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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41M 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B41M |
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管理番号 | 1332050 |
審判番号 | 不服2016-11630 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-03 |
確定日 | 2017-09-07 |
事件の表示 | 特願2013- 43947「感熱記録体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月22日出願公開、特開2014-172199〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成25年 3月 6日 出願 平成28年 1月14日 拒絶理由通知(同年同月19日発送) 平成28年 2月22日 意見書・手続補正書 平成28年 4月14日 拒絶査定(同年5月10日発送) 平成28年 8月 3日 審判請求書、手続補正書 平成28年10月26日 上申書 第2 補正の却下の決定 1 結論 平成28年8月3日付けの手続補正を却下する。 2 理由 (1)補正の内容・目的 ア 平成28年8月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成28年2月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正することを含むものである(下線は補正箇所を示す。)。 (補正前) 「 支持体上に、少なくともロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記呈色剤として、下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物から選ばれる少なくとも1種、及びN-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドを含有し、 支持体が中性紙または酸性紙であることを特徴とする感熱記録体。 【化1】 (式中、n=1?6)」 (補正後) 「 支持体上に、少なくともロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記呈色剤として、下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物から選ばれる少なくとも1種、及びN-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドを含有し、 支持体が中性紙であることを特徴とする感熱記録体。 【化1】 (式中、n=1?6)」 イ 上記アの補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「支持体」について、補正前は「中性紙または酸性紙」であったものを「中性紙」に限定するものである。 したがって、本件補正後の請求項1は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)独立特許要件についての検討 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。 ア 引用文献の記載 原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明推進協会公開技報公技番号2012-504442号(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は審決で付した。)。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は発色性染料と顕色剤との反応による発色を利用した感熱または感圧記録材料に関する。 【背景技術】 【0002】 発色性染料と顕色剤との反応による発色を利用した記録材料は、現像定着等の煩雑な処理を施すことなく比較的簡単な装置で短時間に記録できることから、ファクシミリ、プリンター等の出力記録のための感熱記録紙又は数枚を同時に複写する帳票のための感圧複写紙等に広く使用されている。これらの記録材料としては、速やかに発色し、未発色部分(以下「地肌」という)の白度が保持され、又発色した画像の堅牢性の高いものが要望されているが、長期保存安定性の面から、特に地肌及び画像の耐熱性に優れた記録材料が求められている。そのために、発色性染料、顕色剤、保存安定剤等の開発努力がなされているが、発色の感度、地肌並びに画像の保存性などのバランスが良く、充分に満足できるものは未だ見出されていない。 …… 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、発色性能が良好な非フェノール系化合物を顕色剤に用いた記録材料や記録シートを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、非フェノール系の構造を有し、水で分解し難い化合物を見出し、さらにその化合物が顕色剤として発色性能や耐熱性が良好であることを見出して、本発明を完成するに至った。 【0008】 すなわち、本発明は (1)発色性染料を含有する記録材料において、下記式(I) 【化1】 (式中、R1?R3は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、C1?C6アルキル基、C1?C6アルコキシル基、C2?C6アルケニル基、C1?C6フルオロアルキル基、N(R4)2基(R4は水素原子、フェニル基、ベンジル基、又はC1?C6アルキル基を表す)、NHCOR5(R5はC1?C6アルキル基を表す)、置換されていてもよいフェニル基、又は置換されていてもよいベンジル基を表し、n1及びn3はそれぞれ独立して、1?5のいずれかの整数を表し、n2は1?4のいずれかの整数を表す)で表される化合物、 下記式(II) 【化2】 (式中、R1?R3は、前記記載のR1?R3と同じものを表し、n2及びn3は前記記載のn2及びn3と同じものを表し、n4は1?7のいずれかの整数を表す)で表される化合物、及び、 下記式(III) 【化3】 (式中、R1?R3は、前記記載のR1?R3と同じものを表し、n2、n3及びn4は前記記載のn2、n3及びn4と同じものを表す)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする記録材料に関する。 …… さらに、本発明は、 (4)支持体上に前記(1)?(3)のいずれかに記載の記録材料から形成されてなる記録材料層を有する記録シートに関する。」 (イ)上記アの式(I)(【化1】)ないし式(III)(【化3】)は、次のものである。 (ウ)「【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、水に分解せず、また、発色性染料とともに発色性能及び耐熱性が良好な記録材料や記録シートを得ることができる。」 (エ)「【0013】 式(I)?(III)で表される代表的な化合物としては、4-メチル-N-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。」 (オ)「【0025】 本発明の記録材料に使用される発色性染料としては、フルオラン系、フタリド系、ラクタム系、トリフェニルメタン系、フェノチアジン系、スピロピラン系等のロイコ染料を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、酸性物質である顕色剤と接触することにより発色する発色性染料であれば使用できる。」 (カ)「【0056】 本発明で使用する支持体は従来公知の紙、合成紙、フィルム、プラスチックフィルム、発泡プラスチックフィルム、不織布、古紙パルプ等の再生紙等を使用することができる。またこれらを組み合わせたものを支持体として使用することもできる。 【0057】 紙を支持体に用いる場合は、そのまま紙に染料分散液、顕色剤分散液、填料分散液を含有する分散液を塗布してもよいが、予め、アンダーコート層分散液を塗布して乾燥させた後、前記分散液を塗布してもよい。好ましくは、アンダーコート層分散液を塗布した後、前記分散液を塗布した方の発色感度が良好である。 アンダーコート層分散液は、支持体の表面の平滑性を向上させるために用いるのであって、特に限定されるものではないが、填料、分散剤、水が含まれる方がよく、具体的には、填料としては焼成カオリン、炭酸カルシウム、分散剤としてはポリビニルアルコールが好ましい。 【0058】 支持体上に記録材料層を形成させる場合には、染料分散液、顕色剤分散液、填料分散液を含有する分散液を支持体に塗布して乾燥させる方法、分散液をスプレー等で噴霧して乾燥させる方法、分散液に一定時間浸漬して乾燥させる方法等があげられる。また、塗布する場合には、手塗り、サイズブレスコーター法、ロールコーター法、エアナイフコーター法、ブレンドコーター法、ブローコーター法、カーテンコーター法、コンマダイレクト法、グラビアダイレクト法、グラビアリバース法、リバース・ロールコーター法等が挙げられる。」 (キ)「【実施例】 【0059】 以下、本発明の記録材料について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は必ずしもこれだけに限定されるものではない。 なお、焼成カオリンは、Ansilex(登録商標)-93を使用した。また、下記構造の化合物は以下の略称を使用する。 …… 【0065】 【化25】 ジフェニルスルホン架橋型化合物若しくはそれらの混合物 略称:D-90(日本曹達社製) 【0066】 (ベンゼンスルホンアミド類化合物の合成) [実施例1] 4-メチル-N-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの合成(第1表の化合物No.4) o-フェニレンジアミン(東京化成工業社製、純度98%) 10.8gを酢酸エチル 200mlに加え、5℃まで冷却した。ここに、イソシアン酸フェニル(和光純薬社製、純度98%)を、温度が10℃以上にならないように滴下した。滴下終了後、室温にて30分間反応を行った。反応終了後、析出した結晶をろ過し、白色結晶として1-(2-アミノフェニル)-3-フェニルウレアを得た(22.1g、収率99%)。 1-(2-アミノフェニル)-3-フェニルウレア 22.1g、ピリジン 7.9gを酢酸エチル 200mlに加えた。ここに、p-トルエンスルホニルクロリド(和光純薬社製、純度97%) 19.1gを少量ずつ加えた後、40℃にて2時間反応を行った。反応終了後、水 200mlで水洗し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。静置後、不溶物をろ過にて除去し、減圧下にて溶媒を除去した。残渣にメタノ-ル 500mlを加えて一旦還流させた後、結晶が析出するまで溶媒留去を行なった。結晶析出後、室温にて一晩静置した。析出した結晶をろ取し、得られた結晶を減圧下乾燥することにより、目的物を白色結晶として得た(27.4g、収率71%)。融点:171-173℃ 1H-NMR(d6-DMSO):δ2.32(3H),6.49(1H),6.78(1H),6.98(1H),7.16(1H),7.28-7.35(4H),7.46(2H),7.56(2H),7.96(1H),8.25(1H),9.45(1H),9.48(1H)。 …… 【0069】 [実施例4] N-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの合成(第1表の化合物No.1) 実施例1と同様の方法で合成した1-(2-アミノフェニル)-3-フェニルウレア 3.4g、トリエチルアミン 1.5gを酢酸エチル 150ml中に加えた。ここに、ベンゼンスルホニルクロリド(東京化成工業社製、純度99%) 2.7gを滴下し、4時間還流した。反応終了後、反応液を2N塩酸にて洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣にエタノ-ル 20ml加えて晶析した。結晶をろ過し、減圧下乾燥させ、目的物を白色の結晶として得た(3.6g、収率65%)。融点:151-152℃ 1H-NMR(d6-DMSO):δ6.41(1H),6.75(1H),6.97(1H),7.16(1H),7.29(2H),7.46-7.48(2H),7.54-7.57(2H),7.63-7.65(1H),7.68-7.70(2H),8.00-8.02(1H),8.28(1H),9.51(1H),9.54(1H)。」 (ク)【化25】は、次のものである。 (ケ)「【0094】 (飽和発色の測定) 【評価サンプル1】感熱記録紙の作製 染料分散液(A液) 3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン 16部 ポリビニルアルコール10%水溶液 84部 顕色剤分散液(B液) 実施例1の化合物 16部 ポリビニルアルコール10%水溶液 84部 填料分散液(C液) 焼成カオリン 27.8部 ポリビニルアルコール10%水溶液 26.2部 水 71部 (部は質量部) 【0095】 まず、A?C液の各組成の混合物をそれぞれサンドグラインダーで充分に磨砕して、A?C液の各成分の分散液を調製し、A液1質量部、B液2質量部、C液4質量部、を混合して塗布液とした。この塗布液をワイヤーロッド(Webster社製、ワイヤーバーNO.12)を使用して白色紙に塗布・乾燥した後、カレンダー掛け処理をして、感熱記録紙を作製した(塗布液は乾燥質量で約5.5g/m2)。 【0096】 【評価サンプル2?28】 評価サンプル1の顕色剤分散液(B液)中、実施例1の化合物の代わりに実施例2?実施例28の化合物を用いた以外は、評価サンプル1に記載の方法で感熱紙を作製した。なお、評価サンプル番号と顕色剤の関係を第2表に示した。 【0097】 【評価サンプル29】 評価サンプル1の顕色剤分散液(B液)中、実施例1の化合物の代わりにD-8を用いた以外は、評価サンプル1に記載の方法で感熱紙を作製した。 【0098】 【飽和発色試験】 評価サンプル1?29で作製した感熱記録紙について、感熱紙発色試験装置(大倉電機製 TH-PMD型)を使用し、印字電圧17V、パルス幅1.8ms条件で市松模様に飽和発色させた。発色後の光学濃度を分光測色計(Spectroeye LT、X-rite社製)で測定した。その結果を第2表に示す。なお、「-」は未測定を示す。 【表13】 第2表 飽和発色試験結果 【0099】 第2表の結果から、本発明の化合物は染料と良好な発色を呈し、既存の顕色剤であるD-8と比較して遜色ない発色を示したことが判明した。」 (コ)第2表(【表13】)は、次のものである。 (サ)「【0102】 【評価サンプル33】感熱記録紙の作製 染料分散液(A液) 3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン 16部 ポリビニルアルコール10%水溶液 84部 顕色剤分散液(B液) 実施例1の化合物 16部 ポリビニルアルコール10%水溶液 84部 填料分散液(C液) 焼成カオリン 27.8部 ポリビニルアルコール10%水溶液 26.2部 水 71部 助剤分散液(D液) DH-43 16部 ポリビニルアルコール10%水溶液 84部 (部は質量部) 【0103】 A?D液の各組成の混合物をそれぞれサンドグラインダーで充分に磨砕して、A?D液の各成分の分散液を調製し、A液1質量部、B液2質量部、C液4質量部、D液1質量部、を混合して塗布液とした。この塗布液をワイヤーロッド(Webster社製、ワイヤーバーNO.12)を使用して白色紙に塗布・乾燥した後、カレンダー掛け処理をして、感熱記録紙を作製した(塗布液は乾燥質量で約5.5g/m2)。 【0104】 【評価サンプル34?44】 評価サンプル33の顕色剤分散液(B液)中、実施例1の化合物の代わりに第3表の顕色剤に記載の化合物を、DH-43の代わりに第3表の添加剤に記載の化合物を用いた以外は、評価サンプル30(審決注:「評価サンプル33」の誤記と認める。)に記載の方法で感熱紙を作製した。なお、評価サンプル番号と顕色剤及び添加剤の関係を第3表に示した。 …… 【0106】 【表14】 第3表 添加剤の種類一覧表」 (シ)第3表(【表14】)は、次のものである。上記(サ)を踏まえて第3表をみると、評価サンプル37は、顕色剤として実施例4の化合物を、添加剤としてD-90を用いていることがみてとれる。 (ス)「【0107】 【地肌の安定性評価】 評価サンプル1、4、29?47に関して、試験前後の各試験紙について以下の各条件で保存性試験を行った。その結果を第4表にまとめて示した。 【試験前】 評価サンプル1、4、29?47で作製した感熱記録紙の一部を切り取り、地肌の光学濃度を分光測色計(Spectroeye LT、X-rite社製)で測定した。 【耐熱性試験】 評価サンプル1、4、29?47で作製した感熱記録紙の一部を切り取り、恒温器(商品名:DK-400、YAMATO製)中で80℃、90℃、100℃の各温度で24時間保持した。保持した後の地肌の光学濃度を分光測色計(Spectroeye LT、X-rite社製)で測定した。 【0108】 【表15】 第4表 地肌安定性結果 【0109】 第4表から、本発明品は、試験前の発色がないことから地肌かぶりがなく、また地肌の耐熱性が特に良好であった。既存の顕色剤であるD-8の評価サンプルは、29、32、35、38、41、44、47であり、これの値と比較すれば、本発明品は地肌耐熱性が優れていることが判明した。」 (セ)第4表(【表15】)は、次のものである。 (ソ)「【0110】 【画像の安定性評価】 評価サンプル1、4、29?47に関して、各試験紙について以下の条件で保存性試験を行った。その結果から判定した評価を第5表にまとめて示した。 【試験前】 評価サンプル1、4、29?47で作製した感熱記録紙の一部を切り取り、感熱紙発色試験装置(商品名:TH-PMH型、大倉電機製)を使用し、印字電圧17V、パルス幅1.8msの条件で発色させ、発色画像濃度を分光測色計(Spectroeye LT、X-rite社製)で測定した。 【耐可塑性剤試験】 評価サンプル1、4、29?47で作成した感熱記録紙の一部を切り取り、試験前と同様にして飽和発色させた。次いで、各試験紙の発色面及び裏面に塩化ビニルラップフィルム(可塑剤が含まれているもの)を密着させ、その状態のまま、40℃で4時間保持した。試験後の光学濃度を分光測色計(Spectroeye LT、X-rite社製)で測定した。 【耐水性試験】 評価サンプル1、4、29?47で作成した感熱記録紙の一部を切り取り、試験前と同様にして飽和発色させた。次いで、各試験紙を、25℃で7日間純水中に浸漬させた。試験後の光学濃度を分光測色計(Spectroeye LT、X-rite社製)で測定した。 【耐アルコール性試験】 評価サンプル1、4、29?47で作成した感熱記録紙の一部を切り取り、試験前と同様にして飽和発色させた。次いで、各試験紙を、35%エタノール溶液に25℃で1時間、浸漬させた。試験後の光学濃度を分光測色計(Spectroeye LT、X-rite社製)で測定した。 【0111】 【表16】 第5表 画像安定性結果 【0112】 第5表から、本発明品の画像耐熱性が良好であることがわかった。既存の顕色剤であるD-8の評価サンプルは、29、32、35、38、41、44、47であり、これらの値と比較すれば、本発明品は画像耐熱性が優れていることが判明した。 また、耐可塑性は安定剤を添加することで改善することがわかった。 耐水性も良好であることがわかった。D-8と比較しても遜色の無い値であった。 耐アルコール性も安定剤を添加することで改善することがわかった。さらにD-8と比較するとかなり良好な値であることがわかった。 染料を変更しても同様に良好な画像安定性を示した。」 (タ)第5表(【表16】)は、次のものである。 (チ)「【0142】 [実施態様6] 支持体上に、ロイコ染料および顕色剤を主成分とする感熱発色層を設けてなる感熱記録材料において、該感熱発色層中に4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホンと4,4’-ジアリルオキシジフェニルスルホンとを含有すると共に、本発明の顕色性組成物を顕色剤として含有させる。 …… 前記ロイコ染料は、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオランのいずれかであることが好ましく、前記ロイコ染料の平均粒子径は0.1μm?0.3μmであることが好ましい。」 (ツ)「【0233】 [実施例35] <分散液の調製> 下記の組成を攪拌混合して、分散液(A液)を調製する。 ・中空粒子(アクリロニトリル・メタクリロニトリル・下記一般式(I)の重合体粒子、中空率90%)の水分散液(固形分濃度30質量%) 33質量% ・スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス(固形分濃度 47.5質量%、日本エイアンドエル株式会社製、スマーティックPA-9159、質量平均分子量100,000?200,000、平均粒径175nm) 21質量% ・水溶性ポリマー(ビニルアルコール・アリルスルホン酸ナトリウム共重合体 10質量%)水溶液 20質量% ・水 26質量% <感熱記録層塗布液の調製> 下記各液を磁性ボールミル中で2日間粉砕して、(B液)、(C液)及び(D液)を調製する。 (B液) ・3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-N-7-アニリノフルオラン(体積平均粒子径=0.4μm) 20質量部 ・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液 20質量部 ・水 60質量部 (C液) ・本発明の顕色性組成物 20質量部 ・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液 25質量部 ・水 55質量部 (D液) ・シリカ 20質量部 ・メチルセルロースの5質量%水溶液 20質量部 ・水 60質量部 次に、(B液)15質量部、(C液)45質量部、(D液)45質量部、及びイソブチレン-無水マレイン酸共重合体の20質量%アルカリ水溶液5質量部を攪拌混合して、感熱記録層塗布液を調製する。 <オーバーコート層塗布液(E液)の調製> 上記の各成分の混合物を磁性ボールミル中で2日間粉砕して(E液)を調製する。 (E液) ・水酸化アルミニウム 20質量部 ・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液 20質量部 ・水 60質量部 次に、支持体(セルロース主体の中性紙)上に、[実施例30]の分散液(A液)を高速ブレード塗工機(CLC-6000、Sumi Tech International社製)を用いて塗布速度300m/minで乾燥付着量が3.0g/m2になるように塗布し、乾燥させて、中間層を形成する。次に、中間層上に染料乾燥付着量が0.45g/m2になるように感熱記録層塗布液を中間層と同様に塗布し、乾燥させて感熱記録層を形成する。 次に、感熱記録層上に樹脂(ポリビニルアルコール)乾燥付着量が1.6g/m2になるようにオーバーコート層塗布液を中間層と同様に塗布し、乾燥させてオーバーコート層を形成する。 その後、スーパーキャレンダーにて表面処理し、感熱記録材料を作製する。」 (テ)上記(ア)ないし(ツ)(特に(キ)、(ク)、(サ)、(シ))によれば、引用文献には評価サンプル37として、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。 「 以下のA?D液の各組成の混合物をそれぞれサンドグラインダーで充分に磨砕して、A?D液の各成分の分散液を調製し、A液1質量部、B液2質量部、C液4質量部、D液1質量部、を混合して塗布液とし、この塗布液をワイヤーロッド(Webster社製、ワイヤーバーNO.12)を使用して白色紙に塗布・乾燥した後、カレンダー掛け処理をして作製した、感熱記録紙。 染料分散液(A液) 3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン 16部 ポリビニルアルコール10%水溶液 84部 顕色剤分散液(B液) N-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミド 16部 ポリビニルアルコール10%水溶液 84部 填料分散液(C液) 焼成カオリン 27.8部 ポリビニルアルコール10%水溶液 26.2部 水 71部 助剤分散液(D液) 16部 ポリビニルアルコール10%水溶液 84部 (部は質量部)」 イ 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)支持体について 引用発明は「白色紙」に「塗布液」を「塗布・乾燥」するから、引用発明の「白色紙」は「塗布液」を「塗布・乾燥」してなる層の「支持体」であるといえる。 そして、引用発明の「白色紙」と本願補正発明の「支持体が中性紙であること」とは、「支持体が紙であること」で共通する。 (イ)感熱記録層について 引用発明の「染料分散液(A液)」中の「3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン」は、引用文献の段落【0142】(上記ア(チ)を参照。)の「ロイコ染料は、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、……のいずれかであることが好ましく」との記載に照らせば、本願補正発明の「ロイコ染料」に相当する。 引用発明の「顕色剤分散液(B液)」中の「N-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミド」は、本願補正発明の「N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド」に相当する。 引用発明の「助剤分散液(D液)」中の【化25】の構造式で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物は、本願補正発明の「一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物」からなる「呈色剤」に相当する。 そして、引用発明の「塗布液」は、「染料分散液(A液)」、「顕色剤分散液(B液)」、「填料分散液(C液)」及び「助剤分散液(D液)」の「各組成の混合物をそれぞれサンドグラインダーで充分に磨砕して、A?D液の各成分の分散液を調製し、A液1質量部、B液2質量部、C液4質量部、D液1質量部、を混合」したものであるから、引用発明の「塗布液」を「塗布・乾燥」してなる層は、本願補正発明の「少なくともロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層」に相当する。 (ウ)感熱記録体の層構成について 上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「塗布液をワイヤーロッド(Webster社製、ワイヤーバーNO.12)を使用して白色紙に塗布・乾燥した後、カレンダー掛け処理をして作製した、感熱記録紙」は、本願補正発明の「支持体上に、少なくともロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体」に相当する。 (エ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。 <一致点> 「 支持体上に、少なくともロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記呈色剤として、下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物から選ばれる少なくとも1種、及びN-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドを含有し、 支持体が紙である感熱記録体。 【化1】 (式中、n=1?6)」 (オ)他方、両者は以下の点で相違する。 <相違点> 支持体が、本願補正発明では、中性紙であるのに対し、引用発明では、紙であるが、中性紙であるか否か特定されていない点。 ウ 判断 (ア)相違点について a 引用発明は、引用文献の段落【0008】に記載された本発明(1)の記録材料から形成されてなる記録材料層を有する記録シートに関する本発明(4)(上記ア(ア)、(イ)を参照。)に係る評価サンプル37に基づき認定したものであるところ、同じく本発明(4)の実施例である実施例35(段落【0233】、上記ア(ツ)を参照。)の他、実施例45、47、48、55、56、58等、多数の実施例において支持体として中性紙を用いることが記載されている。 そうすると、引用発明は、支持体である「白色紙」として中性紙を用いることを念頭に置いたものといえるから、上記相違点は実質的な相違点ではない。 よって、本願補正発明は引用発明と同一である。 b また、上記相違点が実質的な相違点であったとしても、上記のとおり引用文献に記載された実施例45、47,48、55、56、58等において支持体として中性紙を用いることが記載されていることを踏まえると、引用発明において支持体である「白色紙」として中性紙を用いることは、当業者が適宜なし得たことである。 (イ)本願補正発明の効果について 本願補正発明によってもたらされる効果を全体としてみても、引用発明及び引用文献に記載された事項から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、本願補正発明は、引用文献に記載された発明であるか、又は当業者が引用文献に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)補正却下の決定のむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年2月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2、2(1)において、本件補正前の請求項1として示したとおりのものである。 2 判断 本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付したものが本願補正発明であるところ、本願補正発明が、上記第2、2(2)において検討したとおり、引用文献に記載された発明であるか、又は当業者が引用文献に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであることに照らせば、本願発明は、引用文献に記載された発明であるか、又は当業者が引用文献に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであることは明らかである。 3 むすび 以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、引用文献に記載された発明であるか、又は当業者が引用文献に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-07-07 |
結審通知日 | 2017-07-11 |
審決日 | 2017-07-24 |
出願番号 | 特願2013-43947(P2013-43947) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(B41M)
P 1 8・ 121- Z (B41M) P 1 8・ 575- Z (B41M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 樋口 祐介、野田 定文 |
特許庁審判長 |
鉄 豊郎 |
特許庁審判官 |
清水 康司 中田 誠 |
発明の名称 | 感熱記録体 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |