸面をなす凸部の幅の比(デューティ比)又は格子の高さを変化させることは、当業者が前記技術常識に基づいて適宜なし得たことである。
エ 請求人は、審判請求書において、概略、本願補正発明は、「複数の回折格子素子に、一定方向から入射する光の当該複数の回折格子素子での回折方向の少なくとも一部は、互いに重なり合う」という特徴を有し、当該特徴が引用文献1-7に開示されていないと主張している。しかしながら、上記(1)オで検討したように、前記特徴は引用例1(引用文献1)に開示されているから、請求人の主張を採用することができない。
なお、色分散を目立たなくするという効果については、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特開平11-125707号公報;特に【0026】、【0034】、図6の記載参照。)に、スペクトルがずれて波長分散した光の回折光を重ね合わせて白色に見えるようになるとともに、照明光の色度を略維持した回折光が得られることが記載されており、引用発明において、前記効果を奏し得ることは当業者が引用文献2の記載事項に基づいて予測し得たことにすぎない。

(3)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術あるいは引用例1に記載された発明及び技術常識に基づいて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項8に係る発明は、平成27年10月16日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項8として記載したとおりのものである。

2 原査定の理由の概略
(1)(新規性)この出願の平成27年10月16日付け手続補正によって補正された請求項1-2、4-5、8-9、11、14-15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)(進歩性)この出願の平成27年10月16日付け手続補正によって補正された請求項1-15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1ないし7に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1.特開平11-202112号公報
引用文献2.特開平11-125707号公報
引用文献3.特開平8-146339号公報
引用文献4.特開2009-282300号公報
引用文献5.特開2007-271673号公報
引用文献6.特開2002-100224号公報
引用文献7.特開平9-325218号公報

(進歩性について)
引用文献1、6-7の開示技術は、回折特性の制御技術として機能共通性を有している(引用文献1の段落[0007]参照、引用文献6の段落[0024]参照)から、引用文献1の記載発明において、直線回折格子6(回折格子素子)の間で、周知技術である格子部幅/非格子部幅の比等を異ならせる技術を適用して、請求項1-2、4-5、8-9、11、14-15に係る発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。
他の請求項に係る発明については、上記引用文献から当業者が容易に想到し得たものである。

3 引用例
引用例1の記載事項は、上記第2〔理由〕3(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕4」に記載したとおり、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術あるいは引用例1に記載された発明及び技術常識に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術あるいは引用例1に記載された発明及び技術常識に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術あるいは引用例1に記載された発明及び技術常識に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-19 
結審通知日 2017-06-20 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2012-72335(P2012-72335)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小西 隆  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 光拡散フィルム、偏光板、画像形成装置および表示装置  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 中村 行孝  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  

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