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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1332021
審判番号 不服2016-15949  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-26 
確定日 2017-08-31 
事件の表示 特願2014-263479「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月26日出願公開、特開2015- 57247〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成25年5月13日に出願した特願2013-101349号の一部を平成26年12月25日に新たな特許出願(特願2014-263479号)としたものであって、平成27年12月7日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年2月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成28年8月5日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成28年10月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成29年4月17日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年6月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
平成29年6月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(下線部は補正箇所を示す。また、A?Cは、分説するために当審にて付した。また、「前記2位置」は「前記第2位置」の誤記であることは明らかであるため、Cにおいて「前記第2位置」として認定した。)。

「【請求項1】
A 第1の可動役物と前記第1の可動役物の動作に連動して動作可能な少なくとも1つの第2の可動役物とを含む複数の可動役物と、
B 前記第1の可動役物を第1位置と第2位置とにわたって移動駆動する駆動機構を有する役物動作機構とを備え、
C 前記役物動作機構は、
前記複数の可動役物を夫々前記第1位置に保持する第1状態と、
前記駆動機構により前記第1の可動役物を前記第1位置から前記第2位置の方へ移動させたときに、前記第2の可動役物が移動する途中位置に停止させることにより前記複数の可動役物の視認態様が拡大するように展開させた第2状態と、
前記駆動機構により前記第1の可動役物を前記第1位置から前記第2位置の方へ移動させたときに、前記複数の可動役物の視認態様を前記第2状態と視認態様が異なるように展開させた第3状態とに切換え可能に構成された、
ことを特徴とする遊技機。」

3 拒絶理由通知の概要
平成29年4月17日付け拒絶理由通知は、本願発明は、特開2012-115320号公報に記載された発明及び特開2012-34746号公報に記載された事項に基づき、又は、特開2009-28073号公報に記載された発明及び特開2012-34746号公報に記載された事項に基づき、当業者が容易にすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

4 刊行物
(1)刊行物1に記載された発明
本願の出願遡及日前に頒布され、平成29年4月17日付け拒絶理由通知で引用された刊行物である特開2009-28073号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。以下、同じ。)。

(1-a) 「【請求項1】
表示面に図柄を表示する表示装置と、前記表示装置の周囲に配置された可動役物と、前記表示装置の前記表示面上に前記可動役物を移動させる作動手段と、を備えた遊技機であって、
前記可動役物は、前記表示装置の前記表示面上を移動する収容部材と、前記収容部材に収容可能に構成され前記表示装置の前記表示面上を移動する被収容部材と、を有し、
前記作動手段は、前記収容部材及び前記被収容部材を同時に移動させ、あるいは前記収容部材又は前記被収容部材の一方を他方に対して相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段を駆動する単一の駆動源と、を有することを特徴とする遊技機。」

(1-b) 「【0035】
図5乃至図7に示すように、センター役物200は、演出図柄表示装置62の前面上部の周辺部に前方側に向かって突出するように装着されている。センター役物200は、可動式であり、全体として、日本刀をモチーフとして形成されており、柄部材202と、刃部材204(被収容部材)と、鞘部材206(収容部材)と、で構成されている。
【0036】
センター役物200の柄部材202は、日本刀の柄をモチーフに形成されたものであり、日本刀において人が把持する部位である。柄部材202には、刃部材204が一体形成されている。この刃部材204は、日本刀の刃をモチーフにして形成されたものであり、本実施形態では、直方体状に形成されている。また、センター役物200の鞘部材206は、刃部材204を収容するものであり、日本刀の鞘をモチーフにして形成されている。センター役物200が初期位置にあるときは、刃部材204は、鞘部材206に収容された状態となっており、後述する特定の部位に移動すると、刃部材204の一部が鞘部材206から抜かれて露出した状態になる。なお、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206は、プラスチック樹脂で形成されている。」

(1-c) 「【0075】
このようにして、センター役物200は、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、上側の初期位置から下側に移動する。このとき、刃部材204は、鞘部材206に完全に収容された状態であり、後述するように、センター役物200が上下方向に移動するときは、常に、刃部材204が鞘部材206に完全に収容された状態での移動となる。
【0076】
センター役物200が初期位置から下側に移動すると、演出図柄表示装置62の表示面上を上側から下側に向かって移動することになるため、遊技者は、センター役物200の斬新な動作に集中し、何か有利な遊技状態になることを想像する。これにより、遊技者は、遊技に対する期待と興奮を覚え、遊技に対する集中を高めることになる。この結果、遊技性を一層向上させることができる。
・・・
【0080】
これにより、柄部材202及刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動していくと、刃部材204が鞘部材206から抜け出ていき、刃部材204の一部が露出した状態になる。なお、駆動ギヤ234が水平レール部材232上の右側に移動して任意の位置に到達すると、下部センサ242から検知信号がサブ制御基板106に対して出力される。これにより、サブ制御基板106によるモータ236の駆動が停止する。
【0081】
以上のように、センター役物200全体が演出図柄表示装置62の表示面上を上側から下側に移動し、その後、鞘部材206のみが右側に移動することにより、刃部材204の一部が露出して遊技者に視認可能な状態になる。このように、刃部材204の一部が露出するという斬新で強烈な印象を遊技者に与えることができる。この結果、遊技者は、遊技
に対する期待を高め、さらに遊技に集中することになるため、遊技性を一層高めることができる。」

上記(1-a)?(1-c)の記載事項から、以下(1-d)?(1-i)の事項が導かれる。

(1-d)上記記載事項(1-b)より、「センター役物200は、」「柄部材202と、刃部材204(被収容部材)と、鞘部材206(収容部材)と、で構成されている。」(段落【0035】)ものであり、また、上記記載事項(1-c)より、「センター役物200は、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、上側の初期位置から下側に移動する」(段落【0075】)ものであるから、刊行物1には、同時に上側の初期位置から下側に移動する、柄部材202と刃部材204と鞘部材206とを含むセンター役物200が記載されているといえる。

(1-e)上記記載事項(1-a)には、「前記可動役物を移動させる作動手段」及び「前記作動手段は、前記収容部材及び前記被収容部材を同時に移動させ、あるいは前記収容部材又は前記被収容部材の一方を他方に対して相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段を駆動する単一の駆動源と、を有する」(【請求項1】)と記載されており、また、上記記載事項(1-b)の「センター役物200は、可動式であり、全体として、日本刀をモチーフとして形成されており、柄部材202と、刃部材204(被収容部材)と、鞘部材206(収容部材)と、で構成されている。」(段落【0035】)との記載より、収容部材は鞘部材206であるといえるから、刊行物1には、鞘部材206を移動させる移動手段と、移動手段を駆動する駆動源とを有する作動手段が記載されているといえる。
さらに、上記記載事項(1-c)には「センター役物200は、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、上側の初期位置から下側に移動する。」(段落【0075】)及び「柄部材202及刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動していく」(段落【0080】)との記載があり、また、当該記載における「移動」が、「移動手段」により行われることは明らかであるから、刊行物1には、鞘部材206を初期位置から下側に移動させ、その後、鞘部材206を右側に移動させる移動手段と、移動手段を駆動する駆動源とを有する作動手段が記載されているといえる。

(1-f)上記記載事項(1-b)には、「センター役物200が初期位置にあるときは、刃部材204は、鞘部材206に収容された状態となっており、」(段落【0036】)と記載されているから、センター役物200が初期位置にある状態となることがあるといえる。

(1-g)上記記載事項(1-c)には、「センター役物200は、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、上側の初期位置から下側に移動する。」(段落【0075】)及び「柄部材202及刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動していくと、刃部材204が鞘部材206から抜け出ていき、刃部材204の一部が露出した状態になる。」(段落【0080】)と記載されているから、センター役物200は、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動し、刃部材204の一部が露出した状態となることがあるといえる。
さらに、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206の移動を行うのは、上記記載事項(1-a)に記載の「前記収容部材及び前記被収容部材を同時に移動させ、あるいは前記収容部材又は前記被収容部材の一方を他方に対して相対的に移動させる移動手段」であることは明らかであるから、センター役物200は、移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及び刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動し、刃部材204の一部が露出した状態となることがあるといえる。

(1-h)上記記載事項(1-c)には、「センター役物200は、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、上側の初期位置から下側に移動する。このとき、刃部材204は、鞘部材206に完全に収容された状態であり、」(段落【0075】)及び「センター役物200全体が演出図柄表示装置62の表示面上を上側から下側に移動し、」(段落【0081】)と記載されているから、センター役物200は、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態となることがあるといえる。
さらに、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206の移動を行うのは、上記記載事項(1-a)に記載の「前記収容部材及び前記被収容部材を同時に移動させ、あるいは前記収容部材又は前記被収容部材の一方を他方に対して相対的に移動させる移動手段」であることは明らかであるから、センター役物200は、移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態となることがあるといえる。

(1-i)上記認定事項(1-f)における「センター役物200が初期位置にある状態」、上記認定事項(1-g)における「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及び刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動し、刃部材204の一部が露出した状態」、及び、上記認定事項(1-h)における「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態」とするための柄部材202、刃部材204及び鞘部材206を含むセンター役物200の移動が、上記記載事項(1-a)の「前記可動役物を移動させる作動手段」(【請求項1】)により行われるのは明らかであるから、作動手段は、センター役物200が初期位置にある状態と、移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及び刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動し、刃部材204の一部が露出した状態と、移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態と、になるようにセンター役物200を移動させるといえる。

上記(1-a)?(1-c)の記載事項及び(1-d)?(1-i)の認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。(a?cは、本願発明のA?Cに対応させて付した。)

「a 同時に上側の初期位置から下側に移動する、柄部材202と刃部材204と鞘部材206とを含むセンター役物200と、(認定事項(1-d))
b 鞘部材206を初期位置から下側に移動させ、その後、鞘部材206を右側に移動させる移動手段と、移動手段を駆動する駆動源とを有する作動手段とを備え、(認定事項(1-e))
c 作動手段は、
センター役物200が初期位置にある状態と、
移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及び刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動し、刃部材204の一部が露出した状態と、
移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態と、になるようにセンター役物200を移動させる、(認定事項(1-i))
遊技機。(【請求項1】」

(2)刊行物2に記載された事項
本願の出願遡及日前に頒布され、平成29年4月17日付け拒絶理由通知で引用された刊行物である特開2012-34746号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。以下、同じ。)。

(2-a) 「【0019】
図1、図2に示すように、パチンコ遊技機1には、遊技ホールに取付けられる外枠に開閉枠2が開閉自在に装着され、開閉枠2に開閉扉3が開閉自在に装着されている。開閉枠2に遊技盤4が装着され、その遊技盤4の前面側に遊技領域4aが形成されている。開閉扉3に窓3aが形成され、その窓3aに透明板3bが装着され、その透明板3bにより遊技領域4aの前側が覆われている。」

(2-b) 「【0038】
可動役物装置17について詳しく説明する。
図2、図3、図5?図13に示すように、可動役物装置17は、ベース部材40、ベース部材40に移動自在にガイド支持された第1可動役物41、第1可動役物41に回動自在に支持された第2可動役物42、第1可動役物41を駆動する第1役物駆動機構43、第2可動役物42を駆動する第2役物駆動機構44を備えている。
・・・
【0040】
第1可動役物41は、その移動方向に細長く形成され、先の尖った長剣を模して、ベース部材40の前側に配置されている。第1可動役物41は、その大部分がセンタ役物本体15a(装飾部材)の後側に隠れた第1退避位置(図2、図3、図7、図8参照)と、その大部分がセンタ役物本体15aから現れた第1作動位置(図5、図6、図11、図12参照)とに亙って遊技盤4と平行方向に直線的にベース部材40に対して可動に配設されている。」

(2-c) 「【0074】
以上説明した可動役物装置17は次のように動作する。
通常、第1可動役物41は第1退避位置にあり、その大部分がセンタ役物本体15aの後側に隠れ、第2可動役物42は第2退避位置にあり、その全部が第1可動役物41の後側に隠れた状態になっているが、遊技球の始動口10,11aへの入賞(大当り抽選)等に基づいて、可動役物装置17を用いて特別な遊技演出が行われる際に次のようになる。
【0075】
第1の特別演出では、第1役物駆動機構43により、第1可動役物41が第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動開始され、第1退避位置と第1途中位置との間で移動領域A1を往復移動される。その際、第2役物駆動機構44によって、ガイド部材70がストレートガイド溝73に係合して、第2可動役物42は回動しないように保持され、第1可動役物41と一体的に移動開始されて往復移動される。
【0076】
その後、第1可動役物41が第1途中位置を通過して、第1途中位置から第1作動位置へ移動領域A2を移動される。その際、第2役物駆動機構44(役物連動機構45)によって、ガイド部材70が円弧状ガイド溝72に係合して、第2可動役物42は第1可動役物41と共に移動されながら第2退避位置から第2作動位置へ回動される。最終的にガイド部材70がストレート短溝74に係合して、第1可動役物41が第1作動位置へ移動停止され、第2可動役物42が第2退避作動位置へ移動停止される。」

(2-d) 「【0079】
第2の特別演出では、第1の特別演出と同様に、第1役物駆動機構43により、第1可動役物41が第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動開始され、第1退避位置と第1途中位置との間で移動領域A1を往復移動される。その際、第2可動役物42は第1可動役物41と一体的に移動開始されて往復移動される。
【0080】
その後、第1の特別演出とは異なり、第1可動役物41が第1途中位置を通過して、第1途中位置から第1作動位置へ移動領域A2を移動されることなく、即ち、第2可動役物42が第2退避位置から第2作動位置へ回動されることなく、第1可動役物41が第1退避位置へ移動停止される。この第1,第2可動役物41,42の動作と共に、画像表示器16の画面に第1の特別演出画像と一部共通の第2の特別演出画像が表示され、スピーカ34から第1の特別演出効果音と一部共通の第2の特別演出効果音が鳴らされる。
【0081】
例えば、特別図柄の変動中、第1,第2可動役物41,42が動作した場合(つまり、第1又は第2の特別演出が実行された場合)、第1,第2可動役物41,42が動作しない場合よりも大当り遊技が発生する期待度を高くし、また、第1の特別演出が実行された場合、第2の特別演出が実行された場合よりも大当り遊技が発生する期待度を高くする。」

上記(2-a)?(2-d)の記載事項から、以下(2-e)?(2-g)の事項が導かれる。

(2-e)上記記載事項(2-c)より、「第1の特別演出」は、「第1役物駆動機構43により、第1可動役物41が第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動開始され、」、その際に、「第2可動役物42は回動しないように保持され、第1可動役物41と一体的に移動開始されて往復移動され」(段落【0075】)、「その後、第1可動役物41が第1途中位置を通過して、第1途中位置から第1作動位置へ移動領域A2を移動」し、その際に、「第2可動役物42は第1可動役物41と共に移動されながら第2退避位置から第2作動位置へ回動される」(段落【0076】)演出であるから、第1特別演出は、第1可動役物41が第2可動役物42と一体的に第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動され、その後、第1可動役物41が第1途中位置から第1作動位置へ移動され、第2可動役物42は第2作動位置へ回動される演出であるといえる。

(2-f)上記記載事項(2-d)より、「第2の特別演出」は、「第1可動役物41が第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動開始され」、「その際、第2可動役物42は第1可動役物41と一体的に移動開始されて往復移動され」(段落【0079】)る演出であり、また、「第2の特別演出」は、「その後、第1の特別演出とは異なり、第1可動役物41が第1途中位置を通過して、第1途中位置から第1作動位置へ移動領域A2を移動されることなく、即ち、第2可動役物42が第2退避位置から第2作動位置へ回動されることなく、第1可動役物41が第1退避位置へ移動停止される。」(段落【0080】)演出であるから、第2の特別演出は、第1可動役物41が第2可動役物42と一体的に第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動される演出であるといえる。

(2-g)上記記載事項(2-d)の段落【0081】には、「第1の特別演出が実行された場合、第2の特別演出が実行された場合よりも大当り遊技が発生する期待度を高くする。」と記載されているから、刊行物2に記載のパチンコ遊技機1は、第1の特別演出又は第2の特別演出のいずれかを実行可能であるといえる。

上記の(2-a)?(2-d)の記載事項及び(2-e)?(2-g)の認定事項を総合すると、刊行物2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「刊行物2記載の事項」という。)。

「パチンコ遊技機1において、(段落【0019】)長剣を模した第1可動役物41と第2可動役物42とを備える可動役物装置17を備え、(段落【0038】、【0040】)
通常、第1可動役物41は第1退避位置にあり、その大部分がセンタ役物本体15aの後側に隠れ、第2可動役物42は第1可動役物41の後側に隠れた状態であり、(段落【0074】)
第1可動役物41が第2可動役物42と一体的に第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動され、その後、第1可動役物41が第1途中位置から第1作動位置へ移動され、第2可動役物42は第2作動位置へ回動される第1特別演出、又は、(認定事項(2-e))
第1可動役物41が第2可動役物42と一体的に第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動される第2特別演出(認定事項2-f)のいずれかを実行可能とすること。(認定事項(2-g))」

5 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する(下記の(a)?(c)は、刊行物1発明の構成に対応している。)。
ここで、本願発明の「前記第2の可動役物が移動する途中位置に停止させることにより前記複数の可動役物の視認態様が拡大するように展開させた第2状態」及び「前記複数の可動役物の視認態様を前記第2状態と視認態様が異なるように展開させた第3状態」との事項における「展開」に関して、平成29年6月5日付けの意見書において、請求人は、「3)構成(C-3)の補正箇所は、当初明細書の段落【0050】、【0063】、【0078】、図3に基づくものであり、「前記複数の可動役物の視認態様を前記第2状態と視認態様が異なるように展開させた」は、第1,第2の可動役物が保持状態の第1位置から第2位置の方へ一体的に移動することにより複数の可動役物の視認態様が展開されることを意図しております。」と主張しており、第1,第2の可動役物が一体的に移動した状態まで「展開」に含まれるといえるから、第1,第2の可動役物が移動していれば、「展開」しているものと解釈した。

(a)刊行物1発明における「鞘部材206」は、本願発明の「第1の可動役物」に相当し、刊行物1発明における「柄部材202」と「刃部材204」とは、本願発明の「第2の可動役物」に相当する。また、刊行物1発明において「柄部材202と刃部材204と鞘部材206と」は、「同時に上側の初期位置から下側に移動する」から、「柄部材202と刃部材204」は「鞘部材206」の動作に連動して動作可能なものといえる。さらに、刊行物1発明における「センター役物200」に含まれる「柄部材202と刃部材204」と「鞘部材206と」とは、本願発明の「複数の可動役物」に相当する。
そうすると、刊行物1発明における「同時に上側の初期位置から下側に移動する、柄部材202と刃部材204と鞘部材206とを含むセンター役物200」は、本願発明における「第1の可動役物と前記第1の可動役物の動作に連動して動作可能な少なくとも1つの第2の可動役物とを含む複数の可動役物」に相当する。

(b)刊行物1発明における「初期位置」及び「右側」は、それぞれ、本願発明の「第1位置」及び「第2位置」に相当する。また、刊行物1発明における「移動手段」と「移動手段を駆動する駆動源」とは、「鞘部材206を初期位置から下側に移動させ、その後、鞘部材206を右側に移動させる」ものであり、「鞘部材206」は、初期位置から下側を介して右側にわたって移動することになるから、本願発明の「前記第1の可動役物を第1位置と第2位置とにわたって移動駆動する駆動機構」に相当し、刊行物1発明における「作動手段」は、「移動手段と、移動手段を駆動する駆動源とを有する」ものであるから、本願発明の「役物動作機構」に相当する。
そうすると、刊行物1発明における「鞘部材206を初期位置から下側に移動させ、その後、鞘部材206を右側に移動させる移動手段と、移動手段を駆動する駆動源とを有する作動手段」は、本願発明における「前記第1の可動役物を第1位置と第2位置とにわたって移動駆動する駆動機構を有する役物動作機構」に相当する。

(c)刊行物1発明における「センター役物200が初期位置にある状態」は、本願発明における「前記複数の可動役物を夫々前記第1位置に保持する第1状態」に相当する。

本願発明の「前記駆動機構により前記第1の可動役物を前記第1位置から前記第2位置の方へ移動させたときに、前記第2の可動役物が移動する途中位置に停止させることにより前記複数の可動役物の視認態様が拡大するように展開させた第2状態」における「移動する途中位置」とは、「第1の可動役物」が第1位置から第2位置にわたって移動する際の第2位置へ到達する手前の「途中位置」と解せるものである。
そうすると、刊行物1発明において、「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後」、「鞘部材206だけが右側に移動」することは、本願発明における「前記駆動機構により前記第1の可動役物を前記第1位置から前記第2位置の方へ移動」することに相当し、刊行物1発明における、「柄部材202及び刃部材204が停止」する「下側」の位置は、「鞘部材206」が「初期位置から下側に移動」し、その後「右側に移動」する途中の位置となるから、本願発明における「途中位置」に相当する。したがって、刊行物1発明における「柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及び刃部材204が停止」することは、本願発明における「前記第2の可動役物が移動する途中位置に停止」することに相当する。
また、刊行物1発明において、「柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後」、「鞘部材206だけが右側に移動」したときには、「柄部材202及刃部材204が停止」し、「刃部材204の一部が露出した状態」となり、「刃部材204の一部」が視認できる態様となるから、本願発明における「前記複数の可動役物の視認態様が拡大するように展開させた」状態となっているといえる。
よって、刊行物1発明における「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動し、刃部材204の一部が露出した状態」は、本願発明における「前記駆動機構により前記第1の可動役物を前記第1位置から前記第2位置の方へ移動させたときに、前記第2の可動役物が移動する途中位置に停止させることにより前記複数の可動役物の視認態様が拡大するように展開させた第2状態」に相当する。

さらに、刊行物1発明において、「下側」の位置は、「鞘部材206を初期位置から下側に移動させ、その後、鞘部材206を右側に移動させる」(構成b)際の鞘部材206の移動経路にあり、右側の方に向かう途中の位置であるから、刊行物1発明において、「鞘部材206」を「初期位置から下側に」移動させることは、本願発明における「前記第1の可動役物」を「前記第1位置から前記第2位置の方へ」移動させることに相当する。また、刊行物1発明において、「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態」の時には、「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及び刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動し、刃部材204の一部が露出した状態」の時とは、鞘部材206の位置が異なるため、その視認態様も異なるから、刊行物1発明における「柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態」は、本願発明の「前記複数の可動役物の視認態様を前記第2状態と視認態様が異なるように展開させた」状態であるといえる。
よって、刊行物1発明における「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態」は、本願発明における「前記駆動機構により前記第1の可動役物を前記第1位置から前記第2位置の方へ移動させたときに、前記複数の可動役物の視認態様を前記第2状態と視認態様が異なるように展開させた第3状態」に相当する。

以上、(a)?(c)の対比より、本願発明と刊行物1発明とは、

「A 第1の可動役物と前記第1の可動役物の動作に連動して動作可能な少なくとも1つの第2の可動役物とを含む複数の可動役物と、
B 前記第1の可動役物を第1位置と第2位置とにわたって移動駆動する駆動機構を有する役物動作機構とを備え、
C’前記役物動作機構は、
前記複数の可動役物を夫々前記第1位置に保持する第1状態と、
前記駆動機構により前記第1の可動役物を前記第1位置から前記第2位置の方へ移動させたときに、前記第2の可動役物が移動する途中位置に停止させることにより前記複数の可動役物の視認態様が拡大するように展開させた第2状態と、
前記駆動機構により前記第1の可動役物を前記第1位置から前記第2位置の方へ移動させたときに、前記複数の可動役物の視認態様を前記第2状態と視認態様が異なるように展開させた第3状態とにする、
遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)役物動作機構について、本願発明は、第1状態と第2状態と第3状態とに「切換え可能に構成され」ているのに対し、刊行物1発明はそのように特定されていない点。(構成C)

6 判断
上記相違点について検討する。
刊行物2記載の事項において、「パチンコ遊技機1」、「第1可動役物41」及び「第2可動役物42」は、それぞれ、「遊技機」、「第1の可動役物」及び「第2の可動役物」を意味するといえる。
刊行物2記載の事項において、「通常」の「第1可動役物41は第1退避位置にあり、その大部分がセンタ役物本体15aの後側に隠れ、第2可動役物42は第1可動役物41の後側に隠れた状態」は第1状態であるといえる。
刊行物2記載の事項において、「第1特別演出」を実行する際の「第1可動役物41が第2可動役物42と一体的に第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動され、その後、第1可動役物41が第1途中位置から第1作動位置へ移動され、第2可動役物42は第2作動位置へ回動され」た状態は、「第1可動役物41は第1退避位置にあり、その大部分がセンタ役物本体15aの後側に隠れ、第2可動役物42は第1可動役物41の後側に隠れた状態」である「通常」の状態に対して、「第2可動役物42は第2作動位置へ回動され」、「第1可動役物41の後側に隠れた」状態から視認可能な状態になるものであるから、複数の可動役物の視認態様が拡大するように展開させた第2状態であるといえる。
また、刊行物2記載の事項において、「第2特別演出」を実行する際の「第1可動役物41が第2可動役物42と一体的に第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動され」た状態は、「第1特別演出」を実行する際の「第1可動役物41が第2可動役物42と一体的に第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動され、その後、第1可動役物41が第1途中位置から第1作動位置へ移動され、第2可動役物42は第2作動位置へ回動され」た状態とは、「第1可動役物41」と「第2可動役物42」との位置が異なり、その視認態様も異なるから、複数の可動役物の視認態様を第2状態と視認態様が異なるように展開させた第3状態であるといえる。
さらに、刊行物2記載の事項は、「通常」の状態から、「第1特別演出、又は、」「第2特別演出」「のいずれかを実行可能」とするものであるから、「通常」の状態、「第1特別演出」を実行する状態、「第2特別演出」を実行する状態とに切換え可能に構成されているといえる。
したがって、本願発明の用語を用いて表現すると、刊行物2記載の事項は、第1状態と、複数の可動役物の視認態様が拡大するように展開させた第2状態と、複数の可動役物の視認態様を第2状態と視認態様が異なるように展開させた第3状態とに切換え可能に構成されたものといえる。
そして、刊行物1発明と刊行物2記載の事項とは、剣を模した可動役物を用いる遊技機であり、複数の可動役物が、第1の状態から、それぞれ異なる視認態様である第2状態と第3状態とになる点で共通するものであり、さらに、剣を模した可動役物を用い、有利な遊技状態になることを期待させる演出を行う点で共通するから、刊行物1発明において、期待度に応じた演出を行わせるために、「作動手段」に、刊行物2記載の事項を適用して、「センター役物200が初期位置にある状態」と、「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及び刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動し、刃部材204の一部が露出した状態」と、「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態」とに切換え可能に構成し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、上記相違点によって本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明及び刊行物2記載の事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

なお、平成29年6月5日付けの意見書において、請求人は、「引用文献2においては、・・・鞘部材が上側位置から右側位置の方へ移動したときに、「センター役物の視認態様」が前記第2状態と視認態様が異なる、本発明の第3状態になることについては開示されていない。」(第3頁第8?14行)との主張をしているが、上記「5(c)」で示した通り、刊行物1発明において、「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に、初期位置から下側に表示装置の表示面上を移動した状態」は、「移動手段により、柄部材202、刃部材204及び鞘部材206が同時に初期位置から下側に移動した後、柄部材202及び刃部材204が停止し、鞘部材206だけが右側に移動し、刃部材204の一部が露出した状態」の時と視認態様が異なるから、本願発明における「前記複数の可動役物の視認態様を前記第2状態と視認態様が異なるように展開させた第3状態」であるといえる。よって、請求人の上記主張は採用できない。
さらに、請求人は、「(I)引用文献3においては、・・・第1可動役物が第1退避位置から第1作動位置の方へ移動したときに、「複数の可動役物の視認態様を展開させるパターン」は、1つしかないから、役物作動機構により複数の可動役物が第2状態と第3状態とに切換え可能に構成されていない。・・・第3状態になるとは言えない。」(第3頁第19?38行)及び「引用文献1?3の何れにも、本発明の特徴的技術構成(C-3)について開示されていないし、引用文献1?3には、「第1の可動役物が第1位置から第2位置の方へ移動したときに、複数の可動役物の視認態様を展開させるパターンを複数パターン設ける」という発明思想が存在しないので、引用文献1?3から、本発明の特徴的技術構成(C-3)を試行錯誤することが当業者の通常の創作能力の発揮として設計上当然に行うことができるは言えないし、本発明が奏する効果も期待できない。」(第3頁第40?45行)との主張をしているが、上記で示した通り、刊行物2記載の事項においては、
「第1特別演出」を実行する際の「第1可動役物41が第2可動役物42と一体的に第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動され、その後、第1可動役物41が第1途中位置から第1作動位置へ移動され、第2可動役物42は第2作動位置へ回動され」た状態と、当該状態とはその視認態様が異っている、「第2特別演出」を実行する際の「第1可動役物41が第2可動役物42と一体的に第1退避位置から第1途中位置へ向かって移動され」た状態とになるから、第2状態と、第2状態と視認態様が異なるように展開させた第3状態とになるといえるし、刊行物2記載の事項は、上記の2つ状態となる「第1特別演出」と「第2特別演出」との「いずれかを実行可能とする」ものであるから、複数の可動役物の視認態様を展開させるパターンを複数パターン設けたものといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

よって、本願発明は当業者が刊行物1発明及び刊行物2記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-30 
結審通知日 2017-07-04 
審決日 2017-07-18 
出願番号 特願2014-263479(P2014-263479)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 平城 俊雅
萩田 裕介
発明の名称 遊技機  
代理人 岡村 俊雄  

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