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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 B22C 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 B22C |
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管理番号 | 1332284 |
異議申立番号 | 異議2017-700131 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-02-10 |
確定日 | 2017-09-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5968703号発明「粘結剤コーテッド耐火物、鋳型及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5968703号の請求項1ないし3、5及び6に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5968703号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成24年7月10日に特許出願され、平成28年7月15日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人佐藤彰芳(以下、「特許異議申立人」という。)により請求項1ないし3、5及び6に対して特許異議の申立てがされ、当審において平成29年4月17日付けで取消理由を通知し、平成29年6月12日に意見書が提出されたものである。 2.本件発明 「【請求項1】 耐火骨材の表面が、固体フェノール樹脂と液体フェノール樹脂とを含有する固形の粘結剤層で被覆されており、固形の粘結剤層は融着点が80℃以上、110℃以下であることを特徴とすることを特徴とする粘結剤コーテッド耐火物。 【請求項2】 固体フェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の混合物から選ばれるものであり、液体フェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の混合物から選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の粘結剤コーテッド耐火物。 【請求項3】 粘結剤層には、フェノール樹脂用の硬化剤が含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘結剤コーテッド耐火物。 【請求項4】 粘結剤層には、炭素質材料が含有されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の粘結剤コーテッド耐火物。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載の粘結剤コーテッド耐火物が、粘結剤層のフェノール樹脂の硬化物で結合して形成されて成ることを特徴とする鋳型。 【請求項6】 請求項1乃至4のいずれかに記載の粘結剤コーテッド耐火物を加熱された成形型内に充填し、成形型からの伝熱で粘結剤コーテッド耐火物を加熱して、粘結剤層のフェノール樹脂を硬化させることを特徴とする鋳型の製造方法。 【請求項7】 請求項1乃至4のいずれかに記載の粘結剤コーテッド耐火物を成形型内に充填し、この成形型内に水蒸気を通して粘結剤コーテッド耐火物を加熱し、粘結剤層のフェノール樹脂を硬化させることを特徴とする鋳型の製造方法。 【請求項8】 粘結剤コーテッド耐火物を充填した成形型内に水蒸気を通して、水蒸気の凝縮潜熱により粘結剤コーテッド耐火物の温度を上昇させ、次に加熱した気体を成形型内に通して、成形型内の凝縮水を蒸発させると共に粘結剤コーテッド耐火物の粘結剤層のフェノール樹脂が硬化する温度以上に加熱することを特徴とする請求項7に記載の鋳型の製造方法。 【請求項9】 上記の加熱した気体が、加熱した空気であることを特徴とする請求項8に記載の鋳型の製造方法。 【請求項10】 上記の加熱した気体が、水蒸気と空気との混合気体であることを特徴とする請求項8に記載の鋳型の製造方法。 【請求項11】 上記の水蒸気が、過熱水蒸気であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の鋳型の製造方法。 【請求項12】 予備加熱した粘結剤コーテッド耐火物を成形型内に充填することを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の鋳型の製造方法。」 3.取消理由の概要 当審において、請求項1ないし3、5及び6に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 請求項1ないし3、5及び6に係る発明は、甲第1号証(特開昭62-285945号公報)、甲第2号証(特開昭59-197339号公報)又は甲第3号証(特開平11-244991号公報)のいずれかに記載された発明であるから、請求項1ないし3、5及び6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 4.甲各号証の記載 甲第1号証には、「フーカケイ砂又は、再生5号砂の表面が、固体ノボラック樹脂又は固体レゾール樹脂と液状レゾール樹脂とを含有する固形の被覆層で被覆されており、 被覆層の融着点が96℃、97℃、99℃、100℃、101℃、102℃又は103℃である 樹脂被覆砂粒(RCS)。」という発明が記載されている(特に、実施例1-11)。 甲第2号証には、「フラタリー砂の表面が、固形の変性フェノール樹脂と液状フェノール樹脂又は液状の変性フェノール樹脂とを含有する固形の被覆層で被覆されており、 被覆層の融着点が99℃、102℃又は103℃である 樹脂被覆砂。」という発明が記載されている(特に、実施例1-3)。 甲第3号証には、「フラタリーサンドの表面が、固体のノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂エマルションとを含有する固形の被覆層で被覆されており、 被覆層の融着点が93℃又は98℃である シェルモールド鋳型造型用レジンコーテッドサンド。」という発明が記載されている(特に、実施例1-4)。 5.判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 特許法第29条第1項第3号について (ア)請求項1に係る発明について 請求項1に係る発明と甲第1ないし3号証に記載された発明とを対比すると、請求項1に係る発明は「液体フェノール樹脂」を含有するのに対し、甲第1号証に記載された発明は「液状レゾール樹脂」を、甲第2号証に記載された発明は「液状の変性フェノール樹脂」を、甲第3号証に記載された発明は「レゾール型フェノール樹脂エマルション」を、それぞれ含有する点で相違する。 したがって、請求項1に係る発明は、上記甲第1ないし3号証に記載された発明ではない。 (イ)請求項2、3、5及び6に係る発明について 請求項2、3、5及び6に係る発明は、請求項1を直接又は間接に引用して請求項1に係る発明を減縮したものである。したがって、請求項1に係る発明と同様の理由で、請求項2、3、5及び6に係る発明は、上記甲第1ないし3号証に記載された発明ではない。 イ 特許異議申立人の意見について 特許異議申立人は、特許異議申立書の第21頁下から3行から第22頁第15行において、「本件特許発明1においては、『液体フェノール樹脂』とされているところ、『液体フェノール樹脂』という用語は、フェノール樹脂自身が液体であるものは勿論のこと、固体又は液体フェノール樹脂を溶剤に溶解乃至分散させて得られる液状物であっても、『液体フェノール樹脂』に含まれるものであるとして、広く一般に使用されているものである。 ・・・本件特許発明1が甲3発明を含むものであることは明白である。」 と主張している。 この主張は、「フェノール樹脂自身が液体であるもの」を「液体フェノール樹脂」と呼びつつ、「固体又は液体フェノール樹脂を溶剤に溶解乃至分散させて得られる液状物」も「液体フェノール樹脂」と呼ぶことが広く一般に使用されているということを意味している。 このとき、本件特許明細書の段落0049には「液体フェノール樹脂は、フェノール樹脂自身が液体であることが必要であり、固体フェノール樹脂を溶剤に溶解乃至分散して液状にしたものは、本発明で用いる液体フェノール樹脂には該当しない。」と記載されており、請求項1に係る発明の「液体フェノール樹脂」は、「フェノール樹脂自身が液体であるもの」を意味していることは明らかである。 したがって、「フェノール樹脂自身が液体であるもの」を「液体フェノール樹脂」と呼ぶことについては、「液体」という文言からしても一般的なことである。 しかしながら、甲第1号証及び甲第2号証では、「溶剤に溶解乃至分散させて得られる液状物」について「液状」という文言が使われており、「フェノール樹脂自身が液体であるもの」は記載されていない。また、「固体又は液体フェノール樹脂を溶剤に溶解乃至分散させて得られる液状物」も「液体フェノール樹脂」と呼ぶことについては、広く一般に使用されているとする根拠は見いだすことはできないので、甲第3号証に記載された「レゾール型フェノール樹脂エマルション」も「液体フェノール樹脂」とはいえない。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1ないし3、5及び6に係る特許は、甲第1ないし3号証により、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張しているが、上記(1)ア(ア)で相違するとした、請求項1に係る発明は「液体フェノール樹脂」を含有する点について、甲第1ないし3号証に記載された発明に対して、「液体フェノール樹脂」を用いることが容易であったとする根拠を甲第1ないし3号証には見出すことはできず、また周知であったとも認めることはできない。 また、上記(1)イのとおり、特許異議申立人は、「液体フェノール樹脂」の「液体」は「液状」と同一である旨の主張しかしておらず、「液状」が示されている甲第1ないし3号証において、「液体」とすることの容易性については特段の主張はなされていないので、特許異議申立人の主張は採用できない。 6.むすび したがって、請求項1ないし3、5及び6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1ないし3、5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-09-04 |
出願番号 | 特願2012-154556(P2012-154556) |
審決分類 |
P
1
652・
113-
Y
(B22C)
P 1 652・ 121- Y (B22C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 川崎 良平 |
特許庁審判長 |
栗田 雅弘 |
特許庁審判官 |
長清 吉範 平岩 正一 |
登録日 | 2016-07-15 |
登録番号 | 特許第5968703号(P5968703) |
権利者 | リグナイト株式会社 |
発明の名称 | 粘結剤コーテッド耐火物、鋳型及びその製造方法 |
代理人 | 森 厚夫 |