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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1332188 |
審判番号 | 不服2016-16579 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-04 |
確定日 | 2017-09-26 |
事件の表示 | 特願2015-557856「立体回路基板およびこれに用いるソルダーレジスト組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月23日国際公開、WO2015/108085、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年1月14日(優先権主張2014年1月14日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年5月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月4日付け(発送日:8月9日)に拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月4日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、同年12月8日に前置報告され、その後、当審において平成29年4月14日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1には、筐体1として、メモリースティック筐体や携帯電話筐体が例示されている(段落【0002】、段落【0013】、段落【0019】参照)。 筐体1を、メモリースティック筐体や携帯電話筐体とする際に、持ち易さや意匠性等を考慮して、緩やかな曲面を備えた筐体とすることは、当業者が容易になし得たことである。 その際に、筐体1内面の回路パターン3の形成に影響が無いような曲率を選択することに格別の困難性は認められない。 また、回路基板に用いられるソルダーレジストとして、オキシムエステル系光重合開始剤を含有し、スプレー方式で塗布して形成されるものは従来周知(例えば、下記引用文献5の請求項1,6、段落【0001】、段落【0042】、引用文献6の請求項1、段落【0004】、段落【0059】、段落【0080】参照)であるから、引用文献1のソルダーレジスト6として該周知のソルダーレジストを用いることは、周知事項の転換にすぎない。 引用文献等一覧 1.特開2002-1209号公報 5.特開2008-134621公報(周知技術を示す文献) 6.特開2008-261921号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成29年6月19日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、次のとおりのものである。 「【請求項1】 曲面部や屈曲部に導電配線が形成された回路と、部品実装部とを備え、前記部品実装部が開口するように、前記回路が前記部品実装部を除いてソルダーレジストで覆われ、前記部品実装部に電子部品がはんだにて実装されてなる3次元立体回路基板の前記ソルダーレジストの形成に用いられるソルダーレジスト組成物であって、 スプレー方式に用いられ、 樹脂と光重合開始剤と熱硬化成分とを含有し、前記光重合開始剤が、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、およびアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤のいずれか少なくとも1種であることを特徴とするソルダーレジスト組成物。 【請求項2】 請求項1記載のソルダーレジスト組成物の硬化物からなることを特徴とするソルダーレジスト。 【請求項3】 請求項2記載のソルダーレジストが形成されたことを特徴とする立体回路基板。」 第4 引用文献 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記引用文献1(特開2002-1209号公報)には、「樹脂成形品の塗装方法及び塗装品」に関し、図面(特に図2、図3を参照。)とともに以下の事項が記載されている。 1「【0030】(F)工程:金属めっきを行う工程である。その方法はとくに制約を受けないが、実用上、無電解めっき法が好ましい。めっき層の構成も単層でも複数層でもよい。また、めっきする金属も当分野で公知のものでよい。たとえば3層の構成としてAu/Ni/Cu/母材面とするのがよい。 【0031】この金属めっきを施すことによって、筐体1の内面1aには触媒層1cのパターン上に回路パターン3が形成されるとともに、外面1b、いわゆる体裁面が金属めっき膜4で覆われることになる。なお、上記回路パターン3の形成と上記外面1bのめっき膜形成工程とは個々に行なうことも可能であるが、効率面からすれば、同時に行なうことが好ましい。 【0032】(G)工程:筐体内面1aに対してレジスト処理とはんだ処理を行ない、はんだ5は前記回路パターン3上に、またレジスト6はめっき膜の被われていない部分に形成される。」 2「【0034】(I)工程:前記はんだ5の部分に電子部品、たとえば抵抗チップ8を固着させる。この際、熱を加えてはんだ5をリフローさせることが必要である。」 3 上記1、2には明記はないが、回路パターン3の一部に電子部品を固着させる部分の他に、電子部品が固着されていない部分が設けられていることは、技術常識から明らかである。 4 図2、図3には、筐体1が3次元立体形状であることが示されている。 5 図2(G)には、レジスト6がソルダーレジストであることが示されているから、レジスト6がソルダーレジスト組成物からなることは明らかである。 上記記載事項及び図面の図示内容を総合して、本願発明1に則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「電子部品が固着されていない回路パターン3の第1の部分と、電子部品が固着される回路パターン3の第2の部分とを備え、筐体1内面1aのめっき膜の被われていない部分にレジスト6が形成され、前記電子部品が固着される回路パターン3の第2の部分に電子部品がはんだにて固着されてなる3次元立体形状の筐体1のレジスト6の形成に用いられるソルダーレジスト組成物。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、その構成、機能又は技術的意義からみて、後者の「電子部品が固着される回路パターン3の第2の部分」は前者の「部品実装部」に相当し、同様に、「レジスト6」は「ソルダーレジスト」に相当する。 また、引用発明の「電子部品が固着されていない回路パターン3の第1の部分」は、当該第1の部分が電子部品を接続する導電配線として形成されていることは明らかであるから、「導電配線が形成された回路」という限りにおいて、本願発明1の「曲面部や屈曲部に導電配線が形成された回路」と共通し、引用発明の「電子部品が固着されていない回路パターン3の第1の部分と、電子部品が固着される回路パターン3の第2の部分とを備え、筐体1内面1aのめっき膜の被われていない部分にレジスト6が形成され、前記電子部品が固着される回路パターン3の第2の部分に電子部品がはんだにて固着されてなる3次元立体形状の筐体1」は、回路パターン3が形成された3次元立体形状の筐体1は3次元立体回路基板といえるから、「導電配線が形成された回路と、部品実装部とを備え、前記部品実装部に電子部品がはんだにて実装されてなる3次元立体回路基板」という限りにおいて、「曲面部や屈曲部に導電配線が形成された回路と、部品実装部とを備え、前記部品実装部が開口するように、前記回路が前記部品実装部を除いてソルダーレジストで覆われ、前記部品実装部に電子部品がはんだにて実装されてなる3次元立体回路基板」と共通する。 したがって、両者は、 「導電配線が形成された回路と、部品実装部とを備え、前記部品実装部に電子部品がはんだにて実装されてなる3次元立体回路基板の前記ソルダーレジストの形成に用いられるソルダーレジスト組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕 本願発明1においては、「曲面部や屈曲部に導電配線が形成された回路」を備える3次元立体回路基板のソルダーレジスト形成に用いられるソルダーレジスト組成物であって、「スプレー方式に用いられ」るソルダーレジスト組成物であるのに対して、引用発明におけるソルダーレジスト組成物は、かかるものではない点。 〔相違点2〕 本願発明1においては、「部品実装部が開口するように、前記回路が前記部品実装部を除いてソルダーレジストで覆われ」るのに対して、引用発明においては、「筐体1内面1aのめっき膜の被われていない部分にレジスト6が形成され」る点。 〔相違点3〕 本願発明1においては、「樹脂と光重合開始剤と熱硬化成分とを含有し、前記光重合開始剤が、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、およびアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤のいずれか少なくとも1種である」ソルダーレジスト組成物であるのに対して、引用発明においては、ソルダーレジスト組成物の組成が不明である点。 (2)相違点についての判断 相違点1について検討する。 原査定において、回路基板に用いられるソルダーレジストとして、オキシムエステル系光重合開始剤を含有し、スプレー方式で塗布して形成されるものが周知技術であることを示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された特開2008-134621公報(引用文献5:請求項1、6、段落【0001】、段落【0042】を参照。)や、特開2008-261921号公報(引用文献6:請求項1、段落【0004】、段落【0059】、段落【0080】を参照。)には、相違点1に係る本願発明1の「曲面部や屈曲部に導電配線が形成された回路を備える3次元立体回路基板」に用いることについての記載はない。 また、前置報告において、塗布により形成されるソルダーレジストとして、パッドや電極等の外部に電気接続される部分以外の基板実装面全体を覆うものが周知技術であることを示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された特開2008-218605号公報(引用文献7:段落【0009】、段落【0010】を参照。)や、特開平5-136550号公報(引用文献8:段落【0009】を参照。)にも、相違点1に係る本願発明1の上記事項についての記載はない。 そうしてみると、引用発明において、上記引用文献5ないし引用文献8の記載を参酌することにより、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 したがって本願発明1は、相違点2及び相違点3を検討するまでもなく、引用発明及び上記引用文献5ないし引用文献8に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 したがって、本願発明1は、引用発明及び上記引用文献5ないし引用文献8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2及び3について 本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び上記引用文献5ないし引用文献8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定についての判断 平成29年6月19日の手続補正により補正された請求項1は、「曲面部や屈曲部に導電配線が形成された回路」を備える3次元立体回路基板のソルダーレジスト形成に用いられるソルダーレジスト組成物であって、「スプレー方式に用いられ」るソルダーレジスト組成物との事項を備えるものとなっており、上記のとおり、引用発明及び上記引用文献5ないし引用文献8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 当審拒絶理由について 当審では、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知している。 (1)請求項1には、「塗布方法がスプレー方式であ」ることを発明特定事項とした「ソルダーレジスト組成物」が記載されている。しかしながら、当該事項は、ソルダーレジストの組成物の構成要素とは認められないので、請求項1の記載は明確でない。 これに対して、平成29年6月19日の手続補正により、請求項1から「塗布方法がスプレー方式であ」ることが削除された結果、この拒絶理由は解消した。 (2)請求項2における「ソルダーレジスト」、請求項3における「立体回路基板」についても、上記(1)と同様に、明確でない。 これに対して、平成29年6月19日の手続補正により、請求項1から「塗布方法がスプレー方式であ」ることが削除された結果、この拒絶理由は解消した。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし3は、いずれも、引用発明及び上記引用文献5ないし引用文献8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-09-11 |
出願番号 | 特願2015-557856(P2015-557856) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中島 昭浩 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
滝谷 亮一 内田 博之 |
発明の名称 | 立体回路基板およびこれに用いるソルダーレジスト組成物 |
代理人 | 本多 一郎 |