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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04G
管理番号 1332271
異議申立番号 異議2017-700248  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-09 
確定日 2017-09-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第6047704号発明「既存柱の補強構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6047704号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6047704号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成27年4月15日に特許出願され、平成28年12月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人一般社団法人中高層耐震建築機構(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6047704号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3 申立理由の概要
申立人は、証拠として特開2013-227774号公報(甲第1号証)、特開2014-136924号公報(甲第2号証)、特開2001-40881号公報(甲第3号証)、「Strec協会ニュース 2010.8 No.43、一般社団法人構造調査コンサルティング協会、1?13頁」(甲第4号証)、特開2008-240368号公報(甲第5号証)を提出し、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべき旨主張している。

4 刊行物の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証(主に、段落【0001】、【0015】、【0019】、【0020】及び【0022】参照。)には、
「柱2の両側に連続する腰壁3と垂れ壁4とを備え、これら腰壁3及び垂れ壁4の間であって下地材6設けた開口部に窓枠5を取り付けた構造において、上記柱2を補強するものであって、
上記柱2における上記腰壁3に対応する部分を囲む、壁付き部分用鋼板11は、断面形状を略コの字にした柱囲い部11aとその両側に突出した壁沿接部11b,11bとを備えた部材であって、柱囲い部11aを柱2の前面に対向させるとともに壁沿接部11bをボルト14で腰壁3に固定し、
上記柱2における垂れ壁4に対応する部分は、垂れ壁4用の壁付き部分用鋼板12で囲まれ、梁1に対応する部分は梁部分用補強鋼板13で囲まれ、
上記壁付き部分用補強鋼板12及び梁部分用補強鋼板13は、上記壁付き部分用補強鋼板11と同様の形状であり、すなわち、上記壁付き部分用補強鋼板12は、柱囲い部12a及び壁沿接部12bからなり、梁部分用補強鋼板13は柱囲い部13a及び梁沿接部13bからなり、これら壁沿接部12b,梁沿接部13bをボルト14で垂れ壁4又は梁1に固定し、
柱2と、その表面から所定の間隔を保って設けた上記補強鋼板11?13との間隔内には、複数の補強鉄筋17を起立させるとともにグラウト材18を充填し、グラウト材18を固化させる、極脆性柱の補強構造。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

(2)甲第2号証
甲第2号証(主に、段落【0022】、【0023】、【0028】及び【0066】参照。)には、
「横断面が四角形状に形成され、対向する側面から壁3がそれぞれ設けられた鉄筋コンクリート柱1であって、
この鉄筋コンクリート柱1の屋外側の面に補強鋼板10がアンカーボルト5によって固定され、さらに補強鋼板10の外側に第1および第2の囲い鋼板21、22が連結されて、該補強鋼板10と該第1および第2の囲い鋼板21、22との間に横断面が四角形状の空間部26が形成され、空間部26内にはグラウト材7が充填され、
鉄筋コンクリート柱1の屋内側の面に補強鋼板10をアンカーボルト5にて固定し、この補強鋼板10に第1および第2の囲い鋼板21、22を固定すると共に、補強鋼板10と第1および第2の囲い鋼板21,22との間に形成される空間部26にグラウト材7を充填するようにした、鉄筋コンクリート柱の補強構造。」の技術事項が記載されている。

(3)甲第3号証
甲第3号証(主に、段落【0043】及び【0044】参照)には、
「既存建築物の柱410と梁420,420,・・・の接合部400の周囲に、
厚板鋼板から成り、互いに溶接によって接合して形成された4つのせん断抵抗板48,48,…を水平四方から取り囲むようにして組み合わせて取り付け、
梁を挟んで配置されているせん断抵抗板48,48,…の上辺部は、梁を貫通する貫通ボルト(締結材)47,47,…によって、互いに締結され、
接合部400と、せん断抵抗板48,48,…との間には、充填コンクリート45が充填される、
柱梁接合部の補強構造40。」の技術事項が記載されている。

(4)甲第4号証
甲第4号証には、3頁図2及び5頁図5に、「柱・梁接合部の表面から所定間隔をおいてL字型の補強鋼板を配置し、L字型補強鋼板を梁を貫通する棒状部材とナットで固定し、梁を挟んだL字型補強鋼板の内側に軸方向筋を配置し、柱・梁接合部とL字型補強鋼板の空隙にグラウト・モルタルを充填して一体化した柱・梁接合部の補強構造」の技術事項が記載されている。
また、第4頁、3.2破壊メカニズム時の柱・梁接合部に作用するせん断力の項には、柱、梁接合部では、柱の曲げ終局モーメントによってせん断力Q_(c)=(M_(ur1)+Q_(ur2))/D_(b)が発現するとし、第5頁、3.3柱・梁接合部のせん断終局強度の項には、柱、梁接合部は、柱と梁との取り合いの違いにより、十字型、ト字型及びT字型を構成し、この形状によってせん断抵抗機構に対して大きな影響を与える。また、柱の直交方向において梁が接合するために、接合部は大きな水平拘束効果を受けるので、そのせん断終局強度は、コンクリート圧縮強度にこの効果による増分が付加されることになる。(申立人の主張に基づく。)

(5)甲第5号証
甲第5号証には、
「【請求項1】
鉄筋コンクリート柱の周囲に、所定の間隔を保持して囲い鋼板を設けるとともに、鉄筋コンクリート柱と囲い鋼板との上記間隔内にグラウト材を注入してなる鉄筋コンクリート柱の補強構造において、上記間隔内に、柱の軸方向に平行もしくはほぼ平行にした複数の曲げ補強用軸方向筋を設けてなる鉄筋コンクリート柱の補強構造。」及び、
「【0023】
上記のように4枚の囲い鋼板6で鉄筋コンクリート柱1を囲うとともに、鉄筋コンクリート柱1と囲い鋼板6との間に形成される間隔Hにグラウト材4を充填するが、このときには上記間隔Hには曲げ補強用軸方向筋9を鉄筋コンクリート柱1の軸方向に平行もしくはほぼ平行に配置しておく。そして、この実施形態では、上記曲げ補強用軸方向筋9を、鉄筋コンクリート柱1の四隅にほぼ対応させている。このように鉄筋コンクリート柱1の四隅に対応した位置に曲げ補強用軸方向筋9を配置すれば、曲げ補強用軸方向筋9は4本で足り、少ない本数で最大の効果を期待できることになる。そして、曲げ補強用軸方向筋9が少ないということは、材料のコスト削減につながるとともに、施工時の作業性も向上することになる。
【0024】
上記のように間隔Hに複数の曲げ補強用軸方向筋9を配置することによって、当該鉄筋コンクリート柱1の曲げ耐力を飛躍的に向上させることができるようになる。しかも、鉄筋コンクリート柱1の外側に配置された囲い鋼板6やそれを結束する帯状連続繊維シート5が相まって、上記向上された曲げ耐力を上回るせん断耐力を確保することができる。
なお、上記曲げ補強用軸方向筋9を配置する場所や本数が特に限定されるわけではない。補強目的に応じて配置する場所や本数が決められること当然である。
【0025】
例えば、図4に示すように、荷重が矢印方向に強く作用する建造物の場合には、その荷重方向において互いに対向する間隔Hを広く取るとともに、その広くした間隔Hの四隅に曲げ補強用軸方向筋9を配置する。このようにすれば、曲げ補強用軸方向筋9の対向間隔が大きくなるが、この対向間隔が大きくなればなるほど、曲げ耐力が大きくなる。このようにして、建造物の特性に応じて、曲げ補強用軸方向筋9の配置を任意に定めることができる。」と、記載されている。

4 当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明は、少なくとも、「上記既存柱と上記第1補強部及び第2補強部とは、上記既存柱の第1面と第2面から突出した棒状部材の突出部分に締結手段を設けた一体化手段を介して一体化する構成」を備えていない。この点は、甲第2号証ないし甲第5号証にも記載されていない。本件特許発明1は、甲1発明、及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲第3号証の記載事項からみて、既存コンクリート構造部にドリルで形成された孔に固定される後施工アンカーボルトの突出部でせん断抵抗板を固定する構成と、梁を貫通する貫通ボルトの両端突出部でせん断抵抗板をナットで固定し、充填コンクリートが充填され一体化する構成が開示されており、柱、梁、スラブはいずれも既存コンクリート構造部であり、棒状部材を補強対象の柱、梁、スラブのいずれかに配置するということは、当業者が必要に応じてなし得る設計的事項に該当する旨(12頁4?16行)、主張している。
しかしながら、甲1発明の補強対象は柱(柱全体)であるのに対し、甲第3号証に記載された技術事項の補強対象は柱・梁接合部(柱の両端部)であって、しかも貫通ボルトは梁を貫通しているものの、柱を貫通してない。
よって、甲第3号証に記載の貫通ボルトを甲1発明の脆弱柱の補強に適用する動機付けがなく、しかも、仮に適用しても、甲第3号証に記載の梁を貫通する貫通ボルトを、甲1発明の柱を貫通するもの(柱から突出したもの)に代えることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(2)本件特許発明2ないし3について
本件特許発明2ないし3は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明、及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3は、甲1発明、及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-08-24 
出願番号 特願2015-83776(P2015-83776)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西村 隆  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
藤田 都志行
登録日 2016-12-02 
登録番号 特許第6047704号(P6047704)
権利者 一般社団法人 レトロフィットジャパン協会
発明の名称 既存柱の補強構造  
代理人 田中 貞嗣  
代理人 小山 卓志  
代理人 片寄 武彦  
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