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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1331701
審判番号 不服2016-13471  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-08 
確定日 2017-08-16 
事件の表示 特願2012-104238号「ゲーミングマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日出願公開、特開2013-230272号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月27日に特許出願されたものであって、平成27年11月12日付けで拒絶理由通知がされ、これに対し平成28年1月7日付けで手続補正がなされたが、平成28年7月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年9月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、請求項1の記載は、補正前の、
「【請求項1】
表示窓を有した筐体と、
前記表示窓を介して前記筐体外から視認可能に前記筐体内に配置され、シンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられて水平方向に並設された複数のリールと、
遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光を前記複数のリールの外周に照射する照射光装置とを有しており、
前記リールは、前記照射光装置からの前記可視光を反射するミラー層を有し、
前記照射光装置は、前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され、前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されているとともに、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するように、各リールに対向して配置された複数のLEDユニットを有していることを特徴とするゲーミングマシン。」から、

補正後の
「【請求項1】
表示窓を有した筐体と、
前記表示窓を介して前記筐体外から視認可能に前記筐体内に配置され、シンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられて水平方向に並設された複数のリールと、
遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光を前記複数のリールの外周に照射する照射光装置とを有しており、
前記リールは、前記照射光装置からの前記可視光を反射するミラー層を有し、
前記照射光装置は、前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され、前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されているとともに、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するように、前記リール毎に対向して配置されて前記水平方向に並設された複数のLEDユニットを有していることを特徴とするゲーミングマシン。」
へ補正された(下線部は補正箇所を示すため当審で付与した。)。

2.補正の適否
本件補正により請求項1の記載は、「複数のLEDユニット」について、「各リールに対向して配置された」から「前記リール毎に対向して配置されて前記水平方向に並設された」と限定された。
そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の特許請求の範囲に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そして、本件補正は、【図9】および、本願明細書の【0098】の記載に基づいており、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下において検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1.の補正の概要において示した次に特定されるとおりのものである(A?Eについては、発明特定事項を分説するため当審で付与した。)。

「A 表示窓を有した筐体と、
B 前記表示窓を介して前記筐体外から視認可能に前記筐体内に配置され、シンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられて水平方向に並設された複数のリールと、
C 遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光を前記複数のリールの外周に照射する照射光装置とを有しており、
D 前記リールは、前記照射光装置からの前記可視光を反射するミラー層を有し、
E 前記照射光装置は、前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され、前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されているとともに、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するように、前記リール毎に対向して配置されて前記水平方向に並設された複数のLEDユニットを有していることを特徴とするゲーミングマシン。」

(2)刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2005-124739号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
図柄が裏面に描かれたハーフミラーテープを捲装する複数の円筒状のリールと、前記ハーフミラーテープの裏面に光を照射して前記図柄を前面に表示させるバックランプとを備える遊技機用の回胴装置であって、
前記リールの表示面に向けて映像を投影する投影部と、
前記リールの背後の位置に設けられている映像表示部と、を更に備えることを特徴とする回胴装置。
・・・
【請求項4】
図柄が裏面に描かれたハーフミラーテープを捲装する複数の円筒状のリールと、前記ハーフミラーテープの裏面に光を照射して前記図柄を前面に表示させるバックランプとを備える回胴装置が搭載された回胴式遊技機であって、
前記リールの表示面に向けて映像を投影する投影部と、
前記リールの背後の位置に設けられている映像表示部と、を更に備えることを特徴とする回胴式遊技機。
【請求項5】
前記投影部は、前記リールの表示面側の上下の位置に2個設置されていることを特徴とする請求項4に記載の回胴式遊技機。
・・・」

(イ)「【発明の効果】
【0021】
請求項1?3に係る発明によれば、リールの周面に捲装されたハーフミラーテープで投影部からの映像を反射して表示するので、リールの位置において遊技者の視覚に訴える効果的な演出表示を行うことができる。
【0022】
また、リールの周面で図柄と反射映像を切り換えて表示するので、ゲームの進行状況等に合わせた多様な演出表示を行うことができる。
【0023】
また、映像表示部がリールの背景映像を表示するので、これらリールの反射映像と背景映像とが組み合わされた効果的な演出表示を行うことができる。
【0024】
請求項4?6に係る発明によれば、回胴装置による効果的な演出表示を行うことで、遊技の興趣を高めることができる。」

(ウ)「【0026】
図1は、スロットマシン1の外観構造を表した正面図、図2はスロットマシン1の内部構造を表した図である。図1及び図2において、スロットマシン1は、箱状の筐体2と、筐体2と蝶番機構により開閉可能に取り付けられたフロントドア3とを備えて構成されている。
【0027】
フロントドア3の遊技者に面する側には、意匠的にデザインされ硬質プラスチックでそれぞれほぼ一体的に形成された、いわゆる化粧板に相当する上部パネル部4、中部パネル部5、及び下部パネル部6が設けられている。そして、中部パネル部5と下部パネル部6との間に、遊技者側に若干突出し、ゲーム操作をおこなうための後述するスイッチ類が配置されている操作卓7が一体的に設けられている。なお、上部パネル部4、中部パネル部5、下部パネル部6、及び操作卓7は遊技者側に面し、これらにより「前面パネル部」が構成されている。
・・・
【0030】
中部パネル部5には、硬質プラスチック板等で形成されたパネル面50が設けられている。パネル面50のほぼ中央には略長方形の透明な表示窓51が形成され、表示窓51を通して筐体2内に取り付けられている3個のリール21a,21b,21cと、後述する背景映像表示部29を目視できるようになっている。
【0031】
ここで、詳細は後述するが、回胴装置20は、3個の円筒形状のリール21a,21b,21cが回転軸方向に並べられて構成され、筐体2内に設置されている。各リール21a,21b,21cの周面にはその周方向に沿って複数種類の図柄が描かれ、表示窓51は、一つのリールにつき上下方向に3個の図柄を表示できる大きさに形成されている。つまり、表示窓51を通して、遊技者は、縦方向に3個、横方向に3列の図柄を目視することができる。したがって、ここでは、表示窓51から目視される各リール21a,21b,21cの周面側を「リールの表示面」としている。また、遊技者の指示操作に応じて、各リール21a,21b,21cは回転及び停止の動作が行われ、これにより、表示されるリールの図柄の種類が変更されるようになっている。」

(エ)「【0044】
サブ制御基板330の下方には、リール21a,21b,21cを目視させるための表示窓51を有するパネル面50が取り付けられている。表示窓51の上下端側に、リール21a,21b,21cに向けて映像を投影する2個の投影部34a,34bが取り付けられている。なお、投影部34a,34bは、フラットタイプの例えばカラー液晶ディスプレイであり、詳細については後述する。」

(オ)「【0056】
第1、第2リング部213,214及び梁部215から形成されるリール21aの周面には、長尺状のリールテープ28aが貼り付けられる。リールテープ28aは、プラスチックシートからなり、その表面にはハーフミラー加工が施されて鏡面282aが形成され、裏面には複数種類の図柄281aが印刷さている。そして、リールテープ28aの裏面側がリール21aの周面に当接して捲装されている。これにより、リール21aの周面は、通常の状態では鏡面282aしか見えず、裏面側から光を当てると鏡面282aを透過して図柄281aが見えるようになっている。
【0057】
なお、透明なプラスチックシートの一方の面にハーフミラー加工が施され、他方の面に入射した光をほぼ透過させる性質を有するリールテープをここでは「ハーフミラーテープ」と呼んでいる。また、他のリール21b,21cの周面にも図柄の配列のみが異なる同様のリールテープがそれぞれ捲装されて貼り付けられる。」

(カ)「【0063】
なお、投影部34a,34bを形成する液晶ディスプレイは、バックライトを有してユニット化された自発光型の映像表示装置である。また、投影部34a,34bは、上述の液晶ディスプレイに限定されるものではなく、例えば有機ELから形成された表示装置等、自発光型の表示装置であれば何れでもよい。また、演出画像が印刷された透過フィルムを映写して表示する映写装置のように静止画像を投影する表示装置でもよい。また、投影部34a,34bは、1ライン(光画像列)づづスキャニングして2次元の映像を形成し投影するものでもよい。
【0064】
図6(a)は、回胴装置20と背景映像表示部29によって演出映像を表示する表示態様を表している。この場合、任意に選択されたリール21のバックランプユニット26が消灯し、そのリール21の表示面に向けて投影部34a,34bが映像を投影すると、リール21の周面に形成されている鏡面で映像が反射する。これにより、遊技者PEYEは表示窓51を通して反射映像MIMGを観察できる。
・・・
【0067】
なお、バックランプユニット26a,26b,26cのいずれかを選択して点灯させることで、そのバックランプを有するリール21のみに図柄像RIMGを表示させることができる。そして、バックランプユニット26a,26b,26cを点灯させないリール21に向けて部分的に投影部34a,34bが映像を投影すると、そのリール21のみに反射映像MIMGが表示される。」

(キ)【図6】はスロットマシン1の内部構造を表す図であり、投影部34a,34bは表示窓51の窓枠より外側(上下側)に、リール21に対向して配置されていることが図示されている。

上記(ア)?(キ)の記載事項、図示内容から刊行物1には以下の事項が記載されているといえる。

(a)上記(ウ)【0027】、【0030】には、フロントドア3には中部パネル部5が設けられ、中部パネル部5にはパネル面50が設けられ、パネル面50には表示窓51が形成されることが記載されている。したがって、フロントドア3には表示窓51が形成されている。
また、上記(ウ)【0026】には、スロットマシン1は、箱状の筐体2と、筐体2と蝶番機構により開閉可能に取り付けられたとフロントドア3とを備えて構成されることが記載されおり、フロントドア3は、通常時は閉の状態であるから筐体2の一部であるといえる。
したがって、刊行物1には、表示窓51が形成された筐体2について記載されているといえる。

(b)上記(ウ)【0030】には、表示窓51を通して筐体2内に取り付けられている3個のリール21a,21b,21cを目視できることが記載され、上記(ウ)【0031】には、3個の円筒形状のリール21a,21b,21cが回転軸方向に並べられて構成され、筐体2内に設置されていることが記載されている。
また、上記(オ)【0056】、【0057】には、リール21a,21b,21cの周面には、長尺状のリールテープ28aが貼り付けられ、その表面にはハーフミラー加工が施されて鏡面282aが形成され、裏面には複数種類の図柄281aが印刷されていると記載されている。
したがって、刊行物1には、表示窓51を通して目視できるように筐体2内に取り付けられ、裏面には複数種類の図柄281aが印刷された長尺状のリールテープ28aが周面に貼り付けられた回転軸方向に並べられて構成された3個の円筒形状のリール21a,21b,21cについて記載されているといえる。

(c)上記(エ)には、表示窓51の上下端側に、リール21a,21b,21cに向けて映像を投影する2個の投影部34a,34bが取り付けられていることが記載されている。
そして、上記(イ)【0022】には、リールの周面で図柄と反射映像を切り換えて表示するので、ゲームの進行状況等に合わせた多様な演出表示を行うことができると記載されているから、反射映像の映像は演出表示用のものである。
したがって、刊行物1には、演出表示用の映像をリール21a,21b,21cに向けて投影する2個の投影部34a,34bについて記載されているといえる。

(d)上記(オ)【0056】には、リール21aの周面には、長尺状のリールテープ28aが貼り付けられ、その表面にはハーフミラー加工が施されて鏡面282aが形成されていることが記載され、また、上記(カ)【0064】には、リール21の表示面に向けて投影部34a,34bが映像を投影すると、リール21の周面に形成されている鏡面で映像が反射することが記載されている。
したがって、刊行物1には、リール21は、投影部34a,34bが映像を投影すると映像を反射する鏡面282aについて記載されているといえる。

(e)上記(キ)【0026】には、投影部34a,34bは表示窓51の窓枠より外側に、リール21に対向して配置されていることが示されている。
そして、上記(カ)【0063】には、投影部34a,34bを形成する液晶ディスプレイは、バックライトを有してユニット化されたことが記載され、【0064】には、選択されたリール21の表示面に向けて投影部34a,34bが映像を投影することが記載されている。
また、上記(ウ)【0026】にはスロットマシン1について記載されている。
したがって、刊行物1には、投影部34a,34bは、表示窓51の窓枠より外側に、リール21に対向して配置され、映像を選択されたリール21の表示面に向けて投影するとともに、バックライトを有してユニット化された液晶ディスプレイから形成されたスロットマシン1について記載されているといえる。

上記(ア)?(キ)の記載事項等及び上記(a)?(e)の認定事項を総合すれば、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(a?eは発明の構成を分説するため当審で付与した。)。

「a 表示窓51が形成された筐体2と、
b 表示窓51を通して目視できるように筐体2内に取り付けられ、裏面には複数種類の図柄281aが印刷された長尺状のリールテープ28aが周面に貼り付けられた回転軸方向に並べられて構成された3個の円筒形状のリール21a,21b,21cと、
c 演出表示用の映像をリール21a,21b,21cに向けて投影する2個の投影部34a,34bとを有しており、
d リール21は、投影部34a,34bが映像を投影すると映像を反射する鏡面282aを有し、
e 投影部34a,34bは、表示窓51の窓枠より外側に、リール21に対向して配置され、映像を選択されたリール21の表示面に向けて投影するとともに、バックライトを有してユニット化された液晶ディスプレイから形成されたスロットマシン1。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出しは(a)?(e)とし、本願補正発明、引用発明の分説に対応させている。

(a)引用発明の「表示窓51」、「筐体2」は、それぞれ本願補正発明の「表示窓」、「筐体」に相当する。したがって、引用発明の「表示窓51が形成された筐体2」は、本願発明の「表示窓を有した筐体」に相当する。

(b)引用発明の「表示窓51を通して目視できる」ことは、本願補正発明の「表示窓を介して前記筐体外から視認可能」であることに相当する。
そして、引用発明の「複数種類の図柄281aが印刷された長尺状のリールテープ28aが周面に貼り付けられ」た「3個の円筒形状のリール21a,21b,21c」は、本願補正発明の「シンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられ」た「複数のリール」に相当し、引用発明の「回転軸方向に並べられて構成された」は、本願補正発明の「水平方向に並設された」ことを意味するのは明らかである。
そうすると、引用発明の「表示窓51を通して目視できるように筐体2内に取り付けられ、裏面には複数種類の図柄281aが印刷された長尺状のリールテープ28aが周面に貼り付けられ、回転軸方向に並べられて構成された3個の円筒形状のリール21a,21b,21c」は、本願補正発明の「前記表示窓を介して前記筐体外から視認可能に前記筐体内に配置され、シンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられて水平方向に並設された複数のリール」に相当する。

(c)引用発明の演出表示用の「映像」は上記(2)(カ)【0064】によれば、リール21の鏡面で反射され、遊技者が反射映像MIMGとして観察できるので、本願補正発明の「可視情報を含む可視光」に相当する。
したがって、引用発明の「演出表示用の映像」は、本願補正発明の「遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光」に相当する。
また、引用発明の「リール21a,21b,21cに向けて投影する2個の投影部34a,34b」は、本願補正発明の「複数のリールの外周に照射する照射光装置」に相当する。
以上より、引用発明の「演出表示用の映像をリール21a,21b,21cに向けて投影する2個の投影部34a,34b」は、本願補正発明の「遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光を前記複数のリールの外周に照射する照射光装置」に相当する。

(d)引用発明の「映像を反射する鏡面282a」は、本願補正発明の「可視光を反射するミラー層」に相当するから、引用発明の「リール21は、投影部34a,34bが映像を投影すると映像を反射する鏡面282aを有し」は、本願補正発明の「リールは、前記照射光装置からの前記可視光を反射するミラー層を有し」に相当する。

(e)引用発明の「投影部34a,34bは、表示窓51の窓枠より外側に」「配置され」は、本願補正発明の「照射光装置は、前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され」に相当する。
また、引用発明の「投影部34a,34bは」「映像を」「リール21の表示面に向けて投影する」ことは、本願補正発明の「照射光装置は」「可視光を前記リールの前記リール帯側に照射する」ことに相当するから、引用発明の「投影部34a,34b」は、本願補正発明の「照射光装置」と同様の設定をされていることは明らかである。
そして、引用発明の「投影部34a,34b」は「リール21に対向して配置」されているから、引用発明の「バックライトを有してユニット化された液晶ディスプレイ」も「リール21に対向して配置」されることは明らかである。

そうすると、引用発明の「バックライト」と本願補正発明の「LEDユニット」はいずれも「光源」であることを考慮すると、
引用発明の「投影部34a,34bは、表示窓51の窓枠より外側に、リール21に対向して配置され、映像を選択されたリール21の表示面に向けて投影するとともに、バックライトを有してユニット化された液晶ディスプレイから形成された」ことと、
本願補正発明の「前記照射光装置は、前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され、前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されているとともに、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するように、前記リール毎に対向して配置されて前記水平方向に並設された複数のLEDユニットを有している」こととは、
「前記照射光装置は、前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され、前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されているとともに、前記リールに対向して配置された光源を有している」点で共通している。
また、引用発明の「スロットマシン1」は、本願補正発明の「ゲーミングマシン」に相当する。

以上、(a)?(e)の対比より、両者は

「A 表示窓を有した筐体と、
B 前記表示窓を介して前記筐体外から視認可能に前記筐体内に配置され、シンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられて水平方向に並設された複数のリールと、
C 遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光を前記複数のリールの外周に照射する照射光装置とを有しており、
D 前記リールは、前記照射光装置からの前記可視光を反射するミラー層を有し、
E’ 前記照射光装置は、前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され、前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されているとともに、前記リールに対向して配置された光源を有しているゲーミングマシン。」

である点で一致しており、次の点で相違する。

(相違点)
照射光装置について、本願補正発明は「全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するように、前記リール毎に対向して配置されて前記水平方向に並設された複数のLEDユニット」を有しているのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

(4)判断
そこで、前記相違点について検討する。

(ア)まず、引用発明の照射光装置は選択されたリールに演出表示用の映像を投影できるものであるから、リール21a,21b,21cの各表面に同時に投影することも可能である。そして、リール21a,21b,21cの各表面の幅全体を利用して、演出表示用の映像を遊技者の視覚的に訴えるように見やすくするためには、照射光装置は少なくとも前記各リールの各表面の幅全体に対し照射する必要があることは自明事項である。
そうすると、引用発明において照射光装置の光源を、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するようにすることは当業者が適宜設定できる設計事項である。

(イ)また、上記(2)(カ)【0064】には、「任意に選択されたリール21のバックランプユニット26が消灯し、そのリール21の表示面に向けて投影部34a,34bが映像を投影すると、リール21の周面に形成されている鏡面で映像が反射する。」と記載され、刊行物1において、バックランプユニット26はリール21毎に設けられている。
そうすると、引用発明の照射光装置(液晶ディスプレイ)の光源はリール毎に配置しているか否か定かではないものの、選択されたリール21のバックランプユニット26が消灯したタイミングで該リールに照射することは上記のとおりであるから、照射光装置(液晶ディスプレイ)の光源をリールに対応して個別に設けること、すなわちリール毎に設けることは当業者なら容易になし得ることである。

(ウ)そして、引用発明の照射光装置が有する光源は、リールに対向して配置されているから、上記(3)(b)より水平方向に配置されているといえる。
一方、遊技機において、液晶ディスプレイの光源として並設された複数のLEDユニットを用いることは、例えば、特開2008-6168号公報(【0025】、【0026】、【図3】、【図5】、【図6】参照)、特開2006-164号公報(【0021】、【図3】、【図4】参照)に示されるように、本願出願前に周知技術である。
そして、引用発明の照射光装置は液晶ディスプレイから形成されているから、そのバックライトとして、遊技機における上記周知技術を採用することは当業者が容易になし得ることである。

(エ)そうすると、上記(ア)で検討した、「照射光装置の光源を、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するようにする」という設計事項に対して、(イ)、(ウ)で検討した「前記リール毎に対向して配置されて前記水平方向に並設された複数のLEDユニット」を有すようにすることは当業者が容易になし得ることであり、結局、前記相違点に係る本願補正発明の構成は引用発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得ることである。

(オ)本願補正発明の効果について、
審判請求人は請求書第3頁において、以下の主張をしている。
「そして、本願請求項1に記載の発明によると、以下の効果を奏します。
リールとLEDユニットとを一対一で対向させることで、LEDユニット毎に点灯、発光色、光量等を容易に制御することができる。
また、リールとLEDユニットとを一対一で対向させることで、照射光装置をリールに近接させて配置しても、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射することができる。
よって、照射光装置をリールに近接させることができるので、ゲーミングマシンの大型化を軽減させることができる。」

しかしながら、リールとLEDユニットとを一対一で対向させることで、LEDユニット毎に点灯、発光色、光量等を容易に制御することができるという本願補正発明の効果は、上記(イ)の検討のとおり、引用発明は選択されたリール21に対して照射でき、リール毎に演出映像を投影できるから、引用発明及び周知技術から予測できる範囲のものであり格別なものではない。
また、リールとLEDユニットとを一対一で対向させることで、照射光装置をリールに近接させて配置しても、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射することができることについて、「リールとLEDユニットとを一対一で対向させること」と「照射光装置をリールに近接させて配置しても、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射することができること」は直接的な関連は認められない。すなわち、LEDユニットが単数であろうが複数であろうが、LEDユニットの左右両端からの出射される可視光が全リールの左右端よりも長尺になるように設定することは可能である。また、「照射光装置をリールに近接させて配置」という構成自体は請求項1の記載において特定されていない事項でもある。
仮に、「リールとLEDユニットとを一対一で対向させること」により「照射光装置をリールに近接させること」が容易であるとして検討すると、大型化の軽減自体はスロット等の遊技機が内在している課題でもあり、大型化の軽減のため各種部品の位置等に工夫をこらすことは当業者が常に考慮すべき事項であるから、この点についても引用発明から予測できる範囲のものである。
したがって、請求人の主張は採用できず、本願補正発明の効果は引用発明、周知技術からみて格別のものではない。

(5)小括
よって、本願補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成28年1月7日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
表示窓を有した筐体と、
前記表示窓を介して前記筐体外から視認可能に前記筐体内に配置され、シンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられて水平方向に並設された複数のリールと、
遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光を前記複数のリールの外周に照射する照射光装置とを有しており、
前記リールは、前記照射光装置からの前記可視光を反射するミラー層を有し、
前記照射光装置は、前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され、前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されているとともに、全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するように、各リールに対向して配置された複数のLEDユニットを有していることを特徴とするゲーミングマシン。」

1.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項、引用発明は、上記第2の3.(2)に記載したとおりである。

2.対比、判断
本願発明は本願補正発明の「前記リール毎に対向して配置されて前記水平方向に並設された複数のLEDユニット」において「前記」、「毎」、「て前記水平方向に並設され」を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-15 
結審通知日 2017-03-21 
審決日 2017-04-04 
出願番号 特願2012-104238(P2012-104238)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 史彬  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 本郷 徹
藤田 年彦
発明の名称 ゲーミングマシン  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  

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