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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1331863
審判番号 不服2016-13386  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-07 
確定日 2017-08-24 
事件の表示 特願2011- 94400「制御用ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日出願公開、特開2012-227393〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年4月20日の出願であって、平成26年6月27日付け拒絶理由通知に対して同年8月22日付けで手続補正がなされ、平成27年1月14日付け拒絶理由通知に対して同年3月23日付けで手続補正がなされ、更に、同年9月29日付け拒絶理由通知に対して同年12月1日付けで手続補正がなされたが、平成28年5月31日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年9月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成28年9月7日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年9月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成28年9月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、
本件補正前(平成27年12月1日付け手続補正書)に、
「【請求項1】
第一基板と、前記第一基板の基板面に対向して配置される第二基板と、少なくとも前記第一基板及び前記第二基板を内部に収容する郭体と、を備え、前記第二基板側から挿し込まれる固定ネジを用いて前記第一基板及び前記第二基板のそれぞれを前記郭体の内部に固定する制御用ユニットにおいて、
前記第二基板は、当該第二基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該第二基板を前記郭体にネジ止めするための当該固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きと、前記第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きと、が複数箇所において形成され、
前記第一基板は、当該第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きを有し、
前記第一基板と前記第二基板とはそれぞれ他の基板と接続するためのコネクタを有することを特徴とする制御用ユニット。
【請求項2】
第一基板と、前記第一基板の基板面に対向して配置される第二基板と、少なくとも前記第一基板及び前記第二基板を内部に収容する郭体と、を備え、前記第二基板側から挿し込まれる固定ネジを用いて前記第一基板及び前記第二基板のそれぞれを前記郭体の内部に固定する制御用ユニットの組立方法において、
前記第二基板は、当該第二基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該第二基板を前記郭体にネジ止めするための当該固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きと、前記第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きと、が複数箇所において形成され、
前記第一基板は、当該第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きを有し、
前記第一基板と前記第二基板とはそれぞれ他の基板と接続するためのコネクタを有し、当該コネクタを用いて接続された後に、前記固定ネジを用いて前記郭体の内部に固定されることを特徴とする制御用ユニットの組立方法。」
とあったところを、

本件補正により、
「【請求項1】
第一基板と、前記第一基板の基板面に対向して配置される第二基板と、少なくとも前記第一基板及び前記第二基板を内部に収容する郭体と、を備え、前記第二基板側から挿し込まれる固定ネジを用いて前記第一基板及び前記第二基板のそれぞれを前記郭体の内部に固定する制御用ユニットにおいて、
前記第二基板は、当該第二基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該第二基板を前記郭体にネジ止めするための当該固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きと、前記第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きと、が複数箇所において形成され、前記固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きの数は、前記固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きの数よりも少なく、
前記第一基板は、当該第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きを有し、
前記第一基板及び前記第二基板は、一方と他方とを互いに接続するためのコネクタをそれぞれ有することを特徴とする制御用ユニット。
【請求項2】
第一基板と、前記第一基板の基板面に対向して配置される第二基板と、少なくとも前記第一基板及び前記第二基板を内部に収容する郭体と、を備え、前記第二基板側から挿し込まれる固定ネジを用いて前記第一基板及び前記第二基板のそれぞれを前記郭体の内部に固定する制御用ユニットの組立方法において、
前記第二基板は、当該第二基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該第二基板を前記郭体にネジ止めするための当該固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きと、前記第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きと、が複数箇所において形成され、前記固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きの数は、前記固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きの数よりも少なく、
前記第一基板は、当該第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きを有し、
前記第一基板及び前記第二基板は、一方と他方とを互いに接続するためのコネクタをそれぞれ有し、当該コネクタを用いて接続された後に、前記固定ネジを用いて前記郭体の内部に固定されることを特徴とする制御用ユニットの組立方法。」
とするものである。

上記補正の内容は、本件補正前の請求項1及び2において、第二基板の「切り欠き」について、「前記固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きの数は、前記固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きの数よりも少なく」と限定し、また、本件補正前の請求項1及び2の「前記第一基板と前記第二基板とはそれぞれ他の基板と接続するためのコネクタを有する(し)」を「前記第一基板及び前記第二基板は、一方と他方とを互いに接続するためのコネクタをそれぞれ有する(し)」として、第一基板と第二基板とを互いに接続することに限定したものである。

よって、本件補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項の限定を目的にするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-65408号(実開平1-169083号)のマイクロフィルム(平成1年11月29日公開。以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「本考案は、一面が開口する箱状のケース内に複数枚のプリント基板を重ねて収納する電子機器におけるプリント基板の装着構造に関するものである。」(第1頁20行?第2頁3行)

イ.「従来、奥行きの深いケース内に複数枚のプリント基板を重ねて装着する場合、一般には第6図及び第7図に示す方法が採られている。つまり、この方法は、ケース1の内面に高さの異なる複数のリブ3_(1)?3_(3)を設け、夫々のプリント基板2_(1)?2_(3)を夫々対応するリブ3_(1)?3_(3)上に載置してねじ4でプリント基板2_(1)?2_(3)を固定するものである。」(第2頁5?12行)

ウ.「また、プリント基板2_(3)を固定するためにねじ4をドライバで締め付けるために、このドライバを通すための凹欠8をプリント基板2_(1),2_(2)に、またプリント基板2_(2)を固定するためにドライバを通すための凹欠7をプリント基板2_(1)に設ける必要もあった。」(第2頁17行?第3頁2行)

エ.「しかも、各プリント基板2_(1)?2_(3)は完全に独立していることは殆どなく、フラットケーブルやコネクタ等で連結されている場合が多いため、ケース1内にプリント基板2_(1)?2_(3)を組み込む際、例えば最も奥側に固定されるプリント基板2_(3)をねじ4で固定しようとすると、プリント基板2_(1),2_(2)がつながっているため、組込みが非常にやりにくいという問題もあった。」(第3頁7?14行)

上記アないしエから、引用例1には以下の事項が記載されている。
・上記アによれば、プリント基板を重ねた電子機器に係るものである。
・上記ア、イによれば、プリント基板2_(1)、2_(2)を重ねて収納するケースを備え、ねじ4でプリント基板2_(1)、2_(2)をケース内に固定するものである。
・上記ウ、第6図によれば、プリント基板2_(2)を固定するためのドライバを通す凹欠7がプリント基板2_(1)の複数箇所に設けられるものである。また、第6図によれば、プリント基板2_(1)を固定するためのねじ穴がプリント基板2_(1)の複数箇所に設けられ、プリント基板2_(2)を固定するためのねじ穴がプリント基板2_(2)の複数箇所に設けられるものである。
・上記エによれば、プリント基板2_(1)、2_(2)はコネクタで連結されているものである。

そうすると、上記摘示事項、第6図及び第7図を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「プリント基板2_(1)、2_(2)を重ねて収納するケースを備え、ねじ4で前記プリント基板2_(1),2_(2)を前記ケース内に固定する電子機器において、
前記プリント基板2_(1)は、当該プリント基板2_(1)を固定するためのねじ穴と、前記プリント基板2_(2)を固定するためにドライバを通すための凹欠7と、が複数箇所において設けられ、
前記プリント基板2_(2)は、当該プリント基板2_(2)を固定するためのねじ穴を複数箇所において設け、
前記プリント基板2_(1)及びプリント基板2_(2)は、コネクタで連結される
電子機器。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-83822号(実開平2-8093号)のマイクロフィルム(平成2年1月18日公開。以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

オ.「[従来技術]
従来、第6図に示すようにネジ用の下穴4を有するボス3を、例えば樹脂製の基台上に立て、一方基板1の穴2よりネジを挿入して、このネジを下穴4にネジ込むことにより、基板1をボス3に固定することが行われている。
このように樹脂製基台上に基板を取付けるには取付ネジの下穴4と基板1側の穴2とを位置合わせして、タッピングスクリュー又はウェーブネジ等を用い、ネジ締めの際に下穴4内にネジ自身でネジを切ったり、ボス3をネジ山の形に塑性変形させて緩みのないように取付けられている。
しかしながら、基板が小さかったり、あるいは多くのパターンが基板1全体に走っているような場合、穴2をできるだけ外側に開けなくてはならない。ところが基板1に丸穴を開けるには、通常は最低でも肉を残して縁より内側に基板の板厚分だけ開ける必要があるため、穴2の代わりに第7図に示すようなU字状切欠き5を用いることがある。」(第2頁1?19行)

上記オ、第7図の記載によれば、引用例2には、基板固定装置に関して、「ネジにより基板を固定する場合、該基板に丸穴を開ける代わりに切欠きを用いる」技術事項が記載されている。

(3)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-189797号公報(昭和62年8月19日公開。以下「引用例3」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

カ.「産業上の利用分野
本発明は所定の配線を施した複数のプリント基板を所定の間隔にて固定するプリント基板取付装置に関するものである。
従来技術
第3図、第4図は従来のプリント基板取付方法の構成を示すもので、下層プリント基板21をシャーシ22内の取付ボス23に上層プリント基板24と所定の間隔を保ちつつ両プリント基板を固定するための段付ネジ25および、上層プリント基板24を固定するためのネジ26と両プリント基板の回路を電気的、機械的に接続するコネクタ27、28から構成されていた。」(第1頁左欄13行?右欄5行)

上記カ、第3図の記載によれば、引用例3には、プリント基板取付装置に関して、「下層プリント基板および上層プリント基板それぞれにコネクタを設けて接続をする」技術事項が記載されている。

(4)原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-106571号(実開平4-63684号)のマイクロフィルム(平成4年5月29日公開。以下「引用例4」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

キ.「(3)は入出力ユニットで、(31)は導電パターンが設けられ、多数の電気部品(共に図示せず)が実装されたプリント基板、(32)は入力コネクタ、(33)は出力コネクタ、(34)は拡張コネクタ、(35)は後述のCPUユニットのコネクタが接続されるCPU接続コネクタである。なお、(36)?(36c)はプリント基板(31)の四隅に設けられた取付穴である(但し(36b)は図示しない)。
(4)はCPUユニットで、(41)は導電パターンが設けられ、多数の電気部品(共に図示せず)が実装されたプリント基板、(42)は入力コネクタ、(43)は出力コネクタ、(44)はプログラマブルコネクタ、(45)は入出力ユニット(3)の入出力コネクタ(35)に接続されるバスコネクタ、(46)は電源コネクタである。なお、(47)?(47c)はプリント基板(41)の四隅に設けられた取付穴である(但し(47b)は図示していない。)」(第7頁19行?第8頁15行)

上記キ、第1図の記載によれば、引用例4には、電子機器に関して、「(入出力ユニットの)プリント基板と(CPUユニットの)プリント基板とがそれぞれのコネクタにより接続される」技術事項が記載されている。

3.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「プリント基板2_(2)」は、本願補正発明の「第一基板」に相当する。
また、引用発明の「プリント基板2_(1)」は、プリント基板2_(2)と重ねられているものであり、該プリント基板2_(2)の基板面に対向して配置されているといえるから、本願補正発明の「前記第一基板の基板面に対向して配置される第二基板」に相当する。
そして、引用発明の「ケース」は、プリント基板2_(1)、2_(2)を収納するものであるから、本願補正発明の「少なくとも前記第一基板及び前記第二基板を内部に収容する郭体」に相当する。
よって、引用発明の「プリント基板2_(1)、2_(2)を重ねて収納するケースを備え」は、本願補正発明の「第一基板と、前記第一基板の基板面に対向して配置される第二基板と、少なくとも前記第一基板及び前記第二基板を内部に収容する郭体と、を備え」に相当する。

(2)引用発明の「ねじ4」は、プリント基板をケース内に固定するものであるから、本願補正発明の「固定ネジ」に相当する。また、引用発明の「ねじ4」は、引用例1の第6図を参酌すれば、プリント基板2_(1)側から挿し込まれているものである。
よって、引用発明の「ねじ4で前記プリント基板2_(1),2_(2)を前記ケース内に固定する」ことは、本願補正発明の「前記第二基板側から挿し込まれる固定ネジを用いて前記第一基板及び前記第二基板のそれぞれを前記郭体の内部に固定する」ことに相当する。

(3)引用発明における「プリント基板2_(1)」の「ねじ穴」は、プリント基板2_(1)をケース内に固定するためのものであるから、ねじ4の頭の径より小さい径をなす穴であることは明らかである。一方、本願補正発明の第二基板に形成された「切り欠き」も、該第二基板を郭体に固定するネジを通すための一種の「ネジ穴」と認められる。そうすると、引用発明の「当該プリント基板2_(1)を固定するためのねじ穴」は、本願補正発明の「当該第二基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該第二基板を前記郭体にネジ止めするための当該固定ネジの頭の径より小さい径のネジ穴」に相当する。
但し、固定ネジの頭の径より小さい径の穴(ネジ穴)について、本願補正発明は「切り欠き」であるのに対し、引用発明は「切り欠き」でない点で相違する。
また、引用発明の「凹欠7」は、ドライバを通すためのものであるが、引用例1の第6図を参照すると、当然にねじ4を通す大きさであるから、ねじ4の頭の径より大きい径の切り欠きであることは明らかであり、本願補正発明の「当該固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠き」に相当する。
そして、引用発明は、プリント基板2_(1)に「ねじ穴」と「凹欠7」とが複数箇所設けられている。
よって、引用発明の「前記プリント基板2_(1)は、当該プリント基板2_(1)を固定するためのねじ穴と、前記プリント基板2_(2)を固定するためにドライバを通すための凹欠7と、が複数箇所において設けられ」は、本願補正発明の「前記第二基板は、当該第二基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該第二基板を前記郭体にネジ止めするための当該固定ネジの頭の径より小さい径のネジ穴と、前記第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きと、が複数箇所において形成され」に相当する。

(4)本願補正発明は、「前記固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠き(ネジ穴)の数は、前記固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きの数よりも少なく」と特定しているのに対し、引用発明は、その旨の特定はされていない。

(5)上記(3)で記載したように、本願補正発明の「固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠き」は一種の「ネジ穴」と認められるから、引用発明の「前記プリント基板2_(2)は、当該プリント基板2_(2)を固定するためのねじ穴を複数箇所において設け」は、本願補正発明の「前記第一基板は、当該第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より小さい径のネジ穴を有し」に相当する。
但し、固定ネジの頭の径より小さい径の穴(ネジ穴)について、本願補正発明は「切り欠き」であるのに対し、引用発明は「切り欠き」でない点で相違する。

(6)引用発明の「前記プリント基板2_(1)及びプリント基板2_(2)は、コネクタで連結される」は、本願補正発明の「前記第一基板及び前記第二基板は、一方と他方とを互いに接続するためのコネクタを有する」に相当する。
但し、本願補正発明は、前記第一基板及び前記第二基板がコネクタを「それぞれ」有しているのに対し、引用発明は、その旨の特定はされていない。

(7)引用発明の「電子機器」は、ケース内にプリント基板2_(1)、2_(2)を重ねて収納するものであるから、本願補正発明の「ユニット」に相当する。
但し、本願補正発明は「制御用」と特定しているのに対し、引用発明は、その旨の特定はされていない。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「第一基板と、前記第一基板の基板面に対向して配置される第二基板と、少なくとも前記第一基板及び前記第二基板を内部に収容する郭体と、を備え、前記第二基板側から挿し込まれる固定ネジを用いて前記第一基板及び前記第二基板のそれぞれを前記郭体の内部に固定するユニットにおいて、
前記第二基板は、当該第二基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該第二基板を前記郭体にネジ止めするための当該固定ネジの頭の径より小さい径のネジ穴と、前記第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きと、が複数箇所において形成され、
前記第一基板は、当該第一基板を固定するための固定ネジの配置位置に対応する位置に、当該固定ネジの頭の径より小さい径のネジ穴を有し、
前記第一基板及び前記第二基板は、一方と他方とを互いに接続するためのコネクタを有することを特徴とするユニット。」

<相違点1>
固定ネジの頭の径より小さい径の穴(ネジ穴)について、本願補正発明は「切り欠き」であるのに対し、引用発明は「切り欠き」でない点で相違する。

<相違点2>
本願補正発明は、「前記固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠き(ネジ穴)の数は、前記固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きの数よりも少なく」と特定しているのに対し、引用発明は、その旨の特定がされていない点。

<相違点3>
「コネクタ」について、本願補正発明は、第一基板及び第二基板それぞれが有しているのに対し、引用発明は、その旨の特定がされていない点。

<相違点4>
「ユニット」について、本願補正発明は、「制御用」であるのに対し、引用発明は、その旨の特定がされていない点。

4.判断
上記各相違点について検討する。

<相違点1>について
プリント基板におけるネジを挿通する部位として「丸穴」の形状も「切り欠き」の形状も普通に採用されているところ、プリント基板に設けられるネジ用の「丸穴」の代わりに「切り欠き」を用いることは、引用例2(上記「2.(2)」を参照。)に記載されているように適宜なし得る事項である。
よって、引用発明の「ねじ穴」を引用例2記載の技術事項を適用して相違点1の構成にすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

<相違点2>について
固定ネジで複数の基板をそれぞれ郭体内に固定する場合、ネジの数(ネジ止めする箇所)は、基板の形状、各基板上における素子の実装状態(各基板の空きスペース)等を考慮して適宜設計する事項であるから、引用発明に相違点2の構成を適用することは、当業者であれば容易になし得たものである。
なお、本願明細書の段落【0027】に「すなわち、電源基板22には、該電源基板22をカバー24にネジ止めするための切り欠き22aと、制御基板23をカバー24にネジ止めするために用いる切り欠き22bとが複数個所において形成される」とあるが、切り欠き22a(固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠き)と切り欠き22b(固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠き)とを形成する箇所について複数箇所とすることが記載されているが、それぞれの切り欠きの数の関係については記載されておらず、相違点2に係る構成の技術的意義は本願明細書に記載されていない。

<相違点3>について
互いに接続される2つの基板それぞれにコネクタを有するように構成することは、例えば引用例3(上記「2.(3)」を参照。)、引用例4(上記「2.(4)」を参照。)に記載されているように周知の技術事項である。
よって、引用発明のプリント基板2_(1)、2_(2)を接続するコネクタを引用例3,4記載の技術事項を適用して相違点3の構成にすることは、当業者であれば容易になし得たもことである。

<相違点4>について
本願補正発明も引用発明もプリント基板を積層したものであり、該プリント基板は用途に応じた各種設計がなされるところ、制御用として使用することは普通に行われていることである。(必要であれば、引用例4の第2頁8行?18行を参照。)
そして、本願補正発明には、「制御用」と限定する格別の構成要素があるわけではない。
よって、引用発明の電子機器を制御用として相違点4の構成にすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2ないし引用例4に記載された技術事項により当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用例1および4から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2ないし引用例4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明
平成28年9月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年12月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の「前記固定ネジの頭の径より小さい径の切り欠きの数は、前記固定ネジの頭の径より大きい径の切り欠きの数よりも少なく」との限定を削除し、そして、本願補正発明の「前記第一基板及び前記第二基板は、一方と他方とを互いに接続するためのコネクタをそれぞれ有する」との特定事項を「前記第一基板と前記第二基板とはそれぞれ他の基板と接続するためのコネクタを有する」としたものである。
ここで、後者については、本願明細書の実施の形態及び図面を参酌すれば、第一基板に対する他の基板とは第二基板のことであり、一方、第二基板に対する他の基板とは第一基板のことであることは明らかであるから、本願発明と本願補正発明との間に格別の相違はないといえる。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 3.」及び「第2 4.」に記載したとおり、引用例1に記載された発明、引用例2ないし引用例4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明、引用例2ないし引用例4に記載された技術事項により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-20 
結審通知日 2017-06-27 
審決日 2017-07-11 
出願番号 特願2011-94400(P2011-94400)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 酒井 朋広
國分 直樹
発明の名称 制御用ユニット  
代理人 板谷 康夫  

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