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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B63B
管理番号 1332432
審判番号 訂正2017-390042  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-06-02 
確定日 2017-08-03 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5536254号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5536254号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5536254号(以下「本件特許」という。)は、平成22年12月18日に出願した特願2010-282471号の一部を、平成25年4月30日に新たな特許出願としたものであり、平成26年5月9日にその特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成27年8月17日に訂正審判(訂正2015-390092号)の請求がなされ、同年10月13日付けで「訂正することを認める。」との審決がなされ、その後、平成29年6月2日に本件訂正審判の請求がなされたものである。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5536254号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 本件訂正内容
本件訂正審判に係る訂正の内容は、次のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記浸水防止部屋の少なくとも1つは、機関区域の前記部屋に設けられ、前記機関区域の前記部屋の前記側壁と前記隔壁との連結部を覆った空間であり前記側壁が損傷した場合浸水し、前記浸水防止部屋で前記連結部が覆われた前記隔壁は、前記機関区域の2つの前記部屋を区画し、」とあるのを、「前記浸水防止部屋の少なくとも1つは、機関区域の前記部屋に設けられ、前記機関区域の前記部屋の前記側壁と前記隔壁との連結部を覆った空間であり前記空間に面する前記側壁が損傷した場合浸水し、前記浸水防止部屋で前記連結部が覆われた前記隔壁は、前記機関区域の2つの前記部屋を推進方向の前後に区画し、」に訂正する。
請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2?8も同様に訂正する。

第4 当審の判断
1.訂正の目的の適否について

訂正事項1の内の、訂正前の請求項1に「前記浸水防止部屋の少なくとも1つは、機関区域の前記部屋に設けられ、前記機関区域の前記部屋の前記側壁と前記隔壁との連結部を覆った空間であり前記側壁が損傷した場合浸水し」とあるのを、「前記浸水防止部屋の少なくとも1つは、機関区域の前記部屋に設けられ、前記機関区域の前記部屋の前記側壁と前記隔壁との連結部を覆った空間であり前記空間に面する前記側壁が損傷した場合浸水し」とする訂正(以下、「訂正事項1-1」という。)は、訂正前の請求項1の前記記載では、浸水防止部屋が機関区域の部屋の側壁と隔壁との連結部を覆った空間であり、側壁が損傷した場合に浸水するものであることは理解できるものの、損傷する側壁が機関区域の側壁としか特定されておらず、機関区域の「空間に面する」側壁以外の側壁が損傷した場合に浸水防止部屋に浸水するものも含まれ、技術的に不明確であったところ、上記の訂正により「空間に面する」側壁と特定することで、浸水防止部屋に浸水するための側壁の損傷箇所がより明らかとなった。
よって、訂正事項1-1は特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。

訂正事項1の内の、訂正前の請求項1に「前記浸水防止部屋で前記連結部が覆われた前記隔壁は、前記機関区域の2つの前記部屋を区画し」とあるのを、「前記浸水防止部屋で前記連結部が覆われた前記隔壁は、前記機関区域の2つの前記部屋を推進方向の前後に区画し」とする訂正(以下、「訂正事項1-2」という。)は、請求項1に「該船体の内部であって隔壁により推進方向の前後に区画される複数の部屋と」との記載があり、隔壁が推進方向の前後に部屋を区画するものであることが示されていることから、当該記載に倣って表現を揃え明瞭にするためのものといえる。
よって、訂正事項1-2は特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。

以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

2.新規事項の追加の有無について

本件特許の願書に添付した明細書には、次の記載がある。(下線は当審で付したものである。以下同様。)
「【0035】
従って、船体11の外部から隔壁25(25a,25b)の近傍に位置する左側壁20aに損傷を受けた場合、部屋22aまたは部屋23aには浸水するものの、部屋22bや部屋23bに浸水することがない。即ち、このとき、部屋22b,23bより小さい浸水防止部屋27a,29aに浸水することで、部屋22b,23bへの浸水が防止される。」
「【0037】
従って、側壁20a,20bにおける隔壁25(25a,25b)の近傍が損傷を受けても、浸水防止部屋27a,27b,29a,29bが浸水するだめ(当審注;「ため」の誤記と認められる)で、前後の部屋22a,22b,23a,23bに跨って浸水することはなく、・・・」
上記記載からは、側壁20a,20bにおける隔壁25a,25bの近傍が損傷を受けた場合に、浸水防止部屋27a,27b,29a,29bが浸水することが理解でき、本件特許の願書に添付した図面の【図1】を併せみれば、前記の「側壁20a,20bにおける隔壁25a,25bの近傍」が浸水防止部屋の「空間に面する」側壁であることも理解できる。
よって、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものといえる。

本件特許の願書に添付した明細書には、次の記載がある。
「【0036】
このように実施例1の旅客船にあっては、左右の側壁20a,20bを有する船体11と、この船体11の内部であって隔壁25(25a,25b)により推進方向の前後に区画される複数の部屋22a,22b,23a,23bと、側壁20a,20b及び隔壁25(25a,25b)に接する浸水防止部屋27a,27b,29a,29bとを設けている。」
上記記載を【図1】と併せみれば、隔壁25a,25bが推進方向の前後に、部屋22a,23aと部屋22b,23bとを区画していることを理解できる。
よって、訂正事項1-2は、本件特許の願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものといえる。

以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第126条第5の規定に適合するものである。

3.特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について
上記1.で述べたとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記側壁が損傷した場合」における側壁の位置を「前記空間に面する」とし、「浸水防止部屋で前記連結部が覆われた前記隔壁」が「前記機関区域の2つの前記部屋を推進方向の前後に区画」するとしたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
そして、当該訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第6項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外に面する左右の側壁を有する船体と、
該船体の内部であって隔壁により推進方向の前後に区画される複数の部屋と、
前記側壁及び前記隔壁に接する少なくとも1つの浸水防止部屋と、
を備え、
前記浸水防止部屋は、端部が前記側壁及び前記隔壁に接合される仕切板により形成され、前記仕切板の全面が前記部屋に面すると共に、
前記浸水防止部屋は、ショアランプが設けられる甲板に面してその下方に設けられ、
前記浸水防止部屋の少なくとも1つは、機関区域の前記部屋に設けられ、前記機関区域の前記部屋の前記側壁と前記隔壁との連結部を覆った空間であり前記空間に面する前記側壁が損傷した場合浸水し、
前記浸水防止部屋で前記連結部が覆われた前記隔壁は、前記機関区域の2つの前記部屋を推進方向の前後に区画し、
前記機関区域の前記部屋は、縦通隔壁で区画されていないことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記浸水防止部屋は、前記左側の側壁と前記隔壁に接する左方浸水防止部屋と、前記右側の側壁と前記隔壁に接する右方浸水防止部屋とを有することを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記浸水防止部屋は、前記隔壁を挟んで前後の前記部屋側にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載の船舶。
【請求項4】
前記浸水防止部屋は、前記複数の部屋より容積が小さく、且つ、満載喫水線での幅が前記船体の幅の1/10以上に設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の船舶。
【請求項5】
前記浸水防止部屋は、前記複数の部屋より容積が小さく、且つ、前記満載喫水線での前後長さが前記船体の全長の3/100以上に設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の船舶。
【請求項6】
前記浸水防止部屋は、前記隔壁の前記船体の後方の前記部屋側に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【請求項7】
前記浸水防止部屋は、4辺の壁に囲まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の船舶。
【請求項8】
前記浸水防止部屋は、前記ショアランプが設けられる甲板と船底との間に設けられる車両搭載甲板より後方に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の船舶。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-07-10 
結審通知日 2017-07-12 
審決日 2017-07-25 
出願番号 特願2013-95949(P2013-95949)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (B63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岸 智章  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 和田 雄二
平田 信勝
登録日 2014-05-09 
登録番号 特許第5536254号(P5536254)
発明の名称 船舶  
代理人 酒谷 誠一  
代理人 大野 聖二  
代理人 大野 聖二  
代理人 酒谷 誠一  

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