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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G02F
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G02F
管理番号 1332254
異議申立番号 異議2016-701136  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-13 
確定日 2017-08-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5935810号発明「IPSモード型液晶表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5935810号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲とおり、訂正後の請求項[1ないし12]について訂正することを認める。 特許第5935810号の請求項1、3、6、9、10、12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5935810号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2012年9月19日(優先権主張2011年12月19日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年15月20日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、同年12月13日付けで特許異議申立人山内生平より請求項1、3、6、9、10、12に対して特許異議の申立てがされ、平成29年3月10日(発送日3月17日)付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である同年5月16日に意見書の提出及び訂正請求がなされたものである。
そして、特許異議申立人に「特許の取消しの理由を記載した書面(取消理由通知の写し)」、「訂正の請求書及びこれに添付された訂正した特許請求の範囲の副本」及び「取消理由通知に対応する特許権者の意見書副本」を同年5月19日(発送日5月24日)付けで送付するとともに、期間を定めて意見を提出する機会を与えたが、意見書は提出されなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成29年5月16日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)は、特許第5935810号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正することを求めるものであって、以下の訂正事項1ないし訂正事項6からなる。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と負の固有複屈折を有するポリマーを含む第2の光学異方性層とが積層されてなる構造を有し、」と記載されているのを、
「正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と負の固有複屈折を有するポリマーを含む第2の光学異方性層とが積層されてなる構造を有し、かつ、前記負の固有複屈折を有するポリマーが、ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するものであり、」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記第1の光学異方性層が、前記Roおよび前記Rthについて、
【数3】

を満足する、請求項1に記載のIPSモード型液晶表示装置。」と記載されているのを、
「IPSモード型液晶セルと、
前記IPSモード型液晶セルを挟持する第1の偏光板および第2の偏光板と、
を有するIPSモード型液晶表示装置であって、
前記第1の偏光板が、前記IPSモード型液晶セルの視認側に位置し、かつ、視認側から第1の偏光板保護フィルム、偏光子、および第2の偏光板保護フィルムを備え、
前記第2の偏光板が、前記IPSモード型液晶セルの視認側とは反対の側に位置し、かつ、視認側から第3の偏光板保護フィルム、偏光子、および第4の偏光板保護フィルムを備え、
前記第2の偏光板保護フィルムが、30?60μmの膜厚を有し、かつ、正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と負の固有複屈折を有するポリマーを含む第2の光学異方性層とが積層されてなる構造を有し、かつ、前記第1の光学異方性層が、前記Roおよび前記Rthについて、
【数3】

を満足し、
前記第1の偏光板保護フィルム、前記第3の偏光板保護フィルム、および前記第4の偏光板保護フィルムの膜厚がそれぞれ10?30μmであり、
前記第2の偏光板保護フィルムが、下記数式(1)および下記数式(2):
【数1】

(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
でそれぞれ表されるRoおよびRthについて、
【数2】

を満足する、IPSモード型液晶表示装置。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「前記負の固有複屈折を有するポリマーが、ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するものである、請求項1?5のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。」と記載されているのを、
「前記負の固有複屈折を有するポリマーが、ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するものである、請求項2項に記載のIPSモード型液晶表示装置。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「前記負の固有複屈折を有するポリマーにおける前記ビニル化合物由来の構成単位および前記芳香族マレイミド由来の構成単位の質量比が、80:20?95:5(ビニル化合物由来の構成単位:芳香族マレイミド由来の構成単位)である、請求項6に記載のIPSモード型液晶表示装置。」と記載されているのを、
「前記負の固有複屈折を有するポリマーにおける前記ビニル化合物由来の構成単位および前記芳香族マレイミド由来の構成単位の質量比が、80:20?95:5(ビニル化合物由来の構成単位:芳香族マレイミド由来の構成単位)である、請求項1又は6に記載のIPSモード型液晶表示装置。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に「前記芳香族マレイミドがN-フェニルマレイミドを含む、請求項6または7に記載のIPSモード型液晶表示装置。」と記載されているのを、
「前記芳香族マレイミドがN-フェニルマレイミドを含む、請求項1、6または7に記載のIPSモード型液晶表示装置。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に「前記ビニル化合物がスチレンを含む、請求項6?8のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。」と記載されているのを、
「前記ビニル化合物がスチレンを含む、請求項1、6?8のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項及び独立特許要件

(1)訂正事項1
ア 訂正事項1は、訂正前の「負の固有複屈折を有するポリマー」を「ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するもの」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 本件特許明細書の【0083】には「…負の固有複屈折を有するポリマーは、延伸時に延伸方向と直交方向の屈折率が大きくなる特性を有するポリマーであれば特に限定されないが、複数の材料を含んだ結果として負の固有複屈折を発現すればよいことは、上述した正の固有複屈折を有するポリマーと同様である。特に透明性が高く熱可塑性のあるものが好ましい。さらに好ましくは、負の固有複屈折を有するポリマーは、ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するものである。」と記載されていることから、上記訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2が、請求項1の記載を引用する記載であったところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式に書き改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正後の請求項6が、請求項2の記載のみを引用するように訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4
ア 訂正事項4は、訂正後の請求項7が、「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正事項1及び訂正事項3により記載が訂正された請求項1、6の記載を引用するように訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項4は、「特許異議の申立がされていない請求項」に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項で規定する要件、つまり、訂正後の請求項7に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。

(5)訂正事項5
ア 訂正事項5は、訂正後の請求項8が、「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正事項1、訂正事項3及び訂正事項4により記載が訂正された請求項1、6、7の記載を引用するように訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項5は、「特許異議の申立がされていない請求項」に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項で規定する要件、つまり、訂正後の請求項8に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、訂正後の請求項9が、「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正事項1、訂正事項3ないし訂正事項5により記載が訂正された請求項1、6ないし8の記載を引用するように訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(7)一群の請求項
訂正前の請求項1ないし12は、訂正前の請求項2ないし12が、請求項1の記載を引用し、訂正事項1により記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前において「一群の請求項」に該当するものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項ごとになされたものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項の規定に適合する。

3 独立特許要件
上記2で指摘したとおり、訂正事項4及び訂正事項5は、「特許異議の申立がされていない請求項」に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するから、訂正後の請求項7及び8に記載されている事項により特定される発明(以下、それぞれを、「訂正発明7」及び「訂正発明8」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、訂正発明7及び訂正発明8が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)刊行物に記載された発明
ア 特開2008-112172号公報(甲第1号証)に記載された発明
甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる(なお、下線は、当審で付した。)。

「液晶層を挟持する一対の基板を具備した液晶セルと、
液晶セルの基板の両側に配置した偏光板と、を有するIPSモードの液晶表示装置であって、
光学補償偏光板が、
IPSモードの液晶セルの視認側に配置され、かつ、偏光子の両側に膜厚10?120μmの透明保護フィルムを積層した偏光板と、及び当該偏光板の液晶セル側に積層された膜厚2?200μmの光学補償層とを備え、
前記透明保護フィルムが、|正面レターデーション値Re|≦10、かつ、|膜厚方向のレターデーション値Rth|≦25のセルローストリアセテートフィルムであり、
前記光学補償層が、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートのように固有複屈折値が負の高分子ポリマーフィルムの複屈折性フィルムである、IPSモードの液晶表示装置。」

イ 特開2006-072309号公報(甲第2号証)に記載された発明
甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「IPSモードの液晶セルと、
液晶セルの視認側に配置された光学フィルムであって、偏光子の両側に厚さ1?500μmの透明保護フィルムが配置された偏光板と液晶セルに近い側となるように配置された厚さ20?300μmの位相差フィルムとを備えた光学フィルムと、
液晶セルのバックライト側に配置された、偏光子の両面に透明保護フィルムが配置された偏光板と、を有する液晶パネルを有するIPSモード型液晶表示装置であって、
前記偏光板は、偏光子と、前記透明保護フィルムである、偏光子の一方の面に接着された未延伸のノルボルネン系ポリマーの開環重合体を水素添加した樹脂を含む高分子フィルムと、偏光子の他方の面に接着されたトリアセチルセルロースフィルムと、を備え、
前記位相差フィルムは、ノルボルネン系ポリマーの開環重合体を水素添加した樹脂を含む高分子フィルムを延伸したものであり、上記液晶セルに近い側となるように、上記未延伸のノルボルネン系ポリマーの開環重合体を水素添加した樹脂を含む高分子フィルムの表面に接着されており、
さらに、
前記位相差フィルムは、下記式(1)及び式(2)を満足し、
前記透明保護フィルムは、下記式(3)及び式(4)を満足する、IPSモード型液晶表示装置。
100nm≦(nx-ny)・d≦350nm ・・・(1)
0.1≦(nx-nz)/(nx-ny)≦0.9 ・・・(2)
0nm<(nx-ny)・d≦5nm ・・・(3)
0nm<(nx-nz)・d≦15nm ・・・(4) 」

ウ 特開2011-076026号公報(甲第3号証)に記載された発明
甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。

「IPSモードの液晶セルと、
IPSモードの液晶セルの一方の面に貼り合わせるフロントフィルム及び他の面に貼り合わせるリアフィルムと、を有するIPS方式の液晶表示装置であって、
前記フロントフィルムは、
トリアセチルセルロースからなるTAC層と、偏光子と、ノルボルネン樹脂からなるゼオノアフィルムと、光学積層体とをこの順で貼り合わせたものであり、光学積層体の面で液晶セルに貼り合わされ、
前記リアフィルムは、
アクリル樹脂からなる低レレターデーションフィルムと、偏光子と、トリアセチルセルロースからなるTAC層とをこの順で貼り合わせたものであり、
偏光子に設ける透明保護フィルムの厚みは、5?150μmであり、
前記光学積層体は、
固有複屈折値が負の樹脂からなるA層と、ポリカーボーネート重合体又は脂環式オレフィン重合体を含む透明な樹脂からなるB層とを備え、その総厚は25μm以上60μm以下であり、正面レターデーションの平均は、30nm以上150nm以下である、IPS方式の液晶表示装置。」

エ 特開2006-265309号公報(甲第5号証)、特開2008-287218号公報(甲第6号証)及び特開2010-54750号公報(甲第7号証)には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

「Nz係数、正面レターデーション(Re)及び厚み方向のレターデーション(Rth)との間には、
Nz=0.5+(Rth/Re) の関係があること。」

オ 特開2010-26484号公報(甲第8号証)、特開2011-145682号公報(甲第9号証)及び特開2011-84058号公報(第10号証)には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

「クラレビニロンフィルは、株式会社クラレ製の偏光板の商品名であること。」

(2)訂正発明1について
ア 訂正発明1と、甲1発明ないし甲3発明を対比する。
(ア)甲1発明の「『視認側に配置され』た『偏光子』の『液晶セル側』の面」には、「『セルローストリアセテートフィルム』である『透明保護フィルム』」と「『ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートのように固有複屈折値が負の高分子ポリマーフィルム』である『光学補償層』」が積層されている。

ここで、上記「セルローストリアセテートフィルム」は、正の固有複屈折を有するポリマーからなることから、甲1発明の「偏光子」には、「正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と負の固有複屈折を有するポリマーを含む第2の光学異方性層」とが積層されていることになる。

(イ)甲2発明の「『視認側に配置され』た『偏光子』の『液晶セル』に近い面」には、「『未延伸のノルボルネン系ポリマーの開環重合体を水素添加した樹脂を含む高分子フィルム』である『透明保護フィルム』」と「『ノルボルネン系ポリマーの開環重合体を水素添加した樹脂を含む高分子フィルムを延伸した』「『位相差フィルム』」が積層されている。

ここで、上記「ノルボルネン系ポリマー」は、正の固有複屈折を有するポリマーであるから、甲2発明の「偏光子」には、「正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と正の固有複屈折を有するポリマーを含む第2の光学異方性層」とが積層されていることになる。

(ウ)甲3発明の「『フロントフィルム』の『偏光子』の『液晶セル』側の面」には、「ノルボルネン樹脂からなるゼオノアフィルム」と「『固有複屈折値が負の樹脂からなるA層と、ポリカーボーネート重合体又は脂環式オレフィン重合体を含む透明な樹脂からなるB層』を含む『光学積層体』」が積層されている。

ここで、上記「ノルボルネン樹脂」及び「ポリカーボーネート重合体又は脂環式オレフィン重合体」は、正の固有複屈折を有するポリマーであるから、甲3発明の「偏光子」には、「正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と負の固有複屈折を有するポリマーを含む第2の光学異方性層」とが積層されていることになる。

(エ)そうすると、訂正発明1と、甲1発明ないし甲3発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「IPSモード型液晶セルと、
前記IPSモード型液晶セルを挟持する第1の偏光板および第2の偏光板と、を有するIPSモード型液晶表示装置であって、
前記第1の偏光板が、前記IPSモード型液晶セルの視認側に位置し、かつ、視認側から第1の偏光板保護フィルム、偏光子、および第2の偏光板保護フィルムを備え、
前記第2の偏光板保護フィルムが、正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と第2の光学異方性層とが積層されてなる構造を有する、IPSモード型液晶表示装置。」

また、訂正発明1と、甲1発明ないし甲3発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点1>
「第2の偏光板保護フィルム」の膜厚に関して、
訂正発明1は、「30?60μmの膜厚を有し」ているのに対して、
甲1発明ないし甲3発明は、「30?60μmの膜厚」であるか否か不明である点。

<相違点2>
「第2の光学異方性層」のポリマーに関して、
訂正発明1は、「負の固有複屈折を有するポリマー」であって、「ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するもの」であるのに対して、
甲1発明ないし甲3発明は、ポリマーがそのようなものであるか否か不明である点。

イ 判断
上記<相違点1>及び<相違点2>について検討する。
(ア)訂正発明1において、「第2の偏光板保護フィルム」の膜厚を「30?60μm」とする技術的意義は、本件特許明細書の【0006】、【0072】及び【0262】等の記載によれば、リワーク性(貼合したフィルムを剥離して再度貼合すること)の向上、パネル点灯時の熱によるムラの発生防止及び視野角の変化を防止することにあるものと解される。

(イ)一方、甲1発明ないし甲3発明において、「第2の偏光板保護フィルム」として採用し得る厚みの範囲は、各層の上限と下限から単純に計算すると、甲1発明では「12?320μm」、甲2発明では「21?800μm」、甲3発明では「30?210μm」となる。
しかしながら、甲第1号証ないし甲第3号証には、各層の厚みが個別に記載されているだけで、「偏光子」の一方の面に貼り付けるフィルム全体の厚みをどの程度に設定するかについては記載されておらず、特許異議申立人の提出した他の各甲号証を見ても、リワーク性等を考慮してフィルムの厚みを「30?60μm」とすることを示唆する記載のないことから、甲1発明ないし甲3発明において、フィルム全体の厚み、つまり、「第2の偏光板保護フィルム」の厚みを「30?60μm」とする動機がない。

(ウ)また、甲第1号証ないし甲第3号証には、負の固有複屈折を有するポリマーとして「ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するもの」は記載されておらず、特許異議申立人の提出した他の各甲号証を見ても、それを示唆する記載のないことから、甲1発明ないし甲3発明において、「第2の光学異方性層」のポリマーとして、「ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するもの」を選択する動機がない。

(エ)してみると、訂正発明1は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(3)訂正発明2について
ア 訂正発明2と、甲1発明ないし甲3発明を対比する。
(ア)甲1発明の「『セルローストリアセテートフィルム』である『透明保護フィルム』」は、正の固有複屈折を有するポリマーであるから、訂正発明2の「正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層」に相当する。

(イ)甲2発明の「『未延伸のノルボルネン系ポリマーの開環重合体を水素添加した樹脂を含む高分子フィルム』である『透明保護フィルム』」又は「『ノルボルネン系ポリマーの開環重合体を水素添加した樹脂を含む高分子フィルムを延伸した』『位相差フィルム』」は、正の固有複屈折を有するポリマーであるから、訂正発明2の「正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層」に相当する。

(ウ)甲3発明の「ノルボルネン樹脂からなるゼオノアフィルム」は、正の固有複屈折を有するポリマーであるから、訂正発明2の「正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層」に相当する。

(エ)そうすると、訂正発明2と、甲1発明ないし甲3発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「IPSモード型液晶セルと、
前記IPSモード型液晶セルを挟持する第1の偏光板および第2の偏光板と、を有するIPSモード型液晶表示装置であって、
前記第1の偏光板が、前記IPSモード型液晶セルの視認側に位置し、かつ、視認側から第1の偏光板保護フィルム、偏光子、および第2の偏光板保護フィルムを備え、
前記第2の偏光板保護フィルムが、正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と第2の光学異方性層とが積層されてなる構造を有する、IPSモード型液晶表示装置。」

また、訂正発明2と、甲1発明ないし甲3発明とは、上記<相違点1>及び<相違点2>に加えて、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点3>
「第1の光学異方性層」のRo及びRthについて、
訂正発明2は、「【数3】

を満足する」のに対して、
甲1発明ないし甲3発明は、【数3】の式を満足するか否か不明である点。

イ 判断
(ア)上記<相違点1>及び<相違点2>について検討する。
上記「(2)イ 判断」を参照。

(イ)上記<相違点3>について検討する。
a 訂正発明2において、「第1の光学異方性層」のRo及びRthを【数3】の式を満足するように設定する技術的意義は、本件特許明細書の【0005】の「…IPS型液晶表示装置に用いられる位相差フィルムには、『面内リターデーション(Ro)の値が大きく厚み方向のリターデーション(Rt)の値が小さい』ことが求められる。しかしながら、面内リターデーション(Ro)の値を大きくするために延伸処理を行うと、厚み方向のリターデーション(Rt)の値も同様に増加してしまい、面内および厚み方向の双方において望ましい位相差値を有する位相差フィルムを作製することは困難であった。」、【0116】の「…基材層(第1の光学異方性層)の位相差と負の固有複屈折を有するポリマーを含む層(第2の光学異方性層)の位相差とを独立して制御することが可能となる。」及び【0321】の「…Ro1とRo2とを足し合わせて積層体の面内方向リターデーションの値を算出し、Rt1とRt2とを足し合わせて積層体の厚み方向のリターデーションの値を算出した。…」等の記載によれば、「第2の光学異方性層」のRo及びRtと足し合わせた際に、「第2の偏光板保護フィルム」のRoの値が大きく、Rthの値が小さくなるようにするためであると解される。

b 一方、甲1発明ないし甲3発明は、フィルムを積層した際に、全体のRo及びRthを所望の値に制御するものではなく、甲第1ないし3号証、特許異議申立人の提出した他の各甲号証を見ても、そのことを示唆する記載のないことから、甲1発明ないし甲3発明において、「第1の光学異方性層」のRo及びRthを【数3】の式を満足するように設定する動機がない。

c してみると、訂正発明2は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(4)訂正発明7について
訂正発明7は、訂正発明1又は訂正発明6の発明特定事項を備えるものであるところ、訂正発明6は、訂正発明2の発明特定事項を備えるものである。
そうすると、訂正発明7は、訂正発明1又は訂正発明2の発明特定事項を常に備えるものであるといえるから、上記(2)及び(3)で検討したのと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(5)訂正発明8について
訂正発明8は、訂正発明1、訂正発明6又は訂正発明7の何れかの発明特定事項を備えるものであるところ、訂正発明6は訂正発明2の発明特定事項を備え、訂正発明7は訂正発明1又は訂正発明2の発明特定事項を備えるものである。
そうすると、訂正発明8は、訂正発明1又は訂正発明2の発明特定事項を常に備えるものであるといえるから、上記(2)及び(3)で検討したのと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(6)独立特許要件についてのまとめ
訂正発明7及び訂正発明8は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
他に、訂正発明7及び訂正発明8が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由を見出すことはできない。
よって、訂正発明7及び訂正発明8に係る訂正事項4及び訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合する。

4 訂正のまとめ
訂正事項1ないし訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号、同条第9項で準用する特許法第126条第4項から第6項、同条第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合する。
また、訂正前の請求項2に係る訂正事項2は、引用関係の解消を目的とするものであって、その訂正は認められるものであるところ、特許権者から、当該請求項についての訂正が認められる場合は、請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項[1ないし12]について訂正することを認める。

第3 当審の判断
1 本件発明
本件訂正は、上記「第2 訂正の適否」で検討したように認められるものであるから、本件訂正により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下、本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1、3、6、9、10、12に係る特許に対して平成29年3月10日付けで特許権者に通知した取消理由通知に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。

「【理由A-1】
本件特許の請求項1、10及び12に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第1号証)に記載された発明であるから、本件発明1、10及び12に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである。

【理由A-2】
本件発明1、3、6、9、10及び12は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第1ないし3号証、甲第5ないし7号証)に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、3、6、9、10及び12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである。

【理由B-1】
本件発明1、3、6、9、10及び12は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第2号証)に記載された発明であるから、本件発明1、3、6、9、10及び12に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである。

【理由B-2】
本件発明1、3、6、9、10及び12は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第1ないし3号証、甲第5ないし7号証)に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、3、6、9、10及び12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである。

【理由C-1】
本件発明1及び10は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第3号証)に記載された発明であるから、本件発明1及び10に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである。

【理由C-2】
本件発明1、3、6、9、10及び12は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第1ないし3号証、甲第5ないし10号証)に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、3、6、9、10及び12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである。


刊行物
(1)甲第1号証:特開2008-112172号公報
(2)甲第2号証:特開2006-072309号公報
(2)甲第3号証:特開2011-076026号公報
(4)甲第4号証:特許第5935810号公報(本件特許公報)
(5)甲第5号証:特開2006-265309号公報
(6)甲第6号証:特開2008-287218号号公報
(7)甲第7号証:特開2010-054750号公報
(8)甲第8号証:特開2010-026484号公報
(9)甲第9号証:特開2011-145682号公報
(10)甲第10号証:特開2011-084058号公報」

3 対比・判断
なお、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明、一致点及び相違点については、上記「第2 訂正の適否 3 独立特許要件」を参照。

(1)本件発明1について
本件発明1は、上記「第2 訂正の適否 3 独立特許要件(2)」において検討したのと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(2)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を備えるものであるから、上記「第2 訂正の適否 3 独立特許要件(2)(3)」において検討したのと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(3)本件発明6について
本件発明6は、本件発明2の発明特定事項を備えるものであるから、上記「第2 訂正の適否 3 独立特許要件(3)」において検討したのと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(4)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1、本件発明6ないし本件発明8の何れかの発明特定事項を備えるものであるところ、本件発明6ないし本件発明8は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明9は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を常に備えるものであるといえるから、上記「第2 訂正の適否 3 独立特許要件(2)(3)」において検討したのと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(5)本件発明10について
本件発明10は、本件発明1ないし本件発明9の何れかの発明特定事項を備えるものであるところ、本件発明3ないし本件発明9は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明10は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を常に備えるものであるといえるから、上記「第2 訂正の適否 3 独立特許要件(2)(3)」において検討したのと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(6)本件発明12について
本件発明12は、本件発明1ないし本件発明11の発明特定事項を備えるものであるところ、本件発明3ないし本件発明11は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明12は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を常に備えるものであるといえるから、上記「第2 訂正の適否 3 独立特許要件(2)(3)」において検討したのと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一であると認めることはできず、また、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

4 まとめ
本件発明1、3、6、9、10、12に係る発明は、取消理由通知に記載した理由、つまり、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。

第4 むすび
本件の請求項1、3、6、9、10、12に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1、3、6、9、10、12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPSモード型液晶セルと、
前記IPSモード型液晶セルを挟持する第1の偏光板および第2の偏光板と、
を有するIPSモード型液晶表示装置であって、
前記第1の偏光板が、前記IPSモード型液晶セルの視認側に位置し、かつ、視認側から第1の偏光板保護フィルム、偏光子、および第2の偏光板保護フィルムを備え、
前記第2の偏光板が、前記IPSモード型液晶セルの視認側とは反対の側に位置し、かつ、視認側から第3の偏光板保護フィルム、偏光子、および第4の偏光板保護フィルムを備え、
前記第2の偏光板保護フィルムが、30?60μmの膜厚を有し、かつ、正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と負の固有複屈折を有するポリマーを含む第2の光学異方性層とが積層されてなる構造を有し、かつ、前記負の固有複屈折を有するポリマーが、ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するものであり、
前記第1の偏光板保護フィルム、前記第3の偏光板保護フィルム、および前記第4の偏光板保護フィルムの膜厚がそれぞれ10?30μmであり、
前記第2の偏光板保護フィルムが、下記数式(1)および下記数式(2):
【数1】

(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
でそれぞれ表されるRoおよびRthについて、
【数2】

を満足する、IPSモード型液晶表示装置。
【請求項2】
IPSモード型液晶セルと、
前記IPSモード型液晶セルを挟持する第1の偏光板および第2の偏光板と、
を有するIPSモード型液晶表示装置であって、
前記第1の偏光板が、前記IPSモード型液晶セルの視認側に位置し、かつ、視認側から第1の偏光板保護フィルム、偏光子、および第2の偏光板保護フィルムを備え、
前記第2の偏光板が、前記IPSモード型液晶セルの視認側とは反対の側に位置し、かつ、視認側から第3の偏光板保護フィルム、偏光子、および第4の偏光板保護フィルムを備え、
前記第2の偏光板保護フィルムが、30?60μmの膜厚を有し、かつ、正の固有複屈折を有するポリマーを含む第1の光学異方性層と負の固有複屈折を有するポリマーを含む第2の光学異方性層とが積層されてなる構造を有し、かつ、前記第1の光学異方性層が、前記Roおよび前記Rthについて、
【数3】

を満足し、
前記第1の偏光板保護フィルム、前記第3の偏光板保護フィルム、および前記第4の偏光板保護フィルムの膜厚がそれぞれ10?30μmであり、
前記第2の偏光板保護フィルムが、下記数式(1)および下記数式(2):
【数1】

(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
でそれぞれ表されるRoおよびRthについて、
【数2】

を満足する、IPSモード型液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2の光学異方性層が、前記Roおよび前記Rthについて、
【数4】

を満足する、請求項1または2に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【請求項4】
前記正の固有複屈折を有するポリマーが、炭素数2?4のアシル基、または、炭素数2のアシル基および炭素数3?4のアシル基で置換され、かつ、アシル基総置換度が1.0以上2.4以下であり、アシル置換基の総炭素数が4.4以上のセルロースエステル樹脂である、請求項1?3のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の光学異方性層が、重量平均分子量(Mw)が500?30000のアクリルポリマーを含有する、請求項1?4のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【請求項6】
前記負の固有複屈折を有するポリマーが、ビニル化合物由来の構成単位および芳香族マレイミド由来の構成単位を有するものである、請求項2に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【請求項7】
前記負の固有複屈折を有するポリマーにおける前記ビニル化合物由来の構成単位および前記芳香族マレイミド由来の構成単位の質量比が、80:20?95:5(ビニル化合物由来の構成単位:芳香族マレイミド由来の構成単位)である、請求項1または6に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【請求項8】
前記芳香族マレイミドがN-フェニルマレイミドを含む、請求項1、6または7に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【請求項9】
前記ビニル化合物がスチレンを含む、請求項1および6?8のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【請求項10】
前記第1の偏光板保護フィルム、前記第3の偏光板保護フィルム、および前記第4の偏光板保護フィルムが、それぞれ、セルロースエステル樹脂および/またはアクリル樹脂を含む、請求項1?9のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【請求項11】
前記第1の偏光板保護フィルム、前記第3の偏光板保護フィルム、および前記第4の偏光板保護フィルムが、それぞれ、アクリル樹脂およびセルロースエステル樹脂を95:5?30:70(アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂)の質量比で、かつ相溶状態で含有する、請求項10に記載のIPSモード型液晶表示装置。
【請求項12】
前記第1の偏光板保護フィルム、前記第3の偏光板保護フィルム、および前記第4の偏光板保護フィルムが、下記数式(1)および下記数式(2):
【数5】

(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を表し、nzはフィルム厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す;屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)
でそれぞれ表されるRoおよびRthについて、
【数6】

を満足する、請求項1?11のいずれか1項に記載のIPSモード型液晶表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-07-31 
出願番号 特願2013-550158(P2013-550158)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (G02F)
P 1 652・ 121- YAA (G02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 右田 昌士  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 森 竜介
星野 浩一
登録日 2016-05-20 
登録番号 特許第5935810号(P5935810)
権利者 コニカミノルタ株式会社
発明の名称 IPSモード型液晶表示装置  
代理人 八田国際特許業務法人  
代理人 八田国際特許業務法人  

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