• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1331926
審判番号 不服2016-15847  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-24 
確定日 2017-09-12 
事件の表示 特願2014-211445「情報送受信システム、スマートメータ、情報処理装置、及び情報送受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月16日出願公開、特開2016- 81266、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年10月16日の出願であって,平成28年2月4日付けで拒絶理由通知がされ,平成28年3月30日付けで手続補正がされ,平成28年6月7日付けで拒絶理由通知がされ,平成28年8月1日付けで手続補正がされ,平成28年8月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年8月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-8に係る発明は,以下の引用文献1-4に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2011-40040号公報
2.特開2012-113425号公報
3.特開2002-199625号公報
4.特開2014-119218号公報

第3 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は,平成28年8月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
電力供給事業者が保有する第1情報を管理する第1情報処理装置と,
前記電力供給事業者から電力の供給を受ける需要家側に設置され,前記第1情報処理装置と通信可能に接続される複数のスマートメータと,
前記第1情報処理装置と通信可能に接続する,前記電力供給事業者とは異なる他の組織が保有する,前記第1情報と異なる第2情報を管理する第2情報処理装置とを含み,
前記スマートメータは,前記スマートメータごとに固有の識別子である機器IDを記憶し,前記機器IDを用いた認証情報とともに,前記第1情報の取得要求を前記第1情報処理装置に送信し,
前記第1情報処理装置は,前記認証情報により認証を行い,認証に成功すると前記取得要求で要求される前記第1情報を前記取得要求の送信元の前記スマートメータに送信し, 前記スマートメータは,前記機器IDを用いた認証情報とともに,前記第2情報の取得要求を前記第1情報処理装置に送信し,
前記第1情報処理装置は,前記認証情報により認証を行い,認証に成功すると前記第2情報の前記取得要求を前記第2情報処理装置に転送し,
前記第2情報処理装置は,前記取得要求を受信すると,受信した前記取得要求で要求される前記第2情報を前記取得要求の送信元の前記スマートメータに送信する
ことを特徴とする情報送受信システム。」

なお,本願発明2-8の概要は以下のとおりである。

本願発明2-5は,本願発明1を減縮した発明である。

本願発明6は,本願発明1の「情報送受信システム」における「スマートメータ」を特定する発明である。

本願発明7は,本願発明1の「情報送受信システム」における「第1情報処理装置」を特定する発明である。

本願発明8は,本願発明1に対応する「情報送受信方法」の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

A 「【0015】
[実施例1]
---システム構成---
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は,本実施形態の情報処理システム10を含むネットワーク構成図である。図1に示す情報処理システム10(以下,システム10)は,ネットワークを介したデータ通信に際して良好なセキュリティを確保し,なりすまし行為の防止を可能とするコンピュータシステムである。本実施形態における例では,第1サーバたるサービスプロバイダサーバ100,第2サーバたる電力会社サーバ200,および認証装置400(所定商品ないしサービスを利用する為の所定データを受信する所定装置)からなる前記システム10と,ユーザ施設に固定された計測装置たるスマートメータ300とからネットワークが構成されている。
【0016】
前記サービスプロバイダサーバ100は,ユーザである電力需要家の認証装置400に対し,例えば,電子コンテンツ(例:書籍,映像,画像,イラスト,印影,音楽,プログラム等の各データ)やその利用のためのデータ(スクランブル解除用の鍵データや利用認証用のパスワード等)を配信する,いわばコンテンツプロバイダが運営するサーバ装置を想定できる。前記サービスプロバイダサーバ100は,公衆回線たるインターネット15および専用回線たるスマートメータネットワーク20を介し,前記認証装置400と通信可能に接続されている。また,前記インターネット15ないしLANなどのネットワークを介して前記電力会社サーバ200と通信可能に接続されている。
【0017】
一方,前記電力会社サーバ200は,電力事業者が管理するサーバ装置であり,専用回線であるスマートメータネットワーク20を介して,電力需要家の施設=ユーザ施設に備わるスマートメータ300,およびこのスマートメータ300と結ばれた認証装置400などと通信可能に結ばれた装置を想定できる。
(途中省略) 」

B 「【0052】
一方,前記スマートメータ300は,CPUなどの制御部304,記憶部301,RAM303,通信部307らがBUSにより互いに接続されて構成されている。前記記憶部301内には,当該スマートメータ300の識別情報としてメータIDが少なくとも格納されている。
(途中省略)」

C 「【0059】
---処理手順例1---
以下,本実施形態における情報処理方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明する情報処理方法に対応する各種動作は,前記サービスプロバイダサーバ100や電力会社サーバ200,スマートメータ300,認証装置400らのRAMに読み出して実行するプログラムによって実現される。そして,このプログラムは,以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0060】
図7は,本実施形態の情報処理方法の処理フロー例1を示す図である。電力需要家でもあるユーザが,サービスプロバイダが提供する電子コンテンツ等の利用を所望したとする。この時,前記ユーザは電力事業者との契約時に登録した需要場所たる自宅=ユーザ施設に所在しているとする。また,前記ユーザの自宅において,デジタルテレビが備わっており,このデジタルテレビには前記認証装置400が接続されている。
【0061】
ここで,前記認証装置400の認証要求部410は,電子コンテンツ等の商品・サービス等の利用要求を入力部405で前記ユーザから受け付けて,記憶部401からユーザの認証用情報(ID,パスワードなど)の入力画面データを呼び出して出力部406ないしこれに接続されたデジタルテレビなど前記利用装置に表示する(s100)。前記ユーザはこの入力画面を閲覧し,入力部405で利用者IDとパスワードのセット=認証用情報を入力する。
【0062】
前記認証装置400の認証要求部410は,前記入力画面を介し入力部405で前記ユーザの認証用情報を受け付け,この認証用情報を含んだ認証要求を前記通信部407で,例えば,前記インターネット経由で前記サービスプロバイダサーバ100に送信する(s101)。前記認証要求は,前記ユーザが望む商品ないしサービスを示す利用サービスID(前記入力画面でユーザから受け付けたもの)を含めるとしてよい。
【0063】
一方,前記サービスプロバイダサーバ100の確認要求部110は,前記インターネット15を経由して,前記ユーザが所在中の施設=ユーザの自宅における前記認証装置400より,前記認証要求を前記通信部107で受信する(s102)。また,当該認証要求が含む認証用情報たる利用者IDとパスワードを,前記利用者情報データベース126に格納された利用者IDとパスワードと照合し,ユーザ認証を実行する(s103)。前記確認要求部110は,当該ユーザ認証に成功した場合(s103:OK),該当ユーザの識別情報として需要家ID(前記利用者IDをキーに前記サービス利用者情報データベース126で検索したもの)を含むユーザ確認要求を前記電力会社サーバ200に送る(s104)。なお,前記ユーザ確認要求には,前記認証要求が含む利用サービスIDを含むとしてもよい。他方,前記ユーザ認証に失敗した場合(s103:NG),認証失敗の通知を前記認証装置400に返して処理を終了する。
【0064】
続いて,前記電力会社サーバ200のユーザ施設特定部210は,前記サービスプロバイダサーバ100より前記ユーザ確認要求を受信し,当該ユーザ確認要求が含む前記ユーザの識別情報たる需要家IDを前記需要家データベース225に照合し,該当ユーザに関するユーザ施設の所在地情報として「需要場所」のデータを特定する(s105)。例えば,前記ユーザの需要家IDが「J-001」であったとすれば,需要場所のデータとして「神奈川県×××××」が特定できる。
【0065】
一方,前記認証装置400の送信指示部411は,前記ユーザの自宅に固定設置されたスマートメータ300に対し,当該スマートメータ300の識別情報たるメータIDを含む商品ないしサービスの利用要求(例えば,前記ステップs101の入力画面で受け付けた利用サービスIDも含む)を,前記電力会社サーバ200に送信するよう前記通信部407で指示する(s106)。なお,前記送信指示部411は,前記利用要求を,例えば一定間隔で前記電力会社サーバ200に送信するよう,前記スマートメータ300に指示するとしてもよい。
【0066】
前記指示を受けた前記スマートメータ300の通信仲介処理部310は,前記利用要求を前記スマートメータネットワーク20を介して前記電力会社サーバ200に送信する(s107)。前記スマートメータネットワーク20と,当該スマートメータ300と認証装置400との間のネットワークとで,通信のプロトコルが異なる場合,プロトコル変換機能を前記通信仲介処理部310が備えて,通信データのプロトコル変換を実行するとしてもよい。プロトコル変換機能は既存のアプリケーションやハードウェアを採用すればよい。
【0067】
また,前記電力会社サーバ200の確認結果通知部211は,スマートメータネットワーク20を介して,前記スマートメータ300より,前記スマートメータ300の識別情報たるメータIDを含む前記利用要求を前記通信部207で受信し,当該利用要求が含む前記スマートメータ300のメータIDを前記メータ情報データベース226に照合して該当スマートメータ300の設置場所情報を特定する(s108)。前記利用要求には,前記利用サービスIDが含まれるとしてもよい。前記メータIDが「M-001」であった場合,メータ設置場所情報としては「神奈川県×××××」が特定できる。
【0068】
前記確認結果通知部211は,ここで特定したスマートメータ300の設置場所情報「神奈川県×××××」と,前記ステップs105でユーザ確認要求に基づいて特定したユーザ施設の所在地情報=需要場所「神奈川県×××××」とを照合する(s109)。この照合により,両者が一致した場合(s109:OK),該当ユーザの識別情報たる需要家IDを含むユーザ確認の成功通知を前記サービスプロバイダサーバ100に送る(s110)。前記成功通知には,前記利用サービスIDが含まれるとしてもよい。他方,前記ステップs109における照合により,両者が一致しなかった場合(s109:NG),該当ユーザの識別情報たる需要家IDを含むユーザ確認の不成功通知を前記サービスプロバイダサーバ100に送り,処理を終了する。s109は,所在確認を行う処理である。
【0069】
一方,前記サービスプロバイダサーバ100のサービスデータ送信部111は,前記電力会社サーバ200からユーザ確認の成功通知を受信した場合(s111)に,前記ユーザ所在中の施設であるユーザ自宅の認証装置400に,前記電子コンテンツ等のデータを前記サービスデータベース125から読み出して送信する(s112)。なお,前記前記サービスデータ送信部111は,前記成功通知に含まれる需要家ID(例えば“J-001”)をキーに,サービス利用者情報データベース126で利用者サービスID(例えば“SB-001”)を特定し,この利用サービスIDをキーに,前記サービスデータベース125にて“サービスコンテンツ”のデータ(サービスIDが“SB-001”のレコードより抽出した“電子カルテ情報”)を抽出し,前記認証装置400に送信するのである。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電子コンテンツを配信するコンテンツプロバイダが運営するサービスプロバイダサーバ100,電力事業者が管理する電力会社サーバ200,スマートメータ300,および認証装置400を含み,ネットワークを介したデータ通信に際して良好なセキュリティを確保し,なりすまし行為の防止を可能とするコンピュータシステムであって,
前記スマートメータ300は,当該スマートメータ300の識別情報としてメータIDが格納されている記憶部を有し,
電力需要家でもあるユーザが,サービスプロバイダが提供する電子コンテンツ等の利用を所望し,電子コンテンツ等の利用要求を前記認証装置400に入力すると,前記認証装置400は,入力画面を前記認証装置400に接続されたデジタルテレビに表示し,
前記ユーザがこの入力画面により利用者IDとパスワードのセットである認証用情報を前記認証装置400に入力すると,前記認証装置400は,入力された認証用情報を含んだ認証要求を前記サービスプロバイダサーバ100に送信し,
前記サービスプロバイダサーバ100は,前記認証要求を受信すると,当該認証要求が含む利用者ID及びパスワードを利用者情報データベース126に格納された利用者ID及びパスワードと照合してユーザ認証を実行し,
ユーザ認証に成功した場合には,前記利用者IDに対応付けられた需要家IDを検索し,検索された需要家IDを含むユーザ確認要求を前記電力会社サーバ200に送信する一方,前記ユーザ認証に失敗した場合には,認証失敗の通知を前記認証装置400に返して処理を終了し,
前記電力会社サーバ200は,前記サービスプロバイダサーバ100より前記ユーザ確認要求を受信すると,当該ユーザ確認要求に含まれる需要家IDを需要家データベース225に照合し,当該ユーザに関するユーザ施設の所在地情報として需要場所を特定し,
他方で,前記認証装置400は,前記ユーザの自宅に固定設置されたスマートメータ300に対し,サービスの利用要求を前記電力会社サーバ200に送信するよう指示し,
前記指示を受けた前記スマートメータ300は,当該スマートメータ300の識別情報たるメータIDを含む利用要求を前記電力会社サーバ200に送信し,
前記電力会社サーバ200は,前記スマートメータ300より前記利用要求を受信し,当該利用要求に含まれるメータIDをメータ情報データベース226に照合して当該スマートメータ300の設置場所情報を特定し,
前記電力会社サーバ200は,特定したスマートメータ300の設置場所情報と,ユーザ確認要求に基づいて特定したユーザ施設の所在地情報である需要場所とを照合し,
両者が一致した場合には,前記需要家IDを含むユーザ確認の成功通知を前記サービスプロバイダサーバ100に送信する一方,両者が一致しなかった場合には,前記需要家IDを含むユーザ確認の不成功通知を前記サービスプロバイダサーバ100に送信して処理を終了し,
前記サービスプロバイダサーバ100は,前記電力会社サーバ200からユーザ確認の成功通知を受信した場合に,前記認証装置400に,電子コンテンツ等のデータを送信する,
システム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

D 「【0019】
電力会社サーバ3は,電力会社に設置されるサーバ用コンピュータであり,電力使用の契約をしている需要家宅のスマートメータ5からデータ仲介システム2経由でデータを受信し,そのデータに基づいて電力に関する料金計算や需給調整を行う。」

E 「【0028】
<データの構成>
図7は,データ送受信システム1の各装置の記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。図7(a)は,データ仲介システム2の記憶部25に記憶されるアドレス変換テーブル25Aの構成を示す。アドレス変換テーブル25Aは,サーバ3,4及びスマートメータ5のコードからデータ送信先のアドレスを特定するための変換テーブルであり,コード25A1及びノードアドレス25A2を含む,ノードごとのレコードからなる。コード25A1は,サーバ3,4の会社コード又はスマートメータ5の計量器コードが設定される。ノードアドレス25A2は,サーバ3,4又はスマートメータ5のネットワークアドレス(例えば,IPアドレス等)が設定される。」

F 「【0036】
<システムの処理>
図10は,データ仲介システム2の処理を示すフローチャートである。本処理は,データ仲介システム2において,主として処理部24が,通信部21によりネットワーク経由でデータを送受信し,記憶部25のデータを参照,更新しながら,サーバ3,4と,スマートメータ5との間におけるデータ送受信を中継するものである。例えば,各需要家宅の使用電力量等データは,スマートメータ5から第三者の管理機関のサーバであるデータ仲介システム2に送信され,データ仲介システム2から電力会社サーバ3やデータ活用会社サーバ4へ配信される。すなわち,データ仲介システム2の処理は,データの振り分けを行うものである。
【0037】
(途中省略)
【0038】
データを受信していれば(S1001のYES),データ仲介システム2は,受信したデータが,スマートメータ5からの使用電力量等データであり,契約会社データが有効か否かを判定する(S1002)。詳細には,使用電力量等データ56Aの形式になっていること,例えば,先頭のデータが計量器コード56A1の形式になっており,2番目のデータが契約会社データ56A2の形式であることをチェックする。契約会社データが有効であれば(S1002のYES),契約会社データに基づいて電力会社サーバ3にデータを送信する(S1003)。
(途中省略)
【0039】
電力会社サーバ3は,データ仲介システム2から電力関連データ及び計量器コードを受信し,それらのデータに基づいて,当該需要家宅の電力料金の計算や電力の需給調整等を行う。
【0040】
(途中省略)
【0042】
続いて,データ仲介システム2は,受信したデータがサーバ3,4からスマートメータ5へのデータか否かを判定する(S1006)。詳細には,図7に示す記憶部35又は45のデータ形式になっていることをチェックする。スマートメータ5へのデータであれば(S1006のYES),計量器コードに基づいてスマートメータ5にデータを送信する(S1007)。詳細には,受信したデータのうち,計量器コードをアドレス変換テーブル25Aによりノードアドレスに変換し,当該ノードアドレスが示すスマートメータ5へ送信元会社コード及び送信データを送信する。スマートメータ5へのデータでなければ(S1006のNO),S1007の処理をスキップする。その後,S1001のデータ受信チェックに戻る。」

したがって,上記Eより,上記引用文献2には,「スマートメータとサーバ間のデータ送受信において,スマートメータのコードからデータ送信先のアドレスを特定するための変換テーブルを備えること」が記載されていると認められる。
また,上記D及びFより,上記引用文献2には,「電力会社サーバ3が仲介データシステム2を介してスマートメータ5から電力関連データを受信すると,電力料金の計算や電力の需給調整などを行ってスマートメータにデータを送信すること」が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

G 「【要約】
【課題】 省スペースかつ使用エネルギの料金体系の変更に対応できるエネルギ供給システムを提供する。
【解決手段】 エネルギ提供システムは,負荷108の電力量を検針する電力量計110と,使用電力量に応じて電力料金を決済する電力会社サーバ150と,電力会社サーバ150とインターネット通信部(第1の通信部)134により通信し,電力量計110とbluetooth通信部(第2の通信部)136により通信する携帯電話器130を備え,携帯電話器130より電力量計110のID番号124を入力・送信し,電力会社サーバ150は,このID番号124及び携帯電話器130の電話番号を受信すると,この電話番号により電話会社サーバ160からの承認を得て,ID番号124に対応するパスワードを選択し携帯電話器130を介して電力量計110に送信し,電力量計110はパスワードに基づいてスイッチ部114を閉じ負荷108へ電力供給を供給する。」

H 「【0018】次に動作について説明する。
(入居時)図1?図6を参照し,ユーザは,新たにユーザ宅100に入居したとき,携帯電話器130のWWWブラウザ機能により電力会社サーバ150の新規入居画面にアクセスし(S100),新規入居用のJAVA(登録商標)アプレット(ソフトウェア(SW))をダウンロードする(S102)。このJAVAアプレットを起動すると(S102a),新規入居画面W100(図5(a))が表示される(S102b)。ユーザは電力量計110のID番号124を参照して,ID番号を入力ボックス200より入力し(S110a),退居日時が予め決まっていれば退居日時を入力ボックス202より入力し(S110b),電力料金の決済方式を選択ボックス204より選択した(S110c)後,送信釦206を押下(実行)する。この操作により送信指令を検出すると(S110d),新規入力画面W100を設定画面W102(図5(b))に切り換えるとともに,電話番号を携帯電話器130の記憶部138から取得し(S110f),ID番号とともに電力会社サーバ150へ送信する(S110)。
【0019】なお,S110aにおけるID番号124の入力は,キー入力でもよいが,新規入居画面W100において,例えばプルダウンメニュー形式で,通信可能なbluetooth対応機器の一覧を表示させ,その中から選択するようにしてもよく,この方式は入力ミスがないので好ましい。ID番号124が入力されたとき,このID番号124を記憶部138に記憶すれば,これ以降ID番号124が必要なときは記憶部138から呼び出して使用することができる。また,S110cにおける選択ボックス203で選択する決済方式とは,携帯電話器130の使用料と同一口座による清算(引き落とし),指定金融機関による清算(引き落とし),請求書(用紙)の配送等の方式である。実施の形態1では,決済方式として,携帯電話器130の使用料と同一口座による清算,退居日時は未入力の場合について説明する。」

したがって,上記G及びHより,上記引用文献3には,「電力量計を携帯電話器と通信可能に接続し,携帯電話器を介して電力会社サーバとデータの送受信を行うこと」が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定で引用された上記引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

I 「【0028】
(1-1)電力会社
電力会社1は,自ら発電した電力,及び/又は,他者が発電した電力を,住宅2を含む電力需要者に供給する。電力会社1は,図1のように,管理装置1aを有している。
【0029】
管理装置1aは,図1のように,住宅2に設置されたスマートメータ2aと,通信回線100aにより接続されている。管理装置1aは,電力会社1の電力供給量と,電力需要者による電力需要量とがバランスするかを判断し,バランスしないと判断した場合に,スマートメータ2aを介して,電力需要者である住宅2に対して電力使用量の調整を要求する。
【0030】
管理装置1aは,電力会社1の供給可能な電力供給量と,電力需要者に設置されたスマートメータ(住宅2に設置されたスマートメータ2aを含む)から送られた電力使用量(履歴も含む)と,を用いて,電力供給量と電力需要量とがバランスしているかの分析(どれだけ電力供給量が不足又は過剰かの定量的な分析を含む)を行う。電力供給量と電力需要量とがバランスしているか否かの分析には,将来の予想を含む。
【0031】
管理装置1aは,分析結果に基づいて,電力供給量と電力需要量とをバランスさせるため,各住宅2のスマートメータ2aに対して,電力使用量の調整を要求する(電力使用量の調整要求を送信する)。なお,電力使用量の調整要求には,電力使用量の促進を要求する電力使用量の促進要求と,電力使用量の抑制を要求する電力使用量の抑制要求とがあるが,ここでは,電力使用量の抑制要求のことを電力使用量の調整要求と呼ぶ。
【0032】
なお,管理装置1aがスマートメータ2aに対して送信される電力使用量の調整要求には,調整要求期間(いつ電力使用量を抑制するか),調整目標量(どれだけ電力使用量を抑制するか),電力料金に関する情報(調整要求期間の電力単価),経済的損益に関する情報(電力使用量の調整要求に応じた場合の報奨金,及び/又は,応じなかった場合の罰金に関する情報)が含まれる。なお,調整目標量は,調整要求期間における,住宅2の空調機10及び設備機器3,3,・・の消費電力[kW]の合計の目標値である。」

したがって,上記Iより,上記引用文献4には,「電力会社の管理装置1aがスマートメータから電力使用量を受信すると分析を行い,スマートメータに対して電力使用量の調整要求や電力料金等を送信すること」が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明における「電力事業者」,「電子コンテンツを配信するコンテンツプロバイダ」,「電力需要家」は本願発明1の「電力供給事業者」,「電力供給事業者とは異なる他の組織」,「電力供給事業者から電力の供給を受ける需要家」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明における「電力事業者が管理する電力会社サーバ200」は,電力事業者が保有する情報を管理していることは明らかであるので,本願発明1における「電力供給事業者が保有する第1情報を管理する第1情報処理装置」に相当する。

ウ 引用発明における「スマートメータ300」は,“需要家側に設置され”ていることは明らかであり,「利用要求を電力会社サーバ200に送信」することから,電力会社サーバ200と“通信可能に接続され”ているといえるので,本願発明1における「前記電力供給事業者から電力の供給を受ける需要家側に設置され,前記第1情報処理装置と通信可能に接続されるスマートメータ」に相当する。
ここで,スマートメータ300は,需要家毎に設置されるものであるから,“複数”のスマートメータ300が設置されていることは明らかである。

エ 引用発明における「サービスプロバイダサーバ100」は,「ユーザ確認要求を電力会社サーバ200に送信する」ことから,電力会社サーバ200と“通信可能に接続され”ているといえ,コンテンツプロバイダが配信する“電子コンテンツ”は,コンテンツプロバイダが“保有する”“情報”であって,電力事業者が保有する情報(第1情報)と“異なる情報”であることは明らかであるので,引用発明の「電子コンテンツを配信するコンテンツプロバイダが運営するサービスプロバイダサーバ100」は,本願発明1における「前記第1情報処理装置と通信可能に接続する,前記電力供給事業者とは異なる他の組織が保有する,前記第1情報と異なる第2情報を管理する第2情報処理装置」に相当する。

オ 上記ア乃至エの検討から,引用発明と本願発明1とは,
「電力供給事業者が保有する第1情報を管理する第1情報処理装置と,
前記電力供給事業者から電力の供給を受ける需要家側に設置され,前記第1情報処理装置と通信可能に接続される複数のスマートメータと,
前記第1情報処理装置と通信可能に接続する,前記電力供給事業者とは異なる他の組織が保有する,前記第1情報と異なる第2情報を管理する第2情報処理装置とを含む,
システム」である点で一致する。

カ 引用発明の「スマートメータ300」は,「当該スマートメータ300の識別情報としてメータIDが格納されている記憶部を有し」ているから,本願発明1とは,「スマートメータは,前記スマートメータごとに固有の識別子である機器IDを記憶し」ている点で一致する。

キ 引用発明では,認証装置400が,スマートメータ300に対して,サービスの利用要求を電力会社サーバ200に送信するよう指示すると,前記指示を受けた前記スマートメータ300は,当該スマートメータ300の識別情報たるメータIDを含む利用要求を前記電力会社サーバ200に送信しているところ,この「利用要求」で要求される「サービス」は,サービスプロバイダサーバ100(第2情報処理装置)が提供する「サービス」(第2情報)であるから,引用発明の「利用要求」は,「第2情報」の「取得」に「関連する」「要求」であるということができる。
そうすると,引用発明の「利用要求」と本願発明1の「第2情報の取得要求」とは,「第2情報の取得に関連する要求」である点で共通する。
してみれば,引用発明の「前記スマートメータ300は,当該スマートメータ300の識別情報たるメータIDを含む利用要求を前記電力会社サーバ200に送信」することと,本願発明1の「前記スマートメータは,前記機器IDを用いた認証情報とともに,前記第2情報の取得要求を前記第1情報処理装置に送信」することとは,「前記スマートメータは,前記機器IDを用いた認証情報とともに,前記第2情報の取得に関連する要求を前記第1情報処理装置に送信」することである点で共通する。

ク 引用発明において,電力会社サーバ200は,スマートメータ300より利用要求を受信すると,当該利用要求に含まれるメータIDをメータ情報データベース226に照合して当該スマートメータ300の設置場所情報を特定し,特定したスマートメータ300の設置場所情報と,ユーザ確認要求に基づいて特定したユーザ施設の所在地情報である需要場所とを照合し,両者が一致した場合には,需要家IDを含むユーザ確認の成功通知をサービスプロバイダサーバ100に送信しているところ,引用発明では,上記場所の照合の処理に先立ち,サービスプロバイダサーバ100は,利用者ID及びパスワードを用いたユーザ認証を実行していて,引用発明では,ユーザ認証の処理に加えて,場所の照合の処理をさらに実行することで,なりすましを防止しようとするものである。
そうすると,引用発明の上記“場所の照合”の処理は,なりすましを防止するために“ユーザ認証”の処理に“関連して実行される処理”であるといえるから,引用発明の「前記電力会社サーバ200は,前記スマートメータ300より前記利用要求を受信し,当該利用要求に含まれるメータIDをメータ情報データベース226に照合して当該スマートメータ300の設置場所情報を特定し,前記電力会社サーバ200は,特定したスマートメータ300の設置場所情報と,ユーザ確認要求に基づいて特定したユーザ施設の所在地情報である需要場所とを照合」することと本願発明1の「前記第1情報処理装置は,前記認証情報により認証を行」うこととは,「第1情報処理装置は,認証情報により認証に関連する処理を行」うことである点で共通する。

ケ 引用発明の「認証装置400」と本願発明1の「スマートメータ」とは,共に“ユーザ側”に設置された装置である点で共通していることから,引用発明の「前記サービスプロバイダサーバ100は,前記電力会社サーバ200からユーザ確認の成功通知を受信した場合に,前記認証装置400に,電子コンテンツ等のデータを送信する」ことと,本願発明1の「前記第2情報処理装置は,前記取得要求を受信すると,受信した前記取得要求で要求される前記第2情報を前記取得要求の送信元の前記スマートメータに送信する」こととは,「前記第2情報処理装置は,前記第2情報をユーザ側に送信する」点で共通する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「電力供給事業者が保有する第1情報を管理する第1情報処理装置と,
前記電力供給事業者から電力の供給を受ける需要家側に設置され,前記第1情報処理装置と通信可能に接続される複数のスマートメータと,
前記第1情報処理装置と通信可能に接続する,前記電力供給事業者とは異なる他の組織が保有する,前記第1情報と異なる第2情報を管理する第2情報処理装置とを含み,
前記スマートメータは,前記スマートメータごとに固有の識別子である機器IDを記憶し,
前記スマートメータは,前記機器IDを用いた認証情報とともに,前記第2情報の取得に関連する要求を前記第1情報処理装置に送信し,
前記第1情報処理装置は,前記認証情報により認証に関連する処理を行い,
前記第2情報処理装置は,前記第2情報をユーザ側に送信する
情報送受信システム。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1では,「スマートメータは,機器IDを用いた認証情報とともに,第1情報の取得要求を第1情報処理装置に送信し,前記第1情報処理装置は,前記認証情報により認証を行い,認証に成功すると前記取得要求で要求される前記第1情報を前記取得要求の送信元の前記スマートメータに送信し」ているのに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点2)第2情報の取得に関連する要求が,
本願発明1では,「第2情報の取得要求」であるのに対して,
引用発明では,「利用要求」である点。

(相違点3)本願発明1では,「第1情報処理装置は,認証情報により認証を行い,認証に成功すると第2情報の取得要求を第2情報処理装置に転送し」ているのに対して,
引用発明は,電力会社サーバ200が単にメータIDのみから認証の成功を判断するというものではなく,また,場所の照合処理の結果が一致している場合に送信するものは,ユーザ確認要求に対する「ユーザ確認の成功通知」であって,スマートメータ300から送信された「利用要求」を「転送」するものではない点。

(相違点4)本願発明1では,「第2情報処理装置は,取得要求を受信すると,受信した前記取得要求で要求される第2情報を前記取得要求の送信元のスマートメータに送信する」のに対して,
引用発明では,サービスプロバイダサーバ100が「取得要求」を受信するものではなく,また,電子コンテンツ(第2情報)はスマートメータ300ではなく,認証装置400に送信されている点。

(2)相違点についての判断
まず,上記相違点3について検討する。
引用文献1の段落【0004】-【0005】の記載によれば,引用発明は,ID,パスワードといった認証用情報が盗用された場合の「なりすまし」を防止するためになされた発明であって,良好なセキュリティを確保することを課題とした発明であるから,引用発明のサービスプロバイダサーバ100で実行される「ユーザ認証の処理」(以下,「処理A」という。)と,これに加えて電力会社サーバ200において実行される,「場所の照合処理」(以下,「処理B」という。)とはいずれも,良好なセキュリティを確保するという課題を解決するために必要な処理であって,このうちのいずれか一方の処理のみを実行してユーザ認証を行うことは,引用文献1では想定されていない。
そうすると,スマートメータから当該スマートメータのメータIDが電力会社サーバ200に送信されると,なりすましを防止するために必要な処理の一部として処理Bが実行される引用発明において,処理Bだけを取り出して,処理Bだけを単独でユーザ認証として利用することは,処理Aと処理Bとを併せて実行することによって「なりすまし」を防止するという引用発明の課題からみても,そのようにする動機付けがあるとはいえず,むしろ阻害要因があるといえる。
また,引用発明では,サービスプロバイダサーバ100と電力会社サーバ200が協働してユーザの認証処理を行っているものであり,電力会社サーバ200がサービスプロバイダサーバ100に代わってユーザの認証処理を代行するというものではないから,電力会社サーバ200がユーザ認証に成功したとき,スマートメータ300から受信した「第2情報の取得要求」をサービスプロバイダサーバ100に転送するということも引用発明からは想定できるものではない。
してみれば,引用発明において,電力会社サーバ200(第1情報処理装置)が,スマートメータのメータID(認証情報)により認証を行い,認証に成功すると第2情報の取得要求をサービスプロバイダサーバ100(第2情報処理装置)に転送するように構成すること,すなわち,上記相違点3に係る構成とすることは,当業者であっても容易に想到し得るものとはいえない。

以上のとおりであるから,上記相違点3以外の他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明6について
本願発明6は,本願発明1の「情報送受信システム」における「スマートメータ」を特定する発明であって,実質的に本願発明1の「情報送受信システム」の構成を備えるものといえるので,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明7について
本願発明7は,本願発明1の「情報送受信システム」における「第1情報処理装置」を特定する発明であって,実質的に本願発明1の「情報送受信システム」の構成を備えるものといえるので,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5.本願発明8は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1と同様の構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1-8は,当業者が引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-30 
出願番号 特願2014-211445(P2014-211445)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡北 有平月野 洋一郎  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 佐久 聖子
須田 勝巳
発明の名称 情報送受信システム、スマートメータ、情報処理装置、及び情報送受信方法  
代理人 一色国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ