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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01R |
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管理番号 | 1332165 |
審判番号 | 不服2017-1237 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-27 |
確定日 | 2017-09-26 |
事件の表示 | 特願2015-545960「基板取付け型電気コネクタアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月5日国際公開、WO2015/017298、平成27年12月21日国内公表、特表2015-536561、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年7月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年7月31日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年9月1日に誤訳訂正がされ、同年9月16日付け(発送日:同年9月27日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年1月27日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1 理由2(新規性)について 請求項1に係る発明について:引用文献1 引用文献1には、図2、4における対応関係を加味すると、次の発明が記載されているといえる。 「相手側コネクタを固定すると共に、相手側コネクタをコネクタハウジングから押し出すラッチ(24)であって、 前記ラッチをコネクタハウジングに枢動可能に取り付けるように構成されたヒンジ部分(42、44)と、 前記ヒンジ部分の第1の側部から第1の方向(鉛直方向)に沿って延在するアーム部分(アーム部分A)と、 前記ヒンジ部分(42、44)の反対側の第2の側部から、前記第1の方向(鉛直方向)とは異なる第2の方向に沿って延在する、一対の個別の離間したヒンジアーム(40、40)と、 前記アーム部分(アーム部分A)から、前記第1の方向(鉛直方向)とは異なる第4の方向に沿って延在すると共に、ユーザによって押されると前記ラッチ(24)を作動させるように適合された、作動部分(C)と、を備え、 前記ヒンジアーム(40、40)が、前記コネクタハウジングの底壁及び側壁を通って延在する一対の対応する離間したラッチ開口部(B)を通って、前記相手側コネクタを押し出すように構成され、 前記アーム部分と前記作動部分(C)との間の作動角度が90°以下(図4)である、ラッチ(24)。」 よって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。 2 理由3(進歩性)について 請求項1に係る発明について:引用文献1 ・理由2における指摘参照。 ・実施形態のようにラッチがハウジング下部空間に格納されたものとして検討するに、引用文献1記載のように側壁、底壁自体を上部から取り去り設置するか、側壁下部を取り去り下部から設置するかは、相手コネクタ排除効果において差はなく、当業者が、適宜選択すべき事項である。 引用文献等一覧 1.特開平5-114437号公報 第3 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年9月1日の誤訳訂正で訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、次のとおりのものである。 「【請求項1】 相手側コネクタを固定すると共に、相手側コネクタをコネクタハウジングから押し出すラッチであって、 前記ラッチをコネクタハウジングに枢動可能に取り付けるように構成されたヒンジ部分と、 前記ヒンジ部分の第1の側部から第1の方向に沿って延在するアーム部分と、 前記ヒンジ部分の反対側の第2の側部から、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って延在する、一対の個別の離間したヒンジアームと、 前記アーム部分から、前記第1の方向とは異なる第4の方向に沿って延在すると共に、ユーザによって押されると前記ラッチを作動させるように適合された、作動部分と、を備え、 前記ヒンジアームが、前記コネクタハウジングの底壁及び側壁を通って延在する一対の対応する離間したラッチ開口部を通って、前記相手側コネクタを押し出すように構成され、 前記アーム部分と前記作動部分との間の作動角度が90°以下である、ラッチ。」 第4 引用文献 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記引用文献1(特開平5-114437号公報)には、「電気コネクタアセンブリ」に関し、図面(特に図1ないし図6(f)を参照)とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 1 「【0012】 【実施例】図1を参照する。本発明の電気コネクタアセンブリはラッチングイジェクテイングピンヘッダー10を含んでいる。ヘッダーの長いハウジング12が形成する長いキャビテイ14はその中に嵌め合わせコネクタ50を受け入れる(図5)。多数の雄ピン端子16はハウジング12の床20に孔18を通して取り付けられ、固定される。床はキャビテイ14の底壁を形成し、ハウジングの側壁22はキャビテイ14の側面を形成し、そして端壁23はキャビテイの端を形成する。これらの端壁の頂部25と側壁22の頂部27とはキャビテイ14の方へ向かって先細りとなってコネクタ50を孔の中へ案内する。ピン端子はハウジング12の底を通ってのびて印刷回路ボードの回路へ終端するソルダーテールを形成するか、もしくは更に別のコネクタ要素と嵌まり合う。嵌め合わせコネクタはどのような形であってもよいし、そして摩擦係合によってピン端子16と嵌まり合う雌端子もしくはソケットを含む。ハウジングが比較的低いので屈撓し易い外形の低いコネクタにこのイジェクトレバー構造は特に有用であると考えられる。 【0013】一対のラッチングイジェクテイングレバー手段24はハウジング12の両端に双頭の矢Aの方向に回動するように取り付けられている。後で判るように、各レバー手段はL字形をしており、このL字形のレバー手段の一方の脚26は手で操作できるアームを形成しており、他方の脚27は後述するイジェクト部分28を形成している。 【0014】各レバー手段24のアーム26は、アーム26がロック状態にあるとき嵌め合わせコネクタ50(図5)が外れないようにするため内側に面したフック状部分30を含んでいる。レバー手段が図1に示すロック状態にあるときコネクタ50の頂面54に係合するようフック状部分30は内側に向いている。コネクタ50の頂面54の先細りのスロット60(図5)は各レバー手段に隣接しており、その大きさはフック状部分30が通れ、そしてハウジングがヘッダーから離れて上がり始めれるようにする大きさにしている。 【0015】ハウジング12、コネクタ50そしてレバー手段24はプラスチック等の絶縁材料からモールド成形され、そして各レバー手段24の各アーム26は図1の左手のレバー手段に示すようにモールド成形した窪みを含んでいる。各レバー手段24の側壁部分34はイジェクト部分28からのび、そしてそれと一体に形成されていて、側壁部分34はハウジング12の側壁22の連続部分となっている。イジェクト部分28をそれの側壁34と一体に形成することにより強度と剛性とが加わり、レバー手段のイジェクト部分28をかなりの強度とすることができる。イジェクト部分28の長さを増大することによりアーム26を少し回動するだけでコネクタ50を放出できる。こうしてヘッダー10は、従来のラッチ構造を有するヘッダーよりも回路ボードに相互に近接して取り付けれる。 【0016】図2は向き合った対のレバー手段24を詳細に示しており、そして各レバー手段24の各側壁34の内側に一対のイジェクト部分28が形成されていることを示している。各レバー手段のイジェクト部分は横に離されていて、それらの間にハウジング12の端と最も端の端子ピンとを受け入れる。図2と図3とは、上に述べた従来技術に比してイジェクト部分28はかなりの長さであることを示している。 【0017】(中略) 【0018】図1と図2と一緒に図3を参照する。各イジェクト部分28は上に凸の面40により先細りとされており、この面40は嵌め合わせコネクタの下側に面している弧状部材上にある。各レバー手段24は回動点42(図3)の周りに回動するようにハウジング12へ取り付けられている。レバー手段24と一体にモールド成形され、そしてハウジング12と一体にモールド成形された円形ソケット46(図4)にパチリと嵌まった大きな円形ピボットボス44によって上記の回動点はつくられる。それ故、各レバー手段は図3に矢Bで示す放出方向に回動する。」 2 「【0027】図6a-図6fを参照しての上の説明から理解されるように、コネクタをヘッダーから切り離す大きな力が必要なときはレバー手段24には大きなモーメントアームが与えられる。必要とされる切り離し力が減少するにつれてモーメントアームも同じように減少する。長いイジェクト部分28は、レバー手段の全回動中切り離しコネクタの下側と常に係合している。これらすべてが、レバー手段の回動点から離れる方向に嵌め合わせコネクタの下側からイジェクト部分を離れる方に先細りとすることによってなされるのである。この先細りの形によって従来よりも長いイジェクト部分を使用できる。アームの少しの動きで嵌め合わせコネクタを放出でき、しかも所要の放出力が大きいときは最初のモーメントを大きくできる。又、先細りの形によりコネクタハウジングとイジェクト部分との間の大きい接触区域がイジェクト部分にかかるストレスを最小とし、従ってレバー手段の製作に広範囲の材料を使用できるようになる。」 3 図2ないし図4には、円形ピボットボス44の一方の側部(以下、「第1の側部」という。)から、紙面における上方向(以下、「第1の方向」という。)に沿って延在するアーム26の部分(以下「第1の部分」という。)が示されている。 4 図3及び図4には、円形ピボットボス44の前記第1の側部と反対側の側部(以下、「第2の側部」という。)から、紙面における左方向(以下、「第2の方向」という。)に沿って延在するイジェクト部分28が記載されている。 5 図3及び図4には、前記アーム26の第1の部分から、紙面における左下方向(以下、「第4の方向」という。)に沿って延在すると共に、手で操作できるフック部分30に至る曲面で構成されるアーム26(図4の矢印24で示される部分)の部分(以下、「第2の部分」という。)が示されている。また、前記アーム26の第1の部分と前記アーム26の第2の部分との間の角度は90°以下であることが看取される。 6 図1、図2及び図6には、イジェクト部分28が、ハウジング12の床20の上において、コネクタ50を放出するように構成されることが看取される。 上記記載事項及び図面の図示内容を総合して、本願発明に則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「コネクタ50を外れないようにすると共に、コネクタ50をハウジング12から放出するラッチングイジェクティングレバー手段24であって、 前記ラッチングイジェクティングレバー手段24を回動するように取り付けるように構成された円形ピボットボス44と、 前記円形ピボットボス44の第1の側部から第1の方向に沿って延在するアーム26の第1の部分と、 前記円形ピボットボス44の反対側の第2の側部から、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って延在する、一対の横に離されたイジェクト部分28と、 前記アーム26の第1の部分から、前記第1の方向とは異なる第4の方向に沿って延在すると共に、手で操作できるアーム26の第2の部分と、を備え、 前記イジェクト部分28が、前記ハウジング12の床20の上において、前記コネクタ50を放出するように構成され、 前記アーム26の第1の部分と前記アーム26の第2の部分との間の角度が90°以下である、ラッチングイジェクティングレバー手段24。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その構成、機能又は技術的意義からみて、後者の「コネクタ50」は前者の「相手側コネクタ」に相当し、以下同様に、「ハウジング12」は「コネクタハウジング」に、「ラッチングイジェクティングレバー手段24」は「ラッチ」に、回動することは枢動可能であることを意味しているから、「前記ラッチングイジェクティングレバー手段24を回動するように取り付けるように構成された円形ピボットボス44」は「前記ラッチをコネクタハウジングに枢動可能に取り付けるように構成されたヒンジ部分」に、「アーム26の第1の部分」は「アーム部分」に、一対で横に離されることは、一対で個別に離間していることを意味しているから、「前記円形ピボットボス44の反対側の第2の側部から、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って延在する、一対の横に離されたイジェクト部分28」は「前記ヒンジ部分の反対側の第2の側部から、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って延在する、一対の個別の離間したヒンジアーム」に、引用文献1の図6(a)ないし図6(f)によれば、ラッチングイジェクティングレバー手段24の作動の際にはアーム26の第2の部分がユーザにより押されていることは明らかであるから、「前記アーム26の第1の部分から、前記第1の方向とは異なる第4の方向に沿って延在すると共に、手で操作できるアーム26の第2の部分」は「前記アーム部分から、前記第1の方向とは異なる第4の方向に沿って延在すると共に、ユーザによって押されると前記ラッチを作動させるように適合された、作動部分」に、「角度」は「作動角度」に、それぞれ相当する。 また、引用文献1の図6(a)ないし図6(f)において、コネクタ50の放出はイジェクト部分28の押し出しにより行われることが看取されるから、「前記ヒンジアームが、前記相手側コネクタを押し出すように構成され」るという限りにおいて、引用発明の「前記イジェクト部分28が、前記ハウジング12の床20の上において、前記コネクタ50を放出するように構成され」ることは、本願発明の「前記ヒンジアームが、前記コネクタハウジングの底壁及び側壁を通って延在する一対の対応する離間したラッチ開口部を通って、前記相手側コネクタを押し出すように構成され」ることに相当する。 したがって両者は、 「相手側コネクタを固定すると共に、相手側コネクタをコネクタハウジングから押し出すラッチであって、 前記ラッチをコネクタハウジングに枢動可能に取り付けるように構成されたヒンジ部分と、 前記ヒンジ部分の第1の側部から第1の方向に沿って延在するアーム部分と、 前記ヒンジ部分の反対側の第2の側部から、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って延在する、一対の個別の離間したヒンジアームと、 前記アーム部分から、前記第1の方向とは異なる第4の方向に沿って延在すると共に、ユーザによって押されると前記ラッチを作動させるように適合された、作動部分と、を備え、 前記ヒンジアームが、前記相手側コネクタを押し出すように構成され、 前記アーム部分と前記作動部分との間の作動角度が90°以下である、ラッチ。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点〕 本願発明においては、ヒンジアームが、「コネクタハウジングの底壁及び側壁を通って延在する一対の対応する離間したラッチ開口部を通って」、相手側コネクタを押し出すように構成されるのに対して、引用発明におけるイジェクト部分28は、「ハウジング12の床20の上において」、コネクタ50を放出するように構成される点。 2 相違点についての判断 上記相違点について検討すると、相違点に係る本願発明のヒンジアームが、「コネクタハウジングの底壁及び側壁を通って延在する一対の対応する離間したラッチ開口部を通って」、相手側コネクタを押し出すという構成は、引用文献1には示唆されておらず、引用発明に基いたとしても当業者が容易に想到できるものではない。 なお、原査定においては、相違点に係る本願発明の上記構成は、設計的事項であるとの判断がされているが、相違点に係る本願発明の上記構成を有することにより、ヒンジアームの少なくとも一部を底壁の厚みの範囲に含めることができるので上下方向の寸法を低減できるという有利な効果を奏すると認められるから、本願発明にヒンジアームが、「コネクタハウジングの底壁及び側壁を通って延在する一対の対応する離間したラッチ開口部を通って」、相手側コネクタを押し出す構成を設けることが設計的事項であるとはいえない。 したがって、本願発明は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 1 理由2(新規性)について 上記「第5 1」における検討のとおり、本願発明は、引用発明とヒンジアームの構成において実質的に相違するから、本願発明は、引用発明と同一ではない。 したがって、原査定の理由2を維持することはできない。 2 理由3(進歩性)について 上記「第5 2」における検討のとおり、本願発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由3を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-09-11 |
出願番号 | 特願2015-545960(P2015-545960) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01R)
P 1 8・ 113- WY (H01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前田 仁 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
滝谷 亮一 小関 峰夫 |
発明の名称 | 基板取付け型電気コネクタアセンブリ |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 柳 康樹 |
代理人 | 酒巻 順一郎 |
代理人 | 池田 成人 |