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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1331672
審判番号 不服2016-17063  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-15 
確定日 2017-09-05 
事件の表示 特願2012-188870「基板処理装置と基板処理装置の電源管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月17日出願公開、特開2014- 49483、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月29日に出願した特願2012-188870号であって、平成28年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年7月25日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたが、同年8月12日付けで拒絶査定(送達同年同月16日)がされ(以下「原査定」という。)、これに対し、同年11月15日に拒絶査定不服審判請求がされるとともに同時に手続補正がされ、その後、当審にて平成29年6月12日に面接が行われ、同年7月3日付けで当審より拒絶理由通知がされ(以下「当審拒絶理由」という。)、同年7月12日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれを「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、平成29年7月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし12は以下のとおりである。
「【請求項1】
基板を処理する処理部と、
処理部に電力を供給するための処理部用配線と、
処理部用配線を開閉して、処理部の電源を投入・遮断する開閉器と、
開閉器と電気的に接続され、ユーザーによって操作され、開閉器を作動させるための開閉器用入力部と、
処理部を、電源の遮断が制限されている遮断制限状態から電源の遮断が許容された遮断可能状態に変更する制御部と、
を備え、
制御部はさらに、処理部が遮断可能状態であるときには開閉器の作動を許容し、処理部が遮断制限状態にあるときには開閉器の作動を禁止し、
処理部が遮断可能状態であるときには、ユーザーによる開閉器用入力部の操作は有効であり、開閉器は開閉器用入力部の入力に従って作動し、
処理部が遮断制限状態であるときには、ユーザーによる開閉器用入力部の操作は無効であり、開閉器は開閉器用入力部の入力に関わらず作動しない
基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
処理部は複数であり、
処理部用配線は、各処理部に個別に電力を供給し、
開閉器は、各処理部用配線を個別に開閉して、各処理部の電源を個別に投入・遮断し、
制御部は、処理部を個別に遮断可能状態に変更させるとともに、遮断可能状態である処理部に対応した開閉器の作動を許容し、遮断制限状態である処理部に対応した開閉器の作動を禁止する基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
処理部を個別に遮断可能状態に変更させる指示を入力するための状態変更用入力部と、
を備え、
制御部は、状態変更用入力部に入力された指示に基づいて、処理部を個別に遮断制限状態から遮断可能状態に変更する基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置において、
ユーザーが処理部を個別に指定して遮断可能状態に変更させる指示を状態変更用入力部に入力した場合、制御部は、指定された処理部の電動機器を休止させてから、指定された処理部を遮断制限状態から遮断可能状態に変更し、
開閉器用入力部は物理的なボタンである基板処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の基板処理装置において、
さらに、処理部用配線とは別個に設けられ、制御部に電力を供給するための制御電源用配線を備えている基板処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理装置において、
さらに、処理部が遮断可能状態に変更されると、当該処理部の状態に関する情報を記憶する記憶部を備えている基板処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の基板処理装置において、
基板を収容するカセットから処理部に基板を搬送するインデクサ部をさらに備え、
制御部は、処理部を遮断可能状態に変更する前に、その処理部が基板に対して処理を実行中であるか否かを判断し、実行中であると判断したときには、その基板が収容されるカセット内の全ての基板に対して処理を完了した後に、処理部を遮断可能状態に変更する処理を開始する基板処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の基板処理装置において、
処理部は、処理ユニットと、処理ユニットに基板を搬送する主搬送機構と、を有する基板処理列である基板処理装置。
【請求項9】
基板を処理する処理部を有する基板処理装置の電源管理方法であって、
制御部が、処理部を、電源の遮断が制限されている遮断制限状態から電源の遮断が許容された遮断可能状態に変更する工程と、
制御部が、遮断可能状態に変更された処理部用の開閉器の作動を許容し、作動が許容される開閉器と電気的に接続されている開閉器用入力部に対するユーザーの操作を有効とする工程と、
操作が有効な開閉器用入力部をユーザーが操作する工程と、
操作が有効な開閉器入力部に電気的に接続されている開閉器が、ユーザーによる開閉器用入力部の操作に従って作動して、遮断可能状態である処理部の電源を遮断する工程と、
を備え、
制御部は、遮断制限状態である処理部の電源を遮断するための開閉器の作動を禁止し、作動が禁止された開閉器と電気的に接続されている開閉器用入力部に対するユーザーの操作を無効とし、
遮断制限状態である処理部の電源を遮断するための開閉器は開閉器用入力部の入力に関わらず作動しない基板処理装置の電源管理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置の電源管理方法において、
処理部は複数であり、
変更する工程では、各処理部を個別に遮断可能状態に変更し、
遮断する工程では、各処理部の電源を個別に遮断し、
開閉器用入力部は物理的なボタンである基板処理装置の電源管理方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の基板処理装置の電源管理方法において、
変更する工程では、さらに、遮断可能状態に変更される処理部の警報出力を停止させる基板処理装置の電源管理方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載の基板処理装置の電源管理方法において、
変更する工程を開始する前に、処理部が基板に対して処理を実行中であるか否かを判断し、実行中であると判断したときには、その処理を完了するまで待機する工程を備えている基板処理装置の電源管理方法。」

なお、本願発明9は、それぞれ本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
また、本願発明2ないし8は、本願発明1を減縮した発明であり、また、本願発明10ないし12は、本願発明9を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1(特開2002-280279号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体製造装置、クラスタツール、半導体製造装置の制御方法およびクラスタツールのメンテナンス方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の半導体製造装置では、ウェハのプロセス処理や待機を行うための複数のプロセスシップを、ウェハの収容や搬送などを行うためのローダモジュールに連結した状態で、半導体装置の製造を行うものがあり、このようなタイプの半導体製造装置では、プロセスシップの増設が可能となっている。」

イ 「【0028】図2は、本発明の一実施形態に係わるクラスタツールの電源系の概略構成を示すブロック図である。図2において、電力ラインL4からの電力を各プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMに供給する共通電源CBが設けられている。ここで、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMに電力を供給する電力ラインL1?L3には、電力を遮断するブレーカB1?B3がそれぞれ別個に設けられ、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMの給電をそれぞれ独立して行うことができる。また、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMには、ハードワイヤインターロック機構が設けられ、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMの非連結状態では、端子T1?T3を開として、ハードワイヤインターロックをかけることができる。すなわち、電力ラインL4には、ブレーカB4が設けられ、マグネットコンダクタMCが、ハードワイヤインターロック信号を受信すると、ブレーカB4をオフにし、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMへの給電を遮断する。このため、装置稼働中に、プロセスシップPS1、PS2の取り外しまたは結合が行われた場合、装置全体の電断を発生させることができる。
【0029】図3は、本発明の一実施形態に係わるクラスタツールの動作モードの遷移方法を示すブロック図である。図3において、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMが結合した状態で装置全体を動作させる通常モードM1と、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMが結合されていない状態でプロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMそれぞれ独立して動作させる独立モードM4が設けられ、通常モードM1および独立モードM4には、通常搬送モードM2、M5およびメンテナンスモードM3、M6がそれぞれ設けられている。
【0030】このため、通常モードM1および独立モードM4のいずれの場合においても、通常搬送およびメンテナンスを同等の操作で行うことができ、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMの独立制御を行う場合においても、独立制御を意識することなく操作を行うことが可能となる。
【0031】メンテナンスモードM3、M6には、装置全体を停止させることなく、装置の一部のみを独立してメンテナンスすることができる独立メンテナンスモードM7が設けられ、この独立メンテナンスモードM7には、グループパワーオフモードGPおよびモジュールパワーオフモードMPが設けられている。ここで、グループパワーオフモードGPでは、指定されたグループ(プロセスシップPS1、PS2またはローダモジュールLM)に関する全ての電源をオフ可能な状態にすることができる。これにより、装置全体の稼働中に、プロセスシップPS1、PS2の一方のみを停止させることができ、残りのプロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMを稼働させたまま、プロセスシップPS1、PS2のメンテナンスを行うことが可能となる。
【0032】モジュールパワーオフモードMPでは、指定されたモジュールに関する電源のみをオフ可能な状態にすることができる。これにより、例えば、I/OボードIO1?IO3に接続される通信回線を物理的/電気的に遮断して、I/OボードIO1?IO3の部品を交換でき、取り付けの後の動的な再接続を行うことができる。」

ウ 「【0038】図6は、本発明の第1実施形態に係わる独立メンテナンス方法を示すフローチャートである。なお、この第1実施形態は、図3のグループパワーオフモードGPで独立メンテナンスを行うようにしたものである。このグループパワーオフモードGPでは、指定されたグループに関する全ての電源をオフ可能な状態とすることができる。また、そのグループに供給されている全ての用力(水・空気など)も遮断可能となるとともに、そのグループのCPUも電断可能となる。
【0039】図6において、オペレータは、図1の表示部D1の画面上で、メンテナンスするグループのメンテナンス画面に移行し(S1)、グループパワーオフモードGPの実行要求を行う(S2)。ここで、メンテナンスするグループとしては、例えば、プロセスシップPS1、PS2またはローダモジュールLMを指定することができる。
【0040】グループパワーオフモードGPの実行要求が行われると、i)該当グループのI/OボードIO1?IO3の初期化が行われ、ii)該当グループのPS制御部MC1、MC2またはLM制御部MC3と、統括制御部ECとのイーサネット(登録商標)回線の遮断が行われる(S3)。これにより、例えば、該当グループとしてプロセスシップPS1が選択された場合には、そのプロセスシップPS1のみのCPUを含む全ハードウェアに対するアクセスを停止した状態とすることができ、プロセスシップPS2およびローダモジュールLMを動作させたまま、プロセスシップPS1に関する全ての用力電断とCPU電断が可能となる。
【0041】グループパワーオフモードGPへの移行が完了すると、この移行完了メッセージが表示部D1に表示される(S4)。そして、オペレータは、グループパワーオフモードGPへの移行を確認すると、該当グループのブレーカB1?B3を落とすことにより、PS制御部MC1、MC2またはLM制御部MC3の電源をオフし(S5)、該当グループのメンテナンス作業を行うことができる(S6)。このメンテナンス作業により、正常なプロセスシップPS1、PS2を用いて生産を続行しながら、異常なプロセスシップPS1、PS2のパーツ交換や改造などを行うことができ、装置全体のダウン時間を短縮することができる。」

エ 「【0044】図7は、本発明の第2実施形態に係わる独立メンテナンス方法を示すフローチャートである。なお、この第2実施形態は、図3のモジュールパワーオフモードMPで独立メンテナンスを行うようにしたものである。このモジュールパワーオフモードMPでは、指定されたモジュールに関する電源だけをオフ可能な状態とすることができ、PS制御部MC1、MC2またはLM制御部MC3のCPUは電断の対象とはならない。このため、メンテナンス作業後にプログラムのダウンロードなどのソフトウェアの再起動が不要となり、メンテナンス作業後の装置の復帰時間をより短縮することができる。
【0045】図7において、オペレータは、図1の表示部D1の画面上で、メンテナンスするモジュールのメンテナンス画面に移行し(S21)、モジュールパワーオフモードMPの実行要求を行う(S22)。ここで、メンテナンスするモジュールとしては、例えば、I/OボードIO1?IO3などを指定することができる。
【0046】モジュールパワーオフモードMPの実行要求が行われると、i)該当グループのI/OボードIO1?IO3が初期化され、ii)全ての入出力データDIOおよび入出力アドレスAIOのアクセスが停止され、iii)該当グループのPS制御部MC1、MC2またはLM制御部MC3と、外部機器との通信が停止され、iv)該当グループのPS制御部MC1、MC2またはLM制御部MC3と、I/OボードIO1?IO3との通信回線が遮断される(S23)。これにより、PS制御部MC1、MC2またはLM制御部MC3のCPUを除いたハードウェアに対するアクセスを停止した状態とすることができ、必要最小限の部分的な電断を行うだけで、I/OボードIO1?IO3の交換など行うことが可能となる。
【0047】モジュールパワーオフモードMPへの移行が完了すると、この移行完了メッセージが表示部D1に表示される(S24)。そして、オペレータは、モジュールパワーオフモードMPへの移行を確認すると、メンテナンス対象となるI/OボードIO1?IO3の電断が可能となり(S25)、該当モジュールのメンテナンス作業を行うことができる(S26)。このメンテナンス作業により、PS制御部MC1、MC2またはLM制御部MC3のCPUを動作させたまま、I/OボードIO1?IO3の交換などを行うことができ、メンテナンス作業後の装置の復帰時間を短縮することができる。」

オ 図1、2、3、6及び7は次のものである。
図1

図2

図3

図6

図7


(2)上記(1)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「電力ラインL4からの電力をウェハのプロセス処理や待機を行うための各プロセスシップPS1、PS2およびウェハの収容や搬送などを行うためのローダモジュールLMに供給する共通電源CBが設けられ、
前記プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMに電力を供給する電力ラインL1?L3には、電力を遮断するブレーカB1?B3がそれぞれ別個に設けられ、
前記プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMには、ハードワイヤインターロック機構が設けられ、
前記電力ラインL4には、ブレーカB4が設けられ、マグネットコンダクタMCが、ハードワイヤインターロック信号を受信すると、ブレーカB4をオフにし、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMへの給電を遮断し、
前記プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMが結合した状態で装置全体を動作させる通常モードM1と、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMが結合されていない状態でプロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMそれぞれ独立して動作させる独立モードM4が設けられ、通常モードM1および独立モードM4には、通常搬送モードM2、M5およびメンテナンスモードM3、M6がそれぞれ設けられ、
前記メンテナンスモードM3、M6には、装置全体を停止させることなく、装置の一部のみを独立してメンテナンスすることができる独立メンテナンスモードM7が設けられ、この独立メンテナンスモードM7には、グループパワーオフモードGPおよびモジュールパワーオフモードMPが設けられ、
前記グループパワーオフモードGPでは、指定されたプロセスシップPS1、PS2またはローダモジュールLMに関する全ての電源をオフ可能な状態にすることができ、
装置全体の稼働中に、プロセスシップPS1、PS2の一方のみを停止させることができ、残りのプロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMを稼働させたまま、プロセスシップPS1、PS2のメンテナンスを行うことが可能であり、
モジュールパワーオフモードMPでは、指定されたモジュールに関する電源のみをオフ可能な状態にすることができるものであって、
オペレータは、表示部D1の画面上で、メンテナンスするグループのメンテナンス画面に移行し、グループパワーオフモードGPの実行要求を行い、
グループパワーオフモードGPへの移行が完了すると、この移行完了メッセージが表示部D1に表示され、
オペレータは、グループパワーオフモードGPへの移行を確認すると、該当グループのブレーカB1?B3を落とすことにより、PS制御部MC1、MC2またはLM制御部MC3の電源をオフし、該当グループのメンテナンス作業を行うことができる、
半導体製造装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献2(特開2009-231626号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等(以下、単に「基板」と称する)に対して一連の処理を行う基板処理装置に関する。」

イ 「【0064】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
まず、本実施例の概要を説明する。図1は、実施例に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【0065】
実施例は、基板(例えば、半導体ウエハ)Wにレジスト膜を形成するとともに、露光機EXPで露光された基板Wを現像する基板処理装置10である。露光機EXPは基板処理装置10とは別体である。以下では、基板処理装置10を装置10と適宜に略記する。本装置10は、インデクサ部(以下、「ID部」と記載する)1と処理部3とインターフェイス部(以下、「IF部」と記載する)5とを備える。ID部1と処理部3とIF部5と露光機EXPとはこの順番に並ぶように配置されている。
【0066】
ID部1には、基板Wを収容したカセットCが図示省略の外部搬送機構によって搬送される。ID部1はカセットC内の基板Wを処理部3へ搬送する。ID部1は、第1主搬送機構T_(IDM)と第1予備搬送機構T_(IDS)とを備えている。第1主搬送機構T_(IDM)は、カセットCと処理部3とに対して基板Wを搬送する。第1予備搬送機構T_(IDS)は第1主搬送機構T_(IDM)の予備用であり、第1主搬送機構T_(IDM)に替わってカセットCと処理部3とに対して基板Wを搬送する。
【0067】
処理部3は、基板Wに処理を並行して行う複数(例えば2つ)の基板処理列Lu、Ldを備えている。各基板処理列Lu、Ldは、基板Wに処理を行う処理ユニット(後述)と、処理ユニットに対して基板Wを搬送する処理部用主搬送機構T1、T2、T3、T4とを備えている。以下では、「処理部用主搬送機構」を「主搬送機構」と適宜に略記する。基板処理列Luに設けられる主搬送機構T1、T2はそれぞれ互いに基板Wの受け渡しを行いつつ、当該基板処理列Luに設けられる処理ユニットに基板Wを搬送する。処理ユニットでは、基板Wにレジスト膜を形成するための処理や基板Wを現像するための処理を行う。上述した第1主搬送機構T_(IDM)および第1予備搬送機構T_(IDS)はそれぞれ各基板処理列Lu、Ldに設けられている主搬送機構T1、T3との間で基板Wを受け渡す。以下では、各基板処理列Lu、Ldを特に区別しないときは、単に基板処理列Lと記載する。」

第4 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明の「ウェハのプロセス処理や待機を行うための」「プロセスシップPS1、PS2」及び「ウェハの収容や搬送などを行うための」「ローダモジュールLM」は、本願発明1の「基板を処理する」「処理部」に相当する。

(イ)引用発明の「プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMに電力を供給する」「電力ラインL1?L3」は、本願発明1の「処理部に電力を供給するための」「処理部用配線」に相当する。

(ウ)引用発明の「プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMに電力を供給する電力ラインL1?L3に」「それぞれ別個に設けられ」る「電力を遮断するブレーカB1?B3」、及び「電力ラインL4に」「設けられ、マグネットコンダクタMCが、ハードワイヤインターロック信号を受信すると、ブレーカB4をオフにし、プロセスシップPS1、PS2およびローダモジュールLMへの給電を遮断」する「ブレーカB4」は、それぞれ、本願発明1の「処理部用配線を開閉して、処理部の電源を投入・遮断する」「開閉器」に相当する。

(エ)引用発明の「ブレーカB1?B3」は、「オペレータは、グループパワーオフモードGPへの移行を確認すると、該当グループのブレーカB1?B3を落とすことにより、PS制御部MC1、MC2またはLM制御部MC3の電源をオフし、該当グループのメンテナンス作業を行うことができる」ものであるから、本願発明1の「開閉器と電気的に接続され、ユーザーによって操作され、開閉器を作動させるための」「開閉器用入力部」に相当する。

(オ)したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「基板を処理する処理部と、
処理部に電力を供給するための処理部用配線と、
処理部用配線を開閉して、処理部の電源を投入・遮断する開閉器と、
開閉器と電気的に接続され、ユーザーによって操作され、開閉器を作動させるための開閉器用入力部とを備える基板処理装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明の「開閉器用入力部」は、「処理部が遮断可能状態であるときには、ユーザーによる開閉器用入力部の操作は有効であり、開閉器は開閉器用入力部の入力に従って作動し、処理部が遮断制限状態であるときには、ユーザーによる開閉器用入力部の操作は無効であり、開閉器は開閉器用入力部の入力に関わらず作動しない」のに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明は「処理部を、電源の遮断が制限されている遮断制限状態から電源の遮断が許容された遮断可能状態に変更する」「制御部」を備え、「制御部はさらに、処理部が遮断可能状態であるときには開閉器の作動を許容し、処理部が遮断制限状態にあるときには開閉器の作動を禁止」するのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用発明の「ブレーカB1?B3」は、「ブレーカB1?B3」を作動させるための「ブレーカB1?B3」用入力部を備えるものではなく、さらには、「グループパワーオフモードGPへの移行」の有無により、「オペレータ」が「該当グループのブレーカB1?B3を落とす」ための「ブレーカB1?B3」用入力部の操作を有効あるいは無効とする構成を備えるものではなく、このような上記相違点1に係る本願発明1の「ブレーカB1?B3」用入力部に係る構成は、上記引用文献1及び2には記載されていない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明9について
本願発明9は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の上記相違点1に係る本願発明1の「ブレーカB1?B3」用入力部に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)本願発明2ないし8及び本願発明10ないし12について
本願発明2ないし8及び本願発明10ないし12も、本願発明1の上記相違点1に係る本願発明1の「ブレーカB1?B3」用入力部に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、(平成28年7月25日にされた手続補正による)請求項1ないし8、11ないし15に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、また、同請求項9及び10に係る発明は、引用文献1及び2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年7月12日付け手続補正により補正された請求項1ないし12は、上記相違点1に係る構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし12は、上記引用発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
・特許法第36条第6項第2号について
当審では、本件の特許請求の範囲の請求項9の記載では、「電源管理方法」において、「ユーザーが遮断可能状態に変更した処理部のみの電源を遮断する工程」との記載では、本願発明の構成である、ユーザが「遮断する」のではなく、変更する工程が完了後ユーザが「開閉器用入力部を操作した場合」に遮断するすることができる構成であることが明らかではなく、不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年7月12日付けの補正において、「制御部が、処理部を、電源の遮断が制限されている遮断制限状態から電源の遮断が許容された遮断可能状態に変更する工程と、制御部が、遮断可能状態に変更された処理部用の開閉器の作動を許容し、作動が許容される開閉器と電気的に接続されている開閉器用入力部に対するユーザーの操作を有効とする工程」及び「制御部は、遮断制限状態である処理部の電源を遮断するための開閉器の作動を禁止し、作動が禁止された開閉器と電気的に接続されている開閉器用入力部に対するユーザーの操作を無効とし、遮断制限状態である処理部の電源を遮断するための開閉器は開閉器用入力部の入力に関わらず作動しない」構成を備えるものに補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし12は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-21 
出願番号 特願2012-188870(P2012-188870)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梶尾 誠哉  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
伊藤 昌哉
発明の名称 基板処理装置と基板処理装置の電源管理方法  
代理人 杉谷 勉  
代理人 杉谷 勉  

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