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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1332113 |
審判番号 | 不服2015-18286 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-07 |
確定日 | 2017-09-06 |
事件の表示 | 特願2012-525473「皮膚角質幹細胞増殖用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成23年2月24日国際公開、WO2011/021818、平成25年1月24日国内公表、特表2013-502410〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年8月16日(パリ条約による優先権主張 2009年8月17日 大韓民国(KR))を国際出願日とする特許出願であって、平成26年8月27日付けで拒絶理由が通知され、同年12月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年6月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、同年12月28日付けで前置報告がなされ、平成28年3月17日に上申書が提出されたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年10月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成27年10月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前(平成26年12月1日付け手続補正書)に 「【請求項1】 4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン、4’,6,7-トリヒドロキシイソフラボン、及び3’,4’,7-トリヒドロキシイソフラボンからなる群から選択される1種以上のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体であって、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる前記、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物。 【請求項2】 前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量は、組成物全体の重量を基準として、0.001?30重量%である、請求項1記載の皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物。 【請求項3】 前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体は、FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させる、請求項1記載の皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物を含む皮膚外用剤組成物。 【請求項5】 請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物を含む化粧料組成物。 【請求項6】 請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物を含む、皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用薬学組成物。」 とあったものを、 「【請求項1】 4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン、4’,6,7-トリヒドロキシイソフラボン、及び3’,4’,7-トリヒドロキシイソフラボンからなる群から選択される1種以上のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体であって、FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させ、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有し、前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量が組成物全体の重量を基準として、0.001?30重量%である皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物。 【請求項2】 請求項1に記載の組成物を含む皮膚外用剤組成物。 【請求項3】 請求項1に記載の組成物を含む化粧料組成物。 【請求項4】 請求項1に記載の組成物を含む、皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用薬学組成物。」(下線は、原文のとおり) と補正するものである。 2 本件補正の適否 (1)本件補正の目的について ア 請求項1についての補正のうち、本件補正前の請求項1に、「皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる前記、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる前記」と同じ記載が2回繰り返されていた誤記を訂正する補正は、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。 イ 請求項1についての補正のうち、本件補正前の「皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する」を「FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させ、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有し、前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量が組成物全体の重量を基準として、0.001?30重量%である」とする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体」について限定するものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 よって、請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 ウ 本件補正前の請求項2及び3を削除し、本件補正前の請求項4?6をそれぞれ繰り上げて、本件補正後の請求項2?4とするとともに、引用する他の請求項の引用番号を変更する補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 また、本件補正後の請求項2?4は、本件補正後の請求項1を引用するものであるから、上記イと同様に、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2)独立特許要件違反について ア そこで、本件補正後の請求項3に記載された発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。 イ 本件補正後の請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、請求項1を引用しない形式で書き表すと次のとおりである。 「4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン、4’,6,7-トリヒドロキシイソフラボン、及び3’,4’,7-トリヒドロキシイソフラボンからなる群から選択される1種以上のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体であって、FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させ、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有し、前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量が皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物全体の重量を基準として、0.001?30重量%である皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物を含む化粧料組成物。」 (3)引用例及びその記載事項 本出願の優先日前である平成20(2008)年3月13日に頒布された刊行物である「特開2008-56576号公報」(原査定の引用文献1。以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。なお、以下、下線は当審で付したものである。 (a)「【請求項1】 下記化学式(1)?(5)で表されるヒドロキシイソフラボンのうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする抗グリケーション組成物。 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 ・・・ 【請求項9】 請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の抗グリケーション組成物を含有することを特徴とする化粧品組成物。 【請求項10】 皮膚外用化粧品組成物である請求項9に記載の化粧品組成物。 【請求項11】 請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の抗グリケーション組成物を含有することを特徴とする医薬用組成物。」 (b)「【0003】 また、グリケーション(非酵素的糖化反応)とは、糖と蛋白質等が非酵素的に結合する反応である。蛋白質は生理機能に大きく関わっており、グリケーションによる糖化で本来の機能や役目を発揮できなくなり各種の機能障害をもたらすと考えられている。グリケーションは多段的に生じ、アマリド化合物を経た後、脱水・重合等の反応を経て終結糖化物質(AGEs)を形成する。AGEsは、加齢に伴い生体内に蓄積され、種々の老化現象に関与しているものと考えられている。また、糖尿病の合併症で生じる腎障害及び網膜症にもAGEsが関与していることが指摘されている。グリケーションを直接的に阻害する抗グリケーション剤としてはアミノグアニジン及びその誘導体等が知られている。しかし、長期使用した場合には副作用を生じることが心配されている。尚、ヒドロキシイソフラボン類に抗酸化力が認められることは下記特許文献2及び3に示されている。」 (c)「【0033】 また、本発明の抗グリケーション組成物による抗グリケーション作用は、蛋白質(即ち、糖とメイラード反応するタンパク質、更に換言すればアミノ基を有するアミノ酸残基を有するタンパク質)、ペプチド及びアミノ酸のいずれにも適用し得るが、特に蛋白質においてその効果に優れる。更に、この蛋白質の種類は特に限定されず、種々の生体内蛋白質に対して有効である。なかでも、血中タンパク質、血管組織中タンパク質、皮膚組織中タンパク質及び水晶体中タンパク質に対して特に有効であり、更には、これらのなかでもアルブミン、ヘモグロビン、コラーゲン、フィブロネクチン及びケラチンに対して優れた抗グリケーション作用が発揮される。」 (d)「【0039】 [3]化粧品組成物 本発明の化粧品組成物は、本発明の抗グリケーション組成物を含有することを特徴とする。これらに含まれる上記抗グリケーション組成物については、前記抗グリケーション組成物がそのまま適用される。 【0040】 本発明の化粧品組成物としては、パック、パックシート、各種パウダー、化粧水、リップクリーム、チーククリーム、ファンデーションクリーム、乳液、ローション、ボディローション、クレンジングローション、洗顔クリーム、スキンケアクリーム、ヘアーリンス、ヘアーリキッド等が挙げられる。また、これらの化粧品組成物には、その種類により、必要に応じて、他の成分、例えば、植物エキス、ビタミン、ビタミン様物質、ミネラル、低級アルコール類、多価アルコール類、油脂類、界面活性剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、防腐剤及び香料等を添加することもできる。 本発明の化粧品組成物に含有される抗グリケーション組成物の量には特に限定されず、化粧品組成物の種類等により適量を含有できるが、例えば、化粧品組成物全体を100質量%とした場合に、前記化合物(1)?(5)のうちの少なくとも1種(2種以上の場合には合計量)を0.01?1質量%、特に0.05?0.2質量%含有することが好ましい。上記化合物の含有量が上記範囲内であれば、優れた抗グリケーション作用を発揮させることができる。」 (e)「【実施例】 【0048】 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。 ・・・ 【0050】 (3)抽出及び粉末化 ・・・ 次いで、固液分離により得られた抽出液約10Lをエバポレーターで減圧濃縮し、約2Lにまで濃縮した。その後、凍結乾燥法により粉末化し、本発明の抗グリケーション組成物(イソフラボン発酵物)を24.5g得た。 【0051】 (4)高速液体クロマトグラフ測定 上記(3)までに得られた粉末をエタノール水溶液(水溶液全体に対してエタノール70質量%)に溶解して上記(3)で得られた粉末の濃度が1mg/mLとなるHPLC測定用液を調製した。このHPLC測定用液をフィルター濾過(フィルターサイズ0.45nm)し、下記条件の高速液体クロマトグラフ測定に供した。・・・ ・・・ 【0053】 上記図1及び表1からイソフラボン類全体に対して、特異的にヒドロキシイソフラボンが多く検出されていることが分かる。上記表1に示すように化合物(1)が4.3質量%、化合物(2)が4.1質量%及び化合物(3)が3.3質量%含有されていることが確認された。これらのヒドロキシイソフラボン類がイソフラボン類全体に占める割合は約52質量%と極めて多い。」 (4)引用例に記載の発明 上記(a)の請求項1及び9からみて、引用例には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 「下記化学式(1)?(5)で表されるヒドロキシイソフラボンのうちの少なくとも1種を含有する抗グリケーション組成物を含有する化粧品組成物。 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 」 (5)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の化学式(1)、(4)、及び(5)で表されるヒドロキシイソフラボンは、それぞれ、本願補正発明の「4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン」、「4’,6,7-トリヒドロキシイソフラボン」、及び「3’,4’,7-トリヒドロキシイソフラボン」である。 したがって、引用発明1の「化学式(1)、(4)、及び(5)で表されるヒドロキシイソフラボンのうちの少なくとも1種」は、本願補正発明の「4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン、4’,6,7-トリヒドロキシイソフラボン、及び3’,4’,7-トリヒドロキシイソフラボンからなる群から選択される1種以上のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体」に相当する。 (なお、以下では、引用発明1の「化学式(1)、(4)、及び(5)で表されるヒドロキシイソフラボンのうちの少なくとも1種」と、本願補正発明の「4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン、4’,6,7-トリヒドロキシイソフラボン、及び3’,4’,7-トリヒドロキシイソフラボンからなる群から選択される1種以上」を、「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体」ともいう。) イ 引用発明1の「抗グリケーション組成物」と、本願補正発明の「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物」は、いずれもオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有するものであるから、「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する組成物」である点で共通する。 ウ 引用発明1の「化粧品組成物」は、本願補正発明の「化粧料組成物」に相当する。 エ 以上のことから、両発明は、次の一致点及び一応の相違点1?2を有する。 一致点: 「4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン、4’,6,7-トリヒドロキシイソフラボン、及び3’,4’,7-トリヒドロキシイソフラボンからなる群から選択される1種以上のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する組成物を含む化粧料組成物。」である点。 一応の相違点1: 「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体」について、本願補正発明では、「FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させ、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる」ものと特定されているのに対し、引用発明1では、そのような特定がされていない点。 一応の相違点2: 「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する組成物」が、本願補正発明では、「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量が皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物全体の重量を基準として、0.001?30重量%である皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物」であるのに対し、引用発明1では、「抗グリケーション組成物」である点。 (6)判断 ア 一応の相違点1について 本願補正発明における、「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体」が「FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させ、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる」ものであるとの発明特定事項は、その物(オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体)が固有に有している機能、特性等が請求項中に記載されているだけであり、その物を特定するのに役に立っていないから、引用発明1のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体と区別することはできない。 したがって、一応の相違点1は実質的な相違点ではない。 イ 一応の相違点2について (ア)本願補正発明におけるオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量である「0.001?30重量%」は、皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物全体の重量を基準とするものであって、化粧料組成物全体を基準とするものではない。 また、化粧料組成物に対する皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物の量も特定されていない。 そして、本願明細書の記載及び技術常識を考慮すると、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を含有する皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物は、化粧料組成物に配合すると化粧料組成物中に区別なく混合されるものであるから、皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物全体の重量を基準として特定することに何ら技術的意義を有するものではない。 したがって、一応の相違点2における配合量に関する特定については、引用発明1との対比において意味をなさないから、この点は実質的な相違点ではない。 (イ)本願補正発明において、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する組成物について、「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物」と用途限定が付されているが、「化粧料組成物」という請求項に記載された発明に係る物に用途限定が付されているのではない。 そのため、「化粧料組成物」に配合される成分である「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物」について用途限定が付されていても、化粧料組成物全体としてみれば何ら技術的意義はなく、引用発明1では「化粧品組成物」に配合される成分である組成物について「抗グリケーション」との用途限定が付されているとしても、両発明は、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する組成物を、化粧料組成物(化粧品組成物)に含む物の発明として区別することはできない。 したがって、一応の相違点2における用途限定に関する特定についても、引用発明1との対比において意味をなさないから、この点も実質的な相違点ではない (ウ)よって、一応の相違点2も実質的な相違点ではない。 ウ 一応の相違点1?2については上記ア、イのとおりであるが、これらの相違点が実質的な相違点である、すなわち、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量を化粧料組成物全体の重量を基準として解した場合、及び、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の機能、特性等に関する記載及び化粧料組成物に配合される組成物の用途限定に関する記載を、「化粧料組成物」という請求項に記載された発明に係る物に用途限定が付されていると解した場合についても検討する。 (ア)まず、化粧料組成物全体の重量を基準として解した場合について検討する。 引用発明1の化粧品組成物について、引用例の上記3(d)には、「本発明の化粧品組成物としては、パック、パックシート、各種パウダー、化粧水、リップクリーム、チーククリーム、ファンデーションクリーム、乳液、ローション、ボディローション、クレンジングローション、洗顔クリーム、スキンケアクリーム、ヘアーリンス、ヘアーリキッド等が挙げられる。・・・化粧品組成物全体を100質量%とした場合に、前記化合物(1)?(5)のうちの少なくとも1種(2種以上の場合には合計量)を0.01?1質量%、特に0.05?0.2質量%含有することが好ましい。」と記載されている。 したがって、引用発明1の化粧品組成物は、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を化粧品組成物全体の重量を基準とすると、0.01?1質量%程度含有するものであるということができる。 (イ)一方、本願補正発明の化粧料組成物について、本願明細書【0023】には、「前記化粧料の剤形は、特に限定されず、例えば、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、アイクリーム、栄養クリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パウダー、エッセンス、パック、ゲル又は皮膚粘着タイプの化粧料の剤形であってよく、また、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ又はスプレーといった経皮投与型の剤形であってよい。」と記載されている。 そして、本願明細書【0047】?【0052】に記載の剤形例を参酌すると、そこには、[剤形例1]栄養化粧水、[剤形例2]栄養クリーム、[剤形例3]マッサージクリーム、[剤形例4]パック、[剤形例5]軟膏が記載されており、それぞれの剤形例、すなわち化粧料組成物である各剤形全体の重量を基準としたオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量は、0.05重量%、3.0重量%、1.0重量%、0.5重量%、1.0重量%である。 これら本願明細書の記載から、本願補正発明の化粧料組成物におけるオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量は、化粧料組成物全体の重量を基準とすると、0.05?3.0質量%程度であるということができる。 なお、ここで、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量が皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物全体の重量を基準として0.001?30重量%である組成物を、化粧料組成物に含むものであることからすると、化粧料組成物全体の重量を基準としたオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量は多くとも30重量%であるともいえるが、本願明細書には、化粧料組成物に配合される場合の量について特段の定義はないから、上記のとおり剤形例から推認される量と解するのが相当である。 (ウ)そうすると、本願補正発明と引用発明1とは、いずれも化粧水、クリーム、パックなどの皮膚に適用する化粧料組成物(化粧品組成物)であって、同じオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を同じ量で含有するものといえるから、物の発明として区別することはできない。(なお、ここでは、質量%と重量%は同じと解釈できる。) すなわち、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量を化粧料組成物全体の重量を基準として検討しても、この点で、本願補正発明と引用発明1とに異なるところはない。 また、仮に、本願補正発明の化粧用組成物全体の重量を基準としたオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量が多くとも30重量%であるといえる点で相違するとしても、引用発明1において、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量を適宜変更して、化粧品組成物全体の重量を基準として多くとも30重量%程度の任意の量とすることも、当業者が容易になし得たものであって、そのことにより格別な効果を奏するものともいえない。 (エ)次に、用途限定が付されていると解した場合について検討する 本願明細書【0003】には、「人間は、年を取るにつれ、こうした皮膚角質幹細胞や遷移増幅細胞を増殖する能力が低下する。角質細胞を作る能力が低下すると、結局のところ皮膚再生能力が減退して、皮膚の弾力低下等の老化現象が深化する・・・。」と記載され、【0023】には、「本発明の組成物は、化粧料の形態で剤形化された場合には、皮膚再生力向上及び皮膚弾力改善等を通じた老化防止の目的で使用することができる。」と記載されている。 これらの記載からすると、本願補正発明の「FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させ、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる」オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物」を含む化粧料組成物の用途は、皮膚に適用してその老化を防止することということができる。 (オ)一方、引用例の上記3(b)には、「グリケーション(非酵素的糖化反応)とは、糖と蛋白質等が非酵素的に結合する反応である。蛋白質は生理機能に大きく関わっており、グリケーションによる糖化で本来の機能や役目を発揮できなくなり各種の機能障害をもたらすと考えられている。グリケーションは多段的に生じ、アマリド化合物を経た後、脱水・重合等の反応を経て終結糖化物質(AGEs)を形成する。AGEsは、加齢に伴い生体内に蓄積され、種々の老化現象に関与しているものと考えられている。」と記載され、上記3(c)には、「本発明の抗グリケーション組成物による抗グリケーション作用は、・・・特に蛋白質においてその効果に優れる。・・・なかでも、・・・皮膚組織中タンパク質・・・に対して特に有効であり、更には、これらのなかでもアルブミン、ヘモグロビン、コラーゲン、フィブロネクチン及びケラチンに対して優れた抗グリケーション作用が発揮される。」と記載されている。 これらの記載からすると、引用発明1のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を含有する抗グリケーション組成物を含む化粧品組成物の用途も、皮膚に適用してその老化を防止することということができる。 (カ)ここで、いわゆる用途発明とは、ある物の未知の属性を発見し、この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明をいうところ、本願補正発明は、「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体」について、「FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させ、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる」という未知の属性を発見したものということはできるが、これを含む化粧料組成物の用途は、皮膚に適用してその老化を防止することであって、本願補正発明と引用発明1とが、「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物」と「抗グリケーション組成物」のように、表現上、用途限定と解する発明特定事項の点で相違するものの、両者の用途を区別することはできない。 したがって、本願補正発明は、請求項中に用途限定があると解したところで、請求項に係る発明がいわゆる用途発明として新規性を有するとはいえないから、引用発明1と異なるところはない。 エ 以上のとおりであるから、一応の相違点1?2は実質的な相違点ではないか、仮にそうでなくても当業者が容易になし得たものである。 (7)独立特許要件違反のまとめ 以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 また、仮に引用例に記載された発明でないとしても、引用例に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記第2のとおり、平成27年10月7日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成26年12月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。 (なお以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明2」などといい、これらをまとめて「本願発明」ともいう。また、同じ記載が2回繰り返されているところは、誤記と解した。) 「【請求項1】 4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン、4’,6,7-トリヒドロキシイソフラボン、及び3’,4’,7-トリヒドロキシイソフラボンからなる群から選択される1種以上のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体であって、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物。 【請求項2】 前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量は、組成物全体の重量を基準として、0.001?30重量%である、請求項1記載の皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物。 【請求項3】 前記オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体は、FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させる、請求項1記載の皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物を含む皮膚外用剤組成物。 【請求項5】 請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物を含む化粧料組成物。 【請求項6】 請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物を含む、皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用薬学組成物。」 2 原査定の拒絶の理由の概要 本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により、特許を受けることができないという理由を含むものである。 引用文献1:特開2008-56576号公報 3 引用例及びその記載事項、及び引用例に記載の発明 拒絶査定の理由に引用された引用例の記載事項及び引用例に記載の発明は、上記「第2 2(3)引用例及びその記載事項」及び「第2 2(4)引用例に記載の発明」に記載したとおりである。 4 対比・判断 (1)本願発明5について 本願発明5は、本願補正発明との比較において、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体について、「FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させ、」及び「含量が組成物全体の重量を基準として、0.001?30重量%である」との発明特定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明5の発明特定事項と同様のものに相当することを含む本願補正発明は、上記「第2 2(6)判断」に記載したとおり、引用例に記載された発明であるから、本願発明5も同様に特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 (2)本願発明4について 引用例の上記(a)の請求項10からみて、引用発明1の「化粧品組成物」は、「皮膚外用化粧品組成物」であるといえ、これは、本願発明4の「皮膚外用剤組成物」に相当する。 そして、その他の点については、上記「(1)本願発明5について」で検討したとおりである。 よって、本願発明4は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 (3)本願発明6について ア 引用例の上記(a)の請求項11からみて、引用例には、さらに、「下記化学式(1)?(5)で表されるヒドロキシイソフラボンのうちの少なくとも1種を含有する抗グリケーション組成物を含有する医薬用組成物。(化学式略)」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。 イ 引用発明2の「医薬用組成物」は、本願発明6の「薬学組成物」に相当する。 ウ ここで、本願発明6の「薬学組成物」は、「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用」との用途限定が付されている。 そこで検討するに、本願明細書には、薬学組成物に関して、「本発明の他の一実施例の目的は、皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用化粧料又は薬学組成物を提供することである。」(【0005】)、「一実施例において、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を含有する皮膚再生力向上及び/又は皮膚弾力改善用化粧料組成物及び薬学組成物を提供する。」(【0021】)、「本発明はまた、前記組成物を含む薬学組成物を提供する。・・・具体的には、前記薬学組成物は、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて皮膚の再生力を向上させ、皮膚の弾力を改善させる効能が認められる。」(【0024】)と説明されている。 そうすると、本願発明6の「薬学組成物」の「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用」との用途限定は、上記「第2 2(6)判断 ウ(エ)?(カ)」で検討した本願補正発明の化粧料組成物と同様に、皮膚に適用してその老化を防止することといえ、また、引用発明2の「医薬用組成物」も、皮膚に適用してその老化を防止することを含むものといえるから、本願発明6も、いわゆる用途発明とはいえず、引用発明2と物として区別することはできない。 エ そして、その他の点については、上記「(1)本願発明5について」で検討したとおりである。 オ よって、本願発明6は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 (4)本願発明1について ア 引用例の上記(a)の請求項1からみて、引用例には、さらに、「下記化学式(1)?(5)で表されるヒドロキシイソフラボンのうちの少なくとも1種を含有する抗グリケーション組成物。(化学式略)」の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認める。 イ そこで、本願発明1と引用発明3とを対比すると、両発明は、以下の一致点及び一応の相違点3?4を有する。 一致点: 「4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン、4’,6,7-トリヒドロキシイソフラボン、及び3’,4’,7-トリヒドロキシイソフラボンからなる群から選択される1種以上のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する組成物。」である点。 一応の相違点3: 「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体」について、本願発明1では、「皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる」ものと特定されているのに対し、引用発明3では、そのような特定がされていない点。 一応の相違点4: 「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を有効成分として含有する組成物」が、本願発明1では、「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物」であるのに対し、引用発明3は、「抗グリケーション組成物」である点。 ウ 上記一応の相違点3?4について検討する。 (ア)一応の相違点3は、上記「第2 2(6)判断」の「ア 一応の相違点1について」と同様に、実質的な相違点ではない。 (イ)次に、一応の相違点4について検討する。 本願明細書には、「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物」の用途については定義されておらず、具体的には、上記一応の相違点3に係る「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体」の有する「皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させる」という機能、性質等(すなわち、未知の属性)に基づき、これを含む組成物を皮膚に適用してその老化を防止することが示されているに留まる。 一方、引用発明3の「抗グリケーション組成物」も、引用例の上記(b)及び(c)の記載からみて、専ら皮膚に適用してその老化を防止するためのものといえる。 そうすると、上記「第2 2(6)判断 ウ」で検討したのと同様に、本願発明1が、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の未知の属性を発見したものということはできるが、これを含む組成物の用途は、皮膚に適用してその老化を防止することであって、本願発明1と引用発明3とが、「皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物」と「抗グリケーション組成物」のように、表現上、用途限定と解する発明特定事項の点で相違するものの、両者の用途を区別することはできない。 したがって、一応の相違点4は、実質的な相違点ではない。 エ よって、本願発明1は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 (5)本願発明3について ア 本願発明3と引用発明3とを対比すると、両発明は、上記本願発明1について検討した一応の相違点3?4に加えて、次の一応の相違点5を有する。 一応の相違点5: 「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体」について、本願発明3では、「FZD1(Frizzled homolog 1)の発現を増加させ」るものと特定されているのに対し、引用発明3では、そのような特定がされていない点。 イ しかしながら、一応の相違点5は、上記「第2 2(6)判断」の「ア 一応の相違点1について」と同様に、実質的な相違点ではない。 そしてその他の点は、本願発明1で検討したとおりである。 ウ よって、本願発明3は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 (6)本願発明2について ア 本願発明2と引用発明3とを対比すると、両発明は、上記本願発明1について検討した一応の相違点3?4に加えて、次の一応の相違点6を有する。 一応の相違点6: 本願発明2では、「オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量は、組成物全体の重量を基準として、0.001?30重量%である」と特定されているのに対し、引用発明3では、そのような特定がされていない点。 イ そこで検討するに、引用例には、抗グリケーション組成物中のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体の含量範囲について特定した記載はないが、上記3(e)のとおり、実施例で、本発明の抗グリケーション組成物を製造し、イソフラボン類の含有量を測定したところ、本願発明2の「4’,7,8-トリヒドロキシイソフラボン」に相当する「化合物(1)」が4.3質量%含有されていることが確認されたことが記載されている。 したがって、一応の相違点6は、実質的な相違点ではない。 ウ よって、本願発明2は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 5 まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明である。 6 請求人の主張について 請求人は、平成26年12月1日付け意見書、平成27年10月7日付け審判請求書及び平成28年3月17日付け上申書において、本願発明は、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体が皮膚角質幹細胞の増殖を誘導するという新たな知見・機序を見出し、それを実験により確認し、また、FZD1の発現を増加させ、皮膚角質幹細胞の増殖を通じて、皮膚の再生力を向上又は皮膚の弾力を改善させるという用途に用いるものである。それに対し、引用例は、オルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体が本願発明のような機序を有することを記載せず、確かめてもおらず、抗グリケーションに向けられたものである。したがって、本願発明は引用例に記載の発明とは同一ではないし、抗グリケーションに向けられた発明から、本願発明の機序及び用途を想到すること容易でない旨主張する。 さらに、本願発明の上記用途は、老化防止用途とは区別されるものである。本願発明の皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善用組成物は、例えば前額部、頬、胸部又は臀部等といった、治癒や皮膚体積増加が望まれる局所的皮膚に適用され得るが、治癒や皮膚体積増加は老化防止とは異なる旨も主張する。 しかしながら、本願発明の組成物も引用例に記載の発明の組成物も、いずれも同程度の量のオルト-ジヒドロキシイソフラボン誘導体を含む組成物であって、皮膚に塗布して適用することを含むものである。そして、引用例の抗グリケーション組成物は、皮膚に塗布してコラーゲンなどの皮膚組織中のタンパク質の糖化を抑制するものであるから、皮膚再生力の低下や皮膚弾力の低下も抑制するものといえる。 したがって、仮に、本願発明の用途と、引用例に記載の発明の用途とが、その文言上から判断して、一方は老化防止用であり、他方はそうでないか、あるいは両方が老化防止用ではないとしても、結局のところ、同じ組成物を同じところ(皮膚)に用いるものであるから、その結果起こる現象は当然同じであり、その作用機序を異なる観点に着目して記載したか、その用途を異なる用語で記載したことによってでは、物の発明として異なるものということはできない。 さらには、引用例に記載の組成物が有する抗グリケーション作用は、老化防止を含むものであり、老化した皮膚に比べて、皮膚再生力が向上し、又は皮膚弾力が改善するといえるから、本願発明の皮膚再生力向上又は皮膚弾力改善の用途は、老化防止の用途と区別することができない。 よって、請求人の主張は採用しない。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1?6に係る発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-30 |
結審通知日 | 2017-04-04 |
審決日 | 2017-04-17 |
出願番号 | 特願2012-525473(P2012-525473) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K) P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松本 直子 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
関 美祝 齊藤 光子 |
発明の名称 | 皮膚角質幹細胞増殖用組成物 |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 本田 淳 |
代理人 | 恩田 誠 |