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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01N
管理番号 1332199
審判番号 不服2017-808  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-19 
確定日 2017-09-26 
事件の表示 特願2015-515829「自動二輪車の排気装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日国際公開、WO2014/181649、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年4月16日(優先権主張2013年5月10日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年10月26日に手続補正書が提出され、平成28年8月2日付けで拒絶理由が通知され、平成28年9月23日に手続補正書が提出され、平成28年10月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年1月19日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、平成29年3月24日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし7に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-47164号公報
2.特開2008-111357号公報
3.特開2010-14027号公報
4.実願昭58-75780号(実開昭59-179791号)のマイクロフィルム

第3 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成29年1月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであり、以下のとおりである。

「【請求項1】
後部の側部に物品収納用のパニヤを備えた自動二輪車における排気装置であって、
後輪の側方に配置されて排気ガスを外部に排出するマフラの後端面が、前記パニヤの前端面よりも前側に位置しており、
前記マフラの上部の後端縁が、前記パニヤの底面よりも上方に位置し、
前記パニヤの前部および前記マフラが、同乗者ステップを支持するステップステーに支持され、
前記マフラの出口パイプは、上下に複数配置され、上側の前記出口パイプを、排気ガスが前記パニヤよりも下方に排出されるように湾曲させ、
前記マフラは複数の膨張室を有し、前記出口パイプに連通する最下段の前記膨張室よりも後方に少なくとも一つの上流側膨張室が配置され、
前記最下段の膨張室と前記上流側膨張室とは隔壁により区画され、これら両膨張室は、前記隔壁に形成された連通口により連通している自動二輪車の排気装置。」
また、本願発明2ないし6は、本願発明1のすべての発明特定事項を含むものである。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
(当審注:下線部は特に関連する箇所を示すために当審が付与した。以下、同様。)

a)「【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各々車両に着座した乗員から見た方向である。なお、図面は符号の向きにみるものとする。
【0023】
図1は本発明に係る車両の左側面図であり、車両としての自動二輪車10には、車体フレーム11が備えられている。
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延出されエンジン13を支持するメインフレーム14と、このメインフレーム14の後端上部から後方に延ばし乗員シート15を支持し、バッテリ16などの電装部品などを取り付け、且つ、リヤフェンダ17を含む車体後部18を支持するリヤフレーム19と、からなる。
なお、メインフレーム14には、このメインフレーム14の後端部に設けられスイングアーム28を支持するピボットプレート22を含む。
【0024】
ピボットプレート22には、ピボット軸27が設けられ、このピボット軸27から後方にリヤスイングアーム28(スイングアーム28)が延ばされ、このスイングアーム28とメインフレーム14の間に衝撃を吸収するリヤクッションユニット29が設けられ、スイングアーム28の先端部に、後輪31が取り付けられている。後輪31は、エンジン13と後輪31との間をつなぐ図示せぬドライブシャフトによって駆動される。」(段落【0022】ないし【0024】)

b)「【0028】
V型4気筒エンジン13には、排気装置33が備えられている。
排気装置33は、各シリンダ35、35、36、36から延びている排気管41a?41dと、これらの排気管41a?41dが集合され排気ガスの浄化を行う触媒管45と、この触媒管45から延びている全体集合管46と、この全体集合管46に連結される消音器47と、から構成されている。」(段落【0028】)

c)「【0029】
図中、51はエンジン13を冷却するラジエータユニット、52L、52R(手前側の符号52Lのみ示す。以下同じ。)はフロントフォークに設けたフロントデイスクブレーキキャリパ、53L、53R(手前側の符号53Lのみ示す。以下同じ。)は前輪25に設けフロントデイスクブレーキキャリパ52L、52Rによって挟持されるフロントデイスクプレート、54は操舵ハンドルに設けたフロントマスタシリンダ、56はメインフレーム14に取り付けた燃料タンクを覆い後述するカウル部70を兼ねる燃料タンクカバー、57L、57R(手前側の符号57Lのみ示す。以下同じ。)はメインフレーム14に取り付けた運転者用ステップ、58L、58R(手前側の符号58Lのみ示す。以下同じ。)はリヤフレーム19に取り付けた同乗者用ステップ、59はヘッドライト、60はフロントフェンダ、61L、61R(手前側の符号61Lのみ示す。以下同じ。)はミラー、62はリヤデイスクブレーキキャリパ、63は後輪31に設けリヤデイスクブレーキキャリパ62によって挟持されるリヤデイスクプレート、65はメインスタンドである。」(段落【0029】)

d)「【0033】
車両の後部について補足すると、車体の後部にリヤフレーム19が配置され、このリヤフレーム19の下方に後輪31を覆うリヤフェンダ17が設けられ、このリヤフェンダ17の上方に乗員が着座する乗員シート15が設けられ、リヤフェンダ17に物入れとしてのサドルバッグ111L、111R(図手前側の符号111Lのみ示す。)が取り付けられている。」(段落【0033】)

e)「【0055】
図9は本発明に係る車両の後部平面図である。但し、乗員シートおよびリヤランプユニットは想像線で示されている。
サドルバッグ取付穴のうちの前部取付穴113f、113fは、車両を上から見たときに、乗員シート15の下方に設けられ、この乗員シート15の後部に、リヤランプユニット116が設けられ、サドルバッグ取付穴のうちの後部取付穴113r、113rは、上方からリヤランプユニット116で覆われている。
【0056】
このように、前後に設けた4つのサドルバッグ取付穴113f、113r、113f、113rは、乗員シート15とリヤランプユニット116によって覆われているので、サドルバッグ取付穴113f、113r、113f、113rを目立たなくすることができる。
リヤフェンダ17は、ガラス繊維または炭素繊維を含む樹脂製にて形成されている。したがって、リヤフェンダ17の耐荷重性を高めることができる。
図中、174は物入れ、175はリレー・ヒューズ箱、176はリヤリザーバタンク、177は排気装置を駆動するモータである。
【0057】
図10は図9の10-10線断面図であり、リヤフェンダ17の前部取付穴113f、113fに、サドルバッグ111の前爪部128f、128fが係合されている状態を示す。
【0058】
詳細には、シートレールを兼ねるリヤフレーム19の下方に、リヤフェンダ17が配置され、このリヤフェンダ17は、後輪ホイールハウスとしてのアーチ状を呈する内リヤフェンダ17Uと、この内リヤフェンダ17Uの外方に配置されている外リヤフェンダ17Sとからなる。この外リヤフェンダ17Sに、サドルバッグ取付穴113f、113fが開けられている。
【0059】
サドルバッグ111に設けた爪部としての前爪部128f、128fには、弾性部材179、179が設けられているので、これらの弾性部材179、179がリヤフェンダ17に押圧され、リヤフェンダ17のサドルバッグ取付穴113f、113fに前爪部128f、128fを密着させるようにすることで、前爪部128f、128fとサドルバッグ取付穴113f、113fとの取付関係が変化する場合であっても、これらの間に隙間などが生じ難くなる。隙間などが生じ難くなれば、例えば、サドルバッグががたつくことなどの問題を解消することができ、リヤフェンダ17にサドルバッグ111をしっかりと保持することができる。なお、弾性部材を省くことは差し支えない。
【0060】
以下、図11?13において、左右のサドルバッグ111L、111Rの取付構造は、車両の中心線に対し左右対称な構造をもつため、左のサドルバッグ111Lをサドルバッグ111とし、左側の取付構造について説明を行うものとし、右側の取付構造については説明を省略する。
【0061】
図11は図9の11-11線断面図であり、サドルバッグ111に設けられている車体フレーム11側の側面124sには、車体フレーム側に取り付けられ同乗者用ステップ(図9の符号58L)から延びている係止アーム117と係合する係合凹部131が設けられている。
【0062】
サドルバッグ111には、同乗者用ステップ58から延びている係止アーム117と係合する係合凹部131が設けられているので、サドルバッグ取付状態での外観性を高めることができる。
【0063】
図12は図9の12-12線断面図であり、リヤフェンダ17の側部から下方に延設したリブ114・・・に、サドルバッグ111の下側係合アーム部133が係合されている状態を示す。
【0064】
図2を併せて参照して、リヤフェンダ17の側部17sには、垂下部としての複数のリブ114・・・が下方に延びているので、下側係合アーム部133が短いときでも、サドルバッグ111を支持することが可能となる。垂下部としてのリブ114・・・は、リヤフェンダ17の内側下方に延ばされているので、サドルバッグ111が取り外されているときにも、車両の外観性を損なう心配はない。
【0065】
図13は図9の13-13線断面図であり、リヤフェンダ17の後部取付穴113rに、サドルバッグ111の後爪部128rが係合されている。
爪部としての後爪部128rには、弾性部材179が設けられているので、この弾性部材179をリヤフェンダ17に押圧させ、リヤフェンダ17のサドルバッグ取付穴113rに爪部128rを密着させるようにすることで、爪部128rとサドルバッグ取付穴113rとの間に隙間が生じた場合であっても、がたつくことなくリヤフェンダ17にサドルバッグ111を取り付けることができる。なお、弾性部材を省くことは差し支えない。」(段落【0055】ないし【0065】)

(2)上記(1)及び図面から分かること
a)上記(1)a)及びb)並びに図1の記載によれば、引用文献1には、自動二輪車10における排気装置33が記載されていることが分かる。

b)上記(1)a)及びd)並びに図1及び9の記載によれば、自動二輪車10は、後部の側部に物入れとしてのサドルバッグ111L、111Rを備えることが分かる。

c)上記(1)a)及びb)並びに図1の記載を上記a)とあわせてみると、自動二輪車10における排気装置33において、後輪31の側方に配置されて排気ガスを外部に排出する消音器47は後端面及び上部の後端縁を有することが分かる。

d)上記(1)d)並びに図1及び9ないし13の記載を上記b)とあわせてみると、サドルバッグ111L、111Rは前端面及び底面を有することが分かる。

e)図1の記載を上記c)及びd)とあわせてみると、消音器47の後端面が、サドルバッグ111L、111Rの前端面とほぼ同一面上に位置することが分かる。

f)図1の記載を上記c)及びd)とあわせてみると、消音器47の上部の後端縁が、サドルバッグ111L、111Rの底面とほぼ同じ高さに位置することが分かる。

g)上記(1)c)ないしe)並びに図1及び2、8、9及び11の記載を上記b)とあわせてみると、サドルバッグ111L、111Rの前部が、同乗者ステップ58L、58R及び係止アーム117に支持されることが分かる。

(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用文献1に記載された発明」という。)が記載されていると認める。

<引用文献1に記載された発明>

「後部の側部に物入れとしてのサドルバッグ111L、111Rを備えた自動二輪車10における排気装置33であって、
後輪31の側方に配置されて排気ガスを外部に排出する消音器47の後端面が、サドルバッグ111L、111Rの前端面とほぼ同一面上に位置しており、
消音器47の上部の後端縁が、サドルバッグ111L、111Rの底面とほぼ同じ高さに位置し、
サドルバッグ111L、111Rの前部が、同乗者ステップ58L、58R及び係止アーム117に支持される自動二輪車10における排気装置33。」

2.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献2には、図面(特に、図8ないし11を参照。)とともに次の事項が記載されている。

a)「【0009】
図1ないし図12は、本発明の一実施形態による自動二輪車を説明するための図である。なお、本実施形態でいう前後,左右とは、シートに着座した状態で見た場合の前後,左右を意味する。
【0010】
図において、1は自動二輪車を示しており、該自動二輪車1は、ツインスパー型の車体フレーム2と、該車体フレーム2に搭載されたエンジン3と、上記車体フレーム2の前,後に配置された前輪4,後輪5とを備えている。」(段落【0009】及び【0010】)

b)「【0020】
上記エンジン3の排気装置30は、該エンジン3に接続された4本の排気管31と、該排気管31に接続された1つの排気チャンバ32と、該排気チャンバ32に接続された左,右のマフラ33,33とを備えており、詳細には、以下の構造を有している。」(段落【0020】)

c)「【0038】
各気筒からの排気ガスは、左,右横向き排気管34及び左,右縦向き排気管35を通って排気チャンバ32の第1膨張室a内に流入する。第1膨張室aで合流した排気ガスは、第1連通路39の触媒43を通って第2膨張室bに流れ、該第2膨張室bから第2連通路40を通って第3膨張室cに流入し、ここから左,右のマフラ33を通って外部に排出される。」(段落【0038】)

d)「【0044】
上記左,右のマフラ33は、図1に示すように、上記後輪5の回転軸5aの中心xを通る鉛直線Bより前側に配置されている。また左,右のマフラ33は、これの前後方向中心Dが後輪5の前縁5b付近に位置するよう配置されている。
【0045】
上記左,右のマフラ33は、排気チャンバ32から後斜め上向きに延び、かつ車幅方向外側に張り出すように配置されている。
【0046】
上記左,右のマフラ本体33bは、上記下流側排気管33aに接続されたテールパイプ51の外周部を囲むよう形成されたケーシング52と、該ケーシング52の後端壁52aを外側から覆うように装着されたテールキャップ53とを有する。
【0047】
上記テールパイプ51は、上記下流側排気管33aに締結部材55を介して着脱可能に接続固定された1本のメインパイプ51aと、該メインパイプ51aに続いて上,下に二股状に分岐されて後方に延びる第1,第2分岐パイプ51b,51cとを有する。この第1,第2分岐パイプ51b,51cは、メインパイプ51aより若干小径に形成されている。
【0048】
図10,図11に示すように、下側の第2分岐パイプ51cは、これの軸線C2が上記メインパイプ51aの軸線Cと略平行となるよう直線状に形成されている。一方、上側の第1分岐パイプ51bは、上記第2分岐パイプ51c側に向う下向き湾曲状に形成されている。これにより第1分岐パイプ51bの排気管長は第2分岐パイプ51cより少し長くなっている。
【0049】
そして上記第1分岐パイプ51bは、これの軸線C1を後方に延長すると上記第2分岐パイプ51cの軸線C2の後方延長線と交差するように形成されている。これによりマフラ33の車載状態で見ると、第2分岐パイプ51cの排気口51c′は斜め上向きとなっているのに対し、第1分岐パイプ51bの排気口51b′は相対的に斜め下向きとなっている。
【0050】
上記ケーシング52の上壁面には取付ブラケット52dが固定されており、該取付ブラケット52dはステー部材等を介してシートフレーム2cに着脱可能に取付けられている。」(段落【0044】ないし【0050】)

e)「【0052】
ここで上記第1,第2分岐パイプ51b,51cの排気口(後端面)51b′,51c′は、後端壁52aを貫通してブラケット52a′のキャップ取付座52f,52f及び後述するテール孔61cの開口縁fと大略面一となるよう配置されている。より正確には、上記第1,第2分岐パイプ51b,51cの排気口51b′,51c′は、テール孔61c,61cの開口縁fより僅かに上流側(前側)に位置している。
【0053】
上記メインパイプ51aは、上記前端壁52bを前方に貫通し、該前端壁52bに気密に接合されている。上記第1,第2分岐パイプ51b,51cは後端壁52aを後方に貫通し、該後端壁52aに気密に接合されている。
【0054】
上記ケーシング52は、横断面視で長円状をなすよう、かつ排気ガスの流れ方向に見て上流側から下流側にいくほど横断面積が大きくなるように形成された長円筒状をなしている。そしてこのマフラ33は、上記長円の長軸hが略上下方向を向くように、かつ車両後斜め上方に傾斜するように配置されている。
上記ケーシング52の内,外側壁52c,52cの上下方向中央部には、長手方向(排気ガスの流れ方向)に延びる凹部52e,52eが凹設されている。これによりケーシング52は、横断面で見ると、2つの円の一部を重ね合わせた大略瓢箪形状をなしている。
【0055】
上記ケーシング52と排気チャンバ32との間には、下流側排気管33aの外側方を覆う外装カバー57が配置されている。この外装カバー57は、ケーシング52に続いて上流側(下側)にいくほど細くなる尖り形状をなしており、換言すれば下流側に拡がる扇形状をなしており、かつケーシング52の一部を構成している。
【0056】
上記ケーシング52とのテールパイプ51との間にはグラスウール等の吸音部材56が充填されており、該テールパイプ51は吸音材で囲まれている。上記メインパイプ51aには、これの全周に渡って多数の小孔51dが形成されており、排気ガスの一部は小孔51dを通ってケーシング52内に進入し、該排気ガスの排気音は吸音部材56により吸収される。」(段落【0052】ないし【0056】)

f)「【0071】
そして第2分岐パイプ51cを、メインパイプ51aの軸線Cと略平行に配置し、第1分岐パイプ51bを、第2分岐パイプ51c側に向うよう斜め下向きに屈曲させ、両者の軸線C1,C2を交差させたので、第2分岐パイプ51cから車両後斜め上方に排出される排気ガスに第1分岐パイプ51bから相対的に下向きに排出される排気ガスが衝突し、排気ガスが全体として上方に拡散するのを抑制でき、マフラ33を車両後斜め上向きに傾斜するように配置しながら後続の車両に排気ガスがかかるのを抑制できる。
【0072】
上記マフラ33を、これの前後方向中心Dが後輪5の前縁5b付近に位置するように配置したので、マフラ33の重心が車体フレーム2の中心寄りに位置することとなり、車両前後方向中心付近へのマスの集中化を図ることができる。
【0073】
また上記左,右のマフラ33を、後輪5の回転軸5aの中心xを通る鉛直線Bより前側に配置したので、従来にない力強い外観を得ることができるとともに、マスの集中化を図ることができる。」(段落【0071】ないし【0073】)

(2)上記(1)及び図面から分かること
a)上記(1)a)及びb)並びに図1及び2の記載によれば、引用文献2には、自動二輪車1における排気装置30が記載されていることが分かる。

b)上記(1)a)ないしd)並びに図1及び2の記載を上記a)とあわせてみると、自動二輪車1における排気装置30において、後輪5の側方に配置されて排気ガスを外部に排出するマフラ33を有することが分かる。

c)上記(1)d)並びに図2ないし4、8及び9の記載によれば、マフラ本体33bが、シートフレーム2cに支持されることが分かる。

d)上記(1)d)及びf)並びに図8ないし11の記載によれば、マフラ33の第1、第2分岐パイプ51b、51cは、上下に配置され、上側の第1分岐パイプ51bを、排気ガスが相対的に下向きに排出されるように湾曲状に形成され、排気ガスが全体として上方に拡散するのを抑制することが分かる。

(3)引用文献2に記載された技術
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認める。

<引用文献2に記載された技術>

「自動二輪車1における排気装置30において、
後輪5の側方に配置されて排気ガスを外部に排出するマフラ33を有し、
マフラ本体33bが、シートフレーム2cに支持され、
マフラ33の第1、第2分岐パイプ51b、51cは、上下に配置され、上側の第1分岐パイプ51bを排気ガスが相対的に下向きに排出されるように湾曲状に形成され、排気ガスが全体として上方に拡散するのを抑制する技術。」

3.引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献3には、図面(特に、図6及び7を参照。)とともに次の事項が記載されている。

a)「【0017】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各々車両に着座した乗員からみた方向である。なお、図面は符号の向きにみるものとする。
図1は本発明に係るV型4気筒エンジンが搭載されている自動二輪車の左側面図であり、車両としての自動二輪車10には、車体フレーム11が備えられている。
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延ばし内燃機関としてのエンジン13の上部および後部を支持するメインフレーム14と、このメインフレーム14の後端上部から後方に延ばし乗員シート15を支持し、バッテリ16などの電装部品などを取り付け、且つ、リヤフェンダ17を含む車体後部18を支持するリヤフレーム19とからなる。
【0018】
ヘッドパイプ12には、フロントフォーク24が設けられており、このフロントフォーク24の下端部に前輪25が取り付けられ、フロントフォーク24の上端部に前輪25を操舵する操舵ハンドル26が設けられている。
【0019】
メインフレーム14の後部には、ピボット軸27が設けられ、このピボット軸27から後方にリヤスイングアーム28が延ばされ、このリヤスイングアーム28の先端部にエンジン13により駆動される後輪31が取り付けられている。後輪31は、エンジン13と後輪31との間を結ぶドライブシャフト32によって駆動される。
【0020】
車体フレーム11には、エンジン13(以下、「V型4気筒エンジン13」とも云う。)が搭載されており、このV型4気筒エンジン13には、排気装置33が備えられている。
V型4気筒エンジン13は、クランクケース37と、このクランクケース37に設けたクランクシャフト34を中心に斜め前上方に延びている前シリンダ35と、クランクシャフト34を中心に斜め後上方に延びている後シリンダ36とをV字状に配置したものである。
【0021】
図中、41はエンジン13を冷却するラジエータユニット、42はフロントフォークに設けたフロントデイスクブレーキユニット、43は操舵ハンドルに設けたフロントマスタシリンダ、44はメインフレーム14に取り付けた燃料タンク、45はリヤフレーム19に取り付けた同乗者用ステップ、46はフロントフェンダ、47はカウル、48はミラー、49はリヤデイスクブレーキユニット、51はメインスタンド、52はサイドスタンドである。」(段落【0017】ないし【0021】)

b)「【0027】
図3は本発明に係るV型4気筒エンジンが搭載されている自動二輪車の要部右側面図であり、エンジン13の下部を構成するクランクケース37の下方に、車両の前後に延びており後側排気管71L、71Rを集合し連結される後集合管74が配置され、この後集合管74に前述した膨張管75が連結され、この膨張管75に触媒管63が連結され、この触媒管63に全体集合管76が連結され、この全体集合管76に、後輪31の右側方で車両の前後に延びている消音器81が連結されている。82はステップブラケット、83はフットブレーキペダルである。
【0028】
図4は本発明に係る自動二輪車に設けられている排気制御装置の平面図であり、図1および図2を併せて参照し説明を行う。
排気制御装置110は、前述した排気装置33を含むものである。
排気制御装置110は、エンジン13に設けた前シリンダ35に前側排気管61L、61Rを接続するとともに後シリンダ36に後側排気管71L、71Rを接続し、前側排気管61L、61Rを前集合管62へ集合させ、後側排気管71L、71Rを車両の長手方向前向きに延びている後集合管74へ集合させ、この後集合管74を平面視略U字状を呈する膨張管75に連結し、この膨張管75を前集合管62とともに、一旦、触媒管63に集中させ、この触媒管63を全体集合管76へ連結、集合させ、この全体集合管76の先端に排気音を小さくする消音器81を接続し、この消音器81に、排気バルブ113を取り付けてなる。
排気管114には、前側排気管61L、61R、前集合管62、後側排気管71L、71R、後集合管74、膨張管75、触媒管63および全体集合管76が含まれる。」(段落【0027】及び【0028】)

c)「【0034】
図6は本発明に係る消音器の内部構造を含む車両の排気制御装置を説明する図である。ただし、排気バルブカバー(図5の符号122)および後部カバー(図5の符号153)は取り外されている。
【0035】
消音器81は、ケース体125と、このケース体125の内部に設けた前セパレータ126と、この前セパレータ126の後方に設けた後セパレータ127と、この後セパレータ127の後方に設け消音器の後部壁としてケース体125の後部を塞ぐリヤプレート121と、を備えている。
【0036】
前後のセパレータ126、127によって、ケース体125の内部は、後方から前方に、順に、第1室131、第2室132および第3室133の3つの室に区画される。前後のセパレータ126、127は、各々平板部材に多数の孔部を開けてなる多孔板であって、排気がこれらの孔部を通過することができるようにした。
【0037】
また、全体集合管(図5の符号76)が連結される排気の入力口135には、連結部材としての口金136が設けられ、この口金136から排気を第1室131に導くフロントパイプ137が第1室131へ延びており、第1室131と外部との間を結び第1室内の排気を大気中に導く第1テールパイプ111Aが設けられ、第3室133と外部との間を結び第3室内の排気を大気中に導く第2テールパイプ111Bが設けられている。第1テールパイプ111Aには、排気バルブ113が取り付けられている。
図中、141は者他フレーム側に取り付けられるステー、142はケース体125を補強する補強パイプである。補強パイプ142の詳細は後述する。
【0038】
すなわち、排気出口としてのテールパイプ111は、一方のテールパイプとしての第1テールパイプ111Aと他方のテールパイプとしての第2テールパイプ111Bとからなり、排気バルブ113は、第1テールパイプ111Aに備えられている。第2テールパイプ111Bは、常時開放されている。
【0039】
第2テールパイプ111Bが常時開放されていれば、第1テールパイプ111Aに設けた排気バルブは、必要時のみ開けるようにすれば良い。
排気バルブ113は、第1テールパイプ111Aのみに設けられているので、テールパイプが1本で排気バルブが常時稼働する構造と比較して、排気バルブ駆動系の省電力化を図ることができ、適切なバルブコントロールをより容易に行うことができる。加えて、稼働率が低く抑えられるので、排気バルブ駆動系の耐久性を高めることができる。
なお、排気バルブを第1テールパイプ111Aに代えて、第2テールパイプ111Bに設けることは差し支えない。
【0040】
図7は図6の作用説明図である。
(a)において、排気の量が所定値より多いときの排気の流れを説明するものであり、排気バルブ113は開放されている。
口金136から入力された排気(1)は、フロントパイプ137を通過して第1室131に入り、大部分の排気は、矢印(11)、(12)の如く導かれ第1テールパイプ111Aから外部に排出される。
【0041】
一部の排気は、第1室131で矢印(2)の方向にターンし、後セパレータ127に開けた多孔部127h・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)を矢印(3)のように通過し、前セパレータ126に開けた多孔部126h・・・を矢印(4)のように通過して第3室133に入り、この第3室133で矢印(5)のようにターンし、第2テールパイプ111Bを通り、矢印(6)のように外部に排出される。この場合、エンジン13から排出された排気の多くは、第2室132および第3室133を経由せずに大気に放出されるので、排気に係る抵抗を低減させることができる。
【0042】
(b)において、排気の量が所定値以下のときの排気の流れを説明するものであり、排気バルブ113は閉じられている。
口金136から入力された排気(1)は、フロントパイプ137を通過して第1室131に入り、第1室131で矢印(2)の方向にターンし、後セパレータ127に開けた多孔部127h・・・を矢印(3)のように通過し、前セパレータ126に開けた多孔部126h・・・を矢印(4)のように通過して第3室133に入り、この第3室133で矢印(5)のようにターンし、第2テールパイプ111Bを通り、矢印(6)のように外部に排出される。この場合に、排気は、全て、第1室131から第3室133を通過するため、高い消音効果を得ることができる。」(段落【0034】ないし【0042】)

(2)上記(1)及び図面から分かること
a)上記(1)a)及びb)並びに図1ないし4の記載によれば、引用文献3には、自動二輪車10における排気制御装置110が記載されていることが分かる。

b)上記(1)a)ないしc)及び図1ないし7の記載を上記a)とあわせてみると、自動二輪車10における排気制御装置110において、後輪31の側方に配置されて排気を外部に排出する消音器81を有することが分かる。

c)上記(1)a)及びc)ないし図1、3及び6の記載によれば、消音器81が、同乗者用ステップ45に支持されることが分かる。

d)上記(1)c)並びに図6、7、9及び10の記載によれば、消音器81のテールパイプ111は、上下に2本配置されていることが分かる。

e)上記(1)c)並びに図6及び7の記載によれば、消音器81は第2室132及び第3室133を有することが分かる。

f)上記(1)c)の「口金136から入力された排気(1)は、フロントパイプ137を通過して第1室131に入り、第1室131で矢印(2)の方向にターンし、後セパレータ127に開けた多孔部127h・・・を矢印(3)のように通過し、前セパレータ126に開けた多孔部126h・・・を矢印(4)のように通過して第3室133に入り、この第3室133で矢印(5)のようにターンし、第2テールパイプ111Bを通り、矢印(6)のように外部に排出される。」(段落【0042】)及び図6及び7の記載を上記e)とあわせてみると、第3室133が最下流側であり、第2室132が上流側であることが分かる。

g)図6及び7の記載を上記e)及びf)とあわせてみると、テールパイプ111のうち第2テールパイプ111Bに連通する最下流側の第3室133よりも後方に上流側の第2室132が配置されることが分かる。

h)上記(1)c)及び図6及び7の記載を上記e)及びf)とあわせてみると、最下流側の第3室133と第2室132とは前セパレータ126により区画され、これら第3室133及び第2室132は、前セパレータ126に形成された多孔部126hにより連通していることが分かる。

(3)引用文献3に記載された技術
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献3には次の技術(以下、「引用文献3に記載された技術」という。)が記載されていると認める。

<引用文献3に記載された技術>

「自動二輪車10における排気制御装置110において、
後輪31の側方に配置されて排気を外部に排出する消音器81を有し、
消音器81が、同乗者用ステップ45に支持され、
消音器81のテールパイプ111は、上下に2本配置され、
消音器81は第2室132及び第3室133を有し、
テールパイプ111のうち第2テールパイプ111Bに連通する最下流側の第3室133よりも後方に上流側の第2室132が配置され、
最下流側の第3室133と第2室132とは前セパレータ126により区画され、これら第3室133及び第2室132は、前セパレータ126に形成された多孔部126hにより連通している技術。」

4.引用文献4について
(1)引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

a)「自動二輪車の後部側面の左右に物入れとしてサイドバツグを配設することが行われ、サイドバツグとして外観、感触の良い、又収納する物品の形状、大きさにある程度の追従性のある布や柔かい合成樹脂シート、合成皮革等を用いたソフトバツクが用いられる。」(明細書第1ページ第18行ないし第2ページ第3行)

b)「第1図はバツグを取り付けた状態の自動二輪車1の説明的斜視図でその概略を説明すると、フレーム2前端の不図示のヘツドチユーブを介して前輪4を支持するフロントフオーク3を操向自在に設け、上部にはハンドル5を備え、これの前部にはヘツドライト6を備える。フレーム2の前部下部にはエンジン7を搭載し、上部には燃料タンク8を配設し、タンク8の後方にはシートレール2aを介してシート9を延設搭載し、図中10は不図示のリヤフォークでリヤクツシヨンユニツト11を介してフレーム側に懸架された後輪を、又12はエンジン7から導出された排気管13に接続され、後輪10の高さ方向中間部側方に配設されたマフラである。
以上の自動二輪車1の後部両側、具体的にはシート9の後部両側にサイドバツグ14,14を垂下する如く配設し、バツグ14,14はシート9の後部上面を横断する如く設けたバンド15等で取り付けられる。
バツグ14は布、合成樹脂シート、合成皮革その他の柔かいシート状のものを箱形に縫着、高周波溶着等によつて形成したものからなる。バッグ14は自動二輪車1に取り付けた状態で前後方向から視認した状態において無積載状態下で第2図の如く形成する。
即ち、バツグ14は車体に近い側の内側片141の高さ方向の長さを長く設定し、車体から遠く、内側片141と向い合うように設けられる外側片142の高さ方向の長さを短かく設定する。以上の内・外の側片141,142の高さ方向の位置は等しくし、従つて上片143は略水平をなす。以上により内側片141の下端部144は低く、外側片142の下端部145は高い位置に位置し、下端部144と145間を底片146で連結する。かかる底片146は内・外側片141,142下端部144,145の高低差により外方に上傾する如く斜めに設けられることとなり、内・外側片141,142の前後と上片143,底片146間に前後の端片147を設け、箱状体を形成し、図中148は中間上部の前後端片、外側片に設けられたフアスナーで、これを開けてフアスナー148上方を蓋体149として用い、蓋体の構造は図示に限られず任意であり、上片143の三辺をフアスナーで開け得るようにしても良い。
次にその作用、効果を述べると、バツグ14内に荷物16を収納すると、柔軟材からなるバツグ14は底片146が下がり、外側片142は内側片141と異つて上端での拘束がないためこれにつれて下がり、内・外側片141,142の高さ方向の長短の差によって撓曲して底片146が略水平となり、一方上片143は外側片142が下がる結果外側に下傾する如く傾斜する。即ち荷物16の底片146への荷重で内側片141下端144を支点として外側片142下端145と該下端144をつなぐ底片146は略水平となる如く下がり、第3図の如くなる。従つて従来の如く外側片下端が極端に下がつて底片が外側下方に傾斜することがなく、上片が斜めで底片が略水平の外観上安定した形状を実現することができる。又底片が極端に傾斜しないためマフラ12とバツグ底片との接触も防止できる。」(明細書第3ページ第9行ないし第6ページ第7行)

c)「ところで底片146の下面に耐熱性のゴム等の防熱板17、或はシートを貼設し、バツグ14の底片146が荷物収納で下がった場合にマフラ12に接触しても耐熱保護するようにした実施例を第4図に示した。」(明細書第6ページ第8ないし12行)

(2)上記(1)及び図面から分かること
a)上記(1)b)及び図1ないし3の記載によれば、引用文献4には、自動二輪車1におけるマフラ12及び排気管13が記載されていることが分かる。

b)上記(1)a)及びb)並びに図1ないし3の記載によれば、自動二輪車1は、後部の側部に物入れとしてのサイドバツグ14,14を備えることが分かる。

c)上記(1)b)及び図1の記載によれば、後輪10の側方に配置されて排気ガスを外部に排出するマフラ12の後端面が、サイドバツグ14,14の前側の端片147よりも後ろ側に位置していることが分かる。

d)上記(1)b)及びc)並びに図1ないし4の記載によれば、マフラ12の上部の後端縁が、サイドバツグ14,14の底片146よりも下方に位置していることが分かる。

e)上記(1)c)及び図4の記載によれば、サイドバツグ14,14の底片146に、サイドバツグ14,14を耐熱保護する防熱板17が設けられていることが分かる。

(3)引用文献4に記載された事項
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献4には次の事項(以下、「引用文献4に記載された事項」という。)が記載されていると認める。

<引用文献4に記載された事項>

「後部の側部に物入れとしてのサイドバツグ14,14を備えた自動二輪車1におけるマフラ12及び排気管13において、
後輪10の側方に配置されて排気ガスを外部に排出するマフラ12の後端面が、サイドバツグ14,14の前端面よりも後ろ側に位置しており、
マフラ12の上部の後端縁が、サイドバツグ14,14の底面よりも下方に位置し、
サイドバツグ14,14の底片146に、サイドバツグ14,14を耐熱保護する防熱板17が設けられている点。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用文献1に記載された発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、引用文献1に記載された発明の「物入れとしての」は本願発明1の「物品収納用の」に、以下同様に、「サドルバッグ111L、111R」は「パニヤ」に、「自動二輪車10」は「自動二輪車」に、「排気装置33」は「排気装置」に、「後輪31」は「後輪」に、「消音器47」は「マフラ」に、「同乗者ステップ58L、58R及び係止アーム117」は「同乗者ステップを支持するステップステー」にそれぞれ相当する。

引用文献1に記載された発明の「後輪31の側方に配置されて排気ガスを外部に排出する消音器47の後端面が、サドルバッグ111L、111Rの前端面とほぼ同一面上に位置しており」と、本願発明1の「後輪の側方に配置されて排気ガスを外部に排出するマフラの後端面が、パニヤの前端面よりも前側に位置しており」とは、「後輪の側方に配置されて排気ガスを外部に排出するマフラの後端面が、パニヤの前端面と所定の関係で位置しており」という限りにおいて一致する。

引用文献1に記載された発明の「消音器47の上部の後端縁が、サドルバッグ111L、111Rの底面とほぼ同じ高さに位置し」と、本願発明1の「マフラの上部の後端縁が、パニヤの底面よりも上方に位置し」とは、「マフラの上部の後端縁が、パニヤの底面と所定の関係で位置し」という限りにおいて一致する。

引用文献1に記載された発明の「サドルバッグ111L、111Rの前部が、同乗者ステップ58L、58R及び係止アーム117に支持され」と、本願発明1の「パニヤの前部およびマフラが、同乗者ステップを支持するステップステーに支持され」とは、「パニヤの前部が、同乗者ステップを支持するステップステーに支持され」という限りにおいて一致する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「後部の側部に物品収納用のパニヤを備えた自動二輪車における排気装置であって、
後輪の側方に配置されて排気ガスを外部に排出するマフラの後端面が、パニヤの前端面と所定の関係で位置しており、
マフラの上部の後端縁が、パニヤの底面と所定の関係で位置し、
パニヤの前部が、同乗者ステップを支持するステップステーに支持される自動二輪車の排気装置。」

<相違点1>
マフラの後端面とパニヤの前端面との所定の関係及びマフラの上部の後端縁とパニヤの底面との所定の関係に関して、
本願発明1においては、「後輪の側方に配置されて排気ガスを外部に排出するマフラの後端面が、パニヤの前端面よりも前側に位置しており」、「マフラの上部の後端縁が、パニヤの底面よりも上方に位置し」ているのに対し、
引用文献1に記載された発明においては、後輪31の側方に配置されて排気ガスを外部に排出する消音器47の後端面が、サドルバッグ111L、111Rの前端面とほぼ同一面上に位置しており、消音器47の上部の後端縁が、サドルバッグ111L、111Rの底面とほぼ同じ高さに位置している点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
「パニヤの前部が、同乗者ステップを支持するステップステーに支持され」に関して、
本願発明1においては、「パニヤの前部およびマフラが、同乗者ステップを支持するステップステーに支持され」ているのに対し、
引用文献1に記載された発明においては、消音器47が、同乗者ステップ58L、58R及び係止アーム117に支持されているか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。

<相違点3>
本願発明1においては、「マフラの出口パイプは、上下に複数配置され、上側の出口パイプを、排気ガスがパニヤよりも下方に排出されるように湾曲させ、マフラは複数の膨張室を有し、出口パイプに連通する最下段の膨張室よりも後方に少なくとも一つの上流側膨張室が配置され、最下段の膨張室と上流側膨張室とは隔壁により区画され、これら両膨張室は、隔壁に形成された連通口により連通している」のに対し、
引用文献1に記載された発明においては、消音器47がそのような構成を有するか否か不明である点(以下、「相違点3」という。)。

(2)判断
まず、上記相違点1及び3について検討する。
本願発明1は、マフラとパニヤとの位置関係について、「マフラの後端面が、パニヤの前端面よりも前側に位置しており」、「マフラの上部の後端縁が、パニヤの底面よりも上方に位置し」ていることを発明特定事項としている。そして、そのようなマフラとパニヤとの位置関係では、マフラの前後方向長さが短くなるところ、排気通路の長さを確保し、十分な消音効果を得るために、マフラの構造について、「マフラの出口パイプは、上下に複数配置され」、「マフラは複数の膨張室を有し、出口パイプに連通する最下段の膨張室よりも後方に少なくとも一つの上流側膨張室が配置され、最下段の膨張室と上流側膨張室とは隔壁により区画され、これら両膨張室は、隔壁に形成された連通口により連通している」とした上で、更に「上側の出口パイプを、排気ガスがパニヤよりも下方に排出されるように湾曲させ」ることを採用している。
このように、本願発明1においては、マフラとパニヤとの位置関係とマフラの構造とは、一体不可分なものといえる。

他方、引用文献1に記載された発明は、消音器47すなわちマフラと、サドルバッグ111L、111Rすなわちパニヤとの位置関係について、消音器47の後端面が、サドルバッグ111L、111Rの前端面とほぼ同一面上に位置しており、消音器47の上部の後端縁が、サドルバッグ111L、111Rの底面とほぼ同じ高さに位置するものであるが、引用文献1には、消音器47の後端面が、サドルバッグ111L、111Rの前端面よりも前側に位置しており、消音器47の上部の後端縁が、サドルバッグ111L、111Rの底面よりも上方に位置していることについて、明確には記載されていない。
また、引用文献2及び3には、本願発明1のパニヤに対応するものが記載されておらず、マフラとパニヤの位置関係も記載されていない。

してみると、引用文献2及び3に、少なくともマフラとパニヤの位置関係が記載されていないことに鑑みると、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に接した当業者であっても、引用文献1に記載された発明において、消音器47とサドルバッグ111L、111Rとの位置関係について、本願発明1と同様にした上で、更に、消音器47の構造について、本願発明1と同様にすることは、容易に想到できたとはいえない。
すなわち、一体不可分な本願発明1のマフラとパニヤの位置関係及びマフラの構造に係る発明特定事項は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術から当業者が容易に導き出すことができたとはいえない。

また、相違点1及び3に係る本願発明1の発明特定事項は、引用文献4にも記載されていない。

したがって、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された技術、引用文献3に記載された技術及び引用文献4に記載された事項を適用することにより、相違点1及び3に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到することができたとはいえない。

したがって、本願発明1は、上記相違点2について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術、引用文献3に記載された技術及び引用文献4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたとはいえない。

2.本願発明2ないし6について

本願発明2ないし6は、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本願発明1と同じ理由で、当業者が容易に発明できたとはいえない。

第6 原査定について
平成29年1月19日の手続補正により、本願発明1ないし6は、「マフラの後端面が、パニヤの前端面よりも前側に位置しており」、「マフラの上部の後端縁が、パニヤの底面よりも上方に位置し」、「マフラの出口パイプは、上下に複数配置され、上側の出口パイプを、排気ガスがパニヤよりも下方に排出されるように湾曲させ、マフラは複数の膨張室を有し、出口パイプに連通する最下段の膨張室よりも後方に少なくとも一つの上流側膨張室が配置され、最下段の膨張室と上流側膨張室とは隔壁により区画され、これら両膨張室は、隔壁に形成された連通口により連通している」との事項を含むものとなったから、原査定において引用された引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-11 
出願番号 特願2015-515829(P2015-515829)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 松下 聡
西山 智宏
発明の名称 自動二輪車の排気装置  
代理人 中田 健一  
代理人 金子 大輔  
代理人 野田 雅士  
代理人 杉本 修司  
代理人 堤 健郎  
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