• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1331685
審判番号 不服2017-426  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-12 
確定日 2017-09-11 
事件の表示 特願2012-105207「寄生容量を低減させたジャイロメータ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月29日出願公開、特開2012-233898、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、平成24年5月2日(パリ条約による優先権主張、2011年5月2日(以下、「優先日」という。)、フランス共和国)を出願日とする外国語書面出願であって、平成24年6月27日に翻訳文が提出され、平成28年1月8日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月18日付けで手続補正がなされたが、平成28年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年1月12日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、平成29年1月18日付けで、審判請求書の【請求の理由】について手続補正(方式)がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年9月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1 理由1(特許法第29条第1項第3号)について
・請求項 1、2、4、7-9、12
・引用文献1

2 理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-17
・引用文献1-4

<引用文献等一覧>
引用文献1.国際公開第2010/083918号
引用文献2.特開2004-163376号公報
引用文献3.特開2010-151808号公報
引用文献4.特表2007-500086号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-24に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明24」という。)は、平成29年1月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-24に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基板と、前記基板の上に懸架された慣性質量部(2、102)であって、少なくとも1つの励振部(6、106)および少なくとも1つの検出部(8、108)を含む慣性質量部(2、102)と、前記慣性質量部(2、102)の平面内に含まれる、前記励振部(6、106)を少なくとも1つの方向(X)に移動させる手段と、前記質量部の前記平面の外側での前記検出部(8、108)の移動を検出する静電容量検出手段とを含むジャイロメータであって、前記静電容量検出手段が、前記検出部(8、108)と共に可変コンデンサを形成するように、前記基板に面して位置する前記検出部(8、108)の上に配置された、検出電極と呼ばれる少なくとも1つの懸架電極(16、116.1、116.2)を含み、前記電極(16、116.1、116.2)が、前記慣性質量部(2、102)を貫通する少なくとも1つの柱状体(22、22’)によって、前記検出部(8、108)の上に保持され、前記検出手段が1つまたは複数の検出電極を含み、前記1つまたは複数の検出電極が前記検出部の上のみに懸架されている、ジャイロメータ。
【請求項2】
前記検出電極(16、116.1、116.2)上の各点の、前記質量部の前記平面に垂直な軸(Z)に沿った直交する突出部が、前記検出部(8、108)上に位置する請求項1に記載のジャイロメータ。
【請求項3】
前記検出電極(16、116.1、116.2)が、前記検出部の表面積にほぼ等しい表面積を有する請求項2に記載のジャイロメータ。
【請求項4】
1つまたは複数の通路(23、23’)を含み、前記検出部の縁部に隣接する領域において、前記通路(23、23’)を通って前記柱状体(22、22’)が前記検出部(8、108)および/または前記励振部を貫通する請求項1から3のいずれか一項に記載のジャイロメータ。
【請求項5】
励振方向における前記柱状体(22、22’)の平行な縁部と前記通路(23、23’)との間のクリアランスが、励振の振幅より0.5μm?1μm大きい請求項4に記載のジャイロメータ。
【請求項6】
前記柱状体(22、22’)の前記慣性質量部(2、102)表面内での断面形状が正方形であり、前記正方形の一辺が10μm?100μmの間であり、前記柱状体(22、22’)の互いに対面する平行な縁部と前記通路(23、23’)との間のクリアランスが、1μm?10μmの間である請求項4または5に記載のジャイロメータ。
【請求項7】
前記慣性質量部(102)が、励振部(106)および少なくとも2つの検出部を含み、第1の検出部(108)が、励振方向(X)に沿って前記励振部(106)を通って移動可能であり、第2の検出部(109)が、前記励振方向(X)の適所に固定され、前記第1の検出部(108)に対する移動について固定される請求項1から6のいずれか一項に記載のジャイロメータ。
【請求項8】
前記柱状体が、前記第2の検出部(109)を貫通する請求項7に記載のジャイロメータ。
【請求項9】
前記慣性質量部が少なくとも2つの検出部を含み、前記検出電極が、前記検出部のうちの1つの上に位置する請求項1から8のいずれか一項に記載のジャイロメータ。
【請求項10】
前記慣性質量部が、同位相で共振する少なくとも2つの検出部を含み、前記検出電極が、前記2つの検出部の上に位置する請求項1から8のいずれか一項に記載のジャイロメータ。
【請求項11】
前記慣性質量部が、逆位相で共振する少なくとも2つの検出部を含み、前記ジャイロメータが、それぞれが検出部の上に位置する2つの検出電極を含み、前記2つの検出電極が、それらに面する前記検出部の変位を別個に検出する請求項1から8のいずれか一項に記載のジャイロメータ。
【請求項12】
少なくともある励振モードに対して、2つの機械的に結合された慣性質量部を含み、2つの検出電極がそれぞれ各慣性質量部の検出部の上に配置され、前記2つの検出電極が、それらに面する検出部の変位を別個に検出する請求項1から11のいずれか一項に記載のジャイロメータ。
【請求項13】
前記慣性質量部がディスク形の励振部(306)を含み、前記励振部(306)が前記ディスクの軸のまわりを自由に移動し、複数の検出部(308)が、前記励振部(306)の内部を自由に移動するように配置される請求項1から6または9から12のいずれか一項に記載のジャイロメータ。
【請求項14】
少なくとも1つの前記慣性質量部および少なくとも1つの前記検出電極(8)のまわりで、気密封止される空洞(26)の範囲を定めるカバー(24)を含み、前記空洞(26)内に真空が作られる請求項1から13のいずれか一項に記載のジャイロメータ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の少なくとも1つの第1のジャイロメータ、ならびに前記平面の外側の軸のまわりの回転を検出する少なくとも1つの第2のジャイロメータ、および/または少なくとも1つの加速度計を含む測定システム。
【請求項16】
前記第2のジャイロメータが、前記第2のジャイロメータの前記少なくとも1つの検出部の前記平面内の変位を検出するために、少なくとも1つの検出部と、前記第2のジャイロメータの前記平面に垂直な検出電極とを含む請求項15に記載の測定システム。
【請求項17】
前記加速度計が、面外の加速度を検出し、前記平面内に含まれる、面外の加速度を検出するための少なくとも1つの電極を含む静電容量加速度計、および/または面内の加速度を検出し、前記平面に垂直な少なくとも1つの電極を含む静電容量加速度計である請求項15または16に記載の測定システム。
【請求項18】
請求項1から14のいずれか一項に記載のジャイロメータ、または請求項15から17のいずれか一項に記載の測定システムを製造するための方法であって、基板(202)上に堆積され、活性層(206)で覆われた酸化物層(204)を含む素子から始まる以下のステップ:
前記活性層(206)を酸化から保護する第1の保護層(208)を堆積するステップと、
少なくとも1つの第1の領域で、前記保護層(208)をエッチングして前記活性層(206)を解放するステップと、
前記第1の領域に突出する厚さの酸化物(210)を形成するように、前記第1の領域の前記解放された活性層で熱酸化を行い、酸化物を成長させるステップと、
前記突出する厚さの酸化物(210)の上に第2の保護層(212)を堆積するステップと、
前記活性層(206)をエッチングして、前記酸化物層(204)に達する溝(214)を形成するステップと、
前記活性層(206)を覆い、前記溝(214)を遮断する遮断層(216)を堆積するステップと、
前記遮断層(216)をエッチングして、前記活性層(206)の少なくとも1つの第2の領域を解放するステップと、
前記検出電極を、前記電極が前記第2の領域に支持されるように形成するステップと、
前記慣性質量部および前記電極を解放するステップと
を含む方法。
【請求項19】
前記第1の保護層(208)および/または前記第2の保護層(212)が、Si3N4で作製される請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記活性層(206)を覆い、前記溝(214)を閉鎖する前記遮断層(216)が、リンシリケートガラスで作製される請求項18または19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記検出電極が作製され、少なくとも1つの懸架されていない電気導体トラックが前記検出電極に接続された後、少なくとも1つのコンタクトパッド(18)を作製するステップを含み、前記コンタクトパッドが、前記導体トラックの上に作製される請求項18から20のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記電気導体トラックが、前記検出電極と同時に作製される請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記素子がシリコンオンインシュレータ基板であり、前記検出電極がポリシリコンで作製される請求項18から22のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項24】
前記解放するステップが、前記リンシリケートガラスのウェットエッチング、および前記酸化物層のエッチングによって達成される請求項20に記載の製造方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第2010/083918号(便宜上、以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、ウムラウト付きの母音は[]を囲み、エスツェットは「ss」と記載した。また、引用箇所は、頁の左側に付された行番号にしたがって特定した。また、翻訳は、引用文献1のパテントファミリーである、特表2012-515903号公報に基づくものである。なお、下線は、当審で付与した。)。

ア 「Die vorliegende Erfindung betrifft einen Drehratensensor gem[a]ss Patentanspruch 1.」(第1頁第10?11行)
(当審訳:「【0001】
本発明は、請求項1に記載のヨーレートセンサに関する。」)

イ 「Bekannte Drehratensensoren weisen lediglich eine fest mit dem Substrat verbundene Detektionselektrode pro beweglicher Sensorstruktur auf. 」(第1頁第33?34行)(当審訳:
【0004】
公知のヨーレートセンサは、可動なセンサ構造体ごとに、基板に不動に接合されている単に1つの検出電極しか有していない。)

ウ 「Ausf[u]hrungsformen der Erfindung

Figur 1 zeigt in schematischer Darstellung eine Aufsicht auf eine erste Ausf[u]hrungsform eines Drehratensensors 100. Der Drehratensensor 100 ist aus einem Substrat gefertigt und [u]ber einer Substratoberfl[a]che 190 in der x-y-Ebene angeordnet, die in der Darstellung der Figur 1 in der Papierebene liegt. Das Substrat kann beispielsweise ein Siliziumsubstrat sein. Der Drehratensensor 100 umfasst ein erstes bewegliches Element 110 und ein zweites bewegliches Element 260, wobei das erste bewegliche Element 110 und das zweite bewegliche Element 260 symmetrisch zueinander ausgebildet und in y-Richtung nebeneinander angeordnet sind. Im Folgenden wird das erste bewegliche Element 110 beschrieben. Die Beschreibung gilt analog f[u]r das zweite bewegliche Element 260.

Das erste bewegliche Element 110 weist einen Antriebsrahmen 120 auf. In der Ausf[u]hrungsform der Figur 1 umfasst der Antriebsrahmen 120 zwei U-f[o]rmige Teilst[u]cke, deren [O]ffnungen einander zugewandt sind und damit einen in der x- y-Ebene liegenden Fl[a]chenabschnitt weitgehend umschliessen. In dem durch den Antriebsrahmen 120 umschlossenen Fl[a]chenabschnitt ist eine erste Detektions- masse 130 angeordnet.

Der Antriebsrahmen 120 ist [u]ber vier Antriebsfedern 140 mit der Substratoberfl[a]che 190 verbunden. Je eine der Antriebsfedern 140 ist an jedem Schenkel der beiden U-f[o]rmigen Teilst[u]cke des Antriebsrahmens 120 angeordnet. Jede Antriebsfeder 140 besteht aus einem U-f[o]rmig geformten Substratbalken, dessen eines Ende mit der Substratoberfl[a]che 190, dessen anderes Ende mit dem Antriebsrahmen 120 verbunden ist. Jede Antriebsfeder 140 ist in y-Richtung elastisch, in x- und z-Richtung jedoch weitgehend inelastisch. Weiter ist der Antriebsrahmen 120 mit vier Antriebskammstrukturen 150 verbunden. An jedem Schen- kel der beiden U-f[o]rmigen Teile des Antriebsrahmens 120 ist jeweils eine Antriebskammstruktur 150 angeordnet. Jede Antriebskammstruktur 150 besteht aus einem mit der Substratoberfl[a]che 190 verbundenen Abschnitt, der eine Reihe paralleler, dem Antriebsrahmen 120 zugewandter kammartiger Zinken aufweist, und einem mit dem Antriebsrahmen 120 verbundenen Abschnitt mit einer Reihe paralleler kammartiger Zinken, die mit den Zinken des mit der Substratoberfl[a]che 190 verbundenen Abschnitts der Antriebskammstruktur 150 in Eingriff stehen. Die vier Antriebskammstrukturen 150 gestatten, durch Anlegen geeigneter Spannungen den Antriebsrahmen 120 in eine Schwingung in Richtung der y-Achse zu versetzen. Dabei bewirken die Antriebskammstrukturen 150 auslenkende, die Antriebsfedern 140 r[u]ckstellende Kr[a]fte. Es k[o]nnen auch mehr oder weniger als jeweils vier Antriebsfedern 140 und Antriebskammstrukturen 150 pro beweglichem Element 1 10, 260 vorhanden sein.

Die erste Detektionsmasse 130 ist [u]ber insgesamt acht Detektionsfedern 180 mit dem Antriebsrahmen 120 verbunden. An beiden Enden aller vier Aussenkanten der ersten Detektionsmasse 130 ist je eine Detektionsfeder 180 angeordnet. Jede Detektionsfeder 180 besteht aus einem U-f[o]rmig gestalteten Substratbalken, dessen eines Ende mit dem Antriebrahmen 120 und dessen anderes Ende mit der ersten Detektionsmasse 130 verbunden ist. Gemeinsam erlauben die Detek- tionsfedern 180 eine Auslenkung der ersten Detektionsmasse 130 gegen den Antriebsrahmen 120 in z-Richtung, w[a]hrend eine Auslenkung der ersten Detektionsmasse 130 gegen den Antriebsrahmen 120 in x- und y-Richtung im Wesentlichen verhindert wird. Dadurch wird eine Antriebsbewegung des Antriebsrahmens 120 in y-Richtung auf die erste Detektionsmasse 130 [u]bertragen.」(第6頁第15行?第7頁第29行)
(当審訳:【0022】
本発明の実施の形態
図1に、ヨーレートセンサ100の第1の実施の形態の概略的な平面図を示す。ヨーレートセンサ100は基板から製造されており、図1の図平面に位置する基板表面190上のx-y平面に配置されている。基板は、例えばシリコン基板から成っていてよい。ヨーレートセンサ100は第1の可動の素子110と、第2の可動の素子260とを有している。第1の可動の素子110と第2の可動の素子260とは互いに対称的に形成されており、y方向に相並んで配置されている。以下に、第1の可動の素子110について記載する。この記載は第2の可動の素子260に対応する。
【0023】
第1の可動の素子110は駆動フレーム120を有している。図1の実施の形態において、駆動フレーム120は2つのU字形の部品を有している。これらのU字形の部品の開口は互いに向かい合っているので、x-y平面にある面区分をほぼ取り囲んでいる。駆動フレーム120により取り囲まれている面区分には、第1の検出質量体130が配置されている。
【0024】
駆動フレーム120は4つの駆動ばね140を介して基板表面190に接合されている。各駆動ばね140は、駆動フレーム120の2つのU字形の部品の各脚部に配置されている。各駆動ばね140はU字形に成形された基板梁(Substratbalken)から成っている。この基板梁の一方の端部は基板表面190に接合されており、他方の端部は駆動フレーム120に接合されている。各駆動ばね140はy方向において弾性的に形成されているが、x方向及びz方向においては実質的に非弾性的に形成されている。さらに駆動フレーム120は4つの駆動櫛形構造体150と接合されている。駆動フレーム120の2つのU字形の部品の各脚部には、駆動櫛形構造体150が夫々配置されている。各駆動櫛形構造体150は、駆動フレーム120を向いた一列の平行な櫛形の歯を有している、基板表面190に接合された区分と、基板表面190に接合されている駆動櫛形構造体150の区分の櫛形の歯に係合している一列の平行な櫛形の歯を有している、駆動フレーム120に接合された区分とから成っている。4つの駆動櫛形構造体150は、適切な電圧の印加による駆動フレーム120のy軸方向への振動を許容する。本実施の形態において、駆動櫛形構造体150を変位させ、駆動ばね140を戻す力がもたらされる。4つより少ない又は4つより多い駆動ばね140及び駆動櫛形構造体150が夫々、可動の素子110,260ごとに設けられていてもよい。
【0025】
第1の検出質量体130は全部で8個の検出ばね180を介して駆動フレーム120に接合されている。第1の検出質量体130の4つ全ての外側エッジの両端部に検出ばね180が夫々配置されている。各検出ばね180はU字形に構成された基板梁から成っている。この基板梁の一方の端部は駆動フレーム120に接合されており、他方の端部は第1の検出質量体130に接合されている。複数の検出ばね180は一緒になって駆動フレーム120に対するz方向における第1の検出質量体130の変位を許容する一方で、駆動フレーム120に対するx方向及びy方向における第1の検出質量体130の変位を実質的に防ぐ。これによりy方向における駆動フレーム120の駆動運動は、第1の検出質量体130に伝達される。」

エ 「In der Leiterbahnebene 230 unterhalb der ersten Detektionsmasse 130 ist eine erste Elektrode 210 vorgesehen. In der zweiten Funktionsebene 250, oberhalb der ersten Detektionsmasse 130 und durch den Stabilisierungsrahmen 290 der ersten Detektionsmasse 130 umgrenzt, ist eine zweite Elektrode 220 vorgesehen. Die erste Elektrode 210 und die zweiten Elektrode 220 weisen bevorzugt [a]hnliche laterale Abmessungen in x-y-Richtung auf.

Die erste Elektrode 210 und der in der ersten Funktionsebene 240 gelegene Bodenbereich der ersten Detektionsmasse 130 weisen einen Durchbruchs 280 auf. Dies ist in Figur 3 erkennbar. Im Bereich des Durchbruchs 280 ist die zweite E- lektrode 220 [u]ber einen pfostenf[o]rmigen Befestigungspunkt 285 mit der Sub- stratoberfl[a]che 190 verbunden. In einem zur x-z-Ebene parallelen Schnitt wie in Figur 3 weist die zweite Elektrode 220 somit einen T-f[o]rmigen Querschnitt auf. Die erste Elektrode 210 und die zweite Elektrode 220 k[o]nnen [u]ber die Leiterbahnebene 230 elektrisch mit einer in den Figuren nicht dargestellten Steuer- und Auswertelektronik verbunden sein.」(第9頁第4?19行)
(当審訳:【0030】
第1の検出質量体130の下側の導体路平面230には、第1の電極210が設けられている。第2の機能平面250において、第1の検出質量体130の上側において、及び第1の検出質量体130の安定化フレーム290により取り囲まれて、第2の電極220が設けられている。第1の電極210及び第2の電極220は、有利には横方向のx-y方向における類似の寸法を有している。
【0031】
第1の電極210と、第1の機能平面240にある、第1の検出質量体130の底部領域とは貫通部280を有している。このことは図3から看取可能である。貫通部280の領域には第2の電極220が、柱状の固定点285を介して基板表面190に接合されている。したがって、図3に示すようにx-z平面に対して平行な断面図において、第2の電極220はT字形の横断面を有している。第1の電極210及び第2の電極220は、導体路平面230を介して電気的に制御・評価電子機器(図示せず)に接続されていてよい。)

オ 「Das erste bewegliche Element 110 und das zweite bewegliche Element 260 des Drehratensensors 100 k[o]nnen mittels der Antriebskammstrukturen 150 in eine gekoppelte Antriebsschwingung mit antiparalleler Auslenkung der beweglichen Elemente 110, 260 entlang der y-Achse angeregt werden. Bei Auftreten einer Drehrate um die x-Achse wirken Coriolis-Kr[a]fte auf die erste Detektionsmasse 130 und die zweite Detektionsmasse 270 und bewirken antiparallele Auslenkungen der Detektionsmassen 130, 270 in z-Richtung. Die Auslenkung der ersten Detektionsmasse 130 in z-Richtung kann mittels der ersten Elektrode 210 und der zweiten Elektrode 220 erfasst werden. Dazu kann beispielsweise die erste Elektrode 210 auf ein erstes Potential (CN-Potential) und die zweite Elektrode 220 auf ein zweites Potential (CP-Potential) gelegt werden. Durch die Auslenkung der ersten Detektionsmasse 130 in z-Richtung gegen die ortsfesten Elektroden 210, 220 [a]ndern sich die Kapazit[a]ten zwischen der ersten Detektionsmas- se 130 und der ersten Elektrode 210 und der zweiten Elektrode 220 mit entgegengesetzten Vorzeichen. Dies gestattet eine volldifferentielle Messung der Auslenkung der ersten Detektionsmasse 130. Die ersten und zweiten Elektroden des zweiten beweglichen Elements 260 k[o]nnen beispielsweise spiegelverkehrt zum ersten beweglichen Element 1 10 auf das erste und das zweite Potential gelegt werden. Dadurch ist auch eine volldifferentielle Auswertung einer Auslenkung der zweiten Detektionsmasse 270 m[o]glich. Beide beweglichen Elemente 110, 260 zusammengenommen erlauben ausserdem eine volldifferentielle Bestimmung einer auf den Drehratensensor 100 wirkenden Drehrate.」(第9頁第11行?第10頁第18行)(当審訳:【0034】
ヨーレートセンサ100の第1の可動の素子110と第2の可動の素子260とを、可動の素子110,260のy軸に沿った逆平行の変位と連結された駆動振動へ駆動櫛形構造体150により励振することができる。x軸を中心としたヨーレートが発生する場合、コリオリ力は第1の検出質量体130及び第2の検出質量体270に作用し、z方向における検出質量体130,270の逆平行の変位をもたらす。z方向における第1の検出質量体130の変位は、第1の電極210及び第2の電極220により検出することができる。このために、例えば第1の電極210は第1の電位(CN電位)にすることができ、かつ第2の電極220は第2の電位(CP電位)にすることができる。固定型の電極210,220に対して検出質量体130のz方向における変位により、第1の検出質量体130と第1の電極210と第2の電極220との間の容量は、逆の符号を持って変化する。これにより、第1の検出質量体130の変位の全差動的な測定が行われる。第2の可動の素子260の第1及び第2の電極は、例えば第1の可動の素子110に対して鏡面逆転して第1及び第2の電位にすることができる。これにより第2の検出質量体270の変位の全差動的な評価も可能である。さらに2つの可動の素子110,260は合わせて、ヨーレートセンサ100に作用するヨーレートの全差動的な規定を可能にする。)

以上より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ヨーレートセンサ100は第1の可動の素子110と、第2の可動の素子260とを有し、第1の可動の素子110と第2の可動の素子260とは互いに対称的に形成されており、y方向に相並んで配置され、(段落【0022】より)
第1の可動の素子110は駆動フレーム120を有し、駆動フレーム120により取り囲まれている面区分には、第1の検出質量体130が配置され(段落【0023】より) 、
駆動フレーム120は4つの駆動ばね140を介して基板表面190に接合され、各駆動ばね140はy方向において弾性的に形成されているが、x方向及びz方向においては実質的に非弾性的に形成され、さらに駆動フレーム120は4つの駆動櫛形構造体150と接合されており、
4つの駆動櫛形構造体150は、適切な電圧の印加による駆動フレーム120のy軸方向への振動を許容し(段落【0024】より)、
第1の検出質量体130は、検出ばね180を介して駆動フレーム120に接合され、複数の検出ばね180は一緒になって駆動フレーム120に対するz方向における第1の検出質量体130の変位を許容し、これによりy方向における駆動フレーム120の駆動運動は、第1の検出質量体130に伝達され (段落【0025】より)、
第1の検出質量体130の下側の導体路平面230には、第1の電極210が設けられ、第2の機能平面250において、第1の検出質量体130の上側において、第2の電極220が設けられ(段落【0030】より)、
第1の電極210と、第1の機能平面240にある、第1の検出質量体130の底部領域とは貫通部280を有し、貫通部280の領域には第2の電極220が、柱状の固定点285を介して基板表面190に接合されており(段落【0031】より)、
x軸を中心としたヨーレートが発生する場合、コリオリ力は第1の検出質量体130に作用し、z方向における検出質量体130の変位をもたらし、z方向における第1の検出質量体130の変位は、第1の電極210及び第2の電極220により検出することができ、固定型の電極210,220に対して検出質量体130のz方向における変位により、第1の検出質量体130と第1の電極210と第2の電極220との間の容量は、逆の符号を持って変化し、これにより、第1の検出質量体130の変位の全差動的な測定が行われ(段落【0034】より)、
第1の可動の素子110についての記載は第2の可動の素子260に対応する(段落【0022】より)、
ヨーレートセンサ100(段落【0022】より)。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2004-163376号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている(なお、下線は、当審で付与した。)。
ア 「【0205】
次に、図20ないし図24は本発明による第6の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、角速度センサにより2軸周りの角速度を個別に検出する構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第2の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。」

イ 「【0226】
159はY軸周りの角速度Ω2を検出する第2の角速度検出手段としての変位量検出部で、該第2の変位量検出部159は、検出電極155,157により構成され、垂直振動子132のZ軸方向の変位量を電極155,157間の静電容量の変化によりY軸周りの角速度Ω2として検出するものである。
【0227】
160は他の検出電極156,158により構成された第2の角速度検出手段としての変位量検出部で、該第2の変位量検出部160は、垂直振動子136のZ軸方向の変位量を電極156,158間の静電容量の変化によりY軸周りの角速度Ω2として検出するものである。」

ウ 「【0229】
そして、角速度センサの作動時には、第2の実施の形態とほぼ同様に、外側質量部130,134がX軸方向に互いに逆位相で振動するため、垂直振動子132,136にY軸周りの角速度Ω2が加わると、これらの振動子132,136はZ軸方向に対して互いに逆向きに変位する。
【0230】
これにより、変位量検出部159,160は、垂直振動子132,136の変位量に応じた検出信号を検出用電極パッド162,163から出力するので、これらの検出信号を差動アンプ等に入力することにより、Y軸周りの角速度Ω2を高い精度で検出することができる。
【0231】
また、垂直振動子132,136にZ軸方向の加速度が加わる場合には、これらの振動子132,136がZ軸方向の同じ向きに変位するので、垂直振動子132,136の変位による静電容量の変化を変位量検出部159,160間で打消して除去でき、Y軸周りの角速は度Ω2を加速度等の外乱から分離して検出することができる。」

よって、引用文献2には、次の技術が記載されている。
「外側質量部130,134がX軸方向に互いに逆位相で振動するため、垂直振動子132,136にY軸周りの角速度Ω2が加わると、これらの振動子132,136はZ軸方向に対して互いに逆向きに変位し(段落【0229】より)、
垂直振動子132のZ軸方向の変位量を電極155,157間の静電容量の変化によりY軸周りの角速度Ω2として検出し(段落【0226】より)、
垂直振動子136のZ軸方向の変位量を電極156,158間の静電容量の変化によりY軸周りの角速度Ω2として検出し(段落【0227】より)、
これにより、変位量検出部159,160は、垂直振動子132,136の変位量に応じた検出信号を検出用電極パッド162,163から出力するので、これらの検出信号を差動アンプ等に入力することにより、Y軸周りの角速度Ω2を高い精度で検出することができる(段落【0230】より)、
角速度センサ(段落【0205】より)。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2010-151808号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている(なお、下線は、当審で付与した。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2a)及びフレーム(2b)を含み、その内部に検出領域(2c)を画成し、その第1の辺が第1の水平軸(x)に沿って延在するダイ(2)と、
前記検出領域(2c)内に設置された弾性アンカー素子(8a,8b)を介して前記基板(2a)に固定され且つ垂直軸(z)を中心とする駆動運動により平面(xy)内で回転するように設計された駆動質量(3)と、
前記駆動運動において前記駆動質量(3)に対して固定され、第1の角速度(Ωx^(→))に応答して前記平面(xy)外への検出運動を行うように、前記駆動質量(3)の内部に懸垂され且つ前記駆動質量(3)に各別の弾性支持素子(20)により結合された第1対(16a’,16b’)及び第2対(16c’,16d’)の第1センサ質量とを備え、
前記第1対の第1センサ質量(16a’,16b’)及び前記第2対の第1センサ質量(16c’,16d’)は前記第1の水平軸(x)に対して反対符号の非ゼロ傾斜を有する各別の方向(x1,x2)に整列している、
ことを特徴とする集積微小電気機械構造(30)。」

「【0015】
ジャイロスコープ1はさらに、垂直軸zに平行な軸を持つ第2対の加速度センサを備えて、特に、それぞれ貫通孔9cおよび貫通孔9d内に収納され、駆動質量3により完全に封入された第2対の第1のセンサ質量16c、16dを備えている。第1のセンサ質量16c、16bの各々は、第1のセンサ質量16a,16bを中心Oに対して90°回転させることにより得られ、従って対応する弾性支持素子20は第1水平軸xに平行に延在し、第1水平軸xに平行な回転軸を中心とする、センサ平面xy外への回転を可能にする。」

よって、引用文献3には、次の技術が記載されている。
「垂直軸zに平行な軸を持つ第2対の加速度センサを備え、第2対の第1のセンサ質量16c、16dの各々は、第1のセンサ質量16a,16bを中心Oに対して90°回転させることにより得られ(段落【0015】より)、第1対(16a,16b)及び第2対(16c、16d)の第1センサ質量は、第1の角速度(Ωx^(→))に応答して前記平面(xy)外への検出運動を行う(【請求項1】より)、ジャイロスコープ1(段落【0015】より)。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由で引用された、特表2007-500086号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている(なお、下線は、当審で付与した。)。
「【0011】
MEMSデバイス100のマイクロ機械部が完成すると、カバー104がハウジング102に取り付けられて、実質的な気密封止を形成する。1実施形態では、カバー104がハウジング102に取り付けられると空所126が形成される。空所126は、空所126内の任意のガス(すなわち酸素、水素、水蒸気)を除去するためにまず空にされる。次に空所は、制御圧に乾燥ガスで充填し直される。通常、乾燥ガスは不活性ガス、たとえば窒素又はアルゴンである。別の実施形態では、カバー104は、真空状態下でハウジング102へ取り付けられて空所126内に真空状態をもたらす。空所126は、マイクロ機械108の部品が自由に動くための環境を提供する。たとえば、プルーフ質量114はマイクロ機械チップ108に動くように結合されることができ、したがって空所126の真空内で振動できる。カバー104がハウジング102に取り付けられる前、ダイ110は複数の接点128を使用する熱圧着法によりハウジング102に載置される。1実施形態では、接点128は金から作製される。圧着法が圧力を利用するため、ダイ110は時には割れる傾向がある。ダイ110の割れは、特に高G環境でMEMSデバイス100の作動に影響を及ぼすことがある。」

よって、引用文献4には、次の技術が記載されている。
「MEMSデバイス100のマイクロ機械部が完成すると、カバー104は、真空状態下でハウジング102へ取り付けられて空所126内に真空状態をもたらし、空所126は、マイクロ機械108の部品が自由に動くための環境を提供する。」技術。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における「基板」が、本願発明1における「基板」に相当する。

イ 引用発明1における「第1の可動の素子110」は、「駆動フレーム120を有し、駆動フレーム120により取り囲まれている面区分には、第1の検出質量体130が配置され」、「駆動フレーム120は4つの駆動ばね140を介して基板表面190に接合され、各駆動ばね140はy方向において弾性的に形成されているが、x方向及びz方向においては実質的に非弾性的に形成され」ているから、本願発明1における「前記基板の上に懸架された慣性質量部(2、102)」に相当する。

ウ 引用発明1の「第1の可動の素子110」が「4つの駆動櫛形構造体150と接合されており、4つの駆動櫛形構造体150は、適切な電圧の印加による駆動フレーム120のy軸方向への振動を許容し」することが、本願発明1における「前記基板の上に懸架された慣性質量部(2、102)」が「少なくとも1つの励振部(6、106)」と「前記慣性質量部(2、102)の平面内に含まれる、前記励振部(6、106)を少なくとも1つの方向(X)に移動させる手段」を含むことに相当する。

エ 引用発明1の「第1の可動の素子110」において、「第1の検出質量体130の下側の導体路平面230には、第1の電極210が設けら、第2の機能平面250において、第1の検出質量体130の上側において、第2の電極220が設けられ」、「第1の電極210と、第1の機能平面240にある、第1の検出質量体130の底部領域とは貫通部280を有し、貫通部280の領域には第2の電極220が、柱状の固定点285を介して基板表面190に接合されており」、「x軸を中心としたヨーレートが発生する場合、コリオリ力は第1の検出質量体130に作用し、z方向における検出質量体130の変位をもたらし、z方向における第1の検出質量体130の変位は、第1の電極210及び第2の電極220により検出することができ、固定型の電極210,220に対して検出質量体130のz方向における変位により、第1の検出質量体130と第1の電極210と第2の電極220との間の容量は、逆の符号を持って変化し、これにより、第1の検出質量体130の変位の全差動的な測定が行われている」ことと、本願発明1における「前記基板の上に懸架された慣性質量部(2、102)」が「前記質量部の前記平面の外側での前記検出部(8、108)の移動を検出する静電容量検出手段」であって、「前記静電容量検出手段が、前記検出部(8、108)と共に可変コンデンサを形成するように、前記基板に面して位置する前記検出部(8、108)の上に配置された、検出電極と呼ばれる少なくとも1つの懸架電極(16、116.1、116.2)を含み、前記電極(16、116.1、116.2)が、前記慣性質量部(2、102)を貫通する少なくとも1つの柱状体(22、22’)によって、前記検出部(8、108)の上に保持され、前記検出手段が1つまたは複数の検出電極を含み、前記1つまたは複数の検出電極が前記検出部の上のみに懸架されている」こととは、「前記基板の上に懸架された慣性質量部(2、102)」が「前記質量部の前記平面の外側での前記検出部(8、108)の移動を検出する静電容量検出手段」であって、「前記静電容量検出手段が、前記検出部(8、108)と共に可変コンデンサを形成するように、前記基板に面して位置する前記検出部(8、108)の上に配置された、検出電極と呼ばれる少なくとも1つの懸架電極(16、116.1、116.2)を含み、前記電極(16、116.1、116.2)が、前記慣性質量部(2、102)を貫通する少なくとも1つの柱状体(22、22’)によって、前記検出部(8、108)の上に保持され、前記検出手段が1つまたは複数の検出電極を含み、前記1つまたは複数の検出電極が前記検出部の上に懸架されている」点で共通する。

オ 引用発明1における「ヨーレートセンサ100」は、「x軸を中心としたヨーレートが発生する場合、コリオリ力は第1の検出質量体130に作用し、z方向における検出質量体130の変位をもたら」すことを動作原理としているから、本願発明1における「ジャイロメータ」に相当するといえる。

よって、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「基板と、前記基板の上に懸架された慣性質量部(2、102)であって、少なくとも1つの励振部(6、106)および少なくとも1つの検出部(8、108)を含む慣性質量部(2、102)と、前記慣性質量部(2、102)の平面内に含まれる、前記励振部(6、106)を少なくとも1つの方向(X)に移動させる手段と、前記質量部の前記平面の外側での前記検出部(8、108)の移動を検出する静電容量検出手段とを含むジャイロメータであって、前記静電容量検出手段が、前記検出部(8、108)と共に可変コンデンサを形成するように、前記基板に面して位置する前記検出部(8、108)の上に配置された、検出電極と呼ばれる少なくとも1つの懸架電極(16、116.1、116.2)を含み、前記電極(16、116.1、116.2)が、前記慣性質量部(2、102)を貫通する少なくとも1つの柱状体(22、22’)によって、前記検出部(8、108)の上に保持され、前記検出手段が1つまたは複数の検出電極を含み、前記1つまたは複数の検出電極が前記検出部の上に懸架されている、ジャイロメータ。」

(相違点)
本願発明1では、1つまたは複数の検出電極が、検出部の上「のみ」に懸架されているのに対し、引用発明1では、「第1の検出質量体130の下側の導体路平面230には、第1の電極210が設けられ、第2の機能平面250において、第1の検出質量体130の上側において、第2の電極220が設けられ」ている点。

(2)判断
ア 本願発明1は、上記「(1)」「(相違点)」の点で引用発明1と実質的に相違するから、本願発明1は、引用発明1ではない。

イ 次に、上記相違点が、当業者にとって容易になし得たことであるか否かについて検討すると、引用発明1において「第1の検出質量体130の下側の導体路平面230には、第1の電極210が設けられ、第2の機能平面250において、第1の検出質量体130の上側において、第2の電極220が設けられ」る理由は、「x軸を中心としたヨーレートが発生する場合、コリオリ力は第1の検出質量体130に作用し、z方向における検出質量体130の変位をもたら」すが、「検出質量体130のz方向における変位により、第1の検出質量体130と第1の電極210と第2の電極220との間の容量は、逆の符号を持って変化し、これにより、第1の検出質量体130の変位の全差動的な測定が行われ」ることにある。
つまり、引用発明1は、「公知のヨーレートセンサは、可動なセンサ構造体ごとに、基板に不動に接合されている単に1つの検出電極しか有していない。」(上記「第4」「1 引用文献1について」における摘記事項「イ」参照。)ことを改良するため、「第1の電極210と第2の電極220との間の容量は、逆の符号を持って変化し、これにより、第1の検出質量体130の変位の全差動的な測定が行われ」ることを特徴とするものである。

ウ よって、引用発明1において、「第1の検出質量体130の下側の導体路平面230」に設けられた「第1の電極210」を省き、「第1の検出質量体130の上側」に設けられた「第2の電極220」のみとし、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、引用発明1における第1の検出質量体130の変位の検出原理(全差動的な測定)と相容れないから、当業者に動機付けられないことである。

エ また、引用文献2-4をみても、上記相違点に係る本願発明1の構成は記載されていない。

オ したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-4に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-17について
本願発明2-17は、本願発明1に所定の限定を付加した発明であるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、本願発明2、4、7-9、12は、引用発明ではなく、また、本願発明2-17は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-4に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正(平成29年1月12日付けの手続補正)により、本願発明1は「前記1つまたは複数の検出電極が前記検出部の上のみに懸架されている、」(下線は、補正箇所を示す)という事項を有するものとなっているから、上記「第5」「1」「(2)判断」で述べたとおり、本願発明1は引用発明1ではなく、また、本願発明1は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明2-17は、本願発明1に所定の限定を付加した発明であるから、上記「第5」「2 本願発明2-17について」で述べたとおり、本願発明2、4、7-9、12は、引用発明1ではなく、また、本願発明2-17は、当業者であっても、引用発明1-4に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

したがって、原査定の理由(理由1、理由2)を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-30 
出願番号 特願2012-105207(P2012-105207)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01C)
P 1 8・ 113- WY (G01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梶田 真也  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清水 稔
須原 宏光
発明の名称 寄生容量を低減させたジャイロメータ  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ