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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03B
管理番号 1332269
異議申立番号 異議2017-700512  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-24 
確定日 2017-09-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6031001号発明「ヒンジ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6031001号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6031001号は、平成25年6月19日に出願され、平成28年10月28日に特許の設定登録がなされ、同年11月24日に特許掲載公報が発行され、その後、平成29年5月24日付けで、その請求項1ないし4に係る特許に対し、特許異議申立人株式会社ジャストバリューにより特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許第6031001号の請求項1ないし4に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
二つの連結対象物のうち、一方の前記連結対象物に固定される絶縁樹脂製の第一ウイング部材と、他方の前記連結対象物に固定される絶縁樹脂製の第二ウイング部材と、前記第一ウイング部材と前記第二ウイング部材との双方に挿通されることにより、前記第二ウイング部材を前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結する導電性の回動軸と、を備えることにより、前記二つの連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
前記第一ウイング部材の表面には、前記回動軸に当接する第一導電板が配設され、
前記第二ウイング部材の表面には、前記回動軸に当接する第二導電板が配設され、
前記二つの連結対象物は、前記第一導電板、前記回動軸、及び第二導電板を介して導通され、
前記第一導電板には、前記回動軸が挿通される第一挿通孔が形成され、
前記第一挿通孔の一端部には、前記第一挿通孔の他端部の側に向けて突出する第一弾性片が形成され、
前記回動軸を前記第一挿通孔に挿通した際に、前記第一弾性片の先端部が前記回動軸の側面に当接して、前記第一導電板が前記回動軸に当接し、
前記第二導電板は、前記第二ウイング部材における前記回動軸の軸方向の端面に沿った被挿通部と、前記被挿通部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第一連結部と、該第一連結部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第二連結部と、該第二連結部に対して直交して連続するとともに前記第一連結部に平行となる固定部と、を備えるとともに、前記第一連結部、前記第二連結部、及び、前記固定部は、前記第二ウイング部材における前記回動軸に平行となる三つの面に沿って配設され、
前記被挿通部には、前記回動軸が挿通される第二挿通孔が形成され、
前記被挿通部における前記第二挿通孔、及び、前記第二ウイング部材に前記回動軸が挿通されることにより、前記第二導電板が前記第二ウイング部材と共に前記第一ウイング部材に対して回動可能に連結され、
前記第二挿通孔の一端部には、前記第二挿通孔の他端部の側に向けて突出する第二弾性片が形成され、
前記回動軸を前記第二挿通孔に挿通した際に、前記第二弾性片の先端部が前記回動軸の側面に当接して、前記第二導電板が前記回動軸に当接する、ことを特徴とするヒンジ。
【請求項2】
二つの連結対象物のうち、一方の前記連結対象物に固定される絶縁樹脂製の第一ウイング部材と、他方の前記連結対象物に固定される絶縁樹脂製の第二ウイング部材と、前記第一ウイング部材と前記第二ウイング部材との双方に挿通されることにより、前記第二ウイング部材を前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結する導電性の回動軸と、を備えることにより、前記二つの連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
前記第一ウイング部材の表面には、前記回動軸に当接する第一導電板が配設され、
前記第二ウイング部材の表面には、前記回動軸に当接する第二導電板が配設され、
前記二つの連結対象物は、前記第一導電板、前記回動軸、及び第二導電板を介して導通され、
前記第一導電板には、前記回動軸が挿通される第一挿通孔が形成され、
前記第一挿通孔の一端部には、前記第一挿通孔の他端部の側に向けて突出する第一弾性片が形成され、
前記回動軸を前記第一挿通孔に挿通した際に、前記第一弾性片の先端部が前記回動軸の側面に当接して、前記第一導電板が前記回動軸に当接し、
前記第二導電板は、前記第二ウイング部材における前記回動軸の軸方向の両端面に沿った二枚の被挿通部と、前記二枚の被挿通部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第一連結部と、該第一連結部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第二連結部と、該第二連結部に対して直交して連続するとともに前記第一連結部に平行となる固定部と、を備えるとともに、前記第一連結部、前記第二連結部、及び、前記固定部は、前記第二ウイング部材における前記回動軸に平行となる三つの面に沿って配設され、
前記二枚の被挿通部には、前記回動軸が挿通される第二挿通孔がそれぞれ形成され、
前記二枚の被挿通部における前記第二挿通孔、及び、前記第二ウイング部材に前記回動軸が挿通されることにより、前記第二導電板が前記第二ウイング部材と共に前記第一ウイング部材に対して回動可能に連結され、
前記第二挿通孔の一端部には、前記第二挿通孔の他端部の側に向けて突出する第二弾性片が形成され、
前記回動軸を前記第二挿通孔に挿通した際に、前記第二弾性片の先端部が前記回動軸の側面に当接して、前記第二導電板が前記回動軸に当接する、ことを特徴とするヒンジ。
【請求項3】
前記第二ウイング部材には、該第二ウイング部材を貫通する固定孔が形成され、
前記第二導電板における前記固定部には、連通孔が開口され、
前記第二導電板を前記第二ウイング部材に配設した際には、前記固定部に開口された連通孔は、前記第二ウイング部材に形成された前記固定孔の開口部と同じ位置に配置される、ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記第一ウイング部材には、外側に突出するフランジ部が形成され、
前記第一導電板は、前記フランジ部を貫通して配置されることにより、前記第一ウイング部材に対する相対変位が規制される、ことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヒンジ。」

第3 特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人は、本件特許発明1ないし4が、特許法第17条の2第3項の規定及び特許法第36条第6項第1,2号の規定に違反してなされたものであるから取り消されるべきものであること(理由(1))、並びに、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消されるべきものであること(理由(2))を主張している。
1 理由(1)の概要
原審において、2度の拒絶理由通知に対して、2度の特許請求の範囲の補正がなされたが、当該補正により、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載されていなかった下記の部材名が記載され、それによって、特許請求の範囲に係る発明を不明確にし、また、発明の詳細な説明又は図面に記載されているものではないものにしたから、本件特許発明1ないし4は、特許法第17条の2第3項の規定及び特許法第36条第6項第1,2号の規定に違反してなされたものである。
(第2回目の拒絶理由通知前に加えられた部材名)
イ.第1挿通孔
ロ.第1弾性板
(第2回目の拒絶理由通知の際に加えられた部材名)
ハ.被挿通部
ニ.第一連結部
ホ.第二連結部
ヘ.固定部
ト.第一挿通孔
チ.第二挿通孔
リ.第一弾性片
ヌ.第二挿通片

2 理由(2)の概要
本件特許発明1ないし4は、いずれも、下記の甲第1号証ないし甲第7号証(以下「甲1」ないし「甲7」という。)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。
甲1:特開2011-191728号公報
甲2:特開2010-271628号公報
甲3:特開2008-146981号公報
甲4:特開2003-184858号公報
甲5:特開2011-166513号公報
甲6:特開2004-359443号公報
甲7:特開2006-66807号公報

第4 理由(1)についての当審における判断
1 理由(1)に記載されたイ.?ヌ.の部材名について、異議申立書においては「出願人が何故上記訂正部材名について、明細書へは記載せず、特許請求の範囲へ記載したのかは、定かではない。」(異議申立書第11頁末行?第12頁第1行)と記載されていることから、上記のイ.?ヌ.は、補正により特許請求の範囲に記載された部材名であるといえる。
2 上記イ.?ヌ.の部材名と、平成28年7月11日付け及び平成28年9月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載を対応させると、上記の「イ.第1挿通孔」、「ロ.第1弾性板」及び「ヌ.第二挿通片」の記載は上記のいずれの特許請求の範囲にも記載されていないが、上記イ.?ヌ.全体の部材名と、平成28年7月11日付け及び平成28年9月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載の対応関係から、それらは、「イ.第一挿通孔」、「ロ.第一弾性片」及び「ヌ.第二弾性片」の誤りと推定できるので、そのように解することとする。
3 上記の部材名についての特許請求の範囲の下記の記載が、本件特許の発明の詳細な説明の下記の記載と対応するから、上記イ.?ヌ.の部材名は、発明の詳細な説明の下記の部材名に相当するものであることがわかる。
(1)請求項1の「前記第一導電板には、前記回動軸が挿通される第一挿通孔が形成され」の記載は、発明の詳細な説明の「第一導電板61には、回動ピン50の軸部50aが挿通される挿通孔61aが形成されている。」(当初明細書【0029】、特許公報【0030】)の記載に対応するから、イ.及びト.の「第一挿通孔」は、発明の詳細な説明の「挿通孔61a」に相当する。
(2)請求項1の「前記第一挿通孔の一端部には、前記第一挿通孔の他端部の側に向けて突出する第一弾性片が形成され」の記載は,発明の詳細な説明の「挿通孔61aの下端部には、下端部の側に圧縮して弾性変形可能な、挿通孔61aの上端部の側に向けて突出する弾性片62が形成され」(当初明細書【0029】、特許公報【0030】)の記載に対応するから、ロ.及びリ.の「第一弾性片」は、発明の詳細な説明の「弾性片62」に相当する。
(3)請求項1の「前記第二導電板は」、「前記第二ウイング部材における前記回動軸の軸方向の端面に沿った被挿通部と」、「を備える」の記載は、発明の詳細な説明の「第二導電板71の側面部73・73には、回動ピン50の軸部50aが挿通される挿通孔73a・73aが形成されている。」(当初明細書【0031】、特許公報【0032】)及び「側面部73・73はそれぞれカムブロック40の後端部分における回動ピン50の軸部50aにまで延出される。」(当初明細書【0030】、特許公報【0031】)の記載に対応するから、ハ.の「被挿通部」は、発明の詳細な説明の「側面部73」に相当する。
(4)請求項1の「前記第二導電板は」、「前記被挿通部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第一連結部と、該第一連結部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第二連結部と、該第二連結部に対して直交して連続するとともに前記第一連結部に平行となる固定部と」、「を備える」の記載は、発明の詳細な説明の「第二導電板71は、カムブロック40の上面、左右両側面、前面及び下面のそれぞれに沿う、上面部72、側面部73・73、前面部75、及び下面部76を備える薄型金属板として形成されている。」(当初明細書【0030】、特許公報【0031】)の記載に対応し、【図2】【図5】等の記載から、上記の「上面部72」、「前面部75」、及び「下面部76」は、いずれも、「回動ピン50の軸部50a」と平行となることは明らかであるから、ニ.、ホ.及びへ.の「第一連結部」、「第二連結部」、及び「固定部」は、それぞれ、発明の詳細な説明の「上面部72」、「前面部75」、及び「下面部76」に相当する。
(5)請求項1の「前記被挿通部には、前記回動軸が挿通される第二挿通孔が形成され」の記載は、発明の詳細な説明の「第二導電板71の側面部73・73には、回動ピン50の軸部50aが挿通される挿通孔73a・73aが形成され」(当初明細書【0031】、特許公報【0032】)の記載に対応するから、チ.の「第二挿通孔」は、発明の詳細な説明の「挿通孔73a」に相当する。
(6)請求項1の「前記第二挿通孔の一端部には、前記第二挿通孔の他端部の側に向けて突出する第二弾性片が形成され」の記載は、発明の詳細な説明の「挿通孔73aの前端部には、前端部の側に圧縮して弾性変形可能な、挿通孔73aの後端部の側に向けて突出する弾性片74・74が形成され」(当初明細書【0031】、特許公報【0032】)の記載に対応するから、ヌ.の「第二弾性片」は、発明の詳細な説明の「弾性片74」に相当する。
4 以上のとおり、上記イ.?ヌ.に列挙された部材名は、いずれも、本件特許の当初明細書及び特許公報の発明の詳細な説明に記載されている、上記「3」の「(1)」?「(6)」に示したそれぞれの部材名に対応するものである。
よって、上記イ.?ヌ.に列挙された部材名を記載する補正は、補正によって新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に違反するものではない。
また、特許請求の範囲に記載された上記イ.?ヌ.に列挙された部材名は、発明の詳細な説明又は図面に記載された部材に対応するものであり、かつ、明確であるといえるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号又は第2号に違反するものではない。
したがって、本件特許は異議申立書に記載された理由(1)によって取り消されるべきものであるということはできない。

第5 理由(2)についての当審における判断
1 甲第1?7号証に記載された事項、及び、甲第1号証に記載された発明
(1) 甲第1号証について
ア 甲第1号証には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
(ア)「【請求項1】
第一連結対象物に第二連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
一端部に開口するとともに他端部に底面を有する収容室が形成され、前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか一方に固定される第一ウイング部材と、
前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結され、前記第一ウイング部材の一端部に対向する部分にカムが形成され、前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか他方に固定される第二ウイング部材と、
前記第一ウイング部材の収容室に収容され、前記収容室の内壁面に当接しつつ前記第二ウイング部材に接近する方向および前記第二ウイング部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、
前記第一ウイング部材の収容室に収容され、一端部が前記第一ウイング部材の収容室の底面に当接するとともに他端部が前記スライド部材に当接し、前記スライド部材を前記第二ウイング部材に接近する方向に付勢し、前記スライド部材を前記第二ウイング部材のカムに当接させることにより前記第二ウイング部材を第一ウイング部材に対して開く方向に回動させる付勢部材と、
を具備し、
前記第一ウイング部材はガラス繊維強化型ポリアミドで構成される、
ヒンジ。
【請求項2】
金属材料からなり、前記第一ウイング部材の一端部に形成された一対の貫通孔および前記第二ウイング部材に形成された貫通孔に貫装されることにより前記第二ウイング部材を前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結する回動ピンを具備する、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
金属材料からなり、一端部が前記回動ピンに係止され、他端部が前記第一ウイング部材において前記収容室の底面に対応する部分に前記付勢部材の反対側から当接する補強部材を具備する、
請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記補強部材は、
一端部に前記回動ピンを貫装するための貫通孔が形成されるアーム部と、
前記アーム部の他端部に連なり、前記アーム部に対して屈曲されることにより前記第一ウイング部材において前記収容室の底面に対応する部分に前記付勢部材の反対側から当接する当接部と、
を具備する、
請求項3に記載のヒンジ。」
(イ)「【0084】
以下では、図1、図8、および図11から図20を用いて本発明に係るヒンジの第二実施形態であるヒンジ200について説明する。
図1に示す如く、ヒンジ200は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
【0085】
図11から図14に示す如く、ヒンジ200はケース部材210、回動部材220、回動ピン230、回動規制ピン240、Eリング245、スライダ250、バネ261・262および補強部材270を具備する。
【0086】
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ200の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ200を構成する各部材の形状を説明する(図1および図11から図14参照)。
【0087】
図15および図16に示すケース部材210は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。
ケース部材210は筒部211および支持部216を具備する。本実施形態のケース部材210は樹脂材料からなり、筒部211および支持部216が一体的に成形される。
ケース部材210を構成する樹脂材料の具体例は、前述のケース部材110を構成する樹脂材料と同様である。」
(ウ)「【0103】
図17に示す回動部材220は本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態である。
回動部材220はカム部221および取り付け部226を具備する。本実施形態の回動部材220は樹脂材料からなり、カム部221および取り付け部226が一体的に成形される。回動部材220を構成する樹脂材料は、先述の回動部材120を構成する樹脂材料と同様である。」
(エ)「【0117】
図19に示す補強部材270は本発明に係る補強部材の実施の一形態である。
本実施形態の補強部材270は金属板(より詳細には、ステンレス鋼からなる板状の部材)を適宜折り曲げることにより製造される。
補強部材270はアーム部271、当接部272および係合部273を具備する。
【0118】
アーム部271は本発明に係るアーム部の実施の一形態であり、補強部材270の一端部(上端部)から中途部にかけての部分を成す。
本実施形態のアーム部271は左右一対の板面271a・271bおよび前後一対の端面271c・271dを有する上下方向に細長い板状の部分である(図12、図13および図19参照)。
板面271aはアーム部271の左側の板面を成し、板面271bはアーム部271の右側の板面を成す。端面271cはアーム部271の前側の端面を成し、端面271dはアーム部271の後側の端面を成す。
【0119】
図19に示す如く、アーム部271の一端部(上端部)には貫通孔271eが形成される。貫通孔271eはアーム部271の一端部(上端部)においてアーム部271の左右一対の板面271a・271bを貫通する。
【0120】
アーム部271には弾性突起271fが形成される。
弾性突起271fは貫通孔271eの内周面の下端部に形成される突起である。弾性突起271fの基部(下端部)は貫通孔271eの内周面の下端部に連なる。弾性突起271fはその中途部において右側方にわずかに屈曲している。
従って、弾性突起271fの先端部(上端部)はアーム部271の右側の板面271bよりもわずかに右側方に突出している。
【0121】
アーム部271には係合孔271gが形成される。係合孔271gは本発明に係る係合孔の実施の一形態である。
係合孔271gはアーム部271の上下中途部かつ前後略中央部においてアーム部271の左右一対の板面271a・271bを貫通する。
係合孔271gの形状は右側面視で概ね上下方向にやや長い長方形である。
【0122】
当接部272は本発明に係る当接部の実施の一形態であり、補強部材270の他端部(下端部)を成す。
本実施形態の当接部272は上下一対の板面272a・272bおよび前後一対の端面272c・272dを有する左右方向に細長い板状の部分である(図12、図13および図19参照)。
板面272aは当接部272の上側の板面を成し、板面272bは当接部272の下側の板面を成す。端面272cは当接部272の前側の端面を成し、端面272dは当接部272の後側の端面を成す。
図19に示す如く、当接部272の右端部はアーム部271の他端部(下端部)に連なっており、当接部272はアーム部271に対して屈曲される。より詳細には、一枚の金属板を所定の折目で直角に折り曲げることにより、当該折目を境界として一方がアーム部271を成し、他方が当接部272を成す。」
(オ)「【0132】
以上の如く、ヒンジ200は、
複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結するヒンジであって、
一端部(上端部)に開口するとともに他端部(下端部)に底面215を有する収容室213が形成され、本体2に固定されるケース部材210と、
ケース部材210の一端部(上端部)に回動可能に連結され、ケース部材210の一端部(上端部)に対向する部分にカム部221が形成され、原稿圧着板3に固定される回動部材220と、
ケース部材210の収容室213に収容され、収容室213の内壁面214に当接しつつ回動部材220に接近する方向および回動部材220から離間する方向に移動可能なスライダ250と、
ケース部材210の収容室213に収容され、一端部がケース部材210の収容室213の底面215に当接するとともに他端部がスライダ250に当接し、スライダ250を回動部材220に接近する方向に付勢し、スライダ250を回動部材220のカム部221に当接させることにより回動部材220をケース部材210に対して開く方向に回動させるバネ261・262と、
を具備し、
ケース部材210はガラス繊維強化型ポリアミドで構成される。
このように構成することにより、バネ261・262の付勢力による破損を防止しつつヒンジ200の外形寸法を小さくすることが可能である。
【0133】
また、ヒンジ200は、
金属材料からなり、ケース部材210の一端部(上端部)に形成された一対の貫通孔217L・217Rおよび回動部材220に形成された貫通孔223に貫装されることにより回動部材220をケース部材210の一端部(上端部)に回動可能に連結する回動ピン230を具備する。
このように構成することにより、ケース部材210に対する回動部材220の回動軸たる回動ピン230の強度を確保することが可能である。
【0134】
また、ヒンジ200は、
金属材料からなり、一端部(上端部)が回動ピン230に係止され、他端部(下端部)が「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分(筒部211の下端部)」にバネ261・262の反対側(下側)から当接する補強部材270を具備し、
補強部材270は、
一端部(上端部)に回動ピン230を貫装するための貫通孔271eが形成されるアーム部271と、
アーム部271の他端部(下端部)に連なり、アーム部271に対して屈曲されることにより「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分」にバネ261・262の反対側(下側)から当接する当接部272と、
を具備する。
このように構成することにより、補強部材270はケース部材210に作用するバネ261・262の付勢力の一部を「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分」を介して支持することが可能であり、ケース部材210がバネ261・262の付勢力により破損することを防止することが可能である。」
(カ)「【図12】


(キ)「【図19】



イ 甲第1号証に記載された発明の認定
上記アの(ア)?(キ)の記載事項から、甲第1号証には、
「第一連結対象物に第二連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
一端部に開口するとともに他端部に底面を有する収容室が形成され、前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか一方に固定される樹脂製の第一ウイング部材と、
前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結され、前記第一ウイング部材の一端部に対向する部分にカムが形成され、前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか他方に固定される樹脂製の第二ウイング部材と、
を具備し、
前記ヒンジは、
金属材料からなり、前記第一ウイング部材の一端部に形成された一対の貫通孔および前記第二ウイング部材に形成された貫通孔に貫装されることにより前記第二ウイング部材を前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結する回動ピンを具備し、
金属材料からなり、一端部が前記回動ピンに係止され、他端部が前記第一ウイング部材において前記収容室の底面に対応する部分に前記付勢部材の反対側から当接する補強部材を具備し、
前記補強部材は、
一端部に前記回動ピンを貫装するための貫通孔が形成されるアーム部と、
前記アーム部の他端部に連なり、前記アーム部に対して屈曲されることにより前記第一ウイング部材において前記収容室の底面に対応する部分に前記付勢部材の反対側から当接する当接部と、
を具備し、
アーム部271には弾性突起271fが形成され、弾性突起271fは貫通孔271eの内周面の下端部に形成される突起である、
ヒンジ。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

(2)甲第2号証について
甲第2号証には次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
複写機等の機器本体に取り付けられると共に上部が開口したヒンジケースと、該ヒンジケースの上部に設けた取付ブラケットに挿設される回転軸と、該回転軸に回動自在に取り付けられると共に原稿圧着板を一体的に取り付ける回動アームと、該回動アームの下側に一体的に設けられるカム部材と、上記ヒンジケース内にスライド自在に収められるスライダーと、上記ヒンジケース内に収められると共に前記スライダーの上面を上記カム部材に弾性的に当接せしめる圧縮スプリングから成る原稿圧着板の開閉装置において、上記ヒンジケースの上部にストッパーシャフトを取り付けて、上記回動アームが最大解放角度から更に開いて、上記取付ブラケットが破壊した場合、上記圧縮スプリングの飛び出し飛散を阻止するように構成することを特徴とする原稿圧着板の開閉装置。
【請求項2】
上記回動アームが最大解放角度から更に開かないように阻止するよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の原稿圧着板の開閉装置。
【請求項3】
上記ストッパーシャフトが上記スライダーの全幅または一部を遮断するように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の原稿圧着板の開閉装置。」
イ 「【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
図1および図2において、1は、複写機等の機器本体(図示せず)に取り付けられるヒンジケース、2は回動アーム、3はカム部材(図3を参照)、4は回転軸、5はスライダー、6は圧縮スプリング、7はストッパーシャフトである。
【0012】
上記ヒンジケース1は、上部が開口している。該ヒンジケース1の1組の相向かい合う2つの側面の上部には、取付ブラケット1aが設けられている。
【0013】
上記回動アーム2は、その上面に原稿圧着板(図示せず)を一体的に取り付けるようになっており、その回動基部には、回転軸用挿通孔2aが穿設されている。該回動アーム2の下側には、カム部材3が一体的に設けられている。
【0014】
上記回転軸4は、上記ヒンジケース1の上記取付ブラケット1aの挿通孔1b(図4参照)および上記回動アーム2の回転軸用挿通孔2a(図4参照)に挿通され、該回動アーム2を上記ヒンジケース1に回動自在に組み付けている。
【0015】
上記スライダー5は、上記ヒンジケース1の内面に沿ってスライドするように収められている。該スライダー5の上面は、上記回動アーム2のカム部材3のカム面に当接している。(図5参照)
【0016】
上記圧縮スプリング6は、上記ヒンジケース1の底壁と上記スライダー5との間に収められていて、該スライダー5を上記カム部材3に弾性的に当接せしめるようになっている。
【0017】
従って、上記回動アーム2に取り付けられた原稿圧着板は、上記圧縮スプリング6の弾発力により、上記スライダー5およびカム部材3等を介して、開く方向に付勢されている。」
ウ「【図1】



(3)甲第3号証について
甲第3号証には次の事項が記載されている。
ア 「【0007】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、簡単な構成で確実に上下筐体の電気的接続ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明では、導通ヒンジを、第1筐体に同期して動き第1筐体に電気的に接続される導電性のシャフトと、第2筐体に同期して動き第2筐体に電気的に接続されシャフトに摺動して電気的に接続される導電性の接触子と、第2筐体に固定される絶縁性のケースと、ケースを一端で押すスプリングと、第1筐体に固定されるホルダと、ホルダに固定される固定カムと、スプリングに押されて固定カムに当接する可動カムと、シャフトからホルダが抜けないように止める抜止手段とを具備する構成とした。
【0009】
また、第1筐体に同期して動き第1筐体と第2筐体に電気的に接続される導電性のシャフトと、第2筐体に固定される絶縁性のケースと、一端でケースを押すスプリングと、第1筐体に固定されるホルダと、ホルダに固定される固定カムと、スプリングに押されて固定カムに当接する可動カムと、シャフトからホルダが抜けないように止める抜止手段とを具備する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したことにより、折畳式携帯電話機の上下筐体のアースなどを、簡単な構成で確実に電気的に接続できる。」
イ 「【0012】
本発明の実施例1は、上筐体に接して電気的に接続される接触子が導電性のシャフトに摺動し、シャフトの先端部が下筐体の導体舌片に接して、上筐体のアースと下筐体のアースを接続する導通ヒンジである。
【0013】
図1は、本発明の実施例1における導通ヒンジの分解斜視図である。図1(a)は、ホルダ側から見た分解斜視図である。図1(b)は、シャフト頭部側から見た分解斜視図である。図1において、シャフト1は、導電性のヒンジ軸である。接触子2は、上筐体とシャフトを電気的に接続する導体である。スプリング3は、可動カムを固定カムに押し付けるためのコイルバネである。ケース4は、可動カムを上筐体に同期して回転させるための部材である。可動カム5は、固定カムと係合する凸部を有するカムである。固定カム6は、可動カムと係合するための凹部を有するカムである。ホルダ7は、固定カムとシャフトを下筐体に同期させるために、下筐体に固定される部材である。ストッパ8は、シャフトからホルダが抜けないようにするU字状の部材である。加締めなどの方法で止めてもよい。
【0014】
図2は、導通ヒンジの全体外観斜視図である。図3は、導通ヒンジの断面図に導通経路を示した図である。図3において、導体舌片9は、下側筐体(第1筐体)に設けられた接続用導体である。下側筐体(第1筐体)10は、折畳式携帯電話機の操作部がある筐体である。上側筐体(第2筐体)11は、折畳式携帯電話機の表示部がある筐体である。スプリングなどは図示を省略してある。図4は、可動カムの概念図である。図4(a)は、可動カムの斜視図である。図4(b)は、可動カムの断面図である。図4(c)は、固定カムと可動カムが係合した状態の断面図である。図4(d)は、オフセットを付けた可動カムの断面図である。図4(e)は、固定カムとオフセットを付けた可動カムが係合した状態の断面図である。
【0015】
上記のように構成された本発明の実施例1における導通ヒンジの機能と動作を説明する。最初に、図1と図2を参照しながら、導通ヒンジの機能の概要を説明する。第1筐体を下側筐体とし、第2筐体を上側筐体として説明するが、第1筐体を上側筐体とし、第2筐体を下側筐体としても、同様に機能する。トルクヒンジと導通ヒンジを一体化して、片軸分のスペースをあける。中央部を通していたケーブルを片軸側へ移動し、中央部のスペースをあける。すなわち、片方の軸に導通トルクヒンジを使い、他方の軸の部分にケーブルを通す。中央部は空スペースとなるので、ここにスピーカや内蔵アンテナ等の部品を配置できる。
【0016】
導電性のシャフト1は、第1の筐体である下側筐体に同期して動き、シャフト1の先端が下側筐体の導体舌片に当接して、下側筐体に電気的に接続される。導電性の接触子2は、第2の筐体である上側筐体に同期して動き、接触子2の腕部が導電性の上側筐体に当接して電気的に接続されるとともに、シャフト1に摺動して電気的に接続される。スプリング3の一端がケース4を押し、スプリング3の他端が、上側筐体に同期して動く可動カム5を押す。スプリング3に押された可動カム5が、ホルダ7を介して下側筐体に固定された固定カム6に噛み合うことで、上下筐体を特定の開き角度で保持する。図1に示す各部品を組み立てると、図2に示すような外観の導通ヒンジとなる。」
ウ「【図1】



(4)甲第4号証について
甲第4号証には次の事項が記載されている。
ア 「【0004】本発明は、このような問題点に着目し、ヒンジ装置内に接続線を通すのではなく、ヒンジ装置を構成する部品自体に導電性を持たせる構成とすることで、従来のような不具合を生じる懸念を解消し、更に第一部材と第二部材とを枢着して成る電子機器の製作も容易となる画期的なヒンジ装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0006】電気的接続構造を備えた第一部材6と第二部材7とを枢着するヒンジ装置であって、軸部材1の一端側に前記第一部材6に取り付けられる第一取付部2を設け、軸部材1の他端側に前記第二部材7に取り付けられる第二取付部4を設け、この第一取付部2と第二取付部4とのいずれか一方若しくは双方を軸部材1に対し相対回動可能に設け、この第一取付部2に第一導電部3を付設すると共にこの第一導電部3は第一部材6の電気的接続部に接触し得るように構成し、前記第二取付部4に第二導電部5を付設すると共にこの第二導電部5は第二部材7の電気的接続部に接触し得るように構成し、この第二導電部5と前記第一導電部3とは軸部材1を介して電気的に接続するように構成して、前記第一部材6を第一取付部2に取り付けると共に前記第二部材7を第二取付部4に取り付けると、この第一部材6の電気的接続部と第二部材7の電気的接続部とが第一導電部3,軸部材1,第二導電部5を介して電気的に接続されるように構成したことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。」
イ 「【0016】
【実施例】本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0017】本実施例は、図1,図2に示すように、折り畳みタイプの携帯電話に適用した場合であって、ディスプレイ部8を備えた開閉蓋部を第一部材6とし、操作部9を備えた本体部を第二部材7とし、この第一部材6と第二部材7とが重合した閉塞状態から第一部材6を所定角度開放状態(使用位置)とすることができる枢着構造に本発明のヒンジ装置を適用している。
【0018】本実施例では、軸部材1の一端側にこの軸部材1と共に回動する第一取付部2を配設固定してこの第一取付部2に第一導電部3を付設し、軸部材1の他端側にこの軸部材1に対し相対回動可能に枢支される第二取付部4を配設してこの第二取付部4に第二導電部5を付設している。
【0019】具体的には、軸部材1は、導電性を有する金属製(例えば銅)であって、片側端部に鍔部を備えた形状のものを採用している。
【0020】第一取付部2は、リング部の周縁部に前記第一部材に取付するための取付片を複数突設した形状の部材で構成し、中心孔に軸部材1を挿通し得るように構成している。
【0021】また、この第一取付部2には、導電性を有する金属製(例えば銅)であって、リング部の周縁部に前記第一部材6の後述する電気的接続部(図示省略)に接触する接触片を複数突設した形状の第一導電部3を図3における左側から回り止め状態に、且つ第一取付部2の外部に接触片が露出状態となるようにして嵌め込み係止した構成としている。
【0022】また、本実施例では、この第一取付部2の中心孔に軸部材1を嵌挿すると、軸部材1の外周面と第一導電部3の中心孔縁部とが接触してこの軸部材1と第一導電部3とが電通可能な状態となるように軸部材1の径と第一導電部3の中心孔の孔径とを設定構成している。
【0023】第二取付部4は、第一部材に取り付けし得る有底円筒状の部材で構成し、更にこの円筒状体の底部(図3における右側の面)に軸部材1を挿通する軸受部(孔)10を形成して構成している。
【0024】また、この第二取付部4には、導電性を有する金属製であって、リング部の周縁部対向位置に前記第二部材7の後述する電気的接続部(図示省略)に接触する接触腕部を突設した形状の第二導電部5を第二取付部4の底部側(図3における右側)から回り止め状態に、且つ第二取付部4の外部に接触腕部が露出状態となるようにして被嵌係止した構成としている。
【0025】また、本実施例では、第二導電部5の中心孔部を介して第二取付部4の底部側から軸受部10に軸部材1を嵌挿すると、軸部材1の外周面と第二導電部5の中心孔縁部とが接触してこの軸部材1と第二導電部5とが電通可能な状態となるように軸部材1の径と第二導電部5の中心孔の孔径とを設定構成している。
【0026】従って、本実施例では、軸部材1の一端側に第一導電部3を備えた第一取付部2を挿通固定し、軸部材1の他端側に第二導電部5を備えた第二取付部4を回動自在に挿通配設すると、導電性を有する軸部材1に導電性を有する第一導電部3と第二導電部5とが接触して、この第二導電部5と前記第一導電部3とが軸部材1を介して電気的に接続する構成としている。」
ウ「【図2】



(5)甲第5号証について
甲第5号証には次の事項が記載されている。
ア 「【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、落下により外表面に衝撃を受けてもヒンジ部に安定して給電してアンテナ性の向上を図ることができる折り畳み式携帯無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の折り畳み式携帯無線機の一つの態様は、内部に外表面と略平行に第1回路基板が設けられる第1筐体と、内部に第2回路基板が設けられる第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを回動自在に連結し、且つ、導電性を有するヒンジ部と、前記第1回路基板と前記ヒンジ部とを電気的に接続する接続板金と、を備え、前記接続板金は、前記第1筐体内に配置され、前記第1回路基板に接続する接点部と、前記接点部から延出し、且つ、前記ヒンジ部の外周に沿って曲がる曲部と、前記曲部の前記延出方向側に設けられ、前記ヒンジ部の外周に向かって突出し、当接した状態で付勢するバネ接点部とを有し、前記バネ接点部の付勢方向は、前記ヒンジ部の軸心及び前記第1回路基板の双方と垂直な方向と交差する構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、落下により外表面側から衝撃を受けてもヒンジ部に安定して給電してアンテナ性の向上を図ることができる。」
イ「【0029】
図3は、本発明の一実施の形態に係る折り畳み式携帯無線機の備える接続板金の右側面図であり、図4は、本発明の一実施の形態に係る折り畳み式携帯無線機の備える接続板金の背面図である。また、図5は、本発明の一実施の形態に係る折り畳み式携帯無線機の備える接続板金の正面図であり、図6は、本発明の一実施の形態に係る折り畳み式携帯無線機の備える接続板金を背面側からみた図である。
【0030】
図3?図6に示すように、接続板金160は、板金を加工して形成されており、L字状の接点部161の一端から段差を設けた後で延出された細長の本体部分162cを有する固定部162が形成されている。
【0031】
固定部162は、本体部分162cにおいて延在方向に延びる両側部に、固定部162の厚み方向に突出する固定片部162a、162bを有する。固定片部162a、162bは、上筐体120内に形成された図示しない窪みに嵌め込むことで接続板金160自体の位置決めを行う。固定部162は、接点部161側と反対側の端部から接点部161の延長上に延出する延長部162dを有し、この延長部162dの先端には、延長部162dの延出方向と直交する方向に折曲した他端部164が形成されている。なお、接続板金160において、延長部162dの延在方向と直交する方向に張り出す部分は、接続板金160を上筐体120に安定した状態で載置させている。
【0032】
他端部164は、延長部162dに、曲げ部163を介して、延長部162dの延在方向と直交する方向に張り出すように形成されており、接続板金160自体においては、延長部162dと交差する面として形成される。
【0033】
曲げ部163は、ヒンジ部130(回動筒部132)の外周に沿う形状であり、ここでは、舌部126の湾曲に対応して屈曲してなる。なお、曲げ部163は、舌部126の湾曲に対応する形状であればよく、曲げ部163を湾曲形状に形成してもよい。
【0034】
バネ接点部165は、他端部164の一端部を屈曲し、他端部164から立ち上がるように形成され、その付勢方向(ストローク方向)が、他端部164の表面に対して垂直方向となるように他端部164に形成されている。バネ接点部165には、他端部164から斜めに立ち上がる部位の先端部分に、接点165aが形成されている。」
ウ「【図6】



(6)甲第6号証について
甲第6号証には次の事項が記載されている。
ア 「【0011】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、高度な加工精度が要求されることはなく、これによる加工コストの低減化に貢献した上で、各サイズの軸に対応し得ることで汎用性を向上させることができ、しかも画像形成に悪影響を与えることがなく、加えて装置小型化の障害にならない接地用構造体およびこの構造体を備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、合成樹脂製の枠体に軸受部材を介して軸心回りに回転可能に軸支された回転軸を電気的に接地する接地用構造体であって、前記回転軸に外嵌される導通部と、所定の接地位置に接続される前記導通部と導通した接地部とを備え、前記導通部は、前記軸受部材が内嵌される内嵌孔と、この内嵌孔の内周面から孔心方向に向けて突設され、且つ先端が前記軸受部材に圧接する1または複数の圧接突起とを有していることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、回転軸に装着あるいは接触されている帯電容易部材(例えばゴム製のローラ本体)で生じた静電気は、回転軸、軸受部材、圧接突起および接地部を介して接地位置へ流通し、これによって帯電容易部材の静電気が除去される。
【0014】
また、圧接突起の弾性変形の範囲内で径寸法の異なる回転軸に対して導通部を適用することができるため、径寸法の異なる回転軸毎に専用の導通部を設ける必要がなくなり、本発明に係る導通部は汎用性に富んだものになる。
【0015】
そして、圧接突起を周方向に等ピッチで設ければ、回転軸は、圧接突起の先端部によって均等に圧接支持された状態になるため、導通部と回転軸との間の確実な電気的接続状態を確保した上で、圧接突起の弾性力が周方向で均等に回転軸に加わることにより、回転軸が偏心するような不都合が確実に防止される。」
イ「【0055】
図5は、本発明に係る前記接地用構造体の一実施形態を示す斜視図であり、軸受部材33に装着された状態を示している(方向的には図2および図3に対応している。)。本実施形態に係る接地用構造体50は、用紙を挟持した状態での上部および下部ローラ本体32,42の用紙搬送回転動作による用紙との間の摩擦によって発生した静電気、および枠体20において用紙がガイドフィン27等と摺接することによって発生した静電気を除電するためのものである。
【0056】
かかる接地用構造体50は、所定のプレスマシンを用いて所定の形状に打ち抜き処理された1枚の金属板を折り曲げ処理することによって形成され、図5に示すように、軸受部材33に外嵌される導通部51と、この導通部51に帯状の介設部52を介して一体に形成された接地部53と、この接地部53に一体に付設された接続部54とを備えた基本構成を有している。
【0057】
前記導通部51は、上部ローラ本体32に帯電した静電気を上部ローラ軸31および軸受部材33を介して接地部53へ向けて流通させるものであり、軸受部材33が差し込まれる差込み孔(内嵌孔)511と、先端がこの差込み孔511の内周面より若干径方向に孔心へ向けて突出した圧接突起513とが設けられている。
【0058】
前記差込み孔511は、本実施形態においては、軸受部材33の扁平面331が形成されている部分の断面形状に対応させるべく対称位置に直線状の一対の弦縁部512(図5では一方の弦縁部512のみが示されている。)が形成された小判形に形成され、これによって導通部51を位置決め状態で軸受部材33に装着することができるようになっている。
【0059】
前記圧接突起513は、接地部53と導通部51との間の確実な電気的接続状態を確保するためのものであり、本実施形態においては、弦縁部512に対して90°位相ずれした位置に互いに対向状態で一対が設けられている。かかる圧接突起513は、差込み孔511の内周縁面から径方向に向けて外方に切り込まれて形成した切込み溝515の溝底から孔心方向に向けて突設され、先端に先鋭に尖らされて形成した尖角端514が設けられている。
【0060】
そして、尖角端514の先端は、差込み孔511の内周縁面より若干孔心方向に突出されている。したがって、軸受部材33を差込み孔511に嵌挿することにより、圧接突起513が径方向の外方に向けて弓形に弾性変形し、これによる弾性力で圧接突起513と軸受部材33との間の確実な電気的接続状態を確保し得るようにしている。
【0061】
前記介設部52は、図5における導通部51の外周縁部の下端部から細い帯状で接地部53に向けて突設されている。かかる帯状の介設部52は、導通部51および接地部53間の正規の離間距離より若干長めに寸法設定され、たとえ導通部51および接地部53の設置位置間に誤差が生じてもこの介設部52の撓み量を調節することにより容易に対応し得るようになっている。」
ウ「【図6】




(7)甲第7号証について
甲第7号証には次の事項が記載されている。
ア 「【0010】
本発明は、第1シャフトと、該第1シャフトの第1軸線方向と直交する第2軸線方向で前記第1シャフトに接続している第2シャフトと、前記第1及び前記第2シャフトに巻き付けられるフレキシブル基板とを含むヒンジコネクタにおいて、前記第1及び第2シャフトのそれぞれに一体にかつ回動自在に取り付けられている複数の保持体と、該保持体のそれぞれを回動自在に保持する一対のカバー部材とを有し、前記保持体には前記第1及び前記第2シャフトに巻き付けられている前記フレキシブル基板を通過させるためのスリットが形成されていることを特徴とするヒンジコネクタであることを最も主要な特徴とする。
【0011】
また、本発明によれば、第1シャフトと、該第1シャフトの軸線方向と直交する軸線方向で前記第1シャフトに接続している第2シャフトと、前記第1及び前記第2シャフトに巻き付けられるフレキシブル基板とを含むヒンジコネクタと、該ヒンジコネクタによりヒンジ結合した第1筐体と第2筐体とを備えている電子機器において、前記ヒンジコネクタは、前記第1及び第2シャフトのそれぞれに一体にかつ回動自在に取り付けられている複数の保持体と、該保持体のそれぞれを回動自在に保持する一対のカバー部材とを有し、前記保持体には前記第1及び前記第2シャフトに巻き付けられている前記フレキシブル基板を通過させるためのスリットが形成されており、前記第1筐体は前記第2筐体に対して前記第1シャフトの前記軸線を中心に回動可能となるようにヒンジ結合されており、さらに前記第1筐体は前記第2筐体に対して前記第2シャフトの前記軸線を中心に回動可能となるようにヒンジ結合されていることを特徴とする電子機器が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒンジコネクタ、及びそのヒンジコネクタを備えた電子機器によれば、電気的な接続を行うフレキシブル基板を保持体内に収納しているため、機器への組立性を向上でき、さらに電気的なシールド性を改善することができるという利点がある。」
イ 「【0015】
以下に、本発明に係るヒンジコネクタの実施例を説明する。図1はヒンジコネクタの外観を示している。
【0016】
図1乃至図4を参照して、ヒンジコネクタ1は、第1シャフト11と、第1シャフト11の軸線X(図2を参照)方向と直交する軸線Y(図2を参照)方向で第1シャフト11に接続している第2シャフト13と、第1及び第2のシャフト11,13に中間部分が巻き付けられるフレキシブル基板15と、第1及び第2シャフト11,13に一体に保持されている第1乃至第3保持体21,22,23と、保持体21,22,23のそれぞれを回動自在に保持する一対のカバー部材27,28とを有している。
【0017】
第1及び第2シャフト11,13は、図2にも示すように、平面から見ると略T字形状に接続されて一体となっている。第1シャフト11の軸線X方向の両端部には、第1シャフト11に第1及び第2保持体21,22,及びカバー部材27,28を保持するための第1フランジ部31及び第2フランジ部32が設けられている。さらに、第1及び第2フランジ部31,32の外側には、略E字形状の一対の止め輪35,36と、止め輪35,36の外側に第1及び第2止具38,39とが設けられている。
【0018】
第2のシャフト13は、第1シャフト11の軸線X方向の中間部分に一端が接続されている。第2のシャフト13の軸線Y方向における先端部には、第3保持体23を保持するための第3フランジ部41が設けられている。さらに、第3フランジ部41の外側には、略E字形状の一対の止め輪43と、止め輪43の外側に第3止具45とが設けられている。
【0019】
フレキシブル基板15は、図4にも示すように、フイルム部材間に導体パターンが挟み込まれているものである。この実施例において採用しているフレキシブル基板15は、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)である。
【0020】
フレキシブル基板15は、一端部に形成されている第1接続部15aと、もう一端部に形成されている第2接続部15bと、第1接続部15aから軸線Y方向へ延びている第1中間部15cと、第1中間部15cから軸線X方向へ延びている第2中間部15dとを有している。
【0021】
さらに、フレキシブル基板15は、第2中間部15dから軸線Y方向へ延びている第3中間部15eと、第3中間部15eから軸線X方向へ延びている第4中間部15fと、第4中間部15fから軸線X方向へ延びて第2第2接続部15bに接続されている第5中間部15gとを有している。」
ウ「【図1】



2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比・一致点・相違点
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、
「二つの連結対象物のうち、一方の前記連結対象物に固定される絶縁樹脂製の第一ウイング部材と、他方の前記連結対象物に固定される絶縁樹脂製の第二ウイング部材と、前記第一ウイング部材と前記第二ウイング部材との双方に挿通されることにより、前記第二ウイング部材を前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結する導電性の回動軸と、を備えることにより、前記二つの連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
前記第一ウイング部材の表面には、前記回動軸に当接する第一導電板が配設され、
前記第一導電板には、前記回動軸が挿通される第一挿通孔が形成され、
前記第一挿通孔の一端部には、前記第一挿通孔の他端部の側に向けて突出する第一弾性片が形成されるヒンジ。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本件特許発明1が、
「第二ウイング部材の表面に」「配設され」「回動軸に当接する」「第二導電板」であって、
「前記第二ウイング部材における前記回動軸の軸方向の端面に沿った被挿通部と、前記被挿通部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第一連結部と、該第一連結部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第二連結部と、該第二連結部に対して直交して連続するとともに前記第一連結部に平行となる固定部と、を備えるとともに、前記第一連結部、前記第二連結部、及び、前記固定部は、前記第二ウイング部材における前記回動軸に平行となる三つの面に沿って配設され」、
「前記被挿通部には、前記回動軸が挿通される第二挿通孔が形成され」、
「前記被挿通部における前記第二挿通孔、及び、前記第二ウイング部材に前記回動軸が挿通されることにより、前記第二導電板が前記第二ウイング部材と共に前記第一ウイング部材に対して回動可能に連結され」、
「前記第二挿通孔の一端部には、前記第二挿通孔の他端部の側に向けて突出する第二弾性片が形成され」、
「前記回動軸を前記第二挿通孔に挿通した際に、前記第二弾性片の先端部が前記回動軸の側面に当接して、前記第二導電板が前記回動軸に当接する」
「第二導電板」
を備えるのに対し、甲1発明は、上記の構成の第二導電板を備えないものである点。

イ 相違点についての検討
上記相違点に係る「第二導電板」については、甲2?甲7のいずれにも記載されていないことは明らかである。したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2?甲7に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

ウ 甲2?甲7に記載された発明を主引用例とした場合の検討
上記のように、甲2?甲7には、上記(1)の相違点に係る「第二導電板」については、記載されていないことが明らかであるから、甲2?甲7に記載された発明のいずれを主引用例の発明として本件特許発明1と対比した場合においても、上記(1)の相違点に係る「第二導電板」についての相違点が生じる。そして、上記(1)の相違点に係る「第二導電板」については、甲1?甲7のいずれにも記載されていないのだから、結局、本件特許発明1は、甲1?甲7に記載された発明をどのように組合わせても、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

エ 結論
上記のとおり、本件特許発明1は、甲1?甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、上記の本件特許発明1と甲1発明との相違点に係る
「第二ウイング部材の表面に」「配設され」「回動軸に当接する」「第二導電板」であって、
「前記第二ウイング部材における前記回動軸の軸方向の端面に沿った被挿通部と、前記被挿通部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第一連結部と、該第一連結部に対して直交して連続するとともに前記回動軸に平行となる第二連結部と、該第二連結部に対して直交して連続するとともに前記第一連結部に平行となる固定部と、を備えるとともに、前記第一連結部、前記第二連結部、及び、前記固定部は、前記第二ウイング部材における前記回動軸に平行となる三つの面に沿って配設され」、
「前記被挿通部には、前記回動軸が挿通される第二挿通孔が形成され」、
「前記被挿通部における前記第二挿通孔、及び、前記第二ウイング部材に前記回動軸が挿通されることにより、前記第二導電板が前記第二ウイング部材と共に前記第一ウイング部材に対して回動可能に連結され」、
「前記第二挿通孔の一端部には、前記第二挿通孔の他端部の側に向けて突出する第二弾性片が形成され」、
「前記回動軸を前記第二挿通孔に挿通した際に、前記第二弾性片の先端部が前記回動軸の側面に当接して、前記第二導電板が前記回動軸に当接する」
「第二導電板」
を備えるものである。
したがって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、甲1?甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明3及び本件特許発明4について
本件特許発明3及び本件特許発明4は、本件特許発明1又は本件特許発明2を限定した発明である。そして、上記「1 本件特許発明1について」及び「2 本件特許発明2について」で記載したとおり、本件特許発明1及び本件特許発明2は、ともに、甲1?甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えた本件特許発明3及び本件特許発明4についても、甲1?甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-08-25 
出願番号 特願2013-128958(P2013-128958)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G03B)
P 1 651・ 537- Y (G03B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今井 彰赤尾 隼人  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 森林 克郎
松川 直樹
登録日 2016-10-28 
登録番号 特許第6031001号(P6031001)
権利者 下西技研工業株式会社
発明の名称 ヒンジ  
代理人 伊藤 捷雄  

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