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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1331979
審判番号 不服2016-420  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-08 
確定日 2017-08-30 
事件の表示 特願2014-530601「遅消化性成分を含有する糖尿改善用甘味素材組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日国際公開、WO2013/039365、平成26年11月17日国内公表、特表2014-529994〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年9月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年9月15日(KR)韓国)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年1月8日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成28年1月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
プシコースと、難消化性マルトデキストリン及びレバウジオシドAとを有効成分として含有し、
前記プシコースの重量を基準にして、0.01倍ないし200倍の重量の難消化性マルトデキストリン、及び0.001倍ないし2倍の重量のレバウジオシドAを含有する、糖尿改善用甘味素材組成物。」

第3 引用文献
1.原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-18528号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
食物繊維と、希少糖および/ またはその誘導体とを有効成分として含有する生体機能改善組成物。
【請求項2】
食物繊維を組成物全体の1重量%以上、希少糖および/またはその誘導体を組成物全体の2重量%以上含有する請求項1記載の生体機能改善組成物。
【請求項3】
希少糖および/ またはその誘導体が、D-プシコースおよび/ またはその誘導体である請求項1または2記載の生体機能改善組成物。
【請求項4】
生体機能改善が、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、および内臓脂肪蓄積の一以上の改善である請求項請求項1、2または3記載の生体機能改善組成物。
【請求項5】
食物繊維が水溶性食物繊維である請求項1ないし4のいずれかに記載の生体機能改善組成物。
【請求項6】
食物繊維が難消化性デキストリンである請求項5記載の生体機能改善組成物。」

「【0002】
・・・・・・特に食物繊維は整腸作用、食後血糖上昇抑制作用を中心とする生理作用を有する事が知られており、食品の機能を高める素材としてよく利用されている。」

「【0017】
難消化性デキストリンは、澱粉を加熱、酵素処理して得られるもので、食物繊維の平均分子量が500から3000程度、グルコース残基がα-1,4、α-1,6、β-1,2、β-1,3、β-1,6-グルコシド結合し、還元末端の一部はレボグルコサン(1,6-アンヒドログルコース)である、分岐構造の発達したデキストリンである。「パインファイバー」、「ファイバーソル2」(松谷化学工業株式会社製)の商品名で市販されていて、詳しくは”食品新素材フォーラム”NO.3(1995、食品新素材協議会編)に記載されている。」

「【0021】
[D-プシコース]
D-プシコースは希少糖のうち、現在大量生産ができている希少糖である。D-プシコースは、希少糖に属するケトヘキソースに分類されるプシコースのD体であり六炭糖(C6H12O6)である。D-プシコース甘味は上品で爽やかで、サッカリンのような苦みや渋みを伴う不快感はなく、むしろフラクトースの甘味に類似している。甘味度は蔗糖の約70%である。」

「【0023】
・・・・・・
本発明の生体機能改善組成物は、例えば難消化性デキストリンの摂取量が、1日に取るべき食物繊維量15?21gのうち、不足しているといわれ留量が5?9gであることから、1日当たりの量として2000?8000mgになるように用いることができる。
あるいはD-プシコースおよび/またはその誘導体の投与量は、経口投与の場合、成人に対しD-プシコースとして、1日量0.3?50gを摂取するように用いることができる。
・・・・・・
【0025】
このようにして得られた組成物は、目的や好みにより、他の生理活性成分や甘味料と併用混合して使用することもできる。
【0026】
本発明の組成物において、食物繊維およびD-プシコースの割合は、目的とする機能の度合い、使用態様、コスト等により適宜調整することができる。【0027】
本発明の組成物は、食物繊維とD-プシコースを含有するもので、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、内臓脂肪蓄積の改善効果を有する。」

「【0030】
本発明の組成物は甘味料と同様な用途でも用いることができる。また、調理やお茶、コーヒー、調味料(みりんなど)などにも使用できる。」

「【実施例1】
【0040】
〈食物繊維およびD-プシコースを含有する組成物の生体機能改善効果〉
食物繊維として難消化性デキストリンを用い、D-プシコースとの併用作用について、ラットを用いて検討を行った。
・・・
【0043】
【表2】



「【実施例2】
【0045】
〈食物繊維(難消化性デキストリン)およびD-プシコースを含有する酸性飲料の製造〉
表3に示す割合にて新規組成物を用いた飲料を作成した。
【0046】
【表3】

【0047】
その結果、得られた両飲料は、ほぼ同様の好ましい甘味を示した。すなわち、本発明の組成物を含有する飲料は、生体機能改善効果を有するうえ、違和感なしで喫飲することのできるものである。」

これらの記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「食物繊維と希少糖とを有効成分として含有する生体機能改善組成物であって、
希少糖がD-プシコース、食物繊維が難消化性デキストリンであり、
肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、内臓脂肪蓄積の改善効果を有し、
甘味料と同様な用途でも用いることができる生体機能改善組成物。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-213227号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
D-プシコースおよび/またはその誘導体を含み、摂取した後の血糖値の急上昇が炭水化物および/または糖類単独摂取に比べて抑制される組成物。
【請求項2】
D-プシコースおよび/またはその誘導体を含み、摂取した後の血糖値の急上昇が炭水化物および/または糖類単独摂取に比べて抑制される炭水化物および/または糖類の組成物。」

「【0001】
本発明は、D-プシコース(D-Psicose)の血糖上昇抑制効果の利用に関する。より詳細には本発明は、炭水化物および/または糖類を摂取した場合の急激な血糖値上昇を抑制することができ、肥満、糖尿病等の生活習慣病の予防が可能で、またそれらの患者用に適したD-プシコースを含有する糖類および/または炭水化物含有組成物、健康食品、飲料水、食品素材、食品添加物、薬剤、飼料に関する。」

「【0030】
D-プシコース自体は甘味や保湿性があり、コーヒーやジュース等の飲料やケーキやお菓子類および各種の加工食品に用いる食品添加物又は食品素材として用いることができる。
【0031】
本発明が対象とする組成物(炭水化物および/または糖類含有組成物、健康食品、飲料水、食品素材、食品添加物、薬剤、飼料)は、D-プシコースを含む食用および/または薬用の組成物であれば何でもよい。
【0032】
本発明の組成物において、D-プシコースは、組成物中に0.1?50重量%含まれるように配合されている。好ましくは0.5?40重量%、より好ましくは1?30重量%である。組成物中において、D-プシコースが0.1重量%未満だと、血糖値の急上昇の抑制効果及びインスリン分泌を低く抑える作用が充分ではない。また、組成物中において、D-プシコースが50重量%を越えると、経済的な意味で好ましくない。」

「【0047】
1.蔗糖(Sucrose)投与時の血糖上昇に及ぼすD-プシコース(D-Psicose)の影響
ラットは(i)Sucrose 2g/kg経口投与群(S群)、(ii)Sucrose 2g/kg・D-Psicose 1g/kg混合物投与群(S+P1群)および(iii)Sucrose 2g/kg・D-Psicose 2g/kg混合物投与群(S+P2群)の3群に分けた。糖類はすべて水溶液とし、投与容量は10ml/kgとした。」

「【0051】
《実験結果》
1.蔗糖投与時の血糖上昇に及ぼすD-Psicoseの影響(図1)
24時間絶食時のラットの血糖値は約70mg/dLであった。S群の動物では、糖溶液投与30分後には血糖値は投与前と較べて有意に上昇し、約155mg/dLにまで達した。その後、徐々に血糖値は低下し、投与2時間後に投与前の値とほぼ同様の値となった。
S+P1群の動物では、糖溶液投与30分後に血糖値は投与前と較べて有意に上昇し、約100mg/dLにまで達した。その後、徐々に血糖値は低下し、投与2時間後に投与前の値とほぼ同様の値となった。この群の動物の糖溶液投与30分後の血糖値は、S群の動物の糖溶液投与30分後の血糖値と較べて有意に低かった。
さらにS+P2群の動物でも、糖溶液投与30分後に血糖値は投与前と較べて有意に上昇し、約90mg/dLにまで達した。この値はS+P1群の動物のそれより低く、S群の動物の糖溶液投与30分後の血糖値と較べて有意に低かった。」

これらの記載によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「炭水化物および/または糖類を摂取した場合の急激な血糖値上昇を抑制することができ、肥満、糖尿病等の生活習慣病の予防が可能で、またそれらの患者用に適したD-プシコースを含有する組成物。」

3.原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-314240号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
オリゴ糖、難消化性食物繊維および高甘味度甘味料を含有し、血糖値の上昇を抑制することを特徴とする、甘味料組成物。
・・・・・・
【請求項5】
難消化性食物繊維が、還元難消化性デキストリンまたは難消化性デキストリンから選択される1種以上である、請求項1?2のいずれか一項に記載の甘味料組成物。」

「【0010】
本発明に用いられる難消化性の食物繊維は、食物成分と共に摂取されることで胃および小腸内での滞留時間を増すことにより糖成分の消化・吸収を緩慢にすることから、食後の急激な血糖の上昇を防止する作用を持つ。また、小腸においても加水分解されないことから、水溶性の食物繊維としての作用を有し整腸機能を発揮できる。本件発明で用いることができる難消化性の食物繊維は、血糖値を上昇させる成分を含有しないことが好ましい。好ましくない含有成分としては、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、マルトースなどの小腸で分解を受け、または直接吸収され血糖となる糖成分を挙げることができる。本発明で用いることのできる難消化性食物繊維は、難消化性デキストリン、還元難消化性デキストリン、アルギン酸、アルギン酸部分分解物、ポリデキストロース、グアガム、グアガム部分分解物などを挙げることができる。」

「【0011】
本発明に用いることができる高甘味度甘味料は、高甘味度をもつ甘味料であればいずれも用いることができ、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン、グリチルリチンなどを例示することができる。適宜配合量を調整することにより、オリゴ糖の甘味を活かしてショ糖と同様の良質な甘味を有する甘味料組成物を得ることができる。」

第4 対比・判断
1.引用発明1に基づく進歩性
(1)対比
引用発明1の「D-プシコース」は、本願発明の「プシコース」に相当する。
引用発明1の「生体機能改善組成物」は、少なくとも血糖値の改善効果を有するところ、血糖値の改善は糖尿の改善でもあるから、その用途は「糖尿改善用」といえる。また、甘味料と同様な用途でも用いることができるから、「甘味素材組成物」ともいえる。よって、引用発明1の「生体機能改善組成物」は、本願発明の「糖尿改善用甘味素材組成物」に相当する。
引用発明1の「難消化性デキストリン」と、本願発明の「難消化性マルトデキストリン」は、「難消化性デキストリン」の限りで一致する。
よって、本願発明と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「プシコースと、難消化性デキストリンとを有効成分として含有する、糖尿改善用甘味素材組成物。」

[相違点1]
難消化性デキストリンについて、本願発明は、難消化性マルトデキストリンと特定されているのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。

[相違点2]
本願発明は、レバウジオシドAを含有するのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。

[相違点3]
成分含有量について、本願発明は「プシコースの重量を基準にして、0.01倍ないし200倍の重量の難消化性マルトデキストリン、及び0.001倍ないし2倍の重量のレバウジオシドAを含有する」と特定されるのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。

(2)判断
ア 相違点1について
引用発明1の難消化性デキストリンとして、引用文献1には「ファイバーソル2」(松谷化学工業株式会社製)が例示されており(【0017】)、ファイバーソル2は難消化性マルトデキストリンであるから(例えば、原査定で周知例として引用された特表2010-503667号公報【請求項34】に「難消化性マルトデキストリン(ファイバーソル2)」と記載されている。)、引用発明1の難消化性デキストリンとして難消化性マルトデキストリンも想定されていることは明らかである。そして、本願明細書には、「本願発明は、プシコースと、遅消化性又は難消化性多糖類とを共に使用することによって、糖類の体内消化が遅く進められ、糖をゆっくり供給できるようにし、食後に糖尿病患者の血糖が急激に高くなる高血糖症状を防止すると同時に、糖の供給を過度に遮断せずに持続的に糖を供給することによって、糖尿病患者にとって致命的な低血糖も防止する糖尿改善用甘味素材組成物を提供するという利点を有する。」(【0018】)との記載がある一方で、難消化性多糖類として難消化性マルトデキストリンを選択することにより格別の効果を奏することは示されていない。
そうすると、引用発明1の難消化性デキストリンとして難消化性マルトデキストリンを選択し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
引用文献1には、D-プシコース甘味度が蔗糖の約70%であること(【0021】)や、引用発明1の組成物を、他の甘味料と併用混合して使用できること(【0025】)が記載されているから、甘味度を補うべく、引用発明1に他の甘味料を配合する動機付けが認められる。
一方、レバウジオシドAは、蔗糖より大きい甘味度を有するがカロリーは低い甘味料として周知のものであり(例えば、原査定で周知例として引用された特表2010-509232号公報の【0031】の「A.天然高甘味度甘味料・・・「NHPS」は・・・ショ糖、果糖、又はブドウ糖より大きい甘味度を有するが、それでもカロリーは低いことを特徴とする任意の甘味料を意味する。本発明の実施形態に適切なNHPSの非限定的な例としては、レバウディオシドA、・・・が挙げられる。」との記載参照。)、他の甘味料と混合して用いることも周知である(同【0202】に、エリスリトールと混合した組成物が記載されている。なお、エリスリトールも、プシコース同様、希少糖の一つである。)。
そして、甘味度を補うべく引用発明1に配合する他の甘味料としては、引用発明1が血糖値等の生体機能改善組成物であることを考慮すれば、高甘味度かつ低カロリーの甘味料が好適であるといえ、上記レバウジオシドAは、そのような好適な甘味料の一つであるといえる。
そうすると、引用発明1に、甘味度を補うべく他の甘味料を配合することとし、具体的な甘味料として、適宜に上記周知のレバウジオシドAを選択することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
引用文献1には「食物繊維およびD-プシコースの割合は、目的とする機能の度合い、使用態様、コスト等により適宜調整することができる」(【0026】)と記載されているから、引用発明1のD-プシコースと難消化性デキストリンの配合割合は、当業者が適宜に設定できる設計事項と認められる。また、引用文献1に、難消化性デキストリンは1日当たりの量として2000?8000mg、D-プシコースは1日量0.3?50gである旨が記載されており(【0023】)、これはD-プシコースを基準にすれば、難消化性デキストリンが0.04?27倍に相当する。また、引用文献1の実施例1には、3%D-プシコース+3%難消化性デキストリンの例、及び、2%D-プシコース+1%難消化性デキストリンの例が示され(【0043】)、同実施例2には、D-プシコース5g+難消化性デキストリン5gの例が示されている(【0046】)。
そうすると、引用発明1の難消化性デキストリンとして難消化性マルトデキストリンを選択したときの、難消化性マルトデキストリンの含有量について、上記数値を参考に、「プシコースの重量を基準にして、0.01倍ないし200倍の重量の難消化性マルトデキストリン」とすることは、当業者が適宜に設定し得た設計事項である。
また、引用文献1には、引用発明1の組成物を「目的や好みにより」他の甘味料と併用混合して使用できることが記載されているから(【0025】)、引用発明1に他の甘味料としてレバウジオシドAを配合するに際し、その配合量は好みにより適宜に設定できるといえる。一方、プシコースの甘味度が蔗糖の約70%であり(引用文献1【0021】)、レバウジオシドAの甘味度が蔗糖の約300倍である(光琳選書7「食品と甘味料」、平成20年10月1日、p. 248参照。)ことが技術常識である。
そうすると、引用発明1にレバウジオシドAを配合する際の、レバウジオシドAの含有量について、上記技術常識を踏まえ、好みにより、「プシコースの重量を基準にして」「0.001倍ないし2倍の重量のレバウジオシドA」とすることは、当業者が適宜に設定し得た設計事項である。
よって、引用発明1に相違点1及び2に係る本願発明の構成を採用するにあたり、相違点3に係る本願発明の含有量範囲とすることは、当業者が適宜に設定し得た設計事項である。

エ 効果について
引用発明1は、血糖値の改善効果を有するものであって、飲料に用いた場合にショ糖を用いた飲料と同様の好ましい甘味を示すものである(【0047】)から、本願発明の効果が、引用発明1の効果と格別相違するとは認められない。
また、本願明細書の記載によれば、本願発明の実施例である実施例2と、プシコースのみを配合した比較例3、プシコースと難消化性マルトデキストリンのみを配合した実施例1(本願発明の実施例には該当しない)とで、効果に格別の差異が認められないので(図1、図2)、本願発明の効果は、主にプシコースを配合したことによると認められ、この点からも、本願発明と引用発明1とで、効果が格別相違するとは認められない。
仮に、上記実施例2の効果が格別顕著なものであったとしても、それは一実施例の効果にすぎず、本願発明の全範囲において格別顕著な効果を奏すると認めることはできない。

請求人は、審判請求書において、「本願発明の甘味料組成物では、糖成分等の含有量に対する甘味料組成物の相対甘味度を上昇させること、すなわち、糖成分等の含有量を低減させても、相対甘味度の大きさを維持することができる。」と主張するが、該効果は、レバウジオシドAのような高甘味度甘味料を添加すれば当然に予測できる効果にすぎない。
また、「レバウジオシドAは、ステビオール配糖体を含む高甘味度甘味素材特有の苦み、金属性味等を有するため、ただ単に甘味料組成物に加えても、該甘味料組成物の甘味度や官能品質を低下させる。しかしながら、本願発明では、プシコース及び難消化性マルトデキストリンを含み、且つこれらに対し上記の割合でレバウジオシドAを加えることで甘味度や官能品質に相乗効果がもたらされる。これによって、甘味料組成物の甘味度や官能品質が低下することを抑制できる。つまり、当初明細書の[表6]にも記載される通り、本願発明では、前記相対甘味度を上昇させるべくレバウジオシドAを含有しても、実施例1や砂糖と同程度の良好な甘味度及び官能品質を有する。」と主張するが、レバウジオシドAは苦味が少なく優良な甘味質を持っていることが周知であるから(前記、光琳選書7「食品と甘味料」、平成20年10月1日、p. 248参照。)、これを加えても甘味度や官能品質が低下しないことは普通に予測できることであるし、本願明細書の[表6]によれば、実施例2は実施例1と同程度の甘味度及び官能品質と認められるから、レバウジオシドAを加えることで甘味度や官能品質に相乗効果がもたらされるということはできない。
さらに、請求人は、「本願発明では、プシコースと、難消化性マルトデキストリンと、レバウジオシドAとを上記の割合で含むことにより、食事による血糖の急激な上昇を抑制するとともに、体内に持続的に血糖を供給し、空腹時又は食後一定の時間が経過した後に体内が低血糖状態になることを防止するという効果を示す。これは、当初明細書の[表4]に記載される通り、本願発明の甘味料組成物である実施例2では、他の比較例1?3の甘味料組成物に比して、食後90分が経過するまでの血糖値は小さく、食後約2時間が経過した時点の血糖値は大きいことからも明らかである。」とも主張するが、本願明細書の【0071】?【0072】の記載によれば、食後約2時間が経過した時点の実施例2の血糖値は、比較例1に対して有意差を示すとはいえないし、実施例1の血糖値よりはむしろ小さいのであるから、低血糖状態になることを防止するという実施例2の効果が、比較例1?3、実施例1に比べて優れているということはできない。
よって、上記請求人の主張はいずれも理由がない。

(3)小括
したがって、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.引用発明2に基づく進歩性
(1)対比
引用発明2が「炭水化物および/または糖類を摂取した場合の急激な血糖値上昇を抑制することができ、肥満、糖尿病等の生活習慣病の予防が可能で、またそれらの患者用に適した」組成物であることは、本願発明が「糖尿改善用」組成物であることに相当する。
そして、引用発明2の「D-プシコース」は、本願発明の「プシコース」に相当し、これが有効成分であることも明らかである。
よって、本願発明と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「プシコースを有効成分として含有する、糖尿改善用組成物。」

[相違点4]
本願発明の組成物は「甘味素材」であるのに対し、引用発明2の組成物は甘味素材とは特定されていない点。

[相違点5]
本願発明は「難消化性マルトデキストリン及びレバウジオシドAとを有効成分として含有し」、その含有量が「前記プシコースの重量を基準にして、0.01倍ないし200倍の重量の難消化性マルトデキストリン、及び0.001倍ないし2倍の重量のレバウジオシドA」であるのに対し、引用発明2は、そのような特定がなされていない点。

(2)判断
ア 相違点4について
引用文献2には、食用の組成物であれば何でもよく、特に食品素材、食品添加物であり得ることが記載され(【0031】)、D-プシコース自体は甘味や保湿性があり、コーヒーやジュース等の飲料やケーキやお菓子類に用いる食品添加物又は食品素材として用いることができる旨記載されている(【0030】)ことから、引用発明2の組成物を「甘味素材」として用いること、すなわち、相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点5について
引用文献2には、D-プシコースを組成物中に0.1?50重量%含まれるように配合する旨が記載されているから(【0032】)、プシコース以外の成分を配合できることは明らかである。
一方、引用文献3には、オリゴ糖、難消化性食物繊維および高甘味度甘味料を含有する甘味料組成物が記載され(【請求項1】)、難消化性食物繊維として難消化性デキストリンが例示されている(【請求項5】)。
難消化性食物繊維が、食後の急激な血糖の上昇を防止する作用を持つことは、引用文献3(【0010】)、引用文献1(【0002】)に示されるように周知であり、難消化性デキストリンとして「ファイバーソル2」(松谷化学工業株式会社製)のような難消化性マルトデキストリンが市販され周知であったといえる(前記「1.(2)ア」参照。)。
そして、健康食品ないし機能性食品において、同一又は類似の機能を有する成分を配合することは普通に行われていること、引用文献3にはオリゴ糖と共に難消化性デキストリンを用いることが示されていることを踏まえると、急激な血糖値上昇を抑制することができる引用発明2の組成物にプシコース以外の成分を配合するにあたり、同様の作用を有する周知の難消化性マルトデキストリンを有効成分として配合することは当業者が容易に想到し得たことである。また、その配合量を「プシコースの重量を基準にして、0.01倍ないし200倍の重量の難消化性マルトデキストリン」という広範な範囲内に設定することに何ら困難性は認められない。
さらに、D-プシコースの甘味度が蔗糖の約70%であることは周知であり(引用文献1【0021】)、引用文献3には、オリゴ糖、難消化性食物繊維に加えて任意の高甘味度甘味料を配合できることが示されているから、引用発明2の組成物を「甘味素材」として用いるにあたり、甘味度を補う観点から、その有効成分として高甘味度甘味料を配合することは当業者が容易に想到し得たことである。そして、具体的な高甘味度甘味料として、前記「1.(2)イ」で検討した周知のレバウジオシドAを選択する点に困難性はなく、配合量を「プシコースの重量を基準にして」「0.001倍ないし2倍の重量のレバウジオシドA」とすることは、前記「1.(2)ウ」で検討したように当業者が適宜に決定し得た設計事項である。
よって、相違点5に係る本願発明の構成は、引用発明2、引用文献3に示される技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

ウ 効果について
引用発明2は、急激な血糖値上昇を抑制することができるものである(【0001】、【0047】、【0051】)から、本願発明の効果が、引用発明2の効果と格別相違するとは認められず、また、前記「1.(2)エ」で検討したのと同様に、本願発明が格別顕著な効果を奏すると認めることはできない。

(3)小括
したがって、本願発明は、引用発明2、引用文献3に示される技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-30 
結審通知日 2017-04-04 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2014-530601(P2014-530601)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 直紀山本 匡子  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 窪田 治彦
紀本 孝
発明の名称 遅消化性成分を含有する糖尿改善用甘味素材組成物  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 大内 秀治  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 仲宗根 康晴  
代理人 坂井 志郎  
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