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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1331800
審判番号 不服2016-1966  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-08 
確定日 2017-08-22 
事件の表示 特願2015-510524「SiC上の高耐圧パワー半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日国際公開、WO2014/043104、平成27年 7月27日国内公表、特表2015-521378〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成25年(2013年)9月10日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年9月11日,米国及び2013年8月6日,米国)とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年10月31日 審査請求・手続補正
平成27年 4月14日 拒絶理由通知
平成27年 8月12日 意見書・手続補正
平成27年10月 2日 拒絶査定
平成28年 2月 8日 審判請求・手続補正
平成28年 7月12日 上申書
平成28年11月 1日 拒絶理由通知
平成29年 2月 7日 意見書

2 本願発明
本願の請求項1-10に係る発明(以下,まとめて「本願発明」という。)は,平成28年2月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された,次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
0.02?1.5cm^(2)の面積を有する,<11-20>方向に向かってc軸から遠ざかるように傾斜した単一結晶のオフ角4°のn^(+)4H-SiC基板であって,
1/cm^(2)未満のマイクロパイプ密度と,
2000/cm^(2)未満のらせん転位密度と,
2000/cm^(2)未満の基底面転位密度と,を有する,n^(+)4H-SiC基板と,
該基板上の50μm?100μmの厚みの複数のエピタキシャル層であって,該複数のエピタキシャル層のうちの少なくとも1つが,
1×10^(14)/cm^(3)?2×10^(16)/cm^(3)の範囲の正味キャリア濃度と,
1/cm^(2)未満のマイクロパイプ密度と,
2000/cm^(2)未満のらせん転位密度と,
10/cm^(2)未満の基底面転位密度と,を有し,
前記基板上の前記複数のエピタキシャル層は,前記基板の直上のn^(+)4H-SiC第1エピタキシャル層と,該第1エピタキシャル層上のn^(-)4H-SiC第2エピタキシャル層とを有する,エピタキシャル層と,を備える,高耐圧半導体装置。
【請求項2】
2つの隣接するエピタキシャル層によって形成される少なくとも1つのp-n接合を更に含む,請求項1に記載の高耐圧半導体装置。
【請求項3】
1マイクロ秒超のキャリア寿命を有する少なくとも1つのエピタキシャル層を更に備える,請求項1?2のいずれか一項に記載の高耐圧半導体装置。
【請求項4】
漏れ電流が10mA/cm^(2)以下のときに測定される最大電圧として表わされる逆バイアス阻止電圧が,SiCの材料定数を使用した前記装置のモデリングにより決定される理論値の85%超の範囲にある,請求項1?3のいずれか一項に記載の高耐圧半導体装置。
【請求項5】
<11-20>方向に向かってc軸から遠ざかるように傾斜した単一結晶のオフ角4°のn^(+)4H-SiC基板を製造することであって,該n^(+)4H-SiC基板が,
1/cm^(2)未満のマイクロパイプ密度と,
2000/cm^(2)未満のらせん転位密度と,
2000/cm^(2)未満の基底面転位密度と,を有する,製造することと,
50μm?100μmの厚みの複数のエピタキシャル層を該基板上に堆積することであって,該複数のエピタキシャル層のうちの少なくとも1つが,
1×10^(14)/cm^(3)?2×10^(16)/cm^(3)の範囲の正味キャリア濃度と,
1/cm^(2)未満のマイクロパイプ密度と,
2000/cm^(2)未満のらせん転位密度と,
10/cm^(2)未満の基底面転位密度と,を有する,堆積することと,を含み,
前記基板上の前記複数のエピタキシャル層は,前記基板の直上のn^(+)4H-SiC第1エピタキシャル層と,該第1エピタキシャル層上のn^(-)4H-SiC第2エピタキシャル層とを有する,半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数のエピタキシャル層を堆積する前記工程が,少なくとも1つのp-n接合を形成することを更に含む,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のエピタキシャル層が,クロロシラン類,HxSiCl(1-x),炭化水素ガス,水素,及び塩化水素を含む,反応性ガスの混合物の利用を含む,CVDエピタキシー工程によって,形成される,請求項1に記載の高耐圧半導体装置。
【請求項8】
前記複数のエピタキシャル層のうちの少なくとも1つが,ホットウォール型CVD反応器内で形成される,請求項1に記載の高耐圧半導体装置。
【請求項9】
前記複数のエピタキシャル層が,クロロシラン類,HxSiCl(1-x),炭化水素ガス,水素,及び塩化水素を含む,反応性ガスの混合物の利用を含む,CVDエピタキシー工程によって,形成される,請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のエピタキシャル層のうちの少なくとも1つが,水平ガス流CVDエピタキシー反応器内で形成される,請求項5に記載の方法。」

3 発明の詳細な説明の記載不備について
(1)本願は,発明の詳細な説明に下記のとおり不十分な記載があり,当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
本願明細書段落0059によると,「基板の平面を横切る基底面欠陥の貫通刃状転位への変換を99%超にするように,CVDエピタキシー工程を最適化することができることが発見された。反応物濃度,圧力,温度,ガス流のCVDパラメータの反復によって,基板-エピタキシー膜界面を横切る基底面転位の数を減少させるCVD法の能力を制御できる。」
すなわち,本願発明は,CVDパラメータによりCVD法の能力を制御して,基底面欠陥を貫通刃状転位へ変換し,欠陥の少ないエピタキシャル層を得るものであるが,発明の詳細な説明にはCVDパラメータについて十分な開示がない。
よって,欠陥の少ないエピタキシャル層を得るためには,当業者が「反応物濃度,圧力,温度,ガス流」という複数のパラメータをそれぞれ変化させつつ何度も実験と測定を繰り返すといった過度な試行錯誤をする必要があり,本願発明の実施をすることができる程度に記載されていない。
(2)前記(1)について,請求人は意見書において,ア.異なるシステムは異なる開始点を有するため,4つのCVDパラメータについて,特定の数値範囲を提供することは困難である旨,イ.4つのCVDパラメータの調整可能範囲は狭く,過度な試行錯誤は必要とならない旨,主張している。
・アの主張について
請求人の主張を前提とすれば,特定のシステムにおいて特定の数値範囲を開示することは可能なのであるからそれを発明の詳細な説明において開示すればよいのであって,さらに特定のシステムについての開示をどこまで一般化して特許請求の範囲の記載と対応させることができるかは,特許法36条6項1号に規定する別の要件として検討すべき問題であるから,出願人の主張は,発明の詳細な説明における開示を免れる理由にはならない。
よって,請求人の主張は採用できない。
・イの主張について
4つのCVDパラメータの調整可能範囲が狭いことやその狭い範囲をどのように決定するのかについての開示が発明の詳細な説明にないのであるから,当業者が本願発明を実施しようとすれば,依然として,4つのCVDパラメータについて過度な試行錯誤が必要となると認められる。
よって,請求人の主張は採用できない。

4 結言
以上のとおり,本願は,発明の詳細な説明の記載に不備があり,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないから,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-17 
結審通知日 2017-03-27 
審決日 2017-04-07 
出願番号 特願2015-510524(P2015-510524)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 棚田 一也  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 小田 浩
深沢 正志
発明の名称 SiC上の高耐圧パワー半導体装置  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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