• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1332054
審判番号 不服2016-13993  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-16 
確定日 2017-09-07 
事件の表示 特願2013-220272「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月27日出願公開、特開2015- 80627〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月23日の出願であって、平成27年2月19日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月19日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年12月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年6月3日付けで平成27年12月21日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定がされ、これに対して、平成28年9月16日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされたものである。

第2 平成28年9月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年9月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の補正を含んでおり、平成27年4月21日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ、次のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。
(補正前:平成27年4月21日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技領域を移動可能である複数の装飾部材と、
前記複数の装飾部材を移動させる移動制御機構と、
前記複数の装飾部材それぞれに対応し、それぞれの前記装飾部材が所定の位置に存在することを検出する複数の検出手段と、
前記装飾部材が前記所定の位置に存在することを前記検出手段が検出しないときに前記移動制御機構の動作を異常と判定する判定動作を、所定のタイミングにおいて、前記複数の検出手段に対して実行する判定手段と、を備え、
前記移動制御機構は、前記判定手段により異常と判定された前記装飾部材に対して、所定のタイミングにおいて所定の動作を実行させる復帰処理を行うこと
を特徴とする遊技機。」
(補正後:平成28年9月16日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技領域を移動可能である複数の装飾部材と、
前記複数の装飾部材を移動させる移動制御機構と、
前記複数の装飾部材それぞれに対応し、それぞれの前記装飾部材が所定の位置に存在することを検出する複数の検出手段と、
前記装飾部材が前記所定の位置に存在することを前記検出手段が検出しないときに前記移動制御機構の動作を異常と判定する判定動作を、所定のタイミングにおいて、前記複数の検出手段に対して実行する判定手段と、を備え、
前記移動制御機構は、前記判定手段により異常と判定された前記装飾部材を第1の方向に所定量移動させた後、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理を所定のタイミングで行うこと
を特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
(1)本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、次の補正事項を含むものである。
補正前の請求項1における「前記移動制御機構は、前記判定手段により異常と判定された前記装飾部材に対して、所定のタイミングにおいて所定の動作を実行させる復帰処理を行う」という記載を、
「前記移動制御機構は、前記判定手段により異常と判定された前記装飾部材を第1の方向に所定量移動させた後、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理を所定のタイミングで行う」とする補正。

(2)補正の目的等についての検討
上記補正事項は、補正前の請求項1における「前記移動制御機構」が、「前記判定手段により異常と判定された前記装飾部材」に対して「所定のタイミング」で「行う」「復帰処理」の内容について、「所定の動作を実行させる」ものから、「第1の方向に所定量移動させた後、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる」ものに具体的に限定するものであり、かつ、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が本件補正の前後で同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該補正事項は、本願明細書の段落【0277】の「S3304では、S3301にて原点位置にないとチェックされた可動役物について、復帰処理を行う。具体的には、該当する可動役物を進出位置方向へ所定量駆動させた後、原点検出センサ343の出力値が原点位置である場合の出力値となるまで退避位置方向へ駆動させる。その後、S3305へ移行する。」との記載等に基づくものといえ、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本願補正発明は、上記「第2の1」に「補正後」の請求項1として記載した次のとおりのものである(A?Eは、本願補正発明を分説するために当審で付した。)。
「A 遊技領域を移動可能である複数の装飾部材と、
B 前記複数の装飾部材を移動させる移動制御機構と、
C 前記複数の装飾部材それぞれに対応し、それぞれの前記装飾部材が所定の位置に存在することを検出する複数の検出手段と、
D 前記装飾部材が前記所定の位置に存在することを前記検出手段が検出しないときに前記移動制御機構の動作を異常と判定する判定動作を、所定のタイミングにおいて、前記複数の検出手段に対して実行する判定手段と、を備え、
E 前記移動制御機構は、前記判定手段により異常と判定された前記装飾部材を第1の方向に所定量移動させた後、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理を所定のタイミングで行うこと
を特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された発明
ア 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-166050号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【発明を実施するための形態】【0019】・・・図1は、本実施例のパチンコ機GMを示す斜視図である。
・・・
【0024】・・・遊技盤5の表面には、・・・ガイドレール13が環状に設けられ、その略中央には、背面側に延びる中央開口HOが設けられ・・・中央開口HOの奥底には、・・・表示装置DISPが配置されている。
【0025】また、表示装置DISPの前面に・・・は、演出可動体AMUが昇降自在に配置されている。・・・なお、通常時には、演出可動体AMUは、昇降機構ALVに吊り上げられた原点領域で待機している。
・・・
【0030】図柄始動口15に遊技球が入賞すると、特別図柄表示部・・・の表示図柄が所定時間だけ変動し、・・・抽選結果に基づいて決定される停止図柄で停止する。・・・予告演出の一種として、演出可動体AMUが中央開口HOの位置に降下してくることがある。そして、降下した演出可動体AMUは、時計方向又は反時計方向に回転した後、元の位置に上昇する。」

(イ)「【0051】図4に示すように、演出制御部22は、音声演出・ランプ演出・演出可動体による予告演出・データ転送などの処理を実行するワンチップマイコン40と、ワンチップマイコン40の制御プログラムなどを記憶するEPROM41と・・・を備えて構成されている。
【0052】ワンチップマイコン40には、パラレル入出力ポートPIOが内蔵されている。そして、パラレルポートPIOからは、制御コマンドCMD’及びストローブ信号STB’と共に、演出可動体AMUを機能させる駆動データΦ1?Φ4も出力されている。演出可動体AMUは、昇降機構ALVを構成する昇降モータMOによって昇降され、固定部材FIXに配置された回転モータMTによって回転駆動される。なお、昇降モータMOや回転モータMTは、ステッピングモータで構成されており、各々、ドライバ回路45A,45Bを経由して駆動される。また、回転モータMTや昇降モータMOに関連して、原点スイッチORGが設けられており、そのスイッチ信号SNは、パラレルポートPIOに入力されている。
・・・
【0056】・・・演出制御部22では、変動パターンコマンドCMDを取得すると、これに続いて演出抽選を行い、取得した変動パターンコマンドで特定される演出概要を更に具体化している。
【0057】例えば、リーチ演出や予告演出について、その具体的な内容が決定される。そして、・・・液晶制御部23に対して、ランプやスピーカによる演出動作に同期した図柄演出に関する制御コマンドCMD’を出力する。また、演出可動体AMUを使用する予告動作時には、昇降モータMOを回転させた後、回転モータMTを回転させる。
・・・
【0063】・・・図5に示す通り、・・・演出可動体AMUは、演出制御基板22に搭載されたドライバ回路45Bと回転モータMTとによって駆動され・・・演出可動体AMUは、定常状態では一方向に回転する回転モータMTと、ギアG1,G2を経由して回転駆動される回転部材ROTと、を有して構成されている・・・。
・・・
【0066】演出可動体AMUには、回転部材ROTが、原点位置に達したことを検出する原点スイッチORGが配置されている。・・・
【0067】原点スイッチORGは、具体的には、発光部と受光部とを有するフォトインタラプタPHと、発光部から放射された検査光を遮断する遮光片SHとで構成されている。・・・原点検出信号SNは、・・・通常時はLレベル・・・、遮光片SHによる遮光状態ではHレベル・・・となる。
・・・
【0070】以上の通り、図5では、演出可動体AMUが回転する場合を例示したが、必ずしも、このような実施態様に限定されず、例えば、昇降モータMOのように、ラック及びピニオンによって演出可動体AMUを往復運動させるのも好適である。この場合には、ピニオンを回転させると、ピニオンに歯合したラックが移動して、可動部材MVが演出可動体AMUと共に移動する。
【0071】図6は、可動部材MVと昇降モータMOとの関係を説明する図面である。可動部材MVの左端には、遮光片SHが配置され、可動部材MVの運動経路の両端には、それ以上の移動を阻止する・・・メカロック・・・が配置されている。また、左側のメカロックに近接して、フォトインタラプタPHが配置され、ここに遮光片SHが進入すると検査光が遮光されるよう構成されている。
・・・
【0073】この実施例でも、遮光片SHが、フォトインタラプタPHの検査光を遮蔽状態に維持する領域を原点領域とし、定速度Vで逆方向に移動する遮光片SHが、フォトインタラプタPHの検査光を遮蔽し始めてから基準時間Nだけ経過した位置を原点位置と定義する。」

(ウ)「【0167】・・・2mS毎に実行される演出モータ処理(図9(d)のST68)について・・・説明する。
【0168】図11に示す通り、演出モータ処理では、最初に異常フラグERの値が判定され・・・、もし異常フラグER=1であれば、非駆動データをドライバ回路45Bに出力して処理を終える(SS9)。・・・
【0169】一方、異常フラグER=0であれば、リトライフラグRTの値を判定する(SS2)。リトライフラグRTは、原点検出処理(SS5)や初期動作処理(SS6)などにおいて、例えば、回転モータMTの空回転によって、演出可動体AMUが原点領域に戻れない異常時にRT=1とされる。そして、リトライフラグRT=1の状態で実行されるリトライ処理(SS4)でも異常が改善されない場合には、・・・異常終了する。・・・
・・・
【0171】ここで、原点検出処理(SS5)は、(1) 演出制御部のCPUリセット時、(2) 変動演出開始時、(3) 変動演出終了時、(4) 大当り遊技開始時、(5) 客待ちデモ演出開始時などに実行される。・・・
・・・
【0180】先ず、図12に基づいて、原点検出処理(SS5)について説明する。最初に、フォトインタラプタPHからの検出信号SNが取得され記憶される(SS10)。次に、・・・検出信号SNのレベルが判定される(SS12)。
【0181】図5に関して説明した通り、検出信号SNは、回転部材ROTが原点領域に位置しているか否かを示している。したがって、検出信号SN=Hであって、回転部材ROTが原点領域に位置している場合には、・・・処理を正常終了させる(SS13)。・・・
【0182】一方、検出信号SN=Lであって、回転部材ROTが原点領域外に位置している場合には、計数カウンタCNTの値を、十分な余裕をもって、周回時間Mの2倍に対応する値に初期設定する(SS14)。・・・
・・・
【0184】・・・次回以降のタイマ割込みでは、ステップSS11→SS15→SS16の経路を経て、検出信号SNがHレベルとなったか否かが判定される(SS16)。そして、未だ、回転部材ROTが原点領域に戻っておらず、検出信号SN=Lであれば、所定時間毎に、駆動データをDR方向に1ステップ進め、これに対応して計数カウンタCNTをデクリメントする(SS18)。・・・
【0185】・・・このようにして、ステップSS18の処理を繰り返して回転部材ROTを歩進させていると、やがて、回転部材ROTが原点領域に戻り、検出信号SN=Hとなる筈である。・・・
・・・
【0187】一方、検出信号SN=Lである場合には、ステップSS17?SS18の処理を更に繰り返すことになる。そして、検出信号SN=Lが維持されて、ステップSS14で初期設定された計数カウンタCNTが0に達した場合には、リトライフラグRT=1に設定すると共に・・・処理を終える(SS20)。
【0188】これは、回転モータMTについて2回転分の駆動動作を実行したにも拘らず、回転部材ROTが原点領域に戻れない異常が検出されたことになる。そこで、次回のタイマ割込みでは、モータ動作フラグFG=1を維持した状態で、リトライ処理(SS4)が実行される(図11参照)。
・・・
【0191】続いて、図13に基づいてリトライ処理について説明する。リトライ処理(SS4)は、原点検出処理(SS5)、初期動作処理(SS6)又はモータ処理(SS7)において、リトライフラグRT=1に設定されることに起因して開始される。・・・
【0192】そこで、リトライ処理(SS4)では、図13に示す通り、最初に動作モードMDが判定され(SS24)、動作モードMD=0であれば、計数カウンタCNTが適宜な値XXに初期設定され、方向フラグDR=1にされた上で、動作モードがMD=1とされる(SS25)。方向フラグDR=1は、回転方向が順方向であることを意味し、通常は、原点領域から離れる方向を意味する。
【0193】動作モードMD=1とされたことにより、次回のタイマ割込みでは、ステップSS24→SS26→SS27の経路を経て、計数カウンタCNTの値が判定される(SS27)。そして、計数カウンタCNT≠0であれば、所定時間毎に駆動データを1ステップ進めて、これに対応して計数カウンタCNTをデクリメントする(SS28)。
【0194】このような処理を繰り返していると、やがて、計数カウンタCNT=0となるので、その場合には、計数カウンタCNTの値を、周回時間Mの2倍に対応する値に、新たに初期設定する(SS29)。また、方向フラグDR=0、動作モードMD=2とする(SS29)。したがって、次回のタイマ割込み処理では、回転部材ROTが原点領域に向けて逆方向に回転することになる。これは、順方向に所定回数(=XX)だけ駆動した後に(SS25?SS28)、それまでと逆方向に駆動して往復運動をさせることで、回転モータMTの異常を解消させるためである。
・・・
【0217】以上、図12?図15では、回転部材ROTを正逆回転させる回転モータMTについて説明した。しかし、可動部材MVを往復運動させる昇降モータMOなどの場合であっても基本的動作は同じである。・・・」

上記(ア)?(ウ)の記載事項から以下のことが導かれる。なお、(a)?(e)は、本願補正発明の構成A?Eに対応した事項を示している。

(a)上記(ア)の段落【0024】、【0025】、【0030】には、それぞれ、「遊技盤5・・・には、表示装置DISPが配置され」、「表示装置DISPの前面に・・・は、演出可動体AMUが昇降自在に配置され・・・、通常時には・・・昇降機構ALVに吊り上げられた原点領域で待機し」、「予告演出・・・として、演出可動体AMUが中央開口HOの位置に降下し・・・、時計方向又は反時計方向に回転した後、元の位置に上昇する。」との記載がある。
以上の記載から、刊行物1には、通常時は原点領域で待機し、予告演出として遊技盤5に設けられた表示装置DISPの前面で昇降、回転する演出可動体AMUが記載されているといえる。

(b)上記(イ)の段落【0051】、【0052】には、それぞれ、「演出制御部22は、・・・演出可動体による予告演出・・・などの処理を実行するワンチップマイコン40・・・を備え」、「ワンチップマイコン40には、パラレル入出力ポートPIOが内蔵され・・・演出可動体AMUを機能させる駆動データ・・・も出力され・・・昇降モータMOや回転モータMTは、ステッピングモータで構成されており、各々、ドライバ回路45A,45Bを経由して駆動される」との記載があり、段落【0057】には、「演出可動体AMUを使用する予告動作時には、昇降モータMOを回転させた後、回転モータMTを回転させる。」との記載がある。
これらの記載から、刊行物1には、内蔵するパラレル入出力ポートPIOからドライバ回路45A,45Bを経由して、ステッピングモータで構成される昇降モータMOや回転モータMTを駆動する駆動データを出力することにより、演出可動体AMUを昇降、回転させる処理を実行する機能を備える演出制御部22が記載されているといえる。

(c)上記(イ)の段落【0052】には、「演出可動体AMUは、・・・昇降モータMOによって昇降され、・・・回転モータMTによって回転駆動される。・・・回転モータMTや昇降モータMOに関連して、原点スイッチORGが設けられており、そのスイッチ信号SNは、パラレルポートPIOに入力され」との記載があり、「図4」にも同様の事項が図示されている。 そして、上記(イ)の段落【0063】には、「演出可動体AMUは、・・・回転駆動される回転部材ROTと、を有し」との記載があり、段落【0066】には、「演出可動体AMUには、回転部材ROTが、原点位置に達したことを検出する原点スイッチORGが配置されている。」との記載があり、段落【0067】には、「原点スイッチORGは、具体的には、発光部と受光部とを有するフォトインタラプタPHと、発光部から放射された検査光を遮断する遮光片SHとで構成されている」との記載がある。また、上記(イ)の段落【0070】には、「昇降モータMOのように、ラック及びピニオンによって演出可動体AMUを往復運動させる・・・場合には、ピニオンを回転させると、ピニオンに歯合したラックが移動して、可動部材MVが演出可動体AMUと共に移動する」との記載があり、段落【0071】には、「可動部材MVと昇降モータMO」について、「可動部材MVの左端には、遮光片SHが配置され」との記載があり、段落【0073】には、「遮光片SHが、フォトインタラプタPHの検査光を遮蔽状態に維持する領域を原点領域とし、定速度Vで逆方向に移動する遮光片SHが、フォトインタラプタPHの検査光を遮蔽し始めてから基準時間Nだけ経過した位置を原点位置」とすることの記載がある。
以上の記載から、刊行物1には、演出可動体AMUが備える回転部材ROT及び可動部材MVが、それぞれ原点位置にあることを検出する複数の原点スイッチORGが記載されているといえる。

(d)上記(ウ)の段落【0171】には、「原点検出処理(SS5)は、(1) 演出制御部のCPUリセット時、(2) 変動演出開始時、(3) 変動演出終了時、(4) 大当り遊技開始時、(5) 客待ちデモ演出開始時などに実行される」ことが記載されている。
上記(ウ)の段落【0180】には、「図12に基づいて、原点検出処理(SS5)について説明する。・・・フォトインタラプタPHからの検出信号SNが取得され」と記載され、段落【0181】、【0182】、【0184】、【0187】、【0188】には、それぞれ、「検出信号SNは、回転部材ROTが原点領域に位置しているか否かを示」すこと、「検出信号SN=Lであって、回転部材ROTが原点領域外に位置している場合には、計数カウンタCNTの値を・・・周回時間Mの2倍に対応する値に初期設定する」こと、「次回以降のタイマ割込みで・・・検出信号SNがHレベルとなったか否かが判定され・・・未だ、回転部材ROTが原点領域に戻っておらず、検出信号SN=Lであれば、所定時間毎に、駆動データをDR方向に1ステップ進め、これに対応して計数カウンタCNTをデクリメントする(SS18)」こと、「検出信号SN=Lである場合には、ステップSS17?SS18の処理を更に繰り返す・・・検出信号SN=Lが維持されて・・・初期設定された計数カウンタCNTが0に達した場合には、リトライフラグRT=1に設定する」こと、「回転モータMTについて2回転分の駆動動作を実行したにも拘らず、回転部材ROTが原点領域に戻れない異常が検出されたことになる。そこで、次回のタイマ割込みでは・・・リトライ処理(SS4)が実行される」ことが記載されている。
なお、上記(ウ)の段落【0169】には、「演出可動体AMUが原点領域に戻れない異常」が「回転モータMTの空回転によ」ることが例として記載されている。
また、上記(ウ)の段落【0217】には、「図12?図15」における「回転部材ROTを正逆回転させる回転モータMT」についての説明が、「可動部材MVを往復運動させる昇降モータMO」にも当てはまることが記載されている。
そして、上記(イ)の【0051】には、「演出制御部22は、・・・演出可動体による予告演出・・・などの処理を実行するワンチップマイコン40・・・を備え」との記載がある。
そして、上記(イ)の段落【0067】に記載されているとおり、「原点スイッチORG」は、「フォトインタラプタPH」と「遮光片SH」とで構成されるものである。
上記各記載から、上記(イ)、(ウ)には、ワンチップマイコン40を備える演出制御部22が、演出制御部のCPUリセット時、変動演出開始時、変動演出終了時、大当り遊技開始時、客待ちデモ演出開始時などに実行される原点検出処理(SS5)において、原点スイッチORGから取得され、回転部材ROTが原点領域に位置しているか否かを示す検出信号SNが、検出信号SN=Lであって、回転部材ROTが原点領域外に位置している場合には、計数カウンタCNTの値を周回時間Mの2倍に対応する値に初期設定し、次回以降のタイマ割込みで検出信号SNがHレベルとなったか否かが判定され、未だ回転部材ROTが原点領域に戻っておらず、検出信号SN=Lであれば、所定時間毎に、駆動データをDR方向に1ステップ進め、これに対応して計数カウンタCNTをデクリメントし、検出信号SN=Lである場合には、このような処理を繰り返し、その間、検出信号SN=Lが維持され、初期設定された計数カウンタCNTが0に達した場合には、回転モータMTについて2回転分の駆動動作を実行したにも拘らず、回転モータMTの空回転によって、回転部材ROTが原点領域に戻れない異常が検出されたことになるので、次回のタイマ割込みではリトライ処理(SS4)を実行し、これを可動部材MVを往復運動させる昇降モータMOについても実行する演出制御部22が記載されているといえる。
したがって、刊行物1には、演出制御部のCPUリセット時、変動演出の開始時や終了時、大当り遊技開始時、客待ちデモ演出開始時などに実行される原点検出処理(SS5)において、回転モータMTについて2回転分の駆動動作を実行したにも拘らず、原点スイッチORGから取得される検出信号が回転部材ROTが原点領域外に位置していることを示しているときには、回転モータMTの空回転によって回転部材ROTが原点領域に戻れない異常が検出されたことになるので、次回のタイマ割込みでリトライ処理(SS4)を実行し、これを昇降モータMOについても実行する機能を備える演出制御部22が記載されているといえる。

(e)上記(ウ)の段落【0191】には、「図13に基づいてリトライ処理について説明する」と記載され、段落【0192】、【0193】、【0194】には、「リトライ処理(SS4)では、・・・計数カウンタCNTが適宜な値XXに初期設定され、方向フラグDR=1にされ、・・・方向フラグDR=1は、回転方向が順方向であることを意味し、通常は、原点領域から離れる方向を意味する」こと、「次回のタイマ割込みで・・・計数カウンタCNTの値が判定され・・・計数カウンタCNT≠0であれば、所定時間毎に駆動データを1ステップ進めて、これに対応して計数カウンタCNTをデクリメントする(SS28)」こと、「このような処理を繰り返していると、やがて、計数カウンタCNT=0となるので、その場合には、計数カウンタCNTの値を、周回時間Mの2倍に対応する値に、新たに初期設定する・・・また、方向フラグDR=0・・・とする(SS29)。したがって、次回のタイマ割込み処理では、回転部材ROTが原点領域に向けて逆方向に回転することになる。これは、順方向に所定回数(=XX)だけ駆動した後に・・・それまでと逆方向に駆動して往復運動をさせることで、回転モータMTの異常を解消させるためである」ことが記載されている。
さらに、上記(ウ)の段落【0217】には、「図12?図15」における「回転部材ROTを正逆回転させる回転モータMT」についての説明が、「可動部材MVを往復運動させる昇降モータMO」にも当てはまることが記載されている。
上記各記載から、上記(ウ)には、リトライ処理(SS4)において、計数カウンタCNTが適宜な値XXに初期設定されるとともに回転方向が順方向である方向フラグ(DR=1)とし、所定時間毎に駆動データを1ステップ進め、計数カウンタCNTが0となった場合に計数カウンタCNTの値を新たに初期設定するとともに方向フラグ(DR=0)とし、次回のタイマ割込み処理では回転部材ROTを原点領域に向けて逆方向に回転させることで、順方向に所定回数(=XX)だけ駆動した後にそれまでと逆方向に駆動して往復運動をさせて回転モータMTの異常を解消させること、及び、これを可動部材MVを往復運動させる昇降モータMOについても行うことが記載されているといえる。
そして、上記(イ)の段落【0051】に「演出制御部22は、・・・演出可動体による予告演出・・・などの処理を実行するワンチップマイコン40」と記載されるように、「リトライ処理(SS4)」(【0192】)を実行するのは、「ワンチップマイコン40」を備える「演出制御部22」である。
したがって、刊行物1には、演出制御部22は、リトライ処理(SS4)において、初期設定された計数カウンタCNT(XX)だけ順方向に駆動した後、計数カウンタCNTの値を新たに初期設定し、次回のタイマ割込み処理では、回転部材ROTを原点領域に向けて逆方向に駆動して往復運動をさせて回転モータMTの異常を解消する処理を実行し、これを昇降モータMOについても実行することが記載されているといえる。

上記(ア)?(ウ)の記載事項及び上記(a)?(e)の認定事項を総合すると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?eは、本願補正発明のA?Eに対応させて当審で付した。)。

[引用発明]
「a 通常時は原点領域で待機し、予告演出として遊技盤5に設けられた表示装置DISPの前面で昇降、回転する演出可動体AMUと、
b 内蔵するパラレル入出力ポートPIOからドライバ回路45A,45Bを経由して、ステッピングモータで構成される昇降モータMOや回転モータMTを駆動する駆動データを出力することにより、演出可動体AMUを昇降、回転させる処理を実行する機能を備える演出制御部22と、
c 演出可動体AMUが備える回転部材ROT及び可動部材MVが、それぞれ原点位置にあることを検出する複数の原点スイッチORGと、
d 演出制御部のCPUリセット時、変動演出の開始時や終了時、大当り遊技開始時、客待ちデモ演出開始時などに実行される原点検出処理(SS5)において、回転モータMTについて2回転分の駆動動作を実行したにも拘らず、原点スイッチORGから取得される検出信号が回転部材ROTが原点領域外に位置していることを示しているときには、回転モータMTの空回転によって回転部材ROTが原点領域に戻れない異常が検出されたことになるので、次回のタイマ割込みでリトライ処理(SS4)を実行し、これを昇降モータMOについても実行する機能を備える演出制御部22と、を備え、
e 演出制御部22は、リトライ処理(SS4)において、初期設定された計数カウンタCNT(XX)だけ順方向に駆動した後、計数カウンタCNTの値を新たに初期設定し、次回のタイマ割込み処理では、回転部材ROTを原点領域に向けて逆方向に駆動して往復運動をさせて回転モータMTの異常を解消する処理を実行し、これを昇降モータMOについても実行する
パチンコ機GM(【0019】)。」

イ 刊行物2
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-34707号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0013】(ぱちんこ遊技機の基本構成)・・・本実施の形態のぱちんこ遊技機100は遊技盤101を備えている。・・・
・・・
【0028】また、画像表示部104近傍には、第1可動役物131と第2可動役物132と第3可動役物133とが設けられている。これらの可動役物131?133は各々が独立して駆動することができるようになっており、各々を用いた演出時などに駆動される。・・・
・・・
【0049】(第1可動役物の構成)・・・第1可動役物131は、炎をモチーフとした形状を有する装飾部材300と、駆動部310とを備えている。装飾部材300は、桁部材301に固定されている。桁部材301の左右両端には、桁部材301と直交するように移動ラック302が設けられている。
【0050】移動ラック302には、桁部材301と直交する方向(図示の例では上下方向)に装飾部材300を駆動させるためのギアが設けられている。具体的に、移動ラック302のギアは、装飾部材300の左右に設けられた2つの駆動部310側に設けられており、駆動部310の円形歯車313(後述)とそれぞれ噛合している。また、桁部材301の左側に設けられた移動ラック302の下端部は被検出部303となっており、右側に設けられた移動ラック302の下端部は被検出部304となっている。
【0051】・・・装飾部材300の下方となる位置にはセンサS11とセンサS12とが配置されている。・・・センサS11は、センサS11の検出可能範囲内での被検出部303の有無を検出することができる。また、同様にして、センサS12は、センサS12の検出可能範囲内での被検出部304の有無を検出することができる。
・・・
【0055】(第2可動役物の構成)・・・第2可動役物132は、汽車をモチーフとした形状に形成された装飾部材400と、駆動部410とを備えている。
【0056】駆動部410は、固定ラック411と、移動ラック412と、円形歯車413とを備えている。・・・
・・・
【0058】また、駆動部410は、円形歯車413を上下方向に駆動するための駆動系を備えている。・・・
【0059】また、駆動部410は、棒状のスライダ416と、板状部材417とを備えている。スライダ416は、クランク415の腕部415bに連結されている。・・・
【0060】また、スライダ416の一端部416bは板状部材417と連結されており、他端部416cは枠体により回転可能に支持されている。これによって、スライダ416は、他端部416cを軸心として回転することになる。板状部材417は、その長手方向の一端がスライダ416の一端部416bと連結されており、他端では円形歯車413を回転可能に支持している。枠体において、スライダ416の上方となる位置にはセンサS21とセンサS22とが配置されている。センサS21およびセンサS22は、センサS11などと同様にフォトセンサなどを採用することができる。
・・・
【0065】(第3可動役物の構成)・・・第3可動役物133は、装飾部材500と、駆動部510とを備えている。
【0066】装飾部材500は、十手をモチーフとした形状に形成された装飾部501と、基部502とを備えている。基部502は、移動ラック502aと、軸部502bと、被検出部502cとを備えている。移動ラック502aは、基部502において駆動部510側の一端に設けられる。移動ラック502aのギアは、駆動部510の円形歯車512と噛合している。軸部502bは、枠体により回転可能に支持されている。また、枠体において基部502の上方にはセンサS31が配置されている。」

(イ)「【0073】(ぱちんこ遊技機の機能的構成)・・・ぱちんこ遊技機100は、遊技制御部610と、演出部620と、可動役物制御部630とを備えている。
・・・
【0082】可動役物制御部630は、ぱちんこ遊技機100が備える可動役物131?133に関する制御をおこなう機能を有する。たとえば、ここで、可動役物制御部630は、検出部650と接続されている。検出部650は、ぱちんこ遊技機100が備える可動役物131?133が所定位置(本実施の形態では各々の原点位置)に位置することを検出する機能を有する。たとえば、検出部650は、原点位置に位置する第1可動役物131を検出する第1検出部651と、原点位置に位置する第2可動役物132を検出する第2検出部652と、原点位置に位置する第3可動役物133を検出する第3検出部653とを備えている。
【0083】ここで、第1検出部651は、センサS11とセンサS12とに接続されており、これらからの検出信号を受け付けて、受け付けた検出信号に基づき原点位置に位置する第1可動役物131を検出する。同様に、第2検出部652は、センサS21とセンサS22とに接続されており、これらからの検出信号を受け付けて、受け付けた検出信号に基づき原点位置に位置する第2可動役物132を検出する。第3検出部653は、センサS31に接続されており、これからの検出信号を受け付けて、受け付けた検出信号に基づき原点位置に位置する第3可動役物133を検出する。検出部650は、第1検出部651や第2検出部652や第3検出部653による検出結果を可動役物制御部630へ出力する。
・・・
【0085】ここで、可動役物制御部630は、駆動制御部631と、判定部632と、駆動規制設定部633とを備えている。駆動制御部631は、第1可動役物131のモータ311や第2可動役物132のモータ414や第3可動役物133のモータ511に所定の制御信号を入力し、これらのモータを回転させることで、可動役物131?133を駆動させる。
【0086】たとえば、駆動制御部631は、所定のタイミングで可動役物131?133が各々の原点位置に位置していなかった場合に、原点位置に位置していない可動役物131?133を各々の原点位置へ復帰させる復帰駆動をおこなう。・・・
・・・
【0193】・・・可動役物制御部630・・・は、ランプ制御部703cのCPU751がROM752に記憶されたプログラムを実行することによってその機能を実現することができる。」

(ウ)「【0300】(第1可動役物制御処理)図43は、第1可動役物制御処理の処理内容を示すフローチャートである。・・・
・・・
【0305】第1可動役物131の動作可能条件を満たしていれば(ステップS4303:Yes)、ランプ制御部703cは、第1可動役物131を動作させる(ステップS4304)。ステップS4304で、たとえば、ランプ制御部703cは、それぞれのモータ311に所定の制御信号を入力することで、第1可動役物131を原点位置から進出位置まで駆動させた後、原点位置まで復帰させる。第1可動役物131を動作させている際、ランプ制御部703cはセンサS11とセンサS12との出力値を監視する。
【0306】つづいて、ランプ制御部703cは、第1可動役物131を動作させた際のセンサS11とセンサS12との出力値変化に異常がないかを判定する(ステップS4305)。前述のように第1可動役物131を原点位置から進出位置とし、その後、原点位置に復帰させた場合、センサS11とセンサS12との出力値はON→OFF→ONとなるはずである。・・・
【0307】一方、センサS11とセンサS12との出力値変化に異常があれば(ステップS4305:No)、ランプ制御部703cは、次変動となったかを判定する(ステップS4306)。・・・
【0308】次変動となれば(ステップS4306:Yes)、ランプ制御部703cは、第1可動役物131を原点位置に復帰させる第1可動役物復帰処理をおこなう(ステップS4307)。ステップS4307において、たとえば、ランプ制御部703cは、第1可動役物131を進出位置方向へ所定量駆動させた後、センサS11とセンサS12との出力値がONとなるまで退避位置方向へ駆動させる。また、退避位置方向へ駆動させている際に規定パルス以上の制御信号を入力してもセンサS11とセンサS12との出力値がONとならなかったら退避位置方向への駆動を中断し、再度、進出位置方向へ所定量駆動させ、その後、同様に退避位置方向へ駆動させる。
・・・
【0317】(第2可動役物制御処理)図44は、第2可動役物制御処理の処理内容を示すフローチャートである。・・・
・・・
【0323】第2可動役物132の動作可能条件を満たしていれば(ステップS4404:Yes)、ランプ制御部703cは、第2可動役物132を動作させる(ステップS4405)。ステップS4405で、たとえば、ランプ制御部703cは、それぞれのモータ414に所定の制御信号を入力することで、第2可動役物132を原点位置から進出位置まで駆動させた後、原点位置まで復帰させる。第2可動役物132を動作させている際、ランプ制御部703cはセンサS21とセンサS22との出力値を監視する。
【0324】つづいて、ランプ制御部703cは、第2可動役物132を動作させた際のセンサS21とセンサS22との出力値変化に異常がないかを判定する(ステップS4406)。前述のように第2可動役物132を原点位置から進出位置とし、その後、原点位置に復帰させた場合、センサS21とセンサS22との出力値はON→OFF→ONとなるはずである。・・・
【0325】一方、センサS21とセンサS22との出力値変化に異常があれば(ステップS4406:No)、ランプ制御部703cは、次変動となったかを判定する(ステップS4407)。・・・
【0326】次変動となれば(ステップS4407:Yes)、ランプ制御部703cは、第2可動役物132を原点位置に復帰させる第2可動役物復帰処理をおこなう(ステップS4408)。ステップS4408において、たとえば、ランプ制御部703cは、第2可動役物132を進出位置方向へ所定量駆動させた後、センサS21とセンサS22との出力値がONとなるまで退避位置方向へ駆動させる。また、退避位置方向へ駆動させている際に規定パルス以上の制御信号を入力してもセンサS21とセンサS22との出力値がONとならなかったら退避位置方向への駆動を中断し、再度、進出位置方向へ所定量駆動させ、その後、同様に退避位置方向へ駆動させる。
・・・
【0332】(第3可動役物制御処理)図45は、第3可動役物制御処理の処理内容を示すフローチャートである。・・・
・・・
【0336】第3可動役物133の動作可能条件を満たしていれば(ステップS4503:Yes)、ランプ制御部703cは、第3可動役物133を動作させる(ステップS4504)。ステップS4504で、たとえば、ランプ制御部703cは、モータ511に所定の制御信号を入力することで、第3可動役物133を原点位置から進出位置まで駆動させた後、原点位置まで復帰させる。第3可動役物133を動作させている際、ランプ制御部703cはセンサS31の出力値を監視する。
【0337】つづいて、ランプ制御部703cは、第3可動役物133を動作させた際のセンサS31の出力値変化に異常がないかを判定する(ステップS4505)。前述のように第3可動役物133を原点位置から進出位置とし、その後、原点位置に復帰させた場合、センサS31の出力値はON→OFF→ONとなるはずである。・・・
【0338】一方、センサS31の出力値変化に異常があれば(ステップS4505:No)、ランプ制御部703cは、次変動となったかを判定する(ステップS4506)。・・・
【0339】次変動となれば(ステップS4506:Yes)、ランプ制御部703cは、チャンスゾーン(連続演出)中かを判定する(ステップS4507)。・・・
【0340】チャンスゾーン中でなければ(ステップS4507:No)、ランプ制御部703cは、第3可動役物133を原点位置に復帰させる第3可動役物復帰処理をおこなう(ステップS4509)。ステップS4509において、たとえば、ランプ制御部703cは、第3可動役物133を進出位置方向へ所定量駆動させた後、センサS31の出力値がONとなるまで退避位置方向へ駆動させる。・・・」

(エ)上記(ア)?(ウ)の記載事項から、刊行物2には、次の技術事項が記載されているといえる。

[刊行物2に記載の技術事項]
「可動役物と、可動役物が備えるモータに所定の制御信号を入力し、このモータを回転させることで可動役物を駆動させる可動役物制御部と、可動役物が原点位置に位置するかを検出する検出部とを備え、可動役物制御部が、可動役物を動作させた際に検出部で検出した検出信号に基づいて異常がないかを判定し、異常があれば、可動役物を進出位置方向へ所定量駆動させた後、退避位置方向へ駆動させる処理を行って可動役物を原点位置に復帰させる復帰処理を行うぱちんこ遊技機において、
可動役物を複数とし、各可動役物がそれぞれ当該可動役物が原点位置に位置するかを検出する検出部を備え、可動役物制御部が各可動役物を駆動させるようにした点。」

ウ 刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-34975号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【発明を実施するための形態】【0021】以下に本発明の好適な実施形態について説明する。・・・
[実施例1]
図1に示すように、遊技機の一種であるパチンコ機50は、縦長の固定外郭保持枠をなす外枠51にて構成の各部を保持する構造である。・・・
・・・
【0039】・・・サブ統合制御装置83には剣役物モータ41a、盾役物モータ101a、タイトル役物モータ100a、剣役物センサ41b、盾役物センサ101b、タイトル役物センサ100bが接続されており、これら各センサの検出結果や主制御装置80からのコマンドに応じ、これら各モータを駆動して演出動作を行なう。・・・
【0040】・・・盾役物101は盾役物モータ101aを動力源として歯車101cが回転駆動されることにより、アーム101d、101eにて構成されたリンク機構により位置101fを軸として揺動される。なお、盾役物センサ101bは、アーム101dが初期位置・・・にあることを検出する。・・・タイトル役物100はタイトル役物モータ100aを動力源としてピニオン100cが回転駆動されることにより、ラック100dが平行移動してタイトル役物100を上下に移動させる。なお、タイトル役物センサ100bは、ラック100dが初期位置・・・にあることを検出する。・・・剣役物41は剣役物モータ41aを動力源として歯車41cが回転駆動されることにより、剣役物41を揺動させる。なお、剣役物センサ41bは、剣役物41が初期位置・・・にあることを検出する。」

(イ)「【0071】役物初期位置確認処理(S505)の概要を図12に示す。当処理が起動されると、まずS550にて、剣役物41が初期位置にあるか否かを剣役物センサ41bの検出結果に基づいて判定し、初期位置にあれば(S550:yes)剣役物モータ41aの初期位置として登録し(S555)、S565に移行する。剣役物41が初期位置になければ(S550:no)、剣役物フラグに1をセットし(S560)、S565に移行する。
【0072】S565では、タイトル役物100が初期位置にあるか否かをタイトル役物センサ100bの検出結果に基づいて判定し、初期位置にあれば(S565:yes)、タイトル役物モータ100aの初期位置として登録し(S570)、S580に移行する。タイトル役物100が初期位置になければ(S565:no)、タイトル役物フラグに1をセットし(S575)、S580に移行する。
【0073】S580では、盾役物101が初期位置にあるか否かを盾役物センサ101bの検出結果に基づいて判定し、初期位置にあれば(S580:yes)、盾役物モータ101aの初期位置として登録し(S585)、当処理を終了(リターン)する。盾役物101が初期位置になければ(S580:no)、盾役物フラグに1をセットし(S590)、当処理を終了する。つまり、役物初期位置確認処理では、各役物41,100,101が初期位置にあれば、そのときの各モータの回転角度を初期位置として登録し、初期位置になければ、その役物が初期位置に無い旨を示すフラグ・・・に1をセットする。
【0074】役物初期位置移動処理(S510)の概要を図13に示す。当処理が起動されると、まずS600にて、役物フラグが全て1か否かを判定する。役物フラグが全て1、すなわち前記した3種類の役物がいずれも初期位置にない場合(S600:yes)は、剣役物初期位置移動処理(S605)を行い、続いてタイトル役物初期位置移動処理(S610)を行い、最後に盾役物初期位置移動処理(S615)を行ってから当処理を終了(リターン)する。S600が否定判断された場合には、剣役物フラグのみゼロか否かを判定し(S620)、これが肯定判断された場合には、タイトル役物初期位置移動処理(S625)を行い、盾役物初期位置移動処理(S630)を行なってから当処理を終了する。
【0075】S620が否定判断された場合には、タイトル役物フラグのみゼロか否かを判定し(S635)、これが肯定判断された場合には、剣役物初期位置移動処理(S640)を行い、盾役物初期位置移動処理(S645)を行なってから当処理を終了する。
S635が否定判断された場合には、盾役物フラグのみゼロか否かを判定し(S650)、これが肯定判断された場合には、剣役物初期位置移動処理(S655)を行い、タイトル役物初期位置移動処理(S660)を行なってから当処理を終了する。
【0076】S650が否定判断された場合には、剣役物フラグのみ1か否かを判定し(S665)、これが肯定判断された場合には、剣役物初期位置移動処理(S670)を行なってから当処理を終了する。S665が否定判断された場合には、タイトル役物フラグのみ1か否かを判定し(S675)、これが肯定判断された場合には、タイトル役物初期位置移動処理(S680)を行なってから当処理を終了する。S675が否定判断された場合には、盾役物フラグのみ1か否かを判定し(S685)、これが肯定判断された場合には、盾役物初期位置移動処理(S690)を行なってから当処理を終了する。S685が否定判断された場合には、全ての役物フラグがゼロ、すなわち全ての前記役物が初期位置にあることになり、そのまま当処理を終了する。」

(ウ)上記(ア)、(イ)の記載事項から、刊行物3には、次の技術事項が記載されているといえる。

[刊行物3に記載の技術事項]
「役物と、役物が備えるモータを駆動して演出動作を行なわせるサブ統合制御装置と、役物が初期位置にあることを検出する役物センサとを備え、サブ統合制御装置が、役物が初期位置にあるか否かを役物センサの検出結果に基づいて判定し、初期位置にない役物について初期位置移動処理を行なうようにしたパチンコ機において、
役物を複数とし、各役物がそれぞれ当該役物が初期位置にあることを検出する役物センサを備え、サブ統合制御装置が各役物を駆動させるようにした点。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを、分説にしたがって対比する。

(a)引用発明における「遊技盤5に設けられた表示装置DISPの前面」は、本願補正発明における『遊技領域』に相当し、引用発明における「演出可動体AMU」は、「遊技盤5に設けられた表示装置DISPの前面」を「予告演出」の際に「昇降、回転する」ことが可能である。
したがって、引用発明における構成a(通常時は原点領域で待機し、予告演出として遊技盤5に設けられた表示装置DISPの前面で昇降、回転する演出可動体AMU)は、本願補正発明における構成A(遊技領域を移動可能である複数の装飾部材)と「遊技領域を移動可能である装飾部材」である点で共通する。

(b)引用発明における「演出制御部22」は、これが備えるワンチップマイコン40に内蔵されるパラレル入出力ポートPIOからドライバ回路45A,45Bを経由して駆動データを出力し、ステッピングモータで構成される「昇降モータMO」や「回転モータMT」を駆動させることで、「演出可動体AMU」を「昇降、回転させ」る制御を行うものである。
したがって、引用発明における構成b(内蔵するパラレル入出力ポートPIOからドライバ回路45A,45Bを経由して、ステッピングモータで構成される昇降モータMOや回転モータMTを駆動する駆動データを出力することにより、演出可動体AMUを昇降、回転させる処理を実行する機能を備える演出制御部22)は、本願補正発明における構成B(前記複数の装飾部材を移動させる移動制御機構)と「前記装飾部材を移動させる移動制御機構」である点で共通する。

(c)引用発明における「演出可動体AMU」が備える「回転部材ROT及び可動部材MV」が、それぞれ「原点位置」にある場合の「演出可動体AMU」の位置は、本願補正発明における『装飾部材』の『所定の位置』に相当する。
したがって、引用発明における構成c(演出可動体AMUが備える回転部材ROT及び可動部材MVが、それぞれ原点位置にあることを検出する複数の原点スイッチORG)は、本願補正発明における構成C(前記複数の装飾部材それぞれに対応し、それぞれの前記装飾部材が所定の位置に存在することを検出する複数の検出手段)と「前記装飾部材に対応し、前記装飾部材が所定の位置に存在することを検出する検出手段」を有する点で共通する。

(d)引用発明における「演出制御部のCPUリセット時、変動演出の開始時や終了時、大当り遊技開始時、客待ちデモ演出開始時」は、本願補正発明における『所定のタイミング』に相当する。引用発明における「回転部材ROTが原点領域外に位置している」について、「回転部材ROTが原点領域外に位置している」場合には「回転部材ROT」を備える「演出可動体AMU」が「所定の位置に存在」しないことになるので(構成c)、本願補正発明における『前記装飾部材が前記所定の位置に存在すること』に相当するから、引用発明における「回転部材ROTが原点領域外に位置していること」を「原点スイッチORG」から取得される検出信号が「示しているとき」は、本願補正発明における『前記装飾部材が前記所定の位置に存在すること』を『前記検出手段』が『検出しないとき』に相当する。
引用発明における「演出制御部22」が、「演出可動体AMUを昇降、回転させる処理を実行する」際(構成a)、「回転モータMTの空回転」という「異常」を「検出」することは、本願補正発明における『前記移動制御機構』の『動作』を『異常』と『判定する判定動作』を実行することに相当する。
また、引用発明における上記「異常」の「検出」は、引用発明における「演出制御部22」により、「原点検出処理(SS5)」において実行するものであるから、引用発明における「演出制御部22」は、本願補正発明における『判定手段』に相当する。
そして、引用発明における「演出制御部22」は、「演出可動体AMU」が備える回転部材ROT及び可動部材MVが、それぞれ原点位置にあることを検出する「複数の原点スイッチORG」(構成c)に対して、上記「異常」の「検出」を実行するものである。
したがって、引用発明における構成d(演出制御部のCPUリセット時、変動演出の開始時や終了時、大当り遊技開始時、客待ちデモ演出開始時などに実行される原点検出処理(SS5)において、回転モータMTについて2回転分の駆動動作を実行したにも拘らず、原点スイッチORGから取得される検出信号が回転部材ROTが原点領域外に位置していることを示しているときには、回転モータMTの空回転によって回転部材ROTが原点領域に戻れない異常が検出されたことになるので、次回のタイマ割込みでリトライ処理(SS4)を実行し、これを昇降モータMOについても実行する機能を備える演出制御部22)は、本願補正発明における構成D(前記装飾部材が前記所定の位置に存在することを前記検出手段が検出しないときに前記移動制御機構の動作を異常と判定する判定動作を、所定のタイミングにおいて、前記検出手段に対して実行する判定手段)と同等の機能を備えているから、引用発明における構成dは、本願補正発明における構成Dに相当する。

(e)引用発明における「リトライ処理(SS4)」は、「演出制御部22」により、「回転部材ROTが原点領域に戻れない異常」が「検出された」ときに(構成d)、回転部材ROTを備える「演出可動体AMU」(構成c)に対してなされる処理であるから、本願補正発明において、『前記判定手段』により『異常』と『判定された』『前記装飾部材』に対してなされる処理に相当する。
引用発明における「演出可動体AMU」が備える回転部材ROTを「初期設定された計数カウンタCNT(XX)だけ順方向に駆動」することは、本願補正発明における『前記装飾部材』を『第1の方向に所定量移動させ』ることに相当し、引用発明における「次回のタイマ割込み処理」で、「回転部材ROTを原点領域に向けて逆方向に駆動して往復運動をさせ」ることは、本願補正発明における『所定のタイミング』で『前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理』に相当する。
したがって、引用発明における構成e(演出制御部22は、リトライ処理(SS4)において、初期設定された計数カウンタCNT(XX)だけ順方向に駆動した後、計数カウンタCNTの値を新たに初期設定し、次回のタイマ割込み処理では、回転部材ROTを原点領域に向けて逆方向に駆動して往復運動をさせて回転モータMTの異常を解消する処理を実行し、これを昇降モータMOについても実行すること)は、本願補正発明における構成E(前記移動制御機構は、前記判定手段により異常と判定された前記装飾部材を第1の方向に所定量移動させた後、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理を所定のタイミングで行うこと)に相当する。

上記(a)?(e)の対比から、本願補正発明と引用発明とは、
[一致点]
「A’遊技領域を移動可能である装飾部材と、
B’前記装飾部材を移動させる移動制御機構と、
C’前記装飾部材が所定の位置に存在することを検出する検出手段と、
D 前記装飾部材が前記所定の位置に存在することを前記検出手段が検出しないときに前記移動制御機構の動作を異常と判定する判定動作を、所定のタイミングにおいて、前記検出手段に対して実行する判定手段と、を備え、
E 前記移動制御機構は、前記判定手段により異常と判定された前記装飾部材を第1の方向に所定量移動させた後、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理を所定のタイミングで行う
遊技機。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明は、『複数』の装飾部材を有し、『複数』の装飾部材それぞれに対応して「検出手段」を備え、「移動制御機構」が『複数』の装飾部材を移動させるものであるのに対し、
引用発明は、そのような特定を有しない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
刊行物2には、上記「第2の3」の「(2)イ(エ)」に示したとおりの技術事項が記載されているといえる。
そして、上記刊行物2の技術事項に記載の復帰処理における「進出位置方向」へ「所定量駆動」させること、「退避位置方向」へ「駆動させ」ることは、それぞれ、『第1の方向』に『所定量移動』させること、『前記第1の方向とは異なる第2の方向』に『移動』させることといえる。
そうすると、刊行物2には、次の技術事項が記載されているといえる。
「可動役物と、可動役物が備えるモータに所定の制御信号を入力し、このモータを回転させることで可動役物を駆動させる可動役物制御部と、可動役物が原点位置に位置するかを検出する検出部とを備え、可動役物制御部が、可動役物を動作させた際に検出部で検出した検出信号に基づいて異常がないかを判定し、異常があれば、異常と判定された可動役物を第1の方向に所定量駆動させた後、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理を行うぱちんこ遊技機において、
可動役物を複数とし、各可動役物がそれぞれ当該可動役物が原点位置に位置するかを検出する検出部を備え、可動役物制御部が各可動役物を駆動させるようにした点。」

引用発明及び刊行物2に記載の技術事項は、「可動役物と、可動役物を移動させる移動制御機構と、可動役物が所定の位置に存在することを検出する複数の検出手段と、移動制御機構が、可動役物に異常がないか判定し、異常と判定された可動役物を第1の方向に所定量移動させた後、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理を行う遊技機」についてのものである点で共通している。そして、遊技機において、可動役物を設けるか否かや可動役物をいくつ設けるかは、当業者が適宜に決定し得たことであるから、引用発明に、刊行物2に記載の技術事項を適用することで、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願補正発明が奏する効果も、引用発明及び刊行物2に記載の技術事項から当業者が予測し得る程度のものである。

(5)請求人の主張について
なお、請求人は、審判請求書の「4(3)」において、次のような主張をしている(「(ア)」、「(イ)」は当審で付した。)。
「(ア)引用文献1(上記「刊行物1」に対応)に係る発明は、複数の演出可動体を備えていないため、複数の演出可動体に対して原点位置にあるか否かの判定をおこなうようには構成されていません。また、このような判定をおこなわないことから、判定がなされた複数の演出可動体の中から異常と判定されたものに対して復帰処理をおこなうようにも構成されていません。・・・(イ)特に、引用文献1に係る発明の「原点検出処理」では、回転部材ROTが回転動作をおこないますが、回転部材ROTは移動しません。よって、引用文献1に係る発明は、本願発明の復帰処理、すなわち、『装飾部材を第1の方向に所定量移動させた後、第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理』をおこないません。 」
これらの主張について検討する。
上記(ア)において、刊行物1に係る発明が備えていないと主張している構成は、上記「第2の3」の「(2)イ(エ)」で示したとおり、上記刊行物2に記載されているから当該主張を採用することはできない。
上記(イ)において、刊行物1における「回転部材ROT」は、「回転動作」はおこなうが「移動」はしないと主張している点については、「回転動作」も「(回転)移動」をともなうことは明らかである。加えて、上記「第2の3」の「(2)ア」に[引用発明]として示したとおり、刊行物1には、往復運動する「可動部材MV」についても、『第1の方向に所定量移動させ』ることや『第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる』ことが記載されているし、上記「第2の3」の「(2)イ(エ)」で示したとおり、上記刊行物2にも記載されているから、当該主張を採用することができない。

よって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものでもあるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成27年4月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2の1」に「補正前」の請求項1として記載したとおりのものである。

1 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物1の記載事項及び引用発明の認定については、「第2の3」の「(2)ア」に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は、上記「第2の2」で検討したとおり、本願補正発明における「前記移動制御機構は、前記判定手段により異常と判定された前記装飾部材を第1の方向に所定量移動させた後、前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる復帰処理を所定のタイミングで行う」から、下線に係る発明特定事項を省いて上位概念化したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との相違点は、本願補正発明と引用発明とについて検討した「第2の3」の「(3)対比」に記載した[相違点]とと同じものとなる。

上記相違点について検討する。
刊行物3には、上記「第2の3」の「(2)ウ(ウ)」に示したとおりの技術事項が記載されているといえる。
そして、上記刊行物3の技術事項に記載の「初期位置移動処理」は、『所定の動作を実行させる復帰処理』であるといえる。
そうすると、刊行物3には、次の技術事項が記載されているといえる。
「役物と、役物が備えるモータを駆動して演出動作を行なわせるサブ統合制御装置と、役物が初期位置にあることを検出する役物センサとを備え、サブ統合制御装置が、役物が初期位置にあるか否かを役物センサの検出結果に基づいて判定し、初期位置にない役物について所定の動作を実行させる復帰処理を行なうようにしたパチンコ機において、
役物を複数とし、各役物がそれぞれ当該役物が初期位置にあることを検出する役物センサを備え、サブ統合制御装置が各役物を駆動させるようにした点。」

引用発明及び刊行物3に記載の技術事項は、「可動役物と、可動役物を移動させる移動制御機構と、可動役物が所定の位置に存在することを検出する検出手段とを備え、移動制御機構が、可動役物が所定の位置にあるかどうかを判定し、所定の位置にない可動役物について所定の動作を実行させる復帰処理を行なう遊技機」についてのものである点で共通している。そして、遊技機において、可動役物を設けるか否かや可動役物をいくつ設けるかは、当業者が適宜に決定し得たことであるから、引用発明に、刊行物3に記載の技術事項を適用することで、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明が奏する効果も、引用発明及び刊行物3に記載の技術事項から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物3に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-07 
結審通知日 2017-07-11 
審決日 2017-07-25 
出願番号 特願2013-220272(P2013-220272)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 長井 真一
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 田中 信介  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ