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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1331737
審判番号 不服2016-19518  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-27 
確定日 2017-09-15 
事件の表示 特願2015-561376「キャパシタンスを高めた金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月12日国際公開,WO2014/137589,平成28年 4月14日国内公表,特表2016-511548,請求項の数(25)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年(2014年)2月19日を国際出願日とする出願(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年3月5日,米国)であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 2月 5日 審査請求・手続補正
平成28年 3月25日 拒絶理由通知
平成28年 7月 1日 意見書・補正書
平成28年 8月24日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成28年12月27日 審判請求・手続補正
平成29年 5月10日 上申書
平成29年 8月 8日 上申書

第2 原査定の概要
この出願の請求項1?25に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1,10,14
・引用文献等 1,3-4

引用文献1の段落0024を参照すると,「ゲート16はまた,ドープされたポリシリコン及びドープされたポリシリコン・ゲルマニウム合金材料…と,ポリサイド材料…とを含むこともできる。」と記載されている。
また,引用文献1の段落0032を参照すると,「コンタクト・ビア28は,一般に,ゲート16を構成することができる,幾つかの上記に列挙した導体材料のいずれかを含むことができる。上記の開示によれば,そのような適切な導体材料として,必ずしも限定されるものではないが,特定の金属,金属合金,金属シリサイド,金属窒化物,ドープされたポリシリコン,及びポリサイド導体材料が含まれる。コンタクト・ビア28を構成することができる特定の導体材料として,限定されるものではないが,タングステン,チタン,及びタンタル金属,それらの合金,それらの窒化物,及びそれらのシリサイドが含まれる。」と記載されている。
また,図6を参照すると,コンタクト・ビア28'が形成されており,図中には明記されていないものの,該コンタクト・ビア28'は,高位メタルに接続しているものと認められる。
以上を考慮すると,引用文献1(特に,段落0045及び図6を参照。)には,以下の発明が記載されている。

基板上のゲート16であって,ドープされたポリシリコン,ドープされたポリシリコン・ゲルマニウム合金材料,又はポリサイド材料を含むことができるゲート16と,
前記ゲート16に隣接する基板上に,金属シリサイド,金属窒化物,ドープされたポリシリコン,ポリサイド導体材料,タングステン,チタン,又はタンタル金属を含むことができるコンタクト・ビア28'と,を含み,
前記コンタクト・ビア28'は,高位メタルに接続されている,
金属-絶縁体-金属(MIM)キャパシタ。

引用文献1に記載された発明と,請求項1に係る発明とを対比すると,以下の点で相違する。
[相違点1]
請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明とは異なり,「前記第2のメタル構造がビア構造によって高位メタル構造に結合」されている点。
[相違点2]
請求項1に係る発明は,「前記コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含」むのに対して,引用文献1に記載された発明では,「コンタクト・ビア28’」が「ゲート16」の材料と共通しない少なくとも一つの材料を含むか否かが明らかでない点。

以下,相違点について検討する。
[相違点1について]
引用文献3(特に,段落0020-0041,及び図2を参照。)には,第1電極プラグ10(B)を,第2電極プラグ20(B)によって第2配線層M2に接続する技術が開示されている。
引用文献4(特に,段落0044-0045,及び図9を参照。)には,M1-接続プラグにおける中間接続層20より上の部分を,M1-接続プラグにおける中間接続層20より下の部分によって第1配線層M1に接続する技術が開示されている。
してみると,引用文献3及び4に示されるように,高位のメタルに,接続する際にビアを介する技術は周知である。
[相違点2について]
引用文献1に記載された発明において例示されているコンタクト・ビア28’の材料の中から,ゲート16の材料と共通しない少なくとも一つの材料を選択することは,当業者が適宜なし得たことである。
よって,請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献3-4に開示された周知技術に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,依然として,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,請求項10及び14に係る発明も同様である。

・請求項 2,15
・引用文献等 1,3-4

引用文献1(特に,図6を参照。)に記載された発明の「金属-絶縁体-金属(MIM)キャパシタ」は,基板と,ゲート16との間にゲート誘電体14を有している。

・請求項 5
・引用文献等 1,3-4

請求項5に係る発明と,引用文献1に記載された発明とを対比する。
請求項5に係る発明の「前記導電性ゲート材料および前記第1のメタル構造を含む第1の電極」は,引用文献1に記載された発明の「ゲート16」に相当する。
請求項5に係る発明の「前記第2のメタル構造を含む第2の電極」は,引用文献1に記載された発明の「コンタクト・ビア28'」に相当する。
また,引用文献1の段落0045を参照すると,ゲート16と,コンタクト・ビア28'とで,MIMキャパシタを形成していると認められる。すなわち,ゲート16に印加される電圧とは別の電圧がコンタクト・ビア28'に印加されていると認められる。

・請求項 8,18
・引用文献等 1,3-4

引用文献1の図6を参照すると,金属-絶縁体-金属(MIM)キャパシタは,一つの半導体チップ(半導体ダイ)上に形成されていると認められる。


・請求項 3-4,6-7,9,16-17,19
・引用文献等 1,3-4

引用文献1に記載された発明の金属-絶縁体-金属(MIM)デバイスは,「半導体オンインシュレータ基板」に形成されているが,基板上のシャロートレンチアイソレーション(STI)上に形成することや,基板のシリコン上に形成することは,単なる設計的事項である。

引用文献1に記載された発明の金属-絶縁体-金属(MIM)デバイスにおいて,ゲート16とコンタクト・ビア28'の間のピッチを設計ルールによって許される最小値とすることは,単なる設計的事項であり,集積化を目的として,当業者が容易に想到し得たことである。
また,ゲート16とコンタクト・ビア28'の間のピッチを,2つの隣接するコンタクト・ビア28'間のピッチよりも小さくすることは,単なる設計的事項であり,集積化を目的として,当業者が容易に想到し得たことである。

容量素子やトランジスタ等の電子デバイスを,セットトップボックス,音楽プレイヤー等に例示される電子機器に搭載することは,慣用技術である。

・請求項 11-12,21-22
・引用文献等 1,3-4

引用文献1に記載された発明の金属-絶縁体-金属(MIM)デバイスの製造方法において,ゲート16とコンタクト・ビア28'の間のピッチを設計ルールによって許される最小値とすることは,単なる設計的事項であり,集積化を目的として,当業者が容易に想到し得たことである。
また,ゲート16とコンタクト・ビア28'の間のピッチを,2つの隣接するコンタクト・ビア28'間のピッチよりも小さくすることは,単なる設計的事項であり,集積化を目的として,当業者が容易に想到し得たことである。

・請求項 13,20,23
・引用文献等 1,3-4
・備考

コンピュータなどに代表される電子デバイスによって,半導体装置の製造装置を制御することは,慣用技術である。
以上を踏まえると,金属-絶縁体-金属(MIM)デバイスの製造方法を,電子デバイス中のプロセッサ(代表的には,CPUが例示される。)によって制御することは,当業者が当然に想到し得たことである。

引用文献1に記載された発明のMIMキャパシタの製造方法を,「プロセッサ実行可能な命令を含む,非一時的コンピュータ可読媒体」に記録することは,当業者が容易になし得たことである。

コンピュータなどに代表される電子デバイスによって,半導体装置の製造装置を制御することは,慣用技術である。
以上を踏まえると,金属-絶縁体-金属(MIM)デバイスの設計情報を,受信し,当該設計情報にしたがって,金属-絶縁体-金属(MIM)デバイスをMIMキャパシタ製造方法のように製造することは,当業者が当然に想到し得たことである。

・請求項 24-25
・引用文献等 1-4
・備考

引用文献2には,GDSIIやGERBER等の周知のファイルフォーマットが開示されている。
ファイルフォーマットのなかから,引用文献2に開示されているような周知のファイルフォーマットを採用することに格別の困難性はない。

<引用文献等一覧>
1.特開2010-157704号公報
2.特表2012-520574号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2011-029249号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
4.特開2010-118597号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって補正前の請求項6を削除し,新たな請求項6として「前記基板の前記STI部分が,高周波数信号劣化または高周波数信号損失を減少させるように構成される,請求項3に記載のMOMキャパシタデバイス」を追加する補正,及び請求項17に「前記基板の前記STI部分が,1ギガヘルツ(GHz)りも大きい周波数で高周波数信号劣化を減少させるように構成される」という事項を追加する補正は,各々請求項6が引用する請求項3,及び請求項17の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,これらの追加事項は,当初明細書の段落【0034】,【0067】に記載されているから,当該補正事項は新規事項を追加するものではない。
そして,「第4 本願発明」ないし「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし25に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明25」という。)は,平成28年12月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
基板に結合された導電性ゲート材料と,
前記導電性ゲート材料に結合された第1のメタル構造と,
前記基板に結合され,かつ前記第1のメタル構造に近接する第2のメタル構造であって,
前記第2のメタル構造がコンタクトメタルを含み,前記コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含み,前記第2のメタル構造がビア構造によって高位メタル構造に結合される,第2のメタル構造とを備える,金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタデバイス。
【請求項2】
前記基板に前記導電性ゲート材料を結合するゲート誘電体層をさらに備える,請求項1に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項3】
前記導電性ゲート材料が,前記基板のシャロートレンチアイソレーション(STI)部分に結合される,請求項1に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項4】
前記導電性ゲート材料が,前記基板のシリコン部分に結合される,請求項1に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項5】
前記導電性ゲート材料および前記第1のメタル構造を含む第1の電極が第1の電圧によってバイアスされ,前記第2のメタル構造を含む第2の電極が第2の電圧によってバイアスされるときに,前記第1の電極と前記第2の電極との間の全体のキャパシタンスが,前記導電性ゲート材料と前記コンタクトメタルとの間のキャパシタンスを含む,請求項1に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項6】
前記基板の前記STI部分が,高周波数信号劣化または高周波数信号損失を減少させるように構成される,請求項3に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項7】
前記導電性ゲート材料と前記コンタクトメタルとの間のゲート-コンタクト間ピッチが,2つの隣接するコンタクトメタル間のコンタクト間ピッチよりも小さくかつ2つの隣接する導電性ゲート材料間のゲート間ピッチよりも小さい,請求項1に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項8】
前記導電性ゲート材料,前記第1のメタル構造,および前記第2のメタル構造が,少なくとも1つの半導体ダイに集積される,請求項1に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項9】
前記導電性ゲート材料,前記第1のメタル構造,および前記第2のメタル構造が中に集積される,セットトップボックス,音楽プレーヤ,ビデオプレーヤ,ナビゲーションデバイス,通信デバイス,携帯情報端末(PDA),固定位置データユニット,コンピュータ,またはこれらの組合せをさらに備える,請求項1に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項10】
金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタデバイスを形成する方法であって,
第1の電極を形成するステップであり,前記第1の電極が基板に結合された導電性ゲート材料を含む,ステップと,
前記基板に結合され,かつ前記第1の電極に近接する第2の電極を形成するステップであり,前記第2の電極がコンタクトメタルを含むメタル構造を含み,前記コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含む,形成するステップと,
前記メタル構造を高位メタル構造に結合させるビア構造を形成するステップとを含む,方法。
【請求項11】
前記導電性ゲート材料と前記コンタクトメタルとの間のゲート-コンタクト間ピッチが,設計ルールによって許される最小値である,請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記導電性ゲート材料と前記コンタクトメタルとの間のゲート-コンタクト間ピッチが,2つの隣接するコンタクトメタル間のコンタクト間ピッチよりも小さくかつ2つの隣接する導電性ゲート材料間のゲート間ピッチよりも小さい,請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の電極を形成するステップおよび前記第2の電極を形成するステップが,電子デバイス中に集積されたプロセッサによって始められる,請求項10に記載の方法。
【請求項14】
基板に結合された電荷を伝導するための第1の手段であって,電荷を伝導するための前記第1の手段が第1のキャパシタプレートに対応し,電荷を伝導するための前記第1の手段が導電性ゲート材料を含む,電荷を伝導するための第1の手段と,
前記基板に結合された電荷を伝導するための第2の手段であって,電荷を伝導するための前記第2の手段が第2のキャパシタプレートに対応し,電荷を伝導するための前記第2の手段がコンタクトメタルを含み,前記コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含み,電荷を伝導するための前記第1の手段が電荷を伝導するための前記第2の手段に近接する,電荷を伝導するための第2の手段と,
前記コンタクトメタルを高位メタル構造に結合させる,電荷を伝導するための第3の手段とを備える,金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタデバイス。
【請求項15】
前記基板に電荷を伝導するための前記第1の手段を結合するゲート酸化物層をさらに備える,請求項14に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項16】
電荷を伝導するための前記第1の手段が,前記基板のシリコン部分に結合される,請求項14に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項17】
電荷を伝導するための前記第1の手段が,前記基板のシャロートレンチアイソレーション(STI)部分に結合され,前記基板の前記STI部分が,1ギガヘルツ(GHz)よりも大きい周波数で高周波数信号劣化を減少させるように構成される,請求項14に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項18】
電荷を伝導するための前記第1の手段および電荷を伝導するための前記第2の手段が,少なくとも1つの半導体ダイに集積される,請求項14に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項19】
電荷を伝導するための前記第1の手段および電荷を伝導するための前記第2の手段が中に集積される,セットトップボックス,音楽プレーヤ,ビデオプレーヤ,ナビゲーションデバイス,通信デバイス,携帯情報端末(PDA),固定位置データユニット,コンピュータ,またはこれらの組合せをさらに備える,請求項14に記載のMOMキャパシタデバイス。
【請求項20】
プロセッサによって実行されるときに,前記プロセッサに,金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタデバイスの製作を始めさせるプロセッサ実行可能な命令を含む,コンピュータ可読媒体であって,前記MOMキャパシタデバイスが,
第1の電極を形成するステップであり,前記第1の電極が導電性ゲート材料を含む,ステップと,
第2の電極を形成するステップであり,前記第2の電極がコンタクトメタルを含み,前記コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含み,
前記第1の電極が前記第2の電極に近接し,前記第1の電極が,第1のビア構造によって第1の高位メタル構造に結合された,形成するステップと,によって製作される,コンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記導電性ゲート材料と前記コンタクトメタルとの間のゲート-コンタクト間ピッチが,設計ルールによって許される最小値である,請求項20に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項22】
前記導電性ゲート材料と前記コンタクトメタルとの間のゲート-コンタクト間ピッチが,2つの隣接するコンタクトメタル間のコンタクト間ピッチ,または2つの隣接する導電性ゲート材料間のゲート間ピッチよりも小さい,請求項20に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項23】
半導体デバイスに対応する設計情報を含むデータファイルを受信するステップと,
前記設計情報に従って前記半導体デバイスを製作するステップであり,
前記半導体デバイスが金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタを含み, 前記MOMキャパシタが,
基板に結合された導電性ゲート材料と,
前記導電性ゲート材料に結合された第1のメタル構造と,
前記基板に結合され,かつ前記第1のメタル構造に近接する第2のメタル構造であり,
前記第2のメタル構造がコンタクトメタルを含み,前記コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含み,前記第1のメタル構造が第1のビア構造によって第1の高位メタル構造に結合される,第2のメタル構造とを含む,ステップと
を含む,方法。
【請求項24】
前記データファイルが,GDSIIフォーマットを有する,請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記データファイルが,GERBERフォーマット(登録商標)を有する,請求項23に記載の方法。」

第5 引用文献,引用発明等

1 引用文献1について

(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-157704号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付加した。以下同じ。)

ア 「【0001】
本発明は,一般に,金属-絶縁体-金属(metal-insulator-metal,MIM)キャパシタ,及びその製造方法に関する。より特定的には,本発明は,向上した製造可能性を有する金属-絶縁体-金属キャパシタ,及びその製造方法に関する。 」

イ 「【0022】
図1はまた,半導体基板10の活性領域内及びその上に配置され形成された金属酸化物半導体電界効果トランジスタも示す。金属酸化物半導体電界効果トランジスタは,(1)半導体基板10の活性領域上に配置され形成されたゲート誘電体14と,(2)ゲート誘電体14上に配置され形成されたゲート16と,(3)均一な厚さを有し,ゲート16及びゲート誘電体14の側壁と隣り合い接近して配置され形成された「L」字形状を有する第1のスペーサ18(すなわち,断面図では複数の層として示されるが,平面図ではゲート16及びゲート誘電体14を囲む単一の層のように示される)と,(4)第1のスペーサ18上に配置され形成されたスペーサ形状の第2のスペーサ20と,(5)半導体基板10の活性領域内に配置され,ゲート16の下方のチャネル領域によって分離された複数のソース及びドレイン領域22とを含む。上記の層及び構造体の各々は,半導体製造技術分野において一般に従来のものである材料及び寸法を有する。上記の層及び構造体の各々はまた,半導体製造技術分野において一般に従来のものである方法を用いて形成することもできる。
【0023】
ゲート誘電体14は,真空で測定すると約4から約20までの誘電定数を有するシリコンの酸化物,窒化物及び酸窒化物のような従来の誘電体材料を含むことができる。或いは,ゲート誘電体14は,一般的に,約20から約100まで(又は,少なくとも約100)の誘電定数を有するより高い誘電定数のゲート誘電体材料を含むこともできる。こうしたより高い誘電定数のゲート誘電体材料は,限定されるものではないが,酸化ハフニウム,ハフニウム・シリケート,酸化チタン,チタン酸バリウム・ストロンチウム(BST),及びジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を含むことができる。ゲート誘電体14は,ゲート誘電体14の組成の材料に適した幾つかの方法のいずれかを用いて形成することができる。限定するものではないが,熱又はプラズマ酸化又は窒化法,化学気相堆積法,及び物理気相堆積法が含まれる。典型的には,ゲート誘電体14は,約1ナノメートルから約10ナノメートルまでの厚さを有する熱酸化シリコン誘電体材料,又は約2ナノメートルから約10ナノメートルまでの厚さを有するより高い誘電定数の誘電体材料を含む。
【0024】
ゲート16は,限定されるものではないが,特定の金属,金属合金,金属窒化物,及び金属シリサイド,並びにそれらの積層体及びそれらの複合体を含む材料を含むことができる。ゲート16はまた,ドープされたポリシリコン及びドープされたポリシリコン・ゲルマニウム合金材料(すなわち,1立方センチメートル当たり約1×1018ドーパント原子から約1×1022ドーパント原子までのドーパント濃度を有する)と,ポリサイド材料(ドープされたポリシリコン/金属シリサイド・スタック材料)とを含むこともできる。同様に,上述の材料もまた,幾つかの方法のいずれかを用いて形成することができる。限定的ではない例として,サリサイド法,化学気相堆積法,及び,限定されるものではないが蒸着法及びスパッタリング法といった物理気相堆積法が含まれる。典型的には,ゲート16は,約100ナノメートルから約500ナノメートルまでの厚さを有するドープされたポリシリコン材料,金属ゲート材料,又はシリサイド化ゲート材料を含む。
【0025】
下記にさらに詳細に説明されるように,第1のスペーサ18は,一般に,少なくとも部分的に誘電体スペーサ材料を含む。こうした誘電体スペーサ材料は,分離領域12を形成するために用いられる方法と類似の,同等の,又は同一の方法を用いて形成することができる。上述のように,第1のスペーサ18は,約2ナノメートルから約50ナノメートルまでの範囲の均一な厚さ(すなわち,約2パーセントから約10パーセントまでの厚さ変動の範囲内の)を有し,第1のスペーサ18はまた,鏡像の「L」字形状を含むように意図された「L」字形状も有し,「L」字又は鏡像の「L」字の2つの部分は名目上垂直である。
【0026】
第2のスペーサ20は,適切なエッチング選択性を与えるために,第1のスペーサ18と比べて異なるスペーサ材料を含む。第1のスペーサ18が例えば窒化シリコン材料を含む状況下では,第2のスペーサ20は,例えば代替的に酸化シリコン材料を含むことができる。しかしながら,第1のスペーサ18及び第2のスペーサ20についての誘電体材料のそうした特定の選択は,本実施形態又は本発明を制限するものではない。特に,第2のスペーサ20はまた,ブランケット層堆積及び異方性エッチバック法を用いることによって,特徴的な内向きの(inward pointing)スペーサ形状(すなわち,残りの外向きに湾曲した側部により架橋された2つの垂直な側部を含めて)を有するようにも形成される。」

ウ 「【0032】
コンタクト・ビア28は,一般に,ゲート16を構成することができる,幾つかの上記に列挙した導体材料のいずれかを含むことができる。上記の開示によれば,そのような適切な導体材料として,必ずしも限定されるものではないが,特定の金属,金属合金,金属シリサイド,金属窒化物,ドープされたポリシリコン,及びポリサイド導体材料が含まれる。コンタクト・ビア28を構成することができる特定の導体材料として,限定されるものではないが,タングステン,チタン,及びタンタル金属,それらの合金,それらの窒化物,及びそれらのシリサイドが含まれる。」

エ 「【0045】
図6は,本発明の第1の実施形態を含む本発明の特定の実施形態に従った,半導体構造体の概略断面図を示す。半導体構造体は,垂直型金属-絶縁体-金属キャパシタを含む。垂直型金属-絶縁体-金属キャパシタ内では,ゲート16(すなわち,ゲート材料層)(半導体基板10上に位置する分離領域12上に位置するゲート誘電体14上に配置された)は,キャパシタ・プレートを含む。垂直型金属-絶縁体-金属キャパシタ内では,均一の厚さを有し,ゲート16の横方向に隣り合って接近して配置された第1のスペーサ18は,キャパシタ誘電体を含む。最終的に,垂直型金属-絶縁体-金属キャパシタ内では,第1のスペーサ18の横方向に隣り合って接近して配置されたコンタクト・ビア28’は,別のキャパシタ・プレートを含む。」

オ 図6には,
「半導体基板10上にキャパシタ・プレートとなるゲート16と,
前記ゲート16の横方向に隣りあって近接して配置された第1のスペーサ18と,
前記スペーサの横方向に隣りあって接近して配置された別のキャパシタ・プレートとなるコンタクト・ビア28’と,
から構成される金属-絶縁体-金属キャパシタ。」
が記載されていると認められる。

(2)引用装置発明1
したがって,引用文献1には次の発明(以下,「引用装置発明1」という。)が記載されていると認められる。

「半導体基板10上にキャパシタ・プレートとなるゲート16と,
前記ゲート16の横方向に隣りあって近接して配置された第1のスペーサ18と,
前記スペーサの横方向に隣りあって接近して配置された別のキャパシタ・プレートとなるコンタクト・ビア28’と,
から構成される金属-絶縁体-金属キャパシタ。」

2 引用文献2について

(1)引用文献2

原査定の拒絶の理由に引用された特表2012-520574号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「【0001】
本発明の開示は,一般に,半導体デバイス上でのキャパシタの製作に関する。」

イ 「【0040】
前述の開示されたデバイスおよび機能性は,コンピュータ可読性媒体に保存されたコンピュータファイル(例えば,RTL,GDSII,GERBERなど)に設計され構成されていてもよい。そのようなファイルのいくつかまたは全ては,そのようなファイルに基づいてデバイスを製作する製作ハンドラ(fabrication handlers)に提供されてもよい。得られる製品は,後で半導体のダイに切断され半導体チップ内にパッケージ化される半導体ウェハを含む。次いでチップは上述のデバイスで用いられる。図16は,電子デバイス製造プロセス1600の,特定の例示的な実施形態を示す。」

ウ 「【0044】
設計用コンピュータ1614は,ファイルフォーマットに適合するように,回路設計情報1622を含めた設計情報を変換するよう構成されていてもよい。例えば,ファイル形成は,平面幾何形状,テキストラベル,および階層フォーマットにおける回路レイアウトに関するその他の情報を表すデータベースバイナリファイルフォーマット,例えばグラフィカルデータシステム(GDSII)ファイルフォーマットを含んでいてもよい。設計用コンピュータ1614は,他の回路または情報に加え,図1?6,図7?9B,図10A?B,図11?13B,図14の方法,図15の方法,またはこれらの任意の組合せにより形成されたデバイスなどの高誘電率単層半導体キャパシタデバイスについて記述する情報を含むGDSIIファイル1626など,変換された設計情報を含めたデータファイルを生成するよう構成されていてもよい。例えば,データファイルは,図6に示されるキャパシタを含み,かつ追加の電子回路および構成要素もSOC内に含む,システムオンチップ(SOC)に対応する情報を含んでいてもよい。」

エ 「【0048】
コンピュータ1646は,回路基板におけるパッケージ化された半導体デバイスの物理的位置情報,並びにトレースおよびビアなどの電気接続のレイアウトを含むデータを有するGERBERファイル1652などのデータファイルを生成するために,PCB設計情報1642を変換するよう構成されていてもよく,このパッケージ化された半導体テバイスは,図1?6,図7?9B,図10A?B,図11?13Bに示されまたは図14の方法,図15の方法,またはこれらの任意の組合せにより形成されたキャパシタデバイスを含むパッケージ1640に対応するものである。その他の実施形態では,変換されたPCB設計情報により生成されたデータファイルは,GERBERフォーマット以外のフォーマットを有していてもよい。」

オ 図16には,以下のものが記載されている。

「GDSIIファイルフォーマットやGERBERファイルフォーマットを利用した設計情報を含むデータファイルにしたがって,半導体デバイス上にキャパシタを製作し,キャパシタを含む電子デバイスを製造する製造方法。」


(2)引用製造方法発明2
したがって,引用文献2には次の発明(以下,「引用製造方法発明2」という。)が記載されていると認められる。

「GDSIIファイルフォーマットやGERBERファイルフォーマットを利用した設計情報を含むデータファイルにしたがって,半導体デバイス上にキャパシタを製作し,キャパシタを含む電子デバイスを製造する製造方法。」

3 引用文献3について

(1)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-29249号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「【0001】
本発明は,半導体装置に関する。より詳細には,容量素子を備える半導体装置に関する。」

イ 「【0028】
第1電極プラグ10(A)と,第2電極プラグ10(B)は,第1配線層M1と半導体基板2に形成された活性領域6間に配設されている。換言すると,第1電極プラグ10(A)と,第2電極プラグ10(B)は,第1層間絶縁膜51内に配設されている。第1電極プラグ10(A)は,第1ノードM1(A)に接続され,第2電極プラグ10(B)は,第2ノードM1(B)に接続されている。
【0029】
第2電極プラグ20(B)は,第1配線層M1と第2配線層M2間に配設されている。換言すると,第2電極プラグ20(B)は,第3層間絶縁膜53内に配設されており,第2ノードM1(B)と第2ノードM2(B)間に配設されている。
【0030】
第1電極プラグ10(A)と,第2電極プラグ10(B)及び第2電極プラグ20(B)は,図1に示すように,平面視上,粒状に配置されたコンタクトプラグからなる。第1電極プラグ10(A)と,第2電極プラグ10(B)及び第2電極プラグ20(B)は,図1中のX方向(第1の方向)において交互に配置されている。そして,隣接する第1電極プラグ10(A)と第2電極プラグ10(B)の間で容量を形成する。なお,第1電極プラグ10(A),第2電極プラグ10(B)及び第2電極プラグ20(B)の配置は,図1のレイアウトに限定されるものではなく,第1電極プラグ10(A)と第2電極プラグ10(B)間に容量が形成される構成であればよい。」

ウ 図2には,
「半導体基板上2に形成された第1電極型プラグコンタクトプラグ10(A)と第2電極型プラグ10(B)を備え,前記第2電極型プラグ10(B)が第1配線層M1(B)を介して第2電極型プラグ20(B)と接合するディレイ容量(キャパシタ)32」
が記載されていると認められる。

(2)引用装置発明3
したがって,引用文献3には次の発明(以下,「引用装置発明3」という。)が記載されていると認められる。
「半導体基板上2に形成された第1電極型プラグコンタクトプラグ10(A)と第2電極型プラグ10(B)を備え,前記第2電極型プラグ10(B)が第1配線層M1(B)を介して第2電極型プラグ20(B)と接合するキャパシタ32。」

4 引用文献4について

(1)引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-118597号公報(以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「【0001】
本発明は,半導体装置に関する。より詳しくは,規則性のあるレイアウト領域を有する半導体装置に関する。」

イ 「【0044】
図9に,本実施形態3に係る半導体装置301のSRAM部3Bとロジック回路部3Aの模式的な部分断面図示す。ロジック回路部3Aにおいては,下層導電層と第1配線層M1は,下層導電層の直上に延在されたM1-接続プラグ10を介して接続されている。そして,第1層間絶縁膜51に形成された接続孔に配設されたM1-接続プラグ10と,第2層間絶縁膜52に形成された接続孔に配設されたM1-接続プラグ10との間に中間接続層20が配設されている。中間接続層20は,第1層間絶縁膜51の表面に形成されたM1-接続プラグ10を被覆するように,各接続プラグの露出部と同サイズ若しくは一回り大きいサイズの矩形状パターンが配設されている。」

ウ 図9には,
「半導体基板2及びゲート電極7に結合した下層導電層は,前記下層導電層の直上に延在されたM1-接続プラグ10を介して第1配線層M1に接続された半導体装置。」
が記載されていると認められる。

(2)引用装置発明4
したがって,引用文献4には次の発明(以下,「引用装置発明4」という。)が記載されていると認められる。

「半導体基板2及びゲート電極7に結合した下層導電層は,前記下層導電層の直上に延在されたM1-接続プラグ10を介して第1配線層M1に接続された半導体装置。」

第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用装置発明1との対比

ア 引用装置発明1の「半導体基板11」は,本願発明1の「基板」に相当する。

イ 引用装置発明1の「ゲート16」は,金属等の導電体を用いるので,本願発明1の「導電性ゲート16」に相当する。

ウ 引用装置発明1の「基板と接合する別のキャパシタ・プレートとなるコンタクト・ビア28’」は,下記相違点(1),(4)の点を除き,本願発明1の「コンタクトメタル」に相当する。

エ 引用装置発明1の「金属-絶縁体-金属キャパシタ」は,誘電体材料に関する下記相違点(2)を除き,本願発明1と「金属-誘電体材料-金属キャパシタ」の点で共通する。

とすると,本願発明1は引用装置発明1とは,下記オの点で一致し,下記カの点で相違すると認められる。

オ 一致点
「基板上に結合された導電性ゲート材料と,
,コンタクトメタルを備える
金属-誘電体材料-金属キャパシタ。」

カ 相違点
相違点(1)
本願発明1では,「コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含む」のに対して,引用装置発明1では,コンタクトメタル材料と導電性ゲート材料との関係について限定はしていない点。

相違点(2)
本願発明1では,誘電体材料として酸化物を用いた,「金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタデバイス」であるのに対して,引用装置発明1では,キャパシタを構成する誘電体材料として酸化物に特定されていない点。

相違点(3)
本願発明1は,「導電性ゲート材料に結合された第1のメタル構造」を有するのに対して,引用装置発明1では,導電性ゲート材料に結合する第1のメタル構造を有しない点。

相違点(4)
本願発明1では,「基板に結合され,かつ前記第1のメタル構造に近接する第2のメタル構造であって,前記第2のメタル構造がコンタクトメタルを含む」のに対して,引用装置発明1では第2のメタル構造を有しない点。

相違点(5)
本願発明1では,「前記第2のメタル構造がビア構造によって高位メタル構造によって結合される」のに対して,引用装置発明1では,第2のメタル構造がないため,高位メタルに結合する構造を有しない点。

(2)相違点についての判断
以下,相違点(1)について検討する。
本願発明1は,ICの小さい表面積を追求しながら,大きいキャパシタンスを得ることを技術的課題としており,当該技術的課題に対して,コンタクトメタルと導電性ゲート材料との関係について,コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料とする条件を採用するという解決手段を見いだしたものと解される(相違点(1)に対応)。当該条件を必要とする理由は,キャパシタの電極間距離として,最小許容コンタクト間ピッチまたは最小許容ゲート間ピッチよりもさらに小さい最小許容ゲート-コンタクト間ピッチを採用することによって,キャパシタの電極間距離を小さくし,キャパシタの容量を大きくするためである。前記解決手段について,引用文献1ないし4のいずれにも記載されておらず,また示唆もされていない。
また,当該条件を採用する事により,設計ルールに従った利用可能な電極間の最小許容距離を採用し,小さい表面積で大きい容量を確保できるキャパシタの実現という有利な効果を奏している(本願明細書段落【0019】?【0021】)。
さらに,引用装置発明1,3,4は,相違点(1)ないし(5)に関する一部の構成を開示しているものの,これらを同時に備える事について記載されておらず,また示唆もされていない。
したがって,本願発明1は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9は,本願発明1の発明特定事項を全て含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1(2)のとおり,本願発明1が引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,請求項2ないし9に係る発明についても,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

3 本願発明10について
(1)本願発明10と引用製造方法発明1との対比
前記第5の1(1)アないしオを参照すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用製造方法発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「半導体基板10上にキャパシタ・プレートとなるゲート16を形成するステップと,
前記ゲート16の横方向に隣りあって近接して配置された第1のスペーサ18を形成するステップと,
前記スペーサの横方向に隣りあって接近して配置された別のキャパシタ・プレートとなるコンタクト・ビア28’を形成するステップ
を含む金属-絶縁体-金属キャパシタを形成する方法。」

前記1(1)アないしエを参照すると,本願発明10と引用製造方法発明1とは下記アの点で一致し,下記イの点で相違する。

ア 一致点
「金属-誘電体材料-金属キャパシタデバイスを形成する方法であって,
第1の電極を形成するステップであり,前記第1の電極が基板に結合された導電性ゲート材料を含むステップと,
前記基板に結合されるコンタクトメタルを形成するステップ,を含む。」

イ 相違点
相違点(1)
本願発明10では,「コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含む」のに対して,引用製造方法発明1では,コンタクトメタル材料と導電性ゲート材料との関係について限定はしていない点。

相違点(2)
本願発明10では,キャパシタを構成する誘電体材料として酸化物を採用し,「金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタデバイスを形成する方法」であるのに対して,引用製造方法発明1では,キャパシタを構成する誘電体材料として酸化物に特定されていない点。

相違点(3)
本願発明10では,「前記基板に結合され,かつ前記第1の電極に近接する第2の電極を形成するステップであり,前記第2の電極がコンタクトメタルを含むメタル構造を含む」のに対して,引用製造方法発明1では,第2の電極を形成するステップを有しない点。

相違点(4)
本願発明10では,「前記メタル構造は高位メタル結合に結合されるビア構造を形成するステップ」を有するのに対して,引用製造方法発明1では,高位メタル結合していないため当該ステップを有しない点。

(2)相違点についての判断
前記相違点(1)は本願発明1の相違点(1)と共通しているため,前記1(2)と同様の理由により,本願発明10は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

4 本願発明11ないし13について
本願発明11ないし13は,本願発明10の発明特定事項を全て含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記3(2)のとおり,本願発明10が引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない以上,請求項11ないし13に係る発明についても,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められない。

5 本願発明14について
(1)本願発明14と引用装置発明1との対比

ア 引用装置発明1の「ゲート16」は基板に結合し,導電性を有し,一方のキャパシタ電極として機能するので,本願発明14の「基板に結合された電荷を伝導するための第1の手段が第1のキャパシタレートに対応し,電荷を伝導するための前記第1の手段が導電性ゲート材料を含む電荷を伝導するための第1の手段」に相当する。

イ 引用装置発明1の「コンタクト・ビア28’」は基板に結合し,導電性を有し,他方のキャパシタ電極として機能するので,下記相違点(1)の点を除き,本願発明14の「前記基板に結合された電荷を伝導するための第2の手段であって,電荷を伝導するための前記第2の手段が第2のキャパシタプレートに対応し,電荷を伝導するための前記第2の手段がコンタクトメタルを含み,」「電荷を伝導するための前記第1の手段が電荷を伝導するための前記第2の手段に近接する,電荷を伝導するための第2の手段」に相当する。

とすると,前記1(1)アないしエを参照すると,本願発明14と引用装置発明1とは以下のウの点で一致し,エの点で相違する。

ウ 一致点
「基板に結合された電荷を伝導するための第1の手段が第1のキャパシタプレートに対応し,電荷を伝導するための前記第1の手段が導電性ゲート材料を含む電荷を伝導するための第1の手段と,
前記基板に結合された電荷を伝導するための第2の手段であって,電荷を伝導するための前記第2の手段が第2のキャパシタプレートに対応し,電荷を伝導するための前記第2の手段がコンタクトメタルを含み,電荷を伝導するための前記第1の手段が電荷を伝導するための前記第2の手段に近接する,電荷を伝導するための第2の手段コンタクトメタルを,
備える,金属-誘電体材料-金属キャパシタデバイス。」

エ 相違点
相違点(1)
本願発明14では,コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含むのに対して,引用装置発明1では,コンタクトメタル材料と導電性ゲート材料との関係について限定はしていない点。

相違点(2)
本願発明14では,キャパシタを構成する誘電体材料として酸化物を採用し,「金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタデバイス」であるのに対して,引用装置発明1では,キャパシタを構成する誘電体材料は酸化物に特定されていない点。

相違点(3)
本願発明14では,「コンタクトメタルを高位メタル構造に結合させる電荷を伝導するための第3の手段」を備えているに対して,引用装置発明1では,前記第3の手段を有しない点

(2)相違点についての判断
前記相違点(1)は本願発明1の相違点(1)と共通しているため,前記1(2)と同様の理由により,本願発明14は,引用文献1,3,4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

6 本願発明15ないし19について
本願発明15ないし19は,本願発明14の発明特定事項を全て含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記5(2)のとおり,本願発明14が引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,請求項15ないし19に係る発明についても,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

7 本願発明20について
(1)本願発明20と引用媒体発明1との対比
前記1(1)アないしオを参照した上で,コンピュータによって,キャパシタを形成する事は慣用手段であるから,引用文献1には以下の発明(以下,「引用媒体発明1」という。)が記載されていると認められる。

「プロセッサによって実行されるときにキャパシタデバイスの製作を始めさせるプロセッサ実行可能な命令を含んだコンピュータ可読媒体であって,前記キャパシタデバイスが,
半導体基板10上にキャパシタ・プレートとなるゲート16を形成するステップと,
前記ゲート16の横方向に隣りあって近接して配置された第1のスペーサ18を形成するステップと,
前記スペーサの横方向に隣りあって接近して配置された別のキャパシタ・プレートとなるコンタクト・ビア28’を形成するステップと,
を含む金属-絶縁体-金属キャパシタを形成する方法によって製作される。」

すると,本願発明20と引用媒体発明1とは下記アの点で一致し,下記イの点で相違する。

ア 一致点
「プロセッサによって実行されるときにキャパシタデバイスの製作を始めさせるプロセッサ実行可能な命令を含んだコンピュータ可読媒体であって,
第1電極を形成するステップであり,第1の電極が導電性ゲート材料を含むステップと,
第2電極を形成するステップであり,コンタクトメタルを形成するステップを含むによって製作される。」

イ 相違点
相違点(1)
本願発明20では,コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含むのに対して,引用媒体発明1では,コンタクトメタル材料と導電性ゲート材料との関係について限定はしていない点。

相違点(2)
本願発明20では,キャパシタを構成する誘電体材料として酸化物を採用し,「金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタデバイス」であるのに対して,引用媒体発明1では,キャパシタを構成する誘電体材料は酸化物に特定されていない点。

相違点(3)
本願発明20では,「前記第1の電極が,第1のビア構造によって第1の高位メタル構造に結合されたステップを有するに対して,引用媒体発明1では,当該ステップを有しない点。

(2)相違点についての判断
前記相違点(1)は本願発明1の相違点(1)と共通しているため,前記1(2)と同様の理由により,本願発明20は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

8 本願発明21及び22について
本願発明21及び22は,本願発明20の発明特定事項を全て含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記7(2)のとおり,本願発明20が引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上,請求項21及び22に係る発明についても,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

9 本願発明23について
(1)本願発明23と引用製造方法発明1との対比
前記1(1)アないしウを考慮すると,本願発明23と引用製造方法発明1とは下記アの点で一致し,下記イの点で相違する。

ア 一致点
「半導体デバイスを製作するステップであり,
半導体デバイスが金属-誘電体材料-金属キャパシタを含み,当該キャパシタが,
基板に結合された導電性ゲート材料と,
コンタクトメタルを形成するステップを含む。」

イ 相違点
相違点(1)
本願発明23では,コンタクトメタルが前記導電性ゲート材料と共通しない少なくとも一つの材料を含むのに対して,引用製造方法発明1では,コンタクトメタル材料と導電性ゲート材料との関係について限定はしていない点。

相違点(2)
本願発明23では,「半導体デバイスに対応する設計情報を含むデータファイルを受信するステップ」を有するのに対して,引用製造方法発明1では,当該ステップを有しない点。

相違点(3)
本願発明23では,キャパシタを構成する誘電体材料として酸化物を採用し,「金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタデバイス」であるのに対して,引用製造方法発明1では,キャパシタを構成する誘電体材料は酸化物に特定されていない点。

相違点(4)
本願発明23では,「導電性ゲート材料に結合した第1のメタル構造」を有するのに対して,引用製造方法発明1では,第1のメタル構造を有しない点。

相違点(5)
本願発明23では,「前記基板に結合され,かつ前記第1のメタル構造に近接する第2のメタル構造でり,前記第2のメタル構造がコンタクトメタルを含」むのに対して,引用製造方法発明1では,第2のメタル構造を有しない点。

相違点(6)
本願発明23では,「前記第1のメタル構造が第1のビア構造によって第1の高位メタル構造に結合される,第2のメタル構造とを含む,ステップ」を有するに対して,引用製造方法発明1では,当該ステップを有しない点。

(2)相違点についての判断
前記相違点(1)は本願発明1の相違点(1)と共通しているため,また,引用文献2に記載された引用製造方法発明2は前記相違点(2)の構成を開示しているのに留まるので,前記1(2)と同様の理由により,本願発明23は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

10 本願発明24,25について
本願発明24及び25は,本願発明23の発明特定事項を全て含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記9(2)のとおり,本願発明23が引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上,請求項24及び25に係る発明についても,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定について
前記6で検討したように,本願発明1ないし25は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第8 結言
以上のとおりであるから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-30 
出願番号 特願2015-561376(P2015-561376)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 市川 武宜辻 勇貴宇多川 勉岩本 勉  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 大嶋 洋一
小田 浩
発明の名称 キャパシタンスを高めた金属-酸化物-金属(MOM)キャパシタ  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

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