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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C25D |
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管理番号 | 1331762 |
審判番号 | 不服2015-21397 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-02 |
確定日 | 2017-08-25 |
事件の表示 | 特願2012-261218「伸縮性を有する金属メッシュの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 9日出願公開、特開2014-105374〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年11月29日の出願であって、平成27年 6月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年 8月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年 9月 8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月 2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 その後、平成29年 1月27日付けで当審から拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年 3月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?4に係る発明は、平成29年3月28日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 メッキ可能な円筒状金属基材を準備する工程と、該円筒状金属基材の表面にフォトレジストを塗布し、露光・現像せしめてメッシュ状レジストパターンを形成する工程と、該円筒状金属基材及びメッシュ状レジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成する工程と、該メッシュ状レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該メッシュ状レジストパターンごと剥離せしめて前記円筒状金属基材の表面に六角形状DLCパターンを形成し、多角形状DLCパターン付ロールを作製する工程と、前記六角形状DLCパターン付ロールを用いて、メッキ可能な金属を連続メッキすることにより金属メッシュを作製する工程と、 を含み、前記金属メッシュの網目形状が、六角形であることを特徴とする伸縮性を有する金属メッシュの製造方法。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の一つは、本願発明1?4は、その出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 1 引用文献等 引用文献1:特開2010-196167号公報 引用文献2:特開2012-230970号公報 引用文献3:特開2012-154964号公報 第4 引用文献の記載事項 1 引用文献1について 本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1には、以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 (1-ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (イ)導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広で導電性基材が露出している凹部が形成されているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、 (ロ)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程を含むパターンが施された金属箔の製造方法により得られた金属箔。 【請求項2】 めっき用導電性基材において、絶縁層が幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されている請求項1記載のパターンが施された金属箔の製造方法により得られた金属箔。 【請求項3】 めっき用導電性基材の絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなる請求項1又は2記載のパターンが施された金属箔の製造方法により得られた金属箔。 ・・・ 【請求項12】 めっき用導電性基材が、導電性のロール(ドラム)・・・である請求項1?11のいずれかに記載のパターンが施された金属箔の製造方法により得られた金属箔。」 (1-イ)「【0009】 本発明の一例を、図面を用いて説明する。 図1は、本発明のめっき用導電性基材の一例を示す一部斜視図である。図2は、図1のA-A断面図を示す。図2の(a)は凸部の側面が平面的であるが、(b)は凸部の側面になだらかな凹凸がある場合を示す。めっき用導電性基材1は、導電性基材2の上に絶縁層3が形成されており、絶縁層3は末広がりであり、絶縁層3に凹部4が形成されており、凹部4の底部は、導電性基材2が露出している。導電性基材2は、導電性基材に導通している導体層であってもよい。 この例においては、絶縁層3は、幾何学図形としては矩形であり、凹部4が絶縁層3の部分を除き連なっている。 ・・・ 【0010】 絶縁層又は凹部の一方は、目的に応じて、適宜の形状が形成され、他方は、これに対応した形状となる。このような形状としては、平面形状として、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などがあり、目的に応じてその形状が選択される。このような形状は、組合せて使用できる。また、絶縁層又は凹部の分布密度は、目的応じて適宜決定される。 ・・・ 【0016】 上記のめっき用導電性基材の形状としては、シート状、プレート状、ロール状、フープ状等がある。ロール状の場合は、ロール状それ自体とシート状、プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。・・・。ロール状、フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート状、プレート状に比較すると、生産効率が高く、好ましい。 ・・・ 【0018】 本発明における導電性基材に用いられる導電性材料は、導電性基材の表面に電解めっきで導電層を形成させるために十分な導電性を有するものであり、金属であることが特に好ましい。このような導電性基材の材料としては銅、ステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料、ニッケルなどの材料からなることが特に好ましい。」 (1-ウ)「【0023】 本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法としては、導電性基材の表面に幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を含む。 この工程は、(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程、 (B)除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層を形成する工程及び (C)絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程 を含む。 【0024】 上記(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程は、フォトリソグラフ法を利用して、レジストパターンを形成する方法を利用することができる。 この方法は、 (a-1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、 (a-2)感光性レジスト層をパターン化金属箔の形状に対応したマスクを通して露光する工程及び (a-3)露光後の感光性レジスト層を現像する工程 を含む。 【0025】 また、上記(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程は、 (b-1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、 (b-2)感光性レジスト層にパターン化金属箔の形状に対応した部分にレーザ光を照射する工程及び (b-3)レーザ光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程 を含む。 【0026】 感光性レジストとしては、よく知られたネガ型レジスト(光が照射された部分が硬化する)を使用することができる。また、このとき、マスクもネガ型マスク(凸状のパターンに対応する部分は光が通過する)が使用される。また、感光性レジストとしてはポジ型レジストを用いることができる。」 (1-エ)「【0028】 上記において、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後に、マスクを介して露光する代わりにレーザ光などでマスクを使用せず直接に露光する方法を採用することもできる。光硬化性樹脂にマスクを介して又は介さずして活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。 導電性基材のサイズが大きい場合などはドライフィルムレジストを用いる方法が生産性の観点からは好ましく、導電性基材がめっきドラムなどの場合は、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザ光などで直接に露光する方法が好ましい。」 (1-オ)「【0045】 めっきによって出現又は析出する金属としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ニッケル、鉄、クロム等の導電性を有するものが使用されるが、20℃での体積抵抗率(比抵抗)が20μΩ/cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むことが望ましい。本発明により得られる構造体を電磁波遮蔽シートとして用いる場合には電磁波を電流としてアースするためにこれを構成する金属は導電性が高い方が電磁波遮蔽性に優れるためである。このような金属としては、銀(1.62μΩ/cm)、銅(1.72μΩ/cm)、金(2.4μΩ/cm)、アルミニウム(2.75μΩ/cm)、タングステン(5.5μΩ/cm)、ニッケル(7.24μΩ/cm)、鉄(9.0μΩ/cm)、クロム(17μΩ/cm、全て20℃での値)などがあるが特にこれらに限定するものではない。・・・」 (1-カ)「【0048】 本発明で用いられる導電性基材として、回転体(ロール)を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。回転体(ロール)は金属製が好ましい。さらに、回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極などを用いることが好ましい。ドラム電極の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的低い材料を用いることが好ましい。導電性基材として回転体を用いることにより連続的に作製して巻物として導体層パターン付き基材を得ることが可能となるため、この場合、生産性が飛躍的に大きくなる。」 (1-キ)「【実施例3】 【0065】 (凸状パターンの形成) 液状レジスト(・・・)をステンレス基板(SUS304、314×150mm、日新製鋼(株)製)の両面に10μmの厚みで塗布した。・・・ネガマスクを、ステンレス板の片面に2枚並べて静置した。紫外線照射装置を用いて、・・・、紫外線を・・・照射した。・・・。・・・現像することで、ステンレス板の上に・・・レジスト膜の凸状パターンを形成した。・・・。 【0066】 (絶縁層の形成) 実施例2と同様にDLCを・・・コーティングした。・・・。 【0067】 (絶縁層の付着したレジストパターンの除去と絶縁層パターン形成) 絶縁層が付着したステンレス基板をレジスト剥離液(・・・)に浸せきし、時々揺動を加えながら8時間放置した。レジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。・・・、布で軽くこすることにより全面剥離し、めっき用導電性基材を得た。 ・・・ 【0068】 (銅めっき) ・・・ステンレスロールに、前記で作製しためっき用導電性基材の背面とロールが接触するように、巻きつけて、つなぎ目を絶縁テープで貼り合わせた。さらに、側部からめっき液が染み込まないように、導電性基材の両端5mmを全周にわたって、絶縁テープで覆うように、ロールと導電性基材を貼り合わせ、一つの回転体とした。 次いで、図8に示すような装置構成で回転体103に電解銅めっきした。・・・。」 ア これらの記載事項から、引用文献1に記載された発明について検討する。 イ 前記(1-ア)の請求項1?3、12の記載によれば、 「(イ)導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広で前記導電性基材が露出している凹部が形成されているめっき用導電性基材であって、前記絶縁層が幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されており、前記絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなり、前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)である、めっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、 (ロ)前記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程を含むパターンが施された金属箔の製造方法。」が記載されているといえる。 ウ 前記イの「めっき用導電性基材」の製造方法は、前記(1-ウ)の記載によれば、 「(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程、 (B)前記除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層を形成する工程及び (C)前記絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程」を含み、 前記「(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程」は、 「(a,b-1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、 (a,b-2)前記感光性レジスト層をパターン化金属箔の形状に対応したマスクを通して露光又は前記感光性レジスト層にレーザ光を照射する工程及び (a,b-3)前記露光後又は前記レーザ光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程」を含むといえる。 エ 前記イの「導電性基材」に用いられる導電性材料は、前記(1-イ)の【0018】の記載によれば、金属である。 オ 前記イのめっきにより金属を析出させる工程のめっきは、前記(1-カ)の記載によれば、導電性基材が導電性のロール(ドラム)である場合には、連続めっきであるといえる。 カ 以上から、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。 「(イ)(a,b-1)金属の導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、 (a,b-2)前記感光性レジスト層をパターン化金属箔の形状に対応したマスクを通して露光又は前記感光性レジスト層にレーザ光を照射する工程及び (a,b-3)前記露光後又は前記レーザ光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程を含む、(A)前記金属の導電性基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程、 (B)前記除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層を形成する工程及び (C)前記絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程を含み、 前記導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広で前記導電性基材が露出している凹部が形成されており、 前記絶縁層が幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されており、 前記絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなり、 前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)である、めっき用導電性基材を形成する工程、 前記めっき用導電性基材の表面に連続めっきにより金属を析出させる工程、 (ロ)前記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程を含むパターンが施された金属箔の製造方法。」(以下、「引用発明」という。) 2 引用文献2について 本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献2には、以下の事項が記載されている。 (2-ア)「【実施例】 【0061】 (実施例1) (円形配置パターンの形成) 液状レジスト(・・・)を直径350mm、長さ350mmのステンレス(SUS316L)製めっき用ドラムの表面に均一に塗布し、110℃で1分間プリベークした後、厚み6μmのレジスト膜を得た。 【0062】 次いで、・・・ネガフィルムを、めっき用ドラムの表面に一周巻き付け、・・・固定した。次いでネガフィルムを固定したドラムを・・・回転しながらドラム表面全面に均一に当たる様、紫外線を・・・照射した。次いで・・・加熱した後、・・・現像することで、ドラム上に・・・レジスト膜の円形配置パターンを形成した。これらは、レーザ顕微鏡により実測した。測定点は5点以上とした。 【0063】 (絶縁層の形成) ・・・ 【0064】 ・・・中間層を成膜した。次いで、・・・、中間層の上にDLC層を形成した・・・。・・・。 【0065】 (絶縁層の付着したレジストパターンの除去と絶縁層パターン形成) 絶縁層が付着したドラムを水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、ゆっくりと回転させながら8時間放置すると、レジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離された。・・・。 ・・・。 【0066】 (銅めっき) めっき用ドラムを陰極として、また、チタン製電極を陽極として電解銅めっき用の電解浴(・・・)中にドラムを浸し、・・・めっきした。その結果、銅箔はドラム表面の露出面及び絶縁層の端部を覆うように形成された。」 3 引用文献3について 本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (3-ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 基材の表面に感光材を塗布し、露光・現像せしめてレジストパターンを形成し、該基材及びレジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成し、該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめ、基材の表面にDLCパターンを形成してなることを特徴とするパターン付ロール。 【請求項2】 前記感光材が塗布される基材が、Ni、ステンレス鋼、Ti、Cu、Alからなる群から選ばれた少なくとも一種の材料からなることを特徴とする請求項1記載のパターン付ロール。 【請求項3】 前記基材が、ゴム又はクッション性を有する樹脂からなるクッション層を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン付ロール。 ・・・ 【請求項5】 前記感光材が、ネガ型感光性組成物であることを特徴とする1?4いずれか1項記載のパターン付ロール。 ・・・ 【請求項11】 前記パターン付ロールが、連続めっき用ロールであることを特徴とする請求項1?6いずれか1項記載のパターン付ロール。 【請求項12】 請求項11記載のパターン付ロールによってめっきされたことを特徴とする製品。 【請求項13】 基材を準備する工程と、該基材の表面に感光材を塗布し、露光・現像せしめてレジストパターンを形成する工程と、該基材及びレジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成する工程と、該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめる工程と、を含むことを特徴とするパターン付ロールの製造方法。 【請求項14】 前記感光材が塗布される基材が、Ni、ステンレス鋼、Ti、Cu、Alからなる群から選ばれた少なくとも一種の材料からなることを特徴とする請求項13記載のパターン付ロールの製造方法。 【請求項15】 前記基材が、ゴム又はクッション性を有する樹脂からなるクッション層を備えることを特徴とする請求項13又は14記載のパターン付ロールの製造方法。 ・・・ 【請求項17】 前記感光材が、ネガ型感光性組成物であることを特徴とする13?16いずれか1項記載のパターン付ロールの製造方法。 ・・・」 (3-イ)「【実施例】 ・・・ 【0035】 (実施例1) 円周600mm、面長1100mmの版母材(アルミ中空ロール)を準備し、・・・銅メッキ層及びニッケルメッキ層の形成までを行った。・・・。上記形成したニッケルメッキ層を基材としてその表面に感光膜(サーマルレジスト:TSER-NS(株式会社シンク・ラボラトリー製))を塗布(ファウンテンコーター)、乾燥した。・・・。ついで、画像をレーザー露光し現像した。・・・、所定のレジストパターンを形成した。 【0036】 該ニッケルメッキ層及びレジストパターンの表面にDLC被覆膜をCVD法で形成した。・・・。 【0037】 次いで、該中空ロールを水酸化ナトリウム水溶液中で超音波処理を30分行った。そして、該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめ、基材の表面にDLCパターンが形成されたグラビア印刷用ロールを得た。 ・・・ 【0040】 (実施例3) パターニング形状を変えた以外は実施例1と同様にして、連続めっき用ロールを得た。得られた連続めっき用ロールを電子顕微鏡で観察したところ、図5に示す高精細なDLCパターンが観察された。図5において、DLCパターン20の線幅は8μmであった。」 第5 対比・判断 1 本願発明と引用発明とを対比する。 (1) 引用発明の「金属の導電性基材」は、「めっき用導電性基材」でありその表面に金属を析出させるものであるから、「めっき可能」であることは明らかである。 また、引用発明が、「金属の導電性基材」を準備する工程を有することは自明の事項であるところ、引用発明には、「めっき用導電性基材」の「前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)であ」ることは特定されているものの、上記準備する「金属の導電性基材」が「ロール(ドラム)」、すなわち、円筒状であることは特定されていない。 そうすると、引用発明の「金属の導電性基材」と、本願発明の「メッキ可能な円筒状金属基材」とは、メッキ可能な金属基材である点で共通し、また、引用発明と本願発明とは、メッキ可能な金属基材を準備する工程を含む点で共通する。 (2) 引用発明の「絶縁層」は、「幾何学図形を描くように・・・形成されてい」るから、この「絶縁層」を形成するための「除去可能な凸状パターン」(感光性レジスト層からなるパターン)は、上記「幾何学図形」の「絶縁層」が形成されていない部分に対応するものであり、メッシュ状であるといえる。 そうすると、引用発明の「除去可能な凸状パターン」は、本願発明の「メッシュ状レジストパターン」に相当し、また、引用発明の「(a,b-1)金属の導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、 (a,b-2)前記感光性レジスト層をパターン化金属箔の形状に対応したマスクを通して露光又は前記感光性レジスト層にレーザ光を照射する工程及び (a,b-3)前記露光後又は前記レーザ光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程を含む、(A)前記金属の導電性基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程」と、本願発明の「該円筒状金属基材の表面にフォトレジストを塗布し、露光・現像せしめてメッシュ状レジストパターンを形成する工程」とは、金属基材の表面にフォトレジストを塗布し、露光・現像せしめてメッシュ状レジストパターンを形成する工程である点で共通する。 (3) 引用発明の「絶縁層」は、「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からな」るものであって、「除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に・・・形成」されるものであるから、DLC被覆層であるといえる。 そうすると、引用発明の「除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に・・・形成」され、「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からな」る「絶縁層」は、本願発明の「DLC被覆層」に相当し、また、引用発明の「(B)前記除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層を形成する工程」と、本願発明の「該円筒状金属基材及びメッシュ状レジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成する工程」とは、金属基材及びメッシュ状レジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成する工程である点で共通する。 (4) 引用発明の「めっき用導電性基材」は、「前記絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程」により、「前記導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広で前記導電性基材が露出している凹部が形成されており、前記絶縁層が幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されて」いるものであるから、当該「前記絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程」によって形成された「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からな」る「絶縁層」は、DLCパターンであるといえ、また、引用発明の「前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)である、めっき用導電性基材」は、DLCパターン付きのロールであるといえる。 そして、引用発明の「前記絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程」は、「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からな」る「絶縁層」が「凸状パターン」(感光性レジスト層からなるパターン)とともに除去(剥離)される工程といえる。 そうすると、引用発明の「前記導電性基材の表面に・・・形成され」、「開口方向に向かって幅広で前記導電性基材が露出している凹部が形成されており」、「幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されている」、「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からな」る「絶縁層」は、本願発明の「DLCパターン」に相当し、引用発明の「前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)である、めっき用導電性基材」は、本願発明の「DLCパターン付きロール」に相当し、更に、引用発明の「前記絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程を含み、 前記導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広で前記導電性基材が露出している凹部が形成されており、 前記絶縁層が幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されており、 前記絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなり、 前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)である、めっき用導電性基材を形成する工程」と、本願発明の「該メッシュ状レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該メッシュ状レジストパターンごと剥離せしめて前記円筒状金属基材の表面に六角形状DLCパターンを形成し、多角形状DLCパターン付ロールを作製する工程」とは、メッシュ状レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該メッシュ状レジストパターンごと剥離せしめて前記金属基材の表面にDLCパターンを形成し、DLCパターン付きロールを作製する工程である点で共通する。 (5) 引用発明は、「前記めっき用導電性基材の表面に連続めっきにより金属を析出させる工程」及び「(ロ)前記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程」により「パターンが施された金属箔」が製造されるものであるところ、当該「前記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属」は、上記(2)で検討した、メッシュ状の「除去可能な凸状パターン」と同じパターンとなることは自明の事項であるから、当該「パターンが施された金属箔」もメッシュ状であるといえる。 そうすると、引用発明の「パターンが施された金属箔」は、本願発明の「金属メッシュ」に相当し、また、引用発明の「前記めっき用導電性基材の表面に連続めっきにより金属を析出させる工程、 (ロ)前記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程を含むパターンが施された金属箔の製造方法」と、本願発明の「前記六角形状DLCパターン付ロールを用いて、メッキ可能な金属を連続メッキすることにより金属メッシュを作製する工程」とは、DLCパターン付ロールを用いて、メッキ可能な金属を連続メッキすることにより金属メッシュを作製する工程である点で共通する。 (6) 以上から、両者は、 「メッキ可能な金属基材を準備する工程と、該金属基材の表面にフォトレジストを塗布し、露光・現像せしめてメッシュ状レジストパターンを形成する工程と、該金属基材及びメッシュ状レジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成する工程と、該メッシュ状レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該メッシュ状レジストパターンごと剥離せしめて前記金属基材の表面にDLCパターンを形成し、DLCパターン付ロールを作製する工程と、前記DLCパターン付ロールを用いて、メッキ可能な金属を連続メッキすることにより金属メッシュを作製する工程と、を有する金属メッシュの製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:メッキ可能な金属基材を準備する工程と、該金属基材の表面にフォトレジストを塗布し、露光・現像せしめてメッシュ状レジストパターンを形成する工程と、該金属基材及びメッシュ状レジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成する工程と、該メッシュ状レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該メッシュ状レジストパターンごと剥離せしめて前記金属基材の表面にDLCパターンを形成する工程(以下、「パターン形成工程」ということがある。)を実施する金属基材について、本願発明は、「円筒状」であるのに対し、引用発明はその形状が特定されていない点。 相違点2:DLCパターンの形状及び金属メッシュの編目形状について、本願発明が「六角形状」であるのに対し、引用発明が「幾何学図形」である点。 相違点3:金属メッシュについて、本願発明が「伸縮性を有する」のに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。 2 そこで、これらの相違点について検討する。 (1) 相違点1について、引用発明では、上記1(1)で検討したように、準備する「金属の導電性基材」が「ロール(ドラム)」、すなわち、円筒状であることは特定されていない。 しかし、引用発明の「金属の導電性基材」について、引用文献1の上記(1-エ)には、「導電性基材がめっきドラムなどの場合は、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザ光などで直接に露光する方法が好ましい」ことが記載されているから、ドラム形状の「導電性基体」を準備し、このドラム形状の「導電性基体」対して、パターン形成工程を行うことにより、「前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)である、めっき用導電性基材」を得ることは十分に示唆されている。 (2) また、引用文献2の上記(2-ア)には、めっき用ドラムに対してパターン形成工程を行うことにより、絶縁層のパターンが形成されためっき用ドラム(引用発明の「前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)である、めっき用導電性基材」に相当。)を得ることが記載され、また、引用文献3の上記(3-ア)及び(3-イ)には、アルミ中空ロールの基材に対してパターン形成工程を行うことにより連続めっき用ロール(引用発明の「前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)である、めっき用導電性基材」に相当。)を得ることが記載されているから、引用文献1の前記(1)の示唆に基づいて、引用発明において、「前記導電性基材が導電性のロール(ドラム)である、めっき用導電性基材」を得る方法として、引用文献2及び引用文献3に記載されている方法を採用し、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。 (3) 次に、相違点2と3は関連するので、相違点2及び3について、まとめて検討する。 引用文献1の上記(1-イ)の記載によれば、引用発明の幾何学図形は、適宜の形状が形成されるものであり、その具体例として、平面形状として、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などがあり、目的に応じてその形状が選択されるものである。 そして、幾何学図形の形状により、得られる金属メッシュの機械的な特性が異なることは当業者にとって自明であるところ、幾何学図形が六角形である金属箔(金属メッシュ)が、全方位に対して一定の伸縮性を有することはその形状からみて明らかである。 したがって、引用発明において、引用文献1に例示される形状の一つである六角形を選択することは、当業者が容易になし得ることである。 よって、引用発明において、相違点2及び3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (4) 以上を総合すれば、相違点1?3に係る本願発明の発明特定事項はは、当業者にとって容易に想到し得る事項であり、これらの発明特定事項を備えることによる効果も格別なものではない。 (5) 請求人は、平成29年 3月28日付け意見書の(3-1-2)の(相違点7)において、「本願発明1の金属メッシュの網目形状は六角形状であり、この形状の特定及び金属メッシュの材料であるメッキ材料(本願発明1の実施例1では銅パターン箔、実施例2ではニッケルパターン箔)によって本願発明1の金属メッシュの良好な伸縮性が得られるものです。伸縮性を損なうメッキ材料でパターン箔を作製した場合に良好な伸縮性が得られないことはいうまでもなく、一概に六角形状の金属メッシュにすれば全ての金属メッシュが伸縮性を有するようになるというものでないことは明らかであると思料します。」と主張している。 しかし、本願発明の金属メッシュの伸縮性について、本願明細書には、【0008】に、「前記金属メッシュの網目形状は、多角形であればよく、例えば三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形など、いずれも含まれる。そして、本発明の金属メッシュは、前記多角形の各々の頂点の方向に伸縮性を有する。例えば、前記金属メッシュの網目形状が三角形である場合には、3つの頂点の方向に伸縮性を有する。一方、例えば、前記金属メッシュの網目形状が六角形である場合には、6つの頂点の方向に伸縮性を有する。故に、角の数が多い多角形形状ほどに多方位に伸縮性を有する。」と記載されている一方で、「形状の特定及び金属メッシュの材料であるメッキ材料によって良好な伸縮性が得られる」ことは記載も示唆もされていないし、そもそも、本願発明には、金属メッシュの材料であるメッキ材料については、何ら特定されていない。 したがって、伸縮性については、幾何学図形との関係として前記(3)のとおりに解すべきであり、請求人の上記主張は、本願明細書及び本願発明の記載に基づくものではない。 なお、仮に、請求人の上記主張のとおり、本願発明の「金属メッシュ」が、「形状の特定及び金属メッシュの材料であるメッキ材料によって良好な伸縮性が得られる」ものであったとしても、すなわち、「金属メッシュ」の網目形状が六角形であり、かつ、その材料が銅又はニッケル(本願発明の実施例1又は実施例2の材料)であることによって、良好な伸縮性が得られるものであったとしても、本願発明に係る金属メッシュと、引用発明に係る金属箔は、それぞれの用途として、本願明細書の【0021】には、「電磁波シールド」が挙げられているのに対し、引用文献1の上記(1-オ)には、「電磁波遮蔽シールド」が挙げられており、更に同(1-オ)には、上記「電磁波遮蔽シールド」の材料として銅及びニッケルが例示されているから、本願発明と引用発明とは、用途及びメッキ材料が共通しているといえる。 ここで、電磁波遮蔽シールドとして用いられる、本願発明に係る金属メッシュにおける伸縮性については、当該金属メッシュを電磁波遮蔽シールドとして取り扱う上で、例えば、破損しない程度の伸縮性を有していれば足りるものであるから、その用途において通常求められる程度の伸縮性を有していれば足りるものであるといえ、格別な伸縮性まで求められるものではない。 そうすると、本願発明と引用発明とは、用途及びメッキ材料が共通しているから、前記(3)のとおり、引用発明において、引用文献1に例示される形状の一つである六角形を選択することは、当業者が容易になし得ることであって、その際には、本願発明と同様に、その用途において通常求められる程度の伸縮性を有しているといえる。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (6) したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1?3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとの当審拒絶理由は妥当である。 したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-06-30 |
結審通知日 | 2017-07-03 |
審決日 | 2017-07-14 |
出願番号 | 特願2012-261218(P2012-261218) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C25D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀧口 博史 |
特許庁審判長 |
板谷 一弘 |
特許庁審判官 |
小川 進 河本 充雄 |
発明の名称 | 伸縮性を有する金属メッシュの製造方法 |
代理人 | 石原 進介 |